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(02年9月16日) |
こんにちは、吉田繁治です。2グループ、70名と同行したNY視察 ・研究ツアーから、9月10日夜に帰りました。今回の考察は、<ロ スセンター組織と、プロットセンター組織>をテーマとします。 NYで視察に使ったバスの事故をきっかけに、組織体の経営の根本の方 法への考察を行いました。官僚組織と、株式会社の経営に共通します。 ロスとは英語では経費、プロフィットは収益です。PL(Profit& Loss Stament)は損益計算書。ロスセンターは、経費をつかう組織・部 署、プロフィットセンターは収益を生み出す組織・部署を言います。 意味内容は、以降の記述で明らかにしていきます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <ロスセンター組織とプロフィットセンター組織> 【目次】 1.米国社会の一面 2.行政と市民の関係:中国・米国・日本 3.行政のコストと関与の拡大 4.ロスセンター構造の組織から、プロフィットセンターの組織運 営へ 5.プロフィットセンターの方式では 6.官の根本問題は予算の無謬(むびゅう) 7.官の組織も民の組織も同じ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.米国社会の一面 ▼バスの燃料流失 第2グループの視察3日目、マディソン街を北に、Zagatの調査でも< best of best>とされている食料品店「ゼイバーズ」に向かっている と、42丁目の交差点でバスが動かなくなった。最初は右前輪がパン クしたということでした。 外を見ると、液体が泡だって道路に大量に流れ出していた。どこから 洗剤が流れているのかと思っていましたが10秒くらいするとバスの 中にまで、石油の匂いがしてきました。 視察に使っていたバスのタンクが破れ、燃料が道路一面に流失してい た。ここで始めて、事態が分かった。 燃料の流失なら、バス火災の恐れがある。バスは普通はディーゼルエ ンジンで軽油を使う。すぐに火がつくガソリンとは違うものの、火災 になれば、生命の危機です。急遽、バスを降りることにした。 講義をする時は、バスの中でも、全部をMDに録音することにしてい ます。その瞬間のMDを聞くと、「バスが交差点で停止→パンク、バ スからの水→石油の匂い→燃料の流出ではないか→事態の認識→危険 →全員でバスを降りる」という数十秒のプロセスが分かります。 大事故の可能性もあった。45名のメンバーは、全員クールな態度で、 無事でした。 経過が録音されているMDの音を大きくして聞くと、バスが止まる直 前に、後部座席のほうで「バーン」という音がしていた。 このとき道路工事の穴を覆っていた鉄板に車輪がのりあげ、跳ね上げ られた鉄板がバスの燃料タンクを直撃し、破った。それで全燃料が流 出した。珍しい事故です。 消防車が来て道路は閉鎖された。一行は代わりのバスに乗って、視察 を続けました。 ▼顛末(てんまつ) 翌日、事故処理の顛末を旅行社に聞くと、 (1)バス会社は、消防車の出動をさせたこと、流出した燃料で道路 を汚したことを理由に、その経費の数万ドルの損害賠償を、NY市当 局から請求された。 (2)市から賠償を要求されたバス会社は、NY市から道路工事を請 け負っていた土木会社の、穴を覆っていた鉄板の処置が悪いための事 故(被害)であるとして、土木会社への訴訟を起こした。 (3)以前同じ場所の道路工事の穴に落ち、2名が死傷を負っていた。 市からの請求が事故の当日に来たことにも驚き、バス会社が対抗措置 で即座に訴訟したことにも驚いた。さすがは、弁護士の国です。 日本で同じ事故が起こった時、道路の管理責任を持つ市を、民間のバ ス会社が訴えるということは考えられても、道路を管理する市がバス 会社に損害賠償を要求するということは考えにくい。 日本では道路を預かる市の管理責任が追及されることが「常識」です。 ところが。この事故ではNY市は間髪をいれず、バス会社に損害賠 償を求めた。 日本で同様のことを行政が行えば、非難ごうごうでしょう。 日本人の「常識」では景気調節も含め最後は「行政責任」を求める。 