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運用から(02.07.15) |
こんにちは、吉田繁治です。1昨夜、チューリッヒとロンドン9日間 の、金融視察から帰りました。3年ぶりの西欧です。ヨーロッパへ 行くのは、米国の10分の1以下の回数ですね。 7月1日にお送りした<Vol .107 サム・ウォルトンの遺言:小さ く考えよ(1)>の続編は後日お届けすることにし、スイスをテー マに<ハッピー・リアタイアメントは金融資産運用から>をお送り します。 <スイス:ハッピー・リタイアメントは金融資産の運用から> 1.国民の金融資産を、 最後は無効にしようとする国家機関と金融機関 2.金融資産を活かせない日本人 3.金利での対立関係と金融のゼロサムゲーム 4.90年代は金融戦争だった 5.遠い国:西欧 6.そしてスイス 7.他方、現在の日本国では 8.西欧・米国・日本 9.新しい意識を肯定的に見る ■1.国民の金融資産を、最後は無効にしようとする国家機関と金 融機関 ▼格差はあっても、他国に比べれば平均化 今回の論考には、心理的に反発を感じる人が多いと思います。金融 資産には、所得の何倍もの個人差があるからです。5%くらいの金 融リッチと、40%位の平均値の人、残り55%はゼロの純金融資 産でしょう。 これでも日本という国では、金融資産の面で、年功序列賃金と退職 金の効果から世界で一番平均化されています。大衆の金融資産での 1400兆円は、スイス並みに金融リッチな国です。 【ヘッジ】 この金融資産を、高齢化社会のためにインフレヘッジ(インフレ対 策)で保全し、利を生む運用に回すことは社会的にも有意義なこと です。金融資産を失えば、日本の将来は、暗い増税しかない。 【金融機関と国家の罪は、将来生活破壊】 この国は、国債格付けの下落までを招いたことに見られるように、 国民の金融資産(国債も持ち手から見れば金融資産です)を、国家 の機関がムダにしようとし、事実浪費しています。本来なら、暴動 が起こっても不思議ではない。 貯蓄好きの生真面目な国民に対する、政治と官の罪です。 犯罪の認識が、当局にすっぽり欠落しているのも罪です。 金融資産の保全(=インフレヘッジ=インフレ対策)や、世界のオ フショアでの節税は、国民の蓄積を使い、最後には、無駄なことし かしない国家機関との、智恵での戦いになる一面をもっています。 90年代の預金を預かって運用した金融機関と財務省をヘッドにす る国家機関は、「結果的には」、世界史上最高の預金を行った日本 人が描いていた将来生活の破壊をしていると言える。政治も行政も、 動機からではなく、結果で評価すべきものです。 金融資産は、退職後や病に倒れたとき、唯一、頼りになるものです。 預金はそのために行なわれた。その預金が無効になりつつある将 来が見えるのです。失業のとき国が、一体なにをしてくれますか? 【実は、ハッピーリタイアメントの欠落が根底の原因】 官僚が天下りをしたり、赤字だらけの特殊法人や第3セクターの渡 り歩きをし、金融機関のサラリーマン経営者が、会長や相談役とし て居残りをするのも、その根底の原因をたどれば、貯めた金融資産 のリターンで生活維持ができるスイスのような「ハッピー・リタイ アメント」の道が一般化していないことを示してもいるのです。 今まさに、貯蓄が将来のための有効な資産でなくなりそうな日本で、 富裕層が、国家の枠を離れ金融資産を活かしてきたスイスとロン ドンについて考察することは、有効な提案になり得ると感じていま す。 全員の自虐趣味を捨て、世界を広く見ることです。日本人は預金を 有効に使えば、中国を含む世界の資本家になり得ます。 世界の富裕層になり得るのが日本人です。 ■2.金融資産を活かせない日本人 ▼金融は国任せだった日本人 本稿は、個人金融資産大国をつくった日本人が、金融資産を利用で きず、90年代以降はライフプランで肯定的な将来イメージを描け ていないことに対し、割り切れないものを感じることが動機です。 「財務省発の高齢化社会の映像」では、増税と高い福祉負担、そし て、最後はインフレでの金融資産の無効化という長期シナリオしか 描かれていない。官の政策立案力の貧困と、支配者意識を示すもの です。 これは、金融戦略の貧困以外の何ものでもない。 日本の武器は、製造力と金融力であるはずです。 