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公共部門の借金は合計で1080兆円もある 財政破綻のケースススタディ 日本再生のための最良の策とは? |
| ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 <<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>> 2001年7月18日(Vol.60):金融・経済・経営分野 <この国の不良債権問題の根底を解く(5)雑感> ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治 著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com 申込・解除・バックナンバー http://www.cool-knowledge.com こんにちは、吉田繁治です。部屋の空気を入れ換えるために窓を開けると、突然、熱い空気と、蝉の合唱が浸入します。毎年の繰り返しです。しかし、昨年の蝉は土に戻り、木々の枝葉も新世代に代わっている。自然は同じ外観を保つ。しかし昨年の自然と等しくはない。 自然の生物は「自然に」世代交替するという理由で、自然として続く。戦後56年も経った。ここ2年は、日本経済、企業の転換の時期になる。戦争を経ず転換が行われる稀有な時代に、我々は立ち会う。 不良債権シリーズの第5回(雑感)は、4回に書き切れなかった財投の問題、恐慌のイメージ、国家財政破綻の解消方法を考察します。とりわけ「熱い」夏、世界経済もじりじりと焼ける音が聞こえる。 <この国の不良債権問題の根底を解く(5)雑感> 【目次】 1.財投の問題 2.アルゼンチンの財政破綻と恐慌のケーススタディ 3.日本で起こるのかどうか・・・ 4.日本経済の2年 5.以上のまとめ 6.国有資産売却というベストの方法 ■1.財投の問題 ▼原理:収益還元価格の、単純な原理での整理が不良債権処理 転換をもたらす、たったひとつの原理がある。それが収益還元価格への着地です。投下された資本(マネー)が利を生む期待利益によって、企業の価値、資産価値を決めるという、収益還元価格原理です。 <収益還元価格=投資の現在価値=期待利益額÷期待金利率> 経営活動で生む(年間平均)利益が1億円、期待金利が5%なら、収益還元価格、つまり投資(または会社)の現在価値は<1億円÷0.05=20億円>です。これが、資本の原理。 90年代は資本の原理に添わないものが増えた。期待利益を生まない(赤字)、または赤字。しかし投資の負債は固定され、残っている。民間金融機関では、531兆円(2000年9月)の企業融資のうち、111兆円が問題ありの融資(金融庁発表)になった。 ▼政府部門の二つの予算 政府部門はどうか? 国債・地方債の合計666円がある。政府・自治体の予算の赤字補てんと公共投資、景気対策に使われた。この国債は、金融機関、保険会社、企業、個人、郵貯等が買っている。これはよく知られている。しかし、以下に示す国の第2の予算、財投はあまり知られていない。 政府の予算は、以下の2つです。 (1)50兆円の税収と、小泉内閣が30兆円に押さえると公約している国債発行、合計80兆円をもとにする一般会計。国会で審議を受ける。 (2)それに、郵貯、簡易保険、国民年金の積み立てを使う財政投融資(財投)。事実上、旧大蔵省理財局の独占による分配だった。 大蔵権力及び、族議員の権力の源泉になったものです。 財政投融資の内容を見ます。国の本当の借金の総額が1030兆円であることも明らかになる。財投は、話題になる割りには、全体が見えないので整理します。 「公益」と「社会資本の不足」を政策上の名目にして、国民の金融資産が使われ、行政セクターの権益のもとになっているのが財投です。 ▼財投の問題 【財投の資金源】 (1)郵便貯金 255兆円の全額 (2)国民年金積み立て分 140兆円の全額 (3)その他 48兆円 (4)簡易保険積み立て分112兆円から60兆円 (5)産業投資特別会計から 3兆円 (5)金融機関からの政府保証債 22兆円 合計 528兆円 データは財務省の↓『財政投融資リポート2000』より http://www.mof.go.jp/zaito/zaito2000.html 財務省が作った『財政投融資リポート2000』を読むと、財投がいかに有益に使われてきたかとの主張が見える。責められた弁明にしか聞こえない。興味ある人は、これを機会に読んでみて下さい。 全部で、528兆円(00年)の資金残高です。民間銀行の全融資の531兆円に匹敵。個人金融資産1385兆円(00年)のうち、(1)民間銀行を通じ企業に融資されている531兆円と、(2)旧大蔵省が裁量で運用していた528兆円がほぼ等しい。 財投は、大蔵省理財局が一手に握った聖域だった。 政府がこれほど多額の貯蓄の分配に関与する国は、自由世界にはない。日本の金融の<社会主義>部分と言っていい。資金の面では、資本主義社会のなかの、<社会主義セクター>が50%もある。その社会主義セクターが、利益を生まない。 その内容は、旧ソ連や中国の国営企業に類似している。 ▼この巨額資金528兆円は、どう使われてきたか? 【528兆円の使途(2000年):四捨五入のため計算誤差あり】 (1)国債の購入 115兆円 (2)財政投融資の合計 414兆円 国の特別会計へ繰り入れ ( 73兆円) 公庫、政府系金融機関 (145兆円) 公団・事業団への貸付 (110兆円) 地方自治体への貸付け ( 83兆円) 特殊会社等へ貸し付け ( 3兆円) 問題になっている特殊法人(全部で77の公庫・公団・政府系金融機関)、及び特殊法人の下の2万数千の公益法人(雇用100万人)への資金供給は、財投に含まれます。財投は、国家の第2予算といわれ、全体のバランスシートはない。特殊法人はそれぞれが個別法規で規定されている。全体はつかめない構造。 財投の大元である郵貯は、全国18800個所の、事実上は郵便局長(国家公務員)を世襲する<特定郵便局>の利権構造が絡む。 【財投=資金運用部残高の急増】 65年 5兆円 75年 50兆円 85年 170兆円 90年 400兆円 00年 414兆円 財投は、郵貯・簡易保険・国民年金の増加があったため、特に1985年から90年に急増した。時はバブル期、内需拡大の掛け声ともに、財投が際限なく肥大した。(↓の資金運用部残高) http://www.mof.go.jp/zaito/zaito97/p0809.htm ▼国の負債総額は、実際は1080兆円 国債・地方債の残高666兆円と、財投の414兆円を合計した1080兆円は、国が国民(個人と企業)から借りている累積借金と見ていい。 1080兆円は、民間銀行を通じて企業に融資されている総額531兆円の約1.9倍です。政府部門の巨大さがわかる。 国債・地方債として集計されるのは、666兆円のみです。実際はその1.5倍の1080兆円は、全部国債と見ても同じことです。 財投の中に、不良債権がいくらあるのか不明です。しかし推計はできる。民間金融機関の問題あり先債権が総融資の21%です。財投の問題あり債権は、これより少ないはずがない。 おそらく、総融資の30%、124兆円はあるでしょう。 国の負債総額が1080兆円。GDPの2倍。これは普通は、国家財政破綻と言います。 全体を、数字で集計してみると、改めて、1985年からの日本の金融は、「凄いこと」になってたことが分かる。 これが「実際の破綻」になるかのかどうか?ここが問題ですね。 その前に、一体国家財政破綻とは、どういったものか?