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02年3月18日 90年代の、米国のビジネスモデルの中心 には、常に、ウォルマートモデルがあった 西友の買収を機に、そのモデルの本質を 精神と技術から解明する |
こんにちは、吉田繁治です。ニュースでご存知のように、米国ウォ ル・マートが西友を買収することを決定。ウォル・マートは200 1年度売上で28兆円、最大の小売業であるのみでなく、130万 人雇用の世界最大企業です。 <事件>の波及は深く大きい。 米国の90年代ビジネスモデルと事業創造の中心には、常に(1) ウォル・マートが掲げたビジョン、(2)実行した経営、(3)方 法と戦略、(4)情報システム、(5)ロジスティクスがあった。 ウォル・マートは、小売を変えただけなく、米国を変えた。 創業者サム・ウォルトンは、大統領の何人分もの大きなことをした。 <Vol 93 ウォル・マートというビジョンと精神> 【目次】 1.波及を予測する 2.本質 3.これからの日本の産業に必要な精神 4.恵まれた日本の小売業の実態 5.商社の小売戦略 6.西友とウォル・マートの補完関係 7.ウォル・マート効果 ■1.波及を予測する ウォル・マートによる西友の買収は、小売業、卸売業の変化への波 及のみではない。メーカーを巻き込み、全産業への影響が甚大にな る。政府より大きなことができるのがビッグビジネスです。 今回の<事件>で数年後の、加速された日本の産業の変化が、見え るような感じがしています。 西友は日本の流通の異端児、60年代全学連の闘士、詩人、作家、 セゾンの提清二が作った。彼が書いた最良の書、『流通の変革の透 視図』は、学的で予言的なものだったが、ウォル・マートから買収 を受けることまでの予測はない。 当時、ウォル・マートは、誰も注目しない米国アーカンソーの田舎 店舗にすぎなかった。世界の流通に君臨する王者は、天に届く塔、 シカゴのシアーズタワーのバイヤー王国だった。今シアーズは、地 を這い、のたうち回っている。 私は、流通・小売とシステムを勉強し始めたとき『流通変革の透視 図』を読んだ。一瞬このような書を書きたいと思ったことを思い出 す。フランス構造主義哲学、ジョルジュ・バタイユまでへの言及、 消費文化論があった。 (注)私の分析手法の根は、実存主義と構造主義から借りています。 本稿で描くのは、ウォル・マートの進出で、変化が加速する流通の 近未来図、そして産業の精神です。 本質的な技術の面で、変化が鈍かった日本の産業が、いよいよ変わ る。日本の変化の遅さは、小売業・サービス業の、応用技術と生産 性の遅れがもたらし、生活の豊かさの提供を、阻害していた。 世界最高レベルの賃金水準でありつつ、比較すれば貧弱な生活であ ることの原因の多くは、日本の流通企業の遅れです。ここに機会が あり、第一次流通革新組みの総崩れによって、機会は日々大きくな っている。ここに事業のロマンがある。過去と現在を嘆くのではな く、未来に向かい、青雲の志で構図と実行戦略を描く時期です。 戦後はあった産業の精神も、50年余で衰弱した。制度疲労と老衰 で、弱者としての保護を求める産業だらけになって、借金の棒引き や、同じ意味のインフレを念願している。これでは、ともに倒れる。 商品流通の最終段階に、堰(せき)があった。 ここが変われば、全産業が変わる。 消費と直面する流通ビジネスはそうした大きさを持つ。 ウォル・マートが火をつけるのは一言では、 従来の国内閉鎖的流通から「グローバル流通開国」 への変化です。 金融機関が外資に買収されることとは、次元が違う、深い階層まで の変化をもたらす。不良債権も含め、金融は産業の表面であり、結 果です。原因になるものではない。 商品流通の、最終的なキー、出口を握る小売が変わることは、産業 の全構造を変える。金融外資の進出と、ウォル・マートの進出には、 比較にならない違いがある。 皆が、流通ビジネスの産業における意味を、軽視している。 