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新年特別号:自己経営とはどんなことか(1)
                   (03年1月8日)

【ご案内】姉妹誌:『ビジネス知識源プレミアム』600円/月:毎週水曜日発行

■1月は<危機からの再生:IBM前CEO ガスナーのプラグマティ
ズム>をお届けしています。崩壊の危機にあった90年代初期のIB
Mがどんな方法で変貌を遂げたか、まさに今、危機にある日本企業に
とって必修の内容を含みます。申し込み月の発行分は、その月の全部
を読むことができます。

バックナンバー(約80編:1500ページ)は、月単位で購入ができます。
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あけましておめでとうございます。新年は、いかがお過ごしでしょう
か。TVを見ていてふと思ったのは、経済見通しに類する番組が、以
前に比べ減っていることです。GDPが1%伸びるか減るか、論じて
も興味を惹かない。かなり深い無力感が、あるのかも知れませんね。
番組編成は、視聴率を反映します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <Vol.131 新年特別号:自己経営とはどんなことか(1)>

【目次】
 1.つかの間の数日
 2.テーマ:自己経営(Self-CapitalのSelf-Management)
 3.会社の自己資本(Self-Capital)と自分の自己資本
 4.セルフ・マネジメント(自己経営)ということ
 5.時間はたっぷりある:第1原則
 6.目標とビジョン:第2原則
 7.神々が見ている:第3原則
                   (第2部へ続く)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.つかの間の数日

▼ぼんやりした日々

GDP(マクロ経済)がどうかより、自分の企業(ミクロ経済)がど
うなるか、どうすべきか、そして自分の生きかたをどうすべきか、す
でに、そうした問題にまで煮詰まってきているのでしょう。新聞の論
調も雑誌も、およそ低調な論議にとどまっている印象です。

大阪府の北部、箕面(みのう)国定公園の山腹に、「勝尾寺」があり
ます。信仰心はまるでありませんが、四季の自然と、境内の「花の茶
屋」から眺める池(弁天池)、そして背景をなす木々が見事なので新
年には訪ねることにしています。拡声器から聞こえる読経は、余分な
うるささですが、この寺には、マーケティングがあります(笑)

当日は厚く曇り、震える気温でした。池に面したガラス張りの茶屋で、
熱い甘酒を頼み、箕面山の木を見ていると、雪が降り始めた。雪は
急に激しくなり、翠(みどり)の池に降って溶けた。

真新しく塗られた朱の鳥居と、葉が落ちた桜木の繊細な枝が、降雪で
霞(かす)む。わずか数分で雪は止んだのですが、貴重な瞬間でした。
標高は低くとも、山の天候は瞬間に変わります。
(勝尾寺↓)
http://www.katsuo-ji-temple.or.jp/

勝尾寺から車で数分、箕面市に向かい山道を降り、「箕面の滝」の周
辺に行くと、猿が群生しています。冬の日は、どう生活しているのか
と思いながら通っていくと、道路に出て、車窓から投げられる食べ物
を拾っている数十匹を見かけた。

腹に子猿をしがみつかせた母猿が目立つ。家族らしい集団は体を寄せ
合っている。見ていると、切ない風景です。顔の造作が人に近いだけ
に、体全体に注意力をみなぎらせながらも、何を見ているのか、焦点
が定まらないように見える視線が、奇妙に思えます。手の動きと、目
が分裂している。視界が人より広いのか。あるいは体が神経なのか。

こうした、つかの間の数日が私の正月でした。
ぼんやりした目には、自然が、染みます。
日本人の祖先は森の住民ではないかと思えた。

2.テーマ:自己経営(Self-CapitalのSelf-Management)

今回のテーマは<自己経営の方法とはどんなことか(1)>です。<
ビジネス知識源プレミアム>でとりあげました、波紋のような感想を
いただいた。2号に分け、新年の特別号としてお届けします。「自己
経営」は造語です。セルフ・マネジメントと言ってもいい。

戦後の昭和22年(1947)の平均寿命は、男性51歳、女性54歳でし
た。55年後の2002年では男性が27年、女性が31年延びて、男性は
78歳、女性は85歳になっています。12年後には、4人に1人は65歳を超
える。企業に依存しないライフプランが必要です。

▼長寿社会への不適合

乳幼児死亡率の低下がありますが、男女とも平均寿命の計算では30年
は延びた。ところが、給与体系、年金制度、賃金制度を含む社会的な
制度は、相変わらず人生が短かった時代の現役期間30年を前提にして
います。現代の年齢は、仮想的に、過去の7掛けで見るべきですね。
そうすれば、視界が開けるでしょう。

