エネルギー、物価、経常収支、そして国債 電力費の値上げという選択肢が生むものは何か
This is my site Written by admin on 2012年3月14日 – 09:00

おはようございます。すばらしく晴れた日です。3月中旬で寒さは終わ
ったのか? また、桜の季節が来ます。そう言えば、藤沢周平の『花の
あと』という名作があります。

上役(藤井勘解由)から、藩の江戸への使者として嘘の儀礼を教えられ
、藩主に恥をかかせたと感じた若く練達の剣士(孫四郎)が、理由を告
げず、自刃する。

藤井は、孫四郎の妻(加世)と茶屋で密会する仲でもあった。妖艶で危
なっかしい加代と、生硬な以登は、武家の娘の茶会で会っていた。

以登(18才)は、藩随一の剣の腕をもつと言われていた孫四郎が独身の
ころ、父の導きで、一度だけ竹刀で手合わせをし、そのときの、真っ直
ぐな視線を見て以来、密かに孫四郎を想っていた。孫四郎の、突の自刃
に不審を抱いた以登は、いいなずけの片桐才助に、調査を頼む。

片桐は、孫四郎が自刃に至った顛末を執拗に訊ねる以登の心を察し、藤
井の藩の事業での所行を調べ、以登に伝える。藤井は、藩の御用商人か
ら取った賄賂を、藩の幹部に配っていた。藤井を討つと決意した以登は
、藤井に、不正の事実を示した果たし状を書く。

以登の父は、跡継ぎに男子を望んでいた。名剣士だった父は、幼少から
、以登に剣術の手ほどきをしていた。以登は孫四郎との試合には負けた
が、腕の立つ女剣士だった。

山中での果たし合いに臨んだ以登は、評判の剣の使い手でもあった藤井
に、刀を払われ、押し倒れされた。しかし勝ち誇った藤井が以登の首を
刺すいまわの際に、父から婚礼のためにもらって忍ばせていた懐剣を下
から突き、藤井を倒す。

果たし合いを、木の陰で見守っていたのが、風采の上がらない片桐だっ
た。田舎侍の風体と、野卑な言葉に嫌悪を感じていた以登は、片桐の以
登への深い想いに気がつき、尊敬に変わって行く。

片桐と以登は、仕合わせに結婚した。知才を隠し、もっさりした風情を
見せていた片桐は、後には周囲に認められて家老に出世した。二人は七
人の子どもをもうけた。不釣り合いな二人が歩く弘前城の、土手の乱れ
咲く桜が、見事だった。

CSで二度見た映画では、所作がぎこちなく固く、そのために凛とした
雰囲気も醸(かも)す北川景子が主演でした。花の寿命は、人生の一瞬
と短い。しかし翌年も同じ木に咲き続けます。

節くれて曲がり、醜くも見える木に、4月には見事な花をつける。それ
が社会で、花は、自己倫理が強い以登のように思えたのです。以上は、
桜を描くための記述です。
http://www.toei.co.jp/movie/details/1190072_951.html

原稿を書いている最中の2012年3月14日午後6時9分に、東北・北海道で
M6.8の強い地震。そして午後9時5分には、今度は千葉・茨城でM6.1
の地震でした。

震源地は三陸沖という。福島第一の4号基、使用済み核燃料プールは大
丈夫か・・・毎週が、誠に、不穏です。

人間の観念が切り取って、言葉を使うイマジネーション表現する物語で
は、社会正義が勝ち、桜は花をつけて散ります。物語は、人の願望だか
らでしょう。

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 <582号:エネルギー、物価、経常収支、そして国債
                電力費の値上げという選択肢が生むものは何か>

【目次】

1. 福島原発から1年
2.原子力発電に加えるべき5つの原価
3.本当の費用は、「計算しなければ消えるもの」ではない
4.大地震の確率と、今後の原発の大事故
5.電力費の値上げ
6.物価の上昇が1%に向かう
7.輸入の、発電用LNGと原油の金額増加の想定
8.国債金利の危険
9.経常収支が、赤字になる年度が速まった
10.以上の予測の前提となることの再確認をすれば・・・
11.結論
12.後記:株価の上昇の背景

