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知識資本と知識労働へのノート:第2部
                   (02年10月14日)


こんにちは、吉田繁治です。連日の新聞・雑誌のトップ記事に政府見
解として金融危機、経済の非常時というコトバが踊っています。

02年3月に金融庁および政府が「金融危機はない」と表明したのは
なんだったのか・・・嘆息するのは私一人ではありますまい。政府の
アナウンスメントは、戦時の大本営発表。問題の認識ができていない
ためです。最初は、このことの本質部分を解きます。

メインテーマは <知識資本と知識労働へのノート(2)>です。読
者の関心の焦点だったように見え、配信直後から多くの感想・ご意見
をいただきました。その第2部です。

オフィスワークやホワイトカラー業務で渾然一体となっている、(1)
付加価値の低い情報作業(information work)と(2)付加価値が高
い知識作業(knowledge work)を分離する方法を解きます。

もっとも基本的なところが整理されていない。知識産業の本家に思え
るマイクロソフトも1996年からの取り組みですから、他が遅れる
のは無理もありませんね。方法は、課題が複雑に見えるときは、基本
から、基本の定義をすることから、始めることです。

知識作業と情報作業の合理化では入り口に立っているに過ぎない。わ
が国企業の問題はここにある。知識作業が情報作業にまぎれ、雑務化
している。新しいルーツであるパーソナル(個人用)コンピュータの
業務上の利用方法が、十分に理解されていない。
PC&インターネットに馴染んでいる本マガジンの読者の方には、各
社の知識作業において、生産性革命の尖兵になっていただきたい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <Vol.120 知識資本と知識労働へのノート(2)>
    情報作業と知識作業の分離の方法

【目次】

 1.金融危機が向かうところ:マクロの情勢から
 2.日本企業の情報経済対応の遅れがある
 3.2000年以降始まったこと
 4.工業の生産性上昇の方法
 5.知識労働と知識資本
 6.知識労働の有効化を図る方法
 7.情報作業のコストの合理化

                  (第3部に続く)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.金融危機が向かうところ:マクロの情勢から

▼金融危機の本質

今の金融危機は、金融機関の低収益と赤字の結果であり、
  実質の赤字で、債務超過になっていたのを、
  財務省推奨の粉飾会計で10年間隠してきたことが本質です。

銀行の粉飾、つまり不良債権認定の任意さ、引当金の少なさ、税効果
会計の導入がバランスシートのドレッシング(表面の糊塗)になり、
政府は危機はないとアナウンスしてきた。

【赤字の理由】
なぜ金融機関が、実質的な赤字になってきたか。理由は二点。

(1)貸出しのリスクプレミアムを取ることのできない低金利。
   正常でも融資の1.5%程度はリスク部分になりますが、
   低金利で利幅が小さくリスク幅をとることができなかった。
(2)過去の不良債権の償却。92年から01年の10年間で、
   迫られた81兆円(全国銀行合計)の償却を行っていた。

【注目点】
留意すべきは、銀行への(噂される)10兆円規模の政府資本の注入
と、(およそ決まった)2兆円の日銀の株買入れがあっても、
(1)銀行の(実質)赤字体質が転換され、
(2)利益によって自己資本が毎年増えないかぎり、
   目的である「正常な融資機能」は戻らないという点です。
   ここが注目点です。

▼金融対策は常に矛盾し、最後は通貨の価値下落へ向かう

銀行が黒字体質になるには、金利の上昇(利幅)が必要ですが、金利
が上がれば、金融機関全体の保有国債(地方債と合計すれば167兆
円:99年)が値下がりし、逆に、膨大な含み損を抱える。

そうすると日銀は国債の更に大規模な買いオペレーション(利下げ圧
力をかけること)の通貨注入政策をとる。

結局は、日銀が、民間の保有国債167兆円を順次引き受けることに
向かう。02年7月の日銀の国債保有は82兆円:総資産の66%にも達
しています。既に、日銀信用の限界に近いにかかわらず・・・

政府の国債(借金)を過大に引き受けることは、日銀信用の低下を意
味する。円の国際的な信用下落から円安を生む。円安は国民の富の減
少と通貨価値の下落であり、輸入製品の値上がりです。

日銀が国債を引き受けないとどうなるか。政府が借換え債を含めば年
100兆円以上も発行する国債の引受け難が「一夜」で発生する。金
利上昇→国債価格下落→銀行の債務超過の加速に向かう。金利が上が
っても下がっても、銀行は実質的には債務超過を続けますね。