【財務省任せだった】 大切なことは日本国ではなく、日本人であるという点です。 金融資産の運用は、国家の枠を超える、個人の課題です。 金融には重量がない。生活は日本で行い、マネーは国境を越えさせ ることができる。オフショア(各国国家の管理を受けない租税回避 地)という、手段も準備されている。スイスのプライベート・バン クは、基本が、各国政府の管理から離れるオフショアです。 金融資産を持ちつつ、運用を「国家機関任せ、財務省任せ」にして きたことが、この国の経済の問題であり障害です。 ▼反故(ほご)にされようとしている 戦後政府は預金を奨励した。国民は従った。そして50年、年金を 含む個人金融資産は、反故(ほご)にされようとしています。 政府が、個人金融資産を無効化していく政策が見えます。国家が、 返済できない額の負債を抱えたからです。個人金融資産が多いこと の影には、負債過多の機関、企業がある。 輸出してペーパーマネーの米ドルや米国債権を受けとる生産大国は 作った。その恩恵で、賃金は高い国になり、高い貯蓄性向で個人金 融資産は1400兆円も積み上げた。(そのうちの過半は、60歳 以上の持分です) ▼1400兆円の巨額さ 1400兆円の金融資産が、わずか年利5%ででも運用できれば、 年間受け取り金利は70兆円(世帯あたり140万円・年)です。 現在の国税は50兆円です。その1.4倍にもなる。日本は世界の 本源的な資本の供給国になることができる資格で筆頭のに立ち得る 国です。金融資産を、戦略的に利用すれば、産油国のような無税国 家を、金融資産のリターンだけで作ることもできますね。 日本の高齢化社会は、他国とは性格が違います。金融資産を豊富に 持つ高齢者(資本家ではなく庶民)が多いという稀に見る特徴があ る。 介護だらけの高齢化社会というイメージは、年金の掛け金や福祉コ ストを上げながら、国債の利払いが寡少で済む低金利のまま、増税 を図りたい財務省と厚生省が描く、暗澹たる未来図です。 高金利になれば、1000兆円以上の負債を抱える国家は、国債発 行も金利払いもできず、破綻(=国家倒産)するからです。 ■3.金利での対立関係と金融のゼロサムゲーム ▼国家の負債が増えれば、国家と個人の利害対立が起こる 国家や国家機関が過剰な負債を持つと、金利を受け取る預金者と、 支払う国家財政の利害が、真正面から対立します。 金融資産では、資産を持つ個人と、1000兆円も借りた国家は、 一方の得は、他方の損になる対立関係になってしまうのです。 金融経済では、国債を野放図に発行する国家政策に従うと、個人か らの富の収奪を、唯々諾々(いいだくだく)と受けいれることにな る。まず、このことを理解していただきたいのです。 マネー歴史は、最後には、通貨の発行権を持つ政府の腐敗による紙 幣か、同じ意味ですが国債または紙幣の無際限な発行で終っている。 マネーを預けることで得られる金利や配当は、借りて金利や配当を 支払う側の損失であるという、受け取りと支払いが等しくなるゼロ サムゲームです。マネー発行権を持つ国家は、国民の富を収奪でき る。金融を国家が管理したがるのは、富を管理したいからです。 ここに、金融経済と商品経済との、本質が違う点がある。金融経済 では、国家の管理をいかに逃れるかに長期運用での本筋がある。ス イスとロンドンを見て、分かったことです。金融の面では国家は個 人と対立する悪です。金融へは、日本国としてではなく、日本人個 人としてという思考方法で、迫らなければならない。 ■4.90年代は金融戦争だった 90年代を一言でまとめれば、<金融争奪戦の時代>でした。米国 の90年代の繁栄は、日本人の個人金融資産の移転なくしては作る ことはできなかった。 ほとんどの日本人は、90年代で特に専門化した金融資産の運用に ついては無知で、ゼロ金利の預金を積み上げることを続けてきてい ます。預金以外の手段を知らなかったし、福祉費は強制徴収です。 【公定歩合】 金利を低くしたのは政府のように言われますが、政府・日銀は、金 利政策では、公定歩合(=日銀の市中銀行への貸し出し金利)で金 利誘導ができるだけです。 【金利が決まるところは】 金利の根底は、政府が発行する長期・短期の国債や他の政府債を、 金融機関(市中銀行・生保・財投・政府機関や日銀、および国外) がいくらの金利(=リスク)で買うかにかかっています。 