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| リーダシップをめぐって(第1部): リーダシップは、21世紀へ向かっての組織運営の根幹 指示・命令での組織運営と、リーダシップ型組織 |
こんにちは、吉田繁治です。満開だった桜もつかの間、今はすっかり散りました。散歩の途中、ふと書店に立ち寄ると、「小林秀雄 100年のヒント」という新潮の臨時増刊号がでていました。小林秀雄には高校・大学時代に、深い影響を受けた。呪縛下にあったと言ってもいい。 昨夜10年ぶりくらいで、懐かしく読んだところです。思わず夢中になります。 いつの間にか、いろんなメッセージが、無機的な情報に置き換わっている感じを受けます。 今回は、<リーダシップ>をテーマにして、仕事にまつわる根源的なことを考察しようと思います。昨年末から急にハヤリだしたリーダシップ論は、IT革命と同じように変なのです。 ■Classyということについて ▼根源的なもの 小林秀雄のように徹底して考えたメッセージを発する人は、近年ほとんど見かけません。残念なことですが、<情報>という冠詞を使って現象の表面をなでるだけのもの、結局は統計数字しか意味がない流行論、風俗論が多い。 しかし、みんなのそれぞれの生(せい)が1回限りであることは、昔から変わらない。変化の加速のなかで、多くの人が、心の奥底では、根源的なものを求めている。そんな感じがひしひしと伝わってきます。 一見では多色の、大量の情報が重なり、メッセージが空(くう)になっている。エネルギーはあるが、その方向がばらばらで渾沌の状態をあらわすのが、仏教用語の<空> インターネットの情報の世界は、空ですね。 ▼classicの語感 時に、classicな書を読むのもいいもの。classicってclassyから派生しています。classyは、上品で上等という最上級の評価を含む意味です。 気品という日本語があります。気品のある日本人が少なくなっている。 古典(古い)という語感と、classicは少しニュアンスが違うので、あえて英語のclassicを使いました。このニュアンスの違い、紙一重の差がとても重要なのです。 ▼国際人 最近、真の国際人とは<礼と気品>のある人と考えています。 英語ができたり、MBAで勉強したということは表面的なこと。 大切なことは<世間に伝えるべき意味ある内容をもつこと>でしょう。リーダーたるべき人の資質の条件が<礼と気品> 親や教師は子供に対して、勉強のできる子になれという前に、世間(other people)に対して<礼:honorable way>をもって接しろ、まず他人の名誉を重んじろと教育すべきでしょう。そうすれば教育の根幹も変わる。 偉そうに言っていますが、やっと最近気がついたことです。 ある時期までこないと、理解できないことが多くあります。 ▼リーダーシップの本質 リーダーの最高の定義は、<他人の成功を導く人>です。 リーダシップは、他人の名誉を重んじ成功を助けることです。 孔子が言っているのではない。リーダーシップ論で、米国人教師が米国人に向かって教えていることです。とてもびっくりしますね。 中国でもインドでも、アラブでも伝わることです。 米国にも至る所、良質なホンモノがある。 ▼指揮命令に代るリーダシップ 経営の面で、リーダシップが盛んに言われ始めたのは、実は1980年代なかばくらいからのことです。 それ以前は、組織や人は<指揮と命令>、つまり権力で動くというのが普通だった。 【原因】 リーダシップでの方向付けに次第に変わった理由は、 i)会社のなかの仕事で、工場の現場労働のような定型的な作業が大幅に減り、 ii)情報を操作したり、組み合わせたり、新しいものを生み出したりするいわゆるオフィスワークが増えたこと、 iii)マーケティング、営業、商品の企画開発、ファイナンス、システムの分野で、専門的な知識を使った仕事が増えたこと、によります。 【70%】 米国では既に10人のうち7人が、ものを作ったり運んだりしないオフィスワーカー(シンボリックワーカー)です。シンボリックワーカーは、それぞれが専門領域での知識を使った仕事をする。 知識のレベルと質を高めるのが、生産性を上昇させるのです。 【分業のマニュアルから専門知識へ】 定型作業で有効なものは、業務分掌(ぶんしょう)、作業手引書、マニュアルだった。ピラミッド組織の分業の根幹が業務分掌、作業単純化がマニュアルですね。 