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:アジアのために 02年4月1日 中国との関係は、21世紀の日本の命運を 制する トランザクションの関係から、リレーションへ ビジョンを共有化する関係が必要になっている |
こんにちは、吉田繁治です。3月28日夜、シンセン、上海の研究 ・視察から帰りました。自宅側の、出発前は蕾(つぼみ)だった桜 は、豪華に開花。毎年の繰り返しではありますが、日本のこの季節 には特別な感慨を覚えます。 2年半前に脳梗塞の発作を起こし、その後は環境と自己認識力、言 語を回復できなかった母は、帰国の翌3月29日正午、最期は点滴 での内出血、そして鶏がらのように肉を削がれた身体になって、満 開の桜とともに、生涯を閉じた。 カサブランカの花で、棺を埋めた。 焼かれた骨は、小さく、脆かった。 この母に生を受けたことを感じた。 抱えた骨壷は、軽く、温かかった。 中国出張最終日の3月27日の夜、上海の中心部にある花園酒店 (ホテルオークラ)の、上海を見渡せる最上階のスカイラウンジから、 暗い空と、ネオンが光る街を見たとき、突然私は言葉を発するこ とができなくなった。 ふと、病床で意識のない母を想っていた。距離を超えた感応(コレ スポンデンス)というものは、確かにある。本稿は、私的には追悼 号です。母は若い頃、満州にいた。77年の生涯でした。どんなこ とがあっても赦してくれていた父母がいなくなった。生前に、感謝 の言葉を言いたかった。時間は人を俟(ま)たない。 メールマガジンの発行は、次々に起こるこうした突発事件との戦い でもあります。さぁ、思考の世界へ。 <春季中国リポート(1):アジアのために> 亡き母を追慕しつつ・・・ 【目次】 1.アジアのために 2.トランザクションとリレーション 3.混沌の中の「秩序」の、基本構造を解く 4.自己主張の強さ 5.至る所で、喧騒、密集、沸騰 6.中国の中華料理 7.コネクションの原理 8.ビザの件 9.寄稿と中国ツアーのご案内 ■1.アジアのために ▼堕ちる国に睡蓮が咲くのはいつ? 政局は辻元、加藤両氏のスキャンダル騒動。発覚の背景は、見え透 いています。政治的事件には狙いがある。「マスコミ上の正義派」 を同じ穴のムジナであることとして示すことで、利益を得るグルー プがある。 鈴木宗男氏はスキャンダルの暴露による恫喝の手法を使う。それで 十分でしょう。愛想がつき、解く気はありません。以前は隠れてい た事態が、次々に白日の下に晒(さら)されるということのみが新 しい。どこまで堕ちるのか。政治は見下げられる「賎業」になった。 株価で言えば、悪材料が出尽くす「あく抜け」のプロセスです。歴 史を見れば、新しい時代が訪れるとき、旧勢力は腐臭の限りを放つ。 腐臭の沼の腐敗を栄養に、新しい睡蓮(すいれん)が芽吹き、あ る日、パカッと音を立て開く。 過去は皆が見逃してきた腐敗や不正が、隅々まで明らかになり告発 される。こうして、21世紀はいい世の中になる。 ▼アジアのために 今回は、昨年の12月に続く<春季中国リポート>です。 副題は<アジアのために> シンセン、上海で働く金融、電子、住関連の日本人ビジネスマン、 および日本企業との合弁企業で働く中国人技術者を含めお会いし、 食事をとりながら、ゆったりとした気分で情報交換をしました。 エレクトロニクス関連の日中合弁企業で働く、日本人の幹部ビジネ スマンは、会話の途中で言った。 <どういうビジョンを、どういう方法で、現場にいる中国人と共有 化するか、そこが私の仕事です。シンガポールでの仕事も同じだっ た。中国ではなおさらです。私は「アジアのために」と自らに言い 聞かせて来たんですが、それが中国人スタッフに通じているかどう か・・・> 彼は、アジアビジネスを開拓して来た。 【ビジョンとの距離】 仕事はビジョンそのものとは言っても、一般には、距離のある言葉 です。