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リーダシップをめぐって(第4部):
          企業文化とはなにか?
          会社がなにを大切にしているかということ
          マネジメントスタイルとワークスタイルを決める
          企業文化とやる気の構造を解く

こんにちは、吉田繁治です。ゴールデン・ウイークです。期間中の海外旅行は56万9500名で過去最高の人数。日本人の典型的な消費行動が現れている。休暇も横並びで一勢に取る。スケジュールをズラせば、ホテルも飛行機も、もっと効率的に安く使えるのに。

社会全体で休暇の過ごし方を軽視してきたことが、こうしたことを生んでいる。休暇の分散ってサービス産業の発展には、命ですね。
余暇に限らず、この国ではいろんなことが横並び。それがコストを上げる。違うこと、個性的なことを嫌う国民性がある。そろそろ、変わらなきゃね。

<リーダシップをめぐって>の第4部をお届けします。

第3号では、リーダシップを構成する4つの概念、ミッション、ビジョン、バリュー、ストラテジーの内容を解きました。

   ミッションは、なにをする会社かを示すこと
   ビジョンは、短期、中期、長期の目標
   バリューは、理念・行動綱領・価値観
   ストラテジーは、目標に向かって整列させた方法・手段


有効な組織運営は、この4つを根幹にして決まる。漠然としていた組織運営に、新しい方法を持ちこみ、生命を吹き込んで、カオス状態を脱する必要がある。それを行うのがリーダシップです。
この4つの概念の中味を、クリアに定義し実行することです。
http://www.cool-knowledge.com/0428Leadership(3).html

多くの人が、マスコミまでもが、リーダシップを期待し語る。期待して語るだけではダメです。その先がない。

現在の、または今後の組織を、プロジェクトを、有効に機能させる方法として、リーダシップを確立させ、働かせる方法論を科学的に捉えなければならない。
どの組織に属しても、または独立して仕事をしても、「生涯の自分の方法」としてリーダシップの4概念は有効なはずです。
もっとも重要なものがバリューでしたね。

ああしろ、こうしろという指示で組織が動く<ライン―スタッフ型組織>が有効であったキャッチ・アップの時代は終った。

「差異」を作らなければ顧客から評価されない時代は、新しい組織の原理が必要です。クリエイティブな組織に転換する必要がある。それが、「情報社会」でしょう。

▼今回のテーマ

今回は<どうしたら、やる気をもって将来に向かった仕事ができるようになるのか>というテーマに取り組みます。どこからそのやる気が出て、どんな時消えるのか。やる気って一番重要。

よく見るような軍隊式精神論ではありません。組織の科学です。企業文化・社風といわれるものです。根本ではこれがやる気を左右する。やる気を出せといっても出るものではない。原因があるのです。


 【本号の項目】
 1.ちいさなことが意味する企業文化
 2.Value(理念、行動綱領、価値観)とマニュアル
 3.新しい方法:Value(理念、行動綱領、価値観)から
 4.うまく行く組織と、ダメになる組織
 5.リーダシップの観点から見ると
 6.積極的防衛文化と消極的防衛文化
 7.結論:無意識の企業文化

ちいさなことが意味する企業文化

ある会社を訪問。
売場を歩いているとパートらしい女性が棚作業をしている。顔を上げて、私に気がついた様子ではありますが、気がつかない振りをして目をそらしそのまま作業を続けた。

同じ日に、アパレルのコムサ・イズムに行った。
販売員は目が合うと「こんにちは」と微笑んで、挨拶をした。私も目礼を返した。いらっしゃいませではなく、こんにちはです。(なぜこんにちは、なのか?)

同じ建物のなかのGapにも行った。
販売員が視線を合わせて声をかけてくる様子は、ゼロ。私は大切な作業中、という感じ。

今年3月には、リストラ途上の米国Kマートに行った。
売場ですれ違うひとは、微笑んでHow are you?と挨拶してきた。

私は心底からおどろいたのです。商品と価格中心だったKマートが・・・2000年までは、こうしたことが皆無だった会社。こちらが声をかけると、うるさそうに、ダルそうに応える会社でした。

レビッツという会社更正法の適用を受けた会社に行った。
入り口で数人の販売員がたむろしていた。団体を率いていたので、挨拶をしようと思い<How are you ? They're students learning Furniture Design>と声をかけた。マネジャーはみんなに、<Hey Kids>と声をかけた。びっくりしました。訪問者に対してKidsですよ。

みんな「ちいさなこと」です。今日の会社の業績や収益とは、直接の関係はない。明日の業績には関係があるか? 顧客にとっては大切なことですね。

さて、こうしたことを、どう考えるか?

