| ユニクロの戦略分析 小売業に、今一体なにが起こっているのか? 流通構造の変化と、ユニクロの戦略を解く まずは、成功事例のケーススタディから |
| 【最初に概要での押さえを・・・】 昨年は、1品目でなんと800万枚も売ったものです。世界記録でしょう。 サイトを覗いてみると、米国企業と比べれば簡単な内容ですが、IR(インベスターズ・リレーション:投資家への公開数値情報)が掲載されています。 そこに、直近の9月の売上状況も出ています。 ▼私も年齢を忘れて(?)試しに、ユニクロのサイトで50色あるうちの黒のフリース1900円:サイズXLを試買しようとしたのですが、入力が面倒でユーザーインターフェースが悪くそれでやめました。 この点は改善が必要です。装飾的なデザイン先行のサイトがよく陥る落とし穴ですね。 ▼ユニクロ2000年9月の、驚くべき売上増加 既存店(351店)の、9月単月の売上の前年比は2.3倍、顧客数が2.1倍、顧客単価は、1.1倍になっています。 9月現在の総店舗数は433店舗。9月1ヶ月での新規出店が、14店。 2日に1店舗の出店ですね。2ヶ月に1店ではない(笑) ▼年間データ 2000年8月期では、 売上高2289億円(2.06倍)、 経常利益604億円(3.26倍)、 在庫回転は17回転・年、 既存店の売上高増加が67.7%。 経常利益率が、売上対比で26%というのは前代未聞。これは小売業の粗利益率に匹敵する数値です。小売業でこんなに儲けた企業は、全国の商店142万店でゼロです。 既存店売上伸び率の67%も、前代未聞です。 "不況"って、どこのこと?って言いたくなりますね。 ▼さきほど、この原稿を書くためもあって、改めて車で5分くらいの近所にあるユニクロの店に行って来ました。 日曜日の4時、駐車場も店内もレジも満員の状況。 家族連れで、ちょうど食品スーパーで夕食の買い物をするような感じで、入り口に用意されたかごに、商品を溢れるようにいれています。約60%のものは、1900円のプライス・ライン。 3900円だったら、こうはならないでしょう。1900円であることの価値ですね。 まさに狙い通りの、衣料のファースト・リテイリング(小売り)。 日本でも、いよいよ価格を見ないで買える店舗の登場です。 買い物かごいっぱいで、約1万円。手提げの紙バッグ二個分です。 紙バッグにいっぱいの買い物。一瞬、食品スーパーかな、って思いますね。 ▼こんな雰囲気のファッションのお店は、過去、日本には全くありませんでした。 価格では、90年代後期の約5年間のインフレで、50%は価格が上がった米国のGAPやOLD Navyを追い抜いて、世界最低価格の水準です。 スウェーデンを本社とするアパレルの成長企業、実力ナンバー1と評価されるH&M(ヘネス・アンド・モリッツ)に匹敵します。 一方では、1980年代から約20年間もPOSの売上データを利用した「単品管理」によって日本の小売業の最優良モデル、衣料に強いと言われてきたIY堂(イトー・ヨーカ堂)の業績悪化。 最近は、単品管理はTANPIN−KANRIになって、ちょうど80年代のKAIZEN(改善)のように、世界で通じるコトバになったようですね。 ▼売上高7189億円(半期:前年比―4.5%)、粗利益率を上昇させて経常利益303億円(半期:+0.6%)と前年並を確保。 しかし約5%の売り場増加に相当する、出店分を除いた既存店の売上は、なんと、―9%になっています。 ▼ユニクロの既存店の客数倍増に対して、顧客数は7%もの減少です。 IY堂の衣料品の構成比は26%で、1869億円。 IY堂の衣料は、年間で、約3600億円ですから、今年度はカジュアルウエアのみでわずか400品目のユニクロが、IY堂の総合衣料の売上金額を超えます。 なにが原因か? こうした、新旧の、鮮やか過ぎるほどの対照的な業績は、今までの戦後小売業50年の歴史のなかでは初めてのことです。 わが国の小売業に、一体なにが起こったのでしょうか? ▼IY堂の鈴木敏文氏と、田原総一郎氏の対談です。 じっくり読んでみると、いろいろな発見があります。 田原総一郎:どこに問題があるんですか? 鈴木敏文:従来型のマーチャンダイジング(商品作り)が限界に来ているんです。以前ならIY堂は支払いがきっちりしているから、問屋さんに「いい商品をお願いします」と頼めば、すぐ持ってきてもらえた。 