自然災害の洪水の被害も行政の責任になるから、日本の行政では、い たるところに洪水防止のダムや堤防、自然災害防止の設備を作るとい う予算の使い方が展開されています。ここには、国土の均衡ある発展 を促すという結果平等の思想も加わる。 行政は「管理責任」を求められることを恐れ「安全」を求め、責任回 避のための手続きは複雑化し行政予算がムダに拡大するという面もあ ります。 日本の行政は「無謬」でなければならない、そして国民を保護しなけ ればならないという前提が、行政のコストを上げ、国民負担になって 面が強い。 一方、NYでは、 (1)NY市当局(公共の資産の保全責任を持つ)が、市民(バス会 社)に対し、 (2)バスの事故によって、市が管理する公共の資産(道路)に損害 を与えたという理由で、損害賠償を請求した。 米国の行政と市民の関係がうかがえます。「行政と市民は対等の関係 」であるという国家の基本が見える。行政は、市民に対し単に「優し く」はない。 NY市は独立行政体として、道路という便益を市民に提供する民間会 社のように思えます。 市が管理する道路の、バスの燃料での汚染に対し、事故がもたすもの であれ、損害賠償を請求するのが「常識」だという考えが見えます。 今回のバスの事故で、こうしたことが米国の国家組織、行政組織かと 思ったのです。本質は、時としてこうした現象から見える。 ■2.行政と市民の関係:中国・米国・日本 中国のシンセンを訪問した時、現地で家具工場を経営する日本人事業 家に訊ねたことがあります。 <中国と日本で、行政は、どこが一番違うと感じますか?> <日本では行政が産業や市民を守ってくれるという感じです。中国で は行政が守ってくれるという感じがない。企業に「たかる」印象を受 けます。> 共産党独裁の国家で、絶対権をもつ「行政」は、成文法の運用を超え 裁量で、産業に「たかる」感じを与える面をもっているようです。中 国には選挙による議会がない。法は行政が公布し、法の解釈と運用は 、3権分立の裁判所でなく行政が行います。 中国には新たな新興資本家、旧ソ連風に言えば特権階級であるノーメ ンクラツーラ階級が発生し、成文法に基づかない人治の政治を利用し、 独占的な利益を得ている面が見えます。 行政との意思疎通の薄い企業に対しては、官僚はマイナスの裁量を働 かせる。「たかり」に見える。ここが現代中国社会と経済で、改革を 行うべき問題でしょう。このことを多くの人は語らない。 大きな問題は、いつも「語られざるところ」に存在します。 (1)米国風の行政と市民の対等の契約関係、(2)中国にみられる ような「たかる」関係と、日本の行政と市民の関係は異なります。 行政が、政治家や行政に近い特定業界や団体を保護する関係、ここが 日本の行政の本質でしょう。 明治の富国強兵思想に源流を持つ、官による産業育成の伝統が続いて います。(戦後は戦前の強兵の予算を、産業育成に使った) トヨタを代表とする国際的なビッグビジネスは、産業育成の枠を外れ、 代わって集票マシンを持つ特定の業界や団体と、行政の癒着が強く なった。 郵便事業と郵貯の民営化が骨抜きにされたのは、集票マシンがあった からです。国民全体の利益の観点ではなく、特定郵便局の保護と維持 を求める勢力が強かった。赤字の道路を作る道路公団の問題も同じで す。 民営化が可能な事業まで、政府・自治体・特殊法人・公益法人が介入 しているのが日本の行政の特徴です。 行政が産業を育成することや守ることが過度になれば、行政と業界の 癒着になる。 東京電力における原子炉のパイプの、亀裂の虚偽報告、日本ハムと当 局の、国産牛肉買い上げ(狂牛病対策費200億円)に見える行政と 企業の癒着構造は、産業保護の姿勢から来ます。 こうした姿勢で消えているのは、行政が「国民全体」に対するサービ ス機関であるということです。行政は「国民の上に立って国民を統治 (govern)する上部機関」とされ国民もそれを受け入れています。 時折問題になるのは、官僚の「不正」や贈賄のみであって行政と国民 の基本の関係ではない。 銀行の不良債権、大企業の過大借入金と債務超過の処理でも、こうし た基本路線が見られます。ここには「特定企業を守る→全体雇用を守 る→国民の利益を守る」という偽装の論理が見えます。 国家の借金が肥大した原因がまさにここです。