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東大法学部キャリア官僚の意識構造 霞ヶ関の住人の意識構造を明らかにする |
※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 <<あなたと、チームの、知識とスキルのブラッシュアップを>> 2001年7月30日(Vol.61):経営分野(共同体組織論) <共同体組織の二重規範(1): 東大法学部キャリア官僚の意識構造> ビジネス知識源:良質な経営・IT・ビジネス知識の提供を目標に Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治 著者へのひとことメール⇒ yoshida@cool-knowledge.com 申込・解除・バックナンバー http://www.cool-knowledge.com こんにちは、吉田繁治です。熱帯が引っ越したような暑さです。いや熱帯より暑い。赤道直下のシンガポールですらこんなには暑くない。 先日は北海道でした。帯広は肌寒くなるような気温。オフィスに冷房は要らず、窓を開ければ冷気で、水道の水の冷たさは、まるで別世界。e-Market Placeの企画打ち合わせでした。 帯広を訪れ、小さな空港から約1時間の、市街に向かう車から十勝平野の景色を見る度に、あぁ、ここはカリフォルニアのカントリーに似ていると感じます。1平米が1万〜2万円で買える土地がふんだんに残っている。 北海道は公共事業、第3セクター事業、リゾート開発が盛んだったところです。バブル投資と、公共投資の立派な残骸が、至るところにある。 1997年の北海道拓殖銀行の破綻もあって、この地では、官と民の採算を無視した投資を<収益還元法>で清算するプロセスが進行しています。 固定資産税と設備の維持費用が、見込み収入を上回る設備は、投資が1000億円でも価値はゼロ、あるいはそれ以下になる。アルファ・トマムは、固定資産税が払えず、買い手がなく町の運営になった。 閑散としたリゾート設備、採算概念の欠落した公共投資や道路を見る毎に、こうしたものは、一体どういう<頭の構造、意識構造になると作れるのか?>と嘆息します。 <東大法学部のキャリア官僚の意識構造を解いてもらえませんか>との提案を受けたのです。このテーマは若干危険ですが、いい機会です。やりましょう。色々と・・・想うところがある。 <共同体組織の二重規範: 東大法学部キャリア官僚の意識構造(1)> 【目次】 1.テーマの趣旨 2.旧大蔵省の実質権力をめぐって 3.共同体の2重規範(double norm)の原理 4.国家総動員法の遺産 5.クローニー・キャピタリズムの残骸 ■1.テーマの趣旨 <共同体組織の二重規範:東大法学部キャリア官僚の意識構造>をとり上げます。この国の、公的組織と意識の分析です。 ▼ソ連的な国営企業群が増えた 政府予算、地方交付税、地方自治体、財投、77の特殊法人、26000もある公益法人に、キャリア官僚が絡んでいます。ソ連的なノーメンクラツーラ(特権階級)の「国営企業」と呼べば、その性格を端的にあらわせる。 マスコミを通じて明らかになるのは、天下りや不正・腐敗の、スケープゴート的に表面化したごく一部の事件です。 今は、外務省の機密費の不正詐取、昨年7月の沖縄サミットの時のタクシー代詐欺(いずれもノンキャリア)、デンバー総領事(キャリア)の横領が話題になっていますね。 ▼繰り返される、人の噂も75日 特に、90年代後期から、大蔵省、農水省、厚生省、警察等・・・枚挙に暇がないくらいの官僚の腐敗・不正が露呈した。 氷山の一角と言われながら、毎度、約2ヶ月間マスコミが騒ぎ、国民も飽きて、根幹の制度は変わらず、収束する。 個々の事件の、不正の構造を精査することで、高級官僚の行動様式は見えます。 しかし、私のアプローチは、その方法ではない。 根幹的な<共同体組織の2重規範>を明らかにしたいのです。 【共同体組織の二重規範】 「二重規範」は、徐々に明らかにしますが、簡単に言えば、 (1)組織の不文律である内部規範が、 (2)外部規範(つまり法・正義・倫理)に優先するという共同体組織の本質的な性格です。 ※不文律ですから、状況証拠での推論によるしかない。