インフレ率と金利と世界の株価
This is my site Written by admin on 2022年5月15日 – 17:00
今回は物価の上昇率について、要因と展開を分析します。金利と株価、
国債価格、社債価格に大きく関係するからです。

「コロナ下の量的緩和の反動としての、世界的な物価の上昇→低かっ
た金利の上昇→高かった株価と債券価格の下落→シャドー・バンクと
銀行の危機→政府の財政危機」に連鎖していくからです。

インフレの中では、中央銀行による「銀行危機対策の、量的緩和と利
下げ」の実行が難しくなるので、この連鎖が生まれます。
現在、世界の株価と債券価格の下落、金利上昇が生じています。

インフレ率が高いと、銀行危機のときの対策である量的緩和と利下げ
を、実行できない。逆に、FRBはインフレ抑制の目的で利上げと量的
縮小(QT)に向かっています。

インフレの中では、中央銀行は「ラストリゾート(最後の貸し手)」
の役割を果たせません。(注)金融危機(=銀行危機)のとき、マ
ネーを投入するラストリゾートになることが、中央銀行の設立目的だ
ったのです。

FRBと日銀は、2008年からの13年の量的緩和(FRB 8兆ドル+日銀500
兆円)のため、「利上げとマネー縮小への出口なし」の状況になって
しまったのです。FRBの2022年の利上げは、追い込まれた決定です。

インフレ対策として利上げをすれば、米国では時価総額5000兆円に膨
らんだ米国株が下がります。日本では、1200兆円になった国債の金利
が上がり、価格は下がって、銀行危機から財政危機にまで至るからで
す。

それが分かってはいても、FRBは、2022年利上げに向かっています。
このため、米国と世界の株価が下がっています。日銀は長期金利0.
25%で踏みとどめていますが、代わりに日米の長期金利の差の拡大
(イールド:2.75%)から、「1ドル=130円台」の円安が来たので
す。

円とドルのレートの「均衡イールド」は歴史的に見て1.5%付近です。
2%以上開くと、「金利の低い円売り/金利の高いドル買い」が起こ
り、均衡点が円安にシフトします。

日銀が、迫るインフレのなかでも利上げができないのは、「円安を求
めているからではなく、国債の金利を上げてはならない」からです。
国債残が1200兆円(GDPの2.3倍)になった日本の日銀にとって、ゼロ
金利と金融緩和からの出口はない。わずか1%の利上げをするだけで、
銀行危機(日銀+国債をもつ銀行の危機)から財政危機になっていく
からです。

日本は、2022年の3%(予想)インフレに対応して、金利が2%に上が
るとどうなるか。1200兆円の評価の既発国債価格が13%(156兆円)
下がり、債務超過になった日銀、銀行、生損保、GPIFが、借換債を含
んで新規に発行される1年に263兆円の国債を買えなくなります。これ
は、政府の赤字財政のデフォルトを意味します。

 累積赤字が大きな会社が、銀行から増加借り入れができなくなった
ときと同じです。(財務省2021年度 国債発行計画)。日銀は、財務
超過(赤字>自己資本11兆円)になっても、倒産はしません。しかし、
信用創造(債券と国債の買い)はできなくなっていきます。財政破産
のトルコ中銀のように、通貨信用が低下するからです。
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2021/issuanceplan201221.pdf

本稿は、有料版と無料版に共通な増刊です。有料版の正刊は、毎週、
水曜日送っています。コロナ下での講演や研修は。ZOOMやTEAMなどを
使うTV会議の形式で行っています。参加者も多数にでき、資料の共有
も可能なので、ゆったりと話すことができますね。

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<Vol.1235:日曜増刊:インフレ率と金利と世界の株価>
   2022年5月15日:有料版・無料版共通

【目次】
■1.米国の物価上昇8.3%(4月)
■2.第二次石油危機のあととの類似
■2.1980年の第二次石油危機のあととの類似
■3.賃金が上がらない日本の物価上昇は、スタグフレーション
■4.戦況
■5.通貨圏の興亡
【後記】

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■1.米国の物価上昇8.3%(4月)

先週も、世界の株価が下落しました。昨日は、世界の金利を主導する
米国CPI(消費者物価指数)の、22年4月分が公開されましたが、8.3
%と、当方の予想より1ポイントは高かった。