【国債の購入に奔走したことの意味】 90年代は、運用難を理由に、金融機関が国債の購入に奔走した時 代でした。借り換え債を含めると年100兆円(新発債は30兆円) を買っています。国債買いの、合成的な行動の結果は、預金者へ の低金利です。つまり、預金者は金融機関への預金で、自分で自分 の首を絞め、国家への富の移転を図ったことになるのです。 結果は、金融機関が国債購入を通じて公共投資を促進し、民間融資 を減らしたことにつながっています。 金融機関が、企業貸出しを回収し回収資金を国債に振り向けている 理由は、「貸出しの回収リスクを含んだ金利設定」ができないから です。なぜ、回収リスクを含む金利設定ができないか? ここに、 巨額金融までを国家が管理する、日本的特殊事情がある。 ▼民間金融の裏道に、360兆円の資金 原因は、財投を通じて郵貯・簡保を使う政府系金融機関の、(内実 は既に破綻した)低利の民間貸出しがあるからです。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 郵貯残高 240兆円(02年3月末) 簡保総資産 120兆円(01年3月末) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【民間金融を無効にする巨大さ】 郵貯の240兆円残高は、4大メガバンクである、みずほ、三井住 友、三菱東京、UFJの合計預金高に匹敵します。 簡保の総資産120兆円は、4大生保:日本生命・第一生命・住友 生命・明治生命の総資産を上回ります。(03年4月には郵貯と簡 保をあわせた資金量360兆円の、総務省管轄の公社になります) 民間の金融経済の合理的行動を無効にする巨額郵貯と簡保があった ため(=日本人が郵貯と簡保に自主的に預けたため)、〔大蔵省→ 財務省〕は、濡れ手で粟の低利マネーを、理財局の資金運用部で利 用できた。表向きは国民のため、裏では官のために使った。 【大蔵権力に展開された】 大蔵省権力の源泉は、税収(50兆円)と国債発行(30兆円)に よる一般会計(80兆円)の分配力のみにあるのではない。一般会 計は形式的にせよ衆参両院の予算委員会で国会審議を受けます。 権力の源泉は、370兆円の郵貯・簡保、年金資産の運用を行なう 特別会計を、国民の弱い監視の下で、左右できることにあった。 ▼金融資産を使ったのは・・・ こうした仕組みから、日本人の個人金融資産を使ったのは、 (1)国債を発行し、公共事業を行なって、その影で権益を拡張し た、i)政治家、ii)官と関連機関、iii)公共事業の受託企業、 (2)米国債や株で、日本人の金融資産を吸収した米国でした。 【幸運】 しかし、幸いなことに日本人の金融資産は、1400兆円のうち、 800兆円が名目額の引き出しは保証される銀行と郵便貯金であっ て、米国人の金融資産のような不安定な「株依存」ではない。 日本人は90年代の金融戦争には敗れたものの、今でも引き出しが 可能な、800兆円の預貯金の「名目額」は残しています。 ▼不動産を含む日米の家計資産の比較 日本人の個人資産(99年) 米国人(99年) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 住宅・宅地 66.8%(3130兆円) 25.1%(不動産) 預貯金 17.1%( 800兆円) 9.4%(預貯金) 生命保険等 8.1%( 380兆円) 21.8%(保険・年金) 有価証券 3.4%( 160兆円) 26.1%(有価証券) 耐久財 3.4%( 160兆円) 6.0%(耐久財) その他 1.3%( 60兆円) 11.6%(その他) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 合計 100.0%(4690兆円) 100.0% (平成11年総務省消費実態調査報告と、米国FRBのFlow of Fu nds Accounts 2000より) 預金を小さくする手段はインフレですが、92年からの中国の工業 化は、実物経済での商品インフレが起こりにくい21世紀経済を作 っています。 中国が高齢化に向かう2008年頃までは、商品インフレがあって も一時的な歪みにしかなりません。 日本人の資産ポートフォリオ(資産の選択割合)で大きいのは、ま ず住宅と宅地(3130兆円)で、次が預金(800兆円)です。両者で3 930兆円(GDPの8年分)にもなる。 