製造は、顧客に、従って流通に、正確に言えばロジスティクに従う のです。 ▼規模の映像化 ウォル・マートは、日本のチェーンストア協会加盟104社の、合 計売上14兆円の2倍です。ウォル・マート1社の売上で、です。 米国での小売シェアは、金額では10%前後です。最低価格のディ スカウント・ストアですから、全米の顧客の購入数では、20%を 占めると見ることができます。 全米の、2.7億人消費者への生活財提供の2割までを占めている。 平均すれば、米国消費者のショッピング・バスケットの中で、5 個に1個はウォル・マートで買ったものです。 世界の歴史上、最大シェア、最大規模の小売業がウォル・マートで す。 米国人の、平均的所得の80%の世帯の生活は、ウォル・マートが ないと成り立たない。製造は、ウォル・マートに従属する。という より、ウォル・マートのクロスドックセンターと店舗の棚を通じ、 顧客に従属する。 ▼主要小売業の規模比較:2000年 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 世界 米国 ウォル・マート $1932億 仏 カルフール $ 598億 米 クローガー $ 490億 蘭 アホールド $ 484億 米 ホーム・デポ $ 457億 日本 イトー・ヨーカ堂 $ 283億 ダイエー $ 266億 イオン $ 250億 西友 $ 98億 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ウォル・マートは、世界小売の水槽を泳ぐ、唯一匹の鯨です。カル フール以下、食品スーパーのクローガー、アホールド、住関連のホ ーム・デポという世界の4大小売業を合計しても、ウォル・マート 1社には届かない。全部が、子鯨です。 イトー・ヨーカ堂は、その7分の1の大きさのイルカであり、西友 は20分の1で、周辺をちろちろ泳いでいる子イルカです。子イル カの視点から、鯨や広大な外部世界を眺めるのではなく、鯨の(想 像的)視点に立って、遥かに小さいイルカの群れと外部世界を見る ことです。 そうした観点です。これが、ウォル・マートの側からの視点です。 視点を自由にしておくこと、創造的発想にはこれが必要です。ウォ ル・マートの側からの視線で見ることで、日本の流通の近未来図を 描くことができる。 海外からの進出を受けたとき、この島国の人の意識には、被害者意 識がある。心理的に歪んだレンズで見れば、正確な絵は描けない。 描いた絵が歪んでいることにすら、人は気がつかない。 それが、日本のマスコミの、いつもの視点です。 ▼商品は ウォル・マートは、約20年間観察した。米国に行った約90回、 毎回ウォル・マート(ウォル・マート;スーパーセンター;サムズ の3業態)を訪問し、現場観察してきた。 試売で多くの商品も買い、実際に使った。最高傑作は横縞のセータ ーでした。彩(いろどり)が、まるで七味唐辛子だった。冬のゴル フ練習の時、結構愛用したんです。家族へのお土産にしたこともあ ります。安っぽいと言われ、著しく不評だった。(笑) 米国産ではなく、ほとんどがメキシコ、南米、アフリカ、中東、東 欧、インド、東南アジア、香港、中国産です。ウォル・マートはグ ローバル調達企業です。 売る商品は、台湾や韓国及びアジアはともかく、世界で最高に繊細 な品質感と消費感性を持つ日本人に合うものではない。 商品面で提携関係を結んでいたイトー・ヨーカ堂が、94年にはウ ォル・マートからのカセット・テープ、ケチャップ、カジュアル衣 料等を売った。品質感が日本人の感性には合わず結果は散々だった。 ▼物流から ウォル・マートは<クイックレスポンスのグローバルな情報化ロジ スティクス業>であるという本質を持つ。目に見える売り場の棚や 商品の軸では、ウォル・マートは解けない。 2位のカルフールは、70年代から世界で飛び石の、従って弱体な グローバル戦略をとった。ウォル・マートの海外進出の本格化は9 0年代からです。理由は、商圏でのシェア制圧の面展開が、ウォル ・マートのロジスティクスの生命だからです。 