企業側は、年功賃金の制度・慣習が基礎にあるため、長寿社会の課題
を、先送りし、まともには考えていない。政府は高齢化社会を政策の
名目にして、増税、年金の掛け金の増額、医療費負担の増額一本やり
です。いずれも、イマジネーションが不足しています。

ここが、人類史が経験したことのない長寿命に向かう日本の根底の課
題でしょう。平均的な命が伸びることが、生活水準の低下や負担の増
加として問題になる社会は、根底が歪んでいますね。

経済の規模=労働者総数×1人当たり付加価値生産高、流通高

3.会社の自己資本(Self-Capital)と自分の自己資本

他方では、今、22歳から24歳の10人に1人は失業者です。男女のパート
タイマー(時間労働)人口は1985年の471万人(労働者の11%)から、
2000年には1051万人(20%)に増えています。小売業の高収益企業で
は、パートが労働力の90%というところも多い。

4万店(人口3000人に1店)のコンビニエンス・ストアはパート、フ
リーターで成り立っています。派遣社員も150万人を超えた。長期雇用
とされてきた国で、労働の短期化、流動化、時間単価の低下は、相当
な速度で進んでいます。こうした変化こそ、注目すべきものです。

企業社会の周辺部には、時代変化がいち早く訪れます。ローマ帝国も
周辺国の窮乏化が先だった。江戸城の内部は、儀式的生活で平安だっ
た。江戸から離れた周辺の藩で、反体制の胎動が起こった。企業の中
核での変化は遅れます。現場という企業の周辺で、先に変化が起こる。

21世紀は、生涯で数回は勤務先を変わることになる。30年の職業
の期間が、50年にまで伸びるでしょう。官僚ですら、50年を一つ
の組織や周辺機関で過ごすことはできないでしょう。

現役30年ではなく、50年を前提にした自己経営が必要になる。会
社という生活共同体は、今までの雇用制度と仕組みでは、維持ができ
なくなっています。企業は、自己資本が生命のコアです。更に言えば、
日本では企業の自己資本の根に、土地価格があった。

会社の自己資本を、個人にまで敷衍(ふえん)し、字義通り、知識社
会のSelf-Capital(=自己資本)とすれば、それこそ50年にまで伸
びる現役期間の課題でしょう。Self-Capitalには、Self-Management(
自己経営)が必要になる。

個人預金や、資産の運用ということではない。自分そのものの経営で
す。日本のみではない。長寿化、失業、高負担は、先進国には共通の
現象です。

人口構成の面では、第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、イ
タリアの3国が米国に10年先行し、中国に20年先行する。
13億人の中国が、一人っ子政策の結果として高齢化に向かうのが
2010年ころからです。

この国では、会社は社員のものというのが暗黙の制度でした。それが、
企業の共同体化を生み、仕事へのモラール(Morale:士気)の根幹
だった。わが国でも急増しているタイムワーカーや個数ワーカー
(Piece worker)には、作業標準(Work Standard)はあっても、長期
雇用を保証することから生じる忠誠心と士気は薄い。

企業のガバナビリティ(統治)が問題になっています。市場経済で言
うガバナビリティとは要は株主(会社と自己資本の所有者)の復権で
す。株式会社が、戦後の共同体から、アジアという日本の周辺国の工
業化によって、多くが原始資本主義に回帰しつつあります。市場経済
は、戦後の体制をリセットしつつあるのです。

人の認識、社会の共通認識は、いつの時代も遅れます。学校秀才的な
人ほど、過去に執着する。そして、時代認識を誤り、幻影となった言
説を振り撒く。多くのマスコミがそうでしょうね。

4.セルフ・マネジメント(自己経営)ということ

自分と自分はおなじだから、管理できるわけがない、というのが普通
の意識でしょう。自己同一性の論理と言います。会社でも管理する人
とされる人は、別人で分かれている。これを経営と言った。

▼時間

空間的にはその通りです。しかし、人は時間軸のなかで生きている。
[過去]−[現在]−[未来]という意識の構造をもちます。その時
間意識こそが、自分(Self)でしょう。古代ギリシアの時代から思考
の到達点は、そこだった。

過去は消えています。過去は物理的には消えていますが、現在の記憶
の中には存在する。未来はまだ来ていない。

現在は、まさに今です。周囲に見えること、物理的な手触り、空気、
気分をもって存在する。そして、未来は、(i)自分の明日の予定や計画、
(ii)そして、自分では予定できない外部変化へ対応した行動によっ
て決まる。

