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02年4月15日 |
こんにちは、吉田繁治です。前半の時事問題解析ではみずほ銀行の システムトラブルの問題を解きます。 結論は、ショッキングですが「銀行は死んだ」 銀行取引に10年、システム設計に15年従事した自分の経験を含 め、慎重に思考した結果の判断です。 <Vol.96 特別号:銀行は死んだ> 【目次】 1.銀行は死んだ 2.現代の商品価値に関する認識の欠如 3.信じられない本番スケジューリング (注)02ね4月15日時点では、みずほ銀行のシステムトラブルの 内容、原因は、明確には報じられてはいませんでした。 乏しい材料からの、推理を含む考察です。 その後、この推理が正しいことが明らかになった。 4月15日時点での考察をそのまま掲載します。 ■1.銀行は死んだ 富士・一勧・興銀が合併した世界最大の銀行、みずほ銀行のシステ ムトラブルが続いています。時はまさに金融大国の世界が見守る、 世界史最大の不良債権を持つ国のペイオフ解禁日。 多発する最近の不祥事の特徴は、問題が波及し大きくなることです。 最初は、当事者は問題の本質を隠すか把握していないという共通 性を持つ。そして、明らかになる全貌は、深く重い問題をはらむ。 勘定系システムは、第一勧銀が富士通、富士銀はIBM、興銀は日 立で、データベースやアプリケーションは、当然、システム間の互 換性を想定したものではない。合併では、統合を必要とする。 今回のシステムトラブルは予測できた人災です。予測されるトラブ ルが放置された。どんな問題が見えるか、それを解析します。 業務停止命令(バンク・ホリディ)が発動されることに匹敵する内 容を持つのです。今後その可能性は高い。 ▼預かったマネーという銀行機能の本質を忘れた争い 2年半の準備をかけ、第一勧銀のシステムに統合する予定があった。 「誇り高き」三行の(細かい部分最適を主張する)主導権争いが 絡み統合は二転三転した。 預かっている3000万口座のデータを統一する時間的余裕(二年半) がなくなった。互いのシステム同士を接続する「リレーコンピュー タ」を設置し、当座をしのぐことになった。 みずほ銀行には、3000万人の個人、法人という顧客のお金・財 産を預かっているという責任意識があるのかと疑問になる。 預金が入金すればそこからは銀行のマネーと思っているのではない か。そうした意識は、みずほのみならず銀行一般に蔓延していると 思えます。 「預金は顧客の財産を預かったもの」という意識があれば、合併で は、どんなコストを掛けても口座データの統合を図るのが筋です。 口座データは顧客のものだからです。 加えて、ペイオフ解禁では、ペイオフ発動の条件として、3行に分 かれていた顧客口座の「名寄せ」が必要です。富士銀行の、ひとつ の口座の定期預金が500万円でも、第一勧銀または興銀の本人の 別口座があれば、合計で1000万円しか保証対象にはならない。 借名口座、架空名義口座は、ペイオフ適用の時は、それが本人のも のであることの証明を必要とします。 口座統合は必須です。それが大切なものを「預かっている」ことの 常識的な意味です。この意識は、回収を想定しない10年前のバブ ル融資で、銀行では共通に消えたのか。これが最大の問題です。 システム統合で見られたのは3行の主導権争いだった。 党派となって自分たちの都合を優先した。 オンライン大規模システムでの異なるアプリケーションとデータベ ースをつなぐリレーコンピュータ方式は、危うい方法です。今後も 3つのシステム間のデータベースとアプリケーションの不整合のト ラブルは続く可能性がある。 部分修理のパッチを当てれば、パッチが全体では論理矛盾を生んで 次のパッチを産む。積み木崩しです。システム担当なら経験がおあ りの方も多いでしょう。 オンラインリアルタイム処理が必須の、勘定系のシステムの、異な るアプリケーションとでデータベースを持つシステムの統合は、ゼ ロから設計しなおすべきもの。