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(02年7月29日) |
こんにちは、吉田繁治です。大阪は、35度を超える暑さが続いて います。セミの合唱が窓から飛び込む。お元気でお過ごしでしょう か? 本シリーズの前稿では、<小さく考えよ(1)>として、ウォルマ ートの創業者サム・ウォルトンの、経営における強固な「信念」と 言える「現場主義」を示しました。 今回は、それを受け、ウォルマートという「現場から創造する自律 型組織」の運営について、その具体的な方法に迫ります。130万 人を雇用する世界最大の企業が、なぜ「小さく考える」ことを社是 にするのか。 サム・ウォルトンが2年間の闘病の後、不治の多発性骨髄腫で亡く なったのが、自伝が出版された1992年です。 <1991年末にかけて病気がかなり進行し、先も長くないと悟っ たとき、父(サム・ウォルトン)は、家族や回りの人の説得もあっ て、できるうちに自分のストリーを紙に残しておくということに注 意を向けた。いったん書くと決めると彼は、人生で成し遂げたすべ ての事に向けてきたのと同じ集中力とエネルギーをもって、この本 のプロジェクトに全力を尽くした。彼は自分の本をどんなふうにし たいかに非常にこだわりをもっており・・・>(同書:翻訳版の p360) 車の量産ラインを作ったフォードのように、産業史に残る事業家サ ム・ウォルトンが、死の床でこだわりをもって書き残したものは、 特別の注意深さをもって読む必要があります。(そのために必要な 原文を時折示します) 単語の意味とコンテキストをたどれば、死を悟ったサム・ウォルト ンと、時計の短針の進行とともに短くなる時間を感じながら、対話 をしているかのような、貴重な時間が得られます。こうしたときは 正確な時間を示すデジタル時計は気味が悪い。 経営者は言葉と数字で考え、指示をする。多くの経営者に会います が、優れた経営者は、表現が巧みで、言葉の使い方に才と力があり ます。政治家も、国民を動かす言葉の使い手でなければならないの ですが、この国では、今は稀です。 <サム・ウォルトンの遺言(2):1店舗を考えよ> 【目次】 1.中央集権型経営の忌避 2.現代経営での驚異 3.ウォルマートの経営 4.ウォルマートの6つの方法 5.Think One Store at a Time(一度に多数の店舗を考えるので はなく、一店のことを集中して考えよ) 6.2つの案内 ■1.中央集権型経営の忌避 世界最大のチェーンストアが、なぜチェーンの定型的な方法(formula) とされる中央集権型(centrally driven)の、「本部は判断し決める、 現場は売るだけ」の経営方法を、忌避するのか。 ▼嫌悪する <Man, I'd hate to work at a place like that(=centrally driv- en chain),and I worry every single day about Wal-Mart becoming that way>(原文P278) <(諸君)、私なら、そんなところ(中央集権型運営のチェーン) で働くことを嫌悪する。そうだからこそ、ウォルマートが中央集権 の方法で経営されるようになることを心配しない日は、1日たりも とない> hate という表現、every single dayという強調に、着目して下さい。 サム・ウォルトンはトップです。トップが、現場を統制するトッ プダウン組織では働きたくないと言う。では、どの方向があったの か? <For several decades now we've worked hard at building a company that's simple and streamlined and takes directions from the grass roots>( p279) <単純で効率的で、(顧客の立場である)草の根から方向を決める 会社にしようと、数十年ハードワークをしてきた> 草の根から方向を決めるには、微細な草の根を見て調べなければな らない。そうすると、曖昧に、役員室から命令する原則論とは違い、 ハードワークになる。 鍵は、理解しにくい<streamlined:流線型のように抵抗がなく、す ばやく、顧客ニーズから方向を得て動く効率的な会社>という概念。 ここに、サム・ウォルトンが脳裏に描いていた組織イメージが見え ます。脳裏にないもの、イメージ化されないもの、そして具体的な 方法になり、その方法を長期間、守ることがないと、何事でも大き なことは実現はしない。 彼が嫌った組織はどんなものか。 <At our size today, there's all sorts of pressure to regiment and standardize and operate as a centrally driven chain, where everything is decided on high and passed down to the stores>(同p278) <今のわれわれの規模になると、軍隊風に命令で統制(regiment) し、規格化(standardize)し、すべてを上で決め、店舗には(命令が) 上から降りてくる方法で運営される、本部指示命令型のチェーン に変えようとするあらゆる種類の(内外からの)圧力が、かかって くる> そうした組織では「現場の思考力」は隠蔽され、「現場の商人の感 性」もなくなる。彼はそんなところでは働きたくないと言います。 ウォルトンは、創業者でありトップです。その彼が、トップダウン の方法を嫌う。自分が働きたくない労働時間の切り売りの組織では、 社員(associate:仲間)も働きたくないであろうとする現場想像 力がある。死後10年で、130万人の組織になったトップが、で す。 ここに、ウォルマートの、現場が自律する組織の、生命の鍵がある。 ウォルマートには、本部商品部のバイヤーは極度に少ない。 ▼日本の組織における職階と職能の問題 日本の組織を見ていると、形式上は本部スタッフよる集権的な運営 形態を取るところは、比較的少なく現場主義(またはその残骸)は はある。しかし、年功序列の序列(seniority)、職能(job funct ion)、職階(job class)と絡んで、激しい身分差になっている障 害が、最近は見えます。 中小組織でも、集権化に対し、トップ自身が意識して戦い、洗い流 さない限り、放置すれば組織のカビのようはびこる。流通では大手 量販の内部組織と、同族経営の多くに、中央集権と本部の責任を曖 昧にする官僚主義、セクショナリズムがある。 上(職階)と横(職能)の壁は一番下の現場から見ると、縦横に鉄 のようにある。組織の上から見ればそれらが見えない。とりわけト ップには見えない。 集権組織化や、組織の(実体的な)多階層化との戦いは、組織の中 に、縄張りと固定的な枠を作ろうとする人の生存本能との戦いでも ある。彼は、それを実行した。内部との戦いです。 <Being big also poses dangers. It has ruined many a fine company. ---including some giant retailers,----who started out strong and got bloated our out of touch or were slow to react to needs of their customers>p277 <大きな組織であることは、(有利さと同時に)危険を招く。大組 織化がいくつかの巨大小売業を含め、優良会社を多く潰した。最初 は強いが、慢心し、顧客のニーズ(要求)に対応するのが遅くなっ て、顧客との直接の接点を失う> すぐ動ける1店舗の時と同じ「個客」との関係を保ったまま、ビジ ネスを大きくすること、これがウォルトンが決めたことだった。 ▼現場主義 「現場主義」とは、世界最大の28兆円の売り上げを誇る4400 店であっても(巨大チェーンであるからこそ)、1店舗から、「個 客」の買い物内容と行動から、店舗での「個客」への対応と1個の 商品から考え、「小さな」PDCAの改善サイクルを継続し、効果 が上がる方法を原則化し、類似の環境の他店にまで広げる経営姿勢、 思考方法、運営方法を示しています。 【Think Small】 サム・ウォルトンは、こうしたことをまとめて<Think Small>と言 った。 【やはり原文】 実は、前稿では、『ロープライス エブリディ』(同文書院:竹内 宏監修)の日本語をもとにしていたため、隔靴掻痒(かっかそうよ う)のもどかしさがありました。 翻訳は便利ではありますが、ウォルトンの呼吸、息吹、強調、重要 なメッセージが伝わって来ない。それに、誤訳や文の抜けと思われ るところも多かった。 この書は、知らず知らず中央集権に陥っているチェーンストア経営 に、突破口をひらく名著であると感じます。残念なことに、日本の 流通業や他業種の企業も、稀代の事業家の遺言的メッセージを受け 取っていません。これが本稿を書き、お伝えする理由です。 ウォルトンの死から10年、ウォルマートの経営は、発展を続けた。 一時は、サム・ウォルトンの精神は消え、ウォルマートも並みに なると思われた。当時の流通マスコミは、そう言っていた。 ■2.現代経営での驚異 ウォルマートの間断なき成長は、現代経営の驚異です。