ウォル・マートは、ロジスティクスセンター(DCとクロスドック センター)を作った後、物流カバーエリアへの集中出店を行う戦略 を守る。物流の戦略的重要性を知っている世界最初の企業です。2 位のKマートは、面の物流戦略に破れた。 200年末からのカルフールの日本進出では、大きな影響はない。 何もできない。部分的な、商圏への影響です。カルフール自体、飛 び石での単独店展開の戦略のままでは、採算の問題を抱え、日本か ら撤退になる日が近い。こうした、はっきりしたことが分からない 人が多すぎる。 ▼Can Do Attitude ウォル・マートの元店長で、流通コンサルタントをしていた人と昼 食をとったとき、30代前半だった彼は言った。 1.ウォル・マートは、店舗を作る前に、物流センターを作る。 2.物流センターを核に、商圏を、店舗の面展開で攻める。 3.マーケットの最低価格で売る。 これが、厳格に守る3原則です。 そして、付け加えた。 <世界の最低価格、最低のコストでのオペレーションということを やめたら、われわれには何も残らないだろう> 更に言った。 <皆がCan Do Attitudeで仕事をやってきた> われわれに不可能なことはない、やると決めたことは必ずやる。 そう言ったときの、自信に溢れた表情を記憶しています。 彼は、ウォル・マートで働いたことを、最高の存在証明として誇り にしていた。そうした企業は、広い世界に、ざらにはない。 ウォル・マートは、世界最大になりつつも、(1)130万人の大 組織に必然的に付きまとう官僚主義、(2)顧客の声の無視、(3) 自己利益を図ることによる精神の堕落は、見えない。 02年2月、ラスベガスのスーパーセンターの最新店に行った。明 るくなり、ファッショナブルになって、また進歩している。ターゲ ットのファッションのレベルに近づいている。実験を止めてはいな い。常に革新する。これが実行されている。従って、店舗に行けば 発見がある。見れば、技術と精神の宝庫です。 ■2.本質 ウォル・マートは、 (1)売上対比15%という世界最低の「オペレーションコスト」、 (2)クイックレスポンスと、低いオペレーションコストを実現す る、店舗前物流処理の「クロスドックセンターシステム」、 (3)ショッピング・バスケット分析と、品目分析を含む「データ マイニング」の3点に、強みを持つ、情報化システム産業です。 社員の自発的なやる気を導く、持ち株による利益分配制度、現場の 自律を促す情報解析結果の提供がある。 ある店舗では、自社の今日の株価を、玄関に表示していた。 <ウォル・マートでお買いいただければ、お持ちの株価が上昇する ことにつながります>との表示があった。利益分分配の意思の表示。 勤務の長いレジのおばさんが、数億円の資産を持っていることもザ ラです。資本家はウォル・マート一族だけではない。それは、働く あなたです。こうした企業では、社員は根底の部分でやる気を出す。 ▼多くが見誤り わが国の流通コンサルタントは<部門(カテゴリー)、棚割り、商 品、価格>、つまり業態軸で店舗を見て解説する。店舗に行って見 える表面の部分です。 <情報化システム産業、情報化ロジスティクス産業>という本質を 見誤っています。情報システムの知識が必要だから、知らないのか もしれない。 米国ウォル・マートの商品と店舗を、日本にそのまま持ってきても、 成功はしません。価格は安くても、日本人の消費感性には合わな い。 安っぽい商品が多い巨大店になる。ファッションとカラーの感覚、 品質感は、繊細でそれゆえ部分に過度にこだわる日本人のものでは ない。 ウォル・マートの商品では、背景に、80%ワーカーの、実質賃金 低下と多民族化があった、米国の消費者の品質感に適合する。その 意味で、地域適合した商品です。 ウォル・マートの中心顧客は、年収で$3万前後です。 日本の世帯収入の平均は、700万円。 ▼品揃えは巨大バラエティストア業態 ウォル・マートは、流通システム産業です。売る商品は、基本的に、 なんでもいい。