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リーダシップをめぐって(第5部):
          成功する企業文化とワークスタイルの研究

こんにちは、吉田繁治です。小泉内閣が、80%を超える異常な支持率を得ています。最初にそれを考察しましょう。リーダシップを考えるためのとてもいい材料になる。

こうしたことを予測せず、4月14日にリーダシップ論を書き始めましたが、まさにグッドタイミングです。実は、こんなことが奇妙に時々起るのです。(笑)

それにしても、危うい感じがつきまとう「小泉事件」は驚きですね。事件という理由は、まだ、政策が明かではないからです。
大きな変化の入り口、日本の歴史的転換点に立っている感じがします。ブッシュ政権以降、歴史が、目の前で動く感じと言っていいでしょうか。今年は大変化の年になる。観(かん)の目を瞠(みひらく)くことです。

 【本号の項目】
 1.政治システムの揺れを経て、どこへ向かうのか?
 2.積極的防衛文化の4つの類型
 3.建設文化の映像イメージを
 4.建設文化の4つの類型
 5.実践の観点

政治システムの揺れを経て、どこへ向かうのか?

小泉首相の支持の理由

【支持理由】
(1)人柄が信用できる。(48%)
(2)指導力がある。  (32%)
(3)清潔である。   (27%)
(4)政策がよい。   (24%)   (日経新聞4月30日)

評価では、内容である政策は4番目にすぎない。人柄、指導力、清潔の3要素はいずれも小泉氏の人格と資質、政治スタイルにかかわる部分です。日本の戦後の政治では、異例の理由。政策が見える前に、マスコミを通じてしか見えない人柄のイメージを、世論は評価した。

族議員システムの権力構造

自民党の権力の根は、公共投資を核とする予算の増加配分にあった。前にも挙げた、<業界団体―族議員―官僚―公共投資予算>の族議員システムです。この装置の発明者が田中角栄で、権力の中核は<田中派⇒経世会⇒橋本派>でした。マネーで業界団体を動かした。官僚は、天下りや幹部昇進を含めた、ポストの約束で動かした。

根底は田中角栄の人間観

業界団体と地元は金で、高級官僚はポストで、政治家は落選の恐怖で動くと看破(かんぱ)し、見極めたのが田中角栄でした。角栄が愛読したのは、明朝末期に儒教・仏教・道教を学んだ洪自誠が著した『菜根譚(さいこんたん)』(岩波文庫)です。ふと開くと、とてもおもしろい。古典がもつ永続的な力ですね。年をとったかなぁ(笑)

例えばその1節:
<部下の者の功労と過失は、すこしも、あいまいにしてはならない。もしも、あいまいにすれば、部下の者は怠け心をもつようになる。(これに反して)個人的な恩義と遺恨(いこん)ははっきりしすぎてはならない。はっきりしすぎると、部下の者は離れ背(そむ)く心を起こすようになる>

角栄に背(そむ)いて経世会を作ったのは、気配りの人と言われた竹下登でしたね。

自民党権力の根底

族議員システムは、予算の「増加配分」を続けることができるということが権力の根底でした。税で集めたマネー、及び公共投資の分配を求めたのが業界団体、特殊法人です。特殊法人は、官僚の利権拡大だった。

小泉内閣はそんなことを約束(Promise)しているか? むしろ減少させることを公約。業界団体、特殊法人、族議員システムの外部にいた人達はいわゆる「無党派」です。無党派が支持するのは分かる。

▼予測できなかった変化

しかしながら自民党総裁選に参加した自民党員は、多くが利益誘導を求めていた業界団体です。その業界団体の内部にいる人の約60%以上が、予備選で小泉氏に投票した。これは、誰も予想できない突然の変化だった。族議員システムの頂点にいる橋本氏が勝つという予想しかなかったのです。