以下の達成 を眺めて下さい。40年にわたって、一度も資金的な困難に直面せ ず、複利の指数関数グラフをたどって、40年余も売り上げを伸ば した企業は、世界の産業史に比類がない。 この比類のなさはどこから来たか。ここが関心の対象です。 1960 1970 1980 1990 2002 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 売上 $1.4m $31m $1.2b $26b 218b 円換算 1.7億 372億 1440億 3.12兆 26.16兆 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 年間成長率←71%→ ←15%→ ← 36%→ ← 19%→ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 利益 $0.1m $1.2m $41 $1b $6.6 店舗 9 32 276 1528 4414 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 150坪の小さなバラエティストアを1945年9月1日にオープ ンし、15年後の1960年には、まだ年商1億7000万円、利 益が1200万の、9店舗の零細チェーン過ぎなかった。 【売上増加】 10年後に372億円(年間成長率71%)、20年後に1440 億円(同15%)、30年後に3兆1200億円(同36%)、 42年後の2002年には26兆1600億円(同19%:$1= 120円)です。 42年で15万5714倍の年商になった。年平均では32.93 %の指数関数での売上増加率になる。店舗数は490倍。従業員1 30万人。 以下の数表から、事業意欲を掻き立てられる人もいるでしょう。 1.33の10乗(33%成長の10年)= 17倍 1.33の20乗(33%成長の20年)= 300倍 1.33の30乗(33%成長の30年)= 5194倍 1.33の40乗(33%成長の40年)= 89963倍 1.33の42乗(33%成長の42年)=159136倍 20年目を過ぎるあたりから、数字が急に大きくなることです。 これが、環境変化を先取りし続けるpro-activeな経営がもたらす 指数関数。20年から30年という期間の「変化を引き起こすこ との継続」は世界的大事業を作る。 しかし最初から将来を幻視できる人はいない。 <サム、この会社をどれくらい大きくしたいんだ。君の計画は何な のだ。(フェロルド・アレンド:) フェロルド、私たちは流れに従う。私たちの資金で大きくしていく ことが可能なら、1、2店舗は(maybe)増やせるかもしれない(サ ム・ウォルトン)>(翻訳書p305) 1960年、ウォルマートはバラエティストアの9店舗経営だった。 収益率は高かったが、1店舗ずつ丁寧に作っていくしか方法はな い。 ここは、事業の成長のコアとして見逃せない部分ですから、原文を 取り上げます。拙い翻訳を試みながら。 <I really believe what I said then, and I still do. But I figure out a way to grow and stay profitable, and there was no logical place to stop. The way I approached managing the business, I always tried to maintain a sense of hands-on ,per- sonal supervision___by flying around to take a look at our store on a regular basis> (P275) <私は、あの時そう言ったことを心から信じていた。今も考えは変 わらない。しかし、私は、「成長し、しかも高収益であり続ける方 法」を考え続けて発見し(figure out)、その方法を発見すると、 論理的に言って、拡大をやめる必要はなかった。事業を経営する私 の方法は、というなら、私はスケジュールを決め店舗を見るために 飛び回ることによって、手動で、つまり自分で監視する感覚を常に 維持することに努めた> サム・ウォルトンのウォルマートは、「何を考え続けて発見(figu- re out)したのか」、そこが、興味の焦点になる。 60年代から70年代にかけ、ウォルマートは9店舗から32店舗 になっています。売上成長率は年々70%です。9店舗から1年に 2店舗か3店舗に投資することを継続した。 こうすると普通は、店舗への投資のコストで、会社の年度収益は低 下する時期がある。