商品へのこだわりはない。売り場面積規模の大き な、「商品部門の適正規模」を作った、バラエティストアです。 成長業態の食品を含むスーパーセンター6000坪では、平均で 80億円を売る。単位面積あたりでは、同じディスカウント・スト ア業態のKマートの1.6倍から1.7倍を販売します。 【取引の3条件】 ベンダーに対しては、 (1)最低価格での納品であること、 (2)クイックレスポンスでの納品、 (3)欠品がないこと、を要求する。 この3点が、取引の基本3大条件です。 ▼5品目で100億円 本クール・ナレッジのロスアンジェルス(01年11月)、そして ラスベガスツアー(02年2月)に参加されたメンバーの中にウォ ル・マートに商品を卸す、米国ベンダーの役員がおられた。エネル ギッシュで、素直で、素敵な人です。 ウォル・マートに行くと、自分の会社が卸した商品の棚に走る。 あ、わが社の品目が展示から外れている、大変だ、という感じです。 4400店もあれば1フィートの棚で数億円、時には十億円の売上 になる。卸した1品目の展示が増えるか、減るかはベンダーの経営 全体を左右する問題になる。彼の会社では、ウォル・マート専門担 当部門を作り、売り場支援の体制がある。 ▼リテイル・リンクの実務 (1)展示の際、品目単位での売上目標と、ウォル・マートの棚ス ペース(1f)の売上計画との、結果の整合を求められる。 (2)週間で集計する品目売上が、目標に達しないときは、アイテ ム改廃を含め、対策を要求される。 (3)ウォル・マートの棚の維持、展示品目の増加を軸に、ベンダ ーの経営が動く。つまり、小売に従属する。顧客に従属する。 ウォル・マート側は、ベンダーと戦略同盟を組む「リテイル・リン ク」と言っています。POS情報、売上解析情報を与えて、ベンダ ーの売上対策の、QR(クイックレスポンス)を要請する。応じき れなければ、棚から品目をはずす。 ウォル・マート・スーパーセンター6000坪に、リテイル・リン クのベンダー、メーカーがはりついている。最大の小売業は、世界 の優秀ベンダーとメーカーが支えている。その意味で「運命共同体」 です。ウォル・マートの28兆円はメーカー、ベンダーを変えた。 ■3.これからの日本の産業に必要な精神 西友はウォル・マートからの買収を受け、今後5年間で3兆円規模 にするための、国内の他企業店舗のM&A(合併・買収)を行う。 西友の筆頭株主である住友商事の、小売への進出戦略と言っても同 じです。 90年代の、大手小売の資本弱体化は、 (1)商社の資本参加 (2)海外の小売大手から資本参加、によってM&Aを生む。 【資本の根底】 背景には、日本的に特殊な小売資本の性格がある。小売業は、リー ディング産業ではなく、メーカー・問屋への<寄生産業>だった。 80年代まで小売の資本は、土地の含み資本が支えていた。大手小 売業は、自律的に生み出した顧客の評価の結果である利益の蓄積に よる資本ではなく、土地を所有したことで、他律的に生まれた<僥 倖(ぎょうこう)>としての土地価格の上昇部分を含み資本として いた。 小売企業は、資本の面では銀行から借り土地を買う不動産業だった。 小売業としての必要な技術進歩が遅れていた。大きな店舗ではあ るが、内容のなさがあった。これは小売業が資本の面で、<日本経 済のGDP成長に寄生する産業>であったことを示す。 ▼結末で現れる精神 小売の多くのトップと話をすると、過半の人は消費者のために消費 の豊かさを作る産業にはふさわしい人ではないと思うことが多かっ た。今も、しばしばそう思う。そうした人は今後は、消える。 ずるい、エゴの利益に敏感な、人間不信で固まった、性悪説の小商 人ではないか、と感じた。多くが精神を持つ産業人ではなかった。 この人たちが小売市場を支配したら、日本の産業はダメになると感 じた。売り場にはその精神が現れていた。典型的人物が、日本の最 大の小売業を作った人達だった。((注)従業員・幹部の責任の領 域ではありません) 【醜悪】 ある人物は、破綻の後、実体的には債務カットを受けつつ、責任回 避をして逃げ、時には法を犯し、社会規範を蹂躙するまで自己利益 に閉じこもり、非難を浴びている。