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知識資本と知識労働へのノート:第3部
                   (02年10月21日)

こんにちは、吉田繁治です。本稿は<知識資本と知識労働へのノート
>シリーズの3回目になります。

いよいよ本シリーズの焦点です。「知識作業をデジタルプロセスにす
る方法」に踏み込みます。具体的事例を示しながら、解説します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

     <知識資本と知識労働へのノート(3)>
      知識作業をデジタルプロセスにする方法

【目次】

 1.意思決定プロセスのデジタル化
 2.パーソナルコンピュータと通信の意味
 3.モニターになった労働
 4.データウエアハウスを使った、店舗特性と商品特性
 5.ウォルマートの秘密
 6.商品選定作業は単純なデジタルプロセスになった

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.意思決定プロセスのデジタル化

日本を含む先進国10億人の社会は、モノを作ったり運んだりする仕
事を減らし、情報作業(information work)、知識作業(knowledge
work)に圧倒的多数が移動しています。

ところが情報作業・知識作業では「生産性」を上げる方法、人が行う
より適切なプロセスにする方法が確立されていない。

しかしながら注意深く見れば、1990年代に急成長した企業では、
情報作業・知識作業の中核である「意思決定プロセス」をデジタル化
することを通じ、他が追随できない作業プロセスを作っているところ
があります。

▼的確な意思決定

情報作業と知識作業の目的とするところは、オフィスワーカーと現場
のマネジャー、および現場作業者の「的確な意思決定」です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    情報作業┓
        ┃⇒デジタルプロセスへ⇒的確な意思決定
    知識作業┛

・情報作業の合理化手法=情報のデータベース化による即時利用
・知識作業の合理化手法=意思決定プロセスのワークフロー化

※大切なことは、現場作業者が個々人でいつも使うことができる、
「携帯LAN端末」で、以上を具現化することです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

▼GOT(Graphical Ordering Terminal)

本マガジンでよく取り上げる「ウォルマート」がその事例です。ウォ
ルマートは、1992年に当時のトップ企業であったKマートとシア
ーズを年商で追い抜き、追い抜いた後の10年で5倍の年商に達した
稀有な会社です。

トップ企業(ウォルマート)が28兆円の年商で、2位が5兆円レベ
ル、つまりトップと2位が5倍以上の格差であるという理由には仕事
において「方法の違い」があるはずだというのが、私のここ数年のフ
ォーカスポイントでした。

驚くべきことは、将来起こるのではなくいつも身近に起こる。ウォル
マートにおける「意思決定プロセスのデジタル化」は、実はセブンイ
レブンの全店長1万人が、日々の発注で使う「GOT(Graphical Or
dering Terminal:画像とグラフを使って発注作業を支援するLAN端
末」から、システム化のアイデアを借りたものです。

(注)セブンイレブンの事例に見られるように日本人に産業のイノベ
ーションを起こす創造性がないのではない。国内で創造性の評価がで
きないことが障害です。他方、創造性の評価に優れるのが米国です。
したがって、果実はいつも米国が収奪します。

▼システム化(=プロセス化)の方法

セブンイレブンの店舗に転がっているGOTでは、1万店からの解析
された情報を使い、店長が判断を加え発注する。発注作業は「意思決
定」です。これは膨大なデータを処理するデジタル機器を使わない限
り不可能な作業です。

大切なことは、店長の発注という知識作業を、
(1)個人の秘儀とせず、
   1万人の店長に共通な作業と見ること。
(2)的確な発注に必要な情報を整理し、共通化すること。
   これをテンプレート(=鋳型)化と言うことにします。
(3)テンプレートを最適に組み合わせ、
   発注作業の「ワークフロー」、
   つまり「デジタルプロセス」にすること。
(4)そうした意思決定のデジタルプロセスを、
   いつでも、どこでも、個人が使えるように、
   携帯端末化すること。