行政は、(時には一部 の)国民の要求に応じ、国家予算、地方自治体予算、特殊法人予算、 そして公益法人予算を、一律に(結果平等的に)拡大した。 (1)保護と有利な計らいを求める業界や国民と、 (2)保護や産業育成、 (3)そして国土の均衡ある発展という政治的な名目のもとに、特殊 法人と公益法人を含んで、行政の領域を拡大する暗黙の意図の合作が、 現在の国家財政、地方財政の赤字です。 米国でも、行政と産業の不正に近い癒着は、大きなところで見ること ができます。現ブッシュ政権は、明らかにエネルギー産業と軍需産業 が支える政権です。8年間のクリントン政権の経済政策は、IT産業 と金融が支えていた。 しかし米国では、政権(大統領)とともに官僚の幹部の大幅な交代が 行われる点が、日本と違います。予算の内容も、直接選挙による政権 交代でがらりと変わる。つまり国民の参加がある。 日本の大臣は、官僚の人事権は持っていない。省庁人事は省庁の内部 の発案で行われ、大臣は承認する。日本では、官が予算配分の実質権 力をもつ。予算には、固定がある。 米国の行政一般では、行政が市民を保護するというより、双方に、対 等の「契約関係」が見えます。市民は、行政の税の使い方を監視する。 行政は市民の税を預かり、公共の資産を守る。 民主国家の行政と市民の関係はどうあるべきか、とりわけ、わが国で は肥大した「行政の関与」をどう抑えるかは、以下の項で見るように、 経済の根底での課題になっています。 ■3.行政のコストと関与の拡大 日本のGDP500兆円のうち、46.9%の235兆円が、租税、 社会保障、財政赤字を含む国民負担です。財務省自身が、公表してい ます。 ▼32年間の国民負担率の増加(GDP構成比) 租税 社会保障 国民 財政 合計での 負担 負担 負担 赤字 潜在的国民負担 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 1970年 18.9% 5.4% 24.3% (0.5%) ( 24.9%) 2002年 22.9% 15.5% 38.3% (8.6%) (46.9%) 金額 115兆 78兆 192兆 (43兆) (235兆円) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 変化 +4.0% +10.1% +14.0% (+8.1%) (+22.0%) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (データは財務省↓) http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014k.htm 財務省はこの事実から、財政赤字解消のための増税論を展開する。 国民負担分の235兆円は税、社会保障費として行政が吸い上げ、財 政赤字分を加えて、行政が分配してます。その合計金額が、政府、自 治体、公共事業体の予算になっています。 つまり官の組織を経由する総額が年間で235兆円(02年)であり、 GDP(国民経済)の46.9%の構成比です。 235兆円が意味するところは、国民のおよそ半分が、直接・間接に、 政府・自治体予算、特殊法人・公益法人・公共投資によって、生計 を成り立たせているということです。 財務省が、90年代以降喧伝(けんでん)する高齢化社会は、医療費、 年金負担、税の増加を通じ、国民負担がさらに増加する社会、官僚 と行政機構の関与が拡大する経済を示しています。 負担を引き受ける世代は日本を脱出したくなるでしょう。 若い世代の将来悲観の根底に、国民負担率の増加がある。 【高金利になれば・・・】 現在は、財政の赤字を埋める新規発行国債の長期金利は1%台前半で 超低金利です。 毎年の返済期限が来た分を借換える「借換え国債」を含めると、年間 100兆円を越える国債発行がある。うち増加分が30兆円。 好況になって、民間の資金需要が増加し、低利の国債の引き受け難が 起これば、市中金利が高騰します。1.5%の金利は、1.5%に上 がっても、国庫からの金利総額は2倍になる。 借換え債を含め、毎年100兆円余の規模で発行される国債・地方債 の利払いは、金利が上がれば100兆円よりも増えます。 つまり国家と自治体の財政赤字幅(潜在的国民負担:1年43兆円) は、予算の拡大をしなくても、高金利で拡大する。 