腐臭を放つ結末です。 最大規模の百貨店を作った人、最大規模の量販を作った人の両者の (1)人物像、(2)行動様式、(3)価値観は類似している。 「威嚇権力」で恐怖を与えて人を動かしたが、真性のリーダシップ ではなかった。田中角栄は言った。人は恐怖で動く。彼の人生が与 えた人間観だった。80年代以降、角栄が呪ったかのように、この 国には角栄的人間観が、蔓延した。 多くは語るまい。キーボードを打つ手が汚れる。人生の結末は、人 の精神を露わにする。棺の蓋が閉じるとき、全部の評価が決まる。 世間は知っている。皆は言わない。言わないこと、表現されない部 分に、いつも大切なことがある。 子供達から、最後に<I'm proud of you>と言われる職業人であっ てほしい。子供の評価は、多くが正当です。 官僚化、サラリーマン化し、子供とこころから遊ぶことのできる大 人も教師も減ったのではないか。ここが、この国の、教育現場荒廃 の根底にある。一緒に心から遊び、叱ることを子供は求めている。 決して、有能な官僚的大人や、サラリーマン教師を欲しているので はない。 この国の人口が減った子供の未来のために、どんな産業と社会を残 すか。2000万人の団塊の世代は、考える時期に来たのではない か。 高級官僚や、政治家、そして外務省のお役人の子供は、父をどう評 価するか。私は父を誇りに思う。彼が生きているとき、それを言い たかった。言えなかった。時に、会いたいと強烈に思う。 世の中は<いい方向>に向かっていると感じます。 鈴木宗男的人物を、許容しない世間になった。 鈴木宗男的人物が、支配した部分が多かったのが日本だった。 ワイドショー政局と言われる。今後も、ますますそうなる。 次は、加えてインターネット政局ですね。 内部告発が、世間を変える。内部告発を受ける企業は消える。 社会規範と、価値観が変わりつつある。 ▼変化の本質 <女性の社会化>が過去には許容された暗黙の規範を、変えつつあ る。この変化が、日本の変化の本質です。女性的な価値観、Valueこ れを知ることです。「男社会の世間の現実、実世界」の意味するこ とが変わりつつある。 日本の小売業が、外資の進出を受け、または他からのM&Aを受け ることを、肯定的に考えます。従来の小売業は、生活の豊かさを作 るリーディング産業としてふさわしくなかった。20年も近くから 見て、いつも感じていた。 世界最高の所得と金融資産で、この生活。 これは、生活産業の未熟と精神の欠落を意味する。 友人の、経験あるコンサルタントは、ホンネで穏やかに言う。 <日本の大手小売業が、外資に買収されることを、小気味がいいと 感じます> 彼も今の小売業の精神に、問題を感じている。 多くが言わない。しかし感じる。 ▼志へ この国の産業の、精神の深い部分で、堕落が見える。過去の路線で の生き残りではなく、事業創造でなければならない。精神の後に、 産業技術とハードワークがくる。逆ではない。 世界最高の所得額の消費者である日本人の生活貧困は、私企業に堕 落した大手小売業の責任ではないか。小売業は、私企業ではあった。 しかし「社会的使命」に溢れた産業ではなかった。社会的使命は、 今、企業の命そのものにまで浮上した。それが、21世紀です。生 存の基礎生活はできる。基礎生活以上のものに価値を置く。10億 人の先進国に共通です。人類は、有史以来の、基礎生活の貧困を経 てそこまで来た。 <生活の豊かさ、美的で健康で安全な、趣味にあふれたいきいきし た生活を支える産業>を作るのが、次世代の経営です。 そこから社員の、ハードワークと厳しい研鑽を厭(いとわ)わない 使命感が出る。使命感(ミッション)がなければ、職は生活の資を 稼ぐ苦役に陥る。 そして皆が<現実は・・・>という。 現実を変えるのが、仕事ではないか。 ビジョンと使命感とハードワークがなければ、産業は作れない。 「大問題」への挑戦。大問題への挑戦が、やりがいを作り、生きが いを作って、人生と職業に意味を与える。