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リーダシップをめぐって:その第3部
              カオスに陥った状態から脱出する4つの科学
              ミッション、ビジョン、バリュー、ストラテジー

こんにちは、吉田繁治です。人の別れってなんだろうって、考えています。多くの出会いと別れがある。歓びがあったから、等価の哀しみがあるのか? モノと別れるって、変ですね。人とだけ別れる。

人がお互いに満たしあったものはどんなものか。解くことはできないし、解く必要のないものでしょう。愛するものが増えると、等量に哀しさは増えるんだなぁって。でもこの思考は、なんの意味もない。
昨日私にはとても大切な人が、ニューヨークに発(た)ちました。

<リーダシップをめぐって>の第3部です。
今回はリーダシップに関連する根源的な部分を解きます。
みんなが無視していて「お題目」になってしまったことを考えるのです。
変ですか? 実は、とても大切なことなのです。


【本号の項目】
1.なぜリーダシップなのか?
2.権限委譲の本質的な意味は?
3.方向を転換し、新たな方向を定めるリーダシップ
4.時差
5.カオスから脱出するための4つの科学


■なぜリーダシップなのか?

日本でも、昨年後半くらいから急にリーダシップ論が盛んになった。IT革命の次がリーダシップ。思い起こすと12ヶ月サイクルでハヤる。リーダシップ論も、ハヤリで終るのか、根底的なところからの、組織の運営方法の変化になるのか。そこを見極める必要がありますね。

▼伝統

伝統的には稲作農業で、「世間」から突出することが「ムラ」のためにはならず、横並びで同じことをやるのが、全体のためになるという行動文化が支配していた。それが聖徳太子以来の「和」にもつながっていた。談合にも通じますね。

西欧・米国は、「和」つまり協調性や横並びが、日本の産業の強さの根源だと見なしていた。今は一転してそれが弱さの理由として取り上げられる。そんなに急に変わるものか?

リーダシップは、文字通り時差や差異を作るということです。他の企業や他の人とは、違うことに価値をおく。この国で、異質なものに価値をおけるのか? ここを考察しなければなりません。

▼まず、基礎的なことの確認

【共同体】
集団は目的をもたない。家族、町、民族、国は「目的」でできたものではない。家族の目的、町の目的、民族、国の目的というものはない。

こうした集団を「生活共同体」と呼んでいます。目的に向かった整列
(alignment)は必要ない。生活共同体は、長期的なものです。

【組織】
組織は目的をもつ。会社という組織は経済的な目的をもつ。株式会社は資本をあつめ、経済活動をおこなって、うまれた利潤を資本家と従業者に分ける仕組み。目的がある組織は目的が消えると組織の機能を失います。

目的に向かって整列するのが、組織です。組織は、短期的なものです。

【組織で最も重要なもの:Value】
しかし本来は短期的な組織に、長期の生命を吹き込むことができる。それが、後で示す経済やマネーを超えたValue(行動綱領、理念)です。リーダシップで最重要な概念が、このValueです。

成功した企業は、組織に明確な目的を持たせながら、共同体の性格ももった。それを果たすのが、厳格なバリューの共有だったのです。

【生活共同体と組織】
戦後の日本の会社運営では、共同体的な方法がとられた。大きな差をつけず、みんなの生活を保証する生活共同体であることが根にあって、しかも目的に向かって整列でき生産性が上がるなら、それが組織の構成員にとってベストでしょう。
これがうまく行っていた時の日本の会社の組織だった。

しかし、目的をもった機能的なものである組織が生活共同体のように運営され、組織の目的がはっきりしなくなると、カオスの状態になる。カオスは日本語では「空(くう)」です。

みんなが一所懸命やっていて、エネルギーは満ちているが、バラバラに動き、方向または目的で整列した力にならない渾沌状態。

今の日本の大手企業に多い。トップが「権威」をもって方向と方法を定めることができないからです。調整型のマネジャーがトップを占めている弊害。和、調整、協調、横並び、日本人になじみやすいこうしたものが、有効性を失ってきた。

【環境変化】
横並びでの成功が続かない環境になり、横並びのであることの過剰競争で、収益が失われ、年々の給料の上昇が失われたようとしている日本では、会社が生活共同体であることを維持できなくなってきた。
90年代に、求めずして、そうなったと言えます。

これがリーダシップへの期待が高まる理由でしょう。
差別化・差異化・時差・変革、こうしたものが経済的に評価を受ける。

【長期雇用と短期雇用】
米国でも、1970年ころまでは、長期雇用が当たり前だったのです。長期雇用では、例えドライな米国でも、会社は生活共同体的な色彩が強くなる。しかし

2001年は、生涯で11回は転職するのが平均になっている。なぜか?