しかし、異なる文化(行動様式と価値観)と歴史を持つ人と 協働作業を行う際、目指すビジョンの共有化の重要性を彼は感じて いる。その深刻さが言わせた言葉であると思った。 彼は言った。 <シンガポールで現地スタッフを自宅に招いて食事をしていると、 何かの拍子に「自分のおじいさん、おばあさんは日本軍に殺された 」という言葉が出るときがありました。戦争で仕方がなかったとは 思うのですが、私は平常心で聞くことはできませんでした> 日本人も大勢が戦死している。長崎、広島では原爆を受け、非戦闘 員が殺された。しかし、戦後教育のせいか米国人から殺されたとい う意識は少ない感じを受けます。 しかし、中国を含むアジアでは、日本人から殺戮を受けたという意 識がある。この違いはどこから生じるのか。 【共通言語】 異なる文化の中では、価値観(value:行動様式)、ビジョン(長期 目標)の暗黙の共有化ができない。価値観とビジョン、及び労働の 評価方法を明確に文書で示す必要がある。世界にクリアに通じる、 形式論理学や、数学的な言葉で示す必要がある。 更に私は、彼が不図(ふと)漏らした「アジアのため」という言葉 に感応(コレスポンディング)した。 アジアにいる日本人ビジネスマンの多くが、「アジアのため」にと いう概念に至れば、海外からの日本人の評価も変わるかもしれない。 今後の日本人のアジアビジネスを覆うキーがこれでしょう。 世界の人々の民度は上がっている。インターネットはそれを加速す る。 中国を含め、世界の都市の外観は、今、驚くほど似ています。しか し、何を大切にするかという価値観と、行動のスタイルを決める文 化、及び産業のインフラストラクチャー、政治、思想は異なる。 ▼つながり アジアは日本経済の豊かや日本人の優秀さは認め、憧れる。しかし 一般には、日本人を尊敬していない。価値観の共有もない。西欧や 米国に対する態度とは違いがあります。これでは、アジアビジネス の長期的な成功は覚束ない。 戦前戦後の歴史は、アジアとは常にぎこちない、相互不信の関係だ った。 ビジネスは経済的な取引(transaction)である以前に、人と人との つながり(relationship)です。組織と協働作業は、そうした性格 を持つ。人間は、経済的な機械ではない。 つながりを「結んで」、方向を示すのがリーダシップです。行動の 規則を示し、優先すべき価値を示すのがvalueです。海外ビジネスで はこれが必要になる。統制とマネジメントの軸のみでは不足です。 アジアの地に立つと、普段は忘れている大切なことを想起させられ ます。米国や西欧に行ったときとは明らかに違う。アジアと日本の 文化的、及び人間としての相互関係。 日本人と企業は、アジアとはトランザクションは持っている。リレ ーションシップに至れるか。ここが、21世紀の日本経済のキーで しょう。それくらい、21世紀の中国は日本の将来にとって重い。 ▼統制 組織の、統制と経済的マネジメントでは、服従は得られるが尊敬は 勝ち得えることはできない。ところが、他の多くの日本人トップは 権力と統制で得られる服従を尊敬と取っている所があるのではない か。価値観の軸への配慮が薄い。 更に言えば、今、顧客に尊敬される仕事をするという視点が欠けて いるのではないか。顧客も従業員も、同じところを見て、それで評 価する。しかし、これは結論めいたことです。急ぎますまい。 ■2.トランザクションとリレーション 日本からの技術移転を受ければ、その技術を使って品質向上とコス トダウンを図り、産業を中国化する。それが中国政府と中国企業の 共通の当然の狙いです。 日本企業は、技術移転を代償に、現地の安い土地、設備、労働を得 る。マネーと商品、労働の交換の世界です。 これが経済学的な視点です。トランザクション(取引)の領域。こ のトランザクションの軸の有効性は、否定できない。 ここで、もうひとつの軸が必要ではないのか。やる気の軸です。つ まりリーダシップ、ビジョン、共有価値観(value)の軸。言わば、 リレーション(関係性)の軸です。 