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中国への論点を整理する |
| ※ Merry Christmas! 吉田繁治です。中国リポート(2)をお届けしま す。前回は外面観察でした。今回は見えない部分の「論」を書きま す。 <中国リポート(2):中国論への諸視点:01.12.24> トランザクションからリレーションへ 【目次】 1.150通のご感想 2.なぜか驚くべく早い中国のGDP統計 3.私のスタンスは? 4.『やがて中国は崩壊する』との見方 5.日本の不安:日本の液晶開発者からのメール 6.90年代の変化:工場の現場技術低下の要素 7.「国民経済」という発想枠は20世紀のもの 8.グローバルは特別のことではない:意識の枠を超える ■1.約150通のご感想 【いただいた感想】 <中国リポート(1)>には150通くらいの感想、ご意見をいた だきました。時間的な問題で、全通へのお返事はできないことをお 詫びします。すべてを、楽しみに読んでいます。 3通、中国への見方が<ステレオタイプ(類型的)>過ぎるのでは ないかとのご意見。確かにその面はあった。今の中国に儒教精神は ないとの指摘もあった。論をリニアにするため捨象したところがあ ります。言い訳です。甘んじて受けます。 ある読者の方が言った。メールマガジンは対話を通じ認識を深める 面がある。一緒に、文字と概念をたどり考察を深めましょう。中国 論は身近で重要な、しかしまだ不定な部分を含む課題です。韓国論 も似ていますね。ロシア論、東欧論、インド論は事実上ない。この 国の<国際化>ということに対する、態度の不確かさを感じます。 ▼カオス 沿岸部の90年代後期はバブル投資を含み、<中国の香港化>へ向 かい変貌を遂げている。ここで多色の論と視点があるのは当然です。 アジアでは<近代化問題>と<現代化問題>が重層的に現れます。 欲望・猥雑・混乱・カオスに機会がある。資本主義は水清ければ魚 は死ぬ。カオスから秩序化へのプロセスが、機会です。中国に、香 港の何倍もの混沌と猥雑を感じた。香港や台湾を作れる民族なら、 政体の方向を定めれば成長は早い。障害は北京政府。 中国は、予想される開放路線の浸透があれば、成長は早い。解放路 線以外の方法を誰が取れるか? 軍による後退があってもそれは一 時的と判断します。香港の返還は香港を中国化しなかった。 実は、80%の人が、合意ができる評価が定まるときビジネスの機 会は逃げている。経済統計、制度・法が整備されたあとは、微細な 部分効率の世界になる。カオスの時期に大きな機会がある。 日本の敗戦直後は、没落・闇商売・混沌だった。そこに機会を見た 人と、日本の崩壊を感じた人がいた。機会を見た人は土地を買い、 産をなした。売った人は失った。 詩人でもある堤清二が描いている。子供の目に戦乱の中で電話をか けまくり、燃え盛る中を買い占める父に狂気を見た。西武の堤兄弟 の父は、空襲後の焼け跡を買い占めた。そして新興財閥になった。 日本の25倍の国土と10倍の人口の中国は、ひとつの政体で統治 できる国としては大きすぎる。稀代の中国学者吉川幸次郎はそう言 った。民族も53。沿岸部と内陸の農村では5倍以上の所得格差。 シンセンを含む5つの経済特区と農村地域では違う経済がある。 多様だといっても始まらない。行動のためには単純化の視点を設定 しなければならない。事象に対し多様だというときは思考の停止を 含む。 知人事業家は言った。日本も悲観論一色だから今ほどチャンスがあ るときは経験したことがない。世間は売り一色。90年代後期の5 年で売上げを数倍に伸ばした企業も多い。マスコミには登場しない。 先日講演に行った京都の会社は1年で20億が60億になり、3 倍の売上になっている。整備はこれから。皆若く目が輝いていた。 そうした会社が各地に出始めている。 ■2.なぜか驚くべく早い中国のGDP統計 人民日報は、01年10月16日に1月から9月までの9ヶ月間の GDPを報じている。