住宅や宅地は金融資産とは言えませんが、将来にはRIET(不動 産の投資信託での証券化:00年に法制化:まだ広まっていない) を通じ、金融資産化を可能にする方法も選択できます。 日本人の資産は巨額です。高齢化社会は、蓄積した金融資産を活か すべき社会です。 日本人は金融資産を運用で活かせば、ハッピー・リタイアメントの ライフ・プランを、(金融資産には資産格差があるので全員ではな くても)描くことができますね。 以上のような前置きを経て、ようやくスイスに至ることができます。 ■5.遠い国:西欧 スイスの金融経済について書こうと思うのですが、最初に、困難を 感じています。 ▼まずは西欧の遠さがある 多くの人と同じように、西欧は心理的に遠い国です。フランス哲学 という、経済や仕事には関係のない虚学に興味を持ち、米国は単純 すぎ面白くないと思っていた時期が長かった。 ところが、30代以降の仕事では、私にとって日本以外の「世界」 は米国でした。欧州は米国の付属物のように思えた。経済やビジネ スの面で、金融の面で西欧をまともに考えることは少なかった。 【粗雑な論】 この国では「欧米では・・・」という粗雑な論が幅を利かせます。 西欧諸国と米国までをひとまとめにする乱暴なものですが、両者を 区分する常識は一般化していませんから、多くの人は「『先進国』 では・・・」と理解します。 日本以外の世界を、日本より「先進国」であるか「後進国」である かで二分し、先進国は「欧米」でした。欧米とは「米国」でした。 ■6.そしてスイス スイスについては、風光明媚な山国で、永世中立を国是とし、金融 経済が発達しているらしいというイメージしかない。その点で、私 も多くの読者の方と変わりません。駆け足の3回目の訪問で、スイ スについての情報量は少ない。 訪問回数を増やし、あるいは実際に住み、情報量は増えてもその国 を理解できるということではない。国という単位の中にいろんな部 分があるという「拡散的な情報量の多さ」にしかならないことが多 い。現地在住の人と話していて、時に感じます。 ▼グローバル・スタンダード 90年代に、日本は針路を間違えたのではないかという思いがあり ます。米国の学者、ジャーナリスト、政府の一部が言った「米国標 準」を、98年くらいまでは「グローバル・スタンダード」と取り 違えていた。ここに、誤りの根源があったように感じます。 誤りは、外圧(=米国当局の世界戦略から来る政治的思惑)を論の 正当化のために、識者として利用する官、評論家、マスコミから来 た。 グローバル・スタンダードを通じ、世界政府ができるかのような仮 想イメージが醸成されていた。日本的なものはグローバル・スタン ダードにそぐわないという気分から、曖昧な内容をもつ「日本経済 の構造改革」に向かい、その路線が敷かれています。 〔米国の一部の、国際派の論〕を〔欧米の標準〕と取り違え〔先進 国世界の標準〕と理解するという局部拡大の誤りがある。 日本人の世界に対する考えは〔日本〕対〔世界〕の二元論に陥りや すいと感じます。戦後は、世界とは〔米国〕でした。ところが、西 欧人にとっては、<米国は世界ではなく、世界の一部>です。 ▼国家と個人 スイスとロンドンとを訪問し、はっきりと感じたのは、<国家は諸 外国に対し国家主権を主張し、個人(=国民)の資産と安全を守る ための機関である>ということでした。 日本国は、日本人の資産や権利を、外国に対して守る機関であるか? 一体、日本国は、どういう根拠と契約で、国民から税を徴収する「 権利」があるのかという疑問が、ふつふつと沸いたのです。 西欧諸国は、王権を倒した市民革命を経ています。法の公布、裁判 権、徴税権、軍を独占していた絶対権をもつ国王に対し、富裕な商 人や資本家である市民階級(ブルジョアジー)が革命を起こし、王 権を制限するか王家を潰したあと「市民という概念」で構成した、 市民国家を建設しています。 軍も、市民の共通の利益を守るためのものです。 英国は、日本が真似た立憲君主国ですが、ロンドンには女王すら自 由には出入りができない「City of London」という金融街がある。 そこは、民間経済の精華たる金融経済の中心地であり、金融の国家 支配を逃れていることを形式的にせよ、示す地区です。 天皇が、東京都知事かまたは区長の承認を得なければ、千代田区に 足を踏み入れることできないという、日本人の想像力を超えるよう な制限を未だに設けています。 