ここから導かれるのは、自己経営できる範囲は、明日や未来の予定と
計画のみだということになります。つまり、自己経営は、明日の予定、
計画作り、実行すべきことの選択、そして実行になる。

組織で働いている人は、一見では時間を他人に売り渡しています。そ
の時間には、自己処理できる部分は少なく、命令や指示を受け義務的
な仕事をする。対価(タイムワーカー)として、報酬をもらう。

しかし、おそらくこのマガジンのほぼ100%に近い方は、モノの加
工や運搬(マテハン)の定型作業には直接は携わらない知識労働者で
しょう。(知識労働=情報作業+知識作業)

知識労働者は、勤務時間(=仕事量)と仕事の成果は、他から決めら
れ、成果(performance)へのコミットメントは必要であるにせよ、仕
事の実際の実行では、自己管理に任せられる部分が多いはずです。

▼自己経営

そうすると、[What(なにを)→Why(なぜ)→How(どんな方法と計画、成
果目標で)→Do(実行し)→Check(どうチェックするか)]という、WW
HDCのマネジメントサイクルのほぼ全領域を、自分で管理し自己経
営することになる。

他の人との協働作業のインターフェース(関連)やコミュニケーショ
ン(おなじ目的に向かう「協働体」の形成)も自己管理の領域ですね。

つまり、知識労働では、実体的な時間は、売り渡していない。時間を
売り渡しているのは、例えば中国の工場の生産ラインで働くような、
細分化された単純作業(単能工)の女子工員です。

こうした労働は、20世紀初頭に、科学的経営管理を発明したテイラ
ーの名を冠して、「テイラーイズムの労働」と言えるでしょう。テイ
ラーイズムは、定型作業と判断を、経営組織で分離した。これが、我
々がもつ仕事のイメージになっています。

しかし、今読者の方々が行っているのは、現場ワークである営業や販
売も含め、情報と知識を使う「ドラッカーイズムの労働(新語)」で
す。その仕事は情報作業と知識作業から構成されています。知識労働
は、成果目標と、目前の作業をつなぐのは、自分しかいない。

テイラーイズムの時代、仕事は与えられた。ドラッカーイズムの労働
では、会社の資本や設備ではなく、自分自身の体とともに移動する「
自己資本(Self-Capital)」を使う自己経営(Self-Management)の方
法に変わっている。

ドラッカーイズムの労働は、生産性や成果は、上からの管理ではなく
自分自身による管理、つまり自己管理で遂行されます。

自己管理ができる人は、別の表現では「プロフェッショナル」。
その意味は、命じなくても、成果目標・期限・予算を与えれば、期待
された成果を出すことのできる人でしょう。エキスパートと言っても
いいでしょう。

当然、自分の意に染まない、会社や世間への「義理」の仕事もある。
それは、すべての労働に共通する。自営業でもおなじです。義理とは
相手から受けた「恩」に感謝し、義務を果たすことです。

日本の90年代が、経済的に華々しい成果を上げることができなかっ
た最大の理由は、工場の自動化と海外化に逆比例する形で、国内には
ますます増えてきた知識作業、つまりドラッカーイズムの知識労働に
おける生産性、つまりホワイトカラーの生産性と成果が低いままだっ
たためです。

本稿は、会社での他人のマネジメントではなく、ドラッカーイズムの
情報作業と知識作業、そして労働以外の時間を有効にするための自己
経営の方法を考察します。

以降で申し上げることは、私にできているということではない。本稿
は、私自身が自己経営(セルフ・マネジメント)で目標とすべきこと
を探すものでもあります。

モデルは2002年で93歳にもなったドラッカー(1909年生まれ)です。こ
の人物は、驚異です。彼の方法を、素材にします。

自分の過去、周囲、今の環境を嘆いても意味がない。世界中の人が、
自分でできる範囲のことしかできない。平等に与えられた管理可能な
資産(経営資源:resource)は、未来の時間のみです。

過去はとり返せない。戻ることはできない。現在は今です。
そうすると資源になるのは、明日と未来の時間でしょう。

▼将来不安

日本人は今、将来不安を抱いているために消費をしていないというの
が経済の定説になっています。たしかに調査結果を見れば、およそ
50%の人は将来不安があると答えています。