短期雇用や頻繁なレイオフが増えたのは、1960年代末以降、特に第一次オイルショック(1973年)のあとは、米国の製造業が新しい工業国の日本に負けたからです。最初は繊維製品だった。日米繊維交渉があった。鉄、自動車、家電、電子部品と続いた。

そして30年後、2001年は日本が中国に対して、セーフガードでの輸入制限(関税の引き上げ)をやりつつある。今は国内での工場の設備投資は、増えない。

長期雇用だった日本も、米国並に、転職することが当たり前の雇用習慣の国になるのか? 傾向ははっきり現れている。

4月の入社式でのNECの西垣社長の訓示は、「この会社に一生いると思うな」というメッセージだった。わたしは、呆(あき)れました。こうした社長こそ辞めるべきでしょう。

ひどいものですね。この社長は、権限と責任の意味が分かって言っているのか。新入社員には権限はない。ハヤリのことばだけか?

混乱していますね。NECは、調べた上ではありませんが、今後相当に混乱することが見て取れます。こうした例をみると、組織運営の基本の理解とその表現技法がこの国で未熟であることがわかる。

【責任の原理】
1980年代前後まで米国の会社の組織も「ライン―スタッフ型」だった。今でも多くの企業はそうです。

ライン―スタッフ型では、ピラミッド階層の上層部が指示し、命令する。最終的な成果と損失の責任は、命令を実行した現場ではなく命令を発したものにあるのが原理です。「原理」とは環境変化があっても、変わらないものを言いますね。

責任の原理では利益・損失の責任はピラミッドの上層部にある。こうした組織で利益がでなかった時、現場やワーカー階級のレイオフで許されるか? 原理に照らすと変ですね。今行われていることです。


■権限委譲の本質的な意味は?

Empowerment(権限委譲)という概念がある。普通は肯定的に語られる。うまく行かなかった時、トラブルなくレイオフを行うには、あらかじめ現場に執行権限を与えておく必要がある。方針や方向の決定に参画するというのは、裏では責任をもつということです。

レイオフを行うには、部署、現場にEmpowermentをしておかなければならない。

権限があるから利益責任があるという組織原理です。権限委譲、つまり「部署や現場が自律的に決定して実行する」とは、そうした意味を含む。

▼司令官とリーダーの違い

司令官とリーダーではどう違うか? 司令官は、地位(Job Position)が上であって、命令を強制する権限を持つ。これが世界の多くの会社が採用したピラミッド型組織。司令官はトップが任命する。

リーダーは上からの任命で作れるものか?

【リーダーの条件】
リーダーは地位が上のことは多いが、地位はリーダーの条件ではない。
坂本竜馬は下級武士でした。しかしリーダーだった。階級・地位の概念とはなじまない。そこでは「与えられた権限」は「求心的な権威」に代わる。じゃリーダーの条件である求心的な権威とはなにか?

Authority:the power you have because of your official position or because people respect your knowledge and experience.(Longman)
公的な立場が与える権力(これが地位)、または知識と経験で尊敬を集めることで得られる力(これが権威)

Longman、Webster、Concise Oxfordと3種の辞書を使っています。Longmanの定義が一番優れていることが多い。英語を調べるのでなく日本語を調べる。国語辞典は役にたたないのです。

▼権威へ敬服させる求心力

「知識と経験で尊敬を集めることで得られる力」というところが重要です。部長や課長とは、社長が付与した地位です。リーダーであるには、権威という困難な条件が加わるということを理解すべきですね。