トランザクションは、労働とマネーの等価交換か、搾取に帰結しま す。リレーションは等価交換を超えた、会社と従業員、会社と顧客 との関係性の領域です。 海外ビジネスは、既に、初期の単純な輸出入ではなくリレーション の領域の問題に直面している。この認識が根底に必要です。技術は、 その後に来る従属的なものです。世界の中心は人間です。 ▼問題 どこに問題があるのか。 合弁企業で働く、優秀な中国人技術者は言った。 <日本人の会社には、上に何段階もの階層がある。それが障害にな って、中国人の現場労働者のやる気を削いでいる。都合の悪いこと が起こると、中国人現場の問題にされることが多い。幹部の意思決 定が遅い。現場の裁量権は狭い。その点が、一般的に言って欧米企 業と違います> 日本人の合弁企業の幹部がいる前で、彼は<日本の会社は一般に好 きになれない。西欧、米国の会社がいい>と言った。 合弁企業が与える報酬(トランザクション)は現地企業より2倍か ら3倍は高い。経済の領域である報酬の問題ではない。根底は、現 場のやる気の軸の問題、つまり労働の喜びでしょう。 同じ合弁企業で働く日本人主任は言った。 <社命で中国に来て1年。うまく行かなければ日本に帰ればいいと いう気持ちだった。今は、中国人と働くことの意味について話すこ とがあります。まだ、自分の目標は見つけていません> 彼は30代。他にも日本の多くの30代が、納得できる自己目標を 確立できていない。国内、国外に限らず他の日本企業でも、共通に 感じます。40代、50代になると、あきらめて順応する。 長年、電子ディバイスの開発を行なってきた日本人技術者は言った。 <部分の最適、高品質、多機能を追求し仕事をしてきました。それ に問題があるとは考えなかった> こうしたことは、果たして問題であるのか。現実は、こうしたこと の混合ではないか。私に回答はない。しかし思考する。 思考のプロセスを文字に定着させ、表現(express)として提示でき るだけです。アジアのために・・・ ■3.混沌の中の「秩序」の、基本構造を解く 中国は、自由貿易を奉じるWTO加盟(01年12月)を契機に、 急速に、西洋風の近代法制度の整備を図っています。沢山の法律が できている。浸透には時間がかかる。法律間の矛盾もある。運用の 混沌がある。 長期間をかけ法や制度が整備され、(少なくとも表面上は)整然と 運用されている西欧、米国、日本とは違います。 ここで、巨大な混沌と言える中国の中にある「秩序」とは何か、こ れを探ります。 ▼省の「統治」権 13億人の人口と広大な国土を持つ中国では、各省(全部で台湾を 含む33)の地方政府や大都市(北京、上海等)が直接に統治する。 (注)台湾は、中国の地図では、台湾省として表示されています。 国家統治の要である「税」では、地方政府が税を決め徴収し、その 中から、中央政府分を上納するという制度です。33の地方都市国 家の連合体が、中国です。 加えて行政による「統治」ということのニュアンスが、西欧・米国 ・日本とは異なる。上からの統制・統治であり、政府の役人、公務 員、特に公安は、民の上に立つ。 〔選挙>政治家>議会>行政〕という民主政体とは異なる。日本で は国権の最高機関は国会であるという憲法上の既定があります。 中国では国権の最高機関は、選挙を経ない中国共産党です。 民主主義を奉じる国家として最大人口である米国の約5倍の人口を 持つ国で、西洋的な選挙制度、統一国家の代議制度が可能かどうか。 おそらく困難でしょう。王国たる省の連合体、つまりUnited Sta tesが中国。 ▼法の運用では、現場で裁量的な運用が行われている 省や都市が異なれば、法、制度、税が重要な部分で微妙に異なる。 しかも実際の運用は地方政府や、公安の裁量で行う。こうした二重 のバイアスがあるため、法の文言を読んで解釈しただけでは、実際 の運用がどうなっているか分からない。 ▼構造の図式 その構造を、実態的な運用権限で図式化すれば、 〔担当の実情>地方政府窓口>各地方政府成文法>中央政府成文法〕 この上に、全権を持つ中国共産党がある。 