放置すれば、行政組織の民間経済への関与は拡大する構造が組み込ま れている。 50代半ばの団塊の世代(先頭年齢56歳)が、退職世代になる5年 後から始まって10年後(2012年)は、おそらく国民負担のピー クを迎える。年金と健康保険財政は今のままでは破綻です。 日本は国家が経済に深く関与する社会主義国と言われますが、その度 合いは、今後10年、自然にいけば、もっとひどくなります。 ここで、どんな方法があるのか、それを考察します。 行政組織のみではなく、株式会社の運営・経営方法の根幹にも関係し ます。 ■4.ロスセンター構造の組織から、プロフィットセンターの組織運営へ 経営とは、組織運営のことを言います。行政組織の経営も同じです。 経営において、成果(結果)の計算方式には、大きくわけると2つの 方法がある。ロスセンター方式とプロフィットセンター方式です。 ▼ロスセンター方式の経営 まず、ロスセンター方式です。ロスは経費をあらわします。 つまり、ロスセンターとは、経費構造の組織です。 会社では、売上収入はすべて外部の顧客から来ます。 店舗や営業は、顧客に商品とサービスを提供し、現金収益を稼ぐ部門 です。直接部門である「店舗の損益」は、顧客へ売上が数字になって いるので簡単に計算ができます。 ところが、総務部、経理部、人事部、店舗開発部、商品部、物流部と なるとどうか? 例えば経理部の収益、人事部の「売上収益」とはな にか? こうした「間接部門」のすべてを、店舗や営業が稼いだ売上収益を使 う「ロスセンター」と見るのが、総額での損益計算を行う「ロスセン ター方式」での経営です。 【ロスセンター方式の、総額損益計算書】 Profit &Loss Statement (PL)の構造 売上高 100億円 →商品の売上代金 売上原価 70億円 →商品の仕入原価 売上総利益 30億円 →組織全体で稼いだ売上収益 一般管理販売費 25億円 →経費(ロス)の総額 営業利益 5億円 →営業で稼いだ利益 営業外支出入 2億円 →金利を含む資本のコスト 経常利益 3億円 →利益・剰余金 上記の総額計算のProfit &Loss Statementでは店舗が稼いだ収益(売 上総利益=プロフィット)が30億円で、それ以外は一般管理販売費 (ロス)として計上されます。 間接部門である総務・経理・人事・店舗開発・商品部・物流部、そし て役員報酬等はすべて「経費(ロス)」になる。 こうした損益計算と経営を、ロスセンター方式と言います。 ▼「管理」することが「権力」になる構造 ロスセンター方式では、本部が全体予算(経費:ロス)を統制(コン トロール)します。店舗の売上予算(収益:プロフィット)に基づい て経費の配分を決め、経費予算の枠で組織が運営される。 国家、そして株式会社予算の多くは、総額計算、つまりロスセンター 方式をもとにした運営(経営)を行っています。 直接の売上収益がない総務部、経理部、人事部、店舗開発部、商品部、 物流部、そして役員等の活動は、経費(ロス)とみなされます。 割り当てられた、経費予算の枠で部門経営が行われる。 日本の行政組織、そして会社組織の、「中央集権型構造のアドミニス トレーション(総合管理)」の根幹に、こうしたロスセンター方式が ある。 経費予算を決めるのは総合管理を行う中央(または本部)です。ロス センター方式では、予算分配を行う本部が、一手に予算分配の(暗黙 の)権力を握る。日本国では、財務省の「主計局」です。 第2次世界大戦のとき、国家総動員体制で、日本国のほぼすべてのマ ネーの流れを旧大蔵省が管理する体制をつくり、戦後もそれが引き継 がれた。精緻な構造です。 占領軍は旧財閥は解体しましたが、日本国の統治のため大蔵省が全予 算を支配する構造は、逆に強化・利用した。 民間金融(500兆円)であるはずの銀行の箸の上げ下げまで、大蔵 省(現在は金融庁)が管理する体制ができあがり継続しています。そ して管理金利の郵貯は、250兆円に拡大している。財務省が管理す る巨大なる中央集権国家が、日本の現在です。 こうした構造を国民は暗に知っているため、バブルも経済の不況も、 財務省や日銀の責任とされる。 年間235兆円(2002年)の予算分配の頂点に財務省主計局が君 臨(govern)する。 