ところが問屋さんもお客さまのニーズを汲み取れなくなってきた。 問屋さんも、全部悪いんです。IY堂だけが悪くて、問屋さんがよければIY堂の問題ですねがね。 いずれにせよ、今我々はお客さまのニーズにきっちり対応できるマーチャンダイジング力を持っていないんです。 田原総一郎:IY堂の強さは、マーチャンダイジング力がずば抜けていたからと思われていたんですがそうじゃないんですか? 鈴木敏文:過去のある時代、商品を揃えるという意味ではそうでした。 しかしそれは我々のマーチャンダイジング力が強かったということではないんです。 だから、未だに、多くの部分で問屋さんに依存している。 日本の小売業の場合、ほとんどが問屋マーチャンダイジング。 そのなかで、IY堂が問屋依存が少なかった、ということでしょう。 (以上は中央公論:2000年8月号) これを読むと、現在の、わが国の大手小売業が陥った袋小路がよくわかりますね。そうです。<流通構造の問題>にまで、突き詰められてきているのです。 しかし、この「マーチャンダイジング」という概念は、多少説明を必要とする内容を含みます。後日、別の論考を準備しましょう。 ユニクロは、果たして、従来の概念での小売業でしょうか? 小売の店舗を持っていますから、その点では小売業です。 しかし日本の従来型の、メーカー販社か卸売り業に依存してきた「小売業」の概念との対比で言えば・・・ 2000年現在のユニクロの本質は、中国に60余の提携工場を持つ、カジュアルウエアの「メーカー」と言った方が正確でしょう。 ▼店舗は「倉庫」と規定 UNIQLOは、Unique Clothing Warehouseの略語です。 UNIQLOでは、「自社の店舗は消費者のWarehouse(倉庫)」であるとの定義をしています。 こうした重要な自己規定は、決して見逃してはいけません。 つまり、「UNIQLOという工場を持たないネットワーク組織のメーカーが、消費者直売の、小売り倉庫を持っている」とみたほうが正解でしょう。 ここを見誤ると、現在のユニクロの基本性格を誤ります。小売業から出発したから、小売業と見るのは安易すぎます。 ▼SPAとの違い いわゆるSPA(Specialty Store of Private Brand Apparel)とは、戦略の元が違いますね。 SPAは、小売業であるとの暗黙の自己規定からの出発でした。 ユニクロが、あっさりと400品目に商品を絞りこめた理由、中国での開発PBへの徹底できた理由が、ユニクロの店舗は「カジュアルウエアの倉庫である」という自己規定にあります。 この絞りこみには、とても勇気が必要。 そして、現在の需要で、何が顧客にとっての<価値>になっているかの、徹底した見極めが必要です。 勇気とは言っても、やみくもな蛮勇ではありません。 400品目に集中して、超大量生産、それで、普通4000円の商品価値のもので、1900円を実現。つまり、商品の使用価値が2倍。 ▼小売り業、または店舗から出発したSPAとしたら、ここまでの徹底はできなかったでしょう。 もっと、商品の種類が欲しくなって、店舗を大型化し、コーディネート販売をしたくなるはずです。普通は、必ず、そんな店舗を作ります。 並の小売業ですね。 いろんなメーカーから仕入れるのが、小売業、商品の種類を増やして店舗を大型化すれば、来店した顧客にもっと売れると考えるのが小売業。 ▼ところが、自らを消費者のための販売倉庫をもつメーカーと規定すれば、他のメーカーから仕入れるわけにはいきませんね。メーカーだから。 1品目ずつの商品開発から、はじめないといけない。それで400品目に限定。 これが、ユニクロのビジネスの中核をなす、商品の差別化戦略です。 「事業の定義」の重要さがここにあります。 わが社の事業の定義を、今1度、きちんと文章化する必要がありますね。 どの部分で、他社との違いを出すか(価値の差異化)、です。 http://cool-knowledge.comの、論文のバックナンバー「リーダシップ」、及び知識源バックナンバー参照 ▼なるほどユニクロの店舗は、実際に店舗へ行って、少ない品目の品種別・サイズ別・カラー別の量陳列、棚への置き方を見ると、限りなく「倉庫」です。 (品目の絞りこみ) キレイに、言いかえれば、ちょっと非現実的に装飾されて品目数を多くし、コーディネートを売るファッションの店舗ではありません。 