これからのマーケティングの基礎データ集
This is my site Written by admin on 2011年11月9日 – 09:00

おはようございます。今日は、晩秋めいた空と気温です。
細切れの時間を見つけ、スピーカー工作を続けています。

電気的なエネルギーを、振動のエネルギーに変換するものなので、
余計な付帯音(箱鳴り等)を出さないようにすること、そして振動
の基点(背面の磁石)を固定することで、改善する余地が大きい。
これが工作をする理由です。

香港に工場があるFidelitatemというメーカーの、Alpair12(口径18
cm)というスピーカーユニット(一本が約2万円)を見つけたので、
その実力を引き出すこと。これは、電気信号をコーン紙(Alpairは
マグネシウムとアルミの合金の薄板)の振動に変換するとき、障害
(歪みになる:信号理論ではノイズ)になる要素を、可能な限り取
り除こうとしたものです。

Alpairは、聞いたことがないような、透き通るように繊細な音です
。実力の60%くらいを引き出した感じがします。スピーカーシステ
ムとしての、外見と構造の完成度は、まだ40%です。今まで使った
ユニットに比べ、相当にすばらしい。何を行っているかを書けば、
マニアックに過ぎるので、また別稿で書きます。
http://www.fidelitatem-sound.com/
http://www.fidelitatem-sound.com/Alpair12.html

感じたのは、Alpairのユニットの精度がきわめて高いことです。原
材料を含む、いい音、つまりは余計な音を出さないことへ向かう工
夫の割には、安価です。

少ない自作派のうちの、その中でもごく一部のマニアにしか知られ
ていないようです。マスクされて聞こえなかった小さな音が聞き取
れます。

中国製の範疇(カテゴリー)にはいるでしょう。こうした高い品質
の領域でも、日本製は、年々、少なくなっています。他の製造の分
野でも共通することでしょう。1980年代までとは、様変わりしてい
ます。

Alpairのような高品質と妥当な価格(reasonable price)は、日本
工業の得意だったはずです。工場は、ジョーダン・ワッツという英
国メーカーの技術者(マーク・フェンロン)が、理想のユニットを
求め開いています。ブログを読むと、日本人技術者も加わった工場
での研究と実験の累積がうかがえます。
http://blog.fidelitatem-sound.com/

Alpairも、完全に個人ユースの商品です(この項後述)。
家人に見せ、音を聞かせても、まるで興味がない。

本稿のテーマは、マーケティングの基礎データとその解説です。

われわれの固定観念を壊すくらい、「個人化」への変化が、1990年
~2010年の20年間で起こっています。その傾向は、2012年から、一
層加速します。中流の3人、4人家族を「核家族化」と言っていまし
た。今、急速に、「個家族化」に傾斜しています。

マーケティング(端的に言えば、市場化活動)は、製品企画、製造
、流通、販売、および販売促進の全体を言います。コトラーが大家
とされています。

店舗では、どんな商品(アイテム)を並べるかという商品構成です
。卸売業では、商品の仕入、販売、物流に係わります。メーカーで
は、製品企画と製造に係わります。

惜しくも亡くなったアップルのスティーブ・ジョブスは、電子製品
のパーソナル・ユース化を突き詰めました。多用途に答えるペット
のようなものが音楽を一変させたiPodで、情報とコミュニケーショ
ン領域ではiPad、多機能な携帯電話ではスマートフォンのiPoneで
した。「i」は、個人をシンボライズしているように思えます。

パナソニックやソニーの液晶TV事業が巨大赤字を出し、国内製造の
液晶テレビは、消えるでしょう。マーケティング(製品企画)に問
題があったように思えます。

ファミリー・ユース然としていて、デザインは中庸だからです。TV
も、今は個人ユースでしょう。サムスンがデザイン面で先行してい
ます。

全商品の中でもっとも大きな食品(市場30兆円)で調べると、価格
低下の中、コンビニエンス・ストア(4万3372店:合計売上8兆175
億円)の、日配食品(売上構成比33.5%)と加工食品(同28.9%
)の売上は、2011年9月で9.6%と6.5%の増加(全店ベース)を
示しています。

同月の非食品は-18.5%の大幅減です。非食品の大きな増減には
、タバコの価格上昇(課税額増加)が関与しています。

商品4分類での最近の経年変化を見ます(出店を含む全店ベース)
。
 
          2008年(暦年)   09年      10年    11年9月(単月)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日配食品    +2.4%    -2.2%   +0.9%     +9.6%
加工食品    +2.6%    -2.1%   +0.6%     +6.5%
非食品     +17.1%    +6.0%   +2.2%    -18.5%
サービス   + 3.5%    +2.2%   +4.5%    +16.7%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

合計       + 6.7%    +0.6%   +1.4%    -2.0%
http://www.jfa-fc.or.jp/particle/42.html

2011年の、個食のお弁当や総菜を中心とした日配食品(コンビニの
主部門)に注目すると、1月+5.3%、2月+6.8%、3月+1.0%
(大震災)、4月+3.3%、5月+1.4%、6月+5.5%、7月+7.1
%、8月+5.5%、9月+9.6%です。2011年の各月を合計した単純
平均で、+4.3%です。