ところが、かれは「成長(=出店)し、しかも 高収益であり続ける方法を」発見(figure out)したと言います。 それが、「店舗を定期的に訪問し、監視することで、自分が手動で 経営する感覚」だという。 ここでのキーワードfigure outは「理解し、答えを発見するまで問 題や状況を考える」というニュアンスです。そして、スケジュール 決め、店舗と顧客、商品を見て回る。ウォルトンは続けます。 <しかしもともと私は、大学時代の、自分の新聞配達のルート作り すら、人に委任するたちであり、店舗をマネジする、可能な限り最 高の人材を雇用することに努めた> 自分の目で店舗を定期的に見て、「手動感覚」で店舗を動かすこと、 そして、店舗を委任できるマネジャーを次々に探すこと、両者の ミックスがあった。後々までこの方法は徹底され、ウォルマートの 方法になる。超人はいない。当たり前のことを徹底する才を持つ人 はいる。売り場で当たり前のことが実行されていないことが、すべ ての障害の原点です。本部の指示はすばらしい。売り場が動かない。 ▼80年代後期以降 本部商品部集権型のシアーズ、Kマートが苦境に陥ったのが、80 年代後半からです。このころから、ウォルマートはさらに業績を伸 ばす。つまり、方法論でシアーズ、Kマートを超えていた。 1985年頃、今のサプライチェーン(SCM)のコアになる、在 庫発想ではない、ロジスティクス発想のWMS(Warehouse Manage- ment System)が成立します。ウォルマートは、クロスドック・セン ターを完成させる。これを契機に、商品部集権型チェーンを横目に、 破竹の成長を続けた。 1985年という時期は、米国消費マーケットが、供給主導から、 需要主導型に大きく変わった転換点になる時期です。 しかしこの表現は、間違いを生みやすい。 正確には、 ウォルマートという、店舗主義(=現場自律)でち小さく考え るを社是(Value)とする経営が、 Kマート型の本部バイヤーの発注に基づく商品展示と販売から、 POSに基づく補充発注(CAO)と リードタイムを短くしたクロスドック・システムによって、 消費マーケットで商品部主導型のKマートに勝って来た、 と言えます。 以上の意味で、ウォルマートが米国の消費市場を、pro-activeに変 化させた。80年代までは先行していたKマート型の中央集権型チ ェーンストア経営がなければ、ウォルマートは生まれなかった。 ウォルマートは、ベンダーに、店舗展示権を持つバイヤーを窓口と した商談で終わらせるのではなく、バイヤーと協働で売り場と顧客 に目を向け、そこからすべてを考えることを要求し続けています。 サム・ウォルトンは<ウォルマートが(商品部による)中央集権の 運営体制をとっていたら、ベンダーも細かいことをやる必要はなく 面倒くさいことはなかっただろう>と言っている。ベンダーの商談 は、売り場への展示権をもつ本部バイヤーと行い、そこで価格と納 品の条件交渉をしていればいいからです。 ■3.ウォルマートの経営 ウォルマートでは、以下の、中央集権とは逆立した組織が成立して います。バイヤーの知識と権限による中央集権の運営に対比すれば、 「情報システムを共通インフラとする1店舗主義の経営」と言え ます。(重要) 以下のように分解できます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 [顧客つまり「個客」集合] ↓↑ ┌─[商品 POS 店舗現場=御用達機能] ↓ ↑ ↓ [短いリードタイムで商品補充する ↓ クロスドック・システム] ↓ ↑ └→[ベンダーとバイヤーの協働体制による 売り場のカテゴリマネジメント] 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【留意すべきこと】 要素をまとめた図式を見ると「自分の会社の現場や「個客」 を考えない」傾向を生むことがある。 問題はそこです。「問題の現場」はウォルマートの現場ではない。 「自店の現場と顧客」からの発想、顧客不満足の問題点の把握と、 改善活動でなければならない。 重要: (1)経営とは、優れた他社の事例と思考方法を基に、そこから自 社での応用問題を「作って」、 (2)「応用問題」を解き、PDCA(plan-do-check -action)の サイクルとして実行する活動です。自社(または自分の部署)にと っての応用問題は、他人からは与えられない。 自社(または部署)の、応用問題を作るプロセスが必要です。問題 を作るプロセスがないとケーススタディの受動学習(learning)で 終わる。知識を獲得したら、次は、自分の現場を見るべきです。 ▼御用達(=サービス化)に新しい息吹を 図表で示した御用達とは、顧客集合の意を読み取り、「個客」needs を満たす活動です。店舗現場でSales活動や、販売促進のSaleを行 うのではなく、「個客」needsの充足(Satisfy)を行う。 だから特売Sale を否定するeveryday low priceの概念が生まれた。 つまり satisfy needs(ニーズの満足)であり、それがSatisfy Custo- mer 、つまりCS(Customer Satisfaction)という、経営の目標(vi- sion)を生んだ。ウォルマートはCSの発明元です。 (注)everyday low priceは、どの他店よりも「売上対比」での店 舗運営コストが低いということで成立しています。 本部、店舗、 物流の運営コストの合計(一般管理販売費)が16.5%である小 売業は比類がない。 特売とsales活動の否定という点では、ウォルマートと比肩されるホ ームデポも類似しています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ホームデポの基本コンセプト】 ホームデポ(Home Depot)では、 (1)店舗は、顧客にとって住関連部品の倉庫(Depot)であり、 (2)倉庫(Depot)の社員は、陳列商品の推奨販売をする販売員では なく、 (3)「個客」の住まい(Home)の改善要求(Improvement needs)を受 け、専門家として御用達(needs satisfy)の作業、 その内容は、住まいの改善ための技術指導と提案、 施工サービスプランと、見積もりの提供を行う。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 CSを、日本で伝統的な「**御用達」と考えれば、供給サイド主 導の近代チェーン論とは違う新たな発想が湧くのではないか。小売 業の「サービス業」化と言い換えてもいいのです。 サービスの原義は、執事やサーバント(専門職)が、主人(顧客つ まり「個客」)に対して行う主人の要求(needs)の充足作業です。 日本では「サービス」しろと顧客が言えば、価格を下げろという意 味ですが、英語では普通それは「special price」を提供してくれと いう表現になる。service chargeを無料(free charge )と解釈し た人が多いのですが、それは逆に付加されるサービス料です(笑) ▼最重要なこと ウォルマートは、「結果的」に、世界で最大量の商品を生産させ売 っています。量産・量販をすることによって、価格を下げ、大衆に 商品を普及させるという近代量産主義のリード概念はない。量販の ための大量仕入れはしない。そうではなく、店舗自律主義があり、 顧客ニーズ満足主義がある。店舗での成功の結果を量販に結びつけ る。その活動をするのが店舗の裏方である本部、およびバイヤーで す。 ここが、シアーズ、Kマートとの天地の差を生んだ。結果は似てい ても、量販にいたるプロセスの根底が、現場主義、1店舗主義です。 ウォルマートが中小であるとき、シアーズは頂点にそびえるトップ 企業で、Kマートはウォルマートのはるか先を行っていた。量のバ イイングの手法から行ったのでは、先行する規模に勝てない。 <もちろん業者はウォルマートが中央集権的(centrally driven) な会社になったら、喜ぶだろう。彼らの仕事は確実に楽になるのだ から>(同書p309) ▼2002年のコスト構造 (単位10億ドル) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 売上高 $218b (100.0%) 売上原価 171 ( 78.4%) 売上総利益 47 ( 21.6%) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 一般管理販売費 36 ( 16.5%) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 営業利益 11 ( 5.0%) 営業外費用 1 納税引当 4 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 純利益 7 ( 3.2%) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ローコストの真の意味】 上記の数字(原価構造)を読むとき大切なことは、店舗の単位面積 あたりのコストを下げるローコストオペレーション体制作りから、 店舗オペレーションコストが売上対比15%以下になっているので はないということです。 それは、結果から見る本末転倒のやりかたです。 