特に新法では、地方政府の解釈と運用、および行政や公安の窓口の 実際の運用は、「任意で裁量的」です。ある担当はYESと言い、 別の窓口はNOということが頻発する。 過去の慣習的方法と新法が異なるときは、実際にどうなるか見当が つかない。現場の役人との折衝で、決まります。決まったことの理 由なき変更も日常的です。 ▼情:実情:情実の原理 「情」という言葉があります。個々に異なる「現場の事情、実情」 で成文法の運用と解釈が変わる。こうしたことが多い。 実情はひっくり返えせば「情実」です。情には「情実」も厳然とあ る。情実が、担当または実権者の、反社会的な自己利益につながっ たときが賄賂です。 賄賂は、中国では金額によっては死刑になる重罪です。しかし、四 角四面の法ではなく、「実情」を勘案した上での法の運用の裁量は、 政府と巨大な中国社会を運営し、皆がスムーズに生きて行くため の、潤滑油的な機能を今は果たしているのではないか。そう思える のです。 賄賂がばれるのは、正義心と言うより同僚や部下の嫉妬からです。 ある人が多額の賄賂をもらう。それを告発的に内通する。そこから ばれる。 ▼行政の無謬の原則 行政サイドは自分の間違いを認めない。行政は無謬であるという態 度を捨てれば、13億人の統治は、混乱と混沌に陥るでしょう。そ うなれば武力での弾圧、警察国家、秘密警察しかない。 行政は常に無謬であり、政府や行政の発表は常に正しい。 そうした態度をとり続ける。政府の発表では内情は見えない。 民主政体とは異なる中国は、「国王と賢人による統治」の伝統を持 ちます。賢人は民のことを想い、無謬である。その態度が、行政に に見えます。 軍や公安は、モスグリーンと赤の軍服を着た中国社会のエリートで す。鋭いまなざしで、あたりを睥睨(へいげい)し、混沌に陥(お ちい)りがちな秩序を維持する。 過去は、血縁の家族・親族と、顔見知りの村落共同体が1単位とな って、秩序維持装置の機能を果たしていた。集合の大都市では、そ れはない。 ■4.自己主張の強さ 中国人は、トラブルが起こると大声で自己主張をする。トラブルの 時のみではない。このケースでの自分の考えと立場は***だ、自 分の非はないと「延々と」、時間を費やし説明を加える。原則論、 自己無謬論を述べ続ける。 自己主張は、大陸的な特徴とも言えますね。相互侵略や弾圧の歴史 でもある大陸では、自己主張がなければ消えてしまうのです。 ▼延々と 街のあちこちで、こうした風景に遭遇します。一種の「アカウンタ ビリティ」です。説明の時間もマネーであるという、先進国ビジネ スマンの共通時間感覚はない。なにせ、人件費が日本の20分の1 から30分の1です。 時間と人を費やしても、それがお互いの損であるという感覚はない。 人と時間が、安価に溢れている。24時間×13億人。日本の10 倍の総人時がある。日本では一人でやることを、数人かかりでや ることが多い。 意見を求めたときは、はっきりと、自分の意見と主張を述べる人が 多い。(当然ですが政治関係では口ごもる) 日本人にある謙遜と協調の美徳とは、だいぶ違います。 【待ち時間】 ホテルのフロントを含め、いろんなところで、待ち時間が長い。 待ち時間がマネーの損失であるという感覚は、薄い。 細分化された分業の一部が、自分の仕事の範囲であるという意識が 見えます。この点では、新入社員であっても、会社全体の未来を考 える風潮のある日本とは、異なります。 【全体を考え得る日本企業の現場ワーカー】 日本人は、行列ができると、担当者は処理を急ぐ。単位時間内にど んなに処理量を上げても、本人の給与に直接は関係がないのですが、 自主的判断で待たせることに罪悪感を感じる共通文化(価値観) がある。 これは、日本企業の、根底での強さにつながるものでしょう。 【部分志向の中国と米国】 一方、中国では(米国も同様ですが)、行列ができても窓口は、処 理を急がない。