カジュアルウエアの基礎品目(ベーシックアイテム)に絞った、商品展開です。 マーチャンダイジングでは、ベーシックアイテムに絞り得たこと、ここに、ユニクロの商品作りの、成功の最大の理由があります。 コーディネートファッションの<品揃え発想>でいくと、余分なアイテムが増加しますね。結果として多くが売れ残る。 (実はホーム・デポも) 米国のHome Depot(ホームデポ)も、店舗を倉庫風にコストダウンしたのでなく、住宅改装やインテリアのプロが購入する住関連部材の卸の倉庫を、消費者にも公開した店舗を作る、というのが本質であり事業の定義です。 倉庫風の店舗ではなく、住関連の部材・部品の倉庫を目指す店舗です。 以上の定義から、 (1)ホームデポの係員は、お客様にセールスをするのでなく、 (2)部材の組み立てや加工方法の説明をのみをします。 なぜなら、セールスという概念は「倉庫」にはないからです。 大部分の人が真似をすると、倉庫風の店舗になります。そうするとHome Depotが目指す、消費者にとっての価値とはズレたものを提供することになります。 これこそ、外形の物まねがしばしば生む、「似て非なるもの」ですね。 消費者は、そうしたとき、違いを敏感に察知します。 ユニクロの店舗もHome Depot風に無骨(ぶこつ)です。倉庫だから、なのです。陳列も、「機能的な分類」での単純な陳列。これで、陳列作業が単純化できますね。 売るため、キレイに見せるためののディスプレーや、プレゼンテーションは否定されています。 日本の衣料の現状では、大部分の顧客は、そんなことより、<価格の合理性>を求めているとの見極めがあるのです。 大部分と言った時はおよそ60%以上を意味させています。 ▼ユニクロの店頭価格は、主力1900円、サブのラインが2900円。低回転商品の価格落ちが、1000円。 商品を手に取ってじっくり評価した品質感では、普通の小売店なら、この1900円や2900円は「工場渡し」原価に当たるものです。 それに、約70%から80%の、問屋マージン+小売りマージンを加えて、4800円や6800円で売ります。 それをユニクロでは1900円、2900円で売っています。 なぜ、こんなことができるのか? ▼最初は、<柳井氏(CEO)がそれをやろうと思った>、ここが出発点です。 日本の衣料の価格を変えよう、すべての戦略は、こうした原点、信念を持つべきです。 有利とか、不利とか、方法論の問題は、その後です。 誰もやってないことですから、最初は不可能に見えるにきまってます。 事業は、ロマンやビジョンから出発し、冷静な戦略で実現するのです。 ▼アパレルは、製造に付加価値があるのではなく、現地工場を出荷後の、中間流通と小売り部分に売価の70%から80%、高額アパレルでは約90%を占める付加価値部分があります。付加価値とはコストと言い換えても同じです。 コストダウンの可能な部分は、金額では、工場内部より、工場を出たあとの流通と小売りマージンのほうが圧倒的に大きい。 アパレルで、(1)製造部分を行う中国の一人あたり生産額(数量ではありません)と、(2)流通と小売り部分をになう米国・欧州・日本の一人あたり付加価値(マージン)額を、比べれば、一目瞭然。 最終売価に対して、中国の工場出荷の原価部分は15%から30%、それに対して流通部分が70%から85%ですね。 OECD先進諸国のGDPは、流通と小売の形而上学的な「空(くう)」の部分。流通と小売の付加価値部分、言いかえればコストと利益部分は、無形のものです。ここが流通の価値として、理解しにくいところですね。 ここまで考えると、どこを合理化すれば価格を変えられるか、わかるでしょう? 流通部分ですね。 ▼ユニクロでは、極端に安く売ってるように見えます。しかし粗利益は売価の48.5%が確保されています。 商品投入の最初の期首値入の平均は、おそらく60%でしょう。1900円のものの売れ残りは、1000円で売っています。 販売費・一般管理費が21.8%、営業利益が26.7%です。 (2000年8月期) それでは、次にユニクロはいわゆる「メーカー」とはどこが違うのでしょうか?ここを考えてみます。 メーカーは、普通、直営の販社や卸売業を通じて、店舗に商品を卸します。 わが国では米国と違って、まだ、小売業のチェーン化と寡占化が進行していず、小売は零細ですから、流通網では卸売り機能が必要になります。 