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砂漠の上のMirage(蜃気楼)

        ラスベガスリポート(02.03.02)

こんにちは、吉田繁治です。2月27日夜、11日間のラスベガス
・ロス視察・研修ツアーから帰りました。翌28日は、東京フォー
ラムでの<価値創造企業(IBM主催)>の講演。満席でした。参
加総数は10000名とのことです。

【配信遅延のお詫び】
ロス滞在2日目に、携行していたノートブックPC(Gateway)に突
然スイッチが入らなくなり、うろたえてホテルからタクシーで
10分の修理店(店名User's Side)に持ち込みました。ここは日本
語が通じます。

結果は修理不能。CPUが物理的に破壊。朝のメールチェックの時、
2回、画面が真っ暗になったので変だなと思っていました。次に、
電源を入れたときは、無反応。こうした壊れ方もあるんですね。

メールマガジンの送付期限の前日のことでした。〔まぐまぐ〕の責
任者、吉富一郎さんに電話をし、事情を説明して、〔まぐまぐ〕か
らの、無料版と有料版の遅延のお知らせを皆さんに送ってもらった
次第です。

配信の遅れにをお詫びします。コンピュータもやはり機械だと当た
り前の認識をしました。

4年間、出張に使用したGatewayともお別れです。3.5キログラム
で重く肩に食いこみ、買い替えの時期でもありました。画面が15
インチで気に入っていたのです。次はソニーのバイオでしょうか。

今回は、特別号で、本稿の前半部を、無料版としても配信します。

また、今回約4000名の方が、無料版の新しい読者になられまし
た。過去の記事と論考は90編を、↓以下のサイトに公開していま
す。
http://www.cool-knowledge.com

ご参考になるものがあると思います。
一度はご訪問を。


   <Vol 89 砂漠の上のMirage(蜃気楼)>

【目次】
 1.米国研修ツアー
 2.構想と蜃気楼
 3.ビジネスサイクル(=景気変動)を殺す国:日本
 4.米国経済の強さの根源への直感
 5.ドル高、円安は何の始まりか
 6.終わりと始まり
 7.明治という青春

(無料版との共通部分はここまでです)
【以下有料版のみです】
 8.自尊と志
 9.21世紀の新しい開国は、
       情報化されたグローバルロジスティクス
10.砂漠の上の蜃気楼
11.自由な事業の絵



■1.米国研修ツアー

ツアーは、53人乗りの大型バスが満席。ビジネス知識源の読者グ
ループ(24名)と、筆者が親しい住関連会社のグループ(27名)
での合同でした。

読者グループ

読者グループの視察ツアーは、01年11月の第1回(ロスアンジ
ェルス)に続き2回目です。2月19日の初日は、ラスベガスのベ
ラジオのコンベンション・ホールでセミナー、翌日から3日間の流
通業視察と、移動の車中での集中講義でした。

他のビジネスツアーと違い・自己責任の現地集合・現地解散方式で
す。日本では初めての、インターネットのみを使った方法です。
初めての方法を試すのは、私の好むところです。(笑)

格安ツアーで行けば、地方から東京への旅費より、滞在費を含め東
京からラスベガスへの旅費が安い。東京講演を、私の意識としては
ラスベガスでやるつもりで催行しています。こうした認識に、切り
替えることです。

海外ツアー料金は選べば安い。国内の旅行費用はまだ高いですね。

【集合】
無意味に思えるくらい豪華な、3000室のメガリゾート・ホテル、
ベラジオのロビーの喫茶で、コーヒーを飲みながら待っていると、
定刻の午後2時までに全員が集合。セミナールームでは、講義開
始前に、自主的に名刺交換されていました。

【セミナー】
私は最後列の席で、名刺交換のシーンをしばらく眺めていました。
12時間を掛け(大部分の方は初めて)ラスベガスまで来て、メン
バー相互は、私を含め初対面です。私は、こうしたシーンに弱い。

前回のロスアンジェルスの時も同じでした。こみ上げてくるものが
ある。司会者から呼ばれて演壇に行くとき、無理に心を落ち着け、
普通を装い講義を始めたのです。

<ようこそラスベガスへ、そして、初めまして。いつもメールのみ
でお会いしている吉田繁治です・・・>


バーチャルな世界での出会いが、リアルな関係に変わる、どきどき
する瞬間です。

【ショック】
ラスベガスは、参加者の皆さんにショックを与えたようです。私は
10回目くらいの訪問になります。米国は、全部で90回目くらい
でしょうか。米国は訪問する度に新しい発見を与えますが、その中
でもラスベガスは特別です。

90年代以降のラスベガスは、過去のイメージを一新しています。

▼5つの集客の柱

集客に、5つの柱を持ちます。事業と同様、コアの柱の多さがラス
ベガスの特徴です。いずれも世界最高です。

1.数万人から20万人を集める大規模コンベンション
2.世界の一流ショーを含む、総合エンターテインメント
3.カジノ
4.リゾート
5.3000室〜5000室を擁するテーマホテル

リピート客が多いのがこの都市の特徴です。数日の滞在では、ラス
ベガスの10分の一に触れることがやっとでしょう。

【必需領域を超える】
先進諸国の需要は、衣食住で必需部分の需要を超えています。少な
く見ても総需要の30%から40%は、生活の維持という必需を超
えたものです。

ラスベガスは、一見は、俗悪の表現主義の塊です。京都的な控えめ
の洗練とは対極にある。あらゆるものが、自己と個性とテーマを、
大声で主張する。

必需領域を超えた、無形のものを提供するのがラスベガスです。
ここには、需要開発と事業創造のネタが、実験中のものを含め豊富
にある。必需以降の需要開発が必要なのが日本経済ですね。

必需部分、日用品は、次第に中国価格に近づくからです。それがグ
ローバル経済の実相ですね。

【リゾートテーマとデザインモチーフ】
ルクソールはエジプトのピラミッドを、パリスはパリの町を、ベラ
ジオはミラノを、NYNYはニューヨークを、ベネチアンはベネチ
ア、アラジンはアラブを・・・各ホテルはそれぞれのテーマと、デ
ザインモチーフを持ち、常人のイマジネーションを超える規模の設
備と建物で、威圧します。↓
http://www.vegas.com/resorts/?f=m1hp&t=mhotelinfo