統計が早い。なんらかの計画数値であって、 実際の数字ではない。それでもイメージは作れるので示します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 年換算GDP 8兆2124元(伸び率8.2%:124兆 円) 1人当たりGDP 6318元(9万5千円・年) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 http://j.people.ne.jp/2000/10/16/newfiles/a1240.html 中国の99年のGDP総額は、NIES諸国の合計と等しい。 1人当たりGDPは、日本人の400万円の、42分の1。 日本人のGDPは1人で中国人42人分(=14世帯分)です。 42人分のGDPを、日本人が維持できるか。方向は、逆を示す。 【日本との比較】 国全体では、人口が10倍、国土が25倍ですが、GDPは日本の 4分の1に過ぎない。こんなことが続くはずがない。元(現在1元 =15円)の過小評価がある。 【世界との比較】 世界の62億人では$30兆2218億(99年:現価4000兆 円)1人当たりで64万円。中国の1人当たりGDPは、アフリカ、 インド、パキスタン、インドネシアを含む世界の全平均の7分の 1です。 世界のGDP↓ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ecodata/gdp.html 中国のGDP統計が少なすぎるか多すぎるのか。一体どんな統計か、 不明です。 【世界の平均値なら・・・】 1人当たりGDP9.5万円が、世界の平均並の64万円になると しても7倍。この数字までは近々行く。そうなると、合計では日本 の2倍、1000兆円の米国並みのGDPになる。 土地価格も今の7倍が動的均衡点になる。中国の土地価格(実際は 賃料)は、バブルと言うには遠いと判断できる。 【成長をやめた10億人のOECD】 日本、米国、西欧のGDPが7倍とは言わずとも2倍になることが あるか? 2%成長(これでも高成長)なら35年先です。 (若い米国だけが、3%成長の可能性を持つ) 35年は長い。退職後です。妥当な1.5%成長なら50年かかる。 平均所得が2倍になるのに50年。日本の1人当たり所得は、横 ばいに入った。今のままの収入が50年も続くとなれば、どういっ たライフプランを描くべきか。<超成長>に転じるには、路線変更 が必要です。それが、中国経済とのパートナーシップと思えます。 【未来は見える】 利益は、倍率にある。途上国は先進国経済と消費の型を後追いする。 昭和30年代を思い起こせば、今の中国です。あとには40年、 50年、そして平成がある。未来は現前する。途上国の未来は見え る。 90年代に加わった新要素が、コンピュータ&通信。PCには数年 で習熟する。1年で7年分の変化。インターネット時代は、〔世界 のオフィスとオフィス〜工場と工場〜デスクとデスク〜個人と個人〕 をダイレクトにリアルタイム網で結ぶ。これがどんな変化を産む か、想像をこえるところがある。 通信手段とマスコミの発達がない国ほどインターネットのビジネス への利用は早い。インフラ構築コストが少なく済む。数年で一変す る。発展に何十年もの時間がかかった鉄道の時代とは違う。中国く らいインターネット網が生きる国はないのではないか。今は、北京 政府の監視と干渉がある。それも時間の問題。認識不足は、いずれ 修正される性格をもつ。 ▼ゴードン・チャンは書いた 中国旅行中『やがて中国の崩壊が始まる(ゴードン・チャン:草想 社:01年11月』を読んだ。ゴードン・チャンは北京、香港、上海の 米国系法律事務所の顧問を勤める。身に危険が及ぶかもしれない部 分まで、踏み込んでいますね。 広州とシンセンの街を歩き工場や問屋を訪ね、レストランで食事を しながら、頭ではゴードン・チャンとの対話をした。 ▼躊躇の遠因 中国やアジアについては、これは書いてはいけないというためらい がある。