金融手段の本質は「毒をもって毒を制する手段」に過ぎません。対策
の結果は、毒が広くばら撒かれる。毒とは、通貨を水割りすることに
よって薄まることが原因の、円の価値下落です。

日銀が円通貨を市場に投入しても富の総量は増えない。代わりに借入
れをしている人・企業・政府に、預金者からの所得移転、富の移転が
起こる。生理的食塩水で、血液が薄くなるのと同じです。

▼根底は、日本企業の収益率の低さ(米国の25%:西欧の50%)

政府がなぜ年30兆円を超える赤字を出すか。無駄な公共投資もあり
ますが、根底は、企業の利益率が「半減」していることです。

そのため法人税収も半減。日本経済の再生には企業収益の増加しか方
法はない。現在、税務上で赤字申告の企業は70%、3社に2社の割
合です。債務超過は、3社に1社、約80万社でしょう。雇用数で1
500万人以上が、債務超過企業に勤務しているでしょう。

政府とおなじように企業にも過剰債務(総資本過剰)がある。総資本
対経常利益率が低すぎます。このままでしばらくすれば日本からのキ
ャピタルフライト(資本逃避)が必然になる。

【債務超過企業の整理を先送りにした結果】
自然にしておけば退出したであろう過去形の企業が、結局は無駄遣い
になる支援策で残っていて、縮小した国内需要に対し、同質商品で、
過当競争が発生しています。企業収益が低い原因がここです。あり地
獄のような、一蓮托生の風景が見える。

※日本経済の問題は労働者の50%弱(約3000万人)は、直接・
間接に、政府予算・自治体予算に依存していることです。政治が左右
する非市場経済が拡大し市場経済が縮小したのが90年代です。

▼選択肢

(1)利益を出さないため援助が必要な約80万社と、税の投入が必
要な政府機関を保存したまま行くことに合意するか、
(2)過去形になった企業と政府機関を(自然に)整理し、新たな企
業で経済の活力を回復するか、(1)か(2)かの選択。

※実際は{(1)+(2)}÷2になるでしょう。

上記(1)は日本経済の内容の広範囲な悪化に帰結します。
(2)は、失業率の上昇を経由した日本経済の再興です。

あらゆる金融対策の終着点は、つまるところ短期しのぎで、問題の先
送りです。赤字補填で借りたものは、利益か資産処分で返さなければ
ならない。返せない借り入れは時間とともに問題を深める。

株を無理やり上げて援助の融資を投入しても、一時的効果しかない。
企業収益の上昇、または上昇見込みがあれば、株も融資もついてきま
す。こうした「あたりまえのこと」に戻る必要がある。

不良債権対策の、その次の議論がないことを、哀しみます。

市場経済には冷酷な面がある。金融対策や援助で冷酷さを避け、不良
部分を経済全体に拡散させるか、そうでないか。

遅すぎた清算が始まった。昨年末から予測していた、低温やけどの準
恐慌経済。これは企業収益が回復しないかぎり、いつまでも続く。

何が本当の問題か、次項で見ます。20世紀の工業経済から、情報経
済への大きな潮流があります。ここを見なければならない。

2.日本企業の情報経済対応の遅れがある

総資本の過剰、そのための企業収益の低さ、赤字企業が70%(16
0万社)もあること、これらが日本経済の問題です。つまりは、資本
が利益を生まない。それが超低金利の裏の意味です。

ただし、それらは結果としての「資本が利を生む効率の悪さ」という
現象です。資本は、今、まだ過去のものに取りついています。新しい
方向を見出していない。エネルギーはあるが、上下左右に無定見に動
くため[カオス(Chaos:混沌)]が生じる。2年は続く。

以降で、原因を見ます。60年から70年の期間でのコンドラチェフ
風の構造変化のサイクルが起こっています。コンドラチェフについて
は↓
http://www6.ocn.ne.jp/~tonal/3_Kondratief_wave.htm

▼1929年:73年前

1929年の世界大不況は、3つの要因で起こった。
(1)英国の工業生産力の低下、貿易赤字による英国ポンドの機軸
   通貨体制の崩壊。
(2)第一次産業革命の軽工業、鉄鋼、造船を中心とする経済から、
   重化学工業、自動車、航空機、電器・電気産業への移行。
(3)エネルギーでは、石炭から石油&電気への移行。

旧資本が新資本に移行するとき、大不況というカオスを経て新秩序に
向かった。なぜ、失業率が30%の大不況が必要だったか? 