店舗数の増加は1.7%(年間740店くらい)ですから、既存店ベー
スの日配食品の平均増加率は、3%程度でしょう。

なお1人の顧客が1回で買う顧客単価は576円で、前年比-0.4%で
す。既存店の顧客数はほとんど変化がない。1人あたり購入商品数
の増加が、3~4%あることになります。

既存店の平均売上が3%ということの意味は、標準偏差で言えば、6
%増がほぼ3分の1の店舗(1.4万店)、3%増が1/3の店舗(1.4
万店)、0%が1/3の店舗グループ(1.4万店)ということです。

食品スーパー(上場企業23社:全国2000店)の売上では、既存店ベ
ースは2011年8月で-2.1%です。売り場面積の2%/年の出店によ
る増加を加えた合計でも、+0.1%に過ぎません。月によって若干
の変動はありますが、1年ベースで見ても、ほぼ8月と同じです。

コンビニは個食(少量)、食品スーパーはファミリー食です。
需要が安定した食品にも、急激で大きな世帯変化が反映しています
。

商品企画、商品構成、販売では、顧客を知らねばなりません。
マーケティングの基本です。

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 <563号:これからのマーケティングの基礎データ集>
         2011年11月9日号

【目次】
1.世帯と世帯人数では、独り住まいの世帯が最大構成に
2.世帯別の職業類型
3.世帯所得の観点から
4.世帯所得の分布
5.職業類型別世帯の、所得、貯蓄、負債
6.世代別の貯蓄と負債

【後記】

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■1.世帯と世帯人数では、独り住まいの世帯が最大構成に

残念なことに、国勢調査のデータ(5年毎:全国集計)は、2006年
の集計が最新です。2010年の調査結果は、まだ部分的にしか集計さ
れていません。

本稿では最初、2005年の国勢調査データを使います。
2010年の新しいデータは、総務省の家計調査からです。

【国勢調査データ】
平均の世帯人数は、戦後の1953年が5名でした。1960年代後半に4名
を割り、1980年代から3名に減っています。世界の人口は、1年に1
%以上増えて70億人になりましたが、日独伊と韓国、ロシアは減る
傾向です。

2005年では2.6名です。東京・大阪・名古屋の3大都市では、1世帯
平均が2.2名くらいです。単位は百万世帯で、10万未満四捨五入し
ています。(11年予想も総務省:各種の人口統計から筆者が再集計
)

                1985年       2001年      2005年   2011年予想
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

単独世帯      7.9 (21%)  12.9(28%) 14.5 (30%)  15.7(31
%)
片親と子供    2.4( 6%)  3.5( 7%)  4.0 ( 8%)   4.5(9%
)
夫婦2名      5.2(14%)  8.8(19%)  9.6 (20%)  10.0(20%
)
夫婦と子供   15.1(40%) 14.9(32%) 14.6 (30%)  14.0(28
%)
その他親族世帯7.2(19%) 6.3(13%)  5.9 (12%)   5.9(12%
)
非親族世帯      -         0.2( - )    0.3(0.1%)   0.3(0.
1%)
(高齢世帯) 5.2(14%) 11.1(24%) 13.5(28%) 15.7(3
1%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

合計世帯数     38.0(100%) 46.8(100%)  49.0(100%)  50.0百万


(注)上記の「その他親族世帯」では、夫婦・子供・両親(片親を
含む)の3世代がもっとも多く05年で50%を示す。他に夫婦と片親
または両親の同居などである。( )内の高齢世帯は、全世帯の中
で、退職者が多い65歳以上の人がいる世帯を示す。

【世帯数は増加してきたが・・・】

1980年代から、わが国の人口は増えなくなりましたが、世帯数は増
えていました。1985年の3798万世帯は、2010年で5029万世帯にまで
、32%(年率で1.1%)も増加したのです。

世帯数の増加は、住宅需要、家具需要、家電需要、食品など、あら
ゆる商品の需要数を増やす原因になります。世帯を構えると、同居
のときより、1人当たりの生活に必要な商品が増えるためです。電
気エネルギーや車・家電の需要も増えます。

商品物価の下落で、1997年以降は、売上の増加はなかったのですが
、商品の購買数は増えていました。

ところが、増えてきた世帯数も、厚労省の予測では、2010年の5029
万世帯、2015年の5060万世帯を頂点にします。

今後は、世帯数の増加という要因での、商品需要の増加はないこと
になります。現在が、ほぼ世帯数のピークと見ていいのです。

2020年になると、5040万世帯、2025年4984万世帯、2030年4880万世
帯と、減少にはいります。家族の少人数化は進みますが、2020年か
らは、寿命に達しそれ以上に死亡数が増えるためです。

今後、世帯数の増加による商品販売数の増加はない。それに、単独
世帯、2人住まい、高齢世帯の増加で、購買商品の形態が変化しま
す。

【独り住まいと2人世帯の急増】

(1)独り住まいの急増:大都市部では40%を超える

単独の世帯は高齢者、大学に行く独身者、及び働く単身世帯です。
この単独世帯は、高齢化と晩婚化のため1985年の7.9百万世帯(世
帯構成比で21%)が、2011年は15.7百万(構成比31%)に、世帯数
で倍増しています。

