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(02年11月25日) |
こんにちは、吉田繁治です。季節の推移には鈍感なほうですが、今年 はなぜか「自然」に目がいく。経済という共同幻想を含む人工が転換 をしているためかもしれない。地鳴りが聞こえる。 マクロ経済は、身近に考えることが難しい面があります。 本稿では、経済の最も小さな単位である「世帯」に換算し、考察を進 めます。世帯で見れば、イメージを作ることができるはずです。 【前半:米国世帯の資産状況】 前半で日本では紹介されない<米国世帯の資産状況>を示します。先 進国の経済では、資産が消費の増減部分を決める。 消費の40%以上は選択財・ファッション財です。エコノミストこれを 無視し、相変わらず消費が所得に比例すると思っていますが。計算さ れる消費への「資産効果」は小さすぎます。 【後半:日本の構造問題】 後半では<日本の真の構造改革>を示します。ソ連・中国的な国営企 業が40%:200兆円、規制産業が40%:200兆円、グローバル化した民 営産業は20%、100兆円)に過ぎないという問題です。 200兆円の国営企業、そして200兆円の規制産業が、生産性を向上させ ることができるか、日本の経済の焦点はここにある。 不良債権や銀行の自己資本問題は、通過点に過ぎない。 生産性が低く、赤字を出し、補助金が必要な国営企業は、中国だけで はない。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol. 126 決定版:金融危機とデフレ経済を解く(5)> 日本の構造問題の根底 【目次】 1.世界のデフレ化への焦点が、米国の住宅価格 2.米国家計の資産構造(バランスシート) 3.日本の世帯は預金、米国は株 4.株価下落が日米の金融に及ぼす影響 5.日本の構造問題の本質 6.共同体を守る攘夷からの脱却 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.世界のデフレ化への焦点が、米国の住宅価格 日本は、不良債権と生産性の構造問題でデフレであり、ドイツは、労 働制度の硬直化と高福祉コストでクランチに陥っているといわれる。 ところが、株価下落後の米国経済ついては、不思議に議論が少ない。 米国は、世界からの資金還流がないとやっていけない。機軸通貨の米 国が、バブル崩壊に向かっているとすれば、資金循環が変化する。 米国には機軸通貨で特権があることの現実を直視したくないといった 風情があります。機軸通貨国が与える特権は、米国経済の生命線です。 裏づけのない通貨発行でも、存分に他国の商品が買える。 機軸通貨国には、世界の中央銀行を持つという特権がある。 世界の商品経済と金融経済の最後の頼り、アンカー(錨)、国際金融 の胴元であった米国経済がどう向かうか。 ここの突き詰めを抜きにして、数年の予測はできない。 米国経済の内容を、かいつまんで振り返ります。 ▼急に低金利にしたFRB 【性質】 米国の経済は、設備投資、家計の耐久財(住宅、車)購入、そして消 費も金利感応度が高い。 【10回の金利切り下げで、8割の金利下落】 昨年の9.11以降、投資と消費の縮小を回避する目的で、FRBのグリ ーンスパンは、01年1月(6.75%)以降に10回も金利を下げた。 FFレート(短期金利)は1.25%へと、すでに8割下がった。 米国は、高金利によって債券の購入を、株価上昇によって株の購入を うながし、海外にばらまいたしたドルを還流させてきた。世界は喜ん で米ドルを受け取った。 しかし、国内経済浮揚のための低金利1.25%では、米国債が含む為替 リスクを考慮すれば、リスクが大きくなった。株価は既に2年半も下落 している。マネーが逃げる恐れがある。(日本はいつも、後追いです が・・・) 低金利による消費需要、車や住宅の耐久財需要で支えられているのが、 今の米国経済です。 ▼約10年ぶりの財政赤字の復活 90年代後期、好調な税収から黒字だった米国財政は、 (1)ゴアと争い、フロリダの数千票で大統領になったブッシュの、 人気取りのための減税、 (2)アフガンの戦費支出、軍事予算の拡大で急激に赤字になった。 02年10月の財政収支は単月で$539億(6.5兆円)の赤字です。 2002年会計年度で、$2000億以上の赤字になる。 ブッシュ政権は、税収の減少にもかかわらず、財政を拡大した。 同時に、米国企業の利益の30%くらいは、高額報酬の代わりになった オプション株を含み、会計操作による粉飾であったとされる。 90年代後期の、絶好調だった米国経済は今はない。 ▼分水嶺 まとめれば、 (1)金利を限界(1.25%)にまで下げたため、「米国債の追加購入」 の動機が小さくなった。 (2)貿易は、年$4000億(48兆円)の赤字を継続し、米ドルの増加 散布を続けている。 (3)米国の株価は、世界からの投資を吸引できていない。 約10年も続いた米国への「世界の資金還流」の構造が、転換するかも しれない分水嶺の様相を呈しています。 (欧州のユーローは、米ドルの機軸通貨支配から脱出する戦略です。) ▼戦争は世界経済にマイナス 米国経済マスコミでは、イラク攻撃が経済にプラスかマイナスかの議 論が激しい。軍需産業にはプラスです。他の産業にとってはマイナス になる。 戦争は軍需と戦費調達のためインフレ要因とされていた。しかし米国 が戦うのは総力戦ではない。しかも先進国の現代経済は、必需消費財 の経済ではなく、選択財・ファッション財の経済です。 選択財は「消費者心理」で需要が急減します。 01年9.11直後に訪れたサンタモニカモールに、ホームレスと鳩しかい なかった風景が忘れられない。その後、ディスカウントと「愛国消費」 低金利で小康を保ったのですが。 90年代の後期の世界経済を支えていたのは消費の米国と、金融の英国、 輸出の中国です。日本とドイツは沈み、過去のランナーになってい ます。 今、米国の消費を支える唯一の要因になった住宅価格は、どうなるか? ■2.米国家計の資産構造(バランスシート) 米国の家計は、99年末に、資産内容で最高を示した。 90年代の米国世帯は、「資産インフレ経済」だった。 以下は1980年末から直近までの推移です。すべての年度を$1=120円 で換算しています。全体数字を米国の世帯数1億世帯(日本の世帯数の 2.2倍)で割り、1世帯平均にしています。 (日本では一部でしか知られていない数字です。) 【米国家計の資産の変化】 80年末 90年末 99年末 01年末 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 総資産 1320 2890 5830 5750万円 ・内実物資産 530 1120 1650 1960 ・内金融資産 790 1770 4180 3800 総負債 180 440 730 970万円 ・住宅ローン 110 340 540 750 ・消費者ローン 70 100 190 220 差引純資産 1140 2450 5100 4780万円 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ・可処分所得 250 520 810 880万円 ・純資産の 可処分所得倍率4.5年分 4.7年分 6.2年分 5.4年分 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (02年8月の日銀調査月報より筆者計算) ▼家計の1世帯あたり純資産はピークで5000万円だった 90年末から99年末にかけて、米国の家計では、 (1)実物資産(その80%は住宅)が1650万円にまで1.5倍に増加(値 上がり)した。 (2)金融資産(その47%は株・投資信託、30%が年金)は、1770万 円が4180万円にまで2.4倍に急増した。 純資産は2450万円(90年末)から5000万円(99年末)へと10年で2倍に 増加しています。 世帯平均で、年間可処分所得の6.2年分余の資産を持った。米国は資 産経済だった。 ▼20年で4.4倍:年率7%の複利での増加という資産の高度成長 全体イメージとしては、1世帯当りの純資産が、 1140万円(80年)⇒2450万円(90年)⇒5000万円(99年)と、20年で 4.4倍になったとイメージできます。 20年で4.4倍は年率7.4%の複利です。 「すごい勢い」の資産増加だった。 日本の高度成長期の経済と似ていたのが、資産の面での、80年から99 年の米国の20年間。 原動力は、世界のマネー、とりわけジャパンマネーが米国に集まった ことです。その間、米国の対外純資産は2兆3000億ドル(276兆円:世 帯当り276万円)の赤字の債務国に陥っている。 世帯あたりの住宅と金融資産を合わせた純資産が20年で4.4倍の5000 万円になれば、皆は安心し消費は好調になる。 米国の90年代後期から2000年は、資産インフレによる金ぴかの時代だ った。ところが・・・資産インフレには資産デフレが続くのが、経済 原理。 ▼暗転 米国の株価は2000年春のピークに比べ、5割も下落しています。 米国家計の金融資産は、年金も大部分を株で運用する。株価で増減し ます。預金の手持ちは金融資産の11%に過ぎない。(日本人は預金が 54%) 上に示した統計以後の約1年(02年11月まで)で、米国人世帯の金融資 産は、99年に比べ、30%は減ったと見ていいでしょう。 ▼株価は下落したが、住宅価格は上昇していた ところが株価の下落はあっても、住宅ローン金利の低下のため、住宅 価格は99年〜01年では310万円(約20%)も値上がりしています。 (現在は平均で横ばい。州によっては下落と上昇があい半ばします) 02年11月時点での家計の純資産は、 住宅資産が1960万円、 金融資産は(上記統計にある01年末の3800万円ではなく) 株価下落のため2800万円で、合計4760万円、 総負債は(01年末の970万円ではなく)1000万円 差引純資産は3760万円と減しています。 99年末の5000万円から25%は縮小している。。 株価の下落は、年金を含めば世帯当り1000万円(全体で1000兆円)の 金融資産を減らした。1世帯にとって、1000万円の金融資産の減少は 大きい。これを無視した経済論は、無効です。 2003年から、平均住宅資産の1960万円が下落に入るなら、米国世帯は 突然財布の紐を締める。 米国では資産格差が激しい。所得五分位のトップ20%世帯に株価下落 の影響は集中しています。米国に行ってみると、一部の人を除き、全 体は、まだ楽観的に見える。 <米国の90年代は、ドル機軸通貨の効果拡大により、世界のマネーを 集めた結果としての金融経済だった> クリントン政権は、IT戦略をとった金融政権だった。 米国民にはこの認識がない。認識は遅れる。FRB議長グリーンスパ ンにはある。ダウが$6400(→今は$9000前後)を超えたとき「根拠 なき熱狂:irrational exuberance」と言った。 彼の発言は正確ですが、世界金融の司祭としてのグリーンスパン神話 は、00年から消えています。 ブッシュ大統領とスタッフには金融経済の認識が薄い。 ブッシュ政権は、資源戦略をとった軍事主導政権です。 そのため経済の非常時にもかかわらず顔合わせに終わったカカナキス 以降、サミットもG7も、世界経済の調整力を失った。 ■3.日本の世帯は預金、米国は株 日本の世帯と米国世帯の金融資産の構造を対照し、示します。 ▼日米の1世帯平均の金融資産:2001年 日本人(構成比) 米国人(構成比) 4500万世帯 1億世帯 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 現金・預金 1710万円( 54%) 430万円( 11%) 債券 120万円( 4%) 320万円( 9%) 投資信託 70万円 ( 2%) 500万円( 13%) 株・出資 230万円( 7%) 1290万円( 34%) 保険・年金 900万円( 29%) 1150万円( 30%) その他 120万円( 4%) 110万円( 3%) 合計 3150万円(100%) 3800万円(100%) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 2800万円(02年11月推計) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (02年8月 日銀調査月報より筆者計算) 世帯の金融資産の中身を比較すると、資金循環の違い、金融システム の違いがよくわかります。ここが、経済構造を決めている。 日本のバブル、金融問題、バブル崩壊、公共事業も、世帯が預金に集 中させる資金運用を行ったことから起こった。 財投、公共投資、特別会計は、郵貯・簡保・年金にマネーが集まった から起こった。旧大蔵省理財局に、運用を任せたのは誤りだった。国 民のモニターが必要だったのです。 日本人は預金(54%)、 米国人は債権・投資信託・株(合計で56%)です。 保険・年金は両国とも30%前後。 株の下落は、(日本では)家計ではなく、株を持ち合う銀行・企業・ 保険会社の資本を直撃します。世帯の株は金融資産のうち7%で、ほと んど影響を受けない。 他方、(米国では)株が家計の金融資産(直接、間接の持ち株と年金) に影響を及ぼす。株価が、直接に消費を左右する。 ▼補注:日米の、金融資産格差の特徴 日本:金融資産は、所得と違い世帯格差が大きい。日本では65歳以上 の高齢者世帯(1114万世帯:世帯数の25%)が、個人金融資産の50% を持ちます。 日本の金融資産は「世代格差」です。 米国:所得五分位の最上位20%の世帯が、金融資産の85%を持ちま す。 米国の金融資産は、世代でなく「職種格差」です。 ここ2年で、1000万円(合計1000兆円)の金融資産を失った米国家計に、 住宅価格の下落が加われば、消費が落ちることは容易に想定されま す。 ただし、米国の住宅は日本のような半額以下への下落はない。 最大で、30%(世帯平均で600万円)の調整でしょう。 米国住宅価格の大幅下落があるかどうか、これによって、日本のみな らず世界が供給過剰のデフレ経済に突入するかどうかが決まる。 問題は、そこまで煮詰まっています。 予想されるイラクとの戦争では、米国が、過激派のみではなく全イス ラムまでを敵に回す。貧者の抵抗であるテロリズムを世界にばらまく。 隣に住んでいる人への「不安の時代」が始まった。