旧資本(マニュファクチャリング・軽工業・鉄鋼・造船)が多数を雇
用していた。雇用が新資本に移るには、雇用調整期間が必要。

[旧資本の雇用縮小]→[新資本への労働移動]が必要だった。
資本と労働が大量に移動する期間は、カオスになる。

カオスは、第2次世界大戦での欧州の工場の破壊を経て、
(1)米国の重化学工業、自動車、電器、航空機、サービス産業の
   興隆によって、米ドル機軸通貨体制の確立が図られ、
(2)世界を分ける冷戦体制で、軍需産業を含んで安定を得た。

3.2000年以降始まったこと

2000年からの世界同時株安(40%から50%)は21世紀の「
知識資本主義」への序曲でしょう。日本ではあわせて「土地本位資本
主義」も崩壊したから、銀行危機と80万社の債務超過企業を伴うこ
とになった。

2000年以降での、40%から50%の資本価値の下落(株価下落)
が劇症ショックを起こしていない理由は、現代金融に金融派生商品
(一種の保険)を使ったリスク分散が組みこまれているためです。

基底の潮流で、どんなことが起こっているのか?

(1)10億人の先進国は、工業経済から情報経済に移行。
(2)ドル機軸通貨体制は危なくなっているが次の機軸通貨が見え
   ない。
(3)世界の(日用品、量産品分野の)工業生産が中国に移行して
   いる。東南アジアですら、危機の前です。

先進国経済の、60年に一度の大きな流れが[工業経済の旧秩序]→
[カオス]→[情報経済と知識資本主義の新秩序]へ向かっている。

情報経済の2つのキーは、インフラでは「オープンネットワーク」、
資本では「知識資本・知識労働」です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 [工業経済に適応していた中央集権組織と定型作業](20世紀)
           ↓
   [ブロードバンド・オープンネットワーク] (2005年)
           ↓
[情報経済、知識資本主義の分権組織と知識労働] (21世紀)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

▼OECD10億人での工業的付加価値の急減

工業が大きな付加価値を生んでいた時代を工業社会と呼びます。そう
すると、今はどんな社会か? 

【日本の工業雇用数の減少】
1992年  1400万人(全雇用の27%)
2001年  1185万人(全雇用の22%):総務省調査

日本は、西欧、米国の次の工業国でした。

上記の雇用変化で、90年代が示すのは日本のGDP(総付加価値)
のなかで、国内の工業が生む付加価値は27%(92年)から22%
(01年)になったことです。

15%(雇用者800万人)くらいまでは減少するでしょう。

重要:国民経済の中の業種別雇用者構成比は、GDPを一個の商品と
したとき、その中の付加価値の割合を示すものです。(時間平均賃金
を、全業種で同じと仮定したとき)

500兆円のGDPという一個の商品のうち、国内の工業生産では、
その22%、つまり110兆円の付加価値部分を生産しています。9
2年では、これが27%だった。

残りの78%はモノの加工・組立て以外の産業が生む付加価値です。
行政、金融、流通・小売、建設、土木、農林漁業、鉱業・・・等。

▼知識労働のイメージを広くする

行政官である小泉首相も、政治と行政という仕事で報酬をもらい、意
思決定という高度な「知識労働」を行っています。高級官僚も、企業
のトップ、幹部も「知識労働」です。そして、実はオフィスにいるホ
ワイトカラー全体、および小売のパートも同じ「知識労働」です。

最大多数派になった「知識労働」の生産性を上昇させないかぎり、余
暇時間の増加を含め、生活が豊かになることはない。

知識労働では弁護士、医者、会計士、コンサルタントのような職種を
思い浮かべる人が多い。そうではないのです。

デパートの販売員。業務内容は「知識労働」です。顧客の反応から、
欲しい商品を見分けなければならない。商品知識も必要です。メーカ
ーについての知識も、在庫知識も必要です。モノを生産するわけでは
ない。モノの形は変えない流通の仕事全体は、知識労働です。