超集積が生む相乗効果で、洗練の域に達した超常があるんです。

■2.構想と蜃気楼

この街に来る度に、人間の構想力の異常さに想いを馳せます。最初
はギャングのバグジー・シーゲルが、愛人のフラミンゴに与えた〔
フラミンゴホテル〕だった。

フーバーダムの建設で集まった労務者8422人が住む砂漠に、バ
グジーは、カジノを含む高級ホテルを建てる(1946年)
バグジーの夢はともかく事業としては、みんなが無謀と思った。

しかしバグジーの構想への出資者(エンジェル・キャピタル)はい
た。これが米国です。(題名は『バグジー』としてビデオになって
います)

その後バグジーはビバリーヒルズの邸宅で、マシンガンで撃たれ蜂
の巣になる。ちょうど、『俺たちに明日はない』の最後のシーンの
ように、バグジーは血の雑巾になって消えた。

バグジーの作品となったフラミンゴは残り、次々に巨大ホテルが建
設され、ラスベガスを作る。ラスベガスは、カジノとショーとコン
ベンションの街になった。多くの日本人が知るラスベガスは、80
年代のここまででしょう。

ラスベガスは、バグジーと女優フラミンゴがいなければ無かった。

蜃気楼:ラスベガスの変容

90年代のラスベガスは激しく変容した。
80年代と同じ都市とは思えない。一人の人物がいた。

【志と蜃気楼】

1989年、ペンシルバニア大学ウォートン校のMBAスティーブ
・ウィン(Steve Wynn)は、フラミンゴの真ん前に、3039室の
滞在型メガリゾート・ホテルMirage(蜃気楼)を建てます。
バグジーの構想力への対抗です。

通りを隔て、真正面に屹立する2つのメガホテルを見ると、私には、
スティーブ・ウィンと、バグジーの聞こえない対話が見えます。
事業家のロマンの対話。

林立するラスベガスの各ホテルに、事業のロマンの対話と、拡張し
た個性の抗争がある。事業は数字ではなく、人間そのものです。

マーケティングの数字からは、砂漠のフラミンゴもMirageも生まれ
なかった。無い需要を調査数字にはできないのです。

カジノも似ています。確率の数字で言えば必ず負ける。負けること
に熱中するのが人間です。その時、人間は数字を見ていない。夢を
見ている。

事業家のスタンスは1階層だけ違います。スティーブ・ウィンは言
った。皆が負けるカジノで勝つ方法がある。カジノを持つことだ。
こうしたことから生まれるものが事業です。

視察団を乗せたバスの先頭の座席で、マイクを握り、考えを話しな
がら、まるでデザインモチーフが違うホテルを正面にして、メガホ
テルの上空に、雲のように漂う構想と事業のロマンを見たのは、私
だけではありますまい。

参加者も、明日の仕事のエネルギーになる強烈な刺激を受けたはず
です。

言葉にはならない。しかし人は言葉にしなくても、見て、感じる。
岩と乾いた泥の砂漠に蜃気楼とオアシスと見たのは、バグジーやウ
ィンだけではない。

ラスベガスは、砂漠の蜃気楼です。米国人が考える天国は、こうし
たものではないか。ぎらぎらの欲望と夢が、異様な形をとった都市。

【パラダイス】

ラスベガス大通の裏は、パラダイス通り。そこに、一軒の寿司バー
がある。名前は博士(HAKASE)。奇妙な店名です。 博士への
夢を持っていた若い日本人が、お決まりのようにカジノで散財をし、
明日食べるものもないくらい破産し、今は、寿司屋を構える。

カウンターに座り、顔にしみが浮いたいい顔の中年の主人と、とつ
とつと話す時間は、ラスベガスで私の好きな時間のひとつです。

彼が、夢をもって異国で過ごした30年はどんな時間だったか。多
くの日本人は青雲の志を持って、米国へ行った。若い志は現実を超
えるものだったか。彼の作品は、『天国通りのHAKASE』です。

長女を連れカウンターに座り、そして参加メンバーの夕食会もそこ
でやった。HAKASEの主人は恥ずかしそうに<どうも、今日は
ありがとうございます>と一言だけ参加メンバーに挨拶した。私は、
彼の心を伝えたかかったのです。

セミナーを開いたベラジオはスティーブ・ウィンの最後の作品にな
った。今、Mirageグループは、5000室のMGMグランドを持つ
不動産王、80歳を超えたカーク・カーコリアンのものになってい
います。

3.ビジネスサイクル(=景気変動)を殺す国:日本

ウィンがMirageを建てた89年当時、米国人は日本からのバブルマ
ネーを使った買収やM&Aで、米国経済への自信を喪失していた。

こうした自信喪失と闇の時期こそ、チャンスだと考えるのが事業家
です。

ビジネスサイクル

経済には投資のサイクルがある。景気(ビジネスサイクル)の底に
コツンと当たって、そこからまた上昇する。

90年代の日本の問題は、政府の不況対策で、底打ちする時期を先
に延ばし、10年で更に不良な資産を累増させたことに求められま
す。

経済の自律的サイクルを、政府予算を使った需要対策で消したこと
が、じくじくと続く問題を残し、拡大し、最後は全面的な金融危機
になったのが2002年の日本経済です。

人為で経済の法則を変えることはできない。ちょうど、引力の法則
を人間が変えることができないようにね。法則を利用はできますが。

政府の株価のPKO(Price Keeping Operation)は一時的には迫っ
た危機を回避します。ところが一方では株式市場参加者のマーケッ
トへの見方を、まだ自律的な底打ちでの買い出動の時期ではないと
させ、買いを遠ざけます。PKOは、経済原理ではない無理な買い
だからです。

2002年2月の、空売りの規制は、またまたの愚策です。株価を、
徹底的に底打ちさせることが、本当の対策です。財務省はまたも
余計なことをやった。なぜ皆は、これを非難しないか、不思議です。