元田中派の事務総長、現政治評論家の倣岸(ごうがん)な早坂茂三氏は、Voice5月号で以下のように予想していた。いわゆる永田町の事情通の典型の見方ですね。

<権力の司令塔は、よくもわるくも野中、青木、古賀の新三人組である。これを創価学会=公明党が全面支援しているのが権力の実態だ。
マスメディアの世論調査では人気抜群の小泉は、先行馬として疾走したがホームストレッチで脱落するだろう。一言居士(いちげんこじ)の好漢はなにかにつけて危なっかしい>

▼見逃されたもの

他の「事情通」の予想も大同小異。識者と言われる多くの人が見逃していたものがなんであるかを見る必要があります。ここに「新しいうねり」がある。小泉氏自身が、予想外、驚天動地と言った。本人すら予測できなかったというのは、ホンネでしょう。

重要なことは、自民党はもう今後、予算の増加配分はできないということを業界団体ですら見通したということです。このままの延長で続ければ、結局は破滅に向かうとの、健全な危機意識と防衛意識が生まれていたと見ることができるでしょうか。

永田町の事情通はこれを見落としていた。約30年間の田中流政治、行動スタイル、価値観(Value)の終焉(しゅうえん)、そうした意味を持つ。30年は1世代。世代が大きく変わるサイクルです。

▼変曲点

過去から続いたものがある日、突然、非連続に切れる。「変曲点」です。変曲点がいつ来るのか? 投資、経営、仕事でこれを見極めること。ここが大切なことです。歴史は一夜で、新しい世界になる。ここまでは分かる。しかし、次は?

▼今後

今後の小泉政治と政策の実際は、右へ左へ大きく揺れるはずです。一直線の動きにはならない。危機意識からの支持では、経済の危機が深まる現象が実際に起ると、移り気な世論はすぐに離れる。今後、危機の現象はあちこちに起る。

▼新しいシステムへ

族議員システムの耐久力は強固で、30年も続いた。<族議員―官僚>に代わることができる次のシステムはなにか? これを作るべきでしょうね。国家の上部構造システムのリストラクチャリング(再構築)です。

歴史は何を示しているか? 耐久力があるシステムは、米国流の大統領制度。大統領制度では、国民投票によって、過去の上部構造を一掃する。大統領だけが変わるのではない。大統領が任命する政府高官、政策スタッフまでが変わる。

日本の過去の政治システムでは、ヘッドはコロコロ変わるが予算配分の上部構造と官僚スタッフはそのまま続いた。だから「首相は誰でも同じ」、こうした庶民の直感は鋭い。事務次官を筆頭とする官僚システムが、精緻(せいち)に強固だったからです。

米国流に変わるのがいいことなのかどうか、それはわからない。
大統領制は、国民投票での上部構造の革命を繰り返す直接民主制のシステム。

今回の「小泉事件」は、国家の上部構造のシステム改革、行動様式改革への入り口と捉えるべきでしょう。今はまだ、突発的な事件です。事件に形を与える仕事、システムの構築が残っている。破壊だけではダメです。新しいシステムの構築までに、何年かかるか? 

日本経済の猶予(ゆうよ)期間は、2年でしょうか?
2年で方向が見えれば、再びブームが起る可能性がある。
マネーは、変化に最も敏感で、ある日突然動きます。

リーダシップは、組織の根幹のシステム改革、価値観の改革を行うものですね。


リーダシップへの誤解から脱出しよう

政治に現れた行動様式の分析の後は、<リーダシップをめぐって>の第5部です。A4・17ページの5回分で、エッセンスを集約してまとめた1冊の本のようになりました。今は分からないところがあっても、あとで、あなたにとって利用価値が生じるであろうことを目標に、書いています。折りに触れて、開くといいでしょう。

リーダシップへの入り口での多い誤解は、リーダシップは組織のトップや上層部のみのもの、われわれ平(ひら)や現場には無関係というものです。

確かに、組織の上層部はリーダシップそのものが仕事になる。しかし、リーダシップは組織の各部署で、まさに現場のチームワークの中で発揮されるべきものです。

私はリーダシップは、全員がその中味と仕組みを理解すべきものだと考えます。リーダシップを自分の課題として捉(とら)えること。あらゆることは、自分の課題として捉えると、切実になる。他に期待するだけでは他力本願で、自分の進歩の機会をつぶす。