これを聞いたとき、英国という国や西欧の、搾取する国王に対抗し てきた民間金融と、国家主権と対抗する市民というものの本質がわ かったような感じを抱いたのです。 国家に絶対権を持たせれば、最後は無際限な通貨増発や国債発行を 行い、個人の金融資産を無効にした歴史があります。 だから、金融については、民間経済の自律性を守るという了解が、 独立行政府たるCity of Londonを通じ形をとって見えたような気が した。 中央銀行は、民間経済と預金者の立場から、通貨発行の規律を守り、 無際限な国債発行を抑制する機関であるというのが本質です。 スイスは国全体が、他国からの金融の防波堤を築き、世界のマネー を集め、世界へのポートフォリオ(資産選択)の運用役を果たして いる国です。スイスが、世界の富裕層のマネーを集めることができ る理由は、スイスの銀行がもつ金融規律への信用からです。 スイス全体を、ロンドンの金融機関が集まるCity of Londonである と見ていいのです。マネーは、国家支配を嫌います。 ■7.他方、現在の日本国では 日本国は、市民革命(=資本家革命)を経ていない。王権=国家と、 資本家の利害対決を理由とする市民革命を経由していない。 ▼下級武士革命から 明治維新は下級武士による「官僚革命」であっても、市民革命では なかった。商工業はありましたが、基本は農業国で石高で表わした 田園資産はあっても、金融資産で富裕な市民(資本家)はいなかっ た。西欧的な貨幣経済の発達は、まだなかったのです。 明治時代は、米国と西欧の列強からの植民地化を避けるための政府 と結んだ御用資本家による富国強兵だった。明治以来、御用資本家 と政府は、諸外国に対し、共同戦線を張った。 このとき、日本と西側世界を、二元論的に対置して考える思考の枠 組みができた。 ▼戦後 第二次世界大戦の敗戦後、女性にも参政権を与えた普通選挙の「民 主国」が占領軍によって作られ、「平和憲法」が公布されましたが、 国家と市民の対決はなかった。官は国民を指導するポジションで した。 戦前の国債も、預金も、インフレで無効になった。 この国の官は国民の金融資産を無にした戦犯です。 インフレは、マネーの印刷権のある国家が起こす。 ▼象牙の塔の教条主義 マルクス主義を学んだ進歩的知識人による社会主義思想は、教条主 義的に、 (1)株を持たない経営者、つまりはマネジャーを資本家と誤認し、 それと労働者とを対立させる誤りと、 (2)労農派は、実は都会地や近郊では株は持たなくても地価の上 昇で土地資本家になっていた農家までを労働者と誤認した。 土地資本が大きくなった80年代末から、社会党が雲散霧消したの は、教条主義で現実を解釈する喜劇的誤認によります。 こうして階級は入り組み、所得と相続への過度の累進課税で、結果 平等の社会を作ってきたのが日本です。 ▼君臨する旧大蔵、現財務省 税を通じた所得分配は、財務省を頂点とする官が行います。実体的 な社会主義国の頂(いただき)に旧大蔵官僚、現財務省が君臨する。 この国で国家は、財務省です。とすると問題は煮詰まります。問う べきは<財務省と、その支配下にある官僚機構は、国民の資産と安 全とを、諸外国に対し守る機関であるのか>ということです。 更に言うなら<財務省の行政と結びついてきた族議員の集団は、国 民の資産と安全とを守る機関であるのか> 1400兆円の個人金融資産を、国富として守ろうとする姿勢は、 官にも議員にも見えない。むしろ、国民の富を合法的に簒奪し、自 分たちが使って無効化ようとする姿勢が見えます。 とすれば個人金融資産は、個人で守るしか方法がない。 スイスとロンドンを訪問しそのことを直感したのです。 金融資産を持った富裕な市民が、放縦なマネーと国債発行策を取る 国王に対し反乱したのが西欧の市民革命です。金融資産を持つ日本 人は、金融の国家政策の裏をかくことで、マネー脱出の手段を含ん で、静かな市民革命を準備すべきでしょう。 日本の構造改革(=本来は行政改革)は、政府マネーが枯渇すれば、 政策化しなくても自動的に起こるのです。 ■8.西欧・米国・日本 西欧の歴史は、資本家と国王の内部対抗の歴史だったという当たり 前のことを、今回初めて納得しました。 西欧は、富裕者によるブルジョアジー革命(=王権の打倒)を経た 後の国家群から成る。 ▼西欧 〔国王〕−〔資本家〕−〔官僚〕−〔無産階級〕の4項対立が、西 欧社会を形成しています。ここで資本家と無産階級の利害対立を避 け、共産主義を回避するために、税と社会保障費を課し〔官〕を通 じて福祉国家を建設したのが西欧です。混合経済と呼ばれます。 西欧では無産階級と資本家の間に階級差があります。労働しか売る ものがない無産階級の生活不安を、手厚い福祉を通じて少なくし、 平等な生活権をもつ「市民」として組み込んだのが西欧です。 無産階級とは、資産のリターン(利回り)では生活を維持できない 人達の意味です。有産階級は資産の運用で基礎生活ができる人たち です。日本人の多くは、有産階級になり得ます。これが、1400 兆円の個人金融資産の意味です。 ▼米国 対比すれば「新」世界である米国は、国王のいない〔新興資本家〕 −〔マネジャー〕−〔ワーカー〕という3項対立の国です。ワーカ ーはマネジャーになることができたし、マネジャーは新興資本家に もなることができた。これが米国を成立させているアメリカンドリ ームでしょう。 20世紀後期からのアメリカの資本は庶民マネーの年金資産(pens ion fund)です。その意味で米国は比較的に平等な年金資産を通じ、 ワーカー階級までを市民(citizen)に組み込んだ。 (注1)町民や庶民: 日本人にとってはっきりした意味を持つ〔町民や庶民〕は、英語に なりにくい。英訳を見ればcommon peopleですが、これでは町民や庶 民の意味が逃げます。 (注2)世間: 日本人にとっての「世間」も、societyとは違います。世間体が悪い ということは恥や倫理の根幹を成す。社会体が悪い、社会(society) を騒がせたと言っても、意味を成さないのです。 戦後日本は、〔官〕−〔土地資本家〕−〔庶民〕という3項対立で した。庶民は学歴とペーパーテストで官になることができ、起業と いう通過門をから資本家になることもできた。その意味で日本と米 国には、階級が固定的な西欧と違い、流動的な社会という点で親和 性があります。 日本人にとって、日本国とは何か?海という輪郭に守られているこ の国では、道路を越えれば別の法と制度、文化・行動様式の他国が あるという経験はない。外国は遠い。国内には外国人も少ない。 国家が、外国に対抗して、国民の資産と安全を守るべきだという考 えも薄い。資産と安全は、国家機関がなくても自然に守られるもの だという意識がどこかにある。 そうでなければ、ゼロ金利の預金を積み上げ、結果的に個人金融資 産を財務省の意のままに使わせるような愚は冒さない。 90年代は個人金融資産を使う官の経済領域が拡大した時代だった。 官の経済が肥大した90年代を通過することで、結果的に、21 世紀の日本人が戦うべき相手は「官の経済」になったと判断します。 ■9.新しい意識を肯定的に見る ▼ブランド好きという肯定的要素 日本人のブランド好きは、日常生活の貧困を思えば、アンバランス で滑稽な面があります。少なくなったとは言え、スイスの有名ブラ ンド店でも、日本人の若い男女や中年女性も目立ちます。 これを、逆に置きかえれば、違った風に見えてきます。英国や米国 の若い男女や中年女性が、日本の高級店で目立つとすれば日本人は どう思うでしょうか。マネーにあかし日本文化の粋を漁(あさ)る 憎き連中になる。 米国でも西欧でも、富裕者でない庶民が、ブランドを買いまわる生 活習慣はありません。庶民は「買えない」というのが正確な見かた です。日本人は平均すれば今でも豊かです。背景には、個人金融資 産があります。若い男女は、個人の通帳にはなくても、親が金融資 産や住宅を持っています。 試しに西欧か米国の同じ世代の人と、自分と親の持つ〔金融資産+ 住宅資産〕の合計を比較してみて下さい。 日本人のブランド嗜好を、バロック真珠のようにいびつではありま すが豊かさのひとつの現われであると肯定的に見ています。製造で 最も大切な「品質感」を養う訓練にもなる。使えばわかるからです。 肯定的に言えば「いいものがわかる新しい日本人」と思えます。ブ ランドが似合うかどうか・・・今後も選択の失敗と言う経験を重ね れば、自然に洗練されるでしょう。(笑) ▼しかし、未知の領域である金融資産の運用 ところが、金融資産の運用という知的作業になると現状は寒い。豊 富な個人金融資産の運用を、財務省に委(ゆだ)ねています。 日本人は、庶民階級が世界で金融資産の運用を行える最初の国にな り得る資格を有しています。 