流通・小売は「知識労働」であり、金融も知識労働です。工場で生産
ラインに従事する労働もモノの加工は機械が行いますから、本人が行
っているのは「知識労働」です。

タクシーの運転も、交通事情と道路知識が必要な知識労働です。

20世紀の工業生産は「個客」に売る前の「規格品量産」という仕組
みで、生産性を上げた。

しかし、工場の外では、ほぼ全部が「個」対応になる。デパートの販
売員、タクシーの運転手が行っているのは医者と同じような「個客」
対応です。まとめて接客はできない。診断と手術も、胃潰瘍の患者を
100人ベルトコンベアに並べてできるわけではない。5人まとめて
離婚の法律相談もできない。

工業生産は、製品を規格化し、加工を一箇所でまとめ集中的に行うこ
とで、生産性を上げた。生産性は一人当たりの製品生産量です。

ところが工場以外では、ほぼすべてが分散した「個客」対応になる。
個別のケースでの、場の判断と知識が必要な、知識労働になる。

こうした幅広い「知識労働」の生産性を、コンピュータと通信を使い、
いかに上昇させるか、これが21世紀産業の課題です。

■4.工業の生産性上昇の方法

▼工場

ここで、工業化時代の「知識」の性格を見ます。
21世紀の「知識労働」の本質を明らかにするためです。

<かつての(工場の)労働力は、システムによって生産性を向上させ
た。テイラーの(細分化された工程分業による)科学的管理法であり、
フォードの組立てラインであり、デミングのTQM(トータルクオ
リティマネジメント)だった。まさに知識の体現されたものがシステ
ムだった。>

<それらのシステムは、働き手にさしたる知識や技能がなくとも成果
を上げさせた。事実、組立てラインにせよTQMにせよ、個人の突出
した能力は他の働き手やシステムそのものにとって(全体最適を壊す)
むしろ迷惑な攪乱要因だった(『ネクスト・ソサイエティ』ドラッ
カー:2002年)>

(注)ゴールドラットの『The Goal』の2001年の翻訳以来、部分最適
、全体最適という用語も通用するようになってきましたね。本マガジ
ンでは、日産のカルロス・ゴーンをとりあげた考察で、1年4ヶ月前に
その内容を示しています。↓
http://www.cool-knowledge.com/0613nissan-Ghosn(1).html
『鋭利なメスをもつ精神分析医:カルロス・ゴーン』

日本の産業の不良債権整理、産業の構造改革の方法も、カルロス・ゴ
ーンが実際に行っている方法に集約される。方法的なエッセンスは、
ここで解いています。

▼焦点

ドラッカーから読み取るべきは、量産工場では、
(1)生産システムに「工程分解による機械化として知識」が封じこ
められていたために、
(2)人的作業は、知的に設計された生産ラインに従属し、取替えが
効く「単純作業」になっていたということです。

量産工場では、知識を具現化した工場システムが「資本」です。労働
者は取替えの効く単純作業者。マルクスが言った労働の自己疎外がこ
れです。疎外は難しい概念ですが、人間が主役であるべきなのに機械
(=資本)が主役になり、人間は付属物である状況を言います。工業
社会は、人の労働を時間給に還元した。

労働者の技能は一定基準で揃っていることが必要であって、突出と劣
等は困るのものだった。資本は機械、これが工業化社会です。

日本で知識労働が評価されないのは工業社会思考がある。突如ノーベ
ル賞の評価を受けた田中耕一さんの年収は800万円で、熟練工場労
働者並みの評価しかなかったことは、その象徴ですね。

政府は驚愕し、文化功労賞と文化勲章を贈り、島津製作所も慌てて、
フェロー待遇にする。知識労働のプロセスと成果の評価の低さが続け
ば、いずれこの国は潰れる。青色レーザーの、中村修一さんの記憶も
新しいのに。会社は、年功と労働時間の評価しかできていない。

■5.知識労働と知識資本

デパートの販売員の仕事を事例にします。(他の職種のホワイトカラ
ーも、必要な情報と知識の種類が異なるだけで、他は同じです)

販売員の「知識労働」である接客・販売作業は、量産工場のように「
作業分解された販売システムや情報システム」に従属するか? 