2030年には単独世帯は18.2百万へと、2.5百万軒増えると予測され
ています(厚労省)。全世帯数の37%を占め、圧倒的な最大勢力に
なって行きます。

東京都は、もともと、単独世帯が267万世帯(627万世帯のうち43%
)ともっとも多い。都は、世帯がどうなるかの予測もしています。


それを見ると、東京都で独りで生活する単独世帯は、2015年277万
(構成比43%)、2020年282万(同44%)、2025年283万(同44%)
と、感覚的には、ほぼ半数に近い世帯が「単独化」に向かっていま
す。

3大都市圏(6000万人)も東京都に似ています。なんだか・・・す
ごいことです。都市部では、家のほぼ半数近くが1人住まいになる
ことです。

全国で2005年に2.6人の平均世帯人数(人口÷世帯数)は、今後も
減って、2030年には2.3人になります。地方を概略で言えば、1人世
帯35%2人世帯35%、3人世帯30%でしょう。

以上は、今後、あらゆる商品のうち60%以上は、現在でも独り住ま
いの個人ユースを対象にしたものでなければならないことを示しま
す。従来のマーケティングの、暗黙の、顧客についての前提は[3
人の核家族]でした。核家族に適合した商品は、今後減って行きま
す。

夫婦と子供の世帯はすでに、世帯構成比では28%で3割を割ってい
ます(2011年予想)。

増えたのが単独世帯です。ファミリー需要は減って、どんどんパー
ソナルなユースに変わって行きます。片親と子供の世帯も、パーソ
ナル・ユースでしょう。夫婦二人も、パーソナル・ユースになって
行くからです。

商品企画、商品開発の、前提となってきたことを、疑わねばならな
い。

[1ヶ月の消費支出額]
単独世帯を除く、2人以上の世帯(平均家族数は3.1人:2010年 総
務省)の消費支出の1ヶ月平均額は、06年29.4万円、07年29.7万円
、08年29.6万円でしたが、リーマンショック後の09年から減って29
.1万円、2010年が29.0万円です。

2010年の1ヶ月平均の実収入52万円のうち29万円(収入比56%)の
消費支出の内訳は、食料6.8万円(構成比23%)、住居2.1万円(7.
2%)、水道光熱1.9万円(6.6%)、家具・家事用品1.0万円(3.4
%)、被服と靴1.1万円(3.8%)、保険・医療1.3万円(4.5%)、
交通・通信3.9万円(13.5%)、教育1.1万円(3.8%)、その他6.6
万円(22.8%)です。

単独世帯は、消費支出が、1ヶ月平均で16.2万円です。2人以上の世
帯平均29.0万円の56%ですから、ほぼ半分と見ていい。なお、単独
世帯(1570万世帯:世帯構成比31%)を含む、全世帯(5000万世帯
)の1ヶ月平均の消費支出は、25.2万円に下がります。

2011年は、大震災後の3月から8月まで、毎月が、前年比で-2~-3%
です。(総務省家計調査)

こうした世帯の支出項目を見ると、本年度の3月までに法案化する
とG20で公約された「消費税の段階的な上昇(2010年代に10%)」
は、家計にとって、1ヶ月1万4500円の負担増(消費支出の5%)で
すから大きいことがわかります。

感覚的には、欠かせない支出の保険・医療費が2倍になったことに
匹敵します。

次項で示しますが、世帯の平均所得は増えず、逆に大きく減ってい
ますから、全商品の領域で、現在よりも5%の購買額の減少が生じ
ることになるでしょう。

もともと赤字が75%の企業に、倒産がバタバタ起こり(不良債権も
増加)、法人所得は30%以上減り所得税の大幅減収になって、政府
が狙う税収増はないと見ます。増税は、企業と世帯所得が増えか横
ばいの時期しか、政府収入に有効ではないのです。

実際に商品を提供するマーケティングでは、顧客の生活形態の変化
に、数年は先行しなければなりません。増える需要が、生活変化の
中にあるからです。毎年の変化は、少しずつです。そのため、POS
データの売上分析では気がつかない。

[モデルは、コンビニと、パーソナルな100円ショップの商品対応
]
コンビニは、単独世帯の増加に合わせて、日配のお弁当・惣菜を個
人化しています。

変化対応ができた理由は、コンビニでは、単に商品売上と、買った
顧客の年齢層(性別と10年刻み)をPOSで入力して、商品と年齢・
性別を結びつけた、マーケティングの結果分析をしているからです
。

年代別で、購入商品の変化を見れば、どんな商品が増え、何が減る
かわかるからです。

以上の、買い物の個人化は、加工食品(パン・菓子・飲料等)と非
食品にも共通して言えることです。独り生活が増え、これからも一
層増えるので、その購買に向く商品が増えます。

世界最大にコンビニの店舗密度(現在は商圏人口2000人に1店舗)
が高まった理由は、商品購買及び商品の「個人ユース化」に適合し
たからです。

発祥は米国で、購買頻度が高いガソリンスタンドなどで、利便性を
売る「コンビニエンス」ストアでした。米国では、パーソナル・ユ
ースがコンビニ(米国セブンイレブン)というわけではなかった。