しかしながらこの国の金融機関も証券会社も、その運用を委ねる先 としては落第です。ここに障害がある。 ▼金融資産の運用とは? 金融資産の運用を、運用をすることで「働くことよりも儲ける」と 考えれば、それは入り口で失敗することが確定した失敗の戦略です。 一時は儲けても、数年単位または10年のスパンでは、結局マネー を部分的に、またはすべてを失い、時には自己破産に至る。 そうではなく、10年単位の長期で、 (1)インフレでの目減りを抑え、インフレには必ず勝つこと、 (2)そして、可能な限り節税すること、この二点のみに注力すべ きです。 節税と脱税は違います。節税は合法ですが脱税は違法です。 ・・・と偉そうに言っても、今回のスイスとロンドンの研究で初め て、運用原理の上記二項が分かった。私はマネー投資の初心者にも なっていない。運用していないからです。運用できる資産額を持っ ていないというのが恥ずかしくも真実です(笑) ▼官のための納税は馬鹿馬鹿しいと思う人たちが出てきた (1)繰り返した公共事業の、「限界効用」の減衰があり、 (2)官の腐敗と、醜い政治家が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ) した90年代によって、納税の社会的な意義に、疑問を抱く人々が 次第に増えてきた感じを受けています。リターンが期待できない国 民年金の支払いを拒否をしている人も、25%います。 税と国債がダムと箱物に変わって業者利益になり政治と結びついて いるという構造を、嫌というくらい見たのが90年代です。 今回のスイスの金融研究で、一緒に行った人がふと言いました。 <納税者ランキングを見るとこの人たちは馬鹿じゃないかと思いま す> 私にはそうした視点はなかった。所得以上に税をとられることはな い。納税者ランキングに載ることは、所得が多かったことを示す。 彼らが馬鹿だという視点はなかった。税を収めるのは国民の義務と までの杓子定規な倫理観までには至りませんが<多額納税者を馬鹿 じゃないか>と思うことはできなかった。 特殊法人を含め、税と国債を食い物にする集団は確かにいる。 (官の全体がそうだと言うのではありませんが) そうした人のために納税するのは、考えれば考えるほど、馬鹿馬鹿 しい。 金融資産の運用は、10年単位の長期で、 (1)インフレでの目減りを抑え、インフレには必ず勝つこと、 (2)可能な限り節税すること、この二点のみに注力すべきである と、分かったと前項で述べました。 この結論の背景は、 (1)インフレを起こすのは国家である。 (2)税を徴収するのも、国家であるという二点です。 金融資産の運用は、自分の資産価値を保全するために、国家や他国 に対抗し、ポートフォオでのヘッジの手段をとるということになる。 ここまで来ると、ロンドンのシティやスイスの存在、そして、スイ スの150のプライベートバンクの意味、ヘッジファンドや金融資 産の運用の意味と、国家権力の介入を排除する金融の奥の院の方法 の本質が分かるのです。 金融資産は価値を長期で保全すべきもので、短期で儲けを狙うもの ではないということが発見でした。利回りの狙いは長期(10年) で、毎年10%複利にとどめるべきです。そうでないと運用で冒険 し、最後はマネーを失います。失うリスクを減らすことが運用です。 今回の論考は、金融資産の意味と背景の基本的なところを解きまし た。折りに触れ、より具体的に同じテーマを取り上げます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 ▼<ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊分を超える 情報価値をe-Mailで>のサンプル閲覧と申し込み http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 有料マガジンベストトセラーを継続中です。 http://premium.mag2.com ▼クール・ナレッジ掲示板(BBS)で投稿 http://cgi.members.interq.or.jp/venus/yoshida/BBS/light.cg |
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