銀行システムの長年の経験知です。 システムの統合費用を優先しなかったという事情も絡んでいる。統 合には1000億円のコストが必要とされていた。時間だけは2年半も あった。 不良債権に比べてわずかな1000億円を渋った。システムの主導権争 いが加わった。人事もシステムも「たすき掛け=リレーコンピュー タ」にするというトップ決定があった。 こうしたプロジェクトは、透徹した論理性、階層性、優先付けが必 要なシステム設計では、論理的に最初から失敗する。 ▼当事者意識の欠如 根幹の問題は、 (1)決定するトップにシステムへの責任と知が欠如していたこと、 (2)加えてCIO(システム担当責任者)の能力と気骨不足です。 「処理件数が予想以上に集中したためのトラブル」という言い訳は 嘘です。 【理由】 オンラインリアルタイム処理である勘定系の設計は、処理量の計算、 処理のピークの「スループットタイム(入力からデータベース処 理を経て出力までの時間)」から出発するのが常識です。 (1)処理のピークと、(2)ピークのスループットタイムを計算 しない設計はないというのが常識です。 【システムへの無知を晒す】 参考人質疑を受けた前田社長の答弁と記者会見を見た。本質把握が できず「当事者意識」が欠如している。システム担当の「軽い失敗」 だと思っている。 不良債権の(実額でその5分の1しかないと)嘘をつき続けてきた 10年間に嘘と本当の境界が分からなくなっているのが銀行のエリ ート・トップです。そう思えた。 ■2.現代の商品価値に関する認識の欠如 現代の銀行は金庫や建物ではなくコンピュータ&ネットワークの処 理とデータの信頼性が「商品」と言ってもいい。 銀行は、 (1)コンピュータのディスク(勘定系帳簿)と、 (2)アプリケーション(=商品)、 (3)およびネットワーク(=商品)です。 銀行から帳簿、商品の信用をとったら建物しか残らない。 帳簿処理と商品に欠陥があった。そうした認識があるのか。産地を 偽装した、つまり「情報を偽った商品」を売った雪印事件に匹敵す るという意識は見えない。雪印食品は産地偽装で「信用」を失い解 体した。 ▼現代の商品は、その大部分が情報価値 牛肉の雪印、鶏肉の全農および他の噂されるメーカーには正確な情 報も商品価値だという「情報化時代の認識」が欠落していた。 「肉というモノの輸入と国産の違いを、消費者が見分けられない」 のだから事実を示す情報は偽装してもいいではないかという遅れた 意識があった。これが広範囲に過去から続いていたことが確実な産 地偽装の根底にある「モノの価値のみを見る態度」です。 現代の商品は、価値の過半は「情報価値」が構成する。 この認識は忘れてはならない。物理的なモノの価値ではない。 無形の情報価値(または知識価値と言っても同じ)です。 プラダのバッグが物理的にはユニクロと同じ中国のかばん工場で作 られているにせよ、プラダという無形の情報価値(=ブランド価値) が、プラダ製品の価格(=価値)の過半以上を構成している。 プラダと物理的には同じバッグにブランド名をはずしユニクロのマ ークを入れれば、消費者は7万円をいくらで買うか。 その価格差が、消費者が評価する情報価値です。 無形の情報価値の部分は、価格の80%にはなる。 ▼無形の信頼という商品 みずほ銀行のトラブルは資金量で世界最大になった銀行の商品に、 信頼性の欠陥があることを暴露した。 みずほ側は「二重引き落としは補填するから利用者に実害はない」 と言った。全くそうではない。 銀行の商品そのものである処理の間違いがないという信用(=情報 価値)を毀損した。その認識があるのか。前田社長は国会で「実害 はない」という回答をした。 システムの統合には2年半の「十分な時間的余裕」があった。シス テム統合の1000億円はどんなことがあっても必要な合併の必要経費 です。事件は、気骨があるなら銀行マンとして万死に値する。 ■3.更に、信じられない本番スケジューリング 時は国民と世界が固唾を呑んで注目していた4月1日のペイオフ解 禁日。もっとも慎重な処理をしなければならない時期です。 その日にリレーコンピュータ方式というボトルネックを持つ危うい システム統合の本番日にするというスケジューリングは、だれが決 めたのか。無謀なことは行わないのがシステム責任者の常識です。 私なら命を掛け、プロジェクトをストップさせ、合併の日付を、シ ステムを完全にするまで遅れさせる。 作ったシステムには、どんなものでも初期バージョンは、必ず細か いバグ(または致命的なバグ)があることも初歩の常識です。 結果から見えるのは、 (1)システムの素人が集まって、結局全員無責任で、 (2)トップはシステムが銀行の商品であるという認識はなかった。 国会で「実害はない」と発言し自覚のなさを追及され、しどろもど ろで失言として訂正を行っている。 「過去の」産業人エリートの精神の深い部分で堕落を見せられ、言 葉を失う。こうしたことを見れば、多くの銀行に当事者能力はない と思えます。他も大同小異です。 結果を見て言うのは簡単かもしれません。しかしシステム設計と本 番導入の普通の常識から言えば外れていることが多すぎる。 ▼すでに・・・ 銀行は融資能力を失い、不良債権では回収能力を失って、今回は預 金の保持能力を失い、もう死んでいる。銀行合併とは、債務超過が あったための収拾策です。決して戦略的なものではない。 世界最大の銀行で起こったにしては幼稚なシステムトラブルです。 過去型のものは守っても、処理を先に延ばしても10年単位では崩 壊する。3年単位かもしれない。立派な外見の内部に深い堕落があ る。今回の事件でも、一層そうした確信を深めた。 20世紀型の、過去のものの崩壊が加速している。 社会が、カオスに向かい溶(と)けていく感覚。 外形だけは、壮麗な建物や建造物が、敗残的に残る。 内容の廃墟から、カオスから、新しい時代が始まる。 まるでラスベガスの砂漠ではないか。 500兆円の銀行資産総額のうち150兆円があると推計される不 良債権問題は、行き着くところまで行きます。以下は小声で言いま す。指摘するのが(多少は)リスクです。 【本筋が見えてきた】 不良債権の本筋・・・裏社会と企業や銀行の関係も次第に見えてき ている。ダイエーの不良債権問題の本質も2兆3000億円の帳簿 上の借り入れ金に加え、2兆円と言われる裏社会への簿外保証。ダ イエーのみではない。3月決算の数値集計を行なう5月ころが、ま た危険になる。 加えて世界からのマネーロンダリングに無防備だった日本の金融。 ブッシュの悪の枢軸への対決の方針で、急に日本の政局の焦点にな った〔***〕コネクションの筋も、明白に見えてきた。 隠蔽したまま21世紀に向かうことはできない。 ▼耳を澄ませば 耳を澄ませば、イラクを含む中東戦争の足音も聞こえる。 【50年冷戦を開始する意思が見える】 ソ連との戦後の約50年の冷戦はソ連の崩壊で終った。その後10 年間の平和の配当の時代があった。今度はイスラム原理主義を敵と し、本質は資源戦争の「50年冷戦」が始まろうとしている。 パラスチナ・イスラエルは宣戦布告のない戦争です。南米で最大の 産油国であるベネズエラの、政権腐敗が原因の(実態的な)軍事ク ーデーターも石油問題に絡む。政変には裏からの導きつまり武器と 資金供給がある。それが人類の、変わらない哀しい歴史です。 【軍需産業】 世界の軍需産業は150兆円の規模。米国軍需産業は半分を占める。 車や電器産業を超え1000兆円のGDPで、最大の産業セクタ ー。軍需産業の振興なくして、米国の経済の繁栄と維持は難しい。 ブッシュ政権は産軍共同を指揮する「軍事政権」の性格を持つこと が明らかになった。2期8年を、共和党は狙う。 【戦略】 ブッシュ政権の支持率は下がり始めた。議会の半数を占める民主党 は戦争反対の意志を明らかにした。そうなると近づいた議会選挙に 向かい支持率回復のための共和党の世論戦略が必要になる。