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仕事へのアイデンティティと学習する組織
                   (02年12月03日)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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 組織が壊れる時代、知識の自己投資に役立つことを目標に。

*以下、当幅フォントの指定で読むと文字レイアウトが整います。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは、吉田繁治です。一昨日と昨日、箱根でのセミナーでした
。昨年の秋から今年の夏にかけて行った4回の海外セミナーに参加され
た方による、ボランティア運営の研究会です。

20ページほどのレジュメでテキストを作り話すのですが、壇上に立て
ば、ツアーの風景に混じった、出会いの思いが浮かびます。

本稿では、随想風の記述を交えながら、これからの経営と仕事のキー
概念になるであろう「仕事のアイデンティティと学習」について考察
します。セミナーでの質問事項へのまとめも含んでいます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   <Vol.127 仕事へのアイデンティティと学習する組織>

【目次】

 1.守るべき価値の映像
 2.アイデンティティということ
 3.変化すべき部分
 4.私の誤解
 5.目標による管理の内容
 6.異常なことの発見から
 7.差異化の方法

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.守るべき価値の映像

訪れる街と人を結ぶものは、記憶になり固定された過去と、新しい変
化への期待でしょうか。箱根温泉郷の入り口にある湯本は、早川と須
雲川が山を割り、初冬の紅葉が鮮やかにまぶされた、山間のパレット
の坂だった。

川の合流点に立つ「はつ花」で、水を使わず、自然薯(じねんじょ)
と卵を蕎麦(そば)粉のつなぎにした山かけ蕎麦で、遅いお昼を摂(
と)った。

メニューの筆頭に、山かけ蕎麦があって、製法の説明が書いてあった
ので、特に選ぶことなくそれを頼んだ。

聞けば、独特の山かけ蕎麦は、ここから発祥したという。湯本に着い
たのは午後4時ころでした。店の入り口には列ができていました。普通
は暇な時間にも、なぜ人が並ぶほど混雑するのか。

前泊した旅館に行き温泉につかったあと、セミナー会場を紹介してい
ただいた「はつ花」の二代目のご主人に案内され、10脚くらいの椅子
が並ぶカウンターバーに行った。

ビールを頼めば、注ぎ方の所作に年季が生む芸が感じられたので、「
この仕事は何年くらいですか?」と聞くと、「もう40年にもなるでし
ょうか。」という答えが返ってきた。あとでマティーニを頼んだ。絶
品だった。

そのバーで「はつ花」の主人は言った。「先代から受け継ぐものと、
お客さまから得られる反応を見て変えていくメニューや調理方法があ
ります。日本人の舌は、多分・・・並外れています。この国の食文化
は、世界最高のものでしょう。世界に誇ることができると思っていま
す。」

自然薯が好物で、山を駆け回る猪(いのしし)のように元気であって
欲しいという先代の願いから、「山かけ蕎麦」の名前と、つなぎに水
を使わず自然薯と卵を使う製法が生まれたことを、私はその時始めて
知った。先代は、猪年の生まれだった。

最初、他の蕎麦屋から「蕎麦には蕎麦の伝統がある。山かけ蕎麦なん
か邪道だ」となじられたという。業界はいつも固定観念のカタマリで
す。ヒントは他業種にある。

開発から50年後の今、蕎麦の製法は異なりますが、山かけ蕎麦は全国
の蕎麦屋の定番メニューになっていますね。「はつ花」の経営の軸は、
ここにあった。顧客はこうした物語のあるホンモノを求め行列を作
る。

おそらく我々が、日常、何げなく食べる決まりきった料理にも、こう
した、開発の物語と伝説があるのでしょうね。発見や開発は、探せば
至るところにある。

■2.アイデンティティということ

「守るべき価値」を見出した人も企業も強い。アイデンティティ(拠
りどころ)やブランド価値(顧客がよせる期待)にも似ている。

自分自身を見たときは存在証明になるアイデンティティであろうし、
顧客との関係から言えばブランド価値であり、顧客の期待を満たし、
期待をつないで高めること。

アイデンティティ:自分自身が持っていると感じることができ、しか
も他の人とは違う特性や姿勢

[自己−アイデンティティ]−「ブランド価値−顧客がよせる期待」

この両者に強いつながりができたとき、経営の軸が左右に振れない企
業ができる。

こうした軸をもとに、将来に向かって何を守るべきか、何を変えるべ
きかを判断する。守るべき価値(value)を見出したとき、変えるべき
部分も決まる。

今の日本では、軸が振れる企業や人が多い。企業や仕事は、単にお金
儲けではない。利益は、企業存続の必要条件ではあっても十分条件で
はない。

日産は、今年、名車と言われた「フェアレディZ」を再開発し、復活
させた。トヨタは、車作りの技術の粋を集めるF1レースにチャレン
ジした。

単に、過去を守ることだけではない。共感をよぶアイデンティティ(
拠りどころ)に向かった自己発見と不断の開発がある。

事業の経営も生きることも、核の部分では、アイデンティティの樹立
へ向かった探索でしょう。NHKのプロジェクトXがサラリーマンの
人気を得る理由は、映像が技術者のアイデンティティと情熱を見せる
からでしょう。サラリーマンが危機において信念を見せる。