宗教的背景をも つテロリズムの根絶は、可能ではない。 ▼戦略的狙い 米国の戦略的狙いは、イスラムを過去のソ連のような悪の帝国として 位置づけることによって、 (1)市場経済圏を、軍事力を背景にするユニラテラリズム(一極主 義)によってまとめて統治し、 (2)米ドル基軸通貨体制の継続によって、世界経済からの合法的収 奪を続けることです。 ブッシュ政権の狙いが「新冷戦体制構築」であることは明白です。 これは破綻する戦略と判断しています。英国を除く欧州は、米国戦略 に協力的ではない。日本は軍事戦略では米国の属国ですが。 ■4.株価下落が日米の金融に及ぼす影響 日本では、世帯が株を持たない。 (1)世帯当り1710万円の預金は、「預金の名目額」が保証される。 (2)900万円の保険・年金も、「名目額」は「一応」保証されていま す。 他方、預金や保険金額を保証する金融機関には、株価と地価下落の資 産デフレによるマイナスが集まった。 ▼民間金融機関が蒙った資産損失(91年→00年まで) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 土地の保有損失 80兆円 株の保有損失 40兆円 不良債権の抹消 100兆円 合計 220兆円 (02年経済財政白書より) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以上の損失は、91年から2000年までです。 00年以後も土地と株は下落しています。合計で300兆円を超える損失を 02年までに蒙っています。加えて民間金融機関の未処理不良債権で、 200兆円が残るとされる。 家計が持つ預金通帳や、生命保険、年金等の契約金額は、残っている ように見えますが、金融機関資産には巨大な穴が開いています。 なによって埋めるか。国債発行による政府資金投入ですが、その国債 は日銀が引き受ける。 02年11月現在、既に、以下の構造になっている。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 [日銀の国債購入]←<円の発行> ↓ [政府資金]←[税収不足] ↓ [世帯の金融資産3150万円]→金融機関の資産の空洞 ↓ ↓ <将来の増税> [不良債権] 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 前回のマガジンで、2004年に日銀が計画している新円切り替えの時の [金融資産残高の10%切り下げ]という(うがった予想での)方法を 示しました。読者からの反響が強かった。 上図で見るように<円の発行>または<増税>が源泉です。 インフレを抜きにすれば、3つしか方法はない。 (1)消費税の30%レベルへの増税、 (2)同じことですが新円発行による、年金・保険・銀行預金を含む、 金融資産の契約額の切り下げ (3)国有資産の民間への売却 国際金融から波乱が起こる前の猶予期間はこれから2年でしょうか。 第二次インターネットブームの2005年につなぐことができれば幸いで すが。 (注)本日、11月25日に発表された「生保の予定利率の下げのための 法改正」は、上記(1)の方法です。これに類することは、年金や健 康保険では既に始まっていますね。 ▼米国 米国は、直接金融のシステムを持つ。世帯の金融資産では預金は430万 円(構成比11%)に過ぎず、日本人世帯の1710万円(構成比54%)と 対照的です。 日本では資産(土地・株)のデフレは、 仲介機能である金融機関を直撃します。 米国では、世帯の金融資産を直接に目減りさせます。 その意味で、米国では金融危機も「分散」される。柔構造がある。た だし、資産価格デフレは、家計の消費を直撃し、同時にすぐレイオフ を増やす構造がある。 米国のアキレス腱は、資金の面での海外依存です。 他方日本では、資金の海外依存はない代わりに、日銀依存がある。 もう一段巨視的に言えば、[日銀のマネー増発]→[米国債券購入] →[米国への流出]です。この構造こそ米国が死守する世界の資金循 環構造です。これで、基本構造が、明らかになった。 米国の金融戦略は、他国通貨でファイナンスすることでドルを無際限 に発行できる基軸通貨特権を守ることです。ここまで来ると、単純な 筋が見えます。更に、論を進めましょう。 ■5.日本の構造問題の本質 日本の世相は、不良債権と銀行の自己資本問題に集中しています。 ところが金融問題は結果に過ぎない。結果を生んだ構造問題への着手 が必要でしょう。原因は以下です。 ▼国有企業、規制産業、民営企業の3本柱の構造 日本経済のGDP500兆円は、国有企業200兆円、規制産業200兆円、民 営企業100兆円という3本柱で構成されています。 合計では400兆円にもなっている国有企業と規制産業が、「生産性」を 上げることができるかどうかここに日本人の将来がかかっている。 