一般化すれば、以下に示す図式になるでしょう。

【21世紀のプロセス化】     【20世紀:テイラーイズム】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
[意思決定プロセスの工程分析]     モノの加工の工程分析
     ↓                  ↓
[処理の鋳型(テンプレート)の抽出]    標準作業
     ↓                  ↓
[新たなワークフローを構成]       加工ライン設計
     ↓                  ↓
[意思決定プロセスのデジタル化]     生産ラインの構成
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

方法は、テイラー(Frederic W Taylor:『工場管理:1903年』)が工
場の作業で行った「科学的管理」となんら変わることはない。

テイラーの時代(100年前)は工場の組み立てラインで職長の秘儀
(個人的技術)が幅を効かしていた。そこで、ストップウォッチを使
い、職長の秘儀の工程分析を行ったのがテイラーでした。

テイラー以後60年も経つと「オートメーション」にまで進むことに
なる。

このテイラーの方法を情報作業・知識作業に適用することです。オフ
ィス作業・ホワイカラー作業・現場作業、言いかえれば情報作業と知
識作業である「意思決定プロセス」への「テイラーイズム」の適用は
21世紀への跳躍台を与えるものになります。

■2.パーソナルコンピュータと通信の意味

▼革命の認識

20世紀末で起こったことで、真に革命的なことは、
(1)コンピュータの小型化(=低価格化)
(2)通信の低価格化(=無料化へ向かう)です。

数十億円、数億円だったものが30年で機能と処理速度を上げ、わず
か10万円あるいはそれ以下になった。これは仕事で必要な、あらゆ
る意思決定のプロセスが「プログラム化」されることを意味していま
す。しかも100Mビットのデータ通信は、月間で数円です。

コンピュータは、モノの加工を行わない。
数字と文字を処理するデジタル機器です。

高価なメインフレームを使ってデジタルプロセスにされたのは、既に
定型化されていた現場のルーティーンワークでした。日本の企業はそ
こから進んでいない。

非定型とされてきたホワイトカラー作業は、デジタル化プロセスを待
って、山のように残っている。パーソナルコンピュータは、ホワイト
カラーの情報作業・知識作業をデジタルプロセスにする。

▼情報、頭脳、意思決定

情報作業と知識作業で使うのは、「頭脳」と「情報」です。頭脳はデ
ータベースと信号に還元でき、情報はビットに還元できます。

会社という場で行う情報作業と知識作業の成果は、短期的または長期
的な経済価値を生むために有効な「意思決定(=判断):Decision M
aking 」です。

意思決定に必要な「組織ワーク」は、意思決定のプロセスとまたは結
果のコミュニケーションです。コミュニケーションは、パーソナルコ
ンピュータのPtoPの双方向通信でしょう。

▼意思決定プロセスの外部化

知識(頭脳内の有機的データベース)が文字と数字で「外部化」され
れば「共有化」ができ「共通データベース」にできます。データベー
ス化すれば、プログラム化しコンピュータで処理ができる。

技能をもつ職長の手と頭脳を使ったモノの加工作業を、外部化したも
のが工作機械でした。

ホワイトカラーの情報作業と知識作業を外部化するのが、コンピュー
タと通信です。

ここで「意思決定」プロセスがデジタルプロセスに変換されれば、結
果はどうなるか。意思決定とは「異なる場」での、個々人の判断です。

3.モニターになった労働

例えば飛行機の操縦です。あらかじめプログラム化されていない緊急
事態を除き、今の操縦は自動化(=プログラム化)されています。
平常の飛行では、高価な知識作業者とされているパイロットは要らな
い。機長の働きは、離着陸の数十秒の判断部分のみです。

パイロットの仕事は、コンピュータと計器を見る「モニター(監視)」
です。モニターだけならパイロットは飛行機に乗る必要はない。理
論上は、異常事態への対処を含んで更にプログラム化が進めば、操縦
作業は地上からの通信を使い、地上に設置したフライトシミュレータ
ーで操縦ができます。