政治家、各省庁、特殊法人、公益法人、そして自治体の予算のもとも との大部分は、財務省からの分配にあずかる構造があり、癒着と腐敗 構造を、常に含むものになります。 ここが、現在の日本の問題です。 財務省こそ経済権力であるという構造がある。 そして、政府予算の運用での根底の問題はバランスシートもない総額 計算のロスセンターの方式にあります。ロスセンター方式では、各部 署(省庁、自治体、特殊法人、公益法人)は、与えられた予算を使い 切る構造が生まれます。 年度予算−予算執行=各部門の剰余金(または残余の利益)を、使い 切らないと、次年度予算では剰余金の分を削られるため、各部署での 「経費の有効化」の発想に至らない。 予算を使い切ることが「組織」のためになる。 国民負担率が、1970年代(24.9%)から2002年(46. 9%)まで、とめどもなく拡大してきた原因はここにあります。 そしてこうした事態を招いた全体責任者がだれなのか、分からない。 行政組織の最高責任者がだれなのか分からない組織を、行政組織全体 は作っている。 株式会社の運営でも同じようなことが生じます。各部署に割り当てら れた予算経費の拡大を、各部門の長(責任者)は本部に要求する。 本部に対し、部署予算の拡大を、「政治力」で行える「長」は、その 部門で英雄になる。現場と本部が遠くなる大企業ほど、そうした運営 が行われる。 そして、収入の不足で全体予算カットを行う時は、各部門は、横並び で一律でないと、自分の部門だけが不当な予算カットを受けたと思う ことになる。 ▼(補足)財務省や銀行の権力 財務省の権力は、「管理権力」です。税を集め税を管理することは、 国民のマネーの運用を「委託」されているに過ぎないのですが、預か った税を財務省の収入であるかのごとく分配しています。 こうしたことは、預かったマネー(税)の管理をおこうなう機関が、 それを所有しているかのように振舞うこと、つまり「管理機構の権力 化」と言えます。 例えれば、貸主(国民)から税(家賃)の管理委託を受けたアパート の管理人(官僚組織)が、貸主(資産の所有者:家賃の受取人)のご とく振舞うことです。 国家機構をアパート、家賃徴収係りを財務省と見れば、家賃の管理、 機構(財務省)が振るう予算配分の実質権力の不当さが分かるでしょ う。 銀行も同じです。預金は預金者から運用の預託を受けたものです。銀 行の預金は銀行という私法人のものではない。ところが管理責任をも つ銀行が、預金の所有者のように振舞った。 これが、管理責任を自由裁量の融資権限としたことから生じたバブル 融資です。 ■5.プロフィットセンターの方式では プロフィットセンター型の経営方式では、各部門が、独立した損益計 算(P/L)と、資産の計算(B/S)を行い、部門が自律する形式 の構造になります。 国家組織でも、年度予算に対し、省庁単位での経費の有効化の結果で ある剰余金(利益)を計算し、剰余金の多さ(利益)を各部門が貢献 利益として競う方式での運営になる。 分かりやすく言えば、会社では各部門の長、行政組織では省庁の幹部 は、経費を有効化し利益(剰余金)を増やすことが動機付けられるミ ニ経営者になる。 各省庁は予算(経費)を使い切るだけではなく、経費の有効活用の結 果である剰余金の残を競う形式での行政組織の運営ができる。 ▼事例 プロフィットセンター方式では、株式会社では、総務部、経理部、人 事部、店舗開発部、商品部、物流部は、個別に損益計算ができるよう な構造を作ります。 人事部の教育課なら、社内教育や作成した業務マニュアル(部署の生 産物)に、各部署との折衝で「価格」をつける。他の部署の社内教育 を行えば、それは教育課の社内売上になる。 教育部は、他部門に対し、教育(商品)の提供によって収益を計上す るサービス機関になる。 SBU(戦略的小経営単位:Strategic Business Unit)の制度とも呼 んでいます。SBUで、社内の部門・部署の全体を組み上げれば、そ の全体は、外部顧客からの売上がない間接部門でも損益計算ができる プロフィットセンターの組織になる。 プロフィットセンター組織では、原理上、組織の上下の階層はなくな り、お互いは対等な機関になります。 教育課の教育が、他社にも認められば社外の教育も行って、社外から 売上を得ることもできる。というより社外の教育も行えるよう、知識 と技術を磨く構造を組み込む。