しかし言語や記号を使うシンボリックワークで、必要なものは専門知識です。 従来のピラミッド型組織の、会社の仕事として想定されていた工場労働は、分業化して単純作業に還元できる。 【人と組織を動かす原理の変化】 シンボリックワークは分業が難しい。仕事の遂行方法、使う情報まで個人に任された仕事になる。単純作業では有効だった指示命令では動かせない。 方向付けと動機付けが必要になる。命令で、シンボリックワークに必要になる創造はできない。日本でも10人のうち6人はこうしたシンボリックワークです。 シンボリックワークでは、従来のピラミッド型の縦の組織はなじまない。 工場労働では人間を、単純作業を行う作業者としてみることができた。 プロシア軍風のピラミッド組織が適合した。現場の改善は必要だったが、決められた作業標準をはみ出す創造は害だった。 【変化】 シンボリックワークでは、 命令が動機付けに、 指示が導きに、 マニュアルが教育に、 生産性上昇の手段が知識の高度化に、変わる。 わが国の会社は、リーダシップによる方向付けには慣れていない。 リーダシップがどんなものか、それに対する理解も浅い。組織論は貧困です。 ■武士道とgentleman、そしてリーダシップにおけるValue 日本人が忘れている重要な伝統的価値は<武士道と恥>でしょう。 責任逃れをする銀行のトップ、高級官僚、続発する汚職、政治家の矮小化、保身に汲々とする大会社幹部、匿名で無責任な非難しかしないマスコミ、頻発する情報隠し、こうしたことの根源には、武士道と恥の深い忘却があると思います。 武士道はフランス語では、noblesse oblige(上に立つものがそのポジションの対価として負うべき義務)でしょう。 英語では、gentlemanでしょうか。 ▼gentleman gentleman: a man who always behaves towards other people in a polite and honorable way and who can be trusted to keep his promise 世間に対して礼と名誉を重んじる態度で振る舞い、成した約束を守ることで信を得ることができる人。 other people(世間)をteam members(チーム)に変えればリーダーの根本部分の資質要件になる。 人間の世界って、原理まで遡(さかのぼ)ると共通性が見えてくる。 【優しい人】 <優しい人>、つまりgentle(優しい)manです。女性にどんな人が理想かと訊ねると、60%くらいの人が<優しい人>と答える。 その優しさの意味が、gentlemanの定義を指しているならホンモノの答えでしょう。でも、優しさの意味が違うかもしれません(笑)違う感じがします。 【定義の共通性】 英国gentlemanの定義は、日本ではまさに武士道の定義です。 世界の人が想うこと、大切にすること、目指すことは共通です。 武士道=gentleman = noblesse oblige⇒leadership 日本の武士道精神こそ世界中のリーダーたるべき人に必須の行動規範でしょう。 米国発リーダシップ論を知らないことを、恐れることはない。 日本人なら<武士道>を思い出せばいい。伝統って不思議なものです。外国人には100万語を費やしても理解できないことでも、日本人はスッと理解できる。例え武士道を知らなくても、伝統の力で肌のどこかにしみ込んでいるはずです。 しかし、それにしても最近の日本人には<品格>がない。なぜか? <道(どう)>を古臭いものとして軽蔑し、テクニックに置き替えたからでしょう。 ▼仕事の上で最も重要な守るべき価値(Value) 行動規範を、文化と言い換えても、綱領(code)と言い換えてもいい。リーダシップ論では、これを、行動において守るべき価値(value)と言っています。意訳すれば日本語では<道>のことです。 翻訳って難しいですね。文化の背景を含めて翻訳しないと通じない。 サラリーマンなら会社は、政治家なら日本は、何を<守るべき価値>としているか、するべきと考えるか? 守るべき行動規範(code)はなにか? これこそ、会社が、そしてその構成員たる社員が、自分のアイデンティティ(自己の存在証明)として追求し続け、守るべきものです。こだわりと言っても同じことになる。 長期に持続できる<ブランド価値>もそこから生まれる。 技術論の前に、ここをまともに問うべきなのです。 