Value(理念、行動綱領、価値観)とマニュアル

多くの会社で、顧客第1という理念(Value)、お題目を掲げていますね。理念とは価値観です。価値観とは、なにを大切にすべきものと見るかという行動の綱領です。

▼マニュアルの方法

【挨拶を取り上げると】
マニュアルを作って、「お客様と目が合った時、または3メートル以内に近づいた時は、挨拶をすること」と決めることもできます。マクドナルドに行くと、こうした接客マニュアルが充実していることを感じます。(3メートルとデジタル化したのはウォル・マートですが)

ハンバーガー販売でも、項目を網羅し、マニュアルにすればバインダーは1メートルくらいの厚さになる。マニュアルは、具体的で細かくなければ意味がない。しかしマニュアルに外れたことが起ると、何もできない。日常はマニュアルに規定した以外のことが、頻繁に起こる。

従来のサービスは、定型的になることが進歩と受け取られた。
今後のサービスは、定型的なことから抜け出す必要がある。

【マニュアル】
従来の<ライン―スタッフ型組織>では、現場のマニュアル・作業手引書を作って、訓練することが、組織運営で大切だった。多くの会社が、改訂時期が不明の膨大なマニュアルのストックを持っていますね

果たして、マニュアルをこなすことができ、実行できているひとが何人いるのか。重要な、マニュアルの定期改訂はどうなっているのか。改訂を組織的に行い、改訂したことを教育できている会社は、極めて稀です。ほぼゼロと言ってもいいかもしれない。

ライン―スタッフ型組織】
ライン―スタッフ型の組織では、細かいことまで作業指示するという、実際は不可能なことに挑戦していたのではないか? 動作とことばの外形の規定が、マニュアルです。

極めて単純と思われる「挨拶」を取り上げても、方法をマニュアルとして細かく決めれば、膨大なページが必要になる。細かく分類しなければ、具体的にならない。

視線、微笑み、声の調子、かけるコトバ、頭と腰の角度、手を含めた姿勢。これだけでも6要素。挨拶をかけるタイミング、挨拶をかけたあとの案内、ここまで含めると更に2要素が加わる。

【挨拶のマニュアルの不可能性】
各要素に、仮に5つの方法があるとすると、組み合わせは5の8乗、39万625通りになる。まぁ、組み合わせには、無意味ものが多いでしょう。しかしマニュアル手法は不可能な作業に思えるのです。挨拶だけを取り上げても、こうなる。挨拶は、機械で再現できるような単純なことではないのです。他の多くの作業も同じ。人間の全体がかかわる。

帰納法と演繹法という二つの方法

科学は帰納(きのう)的な方法と、演繹(えんえき)的な方法を準備する。中学の数学で習ったはずです。帰納的な方法とは、個々の細かい具体的なことから一般的なことを導く方法。演繹とはそれとは逆に、一般的な、応用できる原則を立て、そこから具体的なことを論理で推論することです。

マニュアルの方法は、個々の具体的なことから始める帰納法です。
これが、組織運営や作業訓練で有効であることを否定はしません。

機械に向かって行うような単純な作業なら、マニュアルが必要です。マニュアルがないと作業はできない。コンピュータやワープロ等のアプリケーションを使うとき必要になるものですね。

マニュアルの有効性

マニュアルが有効である時は、ある操作や動作に対して、その反応が機械的に決まっている時です。キーを押したときのソフトの反応は、1通りでなければ有効ではない。Aというキーを押したとき、あるときはVになる、あるときはBだと、気まぐれに反応するというような機械は使えない。これを故障と言いますね。

【マニュアル】
しかし例に取りあげているような販売員の作業は、単純な肉体作業ではない。相手が、顧客という「人間」だからです。人間相手なら無限の変化、反応、場面がある。膨大なマニュアルを作っても、変化が多すぎて、カバーはできない。マニュアルが厚過ぎれば、誰も使えない。