将来不安とは何でしょう? 年金の不安、雇用の不安、賃金の不安、
健康の不安でしょうか。たしかに、過去あったように見えていたもの
が失われるかもしれないというのは不安です。不安は獲得ではなく、
失うことの意識から来ます。暗黙の前提や目標の喪失が不安を生む。

未来を見る、そして明日何をすべきかより、過去にあったもの、予定
されていたものを振り返るようになった人が増えたのが、日本の1995
年くらいからの特徴でしょうね。

今更、スタートラインには立てないし・・・この意識が問題の焦点で
しょう。にもかかわらず、自己管理できるものは、明日の時間しかな
いのです。明日どうするか、計画、判断、行動がすべてを決める。割
り切ったらどうでしょう。過去と切断する。そして、今日から始める。

▼未来の時間

過去は固定しています。その固定した過去、過ぎ去ったものに意義を
与えるのは、明日どうするか、明日何を実現するか、次の目標はなに
か。それだけです。過去の意味は未来が作る。過去に意味はない。未
来を見定めたらどうでしょうか。

人には未来への心構えしかない。あたりまえのことですが。歴史の意
味は、実は未来が決める。未来があるから歴史(過去の意味を記録し
たもの)がある。想定したゴールから、スタートライン、つまり現在
を見るのです。

周囲から見れば、どんなに成功したように見える人も、成功した人で
あればあるほど、今を、自分にとって新しいチャレンジ、リスクへの
スタートラインと考えています。ビル・ゲーツは言っています。<こ
の20年間は信じられないような、冒険の日々だった。>

全部を過去のものとすれば、現在の自分と、未来の目標しかないこと
に気がつきます。すべての人は、今、明日へのスタートラインに立っ
ています。

ドラッカーは、一般には定年退職をする65歳以降に30年弱も現役
であり続け、次々に重要著作を発表しています。未来の時間は、だれ
にとっても十分に残されています。彼は65歳から20年のライフプ
ランを立てた。

足りないのは時間ではない。意欲と自己経営です。すべてはセルフ・
マネジメント(自己経営)であったはずなのに、学校、家族、会社か
ら動かされてきたという他力の意識に閉じこもっているのです。ドラ
ッカーを特殊な人と遠ざけないことです。もちろん、実行の領域は、
彼とは異なるでしょうが。

今、日本の多くの会社が、長期計画を単に金融機関への提出物(過去
の正当化)と思っているフシがあります。そうではなく、本当の長期
計画を立てるべきでしょう。自己経営と、なんら変わらない。

ドラッカーは言います。
<・・・分かったことは、成果を上げるにはどうしたらよいかという
問いに対する答えは、「いくつか簡単なことを実行することである」
ということだった。> こうした言葉を見逃さないことです。

その簡単な方法を、一緒に考えて行きます。
7つの原則を解きます。本稿では最初の3原則。

5.時間はたっぷりある:第1原則

ドラッカーは18歳で高校を卒業し、大学の法科には入学しますが法
律には興味を失い、ハンブルグの綿製品の商社で見習いのアルバイト
として、朝7時半から夕方4時半まで働く。仕事は<おそろしく退屈>
だったと言います。

そして<週5日間もたっぷり暇な夜の時間があった>と言う。
朝から夕方までの8時間は働いているのに・・・です。

こうしたときに、まずは、時間はたっぷりあるという意識です。1日
8時間のフリーターや10時間労働をやって、他のことをする時間が
ないと考えるか、時間は十分あると考えるか。

ドラッカーは、実に頻繁に職を変えます。職を変えなければドラッカ
ーはなかった。そして、常に目標をもっていた。93歳の今も。

▼ポジティブに

ものごとを見るとき、肯定的に、ポジティブに見たらどうでしょう。
周囲の人が否定的な考えになるとき、(時には無理をし)肯定的な面
を探す。痛切なことですが、例えば、母が死んだときは、あぁ、こう
やって自分に独立せよ、自律せよと言ってくれた・・・これは悲痛す
ぎますか・・・

すべて起こったことには原因があり、取り戻しはできない。そうすれ
ば、起こったことと現在を、まず受容する。そして、今と未来を考え
る。30年が、大過なく過ぎることはない。10年という期間ですら、
困難に直面しないことはない。

ドラッカーは、たっぷりあると考えた夜の時間で何をしたか。近所の
図書館で1年半も「毎日!」、ドイツ語、英語、フランス語の本を読
みます。まさに「持続する志」です。私も、皆さんもやろうと思い立
てばこれから実行できるのではないでしょうか?