現状では、プログラム化に不完全さ残っているため、飛行機に乗った
パイロットが補っています。つまりまだ飛行機は人による場の判断に
依存する不完全な機械です。

ここで、考えていただきたいことがあります。

▼サービス労働と知識労働

パイロットの時間あたり報酬は、スチュワーデスの報酬の数倍です。
理由は、パイロットの育成費用の高さです。パイロットの労働は、今
はまだデジタルプロセスに包摂されない部分がある。現状はプログラ
ム化に不完全な部分があるので、飛行機に乗ったパイロットの状況判
断によって補っています。

パイロットの高額報酬の理由は、プログラム化の不完全さが理由にな
っている。

パイロットは訓練された「知識&技能作業者」であり、スチュワーデ
スはパイロットよりは高度な作業ではない「サービス労働」とされて
います。それが報酬格差の理由です。

この報酬格差は、いつまでも続くでしょうか?

スチュワーデスは、個対個の笑顔やおもてなしの心を含むサービス作
業を行う。これはコンピュータやロボットでは代替できない「情緒的
な価値」を含む。

こうした、デジタルプロセスに変換できないスチュワーデスのような
「人的サービス労働」が、今は知識作業とされ高価に評価されている
労働と、順次、等価に向かうのが21世紀です。

これは、社会を変えることになる。会計士の仕事の90%以上は、デ
ジタルプロセスにできる。銀行の融資判断も同様です。

パイロットの「知識&技能作業」の内容はプログラム化、つまりデジ
タルプロセス化が進みやすい。デジタルプロセスにできれば、「監視
」と「緊急対応」の機能しか残らない。

99.9%の緊急事態に対応できるようなプログラム化が進行すれば、
パイロットの緊急対応の機能まで含んで、デジタルプロセスにでき
ます。

熟練パイロットは、地上にいて多くの飛行機をモニターしながら、プ
ログラム化、データベース化されていない事態の発生をモニターし、
遠隔の操縦室から操縦ができる。これがパイロットの生産性向上です。
航空産業に競争的参入を促せば、そうした方向に向かうでしょう。
飛行機に搭乗するのは、単にサービス作業者になる。

以上はすこし極端な例を使いました。
以下は、日常風景です。

▼工場でもモニター作業

今、多くの工場の現場がそうなっています。工場ワーカーは生産工程
の異常事態のモニターをする仕事になっている。中国を含め、すべて
のモノの生産はその方向に向かいます。

とすると、モノは、ますます安価になる。
世界は今、超供給社会に向かっています。

実は、ここ半年くらい大手電子機器メーカーの元CEOの方を含めて
数名で月1回の定例ミーティングをもっています。

先週は工場の出荷原価うち、純粋な「原材料費+加工原価」は何%で
しょうか?という私の問いに対し、「概算ですがおそらく20%に過
ぎないでしょう」という答えでした。

あとの80%の原価部分は、無形のものです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
電子工業における工場出荷原価100円の製品(product)なら、
    工場の純粋製造原価(原材料費+加工費)=20円
    研究開発を含む、
    ホワイトカラーの情報作業・知識作業費 =80円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

80%の原価を占めるのが、生産ラインの外の、ホワイトカラーの情
報作業、知識作業です。ここは、工程分析・要因分析の手が入ってい
ない「暗黒大陸」として残されています。

こうした観点で見ると、原価低減の方法はいくらでもある。製品の原
価低減を人的な観点から見て、別の表現にしたのが生産性の向上です。

「情報化・知識作業の工程化→デジタルプロセス化」が、鍵ですね。
工場の空洞化を恐れる必要はない。むしろ工場がオートメ化され、空
洞化するから、一人当たりの可能生産量が増える。

■4.データウエアハウスを使った、店舗特性と商品特性

【過去の結果はデータ分析で判断できる】
POSデータは、陳列された商品の売れた結果の過去を示すものです。
80年代中期から、POSによる売上結果の集計・利用は「不稼動」
商品の発見と処理として、次第に定型作業になってきた。

しかし、POSデータは過去しか示さない。

▼これからどんな商品を店舗に投入するかの判断作業をシステム化す


課題は、「どの店舗にどの商品を置くと最適か?」という判断のデジ
タルプロセス化です。この点については、ウォルマート以外の小売業
がシステム化を図っているとは到底思えないのです。

以下それを示します。わが国では、初めての紹介になります。

ウォルマートでは、
(1)セブンイレブンを真似たGOTを使った発注作業のみならず、
(2)10万品目からの商品選定の作業にまで、判断材料をそろえて
自動化したデジタルプロセスにしています。

ウォルマートはどんな方法をとっているか?