劇的に見せるための脚色はあるにせよ、危機がバネになることは多い。
危機とは、そこで人々が退却した場所だからです。

世界は連結され、相互に真似る競争化に向かっている。独自のアイデ
ンティティにつながっていて、顧客が違いを受け取ることができるブ
ランド価値をつくらなければ、模倣を繰り返し終わりなき消耗が待つ
だけになる。

3.変化すべき部分

では、なぜ、日々の売上データ(過去の事実)を一定の基準で並べて
分析し、得られる「情報」をもとに考えるのか。

情報は、競争環境や顧客の動きを示し、変化すべき部分についての「
お知らせ(information)」を与えてくれる。

すべてを一度に変化させれば、壊れることがある。守るべきものを発
見し、変化すべき部分への判断を下すこと、こうすれば、「軸」が振
れたことを原因に、惑うことは少ない。

[変化すべき部分]←[お知らせ]←[外部からの情報]
    +
[守るべき価値] ←[自己のアイデンティティの探索]

政治の世界のみならず、保守と革新が入り乱れるとき、軸が消え、方
向をもたないエネルギーがぶつかり合うカオス(混沌)が生じる。

リーダシップと言われる機能がある。到達点を見据えたリーダシップ
は、向かうべき方向を示すことができる。

組織内部のカオスでぶつかり合って消耗されていたエネルギーに方向
が与えられ、磁石がN極とS極を示すように、集団のエネルギーに整
列(alignment)が起こる。

改革では、到達点(goal)が示されなければならない。改革は「方法」
に過ぎない。改革の先にあるゴールを示すこと。小泉内閣が主唱する
構造改革では工程表はあっても、到達点のクリアな映像が欠けている。

着地点(または目標)に至る道程の設計、含まれる戦略、これが計画
であり、実行順序を示すのが作業工程表です。

4.私の誤解

組織を運営することを、マネジメントと言っています。個々人の機能
(function)を、合意されたゴールに向かって整列させることができ
れば、個人でできることの何倍、何十倍もの成果が生まれます。

工場の生産ラインでは、一定速度で動くベルトコンベアが、細分化さ
れた個人の作業を強制します。100人並んでいて、1人の作業が滞れば
すぐ分かる。ベルトコンベアは管理を自動化し、生産性(成果)を平
均化させます。

ところが、今、先進国では60%近い人が携わる「知識作業」では、
目に見えるベルトコンベアはない。個人ごとの作業方法と成果は、異
なる。自己管理になる。ベルトコンベアのような工程管理を想定する
ことはできても、適用できる範囲は、定型化された情報加工の作業部
分です。

こうした領域では、「到達すべき目標による管理」が必要になり、そ
の目標へ向かっての動機付けが必要です。目標に向かった作業にエネ
ルギーを与えるのは、人間に必要な動機付けです。

単なる「やる気」ではない。実現されたときの将来映像や顧客の満足
を具体的に描くことから人に生まれるエネルギーです。

▼誤解

軍隊組織の命令に代わる、近代マネジメントの方法をまとめたのはド
ラッカーと言われます。それを端的に言えば「経営=management by
object(目標による管理)」でした。

昔、経営セミナーに出て、初めてのコトバとしてこれを日本語で聞い
たときは、講師はそれを「目標管理」と言っていた。セミナーでは計
画作りのための数表が配布されました。

私は目標管理を「目標を管理すること」と理解し、一体どんなことだ
ろうと思いながらも、数表を数字で埋め、全体の利益計画を作り、売
上と利益目標を個人に割り当てることだろうと解釈したのです。

目標管理はスタッフが行う「計画作り:planning」だと考えていた。
当時の知識・情報の範囲で、できるかぎり包括的に思える経営計画書
を作った。

スタッフが、当年度必要利益からの逆算で目標数字を作り、トップの
合意を得て発表すれば、報酬をもらう現場は、実行義務を負うと思っ
ていました。必要利益からの逆算ですから、計画表に対して表面上の
反論はなかったのです。