【問い】 あなたの会社には、どんな<道(どう)>がありますか? あなたが、またはあなたの会社が、または部署が、 仕事の上で、 顧客との関係(Customer Relationship)で、 他の部署との関係で、 商品で、最も大切にしている価値はなんですか? その価値は、顧客の視点から他社と比較した時、優れた内容のものですか?劣っているとすれば、どんな方法と手段を使った上で、価値の差別化を図るつもりですか?以上の問いを、不断に問うことです。 ■ハヤリのリーダシップ ▼やおら、英雄待望 昨年末ころから、この国でも急に、リーダシップ論が盛んになっています。政治や企業を論じる時の新聞の社説が典型ですね。 今度の自民党総裁の選出でも、根にあるのはリーダシップの期待です。 <不良債権問題>を解決し、<構造改革>を果たして、日本経済を新しい成長軌道に乗せるには、リーダシップが必要であるという次第。 要は、カリスマ待望論、英雄待望論です。織田信長がまた現れればいいという期待。現れるはずがないのに。 これをなんというか。<他力依存>です。 まったく今も、寄らば大樹の陰、国や政治家が何とかしてくれ、実はこれが90年代の10年間の最大の問題だったのに、またも飽かずに繰り返す。こうしたことを、反省がないといいます。マスコミ論調に多い。 カリスマもリーダーのひとつの形態(Style)であることは間違いない。しかしそれだけではないのです。 ▼流行(ハヤリ) リーダシップってどんなものですか? なぜ、急にそれが必要になってきたと言うのですか?と問うと、答えを出せる人はほとんどいない。 いつものハヤリです。IT革命、リストラ、コア・コンピタンス、それにシステムでのSCM、CRM・・・など同じです。 ある日一勢に叫び始めるが、その<内容>が明かではない。結局、米国ソフトメーカーの営業のコトバ、つまりセールストークに乗っている。受け売りの受け売りで、重要な決定が行われる。 ▼藤原直哉という人物がいます 「大逆転のリーダシップ理論」(三五館:2001年3月刊)を書いています。やさしい言葉を使いながら、深い内容を持つものです。築地の寿司屋(寿司岩)へ誘って飲んだことがあります。とても気品のある人です。百科全書的な知識には敬服。デリバティヴ(金融派生商品)開発の総本山だったソロモン・ブラザーズで金融アナリスト。90年代になって、詐欺風になってきたマネーの世界に嫌気がさして辞め、シンクタンク藤原事務所を主宰。 ときどき、メールでやりとりをします。彼と話すと日本人に希望を持てます。今40歳でしょうか。 ▼方法 今回はドラッカーの組織論を想起しつつ、藤原直哉を参考にして、私の考察を絡ませ、リーダシップの原理と原則をまとめます。 リーダシップについて、クリアな見解をもつことは、あなたの会社の方向、プロジェクト運営、チームの方向付け、そして毎日の行動と仕事に深く関わることです。 最初にお断りしておきます。すこし難しい内容を含むところがあります。できる限り明解に解こうと試みますが、若干の知的冒険を必要とするでしょう。(そんなに大げさなものではないかなぁ・・・) 前に書いた<リーダシップとはどんなものか?>と併せて、お読みになることをお奨めします。私は過去に書いたことはキレイに忘れることが多いので、さっきWEBで読み返してみました。他の人が書いたような感じで、意外によく書けていますね。 ↓自分で言うのは、とても変ですが・・・(笑) http://www.cool-knowledge.com/1107leadership.html 最初は、組織についての基本の理解から。 ■組織という、理解の難物 会社は組織で仕事をする。会社は看板でわかる。 じゃ会社の中身である組織とはなにか? わかり切ったような<組織>を、まともに解くのは、実は難かしいのです。 ▼とてもひっかかること 一例ですが、チェーン・ストアとは実は組織論です。店舗の成功モデルを作って、原則をまとめ、店舗運営をマニュアル化して、組織を拡大していくこと。このとき想定されている組織とはどんなものか? 本部と店舗の機能的分業。じゃ本部とはなにか、機能的分業とはなにか? そこまで見極めないと、チェーンストアは作れない。 チェーンストアになるプロセスでは、1店舗の成功モデルは作ることができながら、実際は多くが脱落し、マーケットが少数寡占になるのにはどんな原因があるのか? 