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ユビキタス・コンピューティング時代の実相に迫る

      グローバル経済と、コンピューティング論で解く
      21世紀経済  (02年5月20日特別号)

こんにちは、吉田繁治です。本稿は、100号突破記念として、有
料版でお届けした<ユビキタス(偏在)コンピューティング時代の
実相に迫る(1)>の序論部分を抜粋し、お届けします。



 <Vol.101
  ユビキタス・コンピューティング時代の実相に迫る(序論)>

【目次】

 1.磁気記憶の高密度化とブロードバンドネットワーク
 2.本稿のテーマ
 3.解体から機会へ
 4.機会(chance)というものの本質
 5.量産組織
 6.量産:品質のいいほうが安かった
 7.1997年という分水嶺
 8.真に異様な間違いの90年代
 9.方向はすでに決定
 10.まずはERPから
 



1.磁気記憶の高密度化とブロードバンドネットワーク

▼超高密度磁気記憶が現実になった


5月1日の日経新聞1面に「500円玉大のディスクに新聞25年
分、記録密度2倍に」とあります。日立がパソコン用の高密度ディ
スクを開発した。2004年から、サンプル出荷されます。

「垂直磁気記録方式」で、1平方インチあたり107ギガビット(
1070億ビット=67億文字相当)を記録できます。

【500円玉の大きさに新聞250年分のデータ】
更に、1テラ(兆)ビット(670億文字相当:新聞250年分)
の記録密度の可能性はあるとされ、超大容量のパソコンも腕時計の
大きさくらいまで縮めることが可能になる。

腕時計大のコンピュータに250年分の新聞の情報量、または同じ
ことですが、250種の、世界の、1年分の新聞の情報量が記憶さ
れる時代は、どんな時代か?

【Pervasive & Ubiquitous】
ディスクとメモリが小型化すれば、パーベイシブ(pervasive:至る
ところで使う)コンピュータ、またはユビキタス(ubiquitous:至る
ところに遍在する)コンピュータ時代が始まる。

あらゆるもので、小型化は(若干遅れて量産されたときの)低価格
化と同じ意味です。資源とエネルギーの投入量が減るからです。

【加えてBB:Broad Band】
他方、コンピュータ間をつなぐネットワークでは2003年からは
光ファイバーの家庭までの普及(FTH:Fiber To the Home)が進
む。

広帯域通信(BB)の面ではインフラストラクチャーでは、日本は
米国に先行します。

2.本稿のテーマ

こうしたことが
(1)一体何を意味し、
(2)企業組織、
(3)産業と経営、
(4)商取引全体がどう変わるのか、どう変わるべきかを、具体例
で多少寄り道しながら、本質から考察します。

日本で通信の自由化が始まった1985年(17年前)から、ネッ
トワークの設計・推進業務に従事しています。

(1)最初はEOS(Electronic Ordering System)だった。
(2)次はERPとEDI(Electronic Data Interchange)、およ
び動画を含むマルチメディアだった。
(3)そして今度は、BB(Broad Band:広帯域ネットワーク)で
す。
  ※EDIより容易な、WEB XMLも加わりますね。

【ビー玉状の世界情報】
通信のBB(Broad Band)と、高密度磁気記憶がセットになって普
及する。

今までのネットワークを「質的に超えるもの」です。1995年以
降の第一次インターネットが、7年後になって、第二次のS字カー
ブ成長に向かう。それが見えてきた。

世界の情報が、
 ビー球(だま)の大きさに圧縮・縮小された状態を、
 描いてください。

子供のころ遊んだ、きらきら輝くビー球です。ビー球から眺めると
、世界が縮小されていた。宝物のように圧縮された世界だった。透
明や緑色の丸いビー球にロマンを感じた。ナノテクは、至るところ
ですごいことをやります。

地球を10億分の1(ナノ)にするとビー球の大きさです。地球も
小さい。情報圧縮の面で、まさに世界の情報がビー球になる。ハー
ドウエアと通信で、それが可能になってきた。