ただしCPIは3月の8.5%よりは下がりました。卸売物価である生産者
物価指数も11%上昇しています。(米国消費者物価指数)
https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9052

価格変動が大きな生鮮とエネルギーを除く「コア物価」も、6.2%上
がっています。米国は「賃金インフレ」を呈しています。全米の平均
賃金は短期では下がらない。インフレの長期化を示すものでもありま
す。
(米国の賃金:1年では2020年3月の下落の反動(15%)があるので、
5年の推移を見てください)
https://jp.tradingeconomics.com/united-states/wage-growth

米国CPIは、主要国でもっとも騰勢が強い。今回の物価の根底にある
ものは、ふたたび上昇したエネルギーと資源価格です。

G7による「ロシア原油の禁輸」はLNGに進むという見通しから、原油
価格は1バーレル104.8ドルに上がっています(6%上昇)。4月11日
の95ドル付近から、約10ドル(9.6%)の上昇です。
(米国WTI:原油先物)。
https://nikkei225jp.com/oil/

原油が上がるとほかのエネルギー・金属資源・金・穀物(国際コモデ
ィティ)のコモディティ指数も上ります。バスケットでの貿易加重が
もっとも大きな基礎資源だからです(約40%の加重)。
(ダウ・ジョーンズコモディティ指数:2021~2022年5月)
https://www.spglobal.com/spdji/jp/indices/commodities/dow-jones-commodity-index/#overview

【FRBの、5月(0.5%)に続く6月利上げ】
米国CPIが前年比8%台と高いと、22年6月も、0.5%または0.75%の利
上げになります(FRB議長パウエルのコトバでは0.5%)。

[織り込み投資] 金融商品では。来月の利上げがあったものとして
今日の価格に織り込む株式と債券の売り越しが行われ、株価と債券
(国債・社債・住宅証券)の価格が下がります。利回りは、0.5ポイ
ント上がります。

FRBの利上げは、CPIに約1か月遅れます。
株価は、3か月くらい先の金利と予想企業純益を織り込みます。

2022年から2023年は、株価の予想に、
・3か月から6か月後の、企業純益の見通しに加えて、
・「インフレ率→金利調整」の予想が、必要になっています。

現在、米国の株価、国債、社債、住宅ローン証券の価格が上がる(=
利回りが下がる)要素は、ありません。

■2.1980年の第二次石油危機のあととの類似

米国の、2022年の利上げは、1980年から81年の、第二次石油危機のあ
との物価上昇(1981年:10.4%)に似ています。

【41年前のインフレのときは】
41年前ですが、当時のFRB議長、身長が2mの巨人ボルカーの果敢な利
上げ(=金融の緊縮:短期金利10%)によって、物価の上昇を収めた
のです。CPIの正常化(3%から4%台)には、約3年かかっています。

今回と同じように、「コモディティ価格の上昇+賃金の上昇」があっ
たからです。

1980年同様、賃金が6~7%上がる傾向があると、労働コストが商品価
格に転嫁され、1年のCPIの上昇は9%から10%になります(現在の、
米国の賃金上昇は5%付近です)。

1980年代から、10年間にくくって米国CPI上昇を並べてみます。括弧
内は、短期変化を刈り込んだ、1年平均(福利計算)です。

【43年間のCPI:米国】
・1880~1989年・・・50%(年平均4.1%)
・1990~1999年・・・27%(年平均2.4%)
・2000~2009年・・・24%(年平均2.1%)
・2010~2019年・・・17%(年平均1.6%)
・2020~2022年・・・13%(年平均4.1%:3年間)
(43年の米国物価指数から、筆者計算)
https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPI&c1=US&s=&e=

ここから、はっきり見えます。2019年まで30年間、消費者物価の有意
な低下が続いたあと、2020年代には1980年代のインフレ時代に回帰し
ています。ここから、金融政策でもFRBは1980年代の「高金利時代」
に戻らねばならない。