私の推論が間違えていれば、この国のためには幸いです。こんなことまで書くのは危険かな、と思われるところまで踏み込むつもりです・・・ ▼民間企業と公的セクターのチェック機構の違い 二重規範は共同体に共通の性格ですから、民間企業、官僚組織を問わない。 しかし民間の企業組織では、そこで使われるマネーは、顧客の意志での購買を源泉にするものですから、最終チェックが働く構造がある。 官僚組織は、強制力で徴収することができる税を元にする。この国で、税と税収の不足を補う国債を元にする一般予算、特殊会計、財投の合計が縮小したことはない。 公的セクターは、年々肥大した。根幹の情報は公開されない。チェック機構は、個別案件の処理の不適切さを指摘する内部監査や、会計検査院以外は無きに等しかった。不正が発覚した時、ある期間、マスコミが騒ぐだけだった。国民のモニターはなかった。 ▼予算拡大を正当化する4つのイデオロギー 現在の政府予算拡大の際の、イデオロギー(政治的な名目)は4つにまとめることができますね。 (1)高齢化社会に必要な「福祉」→福祉予算の拡大 (2)国土の「均衡」ある発展→公共投資・公的事業の拡大 (3)ケインズ的不況対策→公共投資・公的事業の拡大 (4)ITを含む社会資本が欧米に遅れている→公的事業の拡大 以上の4項目のイデオロギーを強化をするために、米国高官の発言、またはシンクタンクを利用したガイアツを使うこともある。 この国では、ガイアツがあると世論は判断停止を行うからです。 ガイアツは、米国からの要求のように見えます。実態では、事前工作があることが多い。官僚や政治家の発案を、米国人脈を通じ米国に言わせる。ガイアツには、マスコミも世論も弱い。 <4つのイデオロギー+ガイアツ>に、組織の共同体構造が加わり、以下のような結果が生じた。 【公的セクターの借金1080兆円】 前回の<不良債券問題の根底を解く:5部構成>で明らかにしたように、 (1)国債・地方債合計666兆円、郵貯・簡保・年金を主財源とする財政投融資残高が414兆円、合計で1080兆円(00年)、 (2)この公的セクターの借金は、民間銀行を通じる513兆円の企業融資の1.9倍にもなる。 (3)公的セクターの不良債権は、30%から40%はあると言われる。民間銀行が20%ですからうなづける推定です。 www.cool-knowledge.com/0727Furyousaiken-mondai(5).html なぜこうした「国営企業の構造」ができあがったのか、それを解きます。日本経済が、今後発展するかどうかは、支えきれないくらいまで肥大した国営企業セクターを、縮小に向かわせることができるかどうかが分岐点です。 公的セクターが肥大する方向へ向かえば、悲惨になる。 インフレと増税での、生活水準の切り下げです。 消費税30%で、物価は上がる生活を想像してください。 数年後の、この可能性は、実はとても高いのです。 不良債権処理と、財政再建を行うことは、 (1)国有資産の半分くらい(半分で簿価40兆円:時価200兆円)の証券化による売却を行わない限り、 (2)増税とインフレしか選択肢はない。 ■2.旧大蔵省(財務省)の実質権力をめぐって 以下では、官の頂点にある旧大蔵省をとりあげ、行政権力の根を見ます。行政権の枠を決めるのは法です。法は国会が決める。国会議員は国民が、代議員制度で選ぶ。 国民主権で国民の権力が至高だというのは、形式論です。実体論では、国民は統治される者であり、中央官庁が統治者であると言っても過言ではなかった。 ▼国家公務員試験第1種とは何を試験するのか キャリア官僚を選ぶ国家公務員試験第1種(上級公務員試験)には、昨年 38,841名が受験し、合格は1,228名。32倍の狭き門です。(試験は、隋・唐時代の、官僚選抜の科挙の伝統を引く感じです) 約半数くらいは東大で、国公立、私立が続きます。毎年1200〜1500名くらいのキャリア官僚が生産され、現在5万人が在庫されていると見ていいでしょうか。 合格者の一次試験、二次試験の順位で、省庁への順列的な割り振りが決まります。各省庁は、競い合って成績上位者の確保を運動します。なぜでしょうか? ここに官僚が生産する「商品」の特殊性が関係しているのです。 ▼官僚の作業能力と商品 1回のペーパーテストの成績が、能力やその後の仕事の成果と、どう相関するか?