長い列ができるのは自分には無関係なことだとして、 普通のペースで仕事をやります。 分業のワーカー意識です。マネジャーからの指示があれば急ぎます が、自主的なものではないのです。 こうしたことが、現場マネジメントの方法の違いになる。私は、日 本に見ることができる現場の自主的な判断を評価します。 高いモラールの共通意識を、「判断のための情報」を与えることで 方法的に活かすこと、つまり現場に情報を与え<自律>させること、 これが21世紀企業の、成長のキーですね。 今の日本企業は、逆に、高いモラールを持った現場の自律能力を、 本部からの、粗雑で場当たりの統制で殺し、現場の士気を低下させ ているのではないか。これが90年代の、日本企業の停滞の主原因 でしょう。 あらゆる企業で、組織障害が起こっています。米国風のトップやマ ネジャーがすべてを指示するマネジメントではないのです。現場に 任されたことが多い。処理の方法とルールが決まっていず、現場の 自主的な工夫を必要とするのが日本の職場です。 つまり中途半端で任意的な経営。今、本部が現場を理解できない。 ということは、会社の現場のみならず商品の差異的な価値を欲する 顧客をも理解していない。そして価格問題にすべてを集約する。自 滅の行為に見えます。 ■5.至る所で、喧騒、密集、沸騰 ▼中国は普請中 街中が自己主張で沸騰している。そうしたエネルギーを中国では肌 に感じます。空気は排気ガスで汚れている。埃はすごい。道路はで こぼこ。しかし、人と街にエネルギーがある。至る所、高層ビルが 建ち、更に巨大のビルの建造が続く。街は、工事現場です。ハイパ ーリアルな空間があります。 シンセンの中心部には、一辺が300メートルはあるかと思われる 四角の穴が開いていた。巨大ビルの建造現場です。 杭打ちの高い騒音が聞こえる。クレーンやブルトーザーが動き回る。 しばらく見ていると、こんな工事の仕方で、大丈夫なんだろうか と思える無秩序がある。作業員が多い。数倍はいます。整然として いて静かになった日本の工事現場とは、違う。 【生きる】 現場を見下ろせる歩道橋では、両手両足が不自由な障害者が、上半 身裸で、地面をはいずり回っていた。なんだろうと見ると、缶にコ インを入れ、それを激しく振ってジャラジャラ音を立てて、お金を 無心していた。数十メートルの距離で、地面を這う2人を見た。 群集は無視し通り過ぎる。すごいエネルギーと鋭い目つきで、地面 をのたうち回わる身障者の裸の姿に、かすかなショックを受けたの です。 日本も昭和30年代、至る所が普請中だった。 ▼自己主張 米国も自己主張の国ですが、中国の沿岸部に比べれば人口密度が低 い。人と人の間に距離がある。これが、米国の自己と他者を区分け した上での秩序を作っている。 【和】 狭い島国に密集して住む日本人は、「和」す。和を持って生きる。 その和は、自己と差異を押さえる「協調」となって、個の差異性を 殺す。差異性を保持しつつ生きることは、この国では難しい。 【沸騰】 中国は13億人が住む。大陸で広大でしかも人口密度が米国の5倍 は高い。沿岸の都市部は、東京の数倍もの密集です。そして強い自 己主張。まさに沸騰です。中国の90年代は、沸騰を生んだ。 周辺人口を含めれば3000万人の上海の中心部の歩道を歩くと、 溢れるように集まった人が、どんどんぶつかってくる。歩く速度は、 皆速い。うかうかしていると、人の列でどこかに連れて行かれる ような感覚です。 【ぶつかり合う】 急速な自動車化で、シンセンも上海も至る所で、東京を超える車の 渋滞です。車を縫うように、大量の自転車が速度感を持って走る。 車のクラクションは鳴らし放題です。車の接触は、まるで気にしな い。気にしていては走れない。人を轢いても(平気ではないが)平 気といった雰囲気すら感じます。 中国沿岸部には世界が経験したことのない「喧騒と密集」がありま す。静かにしていれば、埋没する。中国人の話すときの「声音」の 高さには、理由がある。 日本の巨大都市の、高度成長期、昭和30年代を彷彿(ほうふつ) とさせます。