国民は、中小企業と景気対策で政府に保護を求める。権益の拡張に
敏感な感性を持つ政治家と行政官僚は、合作で、官の予算を拡張す
る。そして、国民経済の中での官の領域は、50%にも達し、それ
でも不足するから、将来は増税の選択肢しかない。

将来の増税(=官支配の拡張が必然)が確実な国家に、輝く未来が
あるか? 国民は、目先ではなく、その根底を自らに問うべきです。

90年代の、400兆円の公共投資の誤りを、今後10年も続ける
なら、この国はどうなるか。確定している。この必然を変えること
ができる唯一の方法は、選挙ですが・・・

流れは、マネーエクソダス。

▼計算の上での、動物的な勘

どこが自律的回復へ向かうための底か、この判断に投資家は命を賭
ける。PKOと市場の規制はそれを狂わせる。

日本の過保護経済は、温室のひ弱な動物を生みすぎています。
事業家精神が、政府依存のサラリーマン化で鈍っているのです。

過保護経済の結果は、財政赤字を含めれば、国民負担率50%とい
うことです。これは、個人の所得のうち半分は、税・年金・福祉を
通じ官僚が支配することを意味する。一方で、ネバダ州の個人と企
業の所得にかかる州税と、個人相続税はゼロです。

日本ではリゾート開発にすら、地方や政府の予算を使ったものがあ
ったのですから呆れます。官製のリゾートに、わくわくさせる面白
みがあるわけがない。道徳的な平均値発想だからです。

リゾートには<人間の生の欲望を解放する尖ったもの>が必要です。
国民宿舎の官僚的な福祉発想で、人を集めるリゾートができるわ
けがないのです。官の公団住宅のウサギ小屋規格も、日本の住文化
を殺した。この国の官は、ほうっておけば、支配者意識から国を殺
す。

過疎対策も、各地が尖ったものを作ること以外にない。必需部分を
超えた経済は、横並びの平均値では死ぬのです。

【1989年】
1989年、日本はバブル経済の絶頂期だった。Japan as ナンバー
1と言われた。日本の総地価で、25倍の国土と2倍のGDPを持
つ米国を4回も買えると豪語していた。世界の観光地、都市には日
本人旅行者が溢れ、有名ブランドショップも日本人が占領していた。
つかの間の夢だった。

【つかの間の資産家】
国内には、ソフトウエアと中身のない箱モノが溢れた。海外に向か
ってはハワイの主要ホテル、ゴルフ場、ロスアンジェルスのランド
マークタワーの三分の2、そしてNYのロックフェラーセンターま
で、日本の不動産業者が買い占めた。
ちょうど、1980年頃の、アラブの王家のように。

米国に回収された富

買い占めたビルは、安値で米国人が買い戻す。
最高値との差額の富は、米国人のものになった。
なぜこうなったか。

日本人は、投資でも売りでもサラリーマン的に横並びの行動をとる
ことを、既に読まれているからです。読む側にとって、こんなに簡
単な、ポーカーの相手はないのです。

まさに、英国人作家兼代議士、ジェフリー・アーチャーの傑作『
100万ドルを取り戻せ』の世界です。にわか成金の不動産バブル紳
士を通じ、日本人の富が、失われたことを意味します。

そして、その後12年、特に01年9月11日以降、ラスベガスに
も、ロスアンジェルスにも、ブランドショップにも、NYにも日本
人旅行者は少ない。

目立つのは、日用品工業で世界制覇を目指す、中華思想の国の人々
です。中国の貧富の差は激烈です。

ベルサーチを着た高価な娼婦に思えるベラジオのフロント周辺とカ
ジノで群れ歓声を上げる中国人。賭けの金額も、中華バブルを思わ
せるように大きい。日本人は、約3日経って慣れないとやりません。

日本人も団体で群れ、仲間内で大声で話し笑っている時期があった。
80年代までです。

変質した日本人

90年代の、バブルマネーを失った日本人は、群れることは少なく
なった。所作も洗練され、ファッションに田舎臭さは消えた。

話し方も、西欧人のように小声になった。高級レストランでも、う
ろたえは見えない。穏やかな表情で、メニューを読む。時々、困惑
した表情はある。

【鮮烈な記憶】

20年も前、パリに行ったとき、ホテルのフロントで私の前に並ん
だ質のいいコート姿の中年の日本人ビジネスマンが、意思を伝えら
れず、見ていると次第に青い顔になって、脂汗を流していた。

心臓マヒではないかと心配になったくらいです。彼が戦っていたの
は、目の前のフロント係りではなく、言語と西欧文化全体に見えた。

若いパリジェンヌのワーカーの前でこうした惨めな思いをして、海
外ビジネスの開拓をやってきたのが日本人です。その時私は、フラ
ンスへ旅立った彼を、誇らしく見送ったであろう家族のことを想い、
哀しくなったのです。

今はそうしたシーンを見ることは、なくなった。
気品に至らない傲慢が混じりますね。

しかし、繊細な神経を持つ日本人の可能性をまだ信じています。
(米国人の神経は、構想は大きくても、大雑把だからです)

4.米国経済の強さの根源への直感

円安=ドル高が続いています。$1=130円で計算すれば米国の
物価は、日本より高いものが増えた。米国は年で2〜3%のインフ
レです。一方、日本は価格の下落、これが数年間続き、円安が加わ
った結果です。

インフレの国の通貨は安くなり、デフレの国の通貨は高くなるのが
基本です。したがって、ここに新しい変化がある、それは何か?

円安は、ドルへの円の交換が、円へのドルの交換を上回っているこ
とを意味します。為替変動は、各国経済の総体への、マネーマーケ
ットからの評価を表す。

何かが変わった。その何かとは何か。これを探るには、自分の直感
しかないのです。書きながら、考えます。

グローバル合衆国

米国経済の強さは、世界の成長地域の経済を次々に呼び込むことで
す。

【日本はいつも一色】

日本経済はいいときも悪いときも一色です。東京から地方まで、見
事に一色になる。一方で、広大な国土と多様な文化を持つ米国経済
は、多色です。

米国では、何事にも、平均値はない。異なる個がせめぎ合い、平均
のない個性がせめぎ合って、合衆世界を形成する。

日本では、新聞を読み、テレビの報道を見れば、全体が分かる感じ
になる。一色の気分に、全体が支配されます。相互コミュニケーシ
ョンでも、言葉を交わしお互いの差異を確認するのではなく、お互
いの同質と同じ見解を認めあって安心する。

やはり極東の、同質国です。

【合衆国】

ところが、米国にいると目の前の世界と、新聞やTVが報じる世界
は、とても遠いものに思えるのです。米国で、この感覚があるのは
なぜか?