つまり教育部は提供する「商品」の競 争的な価値を上げる。 社内の教育課が行う教育の効果がないなら、教育はアウトソースされ ます。 教育部は経費を有効化して、他社の教育より優れた商品を提供すべく 努める。そうでなければ自社の他の部門からも教育依頼のお呼びがか からない。 教育を行う側(商品を提供する側)と、受ける側(商品を買う側)に、 お互いが自律的な、緊張感が生じます。 プロフィットセンター構造の組織では、社内に、各部署が提供する機 能の、相互評価が働く。 ▼商品部で例えれば 商品部なら、店舗の売上高に対し、売上(または粗利益=売上総利益) のうちから、商品部の働きによる収益部分(貢献差益)設定し、計 算します。 売上総利益が売上対比で30%であり、商品部の貢献が3%部分に相 当するなら、商品部の運営では、その3%を収益源とする。経費は、 商品部の人件費・出張費等を含む、一般管理販売費の総額です。商品 部長は、商品部の経営者になる。 これによって、商品部の損益計算と経費の有効化から生じる利益が計 算できます。 物流部は、在庫の保管料、処理料、運送料を会社から徴収し、それを 収益源とする経営体になる。プロフィットセンター組織では、各部門 が一個のミニ経営体(SBU)になります。 各部門の利益と損失の合計は会社全体の利益・損失と一致します。 商品部では、さらに、キャッシュフロー(現金)計算を組み込むこと もできます。商品部責任での在庫の増加は、キャッシュフローの減少 になり在庫の減少はキャッシュフローの増加になる。 キャッシュフローの減少は経理部からの借り入れの増加であり、キャ ッシュフローの増加は、経理部への返済(または貸付)の増加です。 店舗側は、商品部の働きが、売上の3%の「貢献利益」に価しないと 見れば、その3%の削減交渉ができる。 逆に、商品部は、自分たちの働きが3%を超えるとすれば、店舗側に 4%を要求できる。商品部と店舗は双方の緊張関係で、業務を遂行す る。 こうして、売上収益を直接に顧客から受け取る直接部門である店舗の みではなく、間接部門のすべてが、最終販売に対する貢献利益や額を 設定し計算する制度が、プロフィットセンター方式です。 プロフィットセンター組織は、各部門・部署を「自律的な組織の小経 営体」に変化させる。 何が無駄な経費であるかは現場が一番よく知っています。有効な経費 も同様です。これらは本社の間接部門たる本部には見えない。現場部 門を小経営のユニット(単位)とするのが、プロフィットセンター方 式です。 ■6.官の根本問題は予算の無謬(むびゅう) 行政組織における問題は、予算を使い切る慣行にあります。ある省庁 で予算が余り剰余金が残れば、当初申請した予算見積りに「過大」が あったことになって、そのこと自体が各省庁の錯誤とされる。 わが省庁の年度予算額は「正しい」から、予算を執行し使った結果は、 予算と一致しなければならないという、逆立ちした論理があるので す。驚くべきことですが、それが真面目に実行されています。 国家の省庁予算は、単年度主義が敷かれ、翌年度への使い残し(剰余) を許しません。予算は年度で使い切る制度がある。 その論理で言えば、予算管理の総責任を持つ財務省主計局は、省庁の 過大見積り分が、予算の剰余金となったとして次年度はカットできる。 正確な予算見積りでは、残余の剰余金は生じないとされるからです。 予算を正当化するために、省庁は剰余金(黒字)を出さず予算を使い 切る。省庁は、利益(剰余)を出さないロスセンターだからです。 公共投資でも同じです。公共投資の積算はあらかじめ各省庁が行う。 この積算に対し手続き上は公正な「公開」入札が行われる。 しかし不思議に、官が作った予算としての積算と最終入札額はほとん どすべてが、わずかな誤差で一致する。「信じられない」予算の精度 と「正確さ」です。 建築や土木の発注を行った経験がある人は、建築会社や土木会社の工 事見積りは、指定仕様と発注方法によって数10%くらいは、容易に 変わることはご存知のはずです。 ところが官の「積算の無謬」を前提にすると、公共事業を受注する民 間業者の見積りは、官が計算する「無謬な予算」より大きくても、小 さくても不合格になる。 こうした非現実的な予算運用が日本の官の全体にあります。 国家予算から補助を受ける特殊法人・公益法人でも同じです。