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■1. 福島原発から1年

社会は、桜のような、曲がった木かもしれない。全員とは言いませんが
、結局は、利権と言われるものを目的に、原子炉と、使用済み燃料の最
終処理に欠陥がある原子力発電を推進した人や政府を見ると、それを感
じるのです。フリンジ・ベネフィットをたっぷり含む報酬が、安定して
高い東電の社員になることは、サラリーマンとしての頂点でもあったの
です。

財界では、東電は別格でした。会議では、東電の社長や役員は、周囲を
睥睨する雰囲気をもっていました。鉄は国家なりの時代から、電力は国
家なりとでも言うように。情報システム関係での、通産省の1990年代半
ばの委員会で、感じていたことです。

金融の社債市場でも、絶対にデフォルトがないと評価されていた電力債
は、国債並の信用でした。当然のように、国債に次いで、金利は低かっ
た。3.11の前の社債市場とは、電力債の市場でした。変なことに思え
ますが、社会はそうだったのです。金融でも、そこどけ、そこどけ、東
電様が通るでした。

▼市場経済

アダム・スミスは、「自己利益を目的にしたパン屋の仕事が、市場の神
の手に導かれ、社会に善をもたらす。」としました(『国富論』)。

「われわれが、品質のいいパンを食べることができるのは、パン屋の博
愛のためではない。朝早く起き、丹精をこめてパンを焼き、それを買っ
てもらうことによって、自分の利益を追求するパン屋があるからだ」  
 主旨は、多くの経済書で、引用されています。

商品価値(=パンの品質・効用÷価格)を競う店舗市場があれば、これ
が言えます。品質が高く、味が良く、価格の低いパンが多く売れ、パン
屋に利益をもたらすからです。

(注)企業の競争は、商品価値の高さを競う市場で、行われます。従っ
て仕事は、商品価値を高める活動です。会社内の分業のため、本筋が見
えなくなっていますが、例えば経理も、配送も、商品価値を高める経理
作業や配送作業とは何かを追求せねばならない。

ところが電力では、競争市場のない地域独占事業を、政府が認めていま
す。需要者にとっては、神の手とされた競争市場はない。このため、電
力費は、使った経費を元に、算出されています。

発電の設備投資と経費を増やせば、電気代も上がるという方法です。(
電力費103=総括原価100+利益3)。

【自由市場】
市場があれば、原価とは無関係に、売りと買いの量で決まるのが価格で
す。例えば液晶TVは、昨年の50%の価格に下がり、製造業にとって1
台当たりで約30%の赤字です。販売台数が、昨年の43%に減ったからで
す。

【独占事業の広告】
東電は、商品の競争市場にあるパナソニックやトヨタ並みに多くの広告
費(関連費を含み250億円/年)、及び、社内経費の中に対外交際費を
混入させた金を、マスメディアや学会にばらまいていましたが、それも
、他の勘定科目にも分散されて電力の総括原価になっています。

独占事業が、なぜ「環境に優しい全電化住宅の推奨」などで電力をたく
さん使うよう、広告する必要があったのか。

マスメディアと世論の馴化、及び、研究費という名目での学会の籠絡が
目的でした。原発の発電を使う全電化住宅が、環境に優しいはずもない
。

賄賂とは言えなくても、累積で5億円の研究費をもらっていれば(東電
→東大)、東大の学者も、スポンサーである東電の原発に、安全上で反
対の意見を述べるのは、人情として難しくなります。

●全電力会社が、強く抵抗している、「発電と送電を別の会社にする市
場化(発送電分離)」が必要です。

ところが、小泉内閣の時代に、これを提言した経産省のキャリア官僚は
、政策提案ができる枢要な席から飛ばされたのです(『日本中枢の崩壊
』:経産省 古賀茂明氏)

■2.原子力発電に加えるべき5つの原価

本項では、原発の建設から最終処理のライフサイクル・コストを、確か
と思われる試算を使い、明らかにします。

▼(1)本当の廃炉費用は、全国の54基で27兆円

大事故がなくても、原子炉は強い中性子を浴びるため、鋼鉄が次第にガ
ラス化して脆(もろ)くなります。40年が原子炉の寿命とされる原発設
備の、平常な廃炉の費用は、1基平均で約5000億円とされています。54
基で27兆円になります。これは、全国の電気料金(15兆円)の約2年分
に相当します。

以上は、電気事業連合会が10年前に見積もっていたものを、2002年3月3
1の朝日新聞が報じたものです。

(1)原子炉を直接、解体し廃炉にする処理、
(2)再処理工場の稼働40年分、
(3)商業原発(52基:稼働期間40年)のメンテナンスと増設分、
(4)放射性廃棄物の貯蔵と処分費用も含むものです。