人類史の天才、フォン・ノイマンの仮説「世界は、0と1の信号で
すべてを写しとることができる」 コンピュータのアーキテクチャ
ー(構造)や、プログラムの概念はその発想から生まれた。

3.解体から機会へ

ここに、
(1)「ビジネスの機会」があるとともに、
(2)「20世紀型の量産型、統制型のピラミッド巨大組織全般の
解体」が歴史必然的に起こるのです。

▼組織の効率化原理

組織の成立の(経済学的)原理は、
(1)組織構成員なら、情報と技術を早く共有化できること、
(2)取引コストが、外部の市場を介するより安いこと、です。

分かりやすく言えば、
(1)一回一回の短期プロジェクト毎に、採用試験を行って雇用(
組織化)し、終われば解散して、また別のプロジェクトで雇用する
よりも、
(2)長期で固定的に組織化し、情報を深く共有化するほうが、効
率的だとされたことが、組織の成立原理です。

組織の非効率化原理

ところが、人間の組織は長期では「生活共同体化」する。

初期は持っていた、組織であることによる合理的なコストの安さは、

(1)組織の階層が、役割の安定(=固定化)のために、多階層に
なって、組織内の情報伝達のコストが上がり、
(2)情報ノード(結節点:顧客や現場とトップの間の中間層)で
、多段階の情報調整が加わって、言い換えれば「情報に混じるノイ
ズ」(シャノンの通信理論)が増え、
(3)賃金は、生産性や個人能率に関わらず余計な権威で決まるよ
うになって、ついに、組織全体が非能率になるのです。

以上が今の日本の大組織です。戦争でも占領でも中断せず、明治以
降の伝統を持つ官僚組織、行政組織はその最たるものですね。

これらを生活共同体化した組織と言います。今、組織には明治維新
が必要です。官僚組織は情報組織です。

ここで、地球の全情報が、ビー球状になるような情報革命が起こる
衝撃は大きなものです。21世紀に向かって、コンピュータと通信
が、真の革命、ユビキタス(遍在)コンピューティング革命を起こ
すと思っています。

歴史的必然

歴史必然的とは、原理的に必ずそうなるということです。

【10年】
衝撃的なことを言いますが、
  今の、あらゆる機能を含んだワンセット型生産・流通の
  ピラミッド大組織の寿命は、せいぜいあと10年です。

終ったこと

30万人雇用の企業のほうが、1万人雇用、1000人雇用、10
0人雇用の企業より影響力があって強いという時代は既に(20世
紀で)終った。

しかしこうした認識は皆が共有できるものではない。

【後講釈】
いつの時代も「先端的な事実が小さく先行し」、数年後に「あぁ、
あの時がその時期だった」という後追いの理解しかされない。

特に、
(1)産業の実相と、経営的な意思決定の現場を知らない象牙の塔
の権威を争う学者・評論家の論説、
(2)そして自分自身が大組織であるマスコミの一般論説は、事実
認識に正確さはあっても、「未来認識」が欠落している。

後追いの解釈、後講釈と言います。
講談・浪花節・怨歌のようなもの。

未来に実証はない。科学的方法で未来を予測することはできない。
未来は、人間の意思と、プロジェ(仏語の企図)が動的に作る。

後講釈は、実業(未来への企図を含む)から離れた学者の仕事です。
事業家や実務家は、未来認識で進まなければならない。

4.機会(chance)というものの本質

▼機会を3項へ要約(summing up)すれば


(1)どこにも負けない「コア・コンピタンス:中核部分の競争力
部分」を自ら作り、または、他と結んで確保すれば、
(2)(事実上は無料に近いコストの)ブロードバンドのネットワ
ークで、コア・コンピタンスを相互に結んで、
(3)人や建物にかかる「固定費を極限にまで極小化」した、「変
動費のみのネットワーク型のアウトソース組織」を作ることができ
る。