デパートの販売員は、
(1)商品情報システム、在庫情報システム、販売システム、事務処
理システム、および顧客情報システムを有効に使って、
(2)接客と販売(=成果)を目的にした、
(3)知識労働(=手段)を行っています。

図式化すれば以下です。工業社会と情報社会では、人間的労働のポジ
ションと資本に従属関係に、逆転があります。

【20世紀型量産工場の労働では】
[生産ラインというシステム](物的資本+知識資本)=会社資本
      ↓
  [定型的個人作業]  (分業システム)    =会社資本
      ↓
    [労働]      (作業)       =ワーカー
      ↓
  [ 規格品量産]    (成果)       =生産物
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【21世紀型の知識労働では】
[「個客」対応;場への対応]   (成果)  =生産物
        ↑
    「非定型作業」&
  [専門知識を使った判断]   (知識労働)=個人資本
        ↑
   [情報システムの支援]   (システム)=会社資本
        ↑
    [データベース]     (情報資源)=会社資本
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

知識労働では、知識と手順を封じ込めた情報システムは、個人の知識
労働の「支援(support)」を行うものであり、資本となって労働を支
配するものではない。

問いの方法は(デパートや専門店の販売員の接客販売に有効な)「サ
ポート(支援)システムは何か?」ということになる。MIS(Mana
gement Information System)を個人サポートするのがパーソナルコン
ピュータです。MISに取り組むインフラは、揃った。

【重要なポイント】
伝票処理をするような販売事務、販売に有効な「個客」の情報、「商
品情報、在庫情報は定型化・システム化・データベース化ができます
。販売員の皆が使う共通システムになる。

知識労働でのシステム化は、労働時間の60%から80%を占める定
型的作業から知識労働者を解放し、本来の目的である成果の上がる知
識作業を有効に行うようするための「支援システム」です。

これで、知識作業と情報システムの関係が、明確になるでしょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
[知識労働]─[個人知識と技能に依存する領域](個人資本)
      └[システム化し情報化できる領域](会社資本)
         ↓
[機械化領域] ・伝票を使う定型作業、ワークプロセス
        ・他のペーパーワーク、ワークプロセス
        ・あらゆるコミュニケーション
        ・「個客」属性と販売歴(RFMI)
        ・商品属性情報
        ・在庫情報・・・等
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
メインフレームを使った「基幹業務系」システムは、知識労働から言
えば、一部の定型作業を「入力→処理→出力」にしたものにすぎない。

それを補うのが、無線LAN端末と情報系サーバーです。
この面で、わが国の企業一般にシステム化の遅れがある。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
無線LAN端末[入力]→[処理プログラム]→[画面出力]
              ↓ ↑
       [データベース検索・集計のエージェント]
              ↓ ↑
         [情報系サーバーのデータベース]
              ↓ ↑
      [メインフレームのデータ倉庫(Data Warehouse]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

無線LAN端末を個人の業務にどう利用するかという発想が欠けてい
ます。i-modeの携帯電話も、立派な(個人)無線端末ですね。

【生産性】
工場の分業では労働者の生産性を揃えます。揃わなければ生産ライン
の全体最適を壊し、無駄な経費になる工程間在庫が溜まる。

デパートの販売員(知識作業)では同じ労働時間であっても個人販売
高は時に数倍も異なる。知識労働では、成果と生産性に違いが出る。
なぜか? 上の図を見れば分かる。最終成果は[個人の専門的知識を
使った判断]、つまり個人資本によるものだからです。

▼膨らんだ知識労働の付加価値部分:裏ではコストアップ

生産と販売では、どちらが付加価値が大きいか? ユニクロを典型と
する<「コスト最適地での生産」〜「ロジスティクス」〜「販売」の
サプライチェーン>では以下のような構成比です。アパレル一般では、
生産の中国化が進んだ現在は、以下のような原価構成をとる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(1)シャツの工場出荷原価  200円( 10%)=中国のGDP
  (生産のコスト)

(2)商品開発+ロジスティク
   +販売コスト      1089円( 65%)=日本のGDP
   (商品ロス+知識労働のコスト)

(3)利益  495円 ( 25%) =日本のGDP   
      
(4)売価          1980円(100%)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(注)ユニクロの粗利益率が損益計算書で45%レベルになっている
のは、在庫と販売における大きなロスが含まれるためです。

製造の付加価値は10%、判断を含む知識労働の塊であるマーケティ
ング、商品開発、製品設計、ロジスティクス、および販売コストが6
5%を占める。ユニクロでは工場生産をしている人は指導をする知識
&技能労働者以外、ゼロでしょう。