【ガイド】
マニュアルとは言っても、とてもおざっぱな、「ガイド」になって、社員は、そこから推理して応用しなければならない。現場作業はこうしたことのカタマリです。

どんな筋途で推理、演繹するのか? 個々人の個性的なその場の判断だ、というと組織的な作業ではなくなり、作業品質と効果はばらばらになる。


新しい方法:Value(理念、行動綱領、価値観)から

方法

じゃどんな方法があるのか? 演繹(えんえき)法ですね。単純な理念をつくって、そこから具体的なことを導く方法。その演繹法を使うとき、考え方の筋途・優先すべきこと・絶対に守るべきことを、決める。
これがリーダシップ理論でのValue(理念、行動綱領、価値観)です。

複雑な作業、情報作業、知識を使った作業、高度な技術作業、対人作業、こうしたものは、マニュアルでのカバーは無理です。個々人の判断と技術、知識に任せられる部分が、とても大きい。

個々人に任せた勝手な方向性でいいのか? それでは、組織はカオスになる。組織全体として有効な経済価値を生み出せない。個人プレーになる。個人プレーでは大きなことはできない。

i)個人的な才能、能力、知識を判断して、
ii)組織が、目標(Vision)に向かえるように整列(StrategyでのAlignment、つまり整列した組織)させ、
iii)守るべき価値(Value: 理念、行動綱領、価値観)を示す。

リーダシップでの新しいマネジメント原理です。会社やプロジェクトを作るときはもちろん、「企業文化」を変える方法です。

ウォル・マートでは当たり前だった微笑んだ挨拶を、Kマートが2000年に行うようになったのは、部分マニュアルの書き換えではない。リストラクチャリングの、顧客第1というバリュー・行動綱領を設定したことに基づきます。これを含む整合的なリーダシップで、確かにKマートは、95〜97年ころの、倒産の危機を脱しています。

▼演繹

顧客第1という4文字のValue(理念)を「演繹(えんえき)」すれば、他のどんな重要な目前の作業よりも、顧客への微笑んだ挨拶や応接が優先されるということになる。上司よりもね。上司より顧客でしょう。顧客第1とはいうが、実のところ、これを隅々まで守れている会社は稀です。
上司の命令には忠実だが、顧客の希望はほとんど無視する。しなければならない電話を忘れたり、時間や約束を守らない。これが普通。

挨拶の方法は、基礎訓練を行った後は、それぞれに任せていい。それよりも重要なことは、他のどんな差し迫った作業よりも顧客を優先するということで価値観です。この価値観、大切にすべきものを徹底すれば、「人間」は機会への対応を行えるはずです。

レジで何分も待たせるのは、顧客第1ではない。混雑時間には、レジを即刻増やせるレーバー・スケジューリング・プログラム(LSP)を敷くのは当たり前であるとなる。

コンピュータ出力のデザインでも演繹し応用できる。商品アイテムに、顧客がぶら下がる帳票デザインで、商品で判断するのではない。それは商品優先の企業文化です。

顧客優先の価値観なら、顧客名がキーになって、顧客の購買履歴が、即時に、売場で参照でき、類似の購買歴の顧客グループが集計できるものでなければならない。ここまで、「演繹」できるはずです。

それが人対人の関係ではCRMになり、品揃えでは商品バスケット分析になって、陳列ではクロス・マーチャンダイジングになる。

商品バスケット分析は同時にどんな品目を買うかの分析です。
クロス・マーチャンダイジングは、品種が異なっても同時購買、関連購買が多いものを、同じ場所に陳列する方法です。顧客をキーにして、商品を見ないと、見えてこないものですね。

▼信念に基づく決意

顧客第1という価値観・行動綱領は、リーダーの相当な覚悟、決断がないと決められない。会社の行動文化、判断基準を一変させるはずです。単純なことを徹底すること。ここに、現代企業の存在価値がある。他が徹底できないから、差別的な価値、ブランド価値になる。
顧客第1とは、簡単に言えるようなものではない。

リーダシップにおいて、もっとも重要なのがValueの設定です。

「顧客をほかのなによりも優先させる・・・顧客に奉仕しなかったり、顧客に奉仕する仲間を支えないのなら、その人間は必要ない」、ウォル・マートの創始者サム・ウォルトンのValueはそうした徹底したものだった。事業と仕事における優先順位の大切さ。