あなたがいるから、あなたにとっての世界があると考えていいのではないか。あなたの目で見て、頭で考え、想像する世界しかない。例えばインターネットのWEBも全部、世界の人々があなたのために膨大なコストをかけて準備してくれ、有効な利用を待っているデータベースと思えばいい。


■積極的防衛文化の4つの類型

前号、第4部では、危険な「消極的防衛文化」を取りあげました。
消極的防衛文化は、ケーススタディでは以下の4つの型があった。

【消極的防衛文化】
(1)承認文化:
  他からの承認、認められることが重要なバリューになる社風です。
(2)伝統文化
  過去からの慣習、ルールを守ることが重要なバリューになる社風です
(3)依存文化
  チーム、上司に対して、依存することが多い社風です
(4)逃避文化、
  問題への直面を避けることが多い社風です。

それぞれの企業文化の特有の現象をチェックして、メンバーで比較し、意見の交換をおこなうことが大切です。消極的防衛文化は、まとめれば外部変化から逃げて、組織を孤立的に守ろうとする。もっとも危険な行動様式、企業文化です。

積極的防衛文化】
一方、外部変化に対して攻撃的に出て守ろうとする社風もある。これは「積極的防衛文化」と名づけられています。攻撃は最大の防御と言われることに近いものですね。しかし実はこれにも危険がある。

この積極的防衛文化の社風、行動様式はどんなものか?
仕事ができると見られていると自認する人に多い行動様式です。

▼積極的防衛文化の類型

積極的防衛文化の4類型は、
(1)対立文化
(2)権力文化
(3)競争文化
(4)完璧文化、と名づけることができる。

▼1.対立文化

メンバー個々の自己主張がとても強い社風。米国の会社に多い。
また自信を持った学者、評論家、専門技術者に多い行動様式でもある。この社風の現象は以下の10項目に現れる。(ホンネでチェックしてくださいね)

□1.結局は他人の間違いを指摘する主張が多い。
□2.他人の議論を傍観し、自分は客観的な立場にいると思う。
□3.まず、ともかく反対する。
□4.一生懸命、自分と自分の立場を他人に強く印象づけようとする。
□5.まず、間違いを探す。
□6.物事に対して、間接的に反対する。
□7.他人の決断に、疑問を呈(てい)する。
□8.状況から超越したような態度を取る。
□9.他からの批判を受け入れることを拒否する。
□10.全体のためにと称して、実は反対を述べる。

【対立文化に至る原因と構造】
激しい自己主張、内部組織と外部への攻撃で自己の立場を確保する。チームワークは形成できない。社内派閥はできる。

黙っていたり、他人の意見をそのまま受け入れるとバカじゃないかと評価されるので、ともかく相手の非を見つけて攻撃に出る。ともかくとはAnyway。反対する理由と相手の非を見つける。政治的なディベート、派閥、セクショナリズムの社風です。

▼2.権力文化

地位(Job Position)と階級(Job Class)がすべてを決める社風です。この社風の現象は以下の9項目に現れる。

□1.決して強制的な管理を緩(ゆる)めない。
□2.忠誠心を要求する。
□3.地位に基づく権力を使う。
□4.いつも攻撃側に立つ。
□5.自分達、またはグループの権力基盤を作り上げる。
□6.一人でなんでもやってしまう。
□7.強制的に行動する。
□8.社内政治を駆使して影響力を保つ。
□9.勤勉で厳格である。
□10.ゆるぎない権力を維持する。

権力文化に至る原因と構造】
地位と権力を勝ち取るために、競争的に争う行動様式から生じる。対立文化ではお互いの反論が激しいが、権力文化では、権力を持つ人への反論は許されない。忠誠さが評価される。