米国流のトップ、マネジャー、スタッフ、スペシャリスト、ワーカー、及び日本流の<社員>とはなにか、部長とは、課長とは? 米国流の<マネジャー>と日本型の部長はどうちがうのか? 米国流の<ワーカー>と日本型の社員とはどうちがうのか? <就職>とは一体どういうことか? <組織の中で働く>とは、どういったことなのか? 今後、どんな組織体がいいのか? こうしたこと全てに、明解な解答を出したいのですが、そこまでいけるかどうか分かりません。しかし、あなたが考える素材の提供はできるかもしれないという目標で、考察を行います。 ▼貧困だった、組織への考察 <いまや、あらゆる先進諸国が、「組織社会」になった。すべてではないにしても社会的な課題のほとんどが組織によって遂行されている・・・・しかし、アメリカにおいて、あるいは他のいかなる国においても組織(Organization)について論じられるようになったのは、第2次世界大戦後のことである:ドラッカーの「ポスト資本主義社会」> それほど重要なものでありながらも、まともな考察の対象になってはいなかった。組織に対して、われわれの理解が至らないのには、理由がありますね。考察が行われていない。教えることのできるひともいない。 ▼Organization(組織)ということをめぐって 【Organizationへの遭遇】 何年前になるでしょうか。家具・ホームファニシングの世界ナンバーワン企業(年商が約1兆円:2000年)のIKEAの米国店舗を訪問した時のこと。 日本流に言えば収納家具・収納器具の売場に<Organization>という表示があったのです。このOrganizationは一体なんだ?って思った。 収納家具はOrganizationなのか・・・Organizationは組織ではないか。組織化した収納って、どんな意味だろうって思ったのです。 Organize:to make the necessary arragement so that an activity can happen すぐ使えるように、必要な配列をした整頓を行うこと。 このなかで、arragement(配列)もキーワードですね。 【違い】 ああ・・・なるほど、日本の押し入れ・収納・箪笥(たんす)が想定している<しまい込む、保管する、たたみ込み>というイメージじゃなく、機能的に整理・整頓すること、それも取り出してすぐ使えるように。 米国の家では普通にあるクロゼットがそうですね。衣類をすぐ着ることができるように整理した部屋。日本の住宅の、しまい込む押入れのイメージとは大分違います。 【Organizationの意味】 米国には、<Organized Living>や<Organized Home>という店名のチェーン店があります。家庭のあらゆる生活資材の収納を<機能的>に行うための、膨大な種類の器具を揃えた800坪くらいの大型店です。 ポイントは、しまい込みや保管、たたみ込みではなく、<すぐ使えるように必要な配列で整頓するための器具>という品揃えの概念です。 例えば、ゴルフ用品の収納器具がある。なんの変哲もないワイヤに過ぎないのですが、帽子、クラブ、手袋、ボールなど、まさにすぐ使えるように、しかも美的にひっかけることができる。 電池の収納器具もある。大きさの違ういろんな電池がキレイに納まる。釣り道具も、サイクリング用自転車も。 日本にはないお店です。収納道具はあっても、Organizationという概念を店舗が提供してないからです。需要はとても多い。その証拠に、整理学の本って隠れたベストセラーになるでしょう。 <ホーム・オーガニゼーション>って、狭い住宅の日本には必要な店舗、売場です。(大切なことを、小声で言います) http://www.organized-living.com ■組織の3要素 組織はOrganization、つまり会社の<目標(ビジョン)>に到達できるように、<機能的>に<専門家>を整列(alignまたはarrangement)させて配置したもの、それが組織です。 (1)目標(2)機能(3)専門家の3要素。 ▼日本の部課長型組織 多くの日本の会社で一般的な<部課長の制度>も、組織の形態(スタイル)のひとつでしょう。しかしその部課長の制度が、果たして会社の目的に到達できるために、意識して機能的に設計されたものなのか? 今、そこが問題ですね。 【普通の疑問】 一体、会社って目的やビジョンをはっきりさせるべきものなのか? 