金利の上昇は株価と債券の価格(投資家)とって、受難の時代になっ
ていくでしょう。株価と証券価格の、下落の時代が始まりました。
(注)ボラティリティ(VIX)の幅で確率的に変動する株価には、短
期的には、反発の上昇があります。ここでいうのは、1年の長期での
株価、債券価格です。30%という高いVIX(変動幅)が示すのは、1年
後の15%下落の推計です。株価上昇期のVIXは、20%以下と低い。
(米国S&P500のVIXの推移)
https://www.oanda.jp/lab-education/oanda_lab/oanda_rab/vix/

【米国より長期雇用が多い日本の賃金は、上昇していない】
資源価格の上昇は、世界共通です。日本のCPI上昇が2.6%(22年4月
:総務省)と、米国より4.7ポイントも低い理由は、賃金が上がって
いないからです。

米国の賃金は約5%上昇しています。一方で日本の世帯所得の伸びは、
ゼロ付近です。現在の米国の物価上昇は8.3%、日本は2.6%です。賃
金上昇の差に相当する5.7ポイントの差があります。
(日本の最新のCPI)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf

【43年間のCPI:日本】
米国の43年と同じように10年くくりで計算した日本の長期CPIは以下
です。
・1980~1989年・・・17.8%(年平均1.7%)→円高
・1990~1999年・・・ 9.0%(年平均0.9%)→円高
・2000~2009年・・・-2.1%(年平均-.02%)→デフレ
・2010~2019年・・・ 6.3%(年平均0.62%)→消費税の増税
・2020~2022年・・・ 0.7%(年平均0.2%)→コロナ危機
                      資源価格高騰
https://ecodb.net/country/JP/imf_cpi.html

日本のCPI上昇率は、構造的に米国より年率で約2ポイントは低い。
2000年代の賃金の上昇が、0%付近と低かったからです。1970年代の
円高の方向の中で、日本は世界1賃金が上がっていたことが信じられ
るでしょうか。

今回、2022年は、賃金が上がらない中で、
・ドルでの資源価格高騰に加えた、
・円安の要素から、
低かったCPI上昇率が3%台に上がる可能性が高い。

第二次石油危機あとの10年間で見れば、米国のCPIは+50%でした。日
本は、その約1/3の17.8%でした。原因は、円が1ドル250円から120
円台に上がって(2倍の円高)、第二次石油危機の輸入資源価格上昇
の、日本のCPIへ影響が緩和されたからです。

今回は、逆の円安20%から円は物価をあげる要素になっています。

■3.賃金が上がらない日本の物価上昇は、スタグフレーション

2022年は、1980年代と逆の円安です。資源価格の高騰と円安(-20
%)が重なります。日本のCPI上昇は、1980年代の年率1.7%の上昇よ
り高い、3%台に向かうでしょう(2022年4月のCPIは前年比2.6%上昇
です)。

米国では3%の物価上昇は普通のことです。しかし賃金が上がってい
ない日本では物価が3%上がると、世帯は商品数量で3%の商品購買、
特に食品購買も、減らさねばならない。

生命を維持するための食品の需要減少は、深い不況を意味しています。
20%は上がっている電気代、ガス代、ガソリン代の20%節約は難しい。
盛夏に冷房をとめて、お風呂の回数も減らさねばならない。というこ
とは・・・店頭で買う商品の数量は、価格上昇の3%ではなく、5%か
ら6%は減るでしょう。

この状態が、
・賃金が上がらないなかで、
・輸入のエネルギー・資源・穀物の、コストプッシュ型の価格上昇に
加えた円安から、
・国内物価が上がっていく「スタグフレーション」です。
(スタグフレーションは1973年の狂乱物価以来、50年目です)

政府は、賃金が上がっていない世帯に対して一律、月3万円(年間36
万円)の生活補助をする必要があります。しかしその総額は、「36万
円×5300万世帯=19兆円」になるので実行ができない。19兆円の財源
がないからです。

1月3万円生活補助は、消費税10%(21兆円)をゼロ%にすることと同
じ効果です。(2022年7月の参議院の争点になりえるでしょうか。財
務省は、強く反対します。政党よ、勇気を持て!)