作業命令が厳格で、誰から許可を受けた行動かが問題になる。作業指示は、権力をもつ人から降りてくる。メンバーの自発的な行動は許されない。成果ではなく社内手続きが最大の問題になる。

ふぅ、書いていても、息がつまりますね。この権力文化も、日本の会社に多い、軍隊のマネジメント・スタイル、ワーク・スタイルです。ある大手銀行がこんな感じでした。ある時その現場に立ち合わせて、驚いたことを思い出します。アルミとガラス張りのモダンな高層ビルのなかの軍隊風行動。

ああ、そういえば、派閥の長に連絡をしないで、閣僚を一本釣りした小泉手法に対しての、派閥ムラ(江藤派)の長の反応は、「手続きを無視している」という怒りでした。江藤氏は、「一本釣りに応じるようなモノはこの政界には生きてはいけない」と激しい調子で、派閥メンバーを叱責した。

江藤氏当人は、こうしたことが「権力文化」の典型であるとの意識はないでしょう。この権力文化は、生命の危機に晒(さら)されるような極限の事態、または会社がつぶれるような危機では有効です。だから軍隊では権力文化を採用する。仕事の日常ではどうでしょうか?

表面上の忠誠心が跋扈(ばっこ)して、実際は内部が空洞化することになるでしょう。

▼3.競争文化

営業部・販売部、研究開発部に多い行動様式です。
この社風は、以下の10項目の現象として現れる。

□1.他人に勝つことが重要と考える。
□2.いつも、正しくあろうとする。
□3.いつも見られていて、注目されていることを目指す。
□4.協力するより、競争する。
□5.注目の中心でいようとする。
□6.負けた姿を決して見せない。
□7.同僚よりもよい成績を上げる。
□8.勝利者であろうとする。
□9.優れているというイメージを持つ
□10.仕事を競争にする。

【競争文化に至る原因と構造】
メンバー間での競争がもっとも大切な行動様式であるとされる組織です。個人の業績がそのまま評価される営業部、販売部に多い行動様式です。

タテマエではチームで業績が上がることが個人業績より大切とは言う。ホンネでは自分の個人業績がいいことが、もっとも重要なことと思っている。仲間であっても、他人を蹴落とすことが生きることだという仕事観、または人生観が作られている。

▼4.完璧文化

全体の成果には関係のないような、瑣末なことにまで完璧であろうとする社風です。以下のような10項目の現象として現れる。

□1.すべての詳細に注意を配る。
□2.長時間働いているように見える。
□3.決して間違いを犯さないようにする。
□4.非現実的に思えても高い目標を設定する。
□5.ここまでは・・・と不必要に思える時も、正確であろうとする。
□6.すべての面で、最高でありつづけようとする。
□7.物事を完璧に仕上げることが大切であると思う。
□8.仕事が何より大切だと見ている。
□9.仕事ができて、周囲からは独立しているように見える。
□10.1つのことを追いつづけて、努力する。

【完璧文化に至る原因と構造】
完璧文化は、すべてのことに完全性を求めるトップ、マネジャーの個性から生まれます。完璧が最も大切な価値とされる。

完璧であろうとすることは大切なことです。しかし、それが行き過ぎて、本質には関係のないような瑣末な事項、社内ルール、規則にまで完全性を求めることになり、組織的な分業の「全体最適」が失われる。

また完成度を高めるという名目で、仕事の完成が遅くなり、全体では大きな不能率になる。多大なコストを要することになる。部分最適が全体不適に陥(おちい)る原因です。

▼まとめ:防衛文化の8つの類型

防衛文化を、まず消極的防衛文化(第4部)と積極的防衛文化(第5部)に分け、それぞれを4つに分類すると、以下の8つの類型になりました。

 【防衛文化の8類型】
  1.消極的防衛文化
    (1)承認文化
    (2)伝統文化
    (3)依存文化
    (4)逃避文化
  2.積極的防衛文化
    (1)対立文化
    (2)権力文化
    (3)競争文化
    (4)完璧文化