第二次世界大戦の、中国を含むアジアに対してきちんとし た総括をしていない。ドイツ国民が、戦後の西欧世界に対して行っ た、(外面的ではあれ)反省の徹底とは違う。 戦後の日本人は、独走した軍幹部が悪いとした。庶民に罪はないと する。アジア開放の太平洋戦争肯定論もある。 極東国際軍事裁判(東京裁判:1948)は戦争犯罪で25名が有罪と し、東条英機以下7名の絞首刑で心理的に決着をつけたように思え た。現憲法に対する態度は、曖昧で神学論争を続ける。西欧の植民 地支配からの開放戦争だったという大東亜共栄圏の思想も続いてい る。 日本人だけが、歴史を反省すべきとは毛頭思わない。戦争は道徳的 な善悪を超える。勝者が善になり敗者は悪になる。アングロサクソ ンの歴史は、略奪・殺戮・圧制で血塗られているが、彼らは正当化 の才を持つ。なぜか?世界を惹きつける文化と学を持ち広めた。フ ランスも同じです。植民地支配の経験が長い。方法において巧みさ がある。 ■2.私のスタンスは? 【事実と評価】 歴史に対し政治的な対立はあってもいい。<歴史>は過去の事実で はなく、現在の価値観での過去の見方と評価です。現在の党派の対 立と、政治的な価値観の違いを反映する。 事実の解釈と意味づけ、つまり<歴史観>は個々の人間にとっての 事実に対する態度の選択です。 【態度の選択】 このことは何を意味するか? 私がそしてあなたも歴史に対する態 度を選択する必要があることを示す。どんな態度と視点か? 私は<中国と経済的なパートナーシップを作るにはどうするか>と いうプラグマティクな未来姿勢です。政治的な姿勢でもプラグマテ ィズムがベースになる。 そして<市場経済と自由貿易推進の立場>を選択する。 しかし所得分配の修正資本主義の必要性は否定しない。 【OECD諸国の富の偏在の向かう先】 市場経済は、所得を<過度に>集中させる本質を持つ。行き着いた とき、つまり<過度>であることが露わになったとき、所得の集中 がもたらす投機と、同時に一般商品の需要不足からデフレ型の恐慌 が起こる。まとめれば、これが90年代の世界、特に日本ですね。 【一方では、結果平等の向かう先】 他方、社会主義の基底にある結果平等は、赤字財政やマネーの増発 で生産性の低い部分、競争力のない産業セクターへ所得分配や資金 配分を行うから、需要超過でのインフレや、過剰投資で不良債権が 発生する。マネー増発が<過度に>なったときインフレ型恐慌を起 こす。 【日本は、米国に10年、中国に20年先行する】 日本が、マネー増発にもかかわらずデフレ型恐慌に陥っているのは 、円マネーが国際還流してドルを支えているからです。円のドル離 れが起これば、世界にばら撒かれたドルは<一瞬で>崩落する。 米国は円マネーの流入による<上げ底経済>です。円が支えるドル は再び還流し、世界が上げ底経済です。世界の上げ底のなかで、日 本は需要不足から<底割れ>しようとしている。日本は今も最先端 にある。 理由は、貿易黒字(蓄積)がなお世界最大だからです。 ▼見逃されている視点:人口の年齢構成 米国経済は、今後数年、日本の90年代を追体験する。ただし、米 国は年齢構成が日本より若い。若さが米国の救いです。中国はさら に米国より10年若い。日本より20年若い。中国はこれから日本 の80年代を追体験し、米国の90年代を追体験する。20年後は <一人っ子政策>のため、急速に<史上最大の老人大国>になるが ・・・ 日本の工場では中高年が働く。中国の工場では20代前半が働く。 20代は成長する。消費意欲も強い。これで20年の長期が分かる。 ■3.『やがて中国は崩壊する』との見方 ゴードン・チャンは、中国政府は<5年>以内に崩壊すると見る。 中国の崩壊ではなく政府の崩壊です。その論理構造をたどります。 ▼主要国有企業の不良債権 毛沢東の中国は、基本を国内での自給自足に置き、各州と都市にワ ンセット生産型の国有企業を数多(あまた)作った。 