イメージがつかめないでしょう。 それを見ることにします。「ハイパーインフレや恐慌が起こる」と言って、それ以上のことを判断停止している論があまりに多い。 2001年7月現在、世界では、アルゼンチンが国家財政破綻の状態です。国家の財政、(同じ意味ですが)その国の通貨が信用を失うと、実際にどういう現象が起こるのかが、アルゼンチンを見れば分かる。 ■2.アルゼンチンの財政破綻と恐慌のケーススタディ アルゼンチンは、2週間前の2001年7月10日の国債入札で、応札が激減し、暴落した。国債は、外人も参加する債権の自由売買マーケットです。ここで金利が決まる。 国債価格の暴落とは一体どういうことか、その原理を示します。(国債価格の暴落は、実は恐慌と同じ意味になるのです) ▼国債(及び債権)の、現在価値の計算方法について 【国債の5年後の、表面価値の計算】 100円額面の、表面利率10%の5年もの国債は、 (1)政府が毎年10%(10円)の利払いをし、 (2)5年後には100円を返済することを約束した債権(借金の証文)です。それが、100円で売れれば問題はない。 5年間での「期待受け取り額(利息+元本)」は以下の計算です。 10円×(1.1の4乗+1.1の3乗+1.1の2乗+1.1の1乗+1) +100円(元本償還)=10円×6.1+100円=161円 (1)ここで、マーケットの予想金利(=予想インフレ率+リスクプレミアム)が10%なら、 (2)市場は{5年間の福利(61円)+元本100円}=161円を期待し、この国債は100円で正常に売れます 【国債の現在価値の計算】 ところがマーケットが<予想するインフレ率が20%>で、<リスクプレミアムが10%>あると判断すればどうなるか? 予想インフレ率の上昇とは、通貨への信用が失われた状態です。 リスクプレミアムの上昇とは、国家財政信用が失われた状態。 この2つを理解してください。 期待金利は30%(=20%+10%)になる。そうなると、5年間の国債で受け取る元利合計の161円の「現在価値」は、 161円÷(1.3の5乗)=161÷3.7≒44円に下落します。 これは100円額面の国債が44円、あるいはそれ以下でしか売れないことを意味します。(国債の現在割引き価値) これが「国債価格の暴落」です。 国家財政を、国民と投資家が信用しなくなった結果です。 国債価格の暴落が、アルゼンチンで、7月10日に起こった。 (市中金利は、中央銀行の公定歩合で決まるのではなく、国債の売買市場で決まる。公定歩合は、それを追随するだけです) こうなると政府は資金調達ができず、職員の給料や、モノの購入の支払い、国債の利払いができなくなる。 これが国家の倒産、つまりデフォルト(支払い不能)です。 民間企業で言えば、銀行が融資を断った倒産状態と同じです。 【国債が売れなかった理由】 きっかけは、アルゼンチンの通貨(レアル)が、国際金融市場で暴落したことです。 つまり、最初に海外の投資家が、アルゼンチン政府が発行する通貨の価値を信用しなくなった。 理由は、政府の赤字と貿易の赤字が、「限度を超えて」大きかったからです。 (1)政府当局は、限度と思わなかったが、 (2)国債を買う金融マーケットは、アルゼンチン経済の現状(財政赤字、貿易赤字)から考えて、もう「限度を超えた」と判断した。 このように、根本では、政府が言うこと及び約束を、金融マーケットが信用しなくなった状態が、国家財政の破綻です。 金融マーケットが、政府の言うことを信じなくなれば、日本でも同じことが起こります。これが、恐慌の原因です。恐慌とは、信用の崩落です。 ▼これで、どういう結果が生じるか? 通貨と国債価格の暴落は、政府信用が失われた状態です。 それが起こると、以下のような、経済恐慌のプロセスをたどります。 【1.恐慌の発生プロセス】 (1)表面金利が暴騰する。