新宿副都心のような高層ビルのみは、現代です。別次 元の空間と、マネー感覚、ブランド商品がある。 【同じであることの安心とエネルギー】 日本人は普通、どんなに密集していても、他人の集団の中では静か です。しかし、同じ価値観を持つことが確認された仲間内では急に 元気になって、声高に話す。「同じである」ことの確認は、日本人 を元気づける 90年代に、日本人の元気がなくなった背景には、経済的価値が同 質性ではなく、「差異性」に移行してしまったことがあるのではな いか。世界も日本も皆同じだと感じることができれば、日本人の元 気は回復するでしょう。 ■6.中国の中華料理 中国の中華料理は、国際化している香港、日本化した日本の中華料 理とは、料理名は同じでも、味が相当に異なります。 【強い味】 一言で表現すれば「強い味」です。旅行中、どこに味の強さがある のか、考えた。素材の味が、それぞれに強い。調味料は、その素材 の個性の味を引き立てるためのもののような感じです。 【和の食】 比較すると和食は一般に味が微妙で弱い。「だし」から生じるコク と醤油味に、素材が「和す」感じです。飛躍して言えば、それぞれ の素材の持ち味はあるものの、素材が「和(わ)す」ことが、和食 ではないかと思った。 (注)和は、中国語では<and>の意味を持ちます。つまり異質なも のを加える。世界の異質なものを加え、和の原理で統一を取れば、 日本でしょうか。 【独特の取り入れ方】 日本の中華料理も、こうした和す食の系列です。日本人は食に限ら ず世界のものを、雑多に取り入れる。しかし、取り入れ方は独特で 日本風です。和食風中華を創造する。飛躍がありますが、これが日 本文化の特徴ではないかと思った。 中国語そのものである漢文を日本に取り入れる方法も、中国語の勉 強ではなく、漢文の返り点や訓読を使った日本語化でした。漢文は 読めても中国語はできない。高校生の時、漢文を習った。奇妙に思 ったのです。 【中国の中華料理】 中国の中華料理は、各素材の味を、和すのではなく、より強めるた めの調理法をとっているのではないか。そう思いつつ、食べた。こ のことは、中国社会と文化を解く鍵にも通じるのではないかと考え たのです。 各国の料理は優れて文化を表す。文化は、書物や芸術だけではない。 生活や仕事、ワークスタイルのすべてを覆う。 ■7.コネクションの原理 中国ビジネスでは省政府・公安の幹部とのコネクションが重要にな る ▼コネクション 法や制度に対し、コネクションが優先することが多い。これが賄賂 の温床になる。中央政府、地方政府は、賄賂や不正には死刑を含む 厳罰で処します。しかし、現在も、コネクションをもっとも優先す る社会であることは現実です。 現代中国は、マーケットが成功と失敗を決める機能を果たす市場主 義を奉じる国ではない。このことを、片時も忘れないことです。 【順位】 優先順は、〔コネクション>法や制度>市場〕です。成文法、実定 法や制度の統一的な解釈で運用を行う西欧・米国・日本とは、事情 が違います。 仮に中国で選挙制度ができても、この〔コネクション>法や制度> 市場〕は変わることがないのではないか。変わるとすれば百年。固 有文化に根ざすものが変わるには、時間がかかる。日本人は和魂洋 才で層を分け妥協した。中華思想と洋才は、今後妥協できるのか。 【方法】 日本人が中国でビジネスを行うときは、香港筋または中国筋の有力 なエージェントを使う必要がある。それがないと、省政府や行政の 窓口から、無理難題を押し付けられることがあるようですね。 中国は、まだ近代国家風の実定法、成文法主義、および市場経済で はない。かと言って人治主義オンリーではない。両者の、微妙な混 合がある。 ▼人治主義の内容 人治主義の内容は、政治領域のものだけではなく、社会生活と経済、 つまり法と制度の運用として理解すべきでしょう。実情、情実、 人治、そしてコネクション、これを理解しなければならない。 