(1)1世帯1か月3万円の特例補助金を出すか、(2)消費税0%に戻す
か。スタグフレーションを防ぐには、どちらかしかありません。
実行できないと、予定通りスタグフレーションです。

この政治的決定ができるくらい政治家と政党は、経済分析力と発言力
をもっているでしょうか。政治に期待はできないと思っています。本
来は、参院選(22年7月)の、第一の争点にならなければならないの
です。

今回は、2022年6月期と9月期の企業純益の低下と、株価の下落も加わ
ります。世帯年収1000万円以上の高所得層(8軒に1軒:13%)に、株
価資産の下落が及びますから、百貨店の高額品にも、スタグフレーシ
ョンは深化していくでしょう。

【企業純益とPER】
2022年3月期の上場企業の企業純益は、前年比8%増でした。6月期、
9月期、12月期に、これを上回るかとなると・・・難しい。

「株価=時期企業純益×PER倍率」ですが、PERは、長期金利の上昇に
よって下がります。日経平均の予想PERは、12.42倍です。(注)米国
ナスダックのPERは24.96倍1,日本の2倍です。

日経平均(225社)の、PERの逆数の「株式期待益回り」は、8.05%で
す。この8.05%を分解すると、国債金利は0.25%と低くても、企業純
益実現のリスク率が7.8%と高い。

投資家が、長期金利は0.25%と低く、130円の円安で物価が3%上がっ
ても、日本の大手企業(225社)の次期の企業純益(6月、9月)の上
昇は危ういと見ていることを示しています。
(時価総額672兆円:22年5月11日)。
https://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/

コロナ危機のなかで約2倍に上がり、2022年には最も下がっている米
ナスダック(IT新興企業が多い:3000社)は、年初の1万6500ドルか
ら1万1947ドルへと、28%下げています。
https://moneyworld.jp/market/@@CCO%2FU

臨界点の30%(時価総額では-1000兆円)下がると、担保の証拠金が
不足して、追い証を迫られる投資家が増え、換金の投げ売りが起こっ
て、銀行危機への断崖に来ます。
(米国ナスダック株価)
https://finance.yahoo.com/quote/%5ENDX

S&P500の株価も、年初の4800ドルから3923ドルまで、ナスダックと同
じ幅の28%下げています。

【2020年3月との比較】
2020年3月のデルタ株危機のときは、経済活動の停止により1か月で
30%急落しました。このときは、FRBの緊急で巨大な量的緩和(4兆ド
ル)による流動性相場が起こり、短期で回復しました。米国物価が、
需要の減少からデフレになっていたので、FRBは、量的緩和ができた
のです。

今回は、物価が下がるデフレと逆の8%台のインフレです。インフレ
に対しては、FRBは量的緩和と利下げを実行できまでせん。

2022年の政府とFRBは株価対策をもたず株価をさらに下げる利上げを
迫られています。米国株、日本を含む世界株は「インフレ→金利の上
昇→マネー量縮小(QT)」の方向から、下げの予想しかできなくなり
ました。(注)利下げができるのはインフレが収まったあとです。

「需要>供給」から物価が上がる、デマンドプル型のインフレなら、
株価は下がりません。今回は、コロナ下の通増増発(世界で1200兆
円)による、資源コモディティが上がる。コストプッシュ型のインフ
レです。商品の原価が上がって、売価に波及する、悪い物価上昇です。

これに対する、株価への、金融面での対策はありません。資源や物流
関連での次期企業純益の増加だけが、個別株の上昇要素でしょう。
(再掲:DJコモディティ価格指数)
https://www.spglobal.com/spdji/jp/indices/commodities/dow-jones-commodity-index/#overview

2022年の秋まで株価が回復しないと、2021年末の世界は、金融危機に
向かっていくでしょう。金融では貿易より大きく世界がつながってい
るので2008年のリーマン危機並&同時でしょう。

リーマン危機のときは、米国が主導した世界株価(MSCI)は3か月で
50%下げました。この金融危機に対して、FRBが3兆ドル(390兆円)
のマネーを入れても、回復に4年を要したのです。

世界は、今回はインフレからの「金利の上昇→株価と国債の下落→銀
行危機」になっていくでしょう。先行している、米ナスダック(時価
総額3000兆円)の30%下落を見ると、時間は切迫しています。30%以
上下がると追い証の不足からの投げ売りが増えるからです。