国有企業は工業用固定資産の53%を使い、都市労働者の41%を 雇用するが、99年で工業生産高の28%しか産出していない。 黒字の数字は99年発表の中国財務部調査でも、99%がでっちあ げであると言っている。大規模なものだけで11万社(97年)あ る。 赤字でも存続できている理由は、政府からの援助資金(収益に計上) 政府指導による銀行からの借金です。どこかの国に似ている。 国有商業銀行の不良債権比率は、政府は99年で25%と発表した。 しかし、スタンダード&プアーズの予測では最高で70%、ドイ ツ銀行は50%を不良債権と推測していると言う。 回収不能額は4900億ドル(60兆円)に上る。日本経済に当て はめると、10倍の600兆円の規模に匹敵する重みを持つ。 <専門家の多くにとって中国の金融問題は世界(金融)の重要課題 のひとつであり、ことによると世界最大の問題かもしれない(同書 :p161> 訪問した広州に、広東国際信託投資公司が所有する63階建てのラ ンドマークタワー「広東国際大厦」の巨大ビルがあります。広東国 際信託投資公司の破産のため、競売に出された。清算委員会が出し た最低落札価格、240億円では買い手がつかなかった。価格は更 に下がる。(12月18日) シンセン、広州、上海、北京に破産が多発する。バブル投資が巨大 ビルの林立を作った。日本の公共投資、バブル投資と似た面がある。 ▼01年12月のWTO加盟 WTO(関税・輸入制限の国内保護の規制緩和・撤廃によって自由 貿易を推進する世界貿易機構)への加盟は、中国にとって諸刃の刃 であるとチャンは言う。 中国は、輸入には高い(自動車は約80%等)関税を課し、国有企 業を保護し、輸出振興を図ってきた。今回のWTO加盟で、関税を 下げ、保護貿易を緩和する(自動車は25%等) これで、もとも と赤字の国有企業は苦境に落ち、失業者があふれる。国有企業の破 綻は、確定した未来です。 失業の増加は、社会不安の原因です。WTO加盟で大規模な失業が 予測されるのが中国です。記憶に新しいところでは、97年のアジ ア通貨危機はインドネシアでの破壊と暴動を、韓国での大規模なデ モと抗議行動を起こした。 畑作業をしてきたひとが、明日からITの工場で働くことはできな い。失業の再雇用には、ミスマッチの調整期間が必要です。 ▼中国共産党の統治の意思 【大量失業が目前】 <中国にはすでに労働不安が広がっている。(WTO加盟で)中国 への輸入が増えれば、さらに失業者が増える。労働階級と治安部隊 はもっと激しく衝突することになる。・・・しっかり目をこらせば、 時代の終わりを示すあらゆる兆候が見てとれる。> 【統治の意思は強固】 <共産党首脳はその時が来ても、おとなしく退場することはあるま い。10年ほど前のクレムリンの同志とは違って、最後まで抵抗す るだろう。中国の指導者は支配する意思を失っていない。・・・1 989年の天安門広場の虐殺でそれを示した。> 【台湾「省」の問題】 <北京の指導部は愛国主義だけを頼みの綱として、もっとも狂おし い 感情をかきたてることになろう。観測者は中国の経済が破綻したら、 台湾はどうなるか懸念している。北京はその「反抗的な台湾省」 を奪回しようと思うことだろうと。(同書P3)> 【10年前】 10年前ソ連・東欧圏では、共産党独裁体制が突如崩壊した。内乱 はあったが、短期・小規模で世界を巻き込む規模までにはならなっ た。 中国で、5年以内にそれが起こるとチャンは予測する。中国政府と 軍部の支配への意思は強固だから、やっかいな事態が起こることを 予測する。変化への抵抗がどこまでいくか、誰にも予測はできない。 【迫った失業】 きっかけは(1)WTO加盟での自由貿易化による国有企業の失業 者の暴動であり、(2)その後の展開は、北京政府が外敵を作るた めの台湾への侵攻であると予測する。 【体制】 北京政府は、数千年の歴史を継ぐ王朝の色彩が強い。毛沢東の時代 は、竹のカーテン内の自給自足の王朝だった。 トウ小平は、眠れる鯨に経済特区という窓を与えた。台湾・香港の 華僑、西欧・米国・日本から投資が殺到した。