米国風の自由主義、実定法主義、市場経済も一つの方法です。それ がすべてとすれば、米国が掲げる単純化された「正義」になる。米 国風正義に反するものは邪悪(evil)です。 米国風の自由主義、実定法、市場経済に反するものを認めないとい う米国風の態度は、現代中国では通じない。違いを、異なる文化と 価値観として、受け入れる必要がある。 (WTCのテロリズムを許容することのある国家ですら正当な主権 を持つ他国を、邪悪の国と呼ぶことはできない。) 米国は時として、ヒステリックに単純になることがある。 アジアの価値観を、世界に説明すべき国は、日本でしょう。 しかし日本は、世界で独自のポジションと尊敬を獲得しているとは 言えない。優秀ではあるがエコノミックアニマルと見られている。 フランス人はや英国人のような、論理性もない。 ▼リスクと利益は同じ意味 シンセンにある日本の大手都市銀行を訪問しました。担当者と1時 間くらい話をした。 <中国でもっとも困るのは、法や制度はあっても、その通りに運用 されるかどうか、分からないということです。その場その場で、ま たは担当によって、変わることが多い。これはリスクです。しかし、 こうしたリスクがあることは、別の角度からは、利益の機会があ ることでもあります> そして、彼は付け加えた。 <中国でいろんなことが整備されたときは、ビジネスの機会と魅力 が消えたときでもあるでしょうね> リスクは利益の別名です。リスクに尻込みするか、慎重に調査・研 究した上で飛んで、利益を掴むか、ここが分岐点になる。 中国が分かりやすく、制度や法が整備されれば、その分だけ皆に機 会が開かれます。他方、利益のチャンスは安心できることに比例し て小さくなる。 ■8.ビザの件での事例 香港への入国にはビザは要りません。米国への入国と同じようにパ スポートがあればいい。 しかし、同じ国でも香港に隣接する経済特区であるシンセン、およ び中国へはビザが必要です。中国への出発に、私はビザをとらない で出かけた。楽観的に無謀です(笑) まぁ、なんとかなるだろうと思っていたのです。香港からシンセン へは、空港や駅ですぐビザの発行をしてくれます。滞在が5日間有 効のものでした。それを持ってシンセンに行った。 同じ中国ですから、シンセンから上海に行くのに別のビザが必要だ とは思ってもみなかったのです。ビザを良く見ると<中華人民共和 国経済特区ビザ>と書いてある。もしや、このビザでは上海に行け ないかもしれないと思ったのです。このあたりはカンが働くのです。 そこで、シンセンの市の公安局にまで連れて行ってもらい、上海行 きのビザをシンセンで発行してくれと頼んだ。ビザを管理する公安 の窓口は、昨年の10月まではOKだったが、今はできない。シン センではとる方法はないと言う。これには困った。同行の人とも相 談した。 方法は以下の3つ。 (1)持っている経済特区のビザのみで、上海に行き、出境か入境 でチェックを受けたら、知らなかった、なんとかならないかとワイ ロを渡す。 (2)上海行きを止める。飛行機、ホテルが無駄になるが仕方がな い。 (3)香港へ戻って、改めて、シンセンへ入境のビザと、上海へ入 境できるビザを発行してもらって、シンセンに戻る。 日本の大手都市銀行でも、会話の途中で聞いてみた。<ビザなしで うまくいけばいいのですが、不法滞在などで捕まることもあるんで はないでしょうか。しかも、賄賂を渡したことが分かれば収賄です >という銀行員らしい回答だった。視察の上海で、収賄罪で捕まる のは、やはり困りますね(笑) シンセンで滞在した新都酒店(ホテル)の、アシスタントマネジャ ーにも尋ねてみた。彼はカタコトの英語ができた。聞くと、この経 済特区のビザで、中国全土に行くことができますとの答えだった。 本当にそうか、保証できるかと何回も念を押すと、彼は次第に自信 を失って、公安が午前8時からあいているから、尋ねてみると言う。 じゃ明日の朝午前8時に、このデスクに来ると言って、ふと気が ついて、ところであなたはこのデスクに明日の朝8時にいるのかと 聞くと、勤務時間外でいないと言う。