ラスベガスは、NYともロスアンジェンルスと違う。ロスはNYと
は違う。シカゴとNY、ダラス、フロリダも違う。白人、ヒスパニ
ック、東洋人、アラブ、ロシア、黒人はそれぞれが違う世界を生き
ている。

ワーカーとマネジャー、マネジャーとトップも違う世界を生きる。
平均所得というものもない。中間層も分解している。

【そこに90年代の変容と格差が加わった】
90年代の米国は、深い部分で、80年代までの米国とは違う米国
に変貌したのではないか。この認識の変更は、私にとって重いもの
でした。

▼競い合うラスベガス

ラスベガスでも、9月11日以降、人気のないホテルは倒産してい
る。一方で、人気があるホテルには人が並ぶ。ホテルもレストラン
もショーもー予約が取れないくらいの殺到があるかと思えば、一方
では、客が消えた閑散がある。この変化が、極めて短時間で起こる。
まさに多色の、市場経済です。これが強さですね。

ラスベガスストリップ(大通り)の数キロにすら、平均値というも
のは、どこにもない。実際にあるのは、目の前に見える個の多色と
差異の価値です。アラジンとベラジオは違う。ルクソールとミラー
ジュもまったく違う。

日本は***であると、一律に言えることが多い。気分と経済の共
有があるのです。米国は***だと、一言では言えない。企業も個
人も、それぞれの個が、あまりに違いすぎる。体形も、ね。すばら
しくスレンダーな流れる金髪の異星人と、子錦風の体躯。これを平
均体重にしても意味は無いのです。(笑)

等質と同質の国(=日本)と同じように米国を見れば誤る。日本経
済は、経済統計の合計数値から全体を判断できる。ところが異質の
合衆国では、数字化した1+1の合計は2ではない。

異質の個と、異質の個を数字で足すことはできない。オレンジとバ
ナナを足して、2個だとは言えない。オレンジ一個とバナナ一個が
ある。米国経済の数字は、中身を見なければならない。

世界で、最も経済成長の高い国の人とマネー、そして商品は、交替
で米国に集まる。米国では、国内のみならず、世界が米国に入りこ
んで世界の合衆を形成する。

私は、今回のラスベガス訪問で、認識を新たにした。
米国は米国ではない。米国は、世界の合衆です。

多色のラスベガスを歩いていて、そう気がついたとき、あぁ、グロ
ーバル化の世界が米国の国内にあると直感したのです。

米国は、日本、英国、ドイツ、フランスなどの、同質なところが多
い<国民国家>とは異質な国だ、<グローバル合衆国>が米国とい
うものではないか、そう感じたのです。

世界が集まる

日用品工業の成長国の中国人も、(違法にもかかわらず)富を共産
中国から米国に移転させる。そのための元安、ドル高ですね。

多くの華僑は、表面はともかく本心では本国の共産党政府を信用し
ていない。個人主義の強さ、マネーへのしたたかさがあるのが中国
人です。お金で割り切るのが中国人です。

生得の、商人文化がある。米国も、彼らにとっては、中華街を形成
すれば、祖国になる。米国は、そうした異質を飲み込むのです。

日本人

一方で日本人は、文句を言いながらも、日本政府を信用しています。
それが分かるのは、日本人が、ぼろぼろになった銀行の財務内容
を知りながら、そのマネーを国外移転させようとしないことからで
す。

日本は、国内の異質を排斥する。同質でないと、嫌うのです。

国家の官僚も信用できず、政治家もひどいと本音で思うなら、マネ
ーは国外脱出するはずです。マスコミの報道は、まだ意趣晴らのレ
ベルだということが分かる。

表面で騒ぐうちは、まだ信用している。本当に信用しなくなれば、
何も言わず静かに遁走するのです。離婚も、同じでしょう。

日銀の速水総裁の裏書小切手が1万円札であり、塩じいの裏書手形
が国債証書です。同様に天下り官僚の、頭取の署名のある借用証が、
預金通帳ですね。これらの信用が、危機の淵にあるのが現在です
ね。

強さ

米国は強い。だからドルも<当分(2年)>は強いでしょう。ドル
機軸通貨体制は、約10年単位で交替する世界の成長国のマネーと
商品と資本家が、米国に集まることで維持される。

米国の経済が強いのではない。これが肝要な点。

<世界が米国を信用する強さと、異質な世界を飲み込む強さが強い>
のです。

世界が米国を見放すとき、ドル機軸通貨体制は崩壊しますが、その
時の準備のために米国は約30年計画で、NY連銀の地価に、ゴー
ルドバーの塊を集めている。根源的な信用のアンカーはある。

日銀も、西欧中央銀行もゴールドを持つ。しかし、ゴールドの現物
はNY連銀が一手に預かり、外国が持つのは多くは金証券のみです。
NY連銀があるウォール街を歩くとき、街路から、金塊を保管する
地下の金庫の重さが感じられるのです。

証券は紙に過ぎない。法令で、時には武力で反故(ほご)にできる
のです。戦争にも、各国の実定法は及ばない。権力と経済の裏づけ
のない国連や国際法は無力です。

■5.ドル高、円安は何の始まりか

知人の事業家が言った。
<今度のドル高は、何か今までとは違うような気がするんです。そ
れに、米国が本拠地のインターネットもいよいよ本領発揮の時期が
近づいたような感じがしますが、吉田さんはどう思いますか?>

【データ】
これに対し、肯定的な理由、あるいは否定的な理由や事象は、ゴマ
ンと挙げることができます。問われた私は、しばし頭の中で、忙し
くデータを回した。しかしデータからは、太い方向は見えない。