【1.国有企業部門:2400万人】 「国有企業」とは、国家・自治体機関、公団を含む特殊法人、公益法 人のみではない。教育、社会福祉、医療にまでかかわり、税、国債、 財投を原資とする組織のすべてを含みます。 【2000年の政府部門の総予算】 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 政府消費 85兆円 公共投資 35兆円 社会保障等 50兆円 その他 40兆円 合計 200兆円 (2002年経済財政白書) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 以上のように政府・自治体予算、財投を原資として営まれている機関 が200兆円(98年の小渕内閣では220兆)もある。不良債権処理は、さ らに国家の関与を増やす。 これらは直接・間接に、中央官庁の裁量予算でコンロトールされる。 GDPの40%まで政府部門(≒国営企業部門)が肥大した理由は以下 です。 (1)財務省は、審議を受ける一般会計の税以外に、郵貯・簡保、年 金資金を財投、特別会計とし、モニターのない裁量で使う仕組みを作 った。 (2)田中角栄が70年代に発明した政策名目、「国土の均衡ある発展」 のイデオロギーが、族議員、高級官僚、建設・土木の、巨大連合体 をつくり、公共投資経済を作ってきた。 (3)90年代の需要不足を埋めるための公共投資430兆円が、ケインズ 策として正当化されてきた。 国民の監視を受ける税以外の、(要は)個人金融資産1420兆円の使途 に、官僚と政治家が深くかかわった。レビューもチェックも官の内輪 からのものだった。以上の構造は政治・官僚・業界の合作です。 結果は国営企業部門の2400万人の雇用。40兆円の負債を抱える道路公 団を含め、生産性で、中国の国有企業の低さと同様の問題を抱えてい ます。 冷戦終結後の併合で、低生産性部門の東ドイツを抱えた西ドイツと同 じ構造がある。 90年代は民間部門と規制産業のリストラ人口がこの、国営企業部門に 雇用されてきた。 【2.規制産業部門:2400万人】 国営企業部門と同じ規模があり、GDPで200兆円(2400万人)部分が 「規制産業部門」です。 不良債権の巣窟、流通、建設・土木、金融・保険、運輸、サービス、 農林漁業が主ですが、およそ全産業領域にわたり、雇用数2400万人が 計算されます。 規制産業部門では、 (1)政府の法や行政による規制もありますが、 (2)業界を形成し、新規参入や新しい方法を、業界秩序を守ること を名目とし「民民規制」する構造がある。 業界の規制は、官が発意するより、業界団体の意向を受けた政治家と 中央官庁が作る。規制は官の権益の拡張のみではない。むしろ大きい のは既存業界保護の動機です。 金融ではIYバンク、ソニー銀行への直接・間接の、露骨な負担の押 し付けがあった。商品開発力を失った金融部門へは、新規参入を促す べきですが、その動きを業界と官をあげて拒否する。 クロネコヤマトの小倉社長が、宅急便を作るとき、運輸の既存勢力と 交わした熾烈な戦いを見ればわかる。官はベンチャービジネス育成と は言いつつ、規制分野へは参入を阻止する。 ベンチャーはIT部門だけでは小さい。規制産業は、全体では200兆円 :2400万人の規模を持つのです。 農林漁業への新規参入も、巨大産業を生むはずです。 バイオを含む食の産業は21世紀の成長産業でしょう。 地方自治体が出した「構造改革特区」への、中央官庁の抵抗は幕藩体 制300年の江戸城の末期症状に似ている。 【3.民営企業100兆円】 トヨタは、今、最高益を上げています。2000年には国内販売台数の17 5万台を、北米向け(180万台)が上回っている。こうした国際企業を 典型に、日本には100兆円(雇用数120万人)くらいは世界の先端を走 る企業がある。 国営企業・規制産業4800万人と、民営企業1200万人を截然(せつぜん) とわかつものはなにか? ■6.共同体を守る攘夷からの脱却 国営企業部門、規制産業部門の4800万の共同体で、閉鎖経済を続けれ ば、悪貨が良貨を駆逐し二流国経済になる。 徳川幕府(=武士の生活共同体)が鎖国を続けていたら、他のアジア 諸国のように日本も植民地になった。 ▼米国にとって可能な秘策 実は、米国は開放経済を続ける限り、世界の盟主の地位は揺らがない。 貿易赤字を解消する方法があるからです。 $4000億の貿易赤字を続ける米国の次の戦略は「輸入制限」になる。 輸入制限をしても米国は困らない。世界の先端企業に米国での工場建 設を促し、輸出産業とすればいい。 米国は海外からの投資を、州政府も諸手を挙げ歓迎する。日本では、 外資進出を忌避します。ここに、島国の狭量さがある。 