長期雇用で生活を保証する<生活共同体>として会社を捉えることに慣れて来た日本人には、急に会社のビジョンと言っても戸惑いがあるはずです。せいぜい、先代からの額にかかった<社是・社訓>でいいじゃないか、という声が聞こえます。 そうした基本的なことが、今、わからなくなって来ていますね。 部課長は単に地位(Job Position)と権力(Power:強制する力)を意味する、階級的なものになってしまっていないのか? 目的や目標を達成するための、有機的な機能のOrganizationとは、重要なところで違いが出てきている。 リーダシップという、極めて現代的なものを明らかにするには、日本の会社が暗黙に横並びで採用した<部課長の組織のモデル>になったものがなんであるかに遡(さかのぼ)る必要があります。 源流を探ると、本質がわかるからです。 ■日本型の部課長組織のモデルを明らかにすると ▼専門家(スタッフ)と、現場(ライン)の組織 リーダシップ型組織の前は、指揮命令型の組織しかなかった。 以下、組織論に対して、90歳になった今も最良のメッセージを発する米国クレアモント大学教授のドラッカーを読みます。90歳で大現役。広い世界には、凄い人がいますね。 (以下の<>内は「ポスト資本主義社会」(ドラッカー)) 【近代組織の発祥】 <130年前に誕生した近代組織は、組織の中ではもっとも古く、もっとも成功していた組織をモデルとした。1855年から65年にかけて再建された「プロシア軍の組織構造」である。プロシア軍は組織の基盤を指揮と命令に置いた。ごく少数の専門家たる幹部が、いくつかの単純動作の訓練を受けただけの膨大な数の未熟練兵を指揮した> <プロシア軍は、非常に効率のよい組み立てライン的な軍隊だった。このプロシア軍が、兵の数において勝るオーストラリア軍や、兵はもちろん装備においても勝るフランス軍を容易に破った> 【スタッフとライン】 <しかし、プロシア軍の「ライン」たる部隊が必要とする知識はすべて、部隊から完全に分離された「スタッフ」(かの有名なプロシア軍参謀本部)から供給された> <プロシア軍をモデルとするこの組織構造は1920年代末に絶頂期を迎えた。当時、この組織構造は軍隊以外のあらゆる組織に採用された。またあらゆる分野において、専門スタッフ部門の成長が見られた> <アメリカが第2次世界大戦に勝利したのは、指揮命令型の組織構造を軍事の経済的領域、すなわち軍事生産や兵站(へいたん:ロジスティクス)にまで浸透させたからである。> (注)SCMの概念の源流は、米国軍の兵站、つまり軍事物資や食料の、間断ない前線への補充技法から発しています。 <しかし、第2次世界大戦終了時にはこの指揮命令型の組織構造は急速に時代遅れのものとなりつつあった。もはや組織の将来ニーズに応えるには適当ではないことが明らかになった> 日本の多くの会社の組織の源流も、プロシア軍型組織でしょう。 ▼日本人の工夫があった 日本人の工夫は、 i)欧米流に始めからスタッフを専門家として養成する方法ではなく、 ii)現場経験(ライン)での実地経験を経たあと、そこからセレクト(昇進)する手法で、 iii)ラインへの指揮ができるスタッフである課長、部長に昇進させてきたことです。 【ワーカーではなく社員】 新入社員は平等にスタッフ候補の<社員>であって、学歴や知識も会社に入ると一旦リセットして<現場での年功>を重ねるプロセスでスタッフに登用した。それが、部課長組織だったと言えます。 日本型の部課長組織は、本部だけのスタッフではなく、現場のラインの長(マネジャー)までをスタッフにしたのです。 スタッフは、現場に多く配置された。 現場に近いこと、これが日本企業の強さだったでしょう。 【キャッチアップでの成功】 日本型の部課長の組織は、1970年代までは大成功を収めたと言えます。米国の経済水準にキャッチアップする時、現場経験のない専門知識で培養されたスタッフが指揮・命令する西欧・米国型企業に勝ってきた。 敗戦後わずか30年で、一人あたりの金額では欧米に追いつくような経済成長をした。経済成長とは企業の成長です。 自主的、自律的な現場改善、課題の解決のQC活動が進んだのは、日本流経営で<ラインに対して等しい昇進の機会を与えてきた>からです。 これがサラリーマンの<やる気>の根源だった。日本型サラリーマンの仕事の流儀(ワークスタイル)は、欧米流の決められた作業をはみ出さない現場ワーカーとは、一線を画するものです。 【Glass Ceiling】 QCは米国で発明された手法です。