民間企業では、ほとんど無関係というのが結論でしょう。 企業が販売するのは「商品」であって、文書作成や言語能力ではないからです。 【官僚の商品とは?】 官僚の作業能力、そして行政権力のもとになるのは、文書作成と法の解釈能力、及び利害の調整能力です。それ以外に、商品はない。 官僚の仕事では、 (1)論理付けを含めた「言語能力」、 (2)関係者の「調整能力」が必要であり、 (3)彼らが「生産する商品は文書」である、と言っていいのです。 (1)マスコミや野党から突かれる隙のない論理で武装した文書を作って、 (2)政治的な権力者、関係者、関係省庁に配布し、 (3)説得的に説明し、調整するのが官僚の仕事であり商品です。 【上級公務員試験と入省年次】 ペーパーテストの上位者は、言語能力に優れていることが多い。 それで、公務員試験ではペーパーテストを重視するのです。 上級公務員試験の成績順位と、入省年次がその後付きまとい、事務次官候補のエース組みが選ばれ、将来のポジションの序列を決めます。その意味での「実力主義」です。次官競争での落伍者は、天下る。 成績トップクラスの入省先は、大蔵省です。大蔵省のみは官僚の中の官僚で、特殊ポジション。 言語能力の優秀さで政治家と他の省庁を説得し、切れる頭脳で他を圧倒しなければならない。 (01年1月6日から、省庁再編で財務省になり、金融部分が金融庁に切り離されました。実態はさほど変わっていない。以下ではあえて大蔵省という、伝統的名称を使います) ▼大蔵の実質権力 なぜ、大蔵省がこの国で特殊ポジションであったか、理由があります。 (1)80兆円の省庁の予算編成、配分権を持つ。(主計局) (2)国債の発行権を持つ。(主計局) (3)残高414兆円の財投の配分権を持つ。(理財局) (4)民間金融機関の認許可、指導権を持つ。(銀行・証券・保険局) (5)税を決め、徴収する権限を持つ。(主税局・国税庁) 以上5つで、国家のマネーの出入りの急所、及び民間銀行マネーの急所を、押さえていたのが大蔵省です。 他の省庁は、大蔵省に対して、一段低い予算申請団体の位置です。 信じられない位の、権限の集中です。 大蔵省の官僚は国税庁を含めると8万人。1%の800名がキャリア官僚。どの省庁でもノンキャリアは、1%のキャリア官僚の支配下にある。画然とした、不文律の身分制度がある。 公式的には三権分立で、行政は法の執行であり、法と制度を決めるのは立法(国会)です。 ところが立法の実務、つまりほとんどの「法案、予算案の作成」は、各省庁のキャリアが行い、自民党の実力者との調整で決めますから、実質権力と言えるのです。 【予算委員会という場の機能】 最も重要な「予算委員会」で、予算の中味の審議が行われますか?そこで、予算が変わりますか? 決まったことを通す、形骸化した儀式です。テレビ中継を見れば分かりますね。 質疑の内容は、マスコミが取り上げた問題や、大臣、首相の発言の追求です。予算配分の調整が問題になった審議は、見たことがない。国会の各委員会は根回し、調整が終った後に、野党の顔を立て、国民とマスコミへに対するガス抜きの場になっている。 野党が机を叩いて、口汚く叱責し正義の味方を演じる。 首相と大臣は、その罵詈雑言に耐え、言い逃れをする。 ▼ここで蛇足的な逸話:民間銀行に対する恐怖型支配 ある銀行の支店に大蔵検査が入った。検査官に混じって1人、入省2〜3年くらいのキャリア組みがいた。銀行にとって、大蔵検査は鬼より怖い。次長が応対した。新米キャリア官僚が、銀行業務のイロハも知らないような質問をした。 次長は「これはどこの銀行でも同じでして・・・」と説明した。キャリア官僚は、「他行のことを聞いているのではない。この処理の説明をせよ」と、怒り始めた。無知をさらしたことを恥に感じたためです。そのキャリアは、怒りで手を震わせていたという。 次長は、思わず「こわっぱ役人が・・・」と小声でつぶやいた。それが聞こえたのか、後日、銀行に、「貴行の**支店で不穏当な発言があった」と伝えられた。その次長は、数日後に銀行を退職した。 これに類する逸話は、多数です。当然、公式には明らかにならない部分です。法に基づかない、恐怖権力です。大蔵省の銀行支配には、恐怖権力が根にあった。 省庁にタテをつくと、他の認許可や検査、指導のどこで仕返しされるか分からない。