こうした機会は、既存のピラミッド大組織の危機(crisis)と同時
に、崩壊と同時並行で生まれる。

まとめれば以上が、高密度記憶とBBネットワークの21世紀時代
の、事業作り、創業、経営、運営でしょう。

後で述べるように、日本が得意だった、普通の商品の「規格品量産
」の部分は、今も今後も日本企業のコア・コンピタンスにはなり得
ない。中国と同じ賃金水準にまで下がれば、話は別になりますが。
その選択もあり得ないことではない。国民の意思次第です(笑)

▼付加価値の内容

中国ではできない、
   研究開発、
   マーケティング、
   製品企画、
   ブランド価値作り、
   サプライチェーンの流通システム、
   情報化ロジスティクス
   輸配送管理、
   CRMの顧客リレーション作り、
   製品在庫管理、
   部品・部材・原材料管理、
   コア・コンピタンスを作る必要がある。

世界的に生産部分での付加価値は減少します。
流通・小売の付加価値の「割合」が上がる。
ここが、「未来認識」のキーポイントです。

生産価値20%+流通価値80%=最終価格100という感じです。

こうなるのは、中国製品を買うのはOECD10億人であり、先進
諸国での流通コストは(人件費に比例して)高いからです。

今後数年は、そうした方向への、本来の意味でのリストラであるは
ずです。リストラとは、世界の同業または異業種と比較したとき、
小さな部分でもいいですから「中核の競争力」を強化することです。

このことは、もともとグローバル競争産業である、
  「Open Market:開放商圏」の生産企業のみではない。

従来は、地域産業とされ、商圏から遠くの世界の技術進歩が関係が
なかった、「Closed Market:閉鎖商圏」の小売業でも同じです。

事例提供:17年前

17年前、日本の通信が自由化されたとき、ふと以上のようなこと
を夢想した。それがネットワークだった。

通信自由化とは、異なる企業のコンピュータの連結が、日本電信電
話公社(現在のNTT)から許可されたということでした。

17年前ですが今から思うと今昔物語です。
官の規制は、信じられない内容のものだらけです。
塩の製造・販売を自由化したのも最近ですから。
いまスーパーに行くと、急にいろんな塩だらけ。(笑)

通信の自由化が始まったときから、一人で仕事を始めた。固定組織
に変わり得る「ネットワーク効果」があるという本質直感があった。

【懐かしいこと】
17年前、通信の自由化では、
   誰でも欲しい情報が
   欲しいときに
   どこでも得られ
   それを利用できる社会が来る、と言われた。

自分のライフ・プランを賭けた仕事としてコンピュータ&ネットワ
ークに方向を求めた。

当時、組織の中で、遅刻も多く、発言や発表は周囲から浮きまくっ
ていて、嫌になっていたという理由もあります。これがホンネの理
由かなぁ・・・(笑)

以来一人です。(関係する会社は多数ですが)

単純な4項

17年前に決めたことを振り返ると、4項に集約できます。

(1)コンピュータは、高性能化しながら年率50%くらいで無限
に安くなる。
(2)ネットワークも速度が速くなって、データ量あたりでは年率
50%くらいで無限に安くなる。
(3)人のコストは、安くならない。
(4)最初は高くても、「高い間に先行して」コンピュータとネッ
トワークを大量に使うことが成功する。

【個人的なこと】
最初に買ったのは専用ワープロです。次は総額400万円か500
万円くらいのDTP(デスクトップ・パブリッシング・システム:
卓上出版システム)。

他の人の書類は、高価な印刷か、手書きでした。

管理工学研究所の「松」や、初期の「一太郎」は、文字の清書マシ
ン、仮名漢字変換マシンの域を出なかった。フロッピーディスクで
カチャカチャ動く文節変換の、ちゃちなものだった。

400万円は負担でした。しかしDTPよってプレゼン資料はどこ
へ行っても「どうやってこんなデザイン的なものを書いたのですか
」と言われる表現力を持たせることができた。

以降、DTPを3台使って潰した。今も1台は稼動しますが、使っ
てはいません。画面は21インチで、横が2100ドット、高精細
、机を全部占領する巨大さです。

WYSIWYG(what you see is what you get)と言われ、A4
の文書がほぼ実物大でスクロールなく一覧できます。B4も一覧表
示できる。OSはUNIXでした。大量の文書を作った。そのうち
、文書やプレゼン資料のデザイン能力は、向上してきた。