5つの経済特区には 香港と似た高層ビルが建ち、技術が移転された。(トウはメール上 で使える共通漢字ではないのでやむなくカタカタで。シンセンも同 じ) 江沢民は、WTOに加盟させ、08年のオリンピックを招致した。 (1)安価な輸出価格で世界の物価を変える面と、(2)国民の高 貯蓄率〔所得の40%〕を食った国有企業、(3)貧困にあえぐ農 村、(4)バブル投資がある。 【4色の経済と北京王朝】 経済と生活に上記4色があって、13億人、53の民族を北京王朝 が政治的、軍事的に支配する。 中国の道路地図を訪問先でもらってきました。<台湾省>として載 っている。国民は、台湾は中国の国土であると教育を受けている。 台湾は、別の政体の中華民国として、2000年3月に選挙で選ん だ野党、民主進歩党の陳水扁総統を擁く。 【二転三転】 軍事大国としての中国の今後の予測は、予断を許さない。アジアで は、北朝鮮を含み冷戦は終わっていない。カントリー・リスク論は そこから出る。ロシアの市場経済化では二転、三転があった。軍も 出動した。闇経済が繁茂した。税制は整備がない。 5000名の学生の蜂起であった天安門事件(89年)で、戦車・ 装甲車が出動し数千名の殺戮があったと言われる。政府の公式見解 では、死者はゼロとされている。 (ビジネス知識源とプレミアムも、かなりの数の中国人の方、及び 中国在住の多くの方に読まれています。感想が来ます。) 【統制】 民衆は政府批判を公然とは言わない。インターネットのホームペー ジ、チャット、掲示板も監視される。 ▼スタンス どんなスタンスを取るか。チャンの、北京政権崩壊の予測がある一 方で、以下のようなスタンスもある。 <これまで、中国に進出した日本企業は独特の複雑な経済慣習や短 期間に何度も変る法制度に悩んだ。しかし、中国はWTO加盟によ って国際ルールの下で市場を開放し、国内法制度を外国と整合する ように変えていく義務を負う。慣習や法制度も改善するはずだ。そ の時、日中間の水平分業にもプラスになる。(『ビジネスに国境な し:柳井正ファースト・リテイリング(ユニクロ)社長:01.12.17 日経新聞』> 【ダイナミズムと見る】 楽観的な見方です。私もこの見方に加担する。理由は単純です。失 業の急増、政体の崩壊、混乱、内乱、戦乱があっても、大局で見れ ば歯車が逆転することはない。崩壊の後にも、建設がある。市場経 済のダイナミズムです。 【意思を持った視点】 悲観は、材料の収集で得られます。楽観には<意思>が必要です。 人は困難を乗り越える力を持つ。シンセンで見た、民衆の豊かさへ のふつふつたる渇望をとどめることは、誰にもできない。 それで、私は考えを変えた。 ■4.日本人の不安:液晶開発者からのメール 液晶ディスプレイの開発にあたってきた人のメールを、ほぼ原文の まま紹介します。製造業の典型的苦悩が見える。 <液晶ディスプレイの材料開発に従事している48歳の技術屋です。 ・・・DRAMの故事に習わなかったため、現在事業規模におい て韓国に追い抜かれてしまいました。台湾にも抜かれるのは時間の 問題とされています。(・・・次は中国になる) 私は、この20年間、諸先輩や同僚たちが必死に働いて、発明、量 産化ともに液晶の最先端を切り開いてきた姿を見てきました。自分 も僅かながら貢献したと思います。 その努力が材料と装置を輸出する事によって、自国の雇用確保に反 する結果になってしまいました。この20年の間に、電卓に使う液 晶から(つまり、電子部品としてはゼロに近いスケールから)出発 し、数兆円の規模に育つ事が出来ました。 (しかし)残ったのは、事業として敗者になりつつある惨めな状況 なのです。・・・日本はこれからどうすれば良いのか? 韓国・台湾の台頭は止めることは出来ない。しかし、何も一気に敗 者に転落することはないはずだ。メインランドチャイナは未だこの 分野の主戦場には登場していないが、参戦した時にはどうなるのか ?・・・ 英国の自動車産業のようなプライド高き敗北でしょうか。 