しかし、米国や西欧ではワーカーに対する昇進の動機付けが欠けていたから、うまくいかなかった。 米英では<Glass Ceiling:ガラスの天井>と言います。 見えないけれども、厳然と存在する階級の差別をあらわすコトバです。 米国、そして特に西欧の会社では、ワーカーとスタッフに今でもはっきりとしたGlass Ceilingがあるのです。 【ベスト・プラクティスモデル】 キャッチアップの明確な目標があるときは、<スタッフ―ラインのプロシア軍モデル>が有効です。一気に進む。現在ではキャッチアップの目標を、<ベスト・プラクティス:もっともうまく実行した企業>のビジネス・モデル(業務から作業まで全体の仕組み)と言っていますね。 しかし外形的なビジネス・モデルをだけを真似ても、成功しません。その前に、とても重要なワークスタイル(働き方)と価値観(Value)の違いがある。ワークスタイルと価値観は、企業文化です。 企業文化の根本を決めるのが、組織の形です。 価値観とは、社員のどんな働きぶりや成果を取り上げて重視し、会社として評価するかということです。 ▼事例:日本の商店における組織の近代化 家業と丁稚奉公、職人の世界であった小売業で、1960年代以降、意識的に<組織の近代化>を行おうとした時、組織モデルはプロシア軍だったと言えますね。 【軍隊組織の経験】 ほとんどの店主は、軍隊の経験者。生き残って帰国し、丁稚奉公で養われる職人風の技能でなく、専門技術の教育を行ってスタッフを育成すること。 これが1960年代から70年代の第1次チェーンストアへの途だった。 【3種の技術人材の育成】 育成すべきは、 i)まず総務(経営企画と事務スタッフ)、 ii)つぎに店長(現場運営スタッフ)、 iii)3番目が本部商品部(商品スタッフ)でした。 専門技術の要は、数値管理の技術でした。 今でも140万店舗のうち、およそ90%くらいつまり126万店は、小売業の3つのスタッフの育成に成功しているとは言えません。 商店街店舗が凋落する原因も<組織の近代化>ができていないことです。 顧客用駐車場を作る、POSと連動するポイントカード・システムを作る、または商品を入れ換えるという問題じゃないなぁ。 <継続的に>売上対比5%以上の経常利益を出せたということは、1店から数店としては、成功モデルです。 しかし圧倒的多数は、そこで終る。 約10年はかかる、総務、商品部、店長の技術スタッフの育成に失敗するからです。10年もせず重要な社員がやめる。または技術導入のために途中で必要になるスカウトの定着と、そのマネジメントができないからです。 ▼サラリーマンの世界 【出世という旧くても新しいもの】 スタッフというコトバにまつわるなにか高級な、階級的イメージは、ラインでの成功・成果で、指揮命令できる立場のスタッフに昇進するということがあったからでしょう。いわゆる<出世>です。 一方でずっとワーカーに留まる人には、低級なイメージがつきまとう。すべての社員がスタッフに昇進できる可能性があるとすると、年功を積んでもラインに留まっているのは、現場での仕事の成功がなかったと見なされる。 【長の乱発】 ラインに留まることによる士気、やる気の低下を避けるために、会社は<**長や代理、補佐>という階級手形を乱発してきて、次第に全体の組織運営がわけの分からないものになった。 昇進の途があるということは、長年昇進しないひとは、世間から能力がないと見なされる。仕事の動機づけにも関係するから、会社はタダで与えられる肩書きの<長>を乱発したのです。そして、長の内実があいまいになった。 【実は、重大な嘘であること】 <権限は与えられるものではなく勝ち取るものだ>という、頻繁に言われる精神論は、実は、組織設計の計画のない混乱(カオス)の結果なのです。 コンサルタントは、報酬をもらうクライアントであるトップの非難はしない。トップを支援して、中間管理職を叱咤するのです。その代表的な言葉が<権限は与えられるものではなく勝ち取るものだ>という呪文。激励にはなるでしょうが。 英語では、empowerment(権限譲渡)です。 権限は、上に立つものが譲渡するべきものです。勝ち取ったら、それは、反乱でしょう。官房長官が、総理大臣の権限を勝ち取ったら、内閣という組織は崩壊します。 【合理論】 課長に業務遂行の責任と権限を与えないのなら、もともと課長にしなければいい。これが合理論。