製本と大量印刷のみを頼んでいた零細な印刷屋さんが、これでは自
分たちは仕事を失いますと言った。数年後に彼は事業を閉じた。

ワードやパワーポイントより、図形作成は容易でした。
その後ワードに切り替えるのに、苦労しましたが(笑)

要諦は「新しい機械が高い間に先行して使う」という判断です。
決して、コストダウンではない。

大切なことは
  ・デザイン性を含め、文書に、必要な高付加価値を付加する、
  ・既存のものを、はるかに尖らせて、超える、
   という決定でしたね。 今から思えばそうだった。

最初は、コストアップです。

コンピュータやソフトが、翌年は半分に安くなることはわかる。
安くなってから使うのでは、だれでも同じになって作成するものの
「価値の差異化」のメリットを作ることが難しくなる。

一方、高いうちに使っておけば、競争者、追随者が少ない。

安くなってだれもが使うようになるまでの数年間に、「利用技術の
高度化」、「製品の付加価値化」で先行できる。これが差異化です


次に買い換えるときは、うんと安いから、コストは下がってその分
が利益になる。

一般化し、図式にすれば、
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)未来投資の時期:収益−コスト=利益は少ない :引き離す
(2)追随が出る時期:収益−コストの低下=利益が多い:儲ける
(3)次の未来投資 :収益−コスト=利益は少ない :引き離す
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最初の未来投資から、次の未来投資までは3年か4年です。
3年単位での(1)〜(3)のビジネスサイクルでしょう。
そう決めれば方向は決まる。

これがコンピュータを使って差異化するコツでしょう。
(他の投資でもおなじことが言えます)

あらゆるところで過剰雇用

今、大企業から中小に至るまで、そして官僚組織も過剰雇用が問題
になっています。原因は、1980年代まであらゆることを自分の
会社内でやろうとしたからです。原因はひとつに集約できます。

【1980年代までの暗黙の前提】

(1)雇用数を増やし、多階層型の大組織を作り、
(2)細かい専門分業にし、
(3)全体を作業マニュアルで「統制する」ことが、コストを下げ
るという暗黙の前提があった。

大組織が有利だとされていた。

5.量産組織

これを「ワンセット型組織」と呼んでいます。
ワンセットの逆が「アウトソース」です。

【寄り道の関連説明】
ユニクロは、
(1)流通がハイコストな日本に、流通組織と店舗を作って
(2)生産を一番安い中国にアウトソースすることを実行したネッ
トワーク企業です。

だから、売上高経常利益率が25%になった。ユニクロ以降はもう
日本のカジュアルウエアでこんなチャンスはありません。モデル化
で類似の方法が、蔓延(まんえん)した。ユニクロの方法は、真似
しやすい方法だった。

今後は、一時代遅れている住関連製品がチャンスです。住関連では
、住関連のユニクロが現れる可能性がある。住宅でも、住宅のユニ
クロが現れます。

住宅も住関連製品も世界で一番高いのが日本だからです。

(1)一番高い日本で、合理的な流通組織を作って、
(2)一番安い中国への生産委託(アウトソース)で、双方を情報
化ロジスティクスで結べば、これは大ビジネスです。

内需産業は輸出産業に比べれば合理化の余地がたっぷりです。

業界が遅れているとは、すべての業界人が言います。遅れていると
ころで、「プロアクティブ(pro-active)」に、先に変化を引き起
こすことです。キー概念は「pro-activeの速度」です。

環境変化への対応(re-action)は必要なことではありますが、リア
クションで大ビジネスは作ることはできない。環境変化は、pro-ac
tiveな企業が起こします。企業規模は関係がない。

事業創造と、経営戦略のキー概念は、企業機能のネットワークによ
る外部化つまりアウトソースによる、相互補完(win-win)の関係作
りです。

論を戻します。

20世紀型ワンセット型量産組織

20世紀型のワンセット型組織の根底にあるイデオロギーは、10
0年前のT型フォードの量産のテーラーイズムです。細かくした分
業を連結する生産ラインが効率化原理だった。