米国株(時価総額5000兆円)の下落も約30%ですから、すでに1500兆
円の含み損が、シャドー・バンク、銀行、投資家に発生しています。
2022年5月時点でのFRBのマネー供給は、総額で1000兆円です。FRBは、
これ以上、資産を膨らませることはできない。

【資源輸出国と輸入国が分断された世界】
ロシア経済の封じ込めよって、ロシア経済が苦境になるという説があ
りますが、これは、逆です。

ロシアは資源の輸出国です。ロシアに協調している中国とインドへの
輸出によって、ロシアの輸出利益は増えます。世界の50%のGDP経済
が、ロシア側に就いています。これは資源の輸出国連合に近いもので
す。

中東の産油国、南米とアフリカの後発国の資源輸出国、タイを除く東
南アジアもロシア側です。これらの国々のGDPは、中国・インドを含
むと、世界GDP(1京円)の50%の、5000兆円です。新興国が多く経済
成長力は5%と高い(人口は世界人口78億人の80%)。

一方、ロシアの制裁国は、北米、西欧、東欧、日本、韓国、シンガ
ポール、オーストラリアです。世界のGDPの50%(5000兆円)ですが、
多くの国が高齢化し、移民以外の労働人口は増えず、経済成長力が2
%程度と低い。

世界経済の重心の、5年後の帰趨も、決定したように思えます。
西側は、資源国のロシアへの、金融・経済制裁が逆噴射になって、自
滅に向かっているように見えるのです。

■4.戦況

メディアでは、ウクライナの反撃でロシア軍が後退を報じています。
しかし西側では統制された情報を集めて観察すれば、戦場の状況は、
報道とは逆に見えるところがあります。

フランスの女性ジャーナリストは、国連の安全保障理事会で、スイス
にいるウクライナ軍を育てたジャック・ボー大佐は、SNSで西側と全
く違う分析をしています。

フランス語ですが、Google翻訳で日本語化できます。西側メディアは、
これに反論ができない。このため黙殺しています。TVに出る「軍事専
門家」の解説と逆です。

実態を調べず、米軍情報を元にして流れているものがあまりにひどい
ので、事実を示したという。(ウクライナの軍事情勢:ジャック・
ボー=ウクライナ軍の指導者)
https://cf2r.org/documentation/la-situation-militaire-en-ukraine/

確かに、進撃するロシア軍(平均年齢20-22歳)の犠牲は事前の想定
よりは大きい。攻撃には、待ち伏せができる防衛の3倍から5倍の軍事
力(兵士+武器)が必要であり、犠牲は大きくなります。しかしその
前に、待ち伏せ防衛する側のウクライナ軍(平均年齢35歳)の犠牲が
大きく、しかも、武器・火力・弾薬が払底しつつあるようです。

米国と西欧からの武器・火力・弾薬の支援はロシア空軍によって陸路
の輸送(ロジスティクス)が爆破されているので、ウクライナ東部の
前線には、十分に届いていない。

実戦を経験している傭兵(19カ国からなる混成軍:1日の日当平均10
万円)は戦っています。しかし訓練が十分ではないウクライナの正規
軍の兵力は、弱い。地上戦は、兵士と武器のロジスティクスが勝敗を
決めます。この情報は、報道管制が敷かれた西側には出ていません。

本質は、ウクライナを前線の盾にした「米国とロシアの戦い」です。
米国の目的は、プーチンを失脚させ、資源生産国のロシアを米国金融
が支配することです。

1970年代から半世紀続く、中東地域における米軍の戦争の関与と同じ
です。半世紀の戦争の、裏を現場で知っている産油国は、ロシア側に
ついたのです。戦争の目的は、メディアがいう、イデオロギーではな
い。経済的な利益です。

原油の世界流通の支配は、ターゲットになりやすいため、中東の戦争
が、一定年度で繰り返されてきました(2年半に一回、米国が関与し
た中東戦争)。1年に100兆円分生産される武器・弾薬の在庫が増える
と、どこかで戦争が起こってきたのです。今回、米国は、シリアとア
フガンから兵を引いています。その代替が、ウクライナへの武器・弾
薬の供与(300億ドル相当)です。