週1回はオペラを聴きに行く。当時のドイツの大学生には無料だった
ようです。そして、ヴェルディが最後に書いたオペラ『ファルスタッ
フ』を聴いて衝撃を受ける。

<私は調べた。信じがたい力強さで人生の喜びを歌い上げるあのオペ
ラは、80歳の人の手によるものだった。・・・平均寿命が50歳そ
こそこだった70年前、80歳は珍しかった。(『プロフェッショナ
ルの条件』:ドラッカー:2000年(以下引用部は同書)>

我々は、平均寿命が80歳前後、あるいはそれを超える時代に生きて
います。すばらしいことです。65歳以降も平均で15年以上もある。
40歳の人なら残り40年です。もう1回、スタートラインに立っ
てやり直せる時間はある。40年なら、もう1回の人生。

▼50年の労働時間という未踏の領域

今日の時間もたっぷりあると同時に、明日からの時間も無限に近くあ
る。長寿命社会という、日本人が世界で最初に到達した最高の時代で
す。時間があるということは、何度も、やり直しが効くことです。準
備期間も長くとることができる。

リセットを効かなくしたのは、戦後の日本社会の特殊事情です。

高齢者なら、自分の生活経験と感覚で、高齢者向きのビジネスも発想
できるでしょう。自分が困っていることを商品化、サービス化すれば
いい。商品の提供とは、問題解決です。

高齢化商品の企画・開発は、高齢者が行うべきです。70歳の人なら、
65歳の人が何に困っているか、経験と実感から分かるでしょう。

皆が生活上、困ることが多ければ多いほど、商品・サービス開発の機
会はある。ビジネスは常に、顧客の問題解決です。中国が成長するの
は、先進国に比較して、今は皆が困っているからです。

(注)実は、若年労働がすでに大きく減りつつある現在、過半の高齢
者が年金生活ではなく、働くことが、日本経済のリバウンドの時期に
なる。GDP=労働者数×1人当たりの商品・サービスの生産高、販売
高です。生涯労働期間は50年でしょう。

過去の農業や工場労働、荷役のような肉体的に辛い仕事は減っている
のですから。忘れられている視点ですね。

肉体の能力や反射神経は年齢で衰えますが、知力は頭を使えば使うほ
ど、増大することは証明されています。ドラッカーを見れば分かる。
死ぬまで現役、ハッピーリタイアメントは、十分な金融資産で金利生
活ができるまでと決めればいい。

実は、皆が困っている時代、不満と不安をもつ時代は、商品開発・サ
ービス開発の機会です。逆に充足している時代は、このまま続けばい
いと、(内心では)未来をくよくよ悩むので、不安解消ビジネス、現
在延長ビジネスが機会になります。資金の運用でも、多くの人は実は、
リスクをとって増やすことではなく、減らさないことを望んでいま
すね。

あなたは何年計画を立てますか?

■6.目標とビジョン:第2原則

18歳のドラッカーは、ヴェルディの最後のオペラ、ファルスタッフ
を見て、何に衝撃を受けたのか。

<私は、すでにワグナーと肩を並べる身でありながら、しかも80歳
という年齢で、なぜ並みはずれて難しいオペラをもう1曲書くという
大変な仕事に取り組んだのかとの問いに答えた、ヴェルディの言葉を
知った。
「完全を求め、いつも失敗してきた。だから、もう一度挑戦する必要
があった」
私は、この言葉を忘れたことがない。心に消すことのできない刻印と
なった。>

この衝撃がドラッカーの生涯を決めた。彼は、自分が何の仕事をしよ
うが、ヴェルディのこの言葉を道しるべにしようと決めたと言います。

【完全】
<いつまでもあきらめず、目標とビジョンをもって自分の道を歩き続
けよう、失敗し続けるに違いなくとも、完全を求めていこうと決心し
た。>

「完全を求める」、ここでしょうね。
自分が納得できる「完全」であり、自分の評価基準です。

ドラッカーのような衝撃を受ける機会は、日常の中にいくらでも転が
っています。TVを見るとき、会話するとき、本を読むとき。仕事の
とき、旅行のとき・・・大切なことは、目標を探そうとする持続的な
意志です。

【蛇足ですが】
私も、情報収集の方法を、読者の方によく聞かれます。唯一の方法は、
常に課題とテーマをもって、過去の知識を喚起し、今目の前にある
ことを見て、聞いて、頭を意識してフル回転させ、一つのことに集中
し生活することです。