コンビニの顧客単価(1回購入額)は、600円付近です(今は若干下
がって576円)。ほぼ、お弁当(300円付近)+飲料等(150円)+
他の商品のアルファ(150円)を買う。

1店の日販が、50~60万円くらいです。2600品目の商品に対し、800
人から1000人の来店/日があることになります。

商圏人口2000人の中で、ほぼ40~50%の人が毎日利用しています。
昼はビジネス街のコンビニで昼食を、夜は帰宅途中で立ち寄る1日2
回組も混じっています。

これは、異常に思える「来店率=来店客/商圏人口」の高さです。
世帯数(商圏内で770世帯)のうち60%が、料理をすることが少な
い単身世帯と夫婦二人世帯(共働きが多い)であるためでしょう。
家族が2人に減ると、急に自宅で調理する回数が減少します。

わが国のコンビニは、商品と年齢のクロス分析によるマーケティン
グの結果、食・飲料・身の回りの生活雑貨を売る「パーソナル・ス
トア」になっているように思えます。

いち早く、顧客変化をとらえたのです。3人や4人の家族でも、仕事
、学校で生活時間が異なることによって、家庭内の個食(孤食?)
が増えています。

関連して言えば、食品スーパーやコンビニでは、揚げ物の惣菜を売
っていることが多い。トンカツ、唐揚、チキンカツ、コロッケ、天
ぷらです。理由は、全国平均で60%(都市部では70%)に増えてき
た1人住まいや夫婦2人(多くが共稼ぎで時間帯が別)では、揚げ物
では一度使った油が、無駄になるからです。大きなキャベツも1玉
は腐ります。1/2カットでも多すぎる。1/4カットでしょう。肉の需
要は徐々に減って、魚になる。魚は野菜や大豆加工品に変わる。

一回購買量の少量化は他の野菜や、食品の容量に共通することです
。物を小さく、精密にするのは、日本人が伝統的に得意とするとこ
ろです。大型店の運営は苦手ですが、コンビニ(100平米と個人の
家の面積の店舗)は得意。江戸や明治の住宅を見ると、実に小さい
ことがわかるでしょう。

わが国は、世界の先進国に、人口と世帯の構成で10年から20年先行
する変化をしています。食品では、特に2000年以降、典型的に現れ
ていますが、住関連、衣料、家電、電子機器のすべてに共通するこ
とです。

ファミリー・ユースの家電を主力に売ってきたパナソニック(松下
電器:堅実経営でした)が、4200億円もの赤字になったのは、わが
国世帯変化のシンボルに思えるのです。

直接因は、テレビ事業の赤字(低価格化)ですが、全体を覆う特徴
にも思えます。そして、このパナソニックの製品の機能・デザイン
は、他の日本メーカーにも共通するのです。

ファミレスも、ほんとうにファミリー・レス(核家族の減少)で、
売上が増えず、顧客単価は下がって業績の悪いころが多い。独りで
黙々と食事ができるのが、牛丼やラーメンです。

関連して言えば、米国で、この2000年代にもっとも店舗数が増えて
いるのは、1ドルショップ(ダラージェネラルや99セントストア)
です。

原因は、世帯数の70~80%を占めるワーカー階級の、物価上昇率(
約3%/年)を引いた実質所得の低下と移民階級です。かつての途上
国の工業化と輸出のため、米国の時間当たり労賃が上がらないから
です。

わが国では、世帯所得の減少に合わせて、商品単価の下落がありま
す。デフレと言ってはいますが、平均の世帯所得が、10年でほぼ20
%も減ったため、低価格化はそれに適合したのです。

▼補足

世界はどこも、商品輸入の形態はコンテナです。経済学的に言えば
、時間当たり賃金が1/5から1/10と低い国の労働力が、コンテナに
パッケージされて入ってくることと等しい。労働は、商品に結実し
ているからです。人はコンテナでは輸入できませんが、労働の結果
(商品)は輸入できます。

ユーロに加盟することで、ユーロで払う賃金が上がったPIIGS(賃
金での生産性は低下)が、貿易と経常収支の赤字で国家財政が破産
する原因も、賃金の低い後発国の工業化(生産性の上昇)です。経
常収支の赤字は、国家単位での資金不足額です。これを借り続けて
きました。

2009年ころに、国債と債券が海外に売れる限界(臨界点)に達した
と金融市場が認識して、PIIGS債の下落と金利の高騰になったので
す。

PIIGSの対策は、ユーロに属し続けるなら、公務員や公的年金を含
み、国民の賃金の、30%~40%低下しか方法はない。ユーロを離脱
すれば、例えばイタリアはリラに戻って、リラが、ドルやユーロに
対し30~40%下落することで、同じことが果たせます。

これを行わない限り、ユーロの危機は、深化します。今のユーロの
対策は小手先で政治的な言葉だけであり、危機を回避する手段には
ならないのです。

世界恐慌の引き金になるかも知れません。ユーロの銀行は、世界の
新興国に、外銀としてはもっとも多く融資(または国債や債券の購
入)をしていて、PIIGS債の損失のため、それを引き揚げつつある
からです。