金利が100%、200%を超えることもある。 (2)高金利で、負債の過剰な企業は、ほぼ全部が倒産する。 (3)株価は暴落し、企業活動、銀行活動が縮小し、物価は騰貴する。 (4)倒産で失業が増える。(アルゼンチンは16.4%:7月時点) 【2.恐慌の治療のプロセス】 (1)国際金融の安定に使命をもつIMF(国際通貨基金)が、アルゼンチンに緊急融資するが、条件として政府に緊縮財政を要求する。 (IMFの資金は、先進諸国の出資でまかなわれます) (2)アルゼンチン政府は緊縮経済を敷き政府予算を縮小する。 (3)さらに、失業と倒産が増える。 (4)通貨下落で輸入ができず、物資が不足する。 これは、以下までいくと収束します。 【3.恐慌の収束プロセス】 (1)国民が従来の生活水準を低下させ、 (2)実質賃金を低下させ、 (3)政府支出が、税収とバランスし、 (4)輸入が減り、貿易収支がバランスする「見込み」が出たところで、底を打つ。 (5)このプロセスで企業は世代交替し、次世代経済に向かう。 【1997年〜98年の経験】 アルゼンチンと同じことは、1997年〜98年に、タイの通貨危機が端緒で、マレーシア・インドネシア・韓国に波及、ロシアはデフォルトを起こした。 これはある日、誰かが市場の歪みに気がついて、突然に起こる。それが、信用(=通貨)崩落の怖いところです。ドルペッグ(=米ドルとの実質固定相場)を敷いていたタイの通貨崩落は、誰よりも速く歪みに気がついた<ヘッジファンド>が、バーツ売りで仕掛けた。 タイ中央銀行はバーツ買いで対抗したが、数日で手持ちドルが枯渇し、ヘッジファンドに利益を与え負けた。タイの富はヘッジファンドに移った。東南アジアでは、通貨崩落の連鎖が起こった。 ■3.日本で起こるのかどうか・・・ 日本で、国家財政と円の信用下落が起これば、世界第2の経済大国ですから、即日に世界恐慌になる。 <円−ドル−ユーロ>の世界経済は、金融の貸借の面で、深く相互依存。3つのうち、どれが崩れても、世界は瞬間にパニックになる。 諸国が、金融と貿易の相互依存、つまり100人101脚競争で脚を縛りあって走っていると想像したらいい。 このなかで45%の比重が、米国+日本です。 ▼円の信用恐慌が起こるかどうかの鍵 鍵は、1080兆円の実質負債を持つ日本国の財政を、 (1)国民と、(2)海外投資が信用し続けるかどうかです。 財政赤字と不良債権が、今後も増えるようなら、信用崩落につながる。国民の預金取り付け騒ぎも、起こる。 国際金融市場は、大幅な円安(円の下落)を予想し、円を売ります。当然、円の国債、株価も暴落する。 2001年7月現在、東証の50%の売買を行う外人組みは、円安なら日本株(円での計算)の保有では為替差損が生じるからです。 【不良債権処理の意味】 一方、国の総借金である1080兆円が減少に向かう兆し、つまり可能性が見えれば、国家財政の信用は、崩落しません。 しかし、それは通貨の増発を行わないことを意味しますから、国内経済は金融が締まって、デフレ基調が更に強くなる。これが不良債権処理です。2年〜3年間は、デフレ基調が更につよくなる。 【マネーの本質は発行者信用であり、恐慌とはその信用の下落】 民間と政府の不良債権処理と構造改革は、それなしで済ませる問題ではない。それを行わないと、今はまだ信用を保っている国家財政と円の信用が、低下する。 マネーの本質は信用です。紙幣が流通する理由は、それを発行する国家の信用があるからです。恐慌とは、その国家信用が、無くなった状態を言う。 ▼日本発の恐慌論に関して 経済ジャーナリストで日本発恐慌を唱えている人もいますね。 読むと、表面的な論述が多い。ここで、恐慌を考察します。 恐慌が起こるかどうかは、どこで判断できるか? 以下の3つです。 (1)政府の赤字で円が信用を失って、円売り(ドル買い、またはユーロ買い)が起こり激しい円安になる。 (2)国債が暴落し、市中金利が上昇し、マネーサプライが減って、銀行活動が縮小する。 (3)国民が、銀行・生保・年金を信用しなくなり、銀行から多額の預金引き出しを行い、生保を解約し、年金を払わなくなる。 以上の3項目のうちいずれかが起これば、恐慌になります。 一方、(1)円と、(2)国債と、(3)金融機関の信用が崩れなければ、恐慌は起こらない。 じゃ、恐慌が起こるとどうなるか? これを説明できる人も、意外に少ない。 【ハイパーインフレ型恐慌】 (1)円の増発で、紙幣(通貨)が、信用を失う。 (2)円を使った経済取引がスムーズにできなくなる。 (3)結果として、企業の生産活動、流通活動が縮小する。 (4)生産物の不足で、物価が騰貴する。 ※現在、トルコがこのハイパーインフレです。 【デフレ型恐慌】 (1)不良債権で銀行を通じたマネー供給に障害が起こり、信用乗数が低下、マネーサプライ(銀行融資の元本)が縮小する。 (2)市中で、商取引と投資のための円が不足する。 (3)円不足の結果として、生産活動、流通活動が縮小する。 (4)生産物は、過剰なものと不足なものが同居する。 (5)対策として中央銀行は円の増発を行い、その結果、通貨が信用を失い、今度は逆に、ハイパーインフレ型恐慌に向かう。 以上2つはいずれも、本来は正常に生産・販売を続けることができる企業を倒産させ、失業を数倍にする結果を生みます。 東南アジア、韓国で1997年に起こったことです。 日本の恐慌の可能性は、ゼロではない。政府と日銀が経済運営に失敗すれば、起こる。日本の恐慌は、インフレ型であれデフレ型であれ、今後、政府・日銀が経済運営に成功するか、失敗するかにかかっているのです。 政府及び日銀が信用を失うかどうか、ここが焦点。 信用を失う兆しが見えれば、国際金融はそれをチャンスと見て、円の過剰評価分の利ざや取りを狙った、円売りを仕掛けます。 それが前兆になる。 次に、日本経済で、この2年のキーになる指標はなにかを見ます。 ■4.日本経済の2年 指標のキーは、ドル、ユーロと比較した円価格です。 国際貿易の数百倍、1日数百兆円の取引がある為替の動きが一番速い。 ▼焦点の6項目 以下、日本経済を決めるキーとなる6項目を見ます。 【1.ユーロの通貨統一による不測の事態】 世界で、政府赤字に歯止めをかけているのは、ユーロ諸国です。ユーロの重心であるドイツ経済、そのブンデスバンク(ドイツ中央銀行)は、インフレを恐れる習性を持っています。しかし、2002年の正月は、統一通貨ユーロの発行が始まる。交換に遅れれば、以前の通貨が使えなくなる。各国通貨のユーロ交換を済まさねばならない。 この秋から冬は、ユーロ通貨統一で、不測の事態が起こる可能性をはらむ。現在のユーロ安、ドル高は、西欧諸国のアングラマネーが、表に出てドルを買っている結果です。 【2.米ドルは強い】 米国は、貿易は赤字ですが、政府は黒字です。つまり、ドルは、今は強い。ただし、経済ではIT・通信の過剰投資の調整期です。しかし、円・ユーロと比べた時は、総合力ではドルが一番強い。 【3.日本の不良債権処理と構造改革】 日本は、不良債権処理と財投を含め、聖域なき構造改革をやると世界に向かって、現状は「口だけで」公約している時点です。 現在、世界の金融市場は、 (1)短期的には日本のGDPが減っても、 (2)政府部門の拡大が止まることを期待しています。 日本政府の信用、つまり円の信用は、ここにかかっている。 【4.日銀の姿勢は?】 通貨当局は、今のところ、円の増発をやる兆しはありません。 日銀は金融で絞めたデフレ基調を続け、通貨増発を避けることで、構造改革を迫ろうとの姿勢です。 (『円の支配者』(リチャード・A・ヴェルナー)) 【5.円安のカウンターパワーを持つ】 日銀は、外貨準備を世界最大の$3627億(45兆円:01年6月)も持っている。