【大切なこと】
そして、思った。知人の事業家のように考える人が、世界にまた増
えたのではないか。これは直感です。アンケートは取れないし、取
っても意味はない。

ユーローは通貨統一で、全体は逆に弱体化するのではないか。
日本は10年間はダメかもしれない。混乱が続くだろう。

セプテンバー・イレブン以降、歴史は、新しいステージに入ってい
る。これは間違いがない。WTCの崩壊は、人々の意識を変えた。
ちょうど、長崎や広島の原爆の後のように。

新しい歴史のステージを名づける概念はまだない。
<after 9.11>があるのみです。後の世界は、何の世界の始まりか、
どう定義するか。アフター・ファイブなら楽しくていいのですが。

醜悪と破廉恥

日本の銀行も保険も、ぼろぼろの内容を晒す。金融庁は相変わらず、
本当の数字を隠蔽し<異常なし>としている。異常なしという柳
沢大臣の言葉が、異常なのです。この国の政治家の言葉は軽い。言
葉の軽い政治家の存在は、税の無駄使いです。政治家の命は言葉で
す。

不良債権の本当の内容は↓
http://www.cool-knowledge.com/0705furyou-saiken-mondai(1).html

小泉首相は、<金融危機対策を「キチン」とやる>というだけで、
具体的な内容のない形容詞や副詞の言葉を叫ぶ。政治家は、数字で
語るべきです。首相秘書官である飯沼勲は、内閣宣伝相ゲッペルス
です。

醜悪と破廉恥を絵に描いたように、フルセットの満艦飾で象徴する
鈴木宗男は、品性のないダミ声、赤黒く光った顔、撫で付けた薄い
髪で、登場し、恫喝する。田中角栄には、まだ品性があったのです。

秘書役の小人物が、根回しの実質権力を持つ世界にまで堕落したの
が今の永田町です。

民への嫉妬の行政の秀才、財務省は、事ある度に増税をちらつかせ、
増税を回避するためと言って、財務省予算案の実行を迫る。こう
したものを<条件付け権力>とガルブレイスは名づけた。

外務省は、清朝末期の<紫禁城>に棲息していた宦官(かんがん)
のようにキーキー鳴き、鈴木宗男に擦り寄って、積年の腐臭を放つ。
伏魔殿ならまだ気骨はある。田中真紀子は言葉を間違えた、本当
は紫禁城でしょう。

非難する気持ちを超え、情けなくなるというのが、実感ですね。

■6.終わりと始まり

類似現象

【松蔭と竜馬はどこにいるか・・・】
今この国では、官僚独裁の末期、つまり徳川幕藩体制の末期のよう
な現象が次々に起こっています。

坂本竜馬も吉田松陰も、福沢諭吉も現れてはいない。江戸城を無血
で西郷隆盛に明け渡した豪胆な勝海舟もいない。指が異常に短い橋
本竜太郎氏は、急病で入院した・・・

【小粒】
彼の残したメッセージは<鈴木宗男氏の議員運営委員長辞任の決断
を尊敬する>、そして追いかける記者に対しエレベータの前での<
どこで? だれが? 何を? 電話をした? 私は聞いていないよ
>でした。短いメッセージは、人格の本質までを晒す。映像の怖さ
です。短文のコピー文化の支配。

雪印は<君、僕は、寝ていないんだ>でブランド価値を失った。
山一は<社員は悪くないんです>と号泣する頼りない社長で消えた。

言語より映像が、論理より感覚が支配する世界にわれわれは住んで
います。感性の女性化とも言えます。

300年の閉鎖経済の徳川時代は、黒船で終わった。黒船後の徳川
幕府は、腐敗と醜態を晒し、幕府の高級官僚は無力だった。まさに
清朝崩壊前の紫禁城の宦官だった。

【目標】
貴族化していた徳川政権が威嚇されて結んだ不平等条約、つまり実
質的な列強による植民地経済から、独立した近代国家に変わるため
に、明治政府は<富国強兵>という目標を設定した。

国民のエネルギーの方向を束ねるリーダシップがあった。リーダシ
ップの第一機能は、砂鉄を整列させる磁石のように、向かうべきゴ
ールと方向を示すことです。

■7.明治という青春

若い下級武士が、議論し、起(た)ち、多くは途上で死んだ。
幕藩制が終わって約10年後、その後の始まりには<明治>という
符牒がついた。この10年には意味がある。大きな体制が終わり、
次の体制へ移行するのに10年から12年。

そうすれば、次の時代は2010年か?

西欧へは、留学生を多数国費で送り、国立大学には外人講師を高額
の報酬で招聘した。授業は、英語、ドイツ語、フランス語だった。
そこから高級官僚が育った。西欧の制度と法を、そっくり輸入した。
この時期の東大も輝いていた。明治のすべては教育から始まる。

この国の90年代は、戦後教育における、矮小化した身分は安全な
教師の堕落の結果でもある。今の教育は民の予備校にしかないよう
に思えるのです。

富国強兵を作った原動力、行動規範は<和魂洋才>だった。工業を
作ったのは江戸時代の職人だった。国は、学校制度と教育で興った。

日本は、どんなに国内経済が苦しくとも、海外からの借金の返済を
優先した。ちょんまげを切った貧相な体躯に似合わない燕尾服を着
て、政府高官も西欧の安宿に泊まった。<青雲の志>があった。
武士の魂は、行動の美学に生きていた。

【精神】
資本主義の第一の精神は約束を守ること、どんなことよりも、<返
済の期限>を守ることです。ロシアや中南米の国家は、平気でデフ
ォルト(返済停止)をした。

こうした国が、尊敬を受け、再び信用を獲得し立派になることは、
今後もない。断言ができる。

【美学】
明治の政府は、世界の支配者たるアングロサクソンの欧米と対等な
立場を獲得するために、やせ我慢をした。やせ我慢こそ、行動の美
学です。こうした美学は、value(行動規範)に値する。目標を持ち
やせ我慢をしている人や国、企業には美がある。

美学の頂点が、どんなに苦しくとも海外からの借款を返済するとい
う精神です。司馬遼太郎は、明治政府とともにこれを描いた。私に
は、感動以外の言葉をもって、この明治の精神を伝えることのでき
る器用さはない。