(注)米国の金融機関と企業も、世界に、$20兆(1600兆円:08年
末)を投資しています(株と債券の購入)。米国で金融の損失が拡
大すると、いつも、これを売って引き揚げます。これが、新興国・
資源国の通貨売りとドル買いになります。このため、米国経済は弱
いのに、新興国通貨に対し、ドルが上がるということが一時的に(
数か月のスパンで)起こります。逆に、米国の対外負債は$24兆(
1920兆円)とGDPの1.7倍もあります。

日本でも、証券の下落等で金融機関の損が増えると外債を売って円
に替えます。国内金融機関の損の発生が、「ドル債売り=円買い」
になって円高にもなるのです。売れる対外債券があると、経済の強
さと逆の動きを通貨はします。

■2.世帯別の職業類型

総務省は、家計調査(サンプル調査)の際、世帯主の職業も、以下
の分類で集計しています。5000万世帯の全数調査ではありませんが
、わが国の世帯と、職業類型を示すものでしょう。

元データは分かりにくい分類ですが、再整理して示します(総務省
 家計調査:2010年) 単独世帯(1570万世帯:1570万人:世帯構
成比31%)を除く、2人以上で生活している世帯(3430万世帯:構
成比69%)だけの職業内訳です。

民間企業の社員  26.5%(910万世帯):会社従業員
無職       22.3%(765万世帯):失業世帯+退職世帯
労務作業世帯   21.4%(734万世帯):現場労働者+常用パー
ト
官公庁職員    10.7%(367万世帯):公務+独立行政法人職
員
商人・職人    10.1%(346万世帯):個人営業の店舗や職人
個人経営者     1.1%( 38万世帯):個人事業の経営者及び
                   開業医、弁護士、薬剤師

                   作家、芸術家等を含む
農林漁業者     3.3%(113万世帯):一次産業で兼業を含む
法人経営者     3.0%(103万世帯):登記した会社の経営者
自由業       1.3%( 45万世帯):各種の個人事業者
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

合計       100%(3430万世帯)

(注1)ここに含まない単独世帯は、05年が1291万軒でしたから、2
010年は1570万軒で、1年に50万軒くらい増え続けています。原因は
、配偶者に先立たれた高齢者の1人住まいの増加です。

(注2)65歳以上が世帯主なのは、2005年で1720万世帯(世帯構成
比35%)です。2030年に向かっては1950万世帯と今の1.4倍に増え
ます。構成比では、2030年で、わが国の全世帯の39%が65歳以上の
世帯になるよう増えます。70歳までは、常用雇用される必要がある
でしょう。

これを調べる前の、自分のイメージを言えば、2人以上の世帯では
、民間企業の社員が50%を占めるのではないかということでした。


実態はその約半分の26.5%(910世帯:2010年)でした。2人以上の
世帯でも、無職が22.3%(765万世帯)に増えています。統計を見
て、自分の不明を知るとともに、2000年代の大きな変化に驚きまし
た。


2000年代の、構造改革、リストラ、非正規雇用の増加による変化で
す。このため、上記の労務作業者が734万世帯(21.4%)に増えて
います。

無業世帯の増加は、失業の増加と65歳以上の高齢者世帯の退職(年
金生活)のためです。

【補足:1年に100万人増える年金受給者】
社会保険庁が管理している公的年金(厚生年金+国民年金+公務員
の共済年金)の総支給額は、47兆7000億円(2008年)で、国民所得
(個人所得+企業所得)の13%を占めています。

同年で公的年金を受け取っている人は、4163万人(総人口の33%:
社会保険庁)です。

なんと・・・全人口のうち3人に1名は、年金を受け取っています。
1人当たりの平均額は114万円/年です。この公的年金の支給は、毎
年8000億円~1兆円増えます。
http://www.sia.go.jp/infom/tokei/gaikyo2007/gaikyo.pdf

年金受給者は、2004年には3753万人でした。2008年は4163万人です
から、4年間で410万人の増加です。1年にほぼ100万人(ほぼ1兆円
)も、受給者が増えて行きます。

人口100万人の政令都市の全人口が、1年で、年金受給者に変わるイ
メージです。

今の、世代間所得移転を行う年金制度は、世論が反対しても、維持
可能(サステナブル)ではないのです。

■3.世帯所得の観点から

わが国の世帯所得は、米国に10年先駆けた金融危機だった1997年を
頂点(661万円)に、2006年(563万円)まで減り続けています。

前記の、職業類型の変化と、無職の増加を見ればわかることです。

世帯所得は、共稼ぎ(有業者1.4名平均)と、前記の年金受給を加
えたものです。(厚労省)

      1997年  2000年  2002年  2004年  2006年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

全世帯  661万円  626万円 602万円  580万円  564万円
------------------------------------------------------------
-
・65歳以上の
高齢世帯  316万円  328万円 305万円  290万円  302万円
・児童のいる
  世帯 782万円  721万円 727万円  703万円  718万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa06/2-1.html