これが、民間企業が行政へ恭順を示す理由になっている。法や税法は、字義通りの執行を行えば、企業を潰すことくらいはできるからです。生殺与奪の権がある。 私の狭い経験からも、十分に首肯できる話です。 (ソースは明かせません) ▼銀行の3分類 銀行の頭取と頭取含みの役員は、大蔵省系、日銀系、独立系に分けることができます。独立系に対する大蔵検査は、厳しくなる。(現在は金融庁) 大蔵権限の根は、銀行が破綻した時、国家が国民の預金を保証することです。つまり銀行は、民間企業として実態的には独立した法人ではない。真の株主は、大蔵省でした。 民間銀行が天下りを受け入れるのは、行政指導と認許可で有利な取り計らいを受けること、行政のインサイダー情報の、取得のためです。 銀行は、箸の上げ下げに至るまで監視されていた。 大蔵権力に90年代後期から陰りが見えたのは、大蔵省が銀行の不良債権問題の深刻さ、巨額さを見誤ったことに起因します。 1997年の第一次金融危機が起こるまで、大蔵省は不良債権の寡少見積もりをしていた。対策が後手に回り、銀行の信頼と民間の信頼を同時に失ったのです。 ▼しかし今後の政策の、裏の意味を「憶測」すれば 【ペイオフの裏】 2003年4月から開始される「ペイオフ」も、大和銀行NY支店の米国債ディーリングの巨額損失隠し事件が表面化した1995年から、事毎に、大蔵省に反発してきた銀行への、意趣返しといった面を含んでいると感じますね。 【95年の大和銀行NY支店事件】 大蔵省(西村銀行局長)は、大和銀行に<損失隠し>を指示していたことは明らかになっています。しかし、米国SECに叩かれると、大和銀行が勝手にやったと押しつけた。行政のこうした時の指示は、口頭です。 この事件を契機に、銀行と大蔵省の関係にヒビが入った。 大和銀行NY支店の損失隠しは、象徴的な事件でした。 【ここまで言うと、危険でしょうか・・・】 2002年4月からのペイオフの実施では弱体銀行に預金引き出しが起こり、日銀特融、または政府資金投入、合併が必要になり、再度、世論とマスコミをバックアップに官の権力拡大をする機会を狙っているように思えるのです。 信用金庫や地銀では、すでに、預金減少が現実に起こっています。 米国の銀行でも、事実上のペイオフは金融システムの混乱の害が大きいので実施していない。米国情報は、選択的に利用されます。 【不良債権問題の早期解決】 小泉内閣が掲げる不良債権の処理も、銀行の自己資本と利益での処理では不足することは、誰が見ても分かる。 金融のシステミック・リスクを避ける手段は、政府資金注入になる。分かり切ったことですね。 政府資金注入は、金融庁、大蔵省、日銀の権益、天下り先の拡大です。国民の金融資産を守るために「やむを得ず」そうせざるを得ないというふうになるのが、一番望ましい。 こうして、時代、時代の世論、マスコミ論調、学説を使い、予算をつけ権益の拡大を行うのが、省庁の自己肥大の基本手法です。 以上は「憶測」です。しかし憶測しか方法はない。 誰も、言わないからです。 世の中の事象は、実は、語られないことに重要なことがある。 ペイオフの後、不良債権処理の後、銀行の支配がどうなるかを詳細に見れば、憶測が正しいかどうかわかるでしょう。観察して下さい。 キャリア官僚の最終的な狙いを判断する時は、「推理小説の手法」が、役に立ちます。 「この政策と予算で、誰が、またはどのグループが最終的なゲインを得るか」との方法です。 現在の行政で生きている4つのイデオロギーを示します。 (1)高齢化社会に必要な「福祉」→福祉予算の拡大(極めて強い) (2)国土の「均衡」ある発展→公共投資・公的事業の拡大(弱い) (3)不況対策→公共投資・公的事業の拡大(極めて強い) (4)社会資本が欧米に遅れている(強い) 小泉構造改革では、以下のイデオロギーが加わります。 (1)金融のシステミック・リスク対策 (2)77の特殊法人、26000の公益法人の順次民営化 (3)地方分権 (4)失業者のセフティ・ネットと職業教育 (5)郵政三事業の、公社化から民営化 (6)年金への401K導入 (7)証券市場での直接金融制度 これで、予算が動きます。具体策の起案は、官僚が行います。その時、世論・マスコミ・ガイアツをバックアップにした新たな公的セクターの、認許可、指導のための組織ができる可能性が高い。 