お金がないときに返済することの苦しさは、味わったものしか知ら
ぬ。

【気品】
人間も、事業も、政治も心の気品と気高さだと考えるようになって
きた。そしていい加減なところだらけの人間に、気品を与える唯一
のものは、心と自尊です。

黒沢の名画『7人の侍』で、強盗が襲う村を守ることを約束する野
武士の親玉に扮するのは、志村喬です。流浪の野武士が、命を賭け
て村を守るのは、普通は対価を期待してのことです。

【白いおにぎり】
真っ暗な藁葺きの家に住み、貧困の極にある村人は対価として、
<白いおにぎり>を差し出す。志村喬はそれを見て、略奪され続け
た村が報酬として提供できるものはこれしかないことを一瞬で悟る。

リーダーたる志村喬は、集まった野武士に向かい、地の底からわき
あがる迫力と表情で言う。

<この飯、心して食うぞ>

心は、集まった7人の侍に伝わる。この一言をわれわれの心に伝え
るために、黒沢明は7人の侍の映画を作ったように思えます。

人の心のつながりは、美しい。
こうした精神がある武力、チームワークは、強い。

事業の精神、組織とリーダーとはこうしたものでしょう。日本経済
も、デーグル・ゼロ(温度ゼロ)からの再出発です。

米国最新流通業のリポートは次回に回します。

たった2回目のクール・ナレッジのツアーでも、リピーターを含め、
もうなんだかコミュニティでした。

昨年11月の参加者と今回の参加者間50名では、自主的にメーリ
ング・リストができ、活発な意見交換が行わています。小さな会で
すがcool-knowledge コミュニティと名づけました。

視覚障害がありながら、前回の<視察>ツアーに参加されたビルサ
ービス会社経営の藤中さんの言葉が忘れられません。

<初対面なのに皆さんと話していると、昔から知っている友人のよ
うに思えるんです>

こうした言葉を聞けば、どうしようもなくめろめろになります。

(以下有料版の部分です)

■8.自尊と志

私は、海外からの借金を1日の遅れもなく返した明治政府の志と、
官僚の精神を想います。<やせ我慢の精神>がなければ、日本は中
国のように植民地化され、西欧・米国の巨大資本への反発から、中
国のような共産主義国家になっていたかもしれない。

植民地化を救ったのは、明治の精神だった。どんなに苦労しても借
金を返すという国民の精神だった。日本人に誇りがあった。人間か
ら誇りをとったら何が残るか。

今、金融のトップに、借金過多の企業のトップに、そして官僚と政
治家に、この自尊があるか。私には、借金の棒引きを願う卑屈で卑
劣なな顔しか見えない。自尊の心はどこにある。

【悲惨】
ダイエーの破綻の責任を取るべき中内氏までが、責任から逃げ回る
のを見るのは悲惨で悲しい。

彼は流通業界の英雄ではなかったのか。貧困な国民生活を豊かにす
るという理想を掲げていたのはなかったか。

彼は、最後は、国民の預金を食った。そして、個人資産はすでに近
親者に贈与し、借り入れの連帯責任が及ばない対策を立てている。
戦後の事業家の、精神の末路がここにある。

何か、重要な精神の部分が腐食されていた。
だから、現在の経済危機がある。根源はこれです。

【比較すれば】
世界の最大企業になったウォル・マートの創始者、サム・ウォルト
ンは、$2万の年収の貧困な家庭にも、$4万の生活を提供するこ
とをミッションにして、それを実現した。政府からではない最高の
福祉を提供したのです。ウォルマートによって、米国生活のコスト
は下がった。

そのミッションは、現在も引き継がれ、ウォルマートの社員の共有
精神になっている。今回も、店舗訪問し、店舗内で精神を感じた。
ミッションは単純な言葉ほどいい。単純なことを、尖らせて徹底す
るのが大事業です。

ダイエーは日本の流通業を、ウォルマートは米国の流通業を代表す
る企業です。彼我の比較をすれば、日本と米国の90年代の経済成
長格差の根底が見える。

日本人は、バブル期に精神の重要な部分を犯された。
これは、悲惨に行き着くところまで行く。
経済原理とは、そうしたものです。

そして、その廃墟から、次世代が立ち上がる。
世代交代が必要なのです。これには10年かかる。

根底は心の反応

今、この国には過去の借金に喘いでいる人が多い。ほんのわずかな、
とるに足りぬ額を、少しずつでもいい。棒引きではなく、1000
年かかっても返済する意思です。

人間は精神が壊れたとき、外形は命を保っても、死ぬ。借りたもの
に対し、返済の姿勢を見せない人間は人間に値しない。

返済の意思がだれかに伝われば、人間の心の反応が起こる。心の反
応は、経済やマネーを超える。どんなことがあっても、卑怯で醜悪
な人間にならないことです。

そして戦後の擬制

明治の富国強兵の目標は、最後は陸軍官僚の無謀な戦争、第二次世
界大戦で完成した。そして、原爆を落とされ、戦後の占領時代が始
まった。

敗戦を終戦とすり替え、平和憲法の裏に、論理的根拠が微塵もない
軍隊を持つ、擬制の歴史が始まった。三島由紀夫は、戦後日本の精
神の堕落の根源をこの擬制に見る。『天人五衰』の最後の行を楷書
で書き終えると、市谷の自衛隊駐屯地に乗り込み、割腹自殺をした。

米国からの支配でリアルポリティクスを奪われた戦後日本は、最初
はトランジスタの商人になり、80年代はトヨタのJIT(Just in
Time)で、世界最高のプロセス改善型の製造を作った。

そして集まったマネーと肥大した信用の頂点で、金融に走ったとき、
アングロサクソンの金融技術に手も無くひねられた。その後は、
マネーを失った90年代。

90年代は、政府予算で、擬制のGDPの金額を維持し、つまると
ころ当然に、経済原理で、金融危機を起こしている。これにも10
年かかっている。

対比される精神

皆が貧困だった吉田首相の時代、時の大蔵大臣池田勇人と秘書官宮
澤喜一は、米国の、ラマダ・インのようなモーテルに泊まる予算し
かなかった。

宮澤喜一は回想して言う。<朝食のコーヒー一杯を、考えながら頼んだ>
大蔵大臣が、ですよ。

伸びる時期の人間と国家に共通の、行動スタイルですね。

そして、今の外務官僚。国の予算は年30兆円も赤字なのに、豪華
な大使公邸で高価なワインと山海の珍味を集めた、外交的には無意
味なパーティーを開き、公費を私費流用しても平気です。国の予算
が黒字ならそれも許されるでしょう。予算は40%も足りないので
す。