今日本の液晶ディスプレイ産業全体が、自信喪失と将来への不安の 中にあります。(以上でメール引用終わり)> 【身の回りでも・・・】 私の使っている2つのPCディスプレイのひとつは韓国製(LG電 子)、ひとつが日本製です。韓国製は画面が多少暗いけれど、買っ た当時(01年春)は日本製の60%の価格でした。 【10年前の論】 DRAM製造産業は、今韓国と米国になりつつある。10年前は装 置産業では、製造装置は世界共通で、製造過程での人件費の割合が 10%程度で少ないから、人件費が高い日本でもやっていけるとの ことだった。DRAM工場への投資が起こった。 【コスト要素】 しかし、ここに加わった要素は、土地、建物、電気代、固定資産税 、法人税等の工場のインフラにあたる部分のコストの安さです。人 件費だけのコスト格差ではなかった。 【10年後】 10年後には東南アジア、韓国、台湾になった。更には鯨のような 中国に移転する。国内のDRAM工場は数千億の赤字を出し、撤収 する。 【更に変化が・・・】 更に重要なことは、95年あたりからの国際e-Logisticsの進展、及 びインターネットのビジネス利用です。 e-Logisticsでは、在庫・出荷・物流が、世界で同時並列になる。 BtoBのe-Commerce化です。 商取引、カタログ、価格、納品条件、数量割引、予約発注割引及び 物流機能まで連結されればe-Market Place化と言っていい。そこで は、同等の品質なら世界の出荷価格が瞬時に比較され、スイッチす る。 従来のFace to Face型の代理人、営業マン、購買を介した取引では、 利便性や付帯サービス等の他の要素と一体になって無視されてい た、数%の<裸原価>の価格差を求め、発注先が移動する。 ■5.90年代の変化:工場の現場技術低下の要素 液晶開発や製造ではありませんが、日用品工業一般ではどうなって いるのか? ▼繊維分野の統計的管理という陥穽 ユニクロの柳井社長は、こう言った。 <日本の製造業は、・・・かなり後退していると思います。それは スキルをもった現場の技術者や技能者を大事にしなくなったことと 無縁ではありません。・・・日本のメーカーに原材料を大量に発注 すると、品質にかなりのばらつきがあるんですね。> <メーカーに苦情を言うと、「うちは統計的に品質管理をしていま す」というんです。しかし、一点でも不良品があったらビジネスの 世界ではダメなんです。それにもかかわらず、そんなことを平気で 言うメーカーは由々しき問題です。> <統計で不良品が何パーセント以下だという問題ではなく、不良品 があれば、現場でただちに改善しなければいけないんです。最近の 日本企業は、現場技術者を大事にしないから、不良品が出ても、現 場で不都合な部分をうまく改善、改良することができない。> 以上の認識が必要です。製造業では世界のトップであるとステレオ タイプ(類型的)には言えない状況が起こっている。製造といって も業界格差、業界内企業格差が大きく、マスコミや経済学者のよう な一般化はできない。 製造業一般が空洞化するのでは毛頭ない。価格、品質が従来はOE CDの範囲の競争でのものであったのに、アジアと中国という新興 工業国との全面競争になったというのが正しい。 柳井氏が強調するのは、ユニクロのような一品目数百万枚の量産を するための均質な布の原材料調達に適する量産工場が、国内にはな くなったのではないか、といいうことです。 ▼ホワイトカラーばかりになった工場 <日本はもっと現場の技術者を大切にしなければならない。ホワイ トカラーばかりになって、現場の実務が軽んじられているんです。 (柳井正:以上Voice 02年1月号> 熟年ホワイトカラーばかりになった日本のメーカーが、目に見える ようです。日本の工場の現場技術の内部的な空洞化もある。これを 指摘するのは、柳井氏ひとりではない。 ▼若年現場労働者の技術低下がある <日本のモノ作りに狂いが生じるきっかけは、85年の(2倍の円 高を招いた)プラザ合意だった・・・それに続くバブル景気はリゾ ート法やふるさと創生など、地方へのお金のばらまきを生んだ。> <その結果、地方で足場を固めていた日本の製造業の現場で働こう という若者は減り、日本の高水準の人件費では世界に勝てないと考 える経営者が増えた(『日本の復活、現場から』PEC産業教育セ ンター 山田日登志:日経新聞01.12.20> 90年代の投資は、道路、文化施設、リゾート施設、および店舗だ った。自治体が開発した工業団地は草が生え、物流倉庫や郊外ショ ッピングセンターになるだけだった。 <工場ではマニュアルに従って、ロボットのように働くだけの作業 者が大半になってしまった。中国への生産拠点移転ラッシュと国内 産業の空洞化は日本の製造業の退廃の結果であって、原因でない。 (前掲記事)> ▼ロボットと変らない単純作業 生産現場が、自律的な改善運動や創意がなく、ロボットのような作 業者だけになれば、作業効率や製品品質は中国の作業者と変らなく なる。そうなれば、生産設備もろとも、中国に移動するのが経営原 理になる。 <中国への生産拠点移転ラッシュと国内産業の空洞化は日本の製造 業の退廃の「結果」であって、原因でない>という視点は重い。 江門市の問屋のショールームで見た住まいの関連の製品、室内アク セサリ、布製品、家具、キッチン用品、金属器具の品質は、特に問 題がないどころかもう日本では作れないのではないかと思った。ユ ニクロでも、800万枚のフリースを、量産できる国内の縫製工場 はないという。ここ20年で、国内工業に重大な変化が起こってい る。 ■6.「国民経済」という枠は20世紀のもの:未来から見る ▼輸入という旧概念 <輸入>という言葉自体が、国民経済の概念です。20世紀までの ものです。世界中のPCが連結されたインターネット時代。物流が 、世界ネットワーク化しe-Logisticsに進む時代にそぐわない。 ホームページは世界から見ることができるし、メールは瞬時に世界 に送ることができる。当たり前ですが10年前は特殊なことだった 。私も、ニフティのサーバー内のパソコン通信しか使っていなかっ た。 現状の物流も、海外工場とのBtoBの取引も、約5年で現在のイン ターネットのホームページの利用と同じイメージになります。「ネ ットワーク化分業」が、広がりを生む概念で適当と判断します。 <「昔は・・・」、国際物流は大変だった、海外バイイングも、製 造も、輸入も面倒で大変だったね>と言う時代がもうすぐなのです。 国内も海外も、お隣もアルゼンチンもアイスランドも同じです。距 離差がない。今のインターネットは、技術面、利用面、ユーザー数 で第一次普及の時期に過ぎない。障壁は制度・慣習・政治を含む人 為的なものと、過去を引きずるわれわれの意識です。 ▼ユーロー:国家の枠を超える発想から 西欧では、国民経済との矛盾、税法・法制度の相違、慣習の相違を 超え、正月からはユーローでの通貨統一を行う。 矛盾だらけの内容です。スペイン、ポルトガル、ギリシャ、スロベ ニア等の生産費の安い国家を含む。もともと空洞化していた西欧先 進諸国内の工場が、更に空洞化する。 ▼西欧諸国の細切れな国内市場では世界に対抗できない 地域経済としてユーローは一体であるべきだという発想が統一通貨 を生んだ。西欧の巨大企業は東欧での生産を行い、世界と対抗する。 細切れの国内市場を相手にしていれば、世界に負け、最後は支配 される。 ▼突き詰めから生まれる選択肢 【突き詰め】 (1)米国産業に支配されることを選ぶか、(2)西欧で共同化し 自立するか、この2つの選択肢の突き詰めが、3億人のユーロー市 場統一の思潮を生んだ。 【対比したとき、日本の国内市場の狭さ】 1億2500万人の国内マーケットの日本が巨大製造業を維持でき るか。当たり前だった貿易黒字は、00年以降急激な減少を見てい る。数年後の貿易赤字すら予測されている。 【ユーロー】 西欧3億人の市場をまず通貨で統一する。次は税法・法・制度・会 計の標準化、共通化に進む。