80%から90%の高い値入率で商品価格をつけているユニクロは、
工場生産の後の知識労働で生産性が高い企業ではない。在庫管理を含
む知識作業の工程改善、内容の改善の余地を残しています。

ユニクロに関しては、ビジネスモデルでは優位だったが在庫ロスを抱
えることを指摘した2年前の論考があります。↓
http://www.cool-knowledge.com/1023uniqlo.htm

(注)他のアパレル産業はユニクロより、もっと生産性が低い。

6.知識労働の有効化を図る方法

<私には単純だが強い確信がある。あなたの会社をライバルと差別化
する最も重要な方法、あなたの会社をその他大勢から引き離す最善の
方法は、情報に関してずば抜けた仕事をすることだ。「情報を以下に
収集、管理、活用するか・・・あなたが負けるか勝つかはそれで決ま
る」ということである。『思考スピードの経営』p14:ビル・ゲーツ>

そう言ったあとビル・ゲーツは、以下について、的確な情報を「あな
たの会社がもっているか?」と付け加える。(この項、重要)

(1)製品(及びサービス)について、顧客はどう思っているか?
   どんな改善を加えて欲しいと思っているか?
   どんな新機能を追加して欲しいと思っているか?
(2)サプライチェーンを組む取引業者は、製品を販売する上でど
   んな問題にぶつかっているか?
(3)競合他社は、どの点で、差をつけており、それはなぜか?
(4)参入すべき新市場として、どんな市場が生まれているか?

知識労働者の60%から80%の時間を定型作業、事務作業、情報加
工作業、コミュニケーション作業、決済作業に縛り付けることで、(
1)〜(4)のような、知識を要求される仕事に集中できないことが
問題だとビル・ゲーツは言う。多くの会社の現状です。トップ・幹部
すら、知識作業を避け、日常の定型作業に閉じこもっている。

▼「ペーパーレス・オフィス」のイメージから

<なぜ、こんなにたくさんの紙がいるんだろう。ここではみんなパソ
コンをもっている。そして互いに接続されている。どうしてこの紙の
代わりに、(WEB等を使った)電子書式を使って、業務プロセスを合理
化しないのだろう(同書p58)>

こう考えたビル・ゲーツは「CEOの特権」を行使し、不必要な用紙
、書式を禁止する。1996年のことです。今の日本の会社で紙の書
式を禁止したところが何社あるでしょうか? こうしたところから、
知識作業全体で、根底的な遅れが生じる。

日本企業の問題は、ビル・ゲーツと逆にデジタル化されているプロセ
スでも幹部・トップが「紙」を要求することかもしれません(笑)

これは「出力プロセスで毛筆を要求する」ような無謀なことです。書
式を画面化すれば分かりますが情報作業の生産性は数倍に上がる。情
報作業は知識作業とは違い、容易に定型化できます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知識労働─知識作業(個人の知識・技能が必要) 20%-40%
    └情報作業(定型化、プログラム化できる)60%-80%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コストの高い知識労働で、知識作業(knowledge work)と情報作業(i
nformation work)が渾然と一体になっていることが、ホワイトカラー
業務の有効化の問題です。情報作業は共通化・手順化・プログラム化、
データベース化、つまり「デジタルプロセス」にできる。

こうしたとき、外形イメージ(goal)として有効なのは「ペーパーレ
ス・オフィス」です。イメージ化こそ、出発点です。

電子メールでは、数十通の処理が短時間で可能。
[読む→返事を書く→送信or同報]も簡単です。

封筒に入った文書ならどうでしょう。[開封→文面を開く→読む→メ
モする→返事を書く→プリント→封筒入れ→郵便ポスト入れ]、多段
階の手順。郵送料は高い。封筒・紙代もかかる。e-Mailの数百倍以上
の人件費の塊が紙の文書ですね。再利用や、メンバー多数への同時配
信もできない。オフィスワークは秘教的な呪術の世界。

請求書、領収書、伝票、多種多様の会社書式等では大量の紙を使った
情報作業が、オフィスで一所懸命、怠けず行われています。

メインフレーム&オフコン時代は、雑多な情報作業の処理にまでコン
ピュータ&ネットワークを使うことができなかった。情報機器もプロ
グラムコストも通信も高価だった。今、そうした障害はない。