民も官も政治も、この国のエスタブリッシュメントには、深い精神
の堕落がある。そのため、当然のように没落の10年が続く。経済
を支えるのは精神です。

9.21世紀の新しい開国は、
      情報化されたグローバルロジスティクス


今後は、明治以降の本格的な第二次開放のグローバル&インターネ
ット時代です。

80年代までの日本経済は、製品輸出と、原材料輸入には開放経済
だった。そして世界の輸出大国になった。360円から3倍の円高
になって、米国経済に対する日本経済の比重も3倍以上になった。

1億2700万人(2%人口)で、世界のGDPの13%を占める。
一人当たりGDPでは、60億人の世界の平均の7倍です。

二重構造

ところが、日本経済には以下の格差、二重構造があるのです。

(1)開放企業群:
輸出企業の労働者は、6000万人雇用の10%です。

(2)閉鎖企業群:
残り90%は、国内での売買での経済ですね。金融、保険、建設、
土木、薬品、流通、物流、運輸、医療、サービス、そして行政は、
国内産業です。

【見えない消費税】
これらは、従来、国際競争の枠外にあった。業界と参入規制、官僚
の行政指導があって、要は金融や保険と同じ護送船団だった。そし
て、コストが高かった。価格の高さの分は、消費者が負担した<見
えない消費税>だったのです。

▼開国

これが、開国される。グローバル経済とインターネット、情報化ロ
ジスティクス(国際サプライチェーン)による、徳川幕府の鎖国体
制を解くような、第二次開放になります。

このアナロジーで将来を考えると、くっきりイメージ化ができます
ね。

【中国】
その手始めとして、中国の生産基地化がある。これは、従来は国内
での閉鎖型産業だったあらゆる分野に、開放経済の衝撃とその裏で
のチャンスをもたらします。

中国の産業といえども、事務所の処理では、エクセルとワード、デ
ータベース、インターネット、メールを使っています。東南アジア
も同様です。この面で、むしろ日本企業より進んでいます。

理由は、幹部は、米国MBAの留学組だからです。本社エリートは、
英語とコンピュータにスキルフルです。

日本企業は、トップのコンピュータ音痴が、かなりの部分で経済の
停滞の原因になっています。コンピュータ室長でなくCIO(Chief I
nformation Officer)がいないことも致命的です。

90年代から、特に95年以降の産業は、情報ネットワークで変容
しているのです。

日本語は1%

コンピュータネットワークと情報化ロジスティクスで結べば、輸出
入の壁、距離の壁は無きに等しくなる。英語の世界です。日本語で
はない。

日本語は、インターネットの世界ではたった1%です。インターネ
ットで1%の世界に今後のマネーは集まらない。ここが、遅れに遅
れています。

重要:機能のリンク

もう、資源は土地、工場設備、店舗、トラックではないのです。

必要機能の、ネットワーク連結です。ここが、まだ理解されていま
せんね。コンピュータは業務のプロセス分解をして、遠隔地の全機
能をネットワークで統合する。

(1)工場を持たなくても、EMSの工場機能との連結があればいい。

(2)倉庫を持たなくでも、WMS(Warehouse Management System)
の倉庫機能との連結があればいい。

(3)トラックを持たなくても、TMS(Transportation Managem
ent System)と結び、GPS(Global Positioning System)を搭載
する輸送機能との連結があればいい。

(4)店舗を持たなくても、ERP(統合業務システム)とCRM
の店舗機能との連結があればいい。

設備や商品の具体物はどこにあっても、いいのです。
これが、ネットワークの本質ですね。

Dellモデル

設備を全く持たなくても、パーソナルコンピュータでナンバーワン
のDellのように、

(1)EMS (Electronics Manufacturing System)
(2)情報化ロジスティクスを含むSCM(Supply Chain Management)
(3)販売のCRM(Customer Relationship Management)があればい
いのです。

数年で、インターネットの世界は、英語と中国語の世界になる。

インターネットでの中心が、どこであるか、これが今後の産業で機
関的に大切なことです。今後、コンピュータを使わない仕事はない。
工業国の全員が、ツールとしてコンピュータを使うことが確定で
す。

いま、実物経済に先行するマネーで、この世界経済と企業による商
品製造プロセスと流通の相互リンクの構造へ向かった動きが起こり
つつあるのではないか? そう思えるのです。

課題

わが国は、
(1)90%の国内産業の新しい開国、
(2)中国と、その他の世界へのコンピュータネットワークで相互
リンク、
(3)<情報化された国際ロジスティクス網>のインフラ構築、に
向かうべきです。

キーは、情報化されたロジスティクス網、言い換えれば、本格的な
eMP(e Market Place)です。

eMPは今は、技術でもインフラでも萌芽の時期です。

【5機能】
eMPが、以下の5つの技術要素、つまり、

(1)3rd Party Logistics等の情報化物流(ロジスティクス)網
(2)ASP(Application Service Provider)機能
(3)商取引機能
(4)生産と流通の全体最適化機能(CPFRを含む)
(5)エスクローを含む金融決済機能、と結ぶことで、世界企業が
   BとBで相互リンクされます。

これは、激烈な変化をもたらす。真の開放経済、開放企業ですね。
SCMやCRMも、eMPに包含されます。コアコンピタンスの、相互
アウトソースのネットワーク化が、その全体像です。

私の今後のビジネスは、このトータルeMPの推進が中核とします。

eMPに関しては00年11月の論考ですが↓
http://www.cool-knowledge.com/1117emp-1.html

これができなければ、グローバル化を図る米国・西欧資本の植民地
になる可能性が高い。つまり、明治の開国の時期と同じですね。

日本経済が、上記5項からなるトータルeMPの方向を見出さない間は、
混乱と腐敗、没落が続くでしょう。方向への合意に、これから
10年でしょうか。

心ある人は、準備は今から進めるべきでしょう。
ネットワークの精神は、コミュニティの気品と協働です。

【まとめ】
まとめれば、技術は、

(1)機能の相互補完、
(2)生産と流通プロセスの固まりの作業フロー的な分解による、
最適な再統合、つまりコアコンピタンスの相互アウトソースです。
これで単純になった。

【稚拙なこと】
<構造改革>は、構造改革の先にあるものを見なければ成就しませ
ん。
現在の日本産業の混乱の原因は、構造改革の痛みの先を見ていない
ことです。改革は手段です。改革を通じ実現すべきものが果実であ
りゴールでしょう?