▼1ページ分で若干長くなりますが、大きな開きがある、福島第一の廃
炉費と、住民への保障費について、この機会に、示します。

〔(1)東電による見込み〕
東電は、1989年以降、原子炉1機当たりの解体見込みの費用を年間で10
億8000万円と、実際よりはるかに少なくし、40年間で432億円として(
有価証券報告書)、国民に対する電気料金に、1Kw	当たり2円分とし
て含ませています。

東電の見積もりががまるで少ないことは、誰にも分かるでしょう。廃炉
の費用を、あとで示す試算のほぼ10分の1以下に見積もった理由は、原
子力発電の建設から廃炉までの「ライフサイクル・コスト」を低く装い
、火力発電より優れていることを示して原発を推進するためです。

〔(2)福島第一の総費用見積もり:政府の臨時機関〕
福島第一の、1~4号機の廃炉費用は、「東電に関する経営・財務調査委
員会(委員長・下河辺和彦弁護士)」が、工程表通りに行ったと仮定し
た上で、1兆1408億円と見積もっています。

〔(3)スリーマイルとチェルノブイリの事例〕
ところが、メルトダウンは起こしていなかったスリーマイルの事故処理
費用(1機で約10年、5000億円)から見れば、メルトダウンした福島で
は1基でその2倍、6基で合計6兆円がかかると言う。

たぶん、原子炉が爆発したチェルノブイリ並にかかると見るのが妥当で
しょうが、それなら、福島の6機の廃炉処理として、20兆円です(日本
経済研究センター)。
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201105310473.html

〔(4)上記の廃炉費用に含まれてないのが、除染と保障費〕
ただしこの二つにも、
(1)いくらかかるか見当すらついていない放射性物質の除染費、
(2)4.5兆円以上はかかるとされる、現在進行形の保障費(漁業、農
業、山林、住宅、会社)は含まれていません。

〔(5)頻発している余震によるリスク〕
更に、2年内の途中で強い余震で、基礎が脆弱なはずの4号機の使用済み
燃料プールに、重大な障害が起こる可能性が高いのですが、これも当然
に見積ることはできない。

4号機の、これから2年の問題は、大手マスコミは報じませんが、国内の
学者と米国が同時に指摘したことから、関心をもつ人は、強い余震がも
たらす危険を知っています。(注)4号機から使用済み燃料を取り出す
のは、東電の工程表では2年後とされています。

前号でも書いたように、1331本の使用済み燃料が、落ちて地面に散らば
れば、冷やす手段は困難になります。ほぼ逃げるしか方法がないのです
。こうしたことから、毎週の地震に対し、大丈夫だったかと不安になる
国民が多い。しかし東電は相変わらず問題はないとしか言いません。

(以上、福島第一の廃炉、関連費用、余震がもたらすリスクの記述を、
終わります)

▼(2)原発は、運転中の途中停止ができないため、余った原子力の発
電分を使い、ダムに、川から水を上げて揚水発電をする、ほぼ10倍のハ
イコストの水力分(1Kw時で53円)が余計なコストになる。

▼(3)立地の市町村にばらまいてきた政治的な対策費(1年4000億円)
があって、これが続く。

▼(4)未解決で、使用済み核燃料の安全な破棄(10万年かかる)や、
六ヶ所村の再処理工場(建設費2.2兆円)で、事故が続き、まだ稼働し
ていない核燃料の再処理の費用。当初の建設予定費は7600億円だったの
です。フランスの(請求する費用の破格の高さで悪名が高い)アレバ社
が技術提供という。

以上の4要素を概算で含めば、原子力発電の原価は、1Kw/1時間 当たり
で10.68円と、火力(9.90円)より高くなります(大島堅一試算)。

これは現在、広く知られたものでしょう。5円や6円という政府認定の、
原発の電力原価は、まるで嘘です。
(大島堅一立命館大学教授:原発の本当のコスト↓)
http://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf

ただし大島試算での原子力発電の総コスト推計は、もっとも大きな上記
の廃炉の全費用(27兆円:1機5000億円)を、東電が言っていた少ない
費用(1機432億円)としたものです。

