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日本経済と産業の野蛮な打開策
                   (02年5月6日)
こんにちは、吉田繁治です。今朝から、香港とシンセンへの出
張です。シンセンには、5月4日(土)から6日(月)まで滞在し
ます。宿泊ホテルは、シンセンのシャングリラです。

本稿は、定期発行日の5月6日(月)はシンセン滞在中のため、時
間的な問題で書くことができないことを想定し、5月3日夜から書
いたものを送っています。連休明けで会社に出社される7日夜には、
日本に戻っています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Shangri-la Hotel Shenzhen
tel : (86-755)233-0888
address:
East side Railway Station,
Jianshe Road, Shenzhen,China
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

出張目的は、5月24日からの中国視察・研究ツアーの事前調査、
訪問先とスケジュールの確認と確定、その他の手配のコンファーム
です。(中国ツアーは78名、今日の時点で3名の空きです。)

米国研修なら、アポイントは(ある程度)安心できるのですが、今
回は1週間ほど前に突然思い立って、あらかじめ行ってみようかと
決めたのです。

香港やシンセン、または広州に在住の方で、本マガジンの読者の方
は、どなたでも気が向いたら、一言メールか、またはお気軽にシャ
ングリラへの電話、またはメッセージ(メモなら英文、音声なら日
本語)を下さい。食事は多いほうが楽しいですね。情報交換もでき
ると思います。

(↓メール)
yoshida@cool-knowledge.com
(出張中は夜しかインターネット接続しないため、メールの返事は遅
れることがあります。夕刻、アポイントなしでもホテルに直接来て
いただいたほうがいいでしょう)

ホテルの予約名は吉田繁治です。中国語でどう読むのでしょうか。
こうしたところが同じ漢字を使う時の便利さと不便さです。チェッ
クインのときは、Yoshida Shigeharu と書いておいたほうがいいで
しょうね。

実は、前回と同じくシンセン入境のVisaなしで香港へ行きます。
中国領事館が連休中でビザの手配ができないのです。香港からシ
ンセン行きの北に向かう列車に乗って約40分、着くと入境のゲー
トの脇に、当日発行の5日間有効のexpress visaを発行してくれる
China Travel Agencyがありますね。

5月4日の土曜日は、4時15分まで開いているはずです。という
ような頼りない旅です。

開いていなければ、やむなく香港で5月6日の月曜日朝まで待ちま
す。Visaは不便です。今、1年間有効のVisaを申請中です。

今回は、以降で「野蛮な論」を展開します。
しぼんだ内的エネルギーに火をつける必要がある。
おおまかな論を展開し細かい論理破綻には、目をつぶります。
官僚的で学者的な背骨のない論ではこの国の経済は救えない。

折を見て、以降の発想を、緻密な論にまで昇華するつもりです。
今は、初夏の夜の夢のつもりで。



   <Vol 99.日本経済と産業の野蛮な未来打開策>

【目次】
 
 1.素直に見れば不思議に思える日本経済の閉塞状況
 2.日本の人口構成と経済
 3.経済政策の誤り
 4.小泉改革への支持は、国民の怨みからのものだった
 5.野蛮な論:10の経済特区を一挙に作ること
 6.IBMフォーラム講演会の日程(再掲)





1.素直に見れば不思議に思える日本経済の閉塞状況

米国や中国に行くたびに、日本経済が閉塞状態にあるのが不思議に
思えます。

経済の問題は、日本も米国も中国も、それぞれ問題の質は別ですが
それぞれが大問題を抱えている。なぜ日本だけが、世界で目立つ経
済の中で、唯一、10年も伸びないのか。

本稿では、他に見ない珍しい、奇妙な(笑)視点で、つまり中国経
済と日本経済の比較から、考察を加えます。

この10年、世界で最も伸びているのが中国経済(7%以上の成長)
であり、10年間全く伸びていないの(0%成長かマイナス)が
日本経済だからです。

中国に比べれば日本の経済は進んでいる。中国は参考にならないと
いう論が無前提にあります。素直に見れば、そうは思えない。

日本は、進んだ西欧やアメリカを手本とすべきだという、官僚と新
聞論説が得意な論では、10年の閉塞状況は打ち破れない。

西欧は文化と蓄積は厚い。しかし20世紀初頭からすでに固定化し、
階級化して1960年代からはほとんど成長しない経済です。

米国景気の危険

現在の米国は、冷戦後の90年代に30兆円にまで削減した軍事費
を、9.11以降の政府予算では急遽、50兆円もの軍事費にまで
増額し、今後50年の新冷戦を掲げて産軍共同体を復活し、経済維
持を図ろうとしている戦時経済です。