リーダーに必要な権威は、地位が与える強制力ではなく、知識と経験の優秀さ、卓越性が与える求心力です。「この人が決める方向と方法なら、成功に導かれるであろうというメンバーの敬服」からリーダシップの力が生じる。坂本竜馬には地位はなかったが、権威があった。

こうしたリーダーを部長や課長のように大量生産できるか?疑問ですね。数少ないはずリーダーの補佐役になるのがマネジャーでしょう。

▼リーダーとマネジャーの機能の違い

マネジャーは、一言で言えば、
i)やりかたの筋道をつけて、
ii)プロジェクトの進行に責任を持つ人。
ディレクターと言っても同じです。

組織ではリーダーとマネジャーの双方の機能が必要。リーダーがいなくても組織は動くが、マネジャーがいなければ、具体的なワークの進行に障害が起る。こう考えると少し気楽になる。仕事は気楽にやらないとね。

【自己反省】
自分がリーダータイプか、マネジャータイプか、あるいはチームメンバータイプか、どれで満足が得られるか、時間をかけて考えてみるといいでしょう。リーダータイプは、推計では50人にひとりくらいじゃないでしょうか?

▼組織の規模の最適

そうすると、リーダー1名に対してマネジャー7名、各マネジャーに7名のメンバーという3階層、約50人のチームができます。これがビジネス・ユニット(Business Unit:自律的な損益管理の単位)になる。

管理範囲の7人というのは、組織運営の経験則から得られた最適人員とされています。最適とはOptimize、全体からの視点での効率の妥当値。個人の細部まで把握できる限界値が、7人とされる。

4名ではヘッドヘビーで効率が悪くなる。10名になると管理が行き届かない。組織の単位が具体的にイメージできるでしょう。

(注)専門性が高度なビジネスでは組織単位はもっと小さくなります。1ビジネスユニットの50名は、最大規模。

つぎは、今後の成功するビジネスで必要な差異の創造です。

■方向を転換し、新たな方向を定めるリーダシップ

ドラッカーが、<指揮命令型の組織では将来ニーズに応えられない>と直感して約40年後に現れたのが<リーダシップ型組織論>

▼リーダーの原意

【リードすること】
リーダシップのリード(Lead)とは、リードタイムのリードと同じです。変化を起こし、他社に対して変化へ先行できる<時差>を作ることです。リーダシップの反対語が、フォロワーシップ(追随)
他社のフォロワーとの時差を作るのが、リーダーですね。

リーダーは、<新しい有効な変化を引き起こす人>です。

▼情報社会で成功のキーとなること

環境変化への追随ではなく、逆に変化を引き起こす創造を行うこと、これが、一言でまとめた情報社会のビジネスの成功のキーコンセプトでしょうね。まとめれば単純化できる。

他社が、あるいは世間が変化を起こしてからの追随では遅い。追随できた時は、需要が消えていることが多い。変化をリードした企業には数年で巨大な成功がある。それが情報社会。

原因は3つです。
(1)資本の世界が、レバレッジ(テコの原理で運用マネーを何倍にもする方法)になっている。10倍のレバレッジ資金なら、3%の金利は同じ期間で30%の金利になる。時間が短縮された。
(2)資本調達が株式市場になる。株式市場では、将来の利益を現在化してリスクを割り引く計算(時価評価)で、投資が行われる。
(3)情報伝達の速度が上昇している。世界が、すぐに知る。

▼差異

需要の変化を、実際の商品(モノ)やサービス(無形)に結実させるのが企業です。例えば1970年代にウォークマンが生まれたのち、戸外や乗り物で音楽を聞くことがニーズになった。それ以前はニーズの形はなかった。ウォークマンは差異だったのです。

マクドナルドが出る前、日本にハンバーガーの需要はなかった。
吉野家が出る前、牛丼の需要は統計できなかった。
米国のベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath&Beyond)が出る前、住いのホームファニシング需要は分散していた。
米国のオーガナイズド・リビング(Organized Living)が出る前、住いでの機能的な収納の需要は隠れていた。
ホーム・デポ(Home Depot)が出る前、住まいのDIY需要は小さかった。
ウォル・マート(Wal-Mart)が出る前、低価格需要はまとまらなかった。
事業は差異の創造であることの例は、いくらでも挙げることができる。