深い信念から生まれた単純なことを、徹底できること。ビジネスでの最大の成功法則と言っていい。ビジネスは複雑に作ってはいけない。

i)複雑な動きからカオスの組織になったものを解きほぐして、
ii)有効な新しい価値観、リーシップで整列して動き、
iii)有効な戦略を使うビジネスユニットを作るのがリストラクチャリングです。

最初は明確な目的があった組織でも、ほおっておくといつの間にか、悪しき生活共同体になり、カオスに陥(おちい)るのです。


■うまく行く組織と、ダメになる組織

▼企業文化という難物

うまく行く組織と、ダメになる組織を見分ける方法はあるのか?どんなふうにすれば、ダメな組織の罠(わな)に陥らないのか? とても大きなテーマですね。
実はリーダシップ論に含まれることが多い「企業文化」の分類が、その方法を与えるキーになります。

【企業文化:無意識的なもの】
企業文化とはなにか? <意識的、及び無意識的に組織の構成員が共有している、判断と行動の様式>と理解したらいいでしょう。この企業文化のうち意識的なものは、ミッション(なにをやる会社か)、ビジョン(目標)、バリュー(理念、行動様式、価値観)で変えることができる。

しかし、無意識的なものは、お互いが無意識であるから、他の企業文化との比較によるしか方法はない。顧客の立場では他の会社と比較できるから企業文化の違いを嗅ぎ取る。しかし、組織にどっぷりつかった人には、違いが見えなくなっている。

あなたの会社の企業文化は? または(同じことですが)社風は?と聞いて、明確な答えが返ってくることはほとんどありませんね。組織に属する本人には、空気のようなもので、意識されていない。「会社の個性」と言ってもいいものが企業文化です。

「企業文化」と、「ミッション、ビジョン、バリューのリーダシップのセット」が有機的に、意味をもって結びつき、そこに「有効な戦略」が加わるとすばらしい会社ができる。

以下、企業文化を分類して、対比しながら見ていきます。
自分が属する組織、及び自分の考えや行動がどれに近いか、考えながら読みすすめて下さいね。クリアな像をむすぶはずです。

まずは防衛的文化と建設的文化から

【防衛文化の素描】
防衛とは攻撃に対して守ることです。他社が素晴らしい新製品を出した。必死にそれを追いかけようとする。ITブームである。ITの導入に躍起になる。焦燥感と、追われるような感覚に駆られている。変化に取り残されないという考えで、戦略や方法がつぎつぎに変わるのが、こうした防衛的な文化の会社です。

トップの訓示は、<時代が変わった、さぁこれからは・・・・>が多い。多くの会社がこのタイプでしょう。これが、日本経済の変化の原動力だったのかもしれません。特に、横並びで「あたらしい変化とされるもの」を追いかけると、日本の会社に多い防衛文化になる。

【建設文化の素描】
わが社のやるべきこと(ミッション)を決め、ビジョン(短期、中期,長期目標)を決め、行動綱領とメンバーで共有した価値観にしたがって、やるべきことを長期でやっている会社です。
表面的なハヤリには容易に同じない。他社の新製品にも動揺しない。

得意なこと(コア・コンピタンス)を更に得意にするために精励する。細かくて、重要なことを次々に発見する。西欧に多い会社のタイプです。ある時期は、一見では、停滞に見えることもある。
こうした会社が、建設的文化の会社です。

必要なこと:変化をリードしすること

差異や創造的なことは防衛文化の会社からは生まれにくい。変化を追い求めるプロセスで、経営資源を消耗することが多い。

変化に勝つには、自分が変化を引き起こして、変化をリードしなければならない。これが、今後の企業経営のもっとも重要なキーワードでしょう。つまり、変化の先を行かなければならない。

そんな方法があるのか?