2007年以降の世帯所得では、総務省の家計調査(約8500世帯のサン
プル)の、世帯の年間収入しかありません。

これで見ると、世帯収入額は、2006年551万円(同年の厚労省の所
得統計より13万円低い)、2007年553万円、2008年547万円、2009年
535万円、2010年521万と、ほぼ、減り続けています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001074636

1997年が661万円、2010年は厚労省基準の所得では、1世帯当たりで
530万円くらいでしょう。年間で131万円(20%減)、月間平均で10
万円もの世帯収入の減少があります。

(注)1997年の世帯数は4500万軒(世帯人数2.8人)、2010年がほ
ぼ4900万軒(世帯人数2.6人)で、この13年で、世帯数は400万軒(
約9%)増えています。

原因は、単独世帯の増加です。このため、働く人の個人の所得では
、1997年から2010年の間に10%減ったと見ていいでしょう。

なお、世帯数は5060万軒(2015年予測)からは増えず、2020年から
は4900万軒に向かって減り、平均世帯人数も2.3人に向かい減少し
ます。2010年代以降、人口減にはいるからです。

■4.世帯所得の分布

2008年時点での、世帯所得の分布は以下です。平均の世帯所得は、
556万円ですが、平均所得以下の世帯数が61%を占めています。

【分布:2008年】
200万円以下     18.5%( 910万世帯)
200~400万円    25.8%(1260万世帯)
400~600万円    20.7%(1010万世帯)・・・平均556万円
600~800万円    14.0%( 690万世帯)
800~1200万円    14.1%( 690万世帯)
1200~2000万円未満  5.8%( 280万世帯)
2000万円以上     1.3%( 60万世帯)

【ほぼ平均から、平均以下が65軒】
100軒の町を想定すると、400万円未満の生存所得階級が44軒です。
この中には、年金を含んで平均所得300万円くらいの65歳以上の世
帯と独り世帯が多く混じっています。400万円から600万円で、平均
以下からほぼ平均所得の世帯が21軒です。

合計で65軒が、ほぼ平均から平均の下の所得の世帯です。
2000年代にこの所得階層が増えています。

非正規労働(パート、アルバイト、派遣、契約、嘱託)の増加も関
与しています。全年齢で、男性は20%が非正規労働です。女性では5
5%が非正規労働です(いずれも2011年)。賃金はさほど上がらな
くても、正社員は、「エリート階級」になっているかもしれません
。大手の会社では、ほぼ60%の正社員が、リストラの不安心理をも
つと言います。(月刊プレジデント)

1990年には、男性では9%(正規雇用が91%)、女性では38%が非
正規(正規雇用が62%)でした。男性では非正規雇用が倍増し、女
性では45%も増えています。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3250.html

【平均以上の所得の世帯が35軒】
600~800万円が14軒、800~1200万円が14軒です。1200万円超~200
0万円未満が6軒あります。2000万円以上の高所得世帯はほぼ1軒で
す。多くが、50代以上の年齢層です。

▼世帯所得5分位別の、所得減少

所得5分位とは、第一分位所得を下から20%、第二分位を次の20%・
・・として、5分割した平均所得です。2008年までとして、厚労省
は以下のように集計しています。

      1999年   2002年  2005年  2008年 99年比
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第一分位  258万円  225万円  209万円 210万円 81% 
第二分位  450万円  396万円  372万円 361万円 80%
 中位値  544万円  485万円  462万円 448万円 82%  
 
第三分位  650万円  593万円  574万円 549万円 84%
第四分位  937万円  896万円  893万円 814万円 87%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

全分位で、世帯所得が減っています。減り方で言えば、所得で中位
値(2008年で448万円)以下の世帯の所得減少が、9年間で約20%で
す。

これも、どう言ったらいいか。名目金額の年間所得で、平均18%も
減った国は、先進国では日本のみです。PIIGSは、もっと激しい勢
いでこれを行わねばならない。日本の世帯所得の減り方は、どうし
たことか。

2000年代のリストラ(正社員の減少)に、前記の非正規雇用の急増
が加わったためです。

政府は、こうした所得データの集計・発表を、積極的には、行いま
せん。しかし本来、経済は、他の何よりも、世帯の所得の増加を目
指すものでなければならない。

輸出でのGDPの増加分は、賃金コストの削減で果たされ、世帯所得
の増加になっていません。外需が増えた分、GDPが増えたと言いま
すが、それは、輸出企業の、所得の維持にすぎなかったのです。

輸出が減ると、企業所得も世帯所得も、その減少に伴って減ります
。輸出が増えたときは、企業所得の増加と、国としての外債購入の
増加にしかなっていません。いずれにせよ、世帯所得は減っていま
す。

経常収支(国家単位での黒字)は、ドル債を買うことで、海外に流
出しています。そして、日本の1年の所得(企業+世帯)をはるか
に超え、563兆円にもなっていた外債(対外資産)は、20%のドルと
ユーロ安で、126兆円も含み損になっています。20%のドル高になら
ないと、126兆円の資産が消えたことと同じです。