差異を概念化すること、つまりコトバにすることです。


■時差

こうした企業は、消費をリードし他の会社に差異の時差を作った。横並び追随で来た多くの日本企業も、組織の大小、業種に関わらず、創造の部分が必要になった、これが情報社会です。

コストダウンも、必要な差異です。しかし横並びの商品を安く売れるだけでは、成功は一時的・短期的です。

多くの顧客が容易に判定できる、商品とサービスの価値の差異、違いを作る必要がある。差異が消えれば、限りない価格低下の競争にしかならない。

▼商品とサービスの価値

商品価値、サービス価値の本質は同質ではなく「差異」です。

どの部分で、「わが社の顧客にとって有効な差異」を作るか、ここが製品とサービスの設計・開発でしょう。リーダーが必要な差異を定義して、方向と方法、及び守るべきことを決め、マネジャーが実行部隊を率いる。

【最初は、差異の現状から】
わが社、部署、または個人の仕事で、商品、または提供するサービスの「顧客が評価する現在の差異」はどんなものでしょう?
重要と思う順に、3項目考えてみて下さい。具体的かつ単純に書いてください。リーダーであるつもりで、新聞記者のインタビューに答える自分を想定して。

(1)
(2)
(3)

なぜその差異が有効なのかを示すと明確になります。その差異は競争他社と「時差」がありますか?他と、どこで違いを作っていますか?

【BBS】
差しつかえなければクール・ナレッジのBBS(投稿掲示板)に載せ、他の人の意見を求める有効なものになるでしょう。自己満足はダメです。差異を世間が評価していなければならない。コトバでの表現が必要です。マネされる? 全く心配は要りません。表現したほうが勝ちです。私はいつもそう思っています。
クールナレッジ読者フォーラム



■カオスから脱出するための4つの科学

ミッション(職業の使命)、ビジョン、バリュー(理念、行動規範)、戦略などリーダシップ組織の基本セットの位置付けをしましょう。ぼんやりしたリーダシップが、明確なイメージを結ぶはずです。コツは、頭のなかでの映像化。コトバや数字は忘れやすい、映像になった記憶は残る。記憶するものの種類が増え比較できれば、知識になる。

▼ミッション

ミッションとは、難しくいえば職業的な使命。

具体的に言えば、
i)なにをする会社か、
ii)またはなにをする部署か、
iii)また自分個人は何をするのかを示すものです。

生活共同体では、ここがはっきりしない。うちの家族は世間に対してどんなことを果たすかと問うのは、意味がない。会社は、または職業ではこれをはっきり示す必要がある。

文字数にして、各項目5行くらいでいい。ミッション・ステートメントと言います。例えば、あなたの属する「物流部」はなにをするところですか?「システム開発部」は? 「経理部」は? 「商品部」は? 「営業部」は? 「購買部」は?・・・

【記述のガイド】
(1)What? あなたの属するチームの目的を書く。具体的にはどんな商品やサービスを提供するのか、ということです。

(2)Who? あなたの属するチームを定義し、そのチームは社内に対して、または社外に対して、誰を顧客にしているのかを示す。また自分のチームに利害関係を持つのは、誰であるかを明らかにする。

(3)How?:ビジョン(長期目標)を示し、ビジョンを達成するための方法をあきらかにする。

【ミッションステートメント】
(1)
(2)
(3)

これでミッションステートメントができあがった。同じ部署の他の人と見せ合って、比較するといいですね。ずいぶん違うことに気がつくでしょう。カオスの状態が発生していることを示します。ここがバラバラであると、組織のパワーは発揮されず、日常の指示や目標が、実際には違って取られることになりますね。
つぎは、ビジョン。

ビジョン

【ビジョン】
あなたのチーム、部署、会社のあるべき将来像、目標を描く。具体的には5年後に、あなたのチーム、部署、または会社が、「外部から見て」どうなっているべきかを考えて示したものです。

【導く方法】
記述方法:2006年を想定する。自分をプロのジャーナリストと仮定する。

そのジャーナリストの視点で、
(1)2006年にあなたのチーム、部署、会社は、顧客または他の部署から見て、どんな評価を得たいのか、どうなりたいのかを想像する。

(2)目標とする生産性、効率化、売上、価格では、どんな数字か。商品はどんなものか。技術のレベルではどうか。

ウォル・マートの方法は単純でした。店舗の各部門のエネルギーを引出すために、「過去を乗り越えよう」という名前のフォーム(書式とデータ)を与えたのです。曜日ごとの部門(棚)売上を5年分並べて比較し、その基準を引き上げる方法をとったのです。

(3)目標を達成するために、過去や他社と差別化できる価値の商品、またはサービス、専門技術を提供するには、どうすればいいか?