ベースになった情報は、過去数年の損益計算書、貸借対照表、そして
売上結果を集計したコンピュータデータでした。立派に見える経営計
画書を作ることが、スタッフとしての義務だと考えていました。

財務省が行っているような、勘定科目別の予算統制だけの考えだった
のです。もちろん利益が必要な企業では収益とコストの統制は必要な
ものですが、それだけでは十分なものにならない。財務省に例えれば、
国民が税を払う動機付け、つまりは集めた税の使途への合意が必要
ですね、

結果を思い出せば、組織の日々の活動では、計画表はうわすべりでし
た。

おそらくトップマネジメントや、現場の社員が抱くアイデンティティ
や成果のイメージとのズレがあった。人員配置との連動もなかった。
計画数字に、成果の強制の感じのみがあった。

数字で表現してはいたのですが、個々人の日々の仕事に食いこんで、
仕事のエネルギーになっている感じはなかった。

成果目標に対する動機付け、そして方法論も欠けていた。それでも、
スタッフとして計画を作成する自己満足はあったのです。

4.目標による管理の内容

▼management by object

後になって、「目標管理」と講師が言ったことの原義は「management
by object」であって、正確には「目標による管理」だと知りました。
このとき、ベールに覆われていた仕事の視界が、開けた感覚があっ
たと記憶します。

<まさに重要で困難な課題が多いからこそ、中小企業であってもその
日暮らしでは、マネジメントは不可能になる。しかも退化こそ日常の
状況である。したがって、目的意識に基づく体系的な計画が必要不可
欠となる。(『創造する経営者』p184)>

ここは理解できるでしょうね。外部の競争環境、顧客、商品、売上は
日々変化する。その日暮らしでは、退化する。目標を示した計画が必
要です。

38年も前に書かれた『創造する経営者』(ドラッカー)からの引用で
す。古典には、繰り替えし使うことができる原則や原理、つまり基本
があります。

他のことでも、なにが「基本」であるかは、実際、試行錯誤を経たあ
とで分かることが多い。時折古典を開くと、表現の古さを透かせば、
ものごとの本質が見える。

原題はManagement for Resultsであり『成果へ向かう経営』です。
成果へ向かった経営なら、映像が具体化します。

成果へ向かうことができる重点化のために選択を行い、
他とは違う卓越さ(excellence)に向かうことができるモノ(商品)
やコト(サービス)を見出し、
実行可能な目標を作って、目標と結果の差異を管理することと理解す
ればはっきりします。

大切なところは以下です。

▼重点化

<(経営計画作りでは)ほとんど際限のない課題を管理可能な数にま
で減らすことが必要となってくる。そして稀少な(経営)資源を、最
大の機会と最大の成果をもたらすものに集中することが必要になって
くる。少数の適切なことを、卓越性をもって行うことが必要となって
くる(同p285)>

「目標による管理」が後になってやっと理解できたくだりは、ここで
した。際限のない数の課題から、少数の適切なことを選び、卓越性を
目指して行うこと・・・

個々人の目標は、単純で具体的でなければならない。そして、実行に
あたって、組織と個人のアイデンティティ(よりどころ)につながる
動機付けがなければならない。ここで、仕事は苦役としての義務から
喜びに変わる。アイデンティティは、共感と言い換えても同じです。

卓越性は、数字では表せないことが多い。商品やサービスの具体イメ
ージを描く設計やモデリングが必要です。

小麦粉の使用が統制されていた50年前に、自然薯と卵を使う蕎麦作
りの方法を発明した「はつ花」の先代にとっては、最初は友人の要望
で偶然に作り、「これだ!」と直観したものが、それだった。

今よりも優れ、卓越に向かって実行可能なことを絞ること、つまりは
選択による重点化であり、それによって組織は惑わず、整列に向かう
ことができる。

こうした重点化に至るための方法論はあるのか。
どこから着手すれば、目標の重点化ができるか。

<古いもの、(成果が出ず)報われないものを意図的かつ計画的に廃
棄することは、新しいもの、極めて有望なものを追求するための前提
である。まさに廃棄は古いものに代わるべき、新しいものの追及を刺
激するがゆえに、イノベーションの鍵である。(同p201)>

廃棄すべきもの、継続すべきもの、加えるべきものの選択、当時の私
のスタッフとしての立場では、作成した計画書にこの3区分の判別を加
えることができなかった。内容は、商品やサービスの具体イメージが
欠けた金額数字だけだったのです。