システム化の鍵を、結論から言えば、
(1)店舗特性(Store Traits)と、
(2)商品特性(Article Traits)という、2種類のマスターファイ
ルの作成と利用です。

ウォルマートは全米3000店に、全部を集計すれば10万品目を陳
列しています。

陳列される品目の特性(Traits)が、店舗の特性(Traits)に合致し
ているかどうか、これを人間が判断するのは、不可能な作業です。

新商品の登場を含め日々変わっていく10万品目からどの商品を、ど
んな根拠で適切なものとして陳列決定するかは、小売業にとって最重
要な決定です。

バイヤーまたはストアマネジャー(または部門マネジャー)の決定に
よるとされていますが、その判断方法は、どこでもデジタルプロセス
にはなっていない。

POSデータの利用は、陳列したあとの、顧客売上結果による判断に
過ぎないのです。

5.ウォルマートの秘密

▼ウォルマートが使っている店舗特性のデータ内容

店舗特性とはなにか? 例えば大学のそばにある店舗は「大学生店舗」
としての特性をもちます。大学生の顧客が多いからです。

退職者が多く住む地域の店舗は「退職者店舗」としての特性をもつ。
大学生店舗と退職者店舗では、違った品種と品目が必要であることは
だれでもわかるでしょう。

そして海岸に近い店舗は「海岸店舗」になる。「山岳店舗」または「
都市店舗」とは、最適品目が異なります。

Kマート、ターゲット(両方ともウォルマートと競合するディスカウ
ントストア)、ベストバイ(家電)・・・等の競合店がある店舗は、
競合店がない店舗とは、店舗特性が異なる。1000坪の店舗と30
00坪の店舗でも店舗特性は異なります。

以上のように「店舗特性(=Trait)」は多くの特性要因の重なりで規
定されます。店舗特性として、マスターファイル化すべきものとして、
ウォルマートでは数千項目を使っています。

店舗特性=合計(店舗の数千の特性項目)

具体的に言えばウォルマートでは、以下に示すような構造で、店舗の
特性を項目(フィールド)化し、店舗特性マスターファイルとして、
全米3000店をデータベース化しています。
   
   【売り場部門・・・】 【顧客・・・】  【競合・・・】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
   薬品 DELI パン 海岸 退職者 大学 Kマート 
店舗 部門  部門 部門…店舗 店舗  店舗  競合・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
S0001  Y   Y   Y   N   N   Y    Y・・・・
S0002  Y   Y   N   Y   N   N    N・・・・
S0003  N   N   Y   Y   Y   N    Y・・・・
・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

Yは項目化された上記特性の「あり」を、Nは「なし」を示します。
重要なことはYとNの中間はないと決め、「あり」or「なし」のどち
らかにすることです。

上記で店舗コード0001の店舗は、薬品部門、デリ部門、パン部門
をもち、大学生が多く居住する地区の店舗であり、Kマートと競合す
る・・・・実に、ウォルマートの店舗特性項目は、上に挙げないもの
を含めれば、数千項目になる!!