ローコストの体制を作るということではなく、店舗をすばらしくし、 顧客needsを満たす売り場を作ることで、店舗の単位面積あたりの 売上高があがり、その結果「売上対比」でローコストオペレーショ ンになっているということを理解しないと、どこかの国の、かつて の流通トップ企業ように、原因と結果の関係を根底で間違えます。 [原因(すばらしい店舗)→結果(売上対比で、ローコスト)]は、 [ローコスト(原因)→すばらしい店舗(結果)]とは違います。 顧客満足を犠牲(trade off)にした経費カットやローコストは、売 上対比のコスト比率で、逆にハイコストになる。ビジネスは最初も 最後も、顧客満足の追及しかない。 【即断で誤解をしないように】 中央集権(centrally driven)は組織を動かす、優れた方法です。 しかしウォルマートは、その方法を取らない。ただしウォルマート でも当然、店舗は本部が決める共通商品は展示します。個店経営で はない、チェーン経営です。チェーン経営でありつつどんな方法が あるのかが次のテーマです。 ■4.ウォルマートの6つの方法 サム・ウォルトンは、<私がとった方法は特別のものではなく、あ りきたりの経営の常識(common sense)に基づくものだ>と言いま す。経営の常識を、適用する方法がすこし(a little)違うと言う。 どう違うのか。 ▼6つの方法にまとめれば 1.Think One Store at a Time(一度に多数の店舗を考えるのでは なく、一店のことを集中して考えよ) 4000店を超えるチェーンで1店を考えるとはどういうことか? 2.Communicate ,Communicate, Communicate(全部の情報を知らせ て話し合い、話し合い、話し合い続けよ) コミュニケーションは双方向です。本部は情報を現場に与え、現場 は店舗のナマの声、顧客の動勢、競争状況を伝える。 3.Keep Your Ear on the Ground(地面に耳を接するように、現場 の生の声に耳を澄まし、現場の地鳴りを聞け) 4.Push Responsibility ---and Authority----Down(組織が大きく なるにつれ、責任と権限を現場に、組織の下の階層に与え続けよ) 5.Force Ideas to Bubble Up(現場のアイデアを、沸騰した水中の 泡が上にあがるように、「強いて」上にあがらせよ) 6.Stay Lean, Fight Bureaucracy(効果を上げるに必要なコストし か掛けない身軽な組織を保ち、官僚主義の煩雑な手続きを撲滅する ために戦え) シンプルです。織が大きくなればなるほど、多くの人が動くので、 方針はシンプル&明快である必要があります。 体験では、組織規模の自乗に反比例し、方針の種類や項目数はシン プルにする必要がある。大組織を動かすコツでしょう。 そして少数の本質的なことを徹底する。 この6項はリーダシップ論で、Value(行動規範) に当たるもので す。以降では1項目ずつ内容を見て行きます。(本稿は最初の1項) ■5.Think One Store at a Time(一度に多数の店舗を考えるので はなく、一店のことを集中して考えよ) サム・ウォルトンは、6項の中で、Think One Store at a Timeが一 番大切だとします。売上や利益が大きくなると、金額や数字の塊の として見る傾向が出る。ところが、それを作っているのは一人一人 の「個客」と一個の商品、一人の社員です。 組織が大きくなると、目の前の「個客」を満足させることが、顧客 集合を満足させることだとは考えなくなる。そうするとウォルマー トの全員が職を失うと彼は言う。 <So, we know what we have to do :keep lowering our prices, keep improving our service ,and keep making things better for the folks who stop in our store. That is not something we can do in some general way. It isn't something we can co- mmand from the executive office because we want it to happen. We have to do it store by store ,department by department, customer by customer ,associate by associate.>(p280) <だから、われわれは、果たすべきと決めた責務を果たす。