今、目の前にある時間しかない。集中は、他のことを忘れることでも
あります。時折、頓珍漢なことが起こります。二階の仕事場から降り
て、あれ、今何のために降りた?とか。食事の途中で、突然立つとか、
受け答えがまるでなっていないとか・・・(笑)

課題とテーマを意識的にもたないと時間は流れ、単に過去になる。
テーマをもっていれば瞬間、瞬間は発見を与えます。
テーマの引き出しを作ったら、どうでしょうか。
この方法しかないように思えます。
私の体験からも、明言できます。

7.神々が見ている:第3原則

ドラッカーにとって、完全という概念はどんなイメージのものだった
か。彼は、紀元前4世紀の、ギリシアの彫刻家フェイディアスの話を
本で読みます。

▼神々の視線

<彼はアテネのパンテオンの屋根に建つ彫刻群を完成させた。それら
は今でも西洋最高の彫刻とされている。だが彫像の完成後、フェイデ
ィアスの請求書に対して、アテネの会計官は支払いを拒んだ。
「(屋根の上だから)彫像の背中は見えない。だれにも見えない部分
まで彫って請求してくるとは何事か」と言った。
それに対して、フェイディアスは次のように答えた。
「そんなことはない。神々が見ている。」 
この話を読んだのは(衝撃を受けたオペラの)『ファルスタッフ』を
聴いたあとだった。ここでも心を打たれた。>

ドラッカーは、18歳のころの図書館での読書から、こうした啓示を
受けています。そして、その感激から彼の方法を作った。こうした心
を打たれることを読書から得る人、聞くことから得る人、体験から得
る人、以上3種のタイプがあるでしょうね。読者の方の多くは、文章
から読み取る想像力が発達した人でしょう。

そして彼は言う。
<今(91歳)、ちょうど2冊の本を構想し書き始めている。これま
でのどの本より優れたもの、重要なもの、完全に近いものにしたいと
思っている。>

神々の視点、これはいいですね。今日、改めて思った。神々の視点を
もつことができれば、若干の誤解や不評を受けても、怖くはないでし
ょう。完全を目指すという志、意志です。あらゆることに通じると思
います。

(注)アンケートでは欧米のキリスト教社会では、約50%の人が造
物主としての神を信じています。ダーウィンの進化論を誤りと考える
人が多い。この点が、

神と言えば、日本では、欧米とは事情が異なります。神々の視点は、
「自分を見る自分」と言ってもいいでしょう。つまり自己経営です。
自分にとっての、「完全」のイメージをもつこと。

▼モデル

そのためには、イメージ化できるモデルを世界から探す。そして真似
る。徹底して真似れば、自分の個性がはみ出します。個性の違う他人
だからです。これが超えることです。モノマネや二番煎じは、中途半
端で、現状妥協的なマネ方を言います。

自分にとってのモデル見つけ、真似てみてください。決して隅から隅
まで真似ることはできない。自分なりの方法を付け加えなければ、真
似ることはできないことに気がつくはずです。

本居宣長がどこかで言ったように「意は似せやすく、姿は似せがたし」
です。その意味は、内容を真似ることはできる。スタイルは真似る
ことはできない。そのスタイルが、だれにも備わった個性でしょう。
古来、偉大な人々はみなそうして来た。これが学習です。

本稿では、自己経営(Self Capital のManagement)の最初の3原則を、
ドラッカーを素材にして考えました。次号は引き続き、4つの原則
への考察を加えます。

ドラッカーを特別な人と思わないことです。
共感を遠ざければ、機会は逃げます。
小さく、具体的に、渇望をもって・・・

see you next week!!

【案内1】
『販売革新』の新年号に「ウォルマートに見る商品管理作業のエンジ
ニアリング」を寄稿しています。1月初旬の発売です。
【案内2】
『ウォルマートのデータウエアハウス:Data Warehousing, Using Wa
l-Mart Model』が、翔泳社から1月末に翻訳・出版されることになり
ました。私は序文、解説を書くことの依頼を受けています。
【案内3】
2月19日の第71回商業会ゼミナール(シェラトングランデ東京Bay)
で、新しい商品管理の講座を担当します。1200名の参加予定だそうで
す。19日から21日まで3日間で、50名ほどのコンサルタントの講
座から選べます。参加費は76000円で、高いです。



【ビジネス知識源 読者アンケート】

1.テーマと内容は興味が持てるか?
2.理解は進んだか?
3.疑問点や質問点は?
4.その他、感想等
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。

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