特殊法 人・公益法人で「予算を使い切れない剰余金(利益)」が出ると、予 算に過大見積りがあったことと見なされ、次年度の補助金や予算がカ ットされます。 道路公団等では、公団で利益(剰余金)が出れば、高速道路料金の値 下げ要求が出ますから、利益分を内部で使い切ることになる。 赤字を出せば、行政は低価格で過度に国民にサービスをしていること になるから、公共料金の値上げ申請すらできる根拠が生じます。 国家予算の執行で「黒字(剰余金)」が残ればそのことを理由に、国 民からの減税要求か、公共料金の値下げ要求が出ます。 例えば国立大学で、黒字(剰余金)が出ると、翌年度の補助金のカッ トか、または、授業料(形を変えた税金)の値下げ要求になる。 こうして官が関与する全体予算、年間235兆円の全般にわたって、 全体の行政組織が「ロスセンター」として予算を使い切ったり、赤字 を出す構造が生じることになる。膨大なムダがふくまれているはずで す。 現在の方法では官は黒字を出してはいけない。黒字を多額に出せば、 組織の予算や、公共料金のカットにつながるからです。 民間会社では、仮に全体がロスセンター方式の運営であっても、会社 全体で赤字が続けば、経営体は維持できない。民間では経費の使い方 に市場と競争がブレーキをかける構造があります。 ところが行政では財政赤字(現在、中央政府予算で30兆円強)は、 マクロ経済の景気対策として、経済学的に肯定されてきた。 民間で預金の増加に見合う資金需要がない時は、経済全体が需要不足 に陥る。需要不足の時は国家が、国債を発行し、民間の余剰マネーを 吸収して公共事業を行い、需要不足をうずめることが正しいとする経 済理論、つまりケインズ理論は官の経済調節を積極的に肯定した。 穴を掘って埋めることですら需要不足を解消するのに有効だとしたケ インズ理論は「短期」で、しかもマネーの国際移動が制限されていた 閉鎖的な国民経済では正しい。 しかし日本の90年代から現在のように10年も多額の財政赤字を継 続し、穴を掘って再度埋めたことに類するようなことを続けたことの 最終結果はどうなるか。 しかも日本国内の需要不足は、世界経済レベルでは米国の貿易赤字と 資金移動で埋められています。 国民経済の中で官が分配に関与する部分が46.9%、235兆円に もなると、どうなるか。 「利益を出さず、無謬とされる省庁予算、自治体予算を使い切る」経 済が235兆円にもなったという結果、つまりロスセンターの恐るべ き肥大を招いています。 こうした帰結は官僚の個々人の資質によるものではない。予算と予算 の執行の体制、そして政府と自治体の赤字、または剰余金の処理の方 式に問題があります。 ■7.官の組織も民の組織も同じ 以上、ロスセンター方式の弊害を見てきました。 株式会社は、営利を目的とするから、プロフィットセンター方式で、 各部署が機能やサービスの提供に、社内価格をつける経営が、有効な ことはわかる。しかし、行政組織はどうか? 行政は、非営利組織(Non Propfit Oranization)であり、市場経済で はカバーできない国防、福祉、公共財の領域に関わるという意見は当 然あるでしょう。国防がもたらす便益は価格をつけることが困難です。 だからといって、国民経済のうち官を経由している235兆円が、国 防、福祉、公共財のみに関わるわけではない。価格をつけることが難 しい部分は100兆円もないのではないかと思えるのです。 日本の再生のためには、官の経済の拡大ではなく民の経済の振興が必 要です。官の経済でありつつ民の経済の管理方式を導入して改善を図 ることができる部分は大きい。 今回は、官の経済のである235兆円部分の、内部管理(経営)の方 法の変更が、行政の内部からの改革につながることを示しました。 官を悪者視することはたやすい。小泉首相のように構造改革のワンフ レーズを世論迎合風に叫ぶこともできる。しかしGDPの46.9% 、235兆円部分の改革は外部からの攻撃では片付かない。国民の半 分が、直接・間接に、既に235兆円を使った生活をしているからで す。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 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