チェクリストで判定を行うと、見事に、普段は意識されていないわが社・部署・プロジェクト・個人の、「行動様式・社風・大切にしていること」が現れるはずです。

約80項目の問いをランダムに配列して、みんなが何を重視しているかホンネでチェックすると、はっきりした結果が出ますね。

見えないものを意識化するためのツール

人間は、意識したことは乗り越えることができる。これが意志です。最も困るのは、外部から見れば、はっきりしている社風や社員の行動様式に、内部にいる人が気がついていないことです。

各項目は膨大なコストと試行錯誤を経た、米国でのリーダシップのケース・スタディが元になっています。利用価値はあるでしょう。

【私の反省】
自分自身をチェックすると、私の行動様式は、積極的防衛文化に属する対立文化と完璧文化の個性が強いようですね。組織のなかでは、歩調がとれず、浮いた存在になる傾向。さぁ、これで乗り越えるべきことが、増えましたね。あなた個人とあなたの会社は、どんな個性でしょう?

次は、今後目標にすべき社風、情報社会・デジタル社会で必要になる価値の差異を生む創造的な文化、つまり建設文化を解くことに入ります。
しかし、この「建設」とはいったいどんなことか?



■建設文化の映像イメージを

建設的ということ

まず、「建設や建設的」というコトバを使うとき、アングロサクソンが日常用語として意識しているものを見ましょう。建設的とはどういうことか?

Construct:
to build, form, or devise by fitting parts or elements together systematically.
a concept or theory devised to integrate in a orderly way the diverse data on a phenomenon. (Webster New World Dictionary)

部品や要素を、機能の目的に合うように、きっちりと組み合わせ、建物を建てたり、形を作ったり、発明したりすること。
ある事象についての色々なデータに秩序をつけ、統合することができるように発明された概念または理論。

【鍵は、部分の機能と全体目的の調和】
ああ、「建設的」ってこんなことかと分かります。いろんな要素や部品の調和を計った統合で新しいもの(価値)を作ることですね。

これで「建設的チームワークとリーダシップ」のイメージができたはずです。

日本の文化である「五重の搭」や「茶室」の建築を思い浮かべるといい。そこでは、「部分と全体の、きっちりした見事な調和」がある。部分は自己主張せず、かといって消えずに活きていて、全体の調和(統合)のなかにある。部分と全体の有機的統合と言いますね。

【単純化したまとめ】
(1)消極的防衛文化での行動様式は、「外部世界からの逃避」で動く。自社オンリーの世界。官僚的な世界。

(2)積極的防衛的文化の行動様式は、「外部または内部に向かった部分の自己主張」で動く。内部や外部の相手を叩きつぶせの世界。

(3)建設文化での行動様式は、組織全体(会社)の目的と、各部品(部署)や要素(個人)の働き(Work)の調和によって新しい価値を作るようなイメージですね。

これで3つの企業文化を映像化できます。なるほど「建設:Construct」の意味は深い。部分や要素に分けながらも、全体目的(全体最適)のために部分を位置付け、部分の機能内容を決める「システム設計」とほぼ同じ意味ですね。

そうなると、ある建物(会社:組織)が、外部世界と自然に調和する時、その建物の永続的な生命が保障されることになる。21世紀のキーワードである、「共生とWin-Win」にまで通じるものですね。

深く見れば、いろんなことは根源では共通で単純なんだと、ここでも気がつきます。


■建設文化の4つの類型

建設文化も、ケーススタディでは重心の違いで、4種に分けることができると言われている。
 
 【建設文化の4つの類型】
   (1)達成文化
   (2)自己実現文化
   (3)人間性促進文化
   (4)提携文化

早速、その内容を見ていきましょう。

▼1.達成文化

短期、中期、長期の目標(Vision)への目標への達成が重視される行動様式、社風です。現象としては、以下の10項目。

□1.自分で決めた目標を達成すべく、仕事をする。
□2.行動する前に、他の方法はないか、考える。
□3.難しい仕事に挑戦する。
□4.ある程度、難しい目標を設定する。
□5.質の高いものを追い求める。
□6.達成感のために仕事をしている。
□7.あらかじめ考え、行動する。
□8.ある程度のリスクをとる。
□9.オープンに情熱を見せる。
□10.ビジネスを知っている。