(注)イデオロギーとは、人の頭に住み着き「固定した主義」の意
味で使っています。

【100年前】
(1)今の多能工(ギルド的工匠:職人)による「セル型生産」に
近かった19世紀末の、受注生産の西欧型工業、つまり高額品の自
動車工業に、
(2)米国型の、規格品量産の大衆品のテーラーイズムが、コスト
と品質で勝ったのが20世紀初頭です。

(注)現代のセル型生産は、部品が標準化され高精度化されたため、
組み立てが容易になり、多能工化できるという理由に基づきます。
工業のすべてで、セル型生産が有効であるわけではない。

【小史で振り返れば】
19世紀末までの西欧の発明は
   ブルジョアと大衆の階級型消費と、受注生産だった。

20世紀の米国の発明は、
   中間大衆と、部品の標準化による規格品量産です。

20世紀末(1970年代以降)の日本の発明は、
   系列と、カンバンシステムと、全社TQCです。
   この時代、部品は例えば車では車種毎に作った。
   その柔軟性が、日本の製造業の命だった。

1990年代は、米国が、
   インテルに代表される電子部品の標準化に付加価値を作り、
 
   日本の工業はその下の、
   付加価値の低い汎用部品に自らを閉じ込めたことです。
   インテルのCPUは高いが、日本製D−RAMは安かった。

1995年頃からは、
  韓国等がD−RAMを中心とする汎用部品で、日本のコストを
  更に安くした。D−RAMは今DVD、液晶と進んでいます。

2002年以降は、
  韓国が行っていることに、更にコストの安い中国が加わる。

(21世紀はどう向かうか、ここが本稿の考察のポイント)

6.量産:品質のいいほうが安かった

大切な視点は、100年前からの米国型テーラーイズムは、
  ・部品の標準化を果たすことで、
  ・コストのみではなく品質でも、
西欧型の、職人の手作業による高級品セル型生産に勝ったことです。

今でも、英国で作るロールス・ロイスを高級にした2700万円く
らいのベントレーは、実際に乗ると職人の手作りということがわか
ります。なぜ乗ったか、それが謎(笑)

▼閑話:ベントレーに乗った

仙台に講演に行き、空港で街までのタクシーを拾うとき、なんとベ
ントレーが待っていた。

料金が怖くて、咄嗟(とっさ)に「私は乗らない、普通のタクシー
がいい」と断ると、60代の温厚な運転手は「料金は普通のタクシ
ーと同じです」と言った。

それは真っ赤な嘘でしょう、3倍はするのではないかと言えば、本
当に普通のタクシー料金と同じですと答えるから、おじさんを信用
し初めてベントレーに約1時間乗った。
料金は普通のタクシーと同じ額だった。

運転手は「こんなもの、近づくと皆怖がって逃げるから、乗るお客
さんはいねぇです。オーナーの困った道楽です。宣伝ですかねぇ。
意味があるかねぇ・・・」と言った。笑えました。ベントレーを普
通料金のタクシーにするオーナーは、いい人です。(笑)

室内は銘木を使い、総革張。2.5トンくらいの重さで7000c
cのエンジンと言っていた。リッターで3キロしか走らない。

戦車です。デザインは霊柩車です。

運転手は「帰りも迎えに行きます」というから頼んで、空港への往
復がベントレーでした。ホテルのドアボーイが、迎えにきた車を見
てどんな顔をするか、興味があった。(笑)

流しのタクシーがベントレーというのは世界で多分1台。仙台空港
に行った人は尋ねて乗ってください。貴重です。ちょっとした修理
代が100万円かかったと言っていました。故障だらけだそうです。
英国車の可愛い長所です。

生来、私の周囲には珍しいことが起こる。世の中は面白い(笑)

閑話から、話題を本題に戻します。

ベントレーのような19世紀末の西欧の車は、ブルジョアしか買え
ないくらい高く、デザインも高級だったが故障が多かった。専用修
理係り(=運転手)を雇える人しか、車は利用できなかった。