企業がもつ利用可能な経営資源への判定、重点化、数値目標への動機
付けが欠けていたのです。

▼重点化にあたって強みを活かすこと

<アプローチには共通するものがある、それは強みを活かすというこ
とである。問題ではなく機会を求めるということである。避けるべき
危険ではなく、実現すべき成果(results)に重点を置いたということ
である。(同p196)>

「強み」とは何か。卓越さに向かう可能性、機会があるものでしょう。
とすれば、重点化においては「強みの発見」が大切になる。

問題点の発見は、成果をあげなかったことの原因分析から得ることが
できます。原因分析は、すべての原因を並べるこではない。

8割くらいの結果を左右すると判断されるものを発見し、確定させるこ
とです。過去については、データを得ることができます。

強みの発見はどこからくるか。現在の強みは、部門別や品目別の長期
売上(成果)と投入した経費(経営資源)のデータからも得ることが
できます。

5.手がかりは異常なことの発見から

日々の品目別の売上データや、営業担当別の売上、「個客」別売上の
ミクロデータ見れば、平均値からはかけ離れた、異常なデータが混じ
っていることがあります。サマリー(要約)になった合計値や平均値
では、消えてしまうデータです。

異常なデータは、普通は偶然や特殊な要因で起こったことだと無視さ
れる。

こうした「信号(シグナル)」を偶然として見過ごすか、意味を考え
原因を確認するかどうか、ここに最初の分岐点があります。

今、製造、卸、小売にかかわらずほとんどの会社では、営業所、店舗
単位、仕入れ先単位での、品目レベルの細かな売上までを得ることが
できます。

実際の変化は、合計値ではなく品目レベル、「個客」レベルの実績で、
日々起こっています。これらはすべてミクロのデータです。
これらを見逃さないためにはどうするか。

▼アラーム機能

簡単な方法なら、例えば平均値±25%以内の範囲のもの、50%以内
のもの、100%以内、200%以内、200%超・・・というような基準枠を
設定し、それらの枠を超えるものをプロット(出力)する。

一般に「アラーム出力機能」と言われる。「個客」の現場からの信号
です。アラーム出力機能は、本部や担当者に行動、具体的なアクショ
ンをうながすものです。そうしたプロットデータを、品目単位、品種
単位、部門単位、「個客」単位、仕入先単位等で見ていく。

こうしたアラームがあれば、ミクロの動きを知る現場の担当に、即座
にインタビューし、電話でヒアリングを加え、重要なら現場まで行っ
て、その原因を確認することを義務付けます。これが、アクションで
す。

そこに、いままでの固定観念や判断基準を変える、大切な発見がある
ことが多い。

こうしたものが後で大きな成果に結びつく情報です。コンピュータシ
ステムは、単なる計算機、集計マシンではない。アラーム機能は簡単
に組み込める。適正在庫を設定することによる過剰在庫や、在庫欠品
等のアラームも同様です。

例えばA店では平均の5倍も売れている。逆に平均の20%しか売れて
いない。こうしたシグナルを見過ごせば、成果にはならない。

原因を確かめるアクションが必要です。偶然という結論は、その現象
の原因がまだ分からないという知識の不足を示すものです。

偶然はない。必ず原因と理由があります。
原因を調査し確定するのが、知識労働です。

▼偶然と思えることを再現させるための方法

原因が分かれば、その異常と思える偶然を、繰り返し起こらせるため
に、「再現の方法」を公式としてまとめます。これらは最良の成果を
上げる方法、つまりベストプラクティスになる。それを即刻担当者に
流し、方法の実行を促すのです。

また、それらのベストプラクティスを毎日、項目別に整理してワープ
ロで打ち、ベストプラクティス集としてイントラネット(社内のみが
アクセスできるインターネット)に掲示する。その都度の、電子メー
ル配信は効果的です。

こうしたことが、日常業務に組み込まれている会社は、市場と顧客か
ら、日々変化の信号を受け取ることができる「学習し続ける組織」で
あるということができます。顧客は最良の教師です。

仕事のプロセスの改善も全く同じ方法で行うことができます。日々、
成果を上げた人を探し、その原因と作業方法を細かく見つけ、インタ
ビューやヒアリングを加え、その方法を定式化し普及させる。このこ
との継続は、巨大な実践的知識のデータベースを作ります。

6.差異化の方法

▼顧客を見る

1921年に壊滅寸前だったGMを立て直し、その後30年にわたってCEO
を務め、今のGMの礎を築いたアルフレッド・スローンはどんなこ
とを行ったか。

<スローンは、(先行していた)フォードと同じことをして、あるい
はフォードと同じことをフォードを超えて行うことによってフォード
を抜こうとはしなかった。彼はフォードが行ったこと、すなわちモデ
ルチェンジのない標準化された安い車(T型フォード)をつくること
はしなかった。(同書P188)>