店舗に 立ち止まってくれた人々のために、価格を下げ続け、サービスの改 善をし続け、いろいろなことを前よりよくできるようにし続ける。 これは、漠然とした一般原則のようなもので実行できることではな い。つまり、役員室から命令を出せば、できるような事柄ではない。 なぜなら、われわれは、それらのことが店舗現場で実際に起こる ことを求めるからである。つまり、1店舗ずつ、1商品部門毎に、 1「個客」毎に、1社員毎に行わなければならないことだからだ> ここがウォルマートの現場主義の精神です。全店に命令を出せばそ れで終りではない。1店舗毎に具体的な問題や実行の障害、環境の 違いがある。その問題と、真正面から格闘すること。 とすれば、本部の仕事はどういったものになるのか? <That makes it management 's job to listen to those merchan- disers out in the stores .We have these buyers here in Bentonville ----218 of them ----and we have to remind them all the time that real job is to support the merchants in the store . Otherwise, you have a headquarter driven system that's out of touch with the customer of each particular store, and you end up with a brunch of unsold workboots, overall ,and hunting rifles at Panama City Beach store .where folks are be gging for water guns and fishing rods and pails and shovels・ ・・・>p280 <こうしたことから、本部の経営の仕事は、店舗に出かけたマーチ ャンダイザーの声を聞くということになる。そうしたバイヤーはこ のベントンビル(本社所在地)に218名いる。われわれ経営陣は、 彼らに常時、彼らの本当の仕事は、店舗にいる「商人」を 支援し 支えることだと言い聞かせなければならない。そうでないと、個々 の店舗の「個客」との接点がない本部主導型のシステムをもつこと になる。その結果は、水鉄砲、釣竿、バケツ、シャベルを顧客が求 めているパナマビーチ店で、ワークブーツ、オーバーオール、ライ フルが売れ残るという結果になる。・・・> ウォルマートでは3兆円を超える90年売上の時、店舗数1528 で、本部バイヤーは218名しかいない。異常な少なさ。本部がリ ーン組織であるということ、ここには、ベンダーとの協働での、売 り場のカテゴリマネジメント体制があるのですが、これは別稿で述 べます。 ポイントは、本部バイヤー(スタッフ)は店舗にいる商人(mercha nt)を支援する役割であるということ。店舗の社員をmerchantと言 っている。なるほど現場社員こそ、商人(マーチャント)です。本 部バイヤーは、現場の商人を支える裏方、つまりスタッフであると いうことです。バイヤーは購買係りではあっても、商品を売るマー チャントではない。 staff: the people who work for an organization スタッフ:ある組織の(支援のために)働く人々。 ウォルマートは、店舗にいる「創造的なアイデアを持つ」商人の組 織化に着目した。なぜ現場が創造的アイデアを持てるかというと、 その理由は「顧客と直接に接する」からです。これは何回もサムウ ォルトンが別のところで述べています。 【knowledge of spot(場の知識)】 そうすると、本部バイヤーは、店舗の商人の組織を裏から支える黒 子、スタッフ、つまり現場で起こった成功を、同じ条件の他店で実 験し、公式化、原則化して他店に広める機能になる。これが、know ledge of spot(場の知識)を積み上げる「知識経営」です。 多くのチェーンストアは、本部の固定観念をばら撒くheadquarter driven systemで逆になっているのではないか。Kマート、シアーズ、 JCペニーがそうだった。スタッフは本社から、店舗や顧客を見 おろす。こうしたことが、障害になっていた。 チェーンストア紹介者は、本部バイヤーをcreative line(創造業務) と言った。組織上、顧客との日々の接点がないバイヤーが、商品 開発と店舗の商品展示を決めるとはどういうことか、ここに問題が あると看過したのがサム・ウォルトンです。 