量産は、中世型職人生産より高品質だった

【部品の精度】
米国産のT型フォードは大衆が買えるくらい安価で、細部のデザイ
ンは安っぽかったのですが、部品の高精度化で故障は少なかった。
品質を測る目安は、まずは故障率です。

量産ができるためには、部品精度が均質に高くなければならない。
これが20世紀工業の本質だった。

米国型テーラーイズムを遡れば、アダム・スミスの『国富論』が冒
頭で解くピンの製造での機能分業による量産です。
中世型の職人生産から、組織分業の近代産業が国富論で一般概念化
された。

20世紀は強い企業は大企業であり、つまり雇用数の多い会社で、
作業を細かく分業し、流れ作業(作業フロー)を作って量産・量販
すること良いとされてきた。これが普及したのが、20世紀です。

規格品量産が有効な領域では、この原理は正しい。

問題は、規格品量産の領域は、(世界的に見れば最高のコストの)
日本では、独占的な限られた分野でしか付加価値を生むことができ
ないということです。

7.1997年という分水嶺

始まったこと

中国の工業化が本格化した1997年以降は、今後少なくとも10
年は続く「規格品量産の低価格化時代」に入った。未だにこの認識
がない人が多いことが、認識と方向を混乱させています。

中国は日本の物価を、10年のスパンで更に広範囲に下げます。

日本が、中国からの輸入を制限をすることはできません。日本は、
世界最大の貿易黒字国です。GDPの20%くらいは強い産業の部
分を抱えている。

ここでは、リカードゥが19世紀に述べた「比較生産費」の原理が
働く。

開放貿易経済、無規制の経済では、
  ・一国の経済の中でも、
   例えばトヨタが生産性が最も高いとすれば、
  ・生産性の低い内需産業である建設、土木、流通・小売、
   金融、農林漁業も、
   最終的にはトヨタと同じ生産性に向かうという「怖い」真理。

鎖国的な規制を加えれば別ですが・・・
鎖国では経済全体が、ひどいことになる。
洗練はあるが、進歩のない江戸時代になる。

日本人の平均賃金は、スイス等を除く大国では、世界最高です。
世界最高の賃金は、世界の後を追うのではなく世界の先端を走らな
い限り維持できない。

1980年代まで日本人は頑張った。

8.真に異様な間違いの90年代

▼400兆円も

90年代は、時代遅れの産業に政府が国民から国債・地方債で借金
をして、10年で約400兆円も公共投資に使った。その「つけ」
に苦しんでいるのが現在です。

異様な偉容

地方都市の公共機関の建物は立派です。新潟の県庁も、無意味に異
様に国会議事堂だし、建設中の石川県庁も偉容を誇る。

官は、「城の建設」に民の富と労働を使ったバカ殿様ですね。
(無駄な)細切れの1県1国際空港で、各県の空港も設備は最新鋭。
惜しむらくは、飛行機が、たまにしか来ない。

短時間で新潟、金沢、仙台、松山と回り思った。県庁や空港の設備
を立派にして、県民の生活が豊かになり、地域産業の生産性が上が
ったでしょうか?

なぜ、県庁を思い切り立派にする必要があるのですか?
自治体の職員の能力や生産性がそれで上がるのですか?

最後は、民を収奪する増税が必要になるだけのことですね。

国や地方の行政に絡む住民票を取るときの料金、パスポート取得料
金、運転免許証切り替え、高速道路の通行料・・・を安くするのが
必要です。銀行も世界1高い銀行振り込み料を安くする必要がある。
そして、これから5年の最大の問題は、税です。

増税が確定した

今政府は理屈をつけ「増税」に向かっています。
日本の産業も人材も高い必要経費なら、逃げます。
国際コスト競争で、負けるからです。

年金と保険は、明白に破綻です。
増税と料金アップで埋めるしかない。

大手銀行は、事実上の破綻で、バランスシートは偽装です。
20兆円(総資産500兆円の4%)以上の税の投入が要(い)る


【本当は国有資産、地方自治体資産の売却を】
日本は、産業と生活の諸々のインフラコストが高すぎる。
それが今後、今の官では必然的になる高税でもっと高くなる。
石原東京都政も銀行税をとるくらいなら都庁を民に売却すべきです