現在、公的セクターでも就業人口が多い50代前半の世代の、今後の行き先が問題になっているのです。 ▼組織拡大の技術者たち (一部:30%)キャリア官僚は、組織拡大の戦略的技術者であると認識したほうがいい感じですね。 構造改革の合唱に乗り、構造改革での組織拡大が想定される。 今後3年間で、77の特殊法人、及び2万6000の公益法人から選択して民営化される<骨太の方針>は決まっています。 2000年12月、森内閣の閣議決定で、民間への天下りが解禁されたのはご存知ですか?今後は、大臣が許可すれば、民間企業へ公然と天下りができるようになっている。 民営化された特殊法人、公益法人のトップに天下るための決定でしょう。有力議員が官僚に恩を売って、利権の範囲にあった特殊法人、公益法人の民営化をおこなうために、官僚との綱引きで政治的取引をした結果と言われていますね。 加えて、今省庁が狙っているのは、官の文書のデジタル化予算です。膨大な官の文書、図面のデジタルデータ化で、30兆円が見こまれている。当然そこには、民間会社の受注活動が絡みます。週刊ポストの「覆面座談会」で、キャリア官僚自身が発言している。<電子政府>の情報化予算を無駄だと言う人は、まだいない。 民間会社なら、組織と利権拡大は、英雄的な行動です。 官であることが問題ですね。官が食うのは<税>ですから。 なぜ、こうした行動様式があるのか?その原因を探ります。 ■3.共同体の2重規範(double norm)の原理 「共同体になった組織の2重規範」は、社会学の創始者マックス・ヴェーバーが解明した。 組織は「機能組織」と「共同体組織」に分類できる。 ・機能組織は、その組織を超える、より上位の目的を持つ。 ・共同体組織は、その組織を拡大することが目的になる。 ▼共同体の利益原理 共同体組織では、 (1)内部での行動様式(Value)と、 (2)外部へ向かった行動様式の2つのスタンダードを持ち、 (3)両方が矛盾する時は、内部の行動様式を優先するという原理です。 【官僚組織における省益優先原則】 官僚組織では、一般に、省益と国益が矛盾する時、省益を優先する行動様式をとられることが多い。 理由は、省が、官僚にとって生活を保証する共同体だからです。省益を離れて国益への奉仕をしても自分の生活の将来保証はない。 国益と省益が相反する時は、省益を優先することが多い。 この行動が省庁内部では、英雄的なものになる。 以上が、日本の省庁・行政組織・地方自治体・特殊法人・公益法人という公的セクターの、基本になる「二重規範の行動様式」です。 【民間企業も共同体ではあるが】 民間企業も、共同体です。 しかし民間企業体は、市場によってテストを受ける。 顧客にとって価値ある商品を生まない組織は、市場から排除される。従って、企業は、共同体であっても、顧客第1、顧客主権を掲げざるを得ない。顧客が企業を選別する。 ▼省庁の本来は、国益のための機能組織 公的組織も、本来は「国益=国民の全体利益への公僕」という各省庁を超える上位目的へ向かった機能組織でなければならない。 ところが、この機能組織が、省庁単位の二重規範をもつ「共同体」になって、 (1)省益第1優先、 (2)国益(=国民の利益)は2番、になっているところが見える。 これが、公共投資で政府部門の「不良債権」を生んだ原因です。日本に限らず、米国を含む各国の事例でも、福祉部門、公共投資部門は権益の巣窟になる。途上国では、激しく露骨な不正がある。 官僚が、国益、国民の利益に反したとの意識を感じているかと言うと、普通はそうではない。組織の価値観では、国益と省益が矛盾する時は省益を優先することが、二重規範での正しい決定だからです。 しかし、その時々の政策は、世論と政治家の決定を反映する必要がある。世論を反映させつつ、いかに組織を拡大するか、これが設計の高度技術です。世論を味方につけないと、実施はできない。 歴史上、国家組織が潰れるのは、官僚組織が肥大を目的にする共同体になり、省益の拡張と内部腐敗で、国民の利益を食った結果です。 大蔵省を頂点とする行政の実質権限が、民間セクターを広く蔽うようになったのには、歴史的な背景があります。根源は、太平洋戦争に向かう63年前の1938年4月の、「国家総動員法」です。 ■4.国家総動員法の遺産 官の実質権力の根源を探ると、1938年の<国家総動員法>に行き着きます。