【防衛文化】
防衛文化は、時流対応をしているように見えるが、実は変化に翻弄(ほんろう)されている。2番煎じで,2流です。焦燥感だけがある。

【建設文化】
一方、建設文化では、面白いこと、興味が持てること、発見があることに取り組んでいて、仕事を喜ぶ雰囲気がある。世の中の変化にある時期は遅れているように見えることがある。しかし、ふと気がついたら、時代の変化をリードすることが多い。

【変化の本質】
世間が突然の変化と思うものは、建設的な文化の会社にとっては、連続的な発見のプロセス、すでに実験済み、経験済みのことであったとなる。これが変化の「リード」、時差ですね。実はこうした会社が、先頭にたって変化を起こしている。

建設的文化の会社は新しいことをやろうとしているのではない。新しいことではなく、顧客のために正しいこと、真理に近づくこと、本質を見極めることを重視している。

【新しく見える現象とは】
新しいこととは、自分が変化に遅れたという焦燥感があるとき、焦燥感のフィルターで新しく見えるに過ぎない。本質を見ればちっとも新しくはないことが多い。外形のラベル、呼び方が変わっているだけです。ITではこうしたことが実に多い。

【問い】
さて、今のあなたの会社は防衛文化に近いか、または建設文化に近いか?どちらがいいのか? ここが分岐点です。


リーダシップの観点から見ると

防衛文化は、リーダシップでの方向付けが弱い。だから外部の変化を後追いすることしかできない。本質は、先行した会社の得意分野の、追随者である。変化がゆっくりしていた1980年代まではこれでもよかったのです。他が遅れ過ぎていた近代化のプロセスだったから。

▼根本的なこと

根本的なことを言えば、競争対応って最優先すべきものなのか。もともと同じような商品を提供しているから、競争対応が優先課題になる。多くが横並びで来た日本では、競争対応が無条件に必要とされることが多いが、それは、商品価値で差別化ができていなかったからだと言えますね。そうした観点も忘れず持つべきでしょう。

ユニクロやコムサ・イズムは、競争対応で商品開発をしているか?信念に基づくリーダシップでの開発でしょう。競争対応が最優先なら、他の多くがやるような価格の微差しかつくれなかったはずです。

【新しい商品価値のフォーミュラ(公式)】
お値打ち感=(機能性+品質性+スタイル性+ブランド性)×店舗イメージ÷価格
創造し差別化すべき要素は、機能から価格まで6要素もある。

▼変化ということ

一般的には、1990年代以降のように、競争相手の範囲が広がって、変化の速度が高まると、防衛文化ではすべてが中途半端になる。結局は部門のあちこちが廃墟(はいきょ)になる。90年代の日本の会社ですね。

バブル投資も、他に遅れまいとする横並びの防衛文化がもたらしたものといえます。防衛文化は、時流に翻弄(ほんろう)され、漂う。

建設文化は、信念のリーダシップで組織を引っ張る。容易には変わらないものを信念といいます。信念が変化を作り、変化をリードするものでしょう。自己の進歩が、他にとっての変化である。リーダシップは信念から生じる。

変化が加速すると

外形の変化が激しくなればなるほど、信念に基づいた建設的な文化、リーダシップが輝きを増す。私はそう思います。

本質的なところを見極めた創造性のある時代遅れは、時代に先行する。そうしたくるりと回った転換が、常に起る。

変化の後追いではなく、普遍的な価値を、見極わめることです。妙な表現ですが、創造性のある時代遅れ。「古風」ということの価値でしょうか。

【ハヤリ】
およそ、ハヤリのものは胡散(うさん)臭いものです。ハヤリのものが右に左にどんどん変化し、最後に落ちつくところは、昔から変わらない価値だったとなる。最先端のIT分野ではこうしたことが実にが多いのです。

あなたは、どう判断しますか?

【判断】
以上が、企業文化の最初のテストである「防衛文化」と「建設文化」です。特に大きな決定では、防衛文化、建設文化で、方向が雲泥(うんでい)の差になりますね。

こうした、会社の深い部分を見て、どんな方向に進むべきか、改革すべきかを見定めることが、今、必要でしょう。
防衛文化のみの会社は、今後はとても危険です。変化を追う過程で、いったい何をやっているのか、何を成し遂げるべきかが、わからなくなる。

デジタル社会:過去は有効だった二番手論の無効化】
次々に課題は変わるが、要は、追随。追随は常に最良で二番手です。あらゆる分野で、デジタル社会では、二番手の果実(利益)はとても薄いという原理がある。三番手になると、もう赤字になる。それくらい、一番手集中になるのがデジタル社会。過去は大きかった距離と時間の障害が、障害でなくなるからですね。情報伝達の速度が上がるとそうなる。
現在、いろんな分野で一人勝ちが起るのには、こうしたデジタル社会の原理が働いている。