この国の政治家と官僚の精神には巨(おお)きな誤りがある。
ケインズの公共投資政策は、短期でやるときのみ効果がある。

【メンテナンス料は怖い】
ケインズ策を10年も続ければ、国中が無駄なものだらけになって、
経済はリソースを費消し、静かに、ゆっくりと死ぬ。

公共投資の後は、高いメンテナンス料、維持経費がかかる。
必要な維持をしなければ、廃屋や設備廃棄になる。

やってしまったことは取り返しがつかない。ケインズイデオロギー
に乗った官僚と、利権政治家がこの国を破綻させたことになる。も
う未来を過去形で言ってもいいでしょう。

民を再興することしか、方法はないのです。
官がこれ以上おせっかいをしないことを望みます。

予測

長期で予測すれば、日本の官僚体制も、ソ連の官僚帝国の崩壊のよ
うに、崩壊します。確定した未来です。その前にもっとひどいこと
を束になって、一気呵成(いっきかせい)にやるはずです。

【マキアベリズム的方法は、やりたい放題やらせること】
そこで、逆転が起こる。その期待ができる。途中で余分な修正意見
を言わず、この国の政治家と官僚にやりたい放題やらせることが、
結局は、堕(お)ちた官僚帝国の崩壊を早めることになるでしょう。

国民負担率は、財政赤字を入れれば、もう50%です。
個人所得が500万円なら250万円は官が集めて使う経済。平均
的には結局半分が公に召し上げられる。江戸時代の5公5民の復活。

こんな経済に未来はない。逃げたほうがいい。マネーエクソダス(
マネーのみの国外脱出)という方法もあります。(笑)

9.方向はすでに決定

日本の産業が中国と結びつかなければ、台湾、香港を通じ、米国、
西欧の企業がそれを行いますから、いずれ同じ結果を生む。

方向は決まっている。

日本の製造業は、更に広範囲に雇用縮小を迫られることも「素直に」
見れば、決定しています。

中国リンク

もちろん日本と言わず、会社独自の商品を企画・生産することは必
要ですが、
  どこでも生産できる「同じ使用品質の代替品」がある生産や
  流通では、<中国リンク>をとるしか方法はない。

<中国リンク>とは、中国の安いコストを、自社のコストとして(
長期に)内部化することを言います。

▼要点

品質のポイントは製品の最終使用者から見た「品質」です。どんな
に高度でも、使用者がその効用と価値を認めない品質では、無駄な
過剰品質になる。これを知らず、損をする企業が多い。

 カローラではだめだから、ベントレーを作ると言っても、
 ベントレーを2700万円で買う人はいないでしょう。

間違った方向

私は、読者の企業と読者のほうに、
 「働けど、働けど・・・・また次のコストダウン」という、
  短い人生で無駄な時間を過ごしてもらいたくない。

方向が間違っていて、無用な過当競争をやれば結果はそうなる。

お茶やコーヒー代も削るような、鉛筆にキャップをつけて、ぎりぎ
りまでやるようなコストダウンは、「産業の精神」としては大切で
すが、それが追い詰められた「コストダウンの方法」となるのは、
根本が間違っています。

【原理】
方向の設定に問題がある。
 方向(リーダシップ)の間違いは、戦略で修正できない。
 戦略(ストラテジー)の間違いは、戦術で修正できない。
 戦術(タクティクス)の間違いは、作業(ワーク)で修正できな
い。

第2次世界大戦の、米国と戦争をするという(リーダシップの)方
向の間違いは、軍人のガンバリと兵器戦略、そして若い命を引き換
えにした自殺行為である特攻という戦術では、修正が無理でした。

企業組織では、組織を守るという無前提の至上命題(または伝統的
企業、いわば神国日本と同じ)で、戦略や戦術でガンバって、最後
は全部を失う企業があまりに多すぎる。哀切を感じます。