金融バブルとITバブルの崩壊を、軍事産業、兵器産業と、その果
実は中東の原油の制圧で乗り切ろうとしている経済です。

日本の1990年以降のバブル崩壊からは、10年で400兆円の
公共投資だった。米国の2000年の金融とITバブル崩壊以降は、
軍事費の増強です。

西欧も米国も両方とも、これからの日本経済にとって参考になるも
のではない。西欧的ワークシェアリングは静かな沈滞に向かいます。
働く時間を減らし、賃金が減って、どういう理由で経済が活性化
するのでしょう。

米国を参考にするなら、5兆円の自衛隊予算を15兆円にしますか?
 米国は軍事費を20兆円増やしたわけですから、米国の半分の
経済の日本では、10兆円の自衛隊費増額に相当します。それで得
られる経済成長は、どんな帰結をもたらすでしょう。

ブッシュ政権が、9.11以降、相当に無謀な策を使ってることは
瞭然です。米国経済の今年の景気回復は、軍事費増強の戦時経済と
いうリソースの浪費によるものです。

90年代末には黒字に転じていた国家財政は、急に赤字になった。
戦闘機、ミサイル景気が今の米国です。バブル崩壊を戦争で乗り切
ろうとしているのがブッシュ政権です。

ここがマスコミ報道では(見えてはいないから)言わない部分です。

だだし、クールに見れば、戦時経済も資源の浪費はあってもGDP
の成長であることは間違いがない。ただしこのことは、皆が気がつ
けば、最後はマネー価値の劣化インフレに向かう必然性をはらみま
す。

日本から脱出した90年代の円は、ITバブルになった。
現在のドルへの脱出は、巡って軍事費の充当になります。

日本では無駄な公共投資、米国でそれに相当するのが、軍事費です。
(中国も軍事費が多い。本当の金額は明らかではない。)

中国の不良債権はGDPの半分

不良債権問題と言えば、中国商業銀行の、国有企業への不良債権は、
GDPの規模に比較すると日本よりもっと大きい。

中国の日本円で150兆円レベル(1人あたり12万円:日本人の
一人あたりGDP400万円の3%)です。

中国政府の公式発表ではありませんが、150兆円GDPの半分に
相当する額つまり75兆円は不良債権であると言われています。
日本で言えば、250兆円の不良債権に相当します。

『やがて中国の崩壊が始まる』(邦訳:草思社:01年11月)を
書いたゴードン・チャンは、国内融資総額の70%を、赤字を出す
国有企業が飲み込んでいるが、その融資は返済期限がくると利払い
分も含め手形のジャンプのように書き換えられていると言います。

日本の、利払いや返済ができない不良債権先への「追い貸し」とそ
っくりです。

中国の国有企業側は借り入れを、返す必要のない補助金のように考
えているようです。朱鎔基首相が、国有企業への補助金を、融資に
切り替える改革をやっているにもかかわらず。

日本の不良債権

日本の民間銀行の不良債権は、海外メディアからの見積もりでは
150兆円です。民間銀行の資産総額が500兆円ですから、その
30%は不良債権に相当する。(自己資本は10%ではなく、10
0兆円のマイナスで20%の債務超過でしょう)

金融庁や銀行発表の、動揺を抑える目的の寡少な見積もりや査定と
は違い、海外メディアの推計見積もりの方が正確であろうと思って
います。(参考は↓) 10ヶ月前の考察ですが、予測の結果はど
うでしょう?

http://www.cool-knowledge.com/0705furyou-saiken-mondai(1).html

不良債権の本命と思われる郵貯(≒旧大蔵省時代の財政投融資)で
は、明らかではありませんが100兆円がくらいは推計される。民
間と合計で250兆円。

政府機関や特殊法人は、中国の国有企業の経営に相当するとして間
違いない。

そうすると中国のGDPに対する不良債権が50%であるという割
合と、日本のGDPに対する不良債権の割合は、ほぼ同じになりま
す。中国も日本も、他に分からない部分が加わる。

本当か?

不良債権問題が片付けば、日本経済は成長すると小泉内閣も経済学
者も異口同音に語ります。これは本当でしょうか? 

不良債権が経済成長の障害の第一のものなら、GDP対比で半分の
不良債権を抱える中国経済が伸びて、ほぼ同じ重みの不良債権を抱
える日本経済が伸びないのはなぜか?