■積極的防衛文化と消極的防衛文化

危険をはらむ防衛文化にも2種類があると見ることができる。「消極的な防衛文化」と「積極的な防衛文化」
こう分類すると、さらにクリアになるはずです。

積極的防衛文化は、変化に対応して、積極的で攻撃的な行動をとる。例えば、競合他社が新しい製品を出した。それに対して、わが社の新商品で対抗するといった行動です。

一方、消極的防衛文化は、外部変化を否定し、今まで通りやろうとする。行動スタイルでは、現状維持の行動、従来のやりかたを通すのです。官僚的な組織に多い行動ですね。前例、慣習、そしてトップからの命令で動く。
内部は安定しているが、社会の中ではあぶない組織になるのがこの消極的防衛文化です。

危険な消極的防衛文化の4分類

消極的防衛文化は承認文化、伝統的文化、依存文化、逃避文化にわけることができるとされている。いずれもダメになった、または、業績が悪い会社のケーススタディから導きだされたものです。
まず承認文化のワークスタイルから見ていきましょう。

【使い方】
それぞれの項目で、i)自分の会社、ii)部署、iii)プロジェクト、iv)及び自分を想定して、傾向をチェックする。Yesの数が多い文化に近いことになりますね。行動で思い当たることを正直にチェック。妙に飾れば、せっかくのチェックの効果はないでしょう。

【結果を比較することで発見】
部署のメンバーとチェックの結果を見せ合って、比較検討すると、思わぬ意識の違いがあることが普通でしょうね。深刻にならず、ゲームとして気楽に、でも正直にやることです。大きな、とても貴重な発見があるはずです。

(以下、『大逆転のリーダーシップ理論(藤原直哉)』を素材にとって、表現方法は、吉田の解釈で部分修正し、圧縮しました。しかし、基本線は同じです。)

1.承認文化に特徴的なワークスタイル

他からの承認、認められることが重要なバリューになる社風です。現象としては、以下の10項目。

□1.上司に気に入られようとする傾向が強い
□2.命令に忠実ないい部下であろうとする
□3.他人に認められるためということが、行動の動機になる
□4.他人と同じことをやっていく
□5.メンバーの誰に対しても、合意することが多い
□6.流行現象にいつも気をつかっている
□7.他人から受け入れられるかどうかを確かめる
□8.一番権威をもっているひとを支える
□9.他人を喜ばせる目標を設定することが多い
□10.誰からも好かれようとする傾向がある

なぜこんなワークスタイルになれるのか。その原因と構造が以下です。

【承認文化に至る原因と構造】
メンバー個人の運命や評価が、全面的に直属の上司に握られている。
評価の基準は、客観的でFair(公正)でないことがある。
協力の意志は強いが、メンバーは問題の指摘をためらう。

大きな決定では、皆に気に入られるかどうかが重要になる。
マネジャーは見かけをよくするような目標を設定する。
マネジャーは、部下に全力を尽くすように励ますが、努力を業績に買えるときに必要な援助を与えるとは限らない。

2.伝統文化に特徴的なワークスタイル

過去からの慣習、ルールが重要なバリューになる社風です。現象としては、以下の8項目。

□1.風波を立てないことが重要と考える
□2.対立を避ける傾向が強い
□3.他人によい印象を与えることが行動の動機になる
□4.ルールは、アイデアより重視することが多い
□5.相手によって違ったことを言うケースが多い
□6.要は現状を受け入れること、と判断する
□7.今までの仕事の基準や慣習に従うことが多い
□8.型にはまる行動が多い

【伝統文化に至る原因と構造】
承認文化が他人を喜ばせることが行動の動機になっているのに対して、伝統文化は組織で決めたやり方をはみ出さないことが重視される。
厳しい階級がある。
上からの命令のチャンネルしかない。
標準的な仕事のやり方が決まっている。