過去からの貿易黒字とドル買いの蓄積です。企業が貿易で稼いだドルは、円と交換され、ドルを日銀がストックしている。 45兆円のドルは円売のときの、カウンターパワーです。アルゼンチンのような、貿易赤字で外貨蓄積のない国とは違う。その点、日本は強い。従って、アルゼンチンのような通貨崩落は、「すぐには」、起こらない。 【6.焦点になる具体策】 現在の焦点は、選挙後の日本の補正予算を含めた政府予算です。 現状は「変える、変わる」との叫びだけです。「骨太の改革」は、詳細に読んでも、方針を示す文言のレベルです。お金をつける予算で、不良債権処理と構造改革を、どう具体化できるかが焦点になる。 以上の6項目が、「穏やかに」推移するとの前提で言えば、日本の今後2年は、構造調整つまり、リストラ過程に入ります。 この過程は、経済面では、物価と土地下落のデフレ基調が更に強くなることを意味します。 ▼構造調整の2年〜3年 日本経済には、過剰雇用が20%、過剰設備が20%あります。 このうち10%分くらいの構造調整が進行した時点、つまり約500万人が一旦は失業し、転職に入るころが、日本経済は次の成長期になる。この過程は、3年はかかる。メドが立つのに2年。急げば、パニックが起こる。明確な「戦略」が必要な時期です。 1年間なら、最大で5%の失業または自主退職、250万人から300万人(25万社から30万社)の職業の移動、転職、企業再編が必要になる。リストラ過程は、時間あたり賃金は、数%は下落します。消費は弱くなり、小売、土木・建設、金融業の淘汰が起こる。 一方では下落する地価、建設費で、投資が起こる。 外資による日本企業買収が、増えます。 【外生要因】 その間、外生的な要因、つまり、 (1)中国と台湾問題の緊張激化、 (2)または中東危機の勃発が起こると円安要因になる。 円安は物価を上昇させます。 外生要因は、確定的な予測はできない。可能性はある。8月を注視すべきです。焦点は、米国のABM(迎撃弾道ミサイル)開発と資源、<中国−台湾>、<イスラエル−パレスチナ−イラク>です。 米国のABMは、核ミサイルを発射直後に迎撃し爆破することで無効にします。中国とソ連が反対で、7月にはプーチンと江沢民は同盟関係を強化しました。現代世界の安定の底には、核のバンラス、軍事バランスが厳然としてある。 <国際危機は、常に、ある集団が狙いをもって、人工的に作る>ことを、記憶しておいて下さい。 ■5.以上のまとめ ここで、まとめを行います。 (1)不良債権処理の対象は、 ・民間銀行の531兆円の融資のうちの問題あり債権111兆円、 ・および政府部門の財投の残高414兆円のうちの推計124兆円の両方がある。 (2)国家の負債総額としては、国債・地方債666兆円と、財投414兆円で、合計1080兆円を見なければならない。これは、個人金融資産1385兆円の78%である。 わが国の金融は、90年代で、意図せざる社会主義金融に向かった。 重要なことは、総額1080兆円の返済(これは不可能)ではなく、この総額が、わずかでも減少するという方向へ向かうことです。 日本経済の再生は、この一点にかかっていると言える。 1080兆円が今後も増加する基調が続くと、国家財政破綻と恐慌の恐れが近づく。毎年、毎期、信用恐慌の危機と隣り合わせになる。 (3)日本の国家財政が、国民または世界からの信用を失うかどうか、ここが、ハイパーインフレや恐慌に至るかどうかの岐路です。 (4)恐慌が起これば、企業の正常な部分にまで破綻が及ぶ。 絶え難い苦しみの後は、経済の世代交替で、新たな成長期になる。 (※恐慌とは経済の暴力的な新陳代謝機能です) (5)現代経済も、恐慌と無縁ではない。アルゼンチン、トルコで進行中である。東南アジア諸国と韓国では、97年〜98年だった。 (6)不良債権処理と構造改革がうまく行き、政府の総負債が減少する方向へ向かうと、ここ2年は、デフレの深化になる。 2004年頃から、国内資金循環が回復し、新たな成長期に入る。インフレ含みになる可能性が高い。現状では、このシナリオの確率が一番高い。現在は資金循環の信用乗数の毀損、流動性の罠がある。 ここで、空白の時代と言われた1990年代に、一体なにが起こったのか、そこを見ます。 ▼日本経済の3つの顔(重要) 日本経済は、3つの部門(セクター)を持ちます。日本経済と言ったとき、3つのうちどのセクターを想定しているのか、はっきりさせれば、議論の混乱がなくなる。 (A部門)輸出産業の、高生産性部門、ソニーやトヨタが代表。 $1=100円以下でも競争できる最強部門です。 (B部門)金融・保険・建設・土木・流通・サービス業の、規制産業の低生産性部門。$1=200円でしか競争できない弱体部門。 (C部門)政府・地方自治体を通じる、政府事業と公共投資の社会主義部門。ここには生産性、採算、利益の概念がない。 90年代を一言でまとめれば、 (1)規制部門であるB部門の生産性の停滞があり、 (2)C部門の政府を通じる部門と、社会主義金融、社会主義経済部分、公共投資の肥大です。 90年代は資本主義社会のなかの、社会主義金セクターが肥大してきた。 だから、成長がなかった。 B部門、C部門の構造改革がないと、日本は衰微することが必定。 社会主義セクターは、予算はあるが、採算と利益の概念が欠如した経済です。公共投資は、公益、公平な受益の観点で行われるが、採算と利益の概念がない。ソ連・中国の国営企業の行動と類似しています。 ▼これで真の構造改革が導かれた ここまでくると「真の構造改革」とはなにか?が端的に分かる。 (1)巨大化し、赤字を流すCの政府部門=社会主義セクターをカットして、資本主義に戻すこと、 (2)及び、B部門の規制を撤廃し、競争によって鍛えること。 もし、それができなければどうなるか? 以下の4つが、必然になる。 (1)大増税か、またはインフレ、あるいはその両方。 (2)結果はマネーを政府部門に食われ、資本主義部分が衰退する。 (3)株価の下落と、企業破綻の増加で、多くの資本が、アングロ・サクソンの支配下に入る。 (4)その過程では、恐慌が起こる。 以下では、国家の債務を減らし、同時に、日本経済を再生させるためのベストと思われる策を想定します。 国家(社会主義セクター)の1080兆円の債務を減らすには、3つの方策しかない。選択肢の3項目。 (1)インフレ(結果は、国民の平均的生活は貧しくなる) (2)増税(結果は、国民の生活は貧しくなる) (3)国有資産の証券化による売却(ベストの方法) ■6.国有資産売却というベストの方法 「日本経済と社会の再生」のために、最もいい方法は、国有資産、地方自治体、特殊法人の資産を、時価で国民に売却することです。 (特殊法人、公益法人の民営化も、実際は、社債または株の発行による民間売却です) 「聖域なき構造改革」なら、周辺からでなくまず聖域を攻める。 ▼東京大学の不動産証券化 特殊法人だけではなく、教育の象徴、「東京大学」も社債と株を発行し、民間に売却して民営化を行う。明治時代とは違い、国家行政のためのキャリア官僚養成大学はもう要らない。東大の民営化を図ると、他の大学はもちろん、官僚意識の根底が変わって行きます。 有効な授業ができる教師を民間と世界から集め、教育の中味の改革をおこなう。東大を変えれば、他の国公立・私立大学も、お得意の横並びで変わる。そして教育全般が変わる。改革は周辺からではダメです。本丸を最初にやる。そうすると後は自動的。改革のコツは、本丸を変えて改革を自動化させること。 教育改革でベストの方法です。教育は国家の礎です。高等教育で(旧)文部省補助は不要。民間から基金を集める。