2006年にどうなっているべきか、具体的に分かるように示すこと。先ほどの、【差異の現状】と比較すると、分かりやすくなるでしょう。
現状はこうだ、しかし5年後はこれが目標。

【ビジョン・ステートメント】
(1)
(2)
(3)

▼ステートメント効果

ミッションステートメントと、ビジョンステートメントで何をやるのか、なにを商品やサービス、または仕事の差別化の目標にするのかが明確になります。

ビジョン・ステートメントで重要なことは、顧客から(または他の部署)から得たい、他とは違う価値の評価を懸命に想像することです。
想像は、創造の原動力。5年後という具体的なマイル・ストーンを設定するとはっきりしますね。
チームメンバーで見せ合って意見を交換すること。

差別化の長期目標(ビジョン)がバラバラのカオスでは、作業成果も教育成果も出ませんね。

▼バリュー

バリューとは日本語になりにくい概念です。わが社の、部署の、または個人の「仕事において守るべき価値、大切にすべきこと(行動規範)、基本理念」にあたるものと考えたらいいでしょう。

社是、社訓なども、バリューをあらわしたもののひとつです。
会社の基本理念、信念と言ってもいい。このバリューを短い言葉で的確に示すことは、他のなによりも重要です。会社の存在理由、そして実は「ブランド価値」の源泉になる。ビジョンは差別化や目標ですから5年単位くらいで変わりますが、基本理念は、不変とすべきものです。

【サム・ウォルトンのバリュー】
「顧客をほかのなによりも優先させる・・・顧客に奉仕しなかったり、顧客に奉仕する仲間を支えないのなら、その人間は必要ない」、世界最大の小売業になったウォル・マートの創始者サム・ウォルトンは、一番大切にすべき価値を社員に向かって、こう表現し実行した。実に強い決意の表明ですね。

実はここには、表現方法のコツも出ている。
「・・・・とする。・・・なら必要ない」、肯定のあとにそれに反する禁止事項を挙げて否定するとクリアで力強い宣言(ステートメント)になる。模倣するといいですね。すべては謙虚な模倣から始まる。

【全力で模倣せよ】
画学生が行う名画の模写。徹底して、全技術を使って細心に模写する。しかしそこに、どうしても違うところが出てくる。それが有効な個性です。そうした違いが出るまで模写は卒業できない。最初はみんな無個性です。個性を発揮しろというのは間違いです。優れた先人やモデルを見つけて、全力で真似よというのが正しい。教育の本質です。個性は、こうした修行の過程のみから生まれる。

【バリューを導く方法】
『ビジョナリー・カンパニー』を著したジェームズ・C・コリンズはつぎのように言っています。

基本理念=基本的価値観+目的

基本的価値観=組織にとって不可欠で不変の主義。いくつかの一般的な指導原理からなり、(企業)文化や経営手法と混同してはならず、利益の追求や、目先の事情のためにねじまげてはならない。

目的=単なるカネ儲けを超えた、会社の基本的な存在理由。地平線の上に永遠に輝きつづける道しるべとなる星であり、個々の目標や事業戦略とは、混同してはならない。

【基本理念】
こうした「基本理念」が社員のエネルギーと才能を引出し、常に立ち返るべき仕事の方向を揃え、努力の方向を示すリーダシップの根幹になるものです。だんだんはっきりしてきましたか?