卸売りが、商品提案と供給、物流の面で小売り店舗の運営に欠かすことのできない機能を果たしているのです。 ▼ここが、米国の流通構造、流通の仕組みと、日本の流通の仕組みで、根本的に違う点です。 わが国では、仮に、卸売業を通さないメーカーとの直取引に見えても、その時はメーカーの販社部門が、小口での卸売り、店舗への補充物流を行っていますね。 ですから、日本のメーカーは普通、米国のような工場出荷口渡しの価格を、店舗に対して提示しません。提示しても、その意味の理解ができないバイヤーがほとんど(ほとんどとは80%)でしょうね。 単に、「安く」と要求するだけでしょう。 ですから日本のメーカーや卸は、販社と卸機能が含む営業費と物流費が渾然一体となった「建値」の手法をとっているのです。大口取引には、建値からバックマージンで割り引きです。 深く考えていないマスコミ論調に感じられるように、メーカーが悪いわけではありません。各小売業が零細な取引ボリュームだから、それだけの流通の手間、無駄な作業や、無駄な在庫のコストが、店舗に供給され前にかかっているのです。 こうした小売業のバイヤーの姿勢では、製造、物流、在庫、リスクからなる原価をまともに計算すべき海外での調達は無理ですね。 800万枚とは言わずとも、1品目で10000個のバイイングができるでしょうか? ▼ユニクロは、中国の60余の工場の生産ラインを直接制御し、国内の433の店舗(事業的な定義では倉庫)へ直結して、消費者販売を行います。 これは、工場をもたないメーカーの販売組織です。 中間流通と、店舗コストをカットした、ネットワーク組織といってもいいでしょう。 (1)デザイン開発はニューヨークの事務所、(2)組織運営や「倉庫」運営の司令塔は山口市、(3)直営倉庫(店舗)は全国、というネットワーク型組織。 ▼ユニクロとDellのビジネスモデルの類似 パーソナルコンピュータのファブレスメーカー(工場を持たないメーカー)で消者直売を行うDell、Gateway2000、ルータなどの通信機器のCiscoに似たビジネスモデル(儲けの仕組み)に類似しています。 やはり、現在は伸びる企業は、世界的に、業種・業態を超えて、共通性がありますね。 ユニクロは、小売り店舗から出発しましたが、「店舗作りや、販売方法をどうするか?」からではなく、メーカーとの自己規定ですから、商品開発と流通組織から入ったのです。 ▼普通の小売業の発想のように、店舗作りや販売方法を考慮して、そこに必要な商品の開発という姿勢から出発したら、おそらく今のユニクロはなかったでしょう。 トップとして、店舗の売上高や財務諸表でなく、1個1個の商品を徹底的に知ること、これが柳井社長のモットーです。ここもメーカー的ですね。400品目なら、個々の商品の価値の吟味も可能です。ここが、ユニクロの価値です。 店舗で商品を手にとって見ると、いいかげんな開発を行っている感じのものは、まだ、見うけません。 このことを、消費者は、きちんと評価しているのです。消費者は、仮に1900円といっても、自分が実際に着るものですから、その選択は真剣です。 トップが商品の品質やサービスにの良質さに関心をもたず、もっぱら数字や財務諸表のみで現場を叱咤するようになると、堕落です。 悲惨な事例では雪印、そして最近のダイエーを筆頭とする量販店がありますね。日本型百貨店は、もう語るに足りません。金融、保険、建設、小売り、運輸、卸、小売り、およそ内需に関連するあらゆる業種で、過去の大手、過去の一番手が、雪崩現象をおこしています。 ▼合併やリストラも本稿で述べているような、消費者への最前線での商品価値の再考がないと、結果はなにも変わらないでしょう。 はっきりと断言できます。時間の引き伸ばし策に過ぎません。 ユニクロでは、端的に、単純に、「店舗は、消費者のカジュアルウエアの倉庫である」と規定することで、戦略の単純化を図ることができます。 戦略とは重点的に実行すべきことの、設計と計画です。 こうした定義で、(1)店舗での販売方法や陳列方法、店舗作り、問屋からの集荷方法、(2)メーカーや問屋の選定、商談という、煩雑で複雑な仕組みの構築の作業から、すっかり解放されたのです。 倉庫ですから、かけるべきコストと、販売方法は、はっきりと決まります。 メーカーですから、集中すべきは高品質・低価格の価値ある商品開発。「店舗」ではないということです。店舗は、物流を考慮した<流通網>ですね。 ▼消費者の購買情報は、自社のPOSでリアルタイムで分かりますから、それを直接利用した生産が行えます。 消費者に直売するメーカーの、有利な点です。 販社や卸を経由し、また小売の店舗を通じて消費者販売するメーカーでは、このリアルタイムの消費情報と、流通過程の全在庫情報は、得ることはできません。 ▼POS情報が時間的に遅れて届くための「ブル・ウイップ効果」が、パイプライン在庫の欠品による機会損失と、過剰在庫の無駄の双方を生みます。 その点でユニクロは、アパレルメーカーに対しても、圧倒的な優位に立ちます。 期首の値入が、そのまま、粗利益率にちかくなる仕組みです。 アパレルメーカーの、デパートでの販売では、期首の値入率は70%あっても、売れ残りのバーゲンで、結局35%の粗利益というのが多いのです。 ブル・ウイップ効果:店舗での商品販売の変化が、メーカーでの生産に反映することの時間的な遅れ、及び途中の情報解釈の偏りで生じる、生産と需要の不適合。 ビジネスモデルというと格好がいいのですが、このコトバは分かりにくいですね。 商売用語では「儲け方」、それにすこし格好をつけるなら「利益を出す仕組み」と言っていいでしょう。ビジネスモデルとは、1995年以降米国コンサルタントが使ったコンサルタントの商売用語です。 この儲け方で、複雑な構造を持つ仕組みは、今後の成長は難しいでしょう。儲け方を単純化できるまで、突き詰めるて、徹底することが必要です。 モデルといった時は、1回1回で個々に儲ける方法でなく、利益を出す仕組み、この継続できる「仕組みづくり」、つまりシステムが重要なのです。 ▼21世紀は、なによりも以下の3点 (1)儲ける仕組み、構造の単純さ (2)消費者にとっての、商品価値のわかりやすさ (3)消費者が、買った商品の価値の違いをコトバで言えること、が必要でしょう。 ブランドが価値になるかどうかは、消費者がその店舗や商品の、他との違いをコトバにして表現できるかどうか、で決まります。それが認識されていなければ、ブランド名も、単なる店舗名・商品名に過ぎません。 複雑な時代は、単純化・徹底・集中が、価値になるのです。 ▼以上3項目は、事業として何を行うかより、何を行わないか、との面から見ると更にはっきりします。 普通、あれやこれや「付け加える」という発想になりやすいのを、我が社が最も得意な分野の、徹底した追及に変え、そこに集中します。 戦略的ビジネスモデルとは、消費者にとって、もっとも重要な価値になることと、結局は無駄になる部分を見極めた上で、 (1)消費者にとって「価値を生む部分」に集中し、 (2)消費者にとって「無駄になる部分」を捨てることを、選択することです。 以下、こうした観点で、ユニクロの儲け方の基本構造を、単純化し、原理化して解剖します。 (1)世界で最もコストの安い、中国の衣料の工場と、生産提携の関係を結ぶ。 (2)1品目の超大量生産のために、商品をカジュアルウエア部門の、400品目に絞る。売価のプライスラインは、1900円が価格の主力。 (4)品種と品目が少ないから、年齢でのセグメント(細分化)をやめ、ユニセックス、エージレス(年齢幅を広げる)ファッション、つまりベーシックアパレル部分を主にする。 (5)選択の幅では、カラーの種類を増やす。主力のフリースでは今年は50種にする。 日本人の体型サイズの、90%にフィットするように、各カラーでサイズは5種類(XS、S、M、L、XL)を切らさない。 (6)余分な品種や品目が多くなる、ワンストップの高額コーディネートファッションは、「今はまだ」追わない。(この見極めも重要) (1)店舗は、消費者のための倉庫と規定する。コストがかかる、無駄な装飾はカット。ただし、床はコストをかけた木のフローリングとして、ぴかぴかに磨き、クリンリネスを確保する。 (2)無駄な、店頭での販売作業を行わない。店頭作業は発注作業と陳列作業のみに単純化する。 (3)ウォルマート流のevery day lowest priceとし、無駄でコストのかかる売価札変更作業や、セールを行わない。 これについては、別の分析をcool-knowledge.comのサイトに載せていますから、そこを参照して下さい。(「業務の情報化って一体どんなことだろうか?」) わが国は、商品流通のコスト、小売の店舗コスト、店舗の人件費コスト、商品の売価が世界でトップクラスに高くかかる国です。