お棺の蓋が閉じるまでに は、皆、時間の猶予があるはずです。 私にまっとうな志があるのではない。振り返れば、卑劣な人間。し かし、自分を卑劣と知っているから、志だけは失わない。あと 20年はある。3年毎に7回の変身をする猶予がある。 若い世代のフリーターの増加には意味がある。会社の価値観、行動 様式になじむことができない。新しい芽と、社会的な貢献を見た価 値観の台頭が見える。既存の会社に満足できない正のエネルギーを 集結すること、これが、新しい組織作りです。 若い世代が、そして熟年の現場が燃える組織でないかぎり企業の成 長はない。燃やす原動力は、大問題への挑戦と、ビジョン。こころ から生まれる使命感。自己目標での仕事の充実と、ハードワークか ら生まれる成長。職は生活の苦役ではない。喜びでなければならな い。 そして最後は、ハッピー・リアタイアメント・・・ ■4.恵まれた日本の小売業の実態 日本の小売市場の規模は143兆円で、米国についでナンバー2で す。巨大な、しかし、弱体な、未熟な企業だらけの小売市場がある 。 日本の小売企業は、西欧が1960年代に、米国は1970年代に 果たした規模化と近代化を果たす前の、パパママストア状態にある 部分が60%ですね。 日本人に生活の豊かさを提供し支える産業になっていない。むしろ、 生活の豊かさの実現における、障害になってきたのが、日本の小 売業です。海外で、日本人旅行者が財布の紐を開くことを、日本の 小売業は恥辱であるという感性を持てるか・・・ 日本の小売マーケットを、小売以外の国内企業、そして欧米の巨大 小売業が狙う。狙う条件は、以下の変化で具備された。 地価、建設費が下落し、80年代末の半分以下の損益分岐点売上で、 店舗の採算がとれるようになった。つまり店舗の運営コストにな る高い地価という参入障壁がなくなった。 小売企業を底値に近い株価で買えば、世界で2番目の大型小売市場 に参入できる。鯨から見れば、濡れ手で粟に近い、旨い話です。地 価の下落は、次世代の産業に道を拓(ひら)く。 【世界1恵まれた小売市場】 わが国の小売店舗140万店の、平均での売り場坪当り売上は 358万円という世界最高の高さです。(1)最高に売れていて、 (2)売り場面積も不足しているのが日本の小売市場です。 全店総売上は143兆円、小売売り場面積は、4000万坪です。 (2000年商業統計) 世界最高の単位面積の売上がありつつ、既存小売業では、140万 店の三分の2は、赤字経営になり、気息奄々(きそくえんえん) 日本の小売業には、実際、売上高の不足があるのではない。 (1)店舗の作業生産性の低さ、 (2)言い換えれば、人的生産性の低さ、 (3)経営の稚拙さがある。 日本の小売業は、世界的には、今後2倍の合理化の余地を持つ。 これを、深く記憶しておくことです。(重要) ウォル・マート(4400店)の坪当り換算売上は、195万円( $1=130円換算)です。 Kマート(2100店)の坪当り売上は116万円です。 日本の小売業140万店は、単位面積あたりの平均でウォル・マー トの1.8倍、Kマートの3倍を売っている。これで売れていない と言うのは、経営の全体構造の問題ですね。 米国では望むべくもない、2倍も高い単位面積売上であること、こ れが2002年時点での、日本の小売業の恵まれた実相です。 にもかかわらず、日本の小売業は、 (1)売上の低下で、収益がない (2)単価下落で、収益がない (3)売り場面積過剰で、競争が激しいと言う。 正常に考えれば、理解に苦しみます。 上記(1)から(3)に対応して言えば、 (1)坪当り売上は米国の2倍以上で、世界最高の高さである。 (2)世界の最低単価で売るウォル・マートは、赤字でなく収益が 高い。 (3)人口1人当たり売り場面積は、1平米で、米国の半分に過ぎ ない。 世界で最も恵まれた閉鎖マーケットで、収益を出せないのが日本の 小売業です。日本の小売業には、競争の過剰ではなく、競争の不足 があった。 