戦争の物資調達目的で、産業と国民生活のすべての領域を、行政組織が支配した。このとき官僚権力は頂点に達したのです。 戦後は、マッカーサーのGHQで過去の制度が一層され、<民主改革>が行われたように見える。歴史教科書は、そう教える。 しかしGHQの政策の本質は、米軍の強制権力による占領政策です。 GHQの方法は、以下の内容でした。 (1)日本の占領のために、強固な官僚組織は利用した。 (2)日本の共産化を防ぐために、経済を発展させる。 官の権力は、法の裏づけを無くしながらも、実質権力として続いた。戦後の日本経済復興では、<国家総動員法>の方法が生き続けたと言えるのです。 ▼国家総動員法 <この法律では統制の具体的内容は何一つ明らかにされていない。細目はその後に定める「省令」等に委ねるという一般法で、政府は好きなようにふるまえる権限を与えられた。(『円の支配者』リチャード・A・ヴェルナー)> 【官僚の万能化】 行政は、法を作らずとも、省庁が発布する<省令>によってなんでもできるというのが国家総動員法です。支配者(=主権者)は軍を含む行政であり、企業や国民は、行政に統治される被支配者になった。 【戦前の資本主義セクターの消滅のプロセス】 ここで、戦前の民間資本主義のセクターが、事実上消滅します。 資本主義は、株主が会社の支配者として所有権を持ち、会社に利益配当を要求できる制度です。しかし国家総動員法に続く「軍需会社法(1943年)」で、企業経営での株主の権限は消え、行政官僚(企画担当官僚)が、会社に生産計画を命令できることになった。 【戦後も「事実上」これが継承されている】 戦後には、この法は廃止されています。ところが、マッカーサーの米国占領軍(GHQ)は、日本支配の手段として、行政権力を温存したのです。 【戦後の高度経済成長】 戦後の経済復興は、以下によって果たされました。 (1)本源的な資本としての国民の貯蓄を奨励する。 (2)資本を、「傾斜産業方式」で重点産業に集める大蔵省は、「護送船団方式」で、銀行を支配する。 (3)通産省は、輸出重点産業を育成する。 (4)各業界には「業界団体」を配置し、行政との窓口とする。 (5)米国は、日本の共産主義化を防ぐため、経済を発展させる目的で、日本の輸出を振興し、輸出を受け入れる。 【遺産:法の作り方と行政権力】 国家総動員法の遺産である支配の方式は、現在の、経済や税関連の法を作るときも、その手法が生きていると感じます。 (1)経済、税、特殊法人関係の法は、できる限り細部に解釈の余地を残す「一般法」的な表現に留め、国会審議を通す。 (2)「具体的な定め」は省令や行政指導を使い、行政の「裁量」が効くようにする。 (3)裁量を働かせる部分で、共同体の二重規範原理による公的セクターの自己肥大がある。 私も以前、<省令>が掲載される『官報』を取って読んでいました。あぁ、これが行政手法か、と感じたのです。 キャリア官僚の言語能力は、抜群ですね。 ■5.クローニー・キャピタリズムの残骸 アジア型の資本主義は、アングロサクソン型(米国、英国型)の資本主義と対比して、<クローニー・キャピタリズム>と呼ばれます。 つまりは、国家主導の資本主義です。 ▼クローニー・キャピタリズム (1)産業政策を中央政府の計画で作る。 (2)貯蓄を奨励し、重点産業に流す。 日本の高度成長の成功を見たアジア諸国は、1980年代から、クローニー・キャピタリズムを国家政策とした。 マレーシアのリーダーであり、東南アジアの経済思潮を主導するマハティールが<東方(日本)を見よ>と言ったことは有名です。 政策モデルとして西欧・米国ではなく、国家主導の資本主義で成功したアジアモデル、つまり日本の産業政策を選んだ。 クローニー・キャピタリズムは、以下を起点にします。 (1)政府に、国の最も優秀な人材を集結する。 (2)西欧と米国の大学院教育を受けさせ、欧米人脈を作る。 (3)外資と、先進国の産業技術を導入する。 (4)国営企業から作っていく。 (5)国内幼稚産業の保護政策を取る。 戦争目的に代わって、国内産業の振興を目的にする計画型の資本主義です。貧困からの脱出の<国家総動員令>と言っても本質は同じです。 ▼クローニー・キャピタリズムがうまく稼動する時期 国家主導型資本主義がうまく行く時期があります。 (1)貧困からの脱出が目的になる、生活産業不足の時期。 (2)巨額資本が必要な、装置型産業の時期。 (3)諸外国との技術格差が大きい時期。 日本では、およそ1970年代に、輸出産業は、欧米の産業技術の水準を超えます。言い換えれば、先進モデルがなくなった。 そうなると、貧困から脱出するのが目的である高度成長に有効であったクローニー・キャピタリズムは、政策効果と目的を失うのです。 28年前の1973年の第一次オイルショックが、その時期だった。 日本ではこの時期に、戦後はずっとゼロだった国債の発行が始まる。 第一次オイルショック後は需要不足を埋めるケインズ政策を取った。ここから、豊富な個人貯蓄を使う公的部門の肥大、及び公共投資の拡大が始まった。ケインズ政策そのものは正しい。ところがケインズ政策は「短期」では有効ですが、長期になると公的セクターの継続的な肥大につながる。 その結果は、産業政策としてのクローニー・キャピタリズムが、公的部門の肥大として残った。財政投融資を使う77の特殊法人、26000の公益法人をつくることになり、現在に至った。 ▼東大法学部キャリア官僚の意識にしのび込んだ堕落 クローニー・キャピタリズムが有効だった1960年代までは、中央省庁の官僚は、行政権力は大きいが、民間より俸給は少なく、国家興隆のための「青雲の志」が感じられたのです。 国を豊かにするための政策効果があった。しかし、中央省庁の政策効果が薄れながらも、事実上の国家予算(一般会計、特殊会計、財政投融資)は膨らみ続けるのです。 政策名目は、 (1)内需の拡大。 (2)道路を含む社会資本の不足の解消。 (3)医療と高齢者福祉を含む、福祉政策。 ここでキャリア官僚の組織に、共同体の二重規範の原理が働くようになってきた。国民の意識では、政治家はダメだが、官僚は優秀であるというのが通り相場だった。 そこで、実際の予算内容には、判断停止が起こったのです。 【お笑い草になる真面目な話し】 上級公務員試験にトップクラスで合格し、なぜ大蔵省を選んだか? 大蔵省の面接官は、以下のようなことで、成績優秀者を誘ったと言います。 <1つの特殊法人の天下り先に3年いると年間報酬が4000万円、3年で1億2000万円。退職金が2年分で8000万円。合計で2億円の収入がある。3回の天下りをやると6億円になる。それに裏金をいれると大体10億円になる。老後に10億円は入る。(『お笑い大蔵省極秘情報』テリー・伊藤)> 20台前半の男がこう言われて、心が動かないでしょうか? 官僚時代は俸給が低い、仕事も苛酷、しかし老後の10億円。 すべての高級官僚が、この意識で仕事をしているのではない。 70%は、極めて勤勉で優秀で、日本の将来を想う人達と見ていい。 しかし30%のキャリアは堕落しているという発言が多いですね。 ▼内部規範の役人学 【第一条】 およそ役人たらんとする者は、万事につきなるべく広くかつ浅き理解を得ることに努むべく、狭隘(きょうあい)なる特殊の事柄に特別の興味をいだきて、これに注意を集中するがごときことなきを要す。 【第二条】 およそ役人たらんとする者は、法規を盾にとりて形式的理屈をいう技術を習得することを要す。 【第三条】 およそ役人たらんとする者は平素より、縄張り根性の涵養(かんよう)に努むることを要す。 (末弘厳太郎『役人学三則』岩波現代文庫) 公的セクターの借金、1080兆円の背景にある意識です。権力は麻薬です。人間は、組織体内部では異常な行動をとることがある。 (第1部:終わり) 【アンケート項目】 (1)内容は、興味が持てるか持てないか? (2)内容は、理解が進んだか? (3)疑問点は? (4)ご意見は?・・・等ご自由に、<ひとことメール>で (1)著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com ※友人、知人、同僚、部下、上司、取引先への転送は自由です。 あなたと、会社の、知識とスキルのブラッシュアップを。 (2)クールナレッジ掲示板(BBS)で投稿 http://cgi.members.interq.or.jp/venus/yoshida/BBS/light.cgi |
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