「店舗特性」は、個々の店舗で微妙に違う店舗条件・競合条件をあぶ
りだします。

<Wal- Mart maintained several thousand traits for stores and
articles(『Data Warehousing』2001:Paul Westerman )>

<ウォルマートは数千に及ぶ店舗特性項目と商品特性項目を、データ
ウエアハウス(即刻利用可能なデータ倉庫)としてメンテナンスして
いる>と述べるのは ウォルマートのデータウエアハウスの主任設計者
であったテクノロジスト、ポール・ウエスターマンです。

ユニークなことは「店舗特性のマスターファイル」が、別に作成する
「商品特性のマスターファイル」と付き合わせられて、店舗への新規
商品の導入が起案され、決定されていることです。

▼商品特性


   【売り場部門・・・】 【顧客・・・】  【競合・・・】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    薬品 DELI  パン   海岸 退職者 大学  Kマート
商品   部門 部門  部門….  店舗 店舗  店舗  競合・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
A00001  Y   Y   Y     N   N    Y   Y・・・・
A00002  Y   Y   N     Y   N    N   N・・・・
A00003  N   N   Y     Y   Y    N   Y・・・・
・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

以上のような商品特性も、店舗特性と同様、数千項目が設定されてい
ます。

これらの店舗特性と商品特性のマスターファイルはどう利用されるか?

<Traits are used to match an article to a store in the replen
ishment system . When you match the article traits to the sto
re traits , the system will create a distribution and stock ke
eping unit(SKU)>

<「特性」は、ある商品(品目)を、その商品の、補充システムの系
の中にある店舗にマッチさせるために使う。商品の特性が、店舗特性
に合致すれば、SKUとして、その商品の在庫補充のためのマスター
ファイルコードが新規に作成される。>

▼コンピュータ処理
つまり、
(1)1品目あたりで[数千の商品特性←→数千の店舗特性]を、1
0万品目・3000店を統合するデータウエアハウスサーバーのなか
で付き合わせし、
(2)商品と店舗の特性が合致すれば、その店舗で発注・陳列するた
めの「SKUマスターフィル」を自動作成します。

(注)SKUとはスストック・キーピーング・ユニット(在庫補充単
位)の意味ですが、日本語では「アイテム(品目)」と理解して下さ
い。

10万品目の商品特性と3000店の店舗特性とを、一個一個、手作
業で、商品部や店長の頭にある情報と知識で付き合わせれば総作業量
はどうなるか・・・

10万品目×数千項目の特性×3000店×数千項目の特性
       =数100兆の、特性項目のつき合わせ作業です。

人間には不可能な作業です。偉大なる馬鹿のコンピュータは、こうし
た単純作業が得意です。人間をコンピュータがサポートする。

ここが、ウォルマートの「新規商品陳列システム」の根幹になってい
る部分です。

大切なことは、店舗特性と商品特性の内容をだれが決め、項目の内容
を適切にメンテナンス(変更)するか、です。

<The traits are maintained centrally with input from store op
erations and merchandise managers>

<店舗特性と商品特性の各項目は、店舗運営部と商品部で、集中的に
初期入力をし、メンテナンスして維持する>

何のために、店舗運営部(店舗側)と商品部(本部側)での双方で、
二重に思えるメンナンス作業を行わせるのか?

ここが本部集権のボスによるコマンド&コンロールでない、ウォルマ
ートの21世紀型組織運営(=リーダシップ経営)のポイントです。

<The point is that there is give-and-take in the replenishmen
t from store operations and merchandising: each can set the
traits>

<店舗への商品導入を決める「特性」の設定において、店舗運営の立
場と商品本部の立場に、Give&Takeの相互関係を作ることが要点になる>

店舗特性、商品特性の設定で、双方に共同責任をもたせる。

▼経営組織へパースペクティブ(透視)

<経営管理者と呼ばれる人のほとんどが、実際は経営管理など行って
いない。彼らは、命令を上から下へ、情報を下から上へ伝えているに
過ぎない。したがって、情報が容易に手に入るようになれば、彼らは
余剰人員となる。『ポスト資本家社会』(ドラッカー)>

(注)『Post-Capitalist Society』は邦訳では『ポスト資本主義社会』
になっています。この日本語タイトルはドラッカーのメッセージを
隠す誤訳です。『ポスト資本家社会』、説明的にすれば『20世紀の
資本家社会のあとにくるもの』と訳すべきでしょう。