更に政府や官僚の不正、権益確保が問題と言うなら、中国ではもっ
と大規模な不正や、広範囲に瀰漫(びまん)する賄賂、権益確保が
ある。この面では、日本のほうがずっとましです。

【本当は・・・
むしろ問題は逆で、成長する意欲と原動力、ハードワークへの士気
が90年代でなくなったから、日本の不良債権問題は将来の暗雲と
して重くのしかかっているということが正確な認識ではないか。

私は、ここで人口の年齢構成の問題が一番大きな要因ではないか、
と考えています。

日本の団塊の世代は50代半ば、中国の団塊の世代は30代半ばで
す。人口構成の中の一番多い世代で、約20年の開きがある。

2.日本の人口構成と経済

日本の団塊の世代(Baby Boomer)の中心世代は、1980年に42
歳、2000年に52歳になった。

戦後の出生が急増し、その後は急減したため、後に続く大集団は、
団塊ジュニア、つまり現在の20代後半にまで待たなければならな
い。

基本はまだ年功賃金

年功序列の賃金制度が基本的に強い日本では、30代後半から40
代半ばくらいまでが賃金が上昇し、その後はなだらかなカーブを描
く。30代後半から40代前半は、(第二次)住宅取得と他の、車
や家電商品を含む耐久財購入が最も活発な時期です。

つまり、1980年代後半からわが国では大集団の団塊シニアの世
代は賃金が上昇するカーブに入りバブル経済の消費を支えたが、9
5年ころからは賃金上昇のカーブがなだらかになって、人によって
は低下するようになってきた。

▼賃金

総体で見ても、近年の賃金は、
1998年 −1.7%
1999年 −0.8%
2000年 +0.4%
2001年 −0.6%です。

賃金が伸びないのに、消費が伸びることはないでしょう。
これが素直な常識的結論ですね。

ところが今の日本経済論は逆転しています。預金を崩して、消費を
しないから消費が伸びないという論が主流になっている。

財務省は、賃金が減る環境で増税と年金や保険料のアップをちらつ
かせる。これでは生活の将来不安が強くなって、消費を増やせば家
計破綻になると予感する人が増えるのは当たり前です。

卵(賃金の伸び)が先か、鶏(個人消費と経済の伸び)が先かの循
環論ではない。

賃金の伸びが、経済の総体の伸びに時間的には少しでも先行しなけ
れば、経済全体は縮小のスパイラルに入るというのが経済動学的な
結論でしょう。

日本では、50代前半の団塊シニアが突出するいびつな人口構成と
、基本での年功賃金制度が加わって、90年代の特に後期からは、
総体の賃金は減少か横ばいにはいる構造問題を抱えていたのです。

加えて、そこで政府が実体的な引き締め策をやれば、消費が伸びる
ことは原理的にあり得ない。

3.経済政策の誤り

以上の点で、小泉内閣の経済政策には、根本的な誤りがあります。

i)不良債権、ii)国有企業の膨大な赤字、iii)不透明な制度や法、
iv)共産党独裁の中国中央政府が抱える将来のカントリーリスク
にも関わらず、中国の7%の経済成長があるのは、バブル的に過剰
とも思える積極的な投資と、13億人の一部ではあっても、大きな
賃金の伸びがあるからです。

根本の誤り

朱鎔基首相が、商業銀行と他からの融資にGDPの半分にあたる7
5兆円の不良債権問題があると言って、引き締めにかかれば中国も
沈む可能性が高い。

現下の、日本の財務省の増税派官僚主導による(実質的な)経済引
き締め策には、根本的な誤りがあります。

【財務省主導】
小泉首相の根は財政再建であり、政策は増税派の財務省官僚の起案
です。経済政策では、財務省コネクションで動いています。

【改革の本筋が逆転した自虐論】
先に未来経済を描かない、痛みを伴う改革は原理的に成功しない。
<まず痛みを、そうすれば後で成長がある>という自虐論が<構造
改革なくして経済成長なし>という小泉呪文です。

(1)日本はこういう未来へ向かう。
(2)そのために構造改革するという立論でなければ、リーダシッ
   プではない。

未来の構図(目的:経済のビジョン)への官僚と民の合意がない限
り、改革される側の抵抗が生まれますから手段である改革は、失業
を生むという論理が必ず出てきて、結果は進まない。

4.小泉改革への支持は、国民の怨みからのものだった

▼3つの怨みからの支持


国民が、昨年まで小泉首相を支持した理由は、掲げた構造改革が、

(1)90年代の400兆円の公共投資によって、ノーチェックに
   権益を拡大してきた官僚の権限をカットするものに見え

(2)同時に、公共投資や、裁量的な部分の政府予算に集う自民党 
   族議員の権益を削減するものに見えたからです。
 
(3)加えて、不良債権の処理は、企業に対して権勢を振るってい
   た銀行をいじめることができるという怨みから来たものだった。

まとめれば、この国を支配してきた、

i)官僚、
ii)自民党の族議員、
iii)銀行への国民の反発が、小泉首相への高い支持の根底にあった。

これが小泉構造改革へ支持の正体ですね。

論理にならない論理を展開する田中真紀子女史の人気が、未だに高
い理由も、外務官僚を含む官僚全般への国民の嫌悪が原因です。
官僚的発想を小ばかにする石原慎太郎氏の人気も同根です。