トヨタ米国、ソニー米国、シャープ米国が米国で売るだけでなく、米 国に工場を作ることを支援し、日本に車や家電を輸出するようにすれ ば、米国の貿易赤字は解消します。他方、日本は貿易赤字に陥る。 これが、米国が最終的にとる戦略です。 そして「基軸通貨国特権」は死守する。 ドル札を刷れば、商品を買える経済には旨みがあるのです。 米国にとってドル基軸通貨体制を守ることが、第一義の戦略です。 米国経済の奥の院の認識では、$経済圏を広げる通貨戦略こそ、「高 度(sophisticate)された新植民地政策」に他ならない。円は、その ための衛兵です。ここが、米国の経済戦略の根底だと記憶しておいて ください。 ▼江戸時代の末期と似て 日本が、財務省の国内至上発想で、高負担の課税や福祉負担を強める ことは、今の方向としては、確定でしょう。 コストの高い国内立地では世界競争に負ける。財務省主計局は、江戸 城の本丸に住む。ここまで失敗したのですからもう頭を丸め、江戸城 の無血明け渡しが必要な時期ですが・・・ 中国、アジア、東欧を含め、世界の国々は、国策として外資の優良企 業・技術力ある企業を誘致し学習して、自国のものにしようとしてい ます。 ひとり日本だけが、外資の進出に反対する。 国内の経済特区すら、つぶそうと動く。 行動パタンーンは、寿命が過ぎていた幕藩体制を守るため、外人を排 斥した攘夷と同じです。 金融でも、商品開発力を持つ外資の進出を歓迎し支援し、英国のよう な「金融のウィンブルドン」を作ればいい。外資とは言っても、働く のは日本人です。外資の最優秀なディーラーは日本人であることが多 かった。日本人は、場が与えられれば能力を発揮します。 フェアな成果給なら、日本企業に雇用されるより気分がいい。 上海は、アジア通貨圏での盟主の地位を狙っています。 日本が、金融機能を失う時期が上海閥にとっての機会になる。 今、日本は二分されています (1)既得権を守る勢力 (2)日本に愛想を尽かし始めている人々 なぜイチロー、中田、松井が一流の場へ行くか。 日本が、二流の仕事場だからです。 個人の能力は、日本を超え始めた。 企業もなんら変わらない。 日本には、再びの開国が必要です。内需産業とされる小売・流通、金 融、医療、サービス、教育、運輸、農林漁業に外資がどんどん進出す ることが必要です。参入で競争化を促すことが、常に最善策です。 日本人は、10年もすれば、外資の技術を優れたものに変える。 補正予算でGDPの1%部分をどうするかという微細、短期的な議論 に憂き身を費やしている時期ではない。無駄です。意識を根底的なこ と、長期的なことに向けなければならない。なぜ日本人はこんなに発 想が小さくなったか。小金持ちになったせいかもしれない。 200兆円の国営企業部分、200兆円の規制産業部分にビジネスチャンス があります。日本にビジネスの機会がないというのは嘘です。外資が 進出するのは、日本にビジネスチャンスを見るからでしょう。 金融は当面、融資機能を停止した。こうした部分がいたるところにあ る。開放と開国を促せばいい。寿命が来た共同体を守る攘夷をやめる ことです。 攘夷とは対国外だけではない。国内での攘夷がある。 自己革新力のない固定化した共同体は、周囲までをを巻き込んで滅ぼ す。高税、高負担の国にしてはいけない。増税で官の関与を増やせば、 遅れてきたソ連帝国に向かう。世界の構造、基底的なことをご理解 いただけたでしょうか? see you next week!! 【ご案内】 12月1日に発売の『販売革新12月号』では、日本ではゆがんで特 殊な形になっているチェーンストア理論ではなく、「リテイルマネジ メント」という新しい角度から、流通業の課題を解いています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ご案内】 1ヵ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-mailで 姉妹誌:『ビジネス知識源プレミアム(有料版)』 600円/月(毎週水曜日発行) <まぐまぐプレミアム>のサイトで会員登録が必要です。↓ http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018 登録の翌週から配信され、バックナンバーの購読もできます。より深 い知識と技術を得るための知的投資。会員登録で多少お手数をかける ことをご容赦下さい。読者管理は<まぐまぐプレミアム>が行ってい ます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 【ビジネス知識源 読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 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