焦点はここです。先行する相手を理想モデルとして真似れば、相手の
得意分野に入り込むことになる。そうすると、後発としての経営資源
や経験、そして知識の不足を原因に、規模の利益とブランド価値に負
ける結果を示すことが多い。

スローンはモデルを実例としつつも、別の角度から市場にアプローチ
する。当時の新車販売市場を席巻していたT型フォードに対し、以下
の戦略を立てる。

スローンが経営していたGMの最低価格帯の新車は、競争相手のT型
フォードより高く、高級な外観と性能を備えていた。新車価格として
は、T型フォードより高い。新車市場では不利です。

しかし、当時の車の大衆市場は、新車市場ではなく中古車市場である
ことをスローンは見抜いた。中古車市場こそ、当時の大衆市場である
という発見です。こうしたことは、市場と顧客を仔細に見ていなけれ
ば見えない。

スローンは、GMの新車を買った顧客が、一、二年後に転売ができる
よう車を設計し、中古車市場での販売とサービスを行うことができる
にする。

T型フォードよりデザインに高級感があり、「ビジネスの成功者」が
乗っていて性能もよかったGMの車が、大衆市場の中古車市場では、
T型フォードの新車より安く買える。

こうしたことが市場を見た上での「差異化」戦略です。
固定観念を打破した市場創造、顧客創造の典型です。

▼不利さは、有利さに転じることができる

ウォルマートが、Kマートのような大人口を抱える都市市場ではなく、
2000人くらいしか商圏人口がない田舎市場から、多数の店舗展開を
開始したのと同じです。

固定観念らか見れば、田舎の市場は不利です。
ところがウォルマートは田舎の市場を創造した。

創業者サム・ウォルトンが都市部のKマートをうらやみ、田舎の店舗
であることを嘆いていたら、今のウォルマートはなかった。

田舎の限定された人口の市場は、同じ顧客からの繰り返し購買に依存
します。同じ地域に住む社員は、店に来る「個客」の顔、名前、家族
構成、生活ぶり、好み、考え方までを知っている。

誰が、いつ、どんな理由でその商品を選び、他を選ばないか、または
どんな理由で商品を変えたかが、コンピュータの売上データのみから
ではなく、社員個々の知識として日々蓄積されます。

他店をひいきにする顧客が誰であるか具体的に分かる。匿名の都市で
は見えない、買った商品を使う生活も見えます。

企業が最も知りたい情報が、人口の少ないマーケットでは、コンピュ
ータを使わずとも得ることができる。(ウォルマートは、初期からコ
ンピュータには多額の投資をしていましたが)

会社が小さいこと、店舗が小さいこと、店舗数が少ないこと、立地田
舎であることを嘆く必要はない。人口移動も少なく、一人一人の顧客
と、密接な長期的関係を持つことができます。

ひとつの店舗の1名の「個客」は小宇宙(ミクロコスモス)です。小宇
宙は大宇宙(世界:マクロコスモス)を反映しています。

こうした視点を設定すれば、仕事は、創造的になればなるほど面白く
なる。学習する組織は、目の前の顧客から学び、固定観念を打破する
創造的組織です。進化する組織です。

環境的な、または経営資源(人、モノ、金、技術)の面での制約条件
があればあるほど、創造的な組織を作ることができるという逆説も成
り立つのです。

【方法は共通】
自らの固定観念から脱し、起こった反応をありのままに見ること、反
応の変化が見えるアラームを作り、異常値として起こった偶然を、繰
り返し起こるように原因解析を加え定式化を試みることを継続するこ
と。今までの常識を壊すデータに好奇心をもつこと。

島津製作所の田中耕一さんがとっていた方法がこれです。
田中さんの域にまで至ることは、できませんが方法は共通です。

see you next week!!

【案内1】
12月17日に、日経BP社の主催で、「決定版・失敗しない中国進出・
・・中国を熟知した識者が語る体験的提言」というテーマで講演をし
ます。当方、コピー文にあるようには中国を熟知はしてはいませんが、
6名の講師の1人として「中国との関係の持ち方に対する体験論」を
90分話すことになりました。案内はここにあります。
                ↓
http://dk.nikkeibp.co.jp/dk/seminar/021217.html

【案内2】
12月1日に全国の書店で発売された『販売革新12月号』では、日
本ではゆがんで特殊な形になっているチェーンストア論ではなく、「
リテイルマネジメント」という新しい角度から、流通業の課題を解い
ています。

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【ご案内】 1ヵ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-mailで
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