▼含まれない事故と、本当の廃炉費用

加えて、上記の4つの原価には、これから20年の、除染と保障の10~20
兆円は含まれていせん。政府を含み、誰にも総費用の本当の目処が立っ
ていないからです。

【要点】原発の大事故はあり得ないとしてきたため、事故機の廃炉にか
かる全費用と、除染と保障の必要費用は、電力の原価としては、無視さ
れてきました。本来は、原発の発電費用として見なければならないもの
です。

■3.本当の費用は、「計算しなければ消えるもの」ではない

東電が、経営維持の目的から、どうごまかしても本当の廃炉の費用が、
消えるわけではない。東電は払うことを免責されても、出る費用は、政
府負担として必ず出るからです。

今年、原発の再稼働ができないと、全国の54基が、いずれは全部、廃炉
を迫られる可能性が高くなります。そうすると、われわれの国民経済が
負担する廃炉費用になるのです。

作った54基の原子炉とその設備の処理、及び10万年もかかるとされる使
用済み核燃料の最終処理はやっかいです。電力会社は、当然に払えませ
ん。

(注)10万年は、核燃料の廃棄物が、自然のウランが放つ放射線のレベ
ルにまで低下する時間です。10万年も、いやその1000分の1の100年でも
、あるいは50年でも、どうするのか?

必ずかかる費用を払うのは、政府でしかあり得ない。そして、それは、
税や国債または電力費として、国民負担になります。

正常な原子炉の廃炉と、核燃料の廃棄物の処理で、電気事業連合会が見
積もったように27兆円とすれば、今後10年間、1年に約3兆円(現在の電
気代15兆円の+20%分)は、余分にかかるでしょう。

更に、福島第一の6機の20年間の事故処理、そして、不可能に思える広
大な山や土地の除染費用と保障費が付加されます。

原発の推進を国策にしてきた政府は、国民の前に、以上を明らかにする
責任があります。そんな気は、見えません。頬被りで、あとは野となれ
山となれです。知らないということは、担当の当局には許されません。
知っても、無視するのは、更にひどい。

自民党時代のことだったから民主党には責任がないというのも、政権に
ついた責任の放棄でしかない。前の社長がやったことだから、後任には
無関係と言えないことと同じです。会社は、前任社長の時期のものであ
っても、継続して責任を負います。

【政府とジャーナリズム】
ところが、枝野経産大臣は、政権が代われば、政策は変わるとも言う。
当年度予算の枠をはみだす原発の推進は、長期の政策です。民主党はそ
れを引きうけねばならないのです。記者は、何も質問せず、黙って筆記
するだけでした。権力をチェックすべきジャーナリズムが、政府の広報
機関になったという堕落が見えるのです。

結局は、チェルノブイリの爆発(1986年)を起点に、政府の信用が失わ
れ、国家が崩壊したソ連(1991年)のようになるのか。事実、福島原発
の事故処理への対応と発表から、政府は、国民からの信頼を回復できな
いくらい失っています。

上記は、原発を続けても脱原発でも、日本国が、近い将来負うべき費用
になります。

■4.大地震の確率と、今後の、原発の大事故の可能性

今後、70年に1回、M8以上の大地震や津波が、どこかで起こるとすれば
、全国19カ所の原発では、[70年÷19カ所=3.7年]に1回、放射性物
質が原子炉の外部に漏れる福島第一のような、シビア・アクシデントの
可能性があります。

今後30年のいずれかの年、東南海で87%の確率とされているM8級の地震
(文部科学省 地震調査研究推進本部の公表)が、日本のどこかを襲え
ば、大事故の確率は[30年÷19カ所=1.6年]に上がります。誰も、こ
のリスクがないという反論はできないのです。

原発の立地が19カ所と多いので、こうなるのです。
今後30年、大地震がないことを祈るだけしかできないのか。

驚きますが、1年半で1回の大事故の可能性です。ギリシア財政の破産確
率(CDS 46%/年)より高い。美しい国土の日本は、すでに終わってい
るのか・・・とも想うのです。

▼近い将来の地震のリスクを考えれば、54基の全原発を、27兆円の廃炉
の費用と、20年の時間をかけても、廃炉に向かわせていないと日本の国
土は、原発で危険だと言えます。