単価が下落し、経営が成り立たないなら、最低単価で売るウォル・ マートが28兆円になることはなかった。 日本の小売で、優良企業とされるイトー・ヨーカ堂の、売上対比経 費率は、31%です。一方、世界の最優良企業ウォル・マートの、 売上対比経費率は、16%前後です。2倍の生産性格差がある。 イトー・ヨーカ堂のマークアップ率はウォル・マートの2倍もある 。 2倍も小売マージンが取れるのに、店舗間競争が厳しいとは、どん な意味か・・・理解に苦しむのは、私だけでしょうか。 ウォル・マートのような、20%のマークアップ競争になれば、 豊かな143兆円マーケットの、140万店の日本小売は討ち死に でしょう。 ウォル・マートの西友の買収は、そうした意味を持つ。 ウォル・マートは、ドイツへの参入では赤字になって失敗した。ド イツの流通規制の強さ、および、ドイツの小売業が既にコングロマ リットであったことの結果です。 日本の流通規制は、ドイツ並みに強い。しかし流通規制の角度がド イツとは違う。ドイツでは都市計画と消費者保護の観点からの規制 です。業者保護の色彩は、薄い。ドイツでは、小売は既に、コング ロマリットだった。 日本の流通規制は、業者保護です。 消費者は、出店を歓迎する。業者が反対する。 日本の小売は、 (1)ウォル・マートの1.8倍の単位面積当り売上と、 (2)2倍の流通マージンをとりつつ(費消し)、しかも収益弱体 です。 彼我の差には、埋められず、正当化できない産業としての生産性の 低さがあるのです。 ■5.商社の小売戦略 西友の筆頭株主でもあった住友商事を含む商社が、近年、小売に深 く絡むのには理由がある。従来の、国内閉鎖流通では、商社が小売 に絡む必要性はなかった。 90年、特に95年以降、小売にとって商品調達のコスト最適地が、 海外に変わった。そうなれば、商社は商品の源流に絡むことがで きる。原材料よりもっと大きなマージンがあるのが、製品流通です。 ▼ユニクロの事例 ユニクロの調達は、中国の工場からの直接調達のように思われてい ます。実際は60余の中国工場とユニクロの間には、三菱商事を筆 頭に商社が絡み、工場出荷価格の6%から7%レベルのマージンで 在庫リスクを分かっている。 商品の仕様開発は全面的に、ユニクロが行いますが、仕入れは以下 のルートをたどる。(有価証券報告書) 〔(関連会社の)山東宏利錦針織有限公司−商社−ファーストリテ リング(ユニクロ)〕 商社は金融力、海外駐在、海外企業ネットを活かし、小売の海外調 達で、工場と結びつき、商品の源流に密着する戦略をとる。時には、 中国野菜のように、生産指導までを行う産業育成をやる。 製品卸や代理店としての、または輸入書手続きや物流のぺーパー・ マージンでの、輸入の流通過程への介入ではない。特定小売との< サプライチェーンの一環を担う機能的な業務提携>による、相互関 係を作る。 商取引への介入で、 (1)商品取引のトランザクションでのマージンを稼ぐ性格から、 (2)小売の海外調達に必要な、機能のアウトソースを受けた、ビ ジネスプロセスにおける機能的なリレーションの関係を作りつつあ る。 BtoBの取引での、トランザクションから、業務提携的なリレーシ ョンへという、サプライチェーンの胎動がある。 ■6.西友とウォル・マートの補完関係 西友を含んだ西武グループは、伝統的にシステム化的思考と収益に 弱い。感性的です。無印良品も、店舗作りと商品開発への感性はい いが、商品調達元を含む合理的な在庫管理、つまりサプライチェー ン作りには弱みがある。そして、店舗作業と、収益構造作りも弱い 。 MUJIの店舗内のカフェでコーヒーを啜りながら、商品展示の店 舗作業を観察しているとき、動作と作業手順を見て、かかった時間 を計算し、あぁ、これでは採算が採れないだろう、売れても利益に は苦労すると思った。 システム、損益、店舗作業、サプライチェーンに強いウォル・マー トと、商品への感性に強い西武が結べば、両者は補完関係になる。 ウォル・マートがダイエーを買収の対象に選べば、成功の可能性は 薄かった。