基金が集まらない機関は、有効でない。少子化で、高等教育機関は、ビジネス教育・職業教育・技術教育へ転じないと3割は倒産することが決まっています。 ▼都庁等の不動産証券化 バベルの塔の東京都庁(自治体)、全国の県庁・市庁も不動産証券を発行し、テナント料を取って自治体に貸す。家賃が払えなければ、職員が使う面積を減らせばいい。そうすれば職員は減る。同時に、お役人の意識、統治意識を変えるきっかけになる。 (官僚の腐敗は、こうした根本的治療をしないと、直らない) ▼国会議事堂と霞ヶ関の証券化 国会議事堂、霞ヶ関の全官庁も不動産証券化がいい。 高い土地が、いかに経済の非効率、コスト高、物価高をもたらしているか、財務省も身をもって分かる。 国会議事堂を不動産証券化すれば、行政のすべてが激変します。小泉構造改革が本気ならやるべきです。国家財政が正常に戻れば、国が不動産証券を時価で買い戻せばいい。簡単なことです。本丸から手をつけること、これが要諦。そうすれば、必要な郵貯の民営化まで、相対的にとても易しいことになる。明治の江戸城明け渡しですね(笑) (※カルロス・ゴーンの日産も、建て直しの「当然の策」として本社ビルを証券化して売却し、日産本社は、家賃を払います) 以上の策は、行政も国民も、誰も損をしない。資産を、収益還元法の一口10万円額面、利回り5%の不動産証券で売り買いするだけです。あなたも国会議事堂、財務省、経済産業省、外務省、東大の部分所有者、いいですね(笑)誰も持ちたくはないか・・・そうなると魅力が出る価格まで、安くなる。 国家財政を破綻させた責任は、国民への責任転嫁の<増税やインフレ>でなく、国有資産の売却で取るべきです。国民に有効なものなら高く売れる。社債も発行できる。そうでないものは、値段が安くなる。ここで、自動選別と淘汰が行われる。 官僚が、国民と同じコスト意識、採算意識を持つためには、すべて一等地の彼らのビルを証券化して売り、運営会社が家賃をとることです。 国家財政の再生の方法はある。国民経済のなかの、採算を無視してきた社会主義セクター(国家・自治体・特殊法人・公益法人)を、証券化することです。 ▼『国有財産の半分を売却せよ(Voice:01年8月号:加藤寛)』 以上は、私の意見だけではない。ニュアンスは違いますが、同じことを言っているのは加藤寛(千葉商科大学学長)です。竹中経済相を、小泉首相に推薦したのが加藤寛。長年、税制審議会の会長でもありました。 加藤氏が言う証券化での売却候補は、道路公団、成田、関空、年金福祉事業団の厚生年金会館、グリーンピア・・・・周辺ですね。 私の意見は、本丸からやれば構造改革が自動化する・・・です。 国有資産の簿価91兆円の中の、約半分の簿価40兆円分の証券化で、その5倍の200兆円の売却収入が見積もられるのです。 企業が倒産に瀕したとき行うのは資産売却。国家も同じです。そこまでの戦略を立てる必要があるくらい国家財政は悪化している。世論、政治家のリーダシップ、明確な戦略の3要素が必要です。 (第5部:雑感終わり) 【アンケート項目】 (1)内容は、興味が持てるか持てないか? (2)内容は、理解が進んだか? (3)疑問点は? (4)ご意見は?・・・等ご自由に、<ひとことメール>で (1)著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 (2)クールナレッジ掲示板(BBS)で投稿 http://cgi.members.interq.or.jp/venus/yoshida/BBS/light.cgi (3)WEBで、他の考察を体系的に http://www.cool-knowledge.com 送ったマガジンを含め、後日、修正と付加の説明を加え掲載 |
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