10.まずはERPから

▼ERPの出発点

ERP(Enterprise Resource Planning:統合業務システム)は、
会社の各部署(経営管理、企画、経理、人事、営業、販売、倉庫、
物流等)で必要な、「基幹業務系のデータベース」を統合化するこ
とから始まります。

基幹業務

基幹業務は、ほとんどの企業で、商品のフロー(物的流れ)に関わ
るものです。

例えば、〔商品の発注⇒入荷⇒在庫(店舗では展示)⇒受注(また
は販売)⇒出荷(または納品)⇒代金回収⇒顧客管理〕が、商品の
大項目でのフローです。これを単品データベースで作るのが、基幹
のデータベースになる。

ここで、入荷データが計上されれば、経理のメーカーへの買掛金集
計データなる。出荷の時点では、売掛金集計になる。代金回収では
現金入金です。

【基幹のデータベースに関連付ける】
このように、有形の商品(または無形のサービス)フローで、各状
態変化(場所の変化、所有者等のステータス変化)を記録した、単
品レコードを基幹データベースにして、経理、営業、販売、倉庫、
物流の、すべての部署の作業を、商品フローで関連付けます。

【標準ワークフロー化と、エージェント化】
更に、
(1)買掛金集計の経理作業、販売作業、倉庫作業、物流作業の手
順を分解して、ワークフロー化(標準作業手順化)し、
(2)各業務に必要なデータベースの検索と集計・計算を、クリッ
クするだけで行える、データベース処理エージェント(代理人)に
します。

こうして出来上がるのがERPです。
21世紀に生きる企業は、大手、中小に関わらず、まずはここから
始めなければならない。

▼SCM

基幹データベースが、
(1)異なる企業間で、作業遂行とリアルタイムに共有化された状
態、(2)つまりデータベースの交換と共有化で、業務を相互補完
的に遂行(co-working)していくのが、SCM(サプライチェーン
マネジメント)の本質です。

ERPとSCMは連携すべきものです。

(1)製造のERP、小売のERPの間が、SCMで緊密に連携す
れば、
(2)その双方の企業はメーカーと小売ではない。ネットワークの
面では、顧客に向かった、ひとつの事業体と言っても同じです。

日本国内であろうが、中国だろうが、東欧だろうが、地理的な距離
はリアルタイムに交換される情報では、関係がなくなる。

リアルタイムとは、実際(リアルの世界)の処理が時間の遅れがな
く、コンピュータに入力されデータ処理がされることを言います。

(1)コンピュータ外部の、リアル(現実)の時間と、
(2)コンピュータ内部の、データ処理のタイミングの一致を、
   オンラインリアルタイム処理と言います。

地球の裏の異なる企業が、ちょうど隣の部屋の業務であるかのよう
に、100MビットのLANで結ばれた感覚です。これがSCMの
本質です。

(注)発注情報を送ることはSCMではない。それはファックス情
報のデジタル化であるEOS(Electronic Ordering System)に過
ぎない。

本格的なERPやSCMの処理が、個人の腕時計大のコンピュータ
で実行処理できる時代が来た。これが、ユビキタス(遍在)または
パーベイシブ(浸透)コンピュータのイメージです。携帯電話大の
スーパーコンピュータの時代になってきた・・・

大組織は、細かく分解する。多階層の大組織はむしろ不利になる。

個人や、コア・コンピタンスを持つ小組織(SBU:スモールビジ
ネスユニット)が有利になる。

機能分業でネットワークに相互接続された全体は巨大になる。
しかし、つながれるそれぞれのユニットは、小組織になる。

小組織を方向付けて、つなぐこと、結ぶことがリーダシップの機能
であり、行動の際の共通価値観がValueです。

以上、<ユビキタス・コンピューティング時代の実相に迫る(1)
>で序論です。21世紀の産業組織のイメージがつかめたでしょう
か。

未来のすべては、好ましいイメージ化から始まります。
言葉と概念によって、未来イメージは共有化できる。

今日はここまでです。またお会いしましょう。

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