原発は、電力会社の経営と国益という両方の観点から、もともと、必ず
来る廃炉までの総コストが高すぎ、ムリなものでした。

許容されたのは、政府が推進し、将来の負担しきない処理費は隠蔽され
、競争市場もなかったからです。

真に民間の経営なら、地震列島での原子炉と核燃料の、始めから終わり
までの本当のライフサイクル・コストを計算する必要があった。

これを計算すれば、未来が確実な倒産になります。このため原発を作る
経営的な決定は、火力発電だけの沖縄のように、なかったでしょう。

ただし、沖縄に原発がないのは、駐留する米軍が、ミサイルで狙われた
とき危険だからです。仮想敵国は、原発を狙うに決まっています。

▼東電の責任ではないという意識

東電の勝俣会長は、「想定外の天災が原因の事故は、東電の責任ではな
い。保障は、原子力損害の賠償に関する法律(1961年)に従い、政府が
行うべきだ」と事故直後に言っていました。確かに、現在の原子力損害
賠償法では、想定外の規模の天災からの損害は、電力会社ではなく政府
が負うことになっています。

勝俣会長は、もう一言、付け加える必要があった。「東電は、福島第一
の廃炉の費用を出す責任も負わないし、負えない。それは、政府が出す
べき責任のものだ。」 

政府責任とは、国民負担です。「東電は、福島第一の廃炉の費用を出す
責任も負わない。負えない。それは、電力費が総括原価方式だから、国
民が出すべきものだ。」

事実、東電の現西澤社長は、「火力発電の燃料費が嵩(かさ)むことに
よる電力費の値上げ申請は、電力会社の権利である。」と記者会見で言
っています。Youtubeやニコニコ動画で見ることができるでしょう。

原子力発電は、いったん建造してしまえば、人間の寿命にとって、ほぼ
永久と言っていい期間、電力費でなければ税として国民が負担する巨大
費用がかかり続けます。

▼なぜ、日本政府は、経済性のない原発を推進したのか

【使用済核燃料と核兵器】
原発では、膨大に生まれる使用済み燃料の中に、自動的にプルトニウム
ができます(重量の1~2%)。プルトニウムを遠心分離機等で95%にま
で濃縮し、一定幅に整列させて、連鎖反応を起こす起爆装置をつければ
、核爆弾も作ることができます。

このためイランの原発と、プルトニウムの濃縮(現在、IAEAは20%の段
階としている)に対し、米欧が、イランの原油輸入と金融の制裁を加え
ています。これは周知です。

以上から、国民からの合意があれば核武装もできるという、日本国の、
威喝的な外交力の備えという目的があったというのが、妥当な見方にな
ります。イランのようにプルトニウムの濃縮ができるなら、核武装の可
能性も生じるため、中東での政治的な威喝力になるからです。

当然に政府は、国民に、本当のことを言うはずはない。しかし、経済性
のない原発の推進に目的合理性があったと考えるなら、これ以外ではあ
り得ない。論理的に考えれば、当方の頭では、結論はこれしか見つから
ない。他に、何か目的がありえるのでしょうか?

建設から廃炉と、核燃料の安全な廃棄の、ライフサイクルの総コストか
ら見れば、経済的には、原発は負担が大きすぎて無用なものでした。経
済(エコノミー)を、目的とする方向に曲げるのは政治的な決定です。


以上から、原発の推進への賛否は、米軍の核の傘の下にあるわが国が、
独自の核兵器を作るか、あるいは作らなくても核爆弾の開発力をもつべ
きかどうか、ここまでを考慮しない限り、われわれの態度を明確にでき
ないことになります。

▼廃炉費用と期間

建設から40~50年経てば、正常な廃炉にも、停止後に20年、廃棄された
核燃料の保管では、自然界のウラン鉱石並の安全性になるのに10万年を
要します。日本はすでに、正常な廃炉の直接費だけで27兆円(上記:電
気事業連合会)もかかるとされる54基をつくってしまっています。

政府は、国民のための、エネルギーの経済性という国策を、大きく間違
えてしまった。原発推進という政策決定のあとに生きるわれわれが、東
電や政府を非難しても、何も消えません。甘んじて、引きうけねばなら
ない。当方も3.11の前は、無知だったため、原子力発電に反対の意を
表したことはなかった。

どう処理しても消えない放射能からというのではなく、経済的にもムリ
なものでした。経済的とは、負担するコストが低いということです。

通産官僚、学者、電力会社はともに、40年後という期間と総コストを考
える想像力が、欠けていました。イマジネーションがあったとすれば、
上記のような、核兵器開発の準備力の確保でしかあり得ないでしょう。