<しかし、われわれはそのような情報型組織をはるかに超えて、責任
型組織に進まなければならない。・・・・責任なき力は力ではない。
責任なき力は無責任に過ぎない。目指すべきは、組織に働く全員を責
任ある存在にすることである。問うべきは「いかなる資格があるか」
ではない。「いかなる責任があるか」である(同書)>

<知識社会おける経営管理の仕事は、全員を「ボス」にすることでは
ない。全員を「貢献者」にすることである(同書)>

ウォルマートは、20世紀型の「ボス組織」を突き抜け知識作業のデ
ジタルプロセス化を行って、21世紀型の「責任組織」に至っていま
す。ドラッカーが、GMやシアーズではなくウォルマートを分析すれ
ば、違ったパースぺクティブが得られたでしょうが・・・

ウォルマートでは、小売業で最も難しい導入商品の決定という知識作
業は、単純な画面クリックになっています。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
店舗現場のストアマネジャー(または部門マネジャー)は、
(1)毎朝、手許にあるRF(無線)端末の画面に自動表示される
   「店舗特性に合致する新規導入商品」のリストを見て、
(2)同じ特性の他店での売れ行きを確認し、発注決定を行う。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

6.商品選定作業は単純なデジタルプロセスになった

【発注】
画面クリックで発注決定をすれば、そのデータは、本部とベンダーに
自動送信されます。これで新商品の導入という店舗にとって最重要な
「意思決定のプロセス」は、ほぼ瞬間に完了します。

新規商品導入のプロセスは、システム内部でデータベースを処理する
「テンプレート」になって埋め込まれ、人の作業は、手許のRF端末
の画面をクリックするだけの「ワークフロー」になっています。

人間が行えば、以上に示したような緻密な論理的作業はできない。現
場では「いい加減な、十束ひとからげ」の粗雑な作業になっているの
です。それが、現場の実態です。判断する時間はない。

ウォルマートは商品選定という「知識作業」を工程分解し、要因の解
析を行って、その結果をデジタルプロセスにして緻密化した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知識作業→工程分解→[意思決定要因分解]→デジタルプロセス化
             ↓↑ 
  解決の鍵⇒ 「店舗特性×商品特性」(データウエアハウス)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【商品カット】
商品導入のあとは、POSからの在庫と売れ行きデータの解析結果の
グラフを見て、各部門(カテゴリ)マネジャーが行う発注の継続、ま
たはカットの時期の判断です。

以上に示したのは、ウォルマートの商品陳列とカットという知識作業
における「意思決定プロセス」を、データウエアハウスを使い、デジ
タルプロセスにしたことのケーススタディです。

(注)データウエアハウスの内容の詳細に関しては100ページ以上
の別稿が必要になります。

知識作業の根幹部分のデジタルプロセス化を見れば、小売業の先頭ラ
ンナーは「未来」にまで来ていることがわかります。

われわれはこうしたことを「知る」ことで、もっと適切なプロセスを
作り、ウォルマートを越えることができる。それが「事業」です。
事業創造とは、ノーハウで超えることです。

▼時代は変わった

<現実に支配力をもつ資源、最終決定を下し得る「生産要素」は、今
日(マネー)資本でも、土地でも、労働でもない。それは「知識」だ
ということである。『ポスト資本家社会』(ドラッカー)>

ウォルマートにとって、最も大切な資源は「知識」の元になる「デー
タウエアハウス」。土地でも店舗でも設備でもない。時代はもうここ
まで来ています。知識に資本はついてくる。

方法はある。手段もある。
工程分析の力が課題です。

これは、個人の能力からのみ来る。
資本の源泉が個人になるのが21世紀です。

【ご案内】
10月1日から全国の書店で発売の『販売革新10月号』に「ウォル
マート」に関し、15ページの考察を特集として寄稿しています。ウ
ォルマート(28兆円:4400店)は知識共有化を図った現場自律
型のチェーンストアです。

11月1日に発売の『販売革新11月号』に、「在庫管理の根幹と
は何か?」を15ページに渡る特集記事として寄稿しています。

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