統一政府も視野にいれる。 国民経済と、通貨統一の間の<矛盾>は知りながらそうした方向を 示す。歴史的に、反目、戦争、相互軽蔑を繰り返したドイツとフラ ンスが通貨統合した。驚嘆すべきことです。 西欧は国民経済という枠での発想を、日本が台頭した80年代にや め、世界経済を視野に置いた。フランスのルノーが日産を買収しゴ ーンを送り、カルフールは世界企業として南米、アジアに出店する。 農業は強いが、他の産業は弱者と見られていたフランスが、です。 中国は失業の増加もありタクシーが急増している。えび茶色のタク シーはドイツのVWとの合弁事業で作られた車だった。ドイツ製造 業は、東欧圏、アジアに脚を伸ばす。日本は中国投資への遅れがあ る。日本が得意なはずの量産製造の機会は、13億人の市場の中国 にある。市場は、育成・開発すべきものです。ポッとできるわけで はない。 【国単位の枠を超える】 国単位での思考は、やめる時期です。日本人の従来の性癖では、問 題が起こると政府を非難し、政府の対策を求める。<業界団体>は そのためのものだった。そうした行動は何も生まない。 <なんでも政府が悪い>と言っている間は没落が進む。政府には、 規制で邪魔をしないこと、減税をすることだけを求めたほうがいい。 政府の対策を求めることは、官僚の権限拡張、官僚組織の肥大、 そして、そのための増税にしか結果しない。 規制と高税は成長企業を国内から逃がす。結果平等の減点主義の人 事評価は有為な人材を逃がす。空洞化は外部からのものではない。 <内部から進む>。究極は、個人の意識にある。個人とはあなたで す。 【西欧を後追いするが、学習が遅い】 日本では、西欧が行ったような、失業率2桁のどん底からの突き詰 めはまだ行っていない。三洋電機の<ワークシェアリング>は、フ ォルクスワーゲンを含む西欧の工場で90年代初頭、約10年前に 労使で議論され実行された、社会民主主義的な対策です。 事例の学習を行うのが遅すぎる。傷害は内向きの視野で自家中毒に 陥っていることにある。個々人が変化を嫌うようになったこと、こ こに前進を阻む根がある。日本人は、保守的になった。高齢化の障 害か。 【アジア経済圏構想もあるが】 アジア自由貿易圏を作るという構想もあるが、経済格差、文化差、 価値観の差が大きすぎ一体感はない。アジア通貨圏構想も出たが、 米国はそれを許さない。米国はアジアの黒字マネーの還流が必要だ からです。<大国>である日本政府の姿勢がいつも右顧左眄(うこ さべん)であることが障害になる。 ■7.グローバルは特別のことではない:意識の枠を超えること ではどうするか?流れに逆らうのではない。流れに乗る。 <企業単位>で流れに乗り流れを強化する。われわれは国家で生活 をするのではない。国家は、税や年金部分のみです。80%は企業 単位での生活になる。国を超えることです。21世紀はそれが普通。 日本が何をすべきかという手の届かない問いを、会社が何をすべき か、部署が、あなた個人が何をすべきかという具体論に落とす。具 体論でないかぎり方法は見つからない。すべては個人から始まる。 実は、今後の方向では製造業も流通業も内容は同じになる。製造業 ではEMS(Electronic Manufacturing Service:電子ネットワー ク化製造) と言い、流通業ではサプライチェーン(SCM)と言う。 小売業が行えばデマンドチェーン(DCM)と言う。内容的には 類似する。生産工程、流通工程の、グローバルな水平分業です。 ここで30Kバイトの紙幅が突きました。以下次号で。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 ▼<ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊分を超える 情報価値をe-Mailで>のサンプル閲覧と申し込み 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