国内の世帯の所得は、1997年から一貫し減ってきたのです。政府の
経済運営が誤っていたということです。世帯所得が減って、内需の
消費が増えるわけもない。

■5.職業類型別世帯の、所得、貯蓄、負債

日本の世帯は、銀行と郵貯の預金(約800兆円)では、1世帯当たり
世界最高であることは事実です。(注)下がったとは言え住宅資産
と株を含めば、世帯の資産は米国が多い。日本人に多いのは預金で
す。

なお、世帯の金融資産1450兆円というときは、預金以外に、生命保
険、年金積立金(基金)、株、債券が入っています。ここで言う「
貯蓄」とは異なる概念です。

前記の世帯の職業類型と照らし、総務省の家計調査(サンプル調査
)での、家庭が調査に応じた貯蓄額、負債額を見ます。

データは2010年の最新のものです。数値の煩雑を避けるため、一桁
は四捨五入しています。年収順に並べました。

                  預金中心の ローンの
  2人以上の世帯構成比(世帯年収) 貯蓄額   負債額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
個人経営者     1.1%(1120万円)  3370万円  1120万円
法人経営者     3.0%(1120万円) 3010万円  820万円
官公庁職員    10.7%( 890万円) 1570万円  770万円
民間企業の社員  26.5%( 760万円) 1420万円  750万円
自由業       1.3%( 750万円) 2460万円  630万円
商人・職人    10.1%( 590万円) 1630万円  530万円
農林漁業者     3.3%( 570万円) 1780万円  330万円
労務作業世帯   21.4%( 540万円)  870万円  560万円 
無職       22.3%( 440万円) 2210万円   70万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注)それぞれの職業概念は、前記に示しています。世帯所得は、
1世帯平均の有業者1.4名の合計です。世帯主の所得が80%くらいを
占めると想定されます。
http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/h22_gai6.pdf

家計調査は、サンプル世帯約8000軒のアンケートです。このため、
貯蓄は、銀行・郵貯の預金、保険、株のうち申告分で、年金基金や
他の名義のものは、漏れているでしょう。

家計のアンケート調査での貯蓄は、合計で850兆円くらいにしかな
りません。。

[職業別の貯蓄額と負債額]
貯蓄額が多いのは、開業医や弁護士、税理士等を含むための個人経
営者(3370万円:負債1120万円:純貯蓄2150万円です。次が法人経
営者(3010万円:負債820万円:純貯蓄2190万円)です。

個人・法人の経営者に続き、世帯収入の3位には、公務員(890万円
)が来ます。1570万円の貯蓄で負債が770万円、純貯蓄800万円です
。

民間会社の社員は、1420万円の貯蓄で、負債が750万円、純貯蓄が6
70万円。これが生活実感に近いでしょうか。

自由業の世帯の所得は、民間会社の社員世帯並み(750万円)です
が、年金や所得保証の無さを反映し、貯蓄額は2460万円と多く、負
債額は630万円と少ない。

後は、商人・職人の貯蓄1630万円、農林漁業者の1780万円、及び世
帯の21%を占める労務作業者(世帯所得540万円)の870万円の貯蓄
です。

2人以上の世帯で無職は21.4%を占めますが、平均所得は440万円で
す。これは年金と他の非労働所得のためです。

無職でも、65歳以上で退職金をもらった後の高齢者が多く混じって
いるので、貯蓄額は2210万円と多く、ローン負債は70万円、純貯蓄
が2140万円です。ほぼ厚生年金の10年分の純貯蓄ですが、1990年代
中期まではあった金利収入がほとんどない。

以上の傾向は、次の世代別の貯蓄・負債と照らし合わせると、一層
、はっきりした像を結びます。

1450兆円もある個人金融資産(世帯で単純平均すれば約3000万円と
巨額)を取り崩せば、消費は増えることができるという論がありま
すが、多くが、崩せない年金や株(含み損)で債券で、可処分的な
預金に類するものは850兆円くらいです。

民間会社の社員(世帯構成比26.5%)で言えば、こうした貯蓄額が
1420万円、住宅ローンの負債が750万円はあります。住宅資産は199
2年から値下がりしているので、純資産は少ないでしょう。

このため、取り崩せる貯金は、80%以上の平均以下と平均的な家庭
では、ほとんどないのです。資産の下落があるからです。

■6.世代別の貯蓄と負債

1世帯当たりの、平均貯蓄と負債額を世代別に見ます(2009年)。
http://www.shiruporuto.jp/finance/tokei/stat/pdf/data02a.pdf

http://rh-guide.com/data/kojin_sisan.html

       貯蓄残   負債残   純貯蓄
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
20歳代    250万円   380万円  -130万円
30歳代    460万円   820万円  -360万円
40歳代    770万円  1010万円  -240万円
50歳代    1090万円   620万円  +470万円
60歳代    1680万円   280万円  +1400万円
70歳代以上  1380万円   180万円  +1200万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

40歳代の世帯までは、純貯蓄がマイナスです。
50歳代が、やっと470万円の純貯蓄になります。

現在の50歳代以下が、住宅を買ってローンを組んだのは、住宅価格
がピークだった1990年の後で、その後、大都市部ではほぼ買った価
格の50%に、地方では60%に下落しています。