40年は、10歳の子どもが50歳になる人間的な期間です。われわれは、ど
んな国土を残したのか。原発の建設が盛んだったのは40年前の1970年代
から、30年前の80年代です。

・40年以上の年齢が3基(福島第一、敦賀、美浜)、
・30年以上が20基(福島第一、美浜、高浜、大飯、島根、伊方、玄界、
東海)です。

あと10年で、54基のうち半分の原発が、40年を超えます。どうするのか
・・・廃炉の必要は確実に、襲います。40年間の経済は不確定ですが、
物理的な事象からの廃炉期は、機械の耐用年数のように必然で来るので
す。

■5.電力費の値上げ

東電は、柏崎刈羽に対し、政府の認可と住民の賛成がなく、全面稼働で
きないなら、
・大口の企業向け電気代を12年4月から17%上げ(政府の許可は要らな
い)、
・経産大臣の許可が必要な家庭用は、7月からの10%値上げを申請する
意向です。

(注)柏崎刈羽(1号機と7号機)では、東電が政府に出したストレス・
テストの報告書に、地震と津波の想定数値を含んで239カ所の人為的な
ミス(または当為)があったことは分かっています。

2012年4月には、定期点検のために停止する54基の全部の原発が、全国
で再稼働できないなら、日本全体の電力費が上がります。

上げないなら、税の投入が必要です。9つの電力会社を国有化しても、
同じ燃料費はかかるので、国民負担が増える結果は、同じです。

12年4月には、全原発が1年1度の定期点検のため停止します。1年1回は
必要な核燃料の交換と、設備点検と安全報告が義務づけられています。
1年前の3.11以降、再稼働が難しいため、全原発が、定期点検のため停
止してしまう。

今後、再稼働には住民の賛成が必要とされましたから、やらせでもない
限り、再稼働はできない。(注)ただし政府は、大飯(合計で4つの炉
:福井県)の再稼働で、賛成が必要な住民を10キロ圏内とねじ曲げよう
としています。

▼増加燃料費

東電の燃料費は、原発が稼働していた2010年には1兆4500億円であり、
年間の電力費収入(5兆円)の29%を占めていました。

原発が停止した2011年4月以降、年間ベース換算で2兆900億円へと、640
0億円増加しています(有価証券報告書)。
(注)東電は、他の資料でも火力、原子力、水力の本当の原価の数字は
明確には示していません。
http://www.tepco.co.jp/ir/tool/kessan/pdf/1203q3gaiyou-j.pdf

値上げの申請は、火力発電用の増加燃料費が、東電だけでも、ほぼ6000
億円/年は余計にかかるというのが理由です。

●ただし、今年の2012年、輸入燃料費の実際は、LNGと原油の高騰が予
測されるので、東電だけでも8000億から1兆円にはなるでしょう。間を
とって9000億円の増加とします。

東電の発電量の割合は、全国のほぼ30%です。全国で9つの電力会社合
計では、9000億円÷0.3=3兆円(GDP比で0.64%)の燃料費が増えま
す。燃料費は、火力用がほとんどを占めるからです。

54基の原発がフル稼働していた時期の、9つの電力会社の合計燃料費は
、総発電費用(15兆円:GDPの3.2%)の15.1%でした。燃料費の割合
は、電気代の15.1%と少なかった。金額は2.2兆円でした。

全国で54基の原発が停止すれば、燃料費が、現在の、重油とLNG価格で
あっても、1年に3兆円増えて、5.2兆円にはなります。

燃料に使う重油とLNG(液化天然ガス)の価格は、
・世界の原発停止の風潮と、
・イスラエル-イラン危機の中で、2012年は上がる傾向です。

(注)経済の予測には、古いデータではなく、過去のデータから、将来
傾向を推計することが必要です。

■6.物価の上昇が1%に向かう

近い将来、原発停止後の現在価格で5.2兆円が想定されるわが国の発電
用燃料の輸入(2011年基準)は、2012年以降、7兆円には上がる可能性
があります。

このため発電のコストは、「増える燃料代+国際相場の上昇予測」を加
味すれば、〔原発停止後の想定輸入費7兆円-原発が稼働していた時の
燃料費2.2兆円=4.8兆円〕は上がるでしょう。