バリュー(基本理念と言い換えてもいい。行動綱領にもなる)も、3項目でいいでしょう。7項目は多すぎる。

(1)
(2)
(3)

おそらく空欄になる人が多い。これを書くには人生観が必要ですね。自分が生涯を賭けて大切にし、守るべきこと。ここが揺れてはっきりしていない間はリーダーにはなれません。「人間」にもなれないかなぁ。自分の心を探ることです。

【理念をみつけることの効果】
人は、理念で燃える。普通の人が、基本理念への協賛から素晴らしい仕事をする。基本理念への共感から才能が生まれる。普通の人が素晴らしい仕事をする場(組織)が会社になると、その会社は強い。

基本理念に至る過程を、「道(どう)」と言ってもいい。修行の過程ですね。棺の蓋が閉じる時まで。その時、世間が評価します。ああ、あの人は価値を求めつづけた。

もっと軽やかに考えてもいい。努力することが苦痛でないこと、努力のプロセスが楽しいことを、早く見つけることです。私にもまだ見つかっていない。しかし見つけようとすることです。ちいさなことほど、いいかもしれません。

【ちいさなこと】
ちいさなことこそ、細心の注意を払って全力で行うこと、ここに成功の秘訣がある。生きることも仕事も「細部と些事(さじ)」のカタマリでしょう?

毎年、何回も書き換え修正してもいい。心から納得できて、不変になるまで繰り返すことです。

仕事場の押入れを整理していたら、米国発の100万人の世界組織、ロータリークラブの組織の理念をあらわす「4つのテスト」が出てきました。まぁたいしたことはありませんが、よく考えるといろんなことに通じる本質をついていますね。

1.真実かどうか
2.みんなに公平か
3.好意と友情を高めるか
4.みんなのためになるかどうか

一例をあげれば、こうしたものが組織として曲げてはならない行動綱領です。私にはこの4つを守れていません。だから守りたいと思います。岐路になるような重要な事に臨む時、つぶやいてもいいですね。

【ソニーの創業の理念】
行動綱領的なものとは違う、具体的な理念を見てみましょう。

1.技術者たちが技術することに喜びを感じ、その社会的使命を自覚して思いきり働ける職場をこしらえる。
2.日本再建、文化向上に対する技術面、生産面のより活発なる活動。
3.非常に進歩した技術の国民生活への即時応用。

ソニーの製品を見ると、この3つの理念は40年後の現在も脈々と生きていると感じます。ソニーは成功した企業だから、この3つが今輝いて見えるというのは事実でしょうね。しかし何回もの苦境でこうしたことを守った結果が今のソニーでしょう。だからタマゴが先です。
基本理念を、目先の利益よりも重視してきた。

苦境の時に、理念にそぐわない方針や決定、そして行動をするようなら理念は消える。

【孫正義の理念、ビジョン、戦略】
本当にリーダシップを発揮しようと思えば、重要な順に3つ、僕(孫正義)が思っていることがあります。まず一番重要なのが理念と志。2番目に重要なものがビジョンです。似たような言葉ですけれど違います。そして3番目が戦略です。

これがリーダシップを発揮していくひと、事業を興(おこ)すひとが持つべき重要順の3つのポイントだと思っています。

(ソフトバンクの)理念は、「テクノロジーを活用することによって、人類の知恵と知識を共有し、創造的で幸せな社会を実現する」ことで、ビジョンは「あらゆるシーンがインターネットにつながる」ということです。そこで戦略として「デジタル情報サービス産業でナンバーワンになる、サイバースペースに集中する、自己増殖型での昆虫のような群戦略、企業価値を創造する経営」となるわけです。こうしたことを基本戦略としてはっきり掲げています。  
『孫正義大いに語る』

ここで言う理念にあたる部分は、バリューですね。ソフトバンクという会社の目的です。

▼理念はお題目?

【お題目】
普通に考えると、理念なんかお題目に思えます。そんなことは日常の仕事には全く関係がない。顧客第一とはいいながら、実際にはそんなことを実行してはない。クレームに対しては、実は嘘を言って顧客をごまかすことが多い。
品質第一とは言いながら、コストダウンの時はそれを無視する。問題ある部品と知っていて使っているのが実態。
従業人第一とは言いながら、幹部は自己利益と保身を図る。

【組織のカオスということ】
多くの現実はそうしたものでしょう。しかしこれこそカオスに陥った会社です。理念と実際の仕事が、かけ離れている。だれもそれを指摘しないとすれば、その会社が21世紀に成長することはないでしょう。理念を書きかえるか、または理念に戻るべきです。
滅びるつもりならそのままでいいでしょう。