つまり、わが国の50歳代以下の世代は、貯蓄あっても、住宅を時価
で見た純資産という観点で言えば、平均でマイナスでしょう。

貯蓄と純資産があるのは、ほぼ1985年以前に、ローンを組んで住宅
を買っていた60歳代、及び70歳以上に限られます。

1992年から不動産が下がり、その後、一向に底打ちしないため、世
代別の純資産に、本人の責任とは言えない不公平が生じています。


50歳以上の世代は、初任給が上がって、年齢給に加えたベースアッ
プの賃金上昇があった世代です。ところが、40歳以下は、賃金も、
年2%くらい増える年齢給以外は、上がっていません。

しかも、40歳以下では特に非正規雇用が増えています。
平均の世帯所得は20%は減っています。

今の年金制度で、近々65歳以上になる人以上の世代は、自分と会社
の年金掛け金の合計の3~5倍くらいの年金をもらいます(厚生年金
や公務員共済年金)。

年金と医療費には、世代間の所得移転の機能があるのです。(旧大
蔵省 財政金融研究所 植田和男氏他の1987年の研究:その後の名
目賃金水準が上がっていないので今も当てはまります)
http://www.mof.go.jp/pri/publication/financial_review/fr_list/r06/r_06_044_058.pdf

国家財政が破産して年金支給が減額され、金利が上がり、インフレ
に転じることは、現在、純金融資産を持っている世代の、資産額を
減らします。所得が増えていないので、今のままでは、今後、年齢
が上がっても、現在の60歳代以上の世代のように純貯蓄が増えるこ
とには向かいません。

一方で40歳代以下にとって、貯蓄より負債のほうが多いので、イン
フレはプラスになります。そこからご破算で再出発になる。

暴論ですが、40歳代以下の世代にとっては、国家財政の破産が望ま
しいことになります。(注)親の金融資産は、なくなります。

別稿の、資金循環表の分析から、数年内の国家財政破産は必然と証
明しています。

            *

以上、本稿では、今後のマーケティングの基礎となる、核家族の個
人化、世帯所得、貯蓄、負債等を整理しました。事業で商品企画や
商品開発をするとき、あるいは店舗の商品構成で、必ず考えねばな
らない事項です。

POSデータの売上分析では、過去の結果しかわからない。他方、世
帯の構成変化、世帯所得、及び純貯蓄の傾向は、未来の需要を示し
ます。

【後記】
ユーロは、1兆ユーロのPIIGS対策資金で、中国を含む新興国への「
特例債」の発行に依存することを、決めています。

端的に言えば、経常収支が黒字の新興国から、所得の高いユーロ諸
国が借りる予定ということです。この資金源のあやふやさのため、
ユーロ危機は、一層深化し、イタリア国債の金利も7%に向かい上
がっています。

奇(く)しくも、医療機器とカメラのオリンパスで、1000億円規模
の証券損失の「飛ばし」が明らかになっています。

そのスキーム(枠組み)は、監査が及びにくいオフショア(租税回
避地)のケイマン島に、特別目的会社を作り、下がった証券を額面
で買い取らせる方法でした。国税庁は、タックス・ヘイブンへの利
益隠しは執拗に追求しますが、粉飾は見逃します。利益があれば、
所得税が入るからです。

特別目的会社は、証券の額面とほぼ同額の社債を発行し、オリンパ
スに渡す(買い取る)。これで表面上、オリンパスに損は出ない。
これが損失飛ばしです。

オリンパスは、その後の、20年~30年の事業利益を特別目的会社に
送金し、少しずつ穴埋めする予定でした。ところが、飛ばした証券
が、その後も下落を続けたのです。

このため、実体があやふやな会社を買収したようにし、合計で1000
億円相当を払い、「のれん代(ブランド価値)」やコンサルタント
料として、オリンパス本体の、バランスシートに計上しています。
この偽装的な買収は、重大な経済犯である背任につながる違法です
。当時の社長は、財務部が行ったようで自分は知らないと答えてい
ますが、これは、あり得ません。

オリンパスの例を書く理由は、どこかとは言わずとも金融機関その
ものが、政府公認で、こうした損失飛ばしのベテランだからです。
オリンパスの飛ばしの方法を作ったのはフランスの大手銀行BNPパ
リバと言います。CDS(債務回収を保証する保険)のデリバティブ
も使います。

ギリシア国債では、額面金額の50%をヘア・カットするという。
ヘア・カットは刈り込むこと、つまり債権の50%放棄です。

これを、ギリシア債の持ち手(独仏英の金融機関)が「自主的」に
行うから、CDSの保険を適用する対象にはならないという。ひどい
ものです。証券での損失リスクをカバーするためのCDSだったので
しょう?

ヘア・カットの期限は、2012年1月です。その時、CDSでどんな波乱
があるか、わからない。独仏の金融機関は、CDSの無効化と、ギリ
シア債の50%ヘア・カットを認めたわけではないからです。

行えば、オリンパスに似た飛ばしと偽装があったことになります。

株主代表訴訟で、役員が賠償義務を負うでしょう。EUの連合政府が
行えば、なんでも可能というのではない。行政も、法の下にあるか
らです。どう認識しているのでしょうか? 政治的な権謀術数が、
法の上にあるとするのか?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



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