松陰も竜馬ももうすぐ現れます。
時代は人物を作る。
確信しています。

10.砂漠の上のMirage

日本の不況からラスベガスを見れば、別世界です。

スティーブ・ウィンはミラージュ以降、
・ディズニーをモチーフにしたトレジャーアイランド(2900室)
・ギリシア神殿がテーマのシーザーズパレス
・そして、今回のセミナーに使った、ミラノ郊外のコモ湖のリゾー
トホテルを模したベラジオ(1998年オープン:3000室)を
作る。

総投資額は2000億円、1室あたり6000万円に達する異常な
額です。スタンダードルームでもバスルームは10畳以上の広さが
あり、シャワー室はガラス張りです。白とゴールドの壁の浴室で、
バスタブに満たしたお湯にゆっくり身体をなじませ、天井を見つめ
れば、あぁここには、豊かなバスルームの生活があると分かる。

1989年以降、ラスベガスは、カジノとショーとコンベンション
の街から、テーマホテル、メガリゾート、ファミリーリゾートの街
に変容し、人口も2倍になる。

NYに住む長女をラスベガスに呼んでいたこともあって、少しの贅
沢を許してもらいベラジオに宿泊しました。昼間は原稿を書くため
部屋から追い出し、夜は一緒に食事です。二人だけで食事するのは
初めての経験で、ぎこちなく奇妙でしたね。

昼間のラスベガス大通りの散歩で、ほとんどのホテルを巡ったよう
です。一旦ホテルに入ると方向を見失い、出るのが大変だと言って
いた。

ラスベガスのホテルは、意図的に迷路を作り、迷わせます。<時間
消費>が、レジャーの本質だからです。ショートタイムは、モダニ
ズムの考え方です。仕事はモダニズムで、レジャーは時間消費のポ
ストモダニズム。時間をたっぷり使うことが嬉しいのがレジャーや
エンターテインメントですね。

長女は<ラスベガスは大人の巨大なディスニーランド>と定義して
NYに帰りました。また呼んで、と言っていた。ラスベガスに来る
とリピーターになる。私も最初、連続して3回くらい行った。

ベラジオの前にはコモ湖を模した巨大な人口湖があり、いろんな音
楽にあわせて15分ごとに噴水が踊るんです。どういうわけか噴水
の踊りを見ていて飽きない。風下になるとしぶきがかかります。

映画のMGMを作ったカーク・カーコリアンは、1993年、世界
最大の5005室の、緑色の巨大ホテルMGMグランドを建てる。

ホテル内には、タイソンなどがボクシングの試合をやるMGMアリ
ーナ、そして大コンベンションホールがあります。ひとつのホテル
の中ですが、コンベンションホールまでカジノと商店街を通って2
0分の散策です。危うく会議に遅れそうになったことは何回もあり
ます。

ホテル内をモノレールが走るのですから異常です。コンセプトはci
ty of entertainment 、ひとつのホテルがエンターテインメントの
街です。カーコリアンはホテルではなく街を作ったんです。

こうした、巨きな構想力は、まだ日本人にはありませんね。
精密な箱庭の国が日本だと感じるのは、ラスベガスには常軌を逸脱
し、溢れる非日常があるからでしょう。すべてが過剰で、ギラギラ
です。

90年代の人口増加率は、年率7%です。ひとつのホテルが建てば、
従業員が数千人、1万人は増え、数千戸の住宅が郊外にできる。
郊外には全米のチェーンの最新店ができる。全米でも最も新しい実
験店が集まっています。それで流通視察ツアーの場所に選んだので
す。

11.自由な事業の絵

ラスベガスからロスアンジェルスに向かって40マイル(64Km)
に、ファッションアウトレットモールがあります。
http://www.vegas.com/shopping/fashionoutlet.html?f=m0sh&t=fasouttxt

ここは、ポストモダン型のモールで、いい店舗が入っている。建物
は極めてローコストで、しかし、豪華でちょうどハリウッドの大道
具のようなモールです。

ラスベガスの中心部から、車で約30分。
走れば、周囲には、黄土色の岩だらけの砂漠が広がる。

視界の遠くには、雪を頂く山脈が見えます。雨のある日、知人の車
で、ラスベガスからロスアンジェルス方向へ向かった。シーツのよ
うな激しい雨と、風、そして稲妻。大陸の自然は苛烈です。

遠くの山に落ちる稲妻が見えた。稲妻に囲まれる感じです。

今回のツアーでも同じところを通った。嵐ではなかったのですが、
荒涼とした砂漠と岩山の風景は参加者の胸に焼きついたようです。
何も作物は生まれない。アジアの豊穣な土壌とは違う。アジアの人
口は本当は豊かさの証ではないかとすら思えるのです。

私は、以下のように話した。

こうした景色を見て、バグジーは、フラミンゴホテルを構想した。
無から有どころか、その後、異様に発展したラスベガスの街と事業
と雇用とが生まれた。今も人を惹きつける。今後も惹きつける。

今、日本は、外形こそ保っているが、財務と金融の中身はこの砂漠
のような感じです。私はいつもそう感じつつ、メールマガジンを書
いています。

ここには、色んな事業の絵が描ける。
それが事業開発と、需要開発です。
日本が人とマネーを惹きつけることができるかどうか。

<青雲の志>に奮い立って欲しいものです。
方法はある。

問題は、自分が心の底からやりたいことを見つけることです。

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