【組織の生命】
理念がお題目になったとき、個々人は生きていても組織は生命を失っている。あとは共同作業崩壊のプロセスと、毎年の顧客喪失の現象があるだけです。組織とはそんなものです。

組織やチームでは、個々人のエネルギーが同じ方向に整列していないと個人ワークがあるだけです。指揮者のいないオーケストラ、どんなに優秀でも演奏家個々で違う曲を奏するオーケストラは聞けません。ソロのプレーヤーに戻った方がいい。

【ブランド価値の根幹】
現実には、理念と実際が違うことが多いからこそ、理念の実現を目指す企業が、顧客の目に際立つのでしょう。多くの会社は、こうした理念、バリューの再構築から開始すべきでしょう。

理念が、顧客が受け取る「ブランド価値」の根幹であり信用です。だから、英語ではバリューという同じコトバを使っているのです。

どこよりも安く高品質にというのなら、本当にどこよりも安いかを調べるべきでしょう。そうでないのならお題目の看板は下ろした方がいい。まず社員からの信用を失います。社員は顧客に近い。

【3つの理念・バリュー】
どんな大きな事業でも、多くのバリューは要らない。それは実行できない。理念はせいぜい3つでいい。その3つを何よりも大切にすることです。単純であればあるほどいいのです。そしてそこに集中する。余分なものをキレイに捨てる。

▼戦略(ストラテジー)

4つめの項目、「戦略」です。この概念は分かりやすい。二つの戦略の層があります。
そのひとつが組織に含む戦略。もうひとつが知識及び技術とツールの戦略。

【組織に含む戦略】
カオスの状態である集団で、目標(ビジョン)に到達できるように個々人の役割を決めて整列(align)させることです。
重要なことは、ビジョンからくるということですね。単に、部署をつくって、部課長や専門技術者を配置することではない。それはカオスになりやすい生活共同体です。

達成したいこと、目標とすること、これをクリアに定義して、最適な人員の配列を設計する。これが組織戦略です。
短期(1年以内)の目標ならタスクフォースになる。
中期(3年以内)の目標ならプロジェクトになる。
長期(5年以上)なら、ビジネスユニットや、独立部門になる。

目標がなんであるか、利用可能な経営資源(Resource:人、技術、予算、方法)がなんであるか、クリアに定義することです。
当然のこととして、バリュー(理念、行動規範)に忠実な行動になる。
アウトソースや、スカウトも含まれます。

【知識、技術、ツール】
タスクフォース、プロジェクト、ビジネスユニットに必要になるのが、目標を達成するための知識、技術、ツールです。
コンピュータシステムは、普通の人が高度なことできるように技術を分解して、手順を定めたツールになる。

知識、技術、ツールは内部調達と外部からの調達の2つの方法がありますね。人から切り離すことができないのが、知識です。

戦略から目標はつくれないということです。ITは手段であり、戦略、したがって、まず会社のビジョンから組みたてるべきものです。ここを深く検討しないと、ITは意味がなくなる。システムの罠です。

ITは目標ではない。目標の実現のための道具です。ITが全てを解決することは、決してない。
最近のSCMの失敗は、ビジョンのなさのままツールを持ちこんだからでしょう。これを、本末転倒という。

お疲れ様でした。リーダシップの中味がクリアな映像になりましたか?マスコミのいうリーダシップが、いかに皮相的なものか、わかりますね。それに、政党なんかは特に、リーダシップの根幹から組み立てなおす必要がありそうですね。

あなたの会社はどうですか?

<リーダシップをめぐって>の第3部を終ります。

次号は、ダメになる組織、成功する組織の行動様式(ワークスタイル)考察をしてみましょう。
成功する組織とダメになる組織には、どんな違いがあるのか?

(第4部へ続く)
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2001年4月26日号:リーダシップをめぐって:その第3部

ビジネス知識源:インターネット時代の経営の成功原理と原則
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        http://www.cool-knowledge.com

執筆者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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copyright : Systems Research Ltd. Chief Consultant 吉田繁治