そのため、以下の戦略が効果を生みます。 (1)世界で一番生産コストの低い国、中国で品質を高めた商品を作り、工場生産は直接コントロールする。 (2)最も生産コストの低い国で作った商品を、世界で最も商品価格の高い国日本で、流通と店舗のコストを押さえて、販売する仕組みを作る。 (3)ユニクロのブランド価値を作るために、計画的な宣伝費の投入をする。(生活スタイル提案) これが、経常利益率26%と、年率2倍の売上高成長をもたらしたのです。 商品の面では、以下の5つの枠組みで、マーケット需要が飽和するまで、ユニクロの進撃は続くでしょう。現在の枠組みで、わが国のマーケットでは総年商5000億円くらいまで、でしょうか。 (1)1品目大量生産のために、商品をカジュアルウエア、400品目に絞る。 (2)品目が少ないから、エージレス(年齢幅の拡大)、ユニセックスファッション(性を共通化)を主とする。 (3)選択では、唯一、カラー種類を大量(ユニクロの代名詞、フリースでは今年の秋は50種等)にする。 複雑な要素がからむデザインでなく、カラーの種類のみがセグメント軸で、製品設計を単純化。 (4)日本人のサイズの90%にフィットするように、各カラーでサイズは5種類(XS、S、M、L、XL)を切らさない。POSをつかった期中補充の体制。 (5)プライスラインは主力1900円。サブラインが1000円、2900円、3900円 (プライスラインという概念も、曖昧でなくきちんと理解する必要があります。これも別の機会に。小売業の大半で混乱した理解) ▼品種と品目、及び商品スタイルの種類を増して、現在の「倉庫」がファッションコーディネートの「店舗」になったとき、流通コスト、在庫の無駄、店舗オペレションのコストが上昇し、利益率は低下します。 その時が来たら、ユニクロも、直売倉庫を持つメーカから、大型店舗を持つコーディネートファションの、並のSPAになるのです。 米国で、GAPを凌駕する勢いをもっているのが、1999年にニューヨークの5番街にオープンし、ファション感度の高いニューヨーカーで一躍話題を集めたスウェーデンのH&M(ヘネス・アンド・モリッツ)です。 $50から$30中心と、約50%は高くなったGAPのプライスラインに比べて、価格が、Gapの約50%なのです。 (ユーロ安の効果があります。逆にいえばドルの過大評価) コアコンピタンス、言いかえればもっとも競争力を持つ部分に集中することの重要性ですね。 (1)顧客にとって、何が、商品価値なのかを見極める。 (2)そこに、経営資源(人、仕組み作り、投資)を集中する。 (3)徹底する。 以上が結論です。 過去の、総華的な総合化は、すべての<華>を枯らします。舞台が変わったのです。消費者も変わったのです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ユニクロ http://www.uniqlo.com Gap http://www.gap.com H&M http://www.hm.com ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼お疲れ様でした。 「ビジネス知識源」のマグマグでの配信第1号、いかがだったでしょうか? すこし、長すぎましたか? 日本型流通の説明を加えると、どうしても長めになります。 ご感想等、お寄せくだされば、幸甚に存じます。 ▼あなたのちょっとした一言でも、とても参考になります。 果たして、良質な情報になっているかどうか・・・これからも、もっと役に立つ情報を提供すべく努めます。 2000年10月23日(日曜日) 吉田繁治 http://www.cool-knowledge.comには、経営戦略、小売・流通戦略、IT戦略、ロジスティクス、SCM、CRMに関するバックナンバーと、原理・原則を解くための論文を掲載しています。きっと、お役に立てるはずだと思っています。 またメールマガジンも、マグマグのサイトでなくトップページから申しこむことができます。 無料での配信です。 著者:吉田繁治 systems research ltd チーフ・コンサルタント e-mail: yoshida@cool-knowledge.com |
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