【達成文化の原因と構造】
困難でありつつも、現実的な目標を設定する。上から与えられた目標でもチームメンバーのコミットメント(納得)がある。よりよい仕事の達成感を得ることを大切な価値とする組織です。

防衛文化と違うのは、防衛文化は他からの攻撃が原因になった追いつき目標であるという点です。建設的文化では、それが自己目標になる。

▼2.自己実現文化

創造性、個人の成長、自己開発に重きをおく行動様式、社風です。現象としては以下の10項目。

□1.量と質の選択に迫られた時、質を重視する。
□2.自分の成長に関心を持ち、目標を設定している。
□3.型にはまることに抵抗する。
□4.言動が自然である。
□5.とても簡単な仕事でも上手に仕上げる。
□6.考えをフランクな態度で話し合う。
□7.自分自身についてオープンである。
□8.自分の仕事を楽しむ。
□9.独創的で独立した考え方をする。
□10.個人的に首尾一貫性を保っている。

【自己実現文化の原因と構造】
社員、組織の構成員に対して、「自己規律」を求める社風です。自己規律とは、強い意志での自己コントロールと、自己目標に向かった精励です。

組織が、メンバーの自己実現を目標にして運営できるためには、それまでに訓練と学習が必要です。失敗すれば放縦(ほうじゅう)と甘えになる。組織全体(会社)の目的と、各部品(部署)や要素(個人)の働き(Work)の調和が必要になります。

▼3.人間性促進文化

チームメンバーや組織メンバーが互いに協力し助け合うことを大切にする行動様式、社風です。

□1.他人を助けることに関心を払う。
□2.決定を下す時に、その決定が影響を与えるひとでチームを組む。
□3.対立を建設的(Constructive:部分と全体の有機的調和)の方法で解決する。
□4.他人が成長し、能力が高くなって行くことを助ける。
□5.聞き上手である。
□6.他人に対して、肯定的な評価と報奨を与える。
□7.他人と時間を過ごす。
□8.他人を勇気づける。
□9.他人が、個人(自分自身)のことを考えるのを助力する。
□10.信頼を得るには、相手を尊重することだと考える。

【人間性促進文化の原因と構造】
性善説の人間観に基づく組織です。人間の本質が性善というのではない。性悪の部分を押さえ、性善のところを引出すことができるという人間観からきます。

ここで大切なところは、他人が成長し、能力が高くなって行くことを助けるということ。リーダシップでもっとも重要な条件ですね。リーダシップはチームメンバーへの自己主張ではない。自己主張は、積極的防衛の行動様式に属するものであって、自己の正当化です。

建設文化で一貫して重要なことは、全体目的と個の自発的な調和です。しかも、上(権力)からの統制から来る、恐怖の整列ではない。

4.提携文化

人と人との協力的な提携、お互いが成長できるWin-Winの関係、友好的な関係を築くことを重視する行動様式、社風です。現象としては以下の10項目。

□1.他人と協力する。
□2.他人と友好的に楽しく付き合う。
□3.グループの満足という観点から考える。
□4.他人に関して関心を示す。
□5.良好な人間関係を上手に保つ。
□6.人をモノよりも大切に扱う。
□7.感情や考え方を共有する。
□8.他人に対して、友好的に、動機付けを行う。
□9.オープンで温かい。
□10.機会の変化に対して機転が効き、応用ができる。

【提携文化の原因と構造】
他人の成功を助けるという人間性促進の文化が更に先にいくと、チームメンバー間に、または他の組織との関係に提携文化が生まれる。人を助けることができたとき、大きな喜びがある、これは誰もが経験している自然な感情ですね。