これが、 アラブ名目上の敵とした資源戦争のリアルポリティクスを動かす。 【数年後の足音】 近々始まる対イラクの中東戦争で油田の破壊が起これば、第3次オ イルショックも、年単位で近い。過去の2回のオイルショックは世 界のコストプッシュ型インフレを生んだ。 世界がデフレ経済に向かっている時、資源コストプッシュ型のイン フレが加わればどうなるかを想定すべき時期です。起こった結果で はなく起ころうとしている時に帰趨を捉えること。 事業計画や個人ライフプランに組み込むべき事項です。 【性格】 過去のインフレのように一律には物価は上がらない。需要が強いも のは上がり、需要が弱いものは下がることが混在する。下がる物価 でしか売れないところは消える。以上3項は今後のインフレの過去 にはなかった基本性格になる。 ▼構造 10億人の先進国経済は生活維持の必需を大きく(40%は)超え たところに需要のレベルがある。30年前20年前に比べれば買わ なくても済ませる商品を買っている。上がる物価と下がる物価が並 存する。過去のオイルショックとは違った形態をとる。 【イメージ】 他方、90年代後期から下落の方向に向かった賃金は平均では上が らない。79年・80年の第二次オイルショックの米国の80年代 のように (1)物価と金利は上げ、 (2)ワーカー賃金は下げ、 (3)一部の時代を捉えた人の賃金は上がる。 【グローバル経済原理】 世界の賃金はグローバル経済の原理で、ワーカー作業では「要素賃 金の平準化」に向かっている。もう国民経済とは違う。他方、一部 の知識作業は、ますます高い価値と評価になる。 商品や部品の移動で国境がなくなっている。輸出入の部品や製品の 最終品質が変わらない時現場労働の時間当たり賃金(物価の上昇部 分を引いた実質要素賃金)は平準化に向かう。 【わが国の改革の本筋】 わが国では、輸出産業を中心とする産業の高生産性部分から、内需 産業の農業を中心とする一次産業、および建設・流通を中心とする 低生産性部門へ (1)税での所得移転と規制、 (2)政府補助、公共投資を行って、賃金の平均化を果たしてきた。 こうした所得移転構造は、政府部門の負債の極大化、つまり700 兆円の国債・地方債で、全体を弱体化させるため国民経済として維 持できない。ここが、産業構造改革の本筋です。 【中国】 中国では、一部の企業エリート・幹部の賃金は先進国水準です。 他方沿岸部のワーカー賃金は日本の20分の1から30分の1。 10億人の内陸の農村は月1000円、2000円の収入です。 中国の5つの経済特区には、地方政府(公安)が発行権を持つ短期 の「労働許可証」を持って入境する。1年、3年、5年の短期で、 労働者が入れ替わる。中国では平均値はない。 低賃金の10億の労働者予備軍が押し寄せる。 平均賃金も沿岸部のワーカー賃金も上がらない。 工業化を果たしつつある沿岸部では20%レベルの経済成長があり バブル投資がある。年20%の経済成長はシンセンや上海のように 街中が堀り起こされ、密集し沸騰する建設の勢いになる。 10億人の農村と国有企業では経済成長はゼロかマイナスです。 約3億の沿岸部では20%。総平均が7%という経済成長です。 【金融の非常時】 日銀があちこちの公式文書と幹部発言で「非常時」と認定している ことを忘れないことです。世界に最大の純資産を持つ日本の金融の 非常時は、(1)リンクしている米国金融の非常時でもあり、(2 )輸出で外貨を溜め込んだ中国を含む世界金融の非常時です。 今年は、通貨、金融、資源動乱の初年度になる。また新年度の9月 が危ない。日本のみならず米国も先送りしている。米国と日本で世 界の50%ですね。世界はもう・・・隣です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 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