日本に紹介された「チェーン論」はサム・ウォルトンから見れば、 モデルの結果を模倣し、逆立していたことになる。シアーズ・Kマ ートが不振を決める中、なぜウォルマートが躍進したか、この理由 を見る思いがします。 (注)日本型の組織は、本部が上に立つ中央集権のKマート・シア ーズではなく、ボトムアップ型のウォルマート組織と運営方法がな じみやすい。店舗こそ、新しい需要が見えるクリエイティブな現場 であるとする位置づけと、店舗への人材供給があれば、日本の小売 業は、活性化するのではないかと思えます。ここが経営の本質部分 であり、サム・ウォルトンが言うようにあとのことは小さい。 <われわれは、社内のことについて、微細なことまで調べ、話し合 う。毎週の売上を地域(regions)より小さな単位に立ち入って話し 合うことはKマート、シアーズ、JCぺにーなどではないだろう。 われわれは、個店のことを話す。 アラバマ州のドーサン店、イリノイ州のハリスパーグ店を取り上げ るとき、スタッフ全員が、その個店について知識をもっていること が要求される。 業績評価はどうすればベストか、20%の売上増加はいい評価なの か、悪い評価なのか。賃金はどうなっているか、どこがその店舗の 競争店か、それら個店で、われわれはどうやっているのか。 会社の、最小単位に焦点をあわせることを通じ、われわれは会社全 体の方針の認識を小さいことから行う。>(原文p281) 全体生産性が低いように思える、店舗現場の「個客」の、社員の、 商品の微細なことの、ゼロからの検討は何を生むのか。 <個店に焦点をあわせることで、多くのことを成し遂げることがで きる。最初に、当然、その店舗を、実際に改善できる。 その改善プロセスで、パナマビーチストアが、例えばビーチタオル で競争に勝つための独自のやりかたをしているとすれば、われわれ (本部)はそれを学ぶ機会が得ることになる。 そして、すばやくその情報を全米の海岸に近いストアに、送り届け、 そのパナマビーチストアの方法がどこでも効果を生むものかどう か、見ることができる。 これが、われわれに、新しい次の原則をもたらすことになる> ウォルマートの第一原理、Think One Store at a Timeのポイントは ここに像を結ぶ。ウォルマートが、いつ行っても、すばらしい店舗 である根底の方法がこれです。当たり前のことを、小さく、徹底し て実行することです。それが、大売り業でない、顧客の生活から考 える「小」売り業の本質です。イメージができたでしょうか?現場 の社員が活き活きする理由は、アイデア創造と参加があるからです。 ■6.2つの案内 8月1日に発売される『販売革新8月号』に<需要創造の欠落から 脱する、ライフスタイル・マーチャンダイジングへ向かって>を寄 稿しています。 また、8月の最終週と9月の週の2班に分けて行う<ニューヨーク 視察・研究ツアー>は、両方とも定員の空きがありますから、臨時 号の別便の案内を送信します。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ご案内】 1ヵ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-mailで 姉妹誌:ビジネス知識源プレミアム(有料版) 600円/月(毎週水曜日発行) <まぐまぐプレミアム>のサイトで会員登録が必要です。↓ http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 会員登録の翌週から配信され、いつ申し込んでも同月配信分は読む ことができます。バックナンバーの購読もできます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ▼著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 ▼<ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊分を超える 情報価値をe-Mailで>のサンプル閲覧と申し込み http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 有料マガジンベストトセラーを継続中です。 http://premium.mag2.com ▼クール・ナレッジ掲示板(BBS)で投稿 http://cgi.members.interq.or.jp/venus/yoshida/BBS/light.cg |
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