■5.通貨圏の興亡

今回の戦争にも、ドル基軸の問題がからんでいます(米国の戦争の狙
いは、常に、ペトロ・ダラーの強化です)。このため、2014年から反
ドル基軸の「一帯一路」を目指す中国が、ロシア側についたという事
情があります。

一帯一路(シルクロード・ベルト)は、ロシアと中東を含む広大な
ユーアシアを、東西にカバーするデジタル人民元(CBDC)の通貨圏で
す。中国のGDPは購買力平価(商品の数量生産)では米国を超えてい
ます。国家独占資本主義という経済体制の欠陥がありますが、GDPが
世界1の国が、基軸通貨国になるのが、自然なことです。

人民元は、プーチンが表明したロシアのルーブルと同じように、これ
を機会にしてコモディティ・リンクの通貨になっていくでしょう。こ
の方向が、ウクライナ戦争を契機にして明確に見えてきました。

2000年代のドル基軸体制を支えてきたのは、1位が中国、2位が日本で
す。

(1)まず、米国経常収支の赤字からのドルの海外流出があります
(2000年代は毎年5000億~1兆ドル)。

(2)ドルは、米国の経常収支の赤字から、海外に流出の超過を続け
ています。しかし、世界の中央銀行は、自国の輸入代金の支払いのた
めの「ドル準備預金」として買ってきました(総額1500兆円)。

この買いのため、米国企業の輸出力に見合うようには、ドルは下がら
なかった。赤字通貨のドルは、高く維持されました。

これが、赤字通貨のドルによる、矛盾した基軸通貨制度です。(トリ
フィンのディレンマ)

日本は、100%の確率で、ドル通貨圏に残ります。しかし1999年に19
カ国のユーロ圏を作ったドイツのように、中国は、ユーラシアのコモ
ディティ通貨圏によって、ドル圏から離れるでしょう。


(1)中国の対外総資産は9.3兆ドル(1390兆円:負債を引いた対外純
資産は1.9兆ドル)に増えていて、中国はこれを売ることができます。

中国が世界1大きなドル預金を減らし米国債を売ると、ドル買いの国
際金融によって、米国産業の輸出力より高く評価され、世界を78年カ
バーしてきたドル基軸の体制が、終わります。

(2)日本の対外総資産(1146兆円:対外純資産325兆円)ですが、日本
は、対外資産(米国債、ドル証券、ドル預金)を、ドル基軸を支える
ため、売らないでしょう。日銀の金融政策は、量的緩和もゼロ金利も、
円でのドル買いを促す政策です。

             *

以上は、米国の最大の国益だった「ドル基軸通貨圏の崩壊」を意味し
ます。世界がドルを基軸通貨(=貿易通貨)と認めているため、米国
は、経常収支の赤字を気にせず、ドルを刷って、渡しておけばよかっ
たのです。これが米国の対外負債3000兆円になっています。

コモディティ通貨圏が作られると、中国・インド、資源輸出国、後発
国のグループ(合計GDPが5000兆円:世界の1/2)には、外貨のドル
準備が要らず、貿易用のドル買いの必要は、なくなるのです。
 ↓
米ドルの世界の通貨に対する実効レートは、米国の貿易赤字(1年1兆
ドル:130兆円)が均衡する水準のレートに、下落するでしょう。円
に対してドル安になるということではない。世界の通貨の、貿易学に
よる加重平均レートに対して下がるのです。

これは、結局は、米国の「通貨リセット」になっていくでしょう
(2024年か?)。日本は、このドル安により、対外純資産(356兆円
:2021年末)を失って、対外純債務国に転落します。

戦略の中核にある米国CIAは、「米国とドル圏が自滅に向かう戦争」
をしかけたように思えます。

【後記】
今回、物価の上昇は、コロナ対策で世界では、日米欧で1200兆円増刷
された通貨の、「1単位の価値の下落」と考える視点が必要でしょう。

2021年から22年は、需要が超過して供給を上回って物価が上がってい
るのではないからです。エネルギー・資源・穀物の高騰は、資源の需
要が増えたからではない。需要は増えていないのに、価格は上がった
のです。

この視点をもつと、物価上昇によりなぜ金利が上がるのかまで理論化
できます。「需要と供給一致点で物価が決まる」という現代ミクロ経
済学の仮説は、今回、当てはまらない。

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