マネジャーは、業績がよくなることより、社内手続きと標準手順に従っているかどうかを評価する。
仕事が、細かく分業化され、メンバーには変更や裁量の余地がない。

▼3.依存文化に特徴的なワークスタイル

チーム、上司や周囲にに対して依存することが多い社風です。現象としては、以下の10項目。

□1.上からの目標は、そのまま受け入れる
□2.何をするかが、予測可能である
□3.上司に逆らうようなことは、避ける
□4.よいフォロワーであろうとする
□5.すべての人に、何を考えているのかを聞くことが多い
□6.権力をもっている人を喜ばせることが重要と考える
□7.例え間違っているとは心で思っても、命令には従う
□8.上司に、決定したことをチェックしてもらう
□9.自ら進んで、命令に従うことが多い
□10.指示がないと、何をやるべきか、困る

【依存文化に至る原因と構造】
トップに権限を集中させ、トップダウンの命令系統をつくることが組織を効率的に動かすことだと考えている組織です。
恐怖と脅迫で人は動くと考える。
マネジャーの裁量部分は少なく、調整役である。
上司は、情報を独占し、必要があるときだけ部分的に見せる。

4.逃避文化
問題への直面を避けることが多い社風です。現象としては、以下の10項目。

□1.物事にできるかぎり関わらないようにする
□2.皆に受け入れられことを重視して決定をする
□3.チャンスに見えても行動をおこさないことが多い
□4.物事を先送りすることが多い
□5.難しい問題には、できるかぎり関わらないようにする
□6.問題発生時、とがめられないように配慮する
□7.他人が先に行動するのを待って、その後に従う
□8.決定を上位の人に押し上げ、自分では決めない
□9.会社では取りあえず、一応という表現が多い
□10.チャンスと見えてもリスクは避ける

【逃避文化に至る原因と構造】
革新や創造、環境適合のための変化より、過去からの一貫性を重んじる。
減点法の評価が多い。
成功の評価は、その原因ではなく、他の要因で行われることが多い。
行動することの責任を、回避することが得になる。
問題が起ると、誰の責任かということだけに注目する。


■結論:無意識の企業文化

以上、組織を最終的には潰すことになる、とても怖い消極的防衛文化を、承認文化、伝統文化、依存文化、逃避文化の順に見てきました。
企業文化や社風が含むものは、コトバにして定義された公式な行動綱領(Value)のみではないのです。

いろんな組織または部署が、無意識のマネジメントスタイル(経営管理の様式)、ワークスタイル(行動と作業の様式)をもっている。

▼無意識なことの重大性

企業文化は、ある組織に入って3ヶ月もすると具体的に感じられ、3年もすると自分がすっかりそれに染まる。長期間、組織にいると、染まったことにすら気がつかない。仕事とはこんなものだと思い、発言することになる。

トップも、いつの間に今の社風が出来あがってしまったのか、意識できない。自分の言動や評価方法のどこに問題があったのか、気がつくことはほとんどない。

だれも、組織を潰(つぶ)そうとは思わない。しかし、いろんな対策を打っても有効にならず、結果として潰すことは頻繁に起こる。製品の問題や、コストの問題ではない。製品やコストは企業文化の結果でしょう。根の原因は、組織内の行動様式にある。

ここに着目する必要があるのです。

▼企業文化を意識化させるためのリーダシップ

リーダシップは、企業文化(社風)と行動様式(マネジメントとワークスタイル)を意識化し、新しく有効なものに変える機能をもつものです。

 リーダシップの4つの方法が、
 1.ミッション(なにをやる会社か、部署かの明確な定義)
 2.ビジョン(短期、中期、長期目標の設定)
 3.バリュー(守るべき価値、行動綱領の設定)
 4.ストラテジー(目標達成に用いる人員配置と手段の決定)です。

(第5部へ続く)

曖昧だった「リーダシップ」が、クリアな映像を結びましたか?
こうしたものについては、アメリカは実践的な原理を与えますね。

外部変化の後追いではなく、外部変化を引き起こすこと、これです。

やるべきことを見失わないことです。連休を機会に自己反省。
次回はうまく行く「建設的な文化」の内容と構造を取り上げます。

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2001年4月30日号:リーダシップをめぐって:その第4部

ビジネス知識源:インターネット時代の経営の成功原理と原則
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執筆:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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copyright : Systems Research Ltd. Chief Consultant 吉田繁治