小泉首相は、官僚、自民党族議員、銀行を敵に回すとき、人気を維
持できる。妥協があれば人気はすぐしぼむ性格を持っていますね。

問題

問題は、水戸黄門が悪代官を懲(こ)らしめるように積年の抑圧の
恨みを晴らせば日本経済は再興に向かうか、という点です。

▼中国の朱鎔基の経済開放策とのアナロジー

日本経済の構造改革で言えば、その一項にあたる特殊法人を含む行
政改革は必要です。

これは、借り入れ(郵貯・年金・簡保を使った財政投融資を含む)
と国債発行分を、返済の必要がない事実上の補助金であるかのよう
に受け取ってきた日本の特殊法人や地方自治体の公共投資の改革、
中国と対比すれば「中国の国営企業改革」に相当するものです。

中国の90年代の、ブーム的な経済発展を促したのは、朱鎔基首相
のリーダシップによる、

(1)国営企業の民営化的改革
(2)各地方で、中央政府からの管理を弱め、地方の事業家を育成
  する郷鎮企業の育成、
(3)5つの経済特区を含む沿岸部では、外資の導入と、技術導入
  策だった。

いずれも中央政府の関与を減らす3つの開放政策の経済政策ミック
スがあったのです。

5.野蛮な論:10の経済特区を一挙に作ること

日本で最も必要なものは、旧世代ではない新世代の事業家です。
政府が規制的に絡むベンチャー育成策という姑息なものではない。
民間が未来図を描く、事業構想力です。

そのために、主要都市の沿岸部に「中国風経済特区」を作り、そこ
を実質無税の地域にする。臨海経済特区です。山間でもいい。日本
の税を含むインフラコストは高くなっています。経済特区内では。
強制的に下げる方法をとることです。

国民に負担を掛けるコスト無く、10の中国的な経済特区ができる。
中国の経済特区は5つの地域です。90年代の公共投資では年40
兆円、合計400兆円も湯水のように使った。それに比べれば、
実質ゼロのコストになる。

経済特区では、新事業創造に絡む規制をゼロにする。日本経済は、
コストが高いことが難点であり、技術力の問題があるのではない。

中国が共産主義のくびきから経済を開放するために、1国2制度を
作って成長の呼び水にしたように、日本では官僚支配、つまり税と
規制のくびきから解放した地区を作るだけでいい。

日本の国民負担率(税+社会福祉+地方と国の財政赤字)はすでに
50%の250兆円です。GDPでは官を通じるものが、すでに50
%に達している。しかも国民負担は年々上がることがほぼ確定し
ています。静かな沈滞に向かう経済です。

明治維新は、まずは廃藩置県によるお家取り潰し、内容は税を食っ
ていた武士階級(現代の官僚)の無産化だった。彼らの転職が近代
化のエネルギーを生んだ。そうした根底的なことを実行する必要が
ある。全部は無理でしょうから、全国10地域の経済特区でやる。

1400兆円の個人金融資産は半分くらいの700兆円は空洞化し
ているにせよ、残りはあります。成長地域を作れば、空洞化してい
る700兆円に実質的な富が戻ってきます。不良債権は企業収益が
上昇すれば、不良債権ではなくなる。

障害は、今の主として45歳以上の高級官僚の、民に対する嫉妬で
す。(30代の高級官僚の多くは、すでに意識が変わっています)
それさえ押さえれば、実質無税の経済特区を作ることができる。

阪神淡路大震災の後にも、経済特区構想はあった。潰したのは、神
戸のみ優遇では不公平になるという論理を使った大蔵官僚です。財
務省幹部は、今、財政の治療の名目で、患者を静かな沈滞に追い込
む。それが、日本経済の最大のガンです。

今から香港出発の荷物の準備です。
今日の夕刻は沸騰するシンセンへ。
その前に、シャワーを浴びます。
また、お会いしましょう。
(今回は5ページ短いです)

6.IBMフォーラム講演会の日程(再掲)

IBM主催のフォーラムは、全国ツアーの7割を終りました。テー
マ「競争優位のための知識経営」で以下のスケジュールと時間で基
調講演の時間を担当します。

5月16日 福岡 博多都ホテル(10:30-12:15)
5月21日 札幌 ホテルアルファ札幌(10:30-12:15)
5月31日 名古屋 ヒルトン名古屋(10:30-12:15)

(過去、IBMとの関係が全くなくても、無料でどなたでも申し込
みができます。申し込みは↓で受付中です。お早めにどうぞ。)
http://www-6.ibm.com/jp/gto/forum2002/

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