パソコンとインターネットは日本の多くの会社では未利用の資源であ
り、ツールです。メインフレーム発想が、障害になっている。

メインフレーム→基幹業務系(定型作業)に適当
パソコン系  →情報系業務(情報作業+知識作業)に適当

直接的なコスト以外に、紙をコミュニケーションメディアにしたとき
の問題はリアルタイムであるべき情報の伝達・反応・適応・判断が遅
れることです。情報は変化を示すリアルタイム性を価値とする。

【補注:方法はイントラネットとエクストラネット】
定型書式・伝票処理・情報伝達は「WEBの電子書式」にし「紙」を介さ
ず、担当がどこでも直接入力・直接処理できるようにします。

社内ではイントラネット、社外・取引先とはエクストラネットを使い
WEBでの直接処理にする。コミュニケーションも過半をWEBを介
したものにする。これで情報作業のコストは減少し、コミュニケーシ
ョン速度、情報作業の効率は上がる。

(注1)イントラネット・・・・社内のみで使うインターネット
(注2)エクストラネット・・・特定の社外とのインターネット

■7.情報作業のコストの合理化

98年に米国商務省がまとめ話題になった『姿を現すデジタル・エコ
ノミー』に、従来の情報作業のコストとインターネットでWEB化さ
れたときの情報作業のコスト比較があります。

▼インターネットWEB化の、定量効果

【1.航空券処理コスト(1枚あたり)】
・コンピュータ予約システムを備えた
     旅行代理店を通じ処理・・・・960円(従来)
・インターネットでのWEB予約・・・・120円(WEB化)

【2.銀行振り込み処理コスト(1件あたり)】
・銀行の支店(従来)・・・・・・・・・120円
・電話での処理(従来)・・・・・・・・ 60円
・ATM(現在)・・・・・・・・・・・ 32円
・インターネット(今後)・・・・・・・  1.2円

【3.保険の事務処理手数料(1件あたり)】
・従来の保険代理店(現在)・・・・・・4.8万円〜8.4万円
・インターネット(今後)・・・・・・・2.4万円〜4.2万円

【4.請求書処理コスト(1件あたり)】
(紙)
・請求側コスト(従来)・・・・・・・・198円〜324円
・顧客側コスト(従来)・・・・・・・・ 50円
・銀行コスト(従来)・・・・・・・・・ 18円〜 24円
(インターネット)
・請求側コスト(今後)・・・・・・・ 72円〜120円
・顧客側コスト(今後)・・・・・・・ ほぼゼロ
・銀行コスト(今後)・・・・・・・・  6円〜 12円

         (『思考スピードの経営』p94:$1=120円)

オフィス労働は紙や代理人を使った「雑務的情報作業」の塊です。1
件の処理コストはわずかですが、塊になってオフィスの事務作業(=
情報作業)の、雑務的な総コストになっている。

出張報告書を所定の用紙に書き、経理で清算する総コストの(標準時
間分析をし)、旅費や宿泊費の直接出張コストと比較したらどうでし
ょう(笑)

定型書類・提案書・起案書・稟議書・リポート等はWEB化すべきで
す。WEB化すればデータベース化されます。

(1)数字と文字を紙から引き剥(は)がし、
(2)「電子書式」をきめ、直接入力を行い、デジタル情報にして、
(3)データベース化する。
   知識労働の生産性上昇、合理化への突破口です。

投資と教育は惜しむべきコストではない。知識労働といえば難しそう
ですが、定型化できる情報作業と、成果は個人の知識に依存する知識
作業を分離することから始まると考えればいいでしょうね。

経営と仕事の永遠のコツ・・・今後安価になる資源とツールを大量に
つかい、高くなるものを節約すること。

<知識資本と知識労働へのノート>第2部を終わります。

第3部では、情報作業のみではなく、
  ・知識作業そのものを、分解した合理的工程にし、
  ・共通のテンプレート(業務の最小単位の鋳型)を作って、
  ・そのテンプレートを組み合わせ、
  ・ワークフロー(業務手順)にする方法を解きます。

生産性上昇、業務の速度化の核がこれです。80年代当時は「エキス
パートシステム(専門家システム)」といわれていたものです。

see you soon!!

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10月1日から全国の書店で発売の『販売革新10月号』に「ウォル
マート」に関し、15ページの考察を特集として寄稿しています。ウ
ォルマート(28兆円:4400店)は知識共有化を図った現場自律
型のチェーンストアです。

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