それでは、仕方がない。まっ たく、もう・・・ 午前8時までに、方法を決定しなければ、飛行機の時間に間に合わ ない。こんな状態では、午前8時までには決めることができない。 やむなく3時間後の飛行機の便に変え、シンセンから香港に戻って 、改めて、当日発行のExpressのビザを取ってくるという、手間はか かるが正当な方法をとることにしたのです。 香港はともかく、中国はほとんど英語は通じません。私は中国語は できない。通訳を務めてくれた于さんは、香港へ行くビサは持って ないと言う。中国人は、中国からシンセンと香港への入境には、か なりややこしい方法でビザを取る必要があると言う。 そこで、一人で行った。4つの関門があった。シンセンからの出境、 香港への入境、そこでビザを取って香港からシンセンへの入境、シ ンセンから上海への出境。各出入境では、長い列が並ぶ。まさに人 口の国ですから。圧倒されるような、迫力のある密集の列なんです。 同じ巨大ビルの中で、時間の制限があるexpressビザを発行するのに 約1時間、出入境に2時間で合計3時間、ぐるぐる回っていい経験 でした。身振りの言語でも、なんとか通じます。最後の手段は「怪 しい漢文」を書けばいい(笑) 上海への入境で、苦労して手に入れたビザのチェックがあるかどう か、入境の処理を目を凝らして観察。10月以降の新制度の、現場 への浸透振りを確かめるためです。ノーチェックでしたね。(笑) 現代中国に触れた一瞬でした。 こうした点は、日本と違います。行政やお役所の現場は、成文法や 行政指針で整然と動く。インフラが整っています。中国は、比較す れば混沌です。熱い沸騰する混沌と、日本の先を行く、ハイパー都 市のような超現代のミックスです。この格差の存在が、エネルギー です。格差の平準化は、国のエネルギーを消します。 ■9.ご案内 ▼寄稿 4月1日発売の『販売革新4月号』に<単品管理作業を「根源的に」 解明する。チェーンストアの経営と運営のキーコンセプトは誤解 と錯覚に満ちている>という約2万字の論考を寄稿しています。 表紙のタイトルには<吉田繁治、横溢な書き下ろし>とあります。 なるほど「横溢」ですか。確かに大量に書いてはいますね。(笑) ▼中国研究・視察ツアーの日程 以前からお約束していた中国研究・視察ツアーは、シンセンを中心 に5月25日(土)から28日(火)までにしようと計画中です。 中国の地に立ち<グローバル流通と生産、及び情報化ロジスティク スの方法>を解くことをテーマにします。中国は既に、世界の日用 品製造の拠点になっているからです。中国からは、今地球単位で世 界が見えます。今の日本では、21世紀が見えないのです。 中国ツアーを早く知らせて欲しいという方が多いので、日程のみを お知らせします。今、中国への関心が盛り上がっている感じですね。 約束済みの講演の合間を縫う日程です。 内容は、来週か再来週にお知らせするつもりです。方法の概要や参 加費用等は、米国ツアーと同じですが、中国の事情を考慮し安全に 旅行社を使う方法と、香港での現地集合方式を併用します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 ▼<ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊分を超える 情報価値をe-Mailで>のサンプル閲覧と申し込み http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 有料マガジン大賞第一位を獲得することができました。 ▼クール・ナレッジ掲示板(BBS)で投稿 http://cgi.members.interq.or.jp/venus/yoshida/BBS/light.cg |
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