しかし課長にしたのは、あいつももうそろそろ肩書きを与えないと可哀想だというところがホンネだった。だから、機能的な組織にならなかった。 やる気を引出す手段として、肩書きの授与を使った。その肩書きの権限や責任の内容は、阿吽(あうん)の呼吸で伝えられたために、組織行動の混乱が生じることになったのです。 最近では、課長がコトバだけの<マネジャー>に変わっていますが。 【90年代になると】 90年代になると、人口が最も多い40歳台の団塊の世代が役員や部課長クラスを占めるようになり、ラインの人員より、長・代理・補佐のつく人が多くなってしまった。団塊の世代は、その後10年で50歳台前半になった。 同じ部署の<長>が多くなれば、指示や命令が曖昧になり、現場はどうしていいいか分からず混乱するに決まっている。会議という名目の、相互調整の儀式が急速に増える。組織の生産性の低下です。組織は放置すると経済的な成果の出ない、目的がはっきりしない仕事が、どんどん増えるのです。 【カオス】 方向付けが欠けていて、しかし各個人の鬱屈したエネルギーはある組織、これが<カオス>に陥った組織ですね。今の日本の会社に多い。 目標に向かって整列した組織であるべき会社のカオス化、目の前に差し迫ったことをこなすことしかしなくなる状態、これが日本の多くの会社でしょう。 【リーダーとマネジャーの違い】 (1)リーダーによる方向付けとは<何をやるべきか、何をやめるべきかを決める>ことです。リーダーがいないと、組織はカオスに陥る。 (2)決めたことを<どんな風にやるかを示す>のがマネジャーの役割です。マネジャーがいないと、組織の生産性は上がらない。 何をやるべきか、なにをやめるべきかを決めないで、つまりリーダーシップの不在状態で、どんな風にやるかを論じるのを、本末転倒と言う。会議がくるくる回る。そしてトップ以下、みんなが差し迫った目先のことしかしなくなる。 【部課長のホンネの部分】 最近は、なぜか急に、リーダシップとかビジョンとか言われる。それはトップが果たすべき役割ではないか、現場から叩き上げて来たわれわれにそれを期待するのは、魚屋に牛肉を求めるようなものだ、というのが部課長のホンネでしょうね。 細かい改善は行えるが、会社の方向を変えるような方向転換はやったことがない。自信もない。 方向を決めてもらえば、指揮はできるかもしれない。方向を決めるリーダシップはサラリーマンの自分の役割じゃない。方向を間違えて、損失が生じたら、物凄い不利益を受けるどころか、退職せざるを得なくなる。転職では、うまくいっても給料は半分だ。 人間の本能は<変化>を嫌い、安定を好むのです。改革つまり変化を起こすには、変化の先にあるものを明確に示さなければならない。 変化は機会とは言っても、機会への挑戦にリスクをかけるより、目の前で必要なことを一所懸命にやって、慣れた世界で安全に過ごすほうがいい。こう考えるのが、私の直感では95%くらいの人でしょうね。 残り5%は、一見では変人です。 さて、どうするか・・・ 戦後の日本の会社が成功した指揮と命令の<プロシア軍型モデル>以外の組織は、一体どんなものか? (第2部へ続く) ここで第1部を配信します。 投稿は以下の、読者フォーラムまで http://www.cool-knowledge.com ご感想・意見・連絡は yoshida@cool-knowledge.com 本マガジンの知人・同僚・取引先への転送は自由です。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2001年4月16日号:リーダーシップをめぐって:第1部 ビジネス知識源:インターネット時代の経営の成功原理と原則 良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に http://www.cool-knowledge.com 執筆:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治 感想・意見・連絡は⇒ yoshida@cool-knowledge.com ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
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copyright : Systems Research Ltd. Chief Consultant 吉田繁治