ダイエーには隠された問題がある。2兆2000億円の 借入金以外の、2兆円と言われる債務保証です。 債務保証は、貸借対照表には記載されていない。知る人は知ってい る。ダイエーの破綻処理が、慌てて債務カットの形式をとって先送 りされた背景には、巨額債務保証の問題があった。 ダイエーの破綻で、2兆円の隠れ債務保証が表面化すれば、銀行ま で危うかったし、ダイエーの裏社会との関係が露呈する。今も危う いのですが・・・以上は、危険な話でしょうか。 ウォル・マートは、最良のパートナーを買収に選んだ。西友の買収 は、約3年で、日本の小売業に以下の変化をもたらします。 (1)低価格競争が、更に深化する。 (2)中国からの、輸入調達のシステムが浸透する。 (3)全業界で、情報化物流システムの競争になる。 含意は、先進国の中では(1)零細、(2)コスト非合理、(4) ハイコスト、(5)無駄を残していた日本の小売業が、「併合・合 併・規模化」の時代を迎えるということです ■7.ウォル・マート効果 ウォル・マートは、130万人の社員を燃えさせている。 ウォル・マートでは、現場をワーカーとは呼ばない。 ビジョンに向かって専門領域を提供しあうチームワークのアソシエ イト(仲間、同志)です。取引先もリテイル・リンクの戦略同盟を 組む、目標を同じくする同志。トップは、利益責任を持つマネジメ ントCEOでありつつ、方向を示すリーダー。 ウォル・マートに、21世紀現象が見える。この国の小売大手、家 業小売は、製造、サービス業はウォル・マートの精神を学んで欲し い。 <$2万の世帯に$4万の生活を提供するためにわれわれは働く> 事業と職業は、経済活動を超え、金儲けの手段を超えるものです。 創業者サム・ウォルトは言った。 <顧客をほかのなによりも優先させる。・・・顧客に奉仕しなかっ たり、顧客に奉仕する仲間(アソシエイト)を支えないのなら、そ の人間は(ウォル・マート)には必要ない> 米国に比べれば所得金額だけは豊かな中間層が多い現代日本では、 ウォル・マートの精神を書き換える必要がある。 これで、新しい商品概念もできる。 <日本人の生活の豊かさ、美的で健康で安全な、趣味に溢れるいき いきした生活の実現のために、われわれは働く> 同時に<他とは違う、商品価値、サービス価値をどう作り、提供す るか、方法と戦略>を問う。 ウォル・マートが精神を教えるなら西友の買収は効果がある。マス コミ的な、自分の身分は安全なエリートの皮肉で見ないことです。 理想的なことを言っていると感じられる人がいるかもしれない。 そう、ビジョンです。ビジョンにしか人は燃えない。燃えなければ エネルギーは出ない。方向を失った憔悴の後、待つのは没落と企業 の死です。 ウォル・マートは、アジアの商品流通のために大規模な上海流通セ ンターを準備する。グローバル流通戦略の布石がある。これによっ て日本の流通鎖国が開国される。同時にオープン参加のeMP(イー・ マーケット・プレース)を準備する。最大の資本と技術を持つ企業 が、サプライチェーンと、情報化ロジスティクスの整備を行う。 eMPについては、1年半前の考察と予測があります。ウォル・マー トの本質と言える教育産業を解くものです。 http://www.cool-knowledge.com/1129eMP3.html アジアは21世紀に向かって沸騰する。日本の産業も、変わる。 方向と方法は決まった。ビジョンを同じくするもののグループ化。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 ▼<ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊分を超える 情報価値をe-Mailで>のサンプル閲覧と申し込み http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 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