それぞれの項目は、人間にとって、こうありたいと思うような極めて自然なことです。仕事をする組織がここまで高まると、共生への途になる。しだいにコトバが日常用語に近づきます。つまり自然なのです。

やはり自然なものでないと、長続きはしないんだなぁってね。

以上は米国のいろんな会社のケース・スタディで発見されたものですが、建設文化の行動様式を示すコトバは、東洋哲学や儒教のコトバのようですね。

【『菜根譚』からの1節】
<人の短所は、うまくとりつくろってあげる必要がある。もしそれをあばき立てて見せると、これは自分の短所をもって人の短所を責めるものであって、とても改めさせることはできない。またがんこな点のあるひとは、うまく教えさとす必要がある。もしそれを怒って憎むとこれは、自分のがんこをもって人のがんこを一層つのらせるものであって、とても救うことはできない>

こうしたことが、「提携文化」の「5.チームの良好な人間関係を上手に保つ」こと、それに「8.他人に対して、友好的に動機付けを行」って目的とする方向へ導くコツでしょうね。普通は、逆のことをやる。

【融合】
飛躍しますが、直感では、20世紀の科学の方法であった分析的思考に、非科学とされてきた全体を見る東洋的な思考が加わり、21世紀は双方が融合するように思っています。西欧的思考のみでも、東洋思想のみでもダメ、両者の融合です。

米国人が説く「建設文化」の内容をみていくとその感を強くします。

日本の80年代末のバブルは、あちこちに採算の採れない豪華な建物を残しましたが、1990年代の米国は、リーダシップ論を筆頭に確かにホンモノを生み出したと思えますね。


実践の観点

以上、分類された8種の企業文化では、わが社の現状がどの文化に近いかを評価して、「反省」するためのフィルターになります。時間が切迫した危機状態にある時は、必要な行動様式は「積極的防衛文化」に近いものであるべきでしょう。「建設文化」では間に合わない。

(「反省」とは、失敗や成功の原因を実証的に究明して、同じ間違いを犯さないような原因対策を立てることです。)

しかし新しい価値を創る将来を目指す時は、創造を喚起(かんき)する「建設文化」が必要になる。積極的防衛文化では、創造はない。

リーダーたるものは、i)数年単位で、ii)その時点での外部・内部の情勢と、利用可能な経営資源の質と量を判断し、iii)この8種の企業文化から、最適なものをセレクトして行動様式にすることが必要でしょうね。しかし何を一貫させるかと決めたValueは変えないことです。

もっともダメなことは、わが社が、または部署がどの行動様式を暗黙のうちに大切な価値、行動様式としているかの判断に間違いがあって、結局は、その場その場の対処で進むことでしょう。こうしたことを、「闇雲」とは言いませんか?

自社の内部での評価や自己評価はとても間違う。客観的に観(み)ることです。

日本の大手・中小に限らず、多くの会社が陥っているのは、「消極的防衛文化」です。暗黙の固い秩序やルールがあって内部だけは平和かもしれないが、最も危険な企業文化であり行動様式であることになる。最近、大手の会社の至る所で起っている、「そんなことは知らなかった、おいそれは本当か」という社長が多い組織です。

企業文化の類型分けは、リーダシップでの改革への入り口

企業文化、言いかえれば組織の行動様式、大切にすべき価値を、あるべき方向へ引っ張って、新しく望ましいマネジメントとワークスタイルを作るのがリーダシップです。

企業文化の類型分けは、現状の組織の行動様式を客観的に理解し、知るための手段になる。
長期的にはダメになる組織・プロジェクトと、成功する組織・プロジェクトの類型(フォーマット)を知った後は、成功する組織・プロジェクトへ向かったリーダシップがある。

(雑感へ続く)

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2001年5月2日号:リーダシップをめぐって:その第5部

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執筆:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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