4.8兆円の燃料費の増加はGDP比で、1%の国民の増加負担になります。


37兆円の医療費の、1年での増加(1兆円)の5年分くらいが、一挙に電
力費として、われわれの負担増になるという意味です。電気の単価が上
がっても、生活の水準や産業の生産力は向上しません。逆に、低下しま
す。動力の節電の10%は、生産活動を10%低下させます。

■7.輸入の、発電用LNGと原油の金額増加の想定

電力費としては、現在の15兆円が、近い将来19.8兆円です。
GDPのうち4.2%が電気代になるという意味です。

現在はGDP比で3.2%(15兆円)です。GDP比で4.2%の電気代の国民負
担は、世界最高レベルの高さになるでしょう。特に動力用に電力を多く
使う工業の生産費が上がります。(注)電気料の販売単価は、もともと
米国の2倍でした。

企業と世帯の、電気代としてのほぼ4.8兆円の負担増は、消費税換算で
は、1.9ポイントに相当します。

消費税が、電気代の上昇だけで6.9%に上がったことを想定すれば、そ
の感じが分かります。加えて、2010年代の上がるエネルギー費用に左右
されます。円安の時も、もろに、家計と企業の負担が増えます。

東電の申請通り、電気代が10%上がる平均世帯(2.6人:1ヶ月1万円の
電気代の世帯)では、1年に1.2万円くらいの電気代の負担増でしょう
。10%上がる家庭が、7000億円くらいを負担します。500kw
時を契約しない小規模なオフィスの、電気代の上がり方も家庭と同様の
10%です。

わが国では、契約額が500Kw時以上に適用される産業用の大口に使う電
力が、全電力のほぼ52%の使用です。17%価格が上がる産業用は、3兆
円くらいの負担増になる可能性が高い。これは、物価を3兆円(GDP比で
約0.6%)上げる要素になります。

家庭用の電気代が10%上がり、17%上がった電気料を使う産業の生産原
価が上がれば、両者の合計で4.8兆円(1%)の物価上昇に向かいます
。

そしてこの4.8兆円は、わが国の所得から原油・LNG輸出国への所得移
転です。国内の280万の会社と5000万の世帯が、負担します。

現在の消費者物価は、ほぼ0%の上昇ですが、数ヶ月をかけ、人々が望
む消費者物価のインフレ4.8兆円(GDPの1%)に転じることになります
。

インフレは、望ましいことでしょうか? インフレは、世帯の可処分所
得の増加がない時期は、いや減っている時期は、生活困窮をもたらしま
す。工業だけではなく、冷暖房を使う店舗でも電気代の17%値上げは、
営業利益を0.3%くらい減らします。

■8.国債金利の危険

原理的に言えば、消費者物価が1%水準の上昇率なら、数ヶ月遅れます
が、市場が決める国債金利は2%に上がります。これは、一足早く来る
金融危機と、政府財政の破産になります。

(注)〔期待金利=期待実質GDPの成長率+予想物価上昇率〕です。実
質GDPの期待成長率がゼロでも、予想物価上昇率が1%になると、現在1
%の長期国債金利は、確実に2%に向かって上がります。

期待金利の上昇に要する期間は、物価が上がり始めてから3~6ヶ月後か
らです。

期待金利は、実際の今日の金利ではなく、将来の予想金利です。金融商
品の価格は、期待金利とリスク率で割り引いて、現在価値(Net Presen
t Value)にして、市場で売買されます。

金融危機が起こるのは、国債金利が1ポイント上昇し、2%に向かうと、
国債価格が総平均で5%下げるからです。1024兆円の政府負債の持ち手
にとって50兆円の含み損が生じます。

期待金利で2ポイントの上昇があり、長期国債の金利が3%になると、国
債をもつ金融機関が、合計で100兆円の含み損を蒙ります。

日本の金融危機は1998年でしたが、そのときの不良債権は100兆円とさ
れていました。

金融機関が50兆円でも含み損を蒙ると、時価が下落したPIIGS債を抱え
ている欧州の銀行のように、手持ち国債・債券を売り、融資を回収せね
ばならないのです。

そして金融機関が手持ち国債の売り超になると、日銀しか買い手がなく
なった国債価格は、一層下落し、将来の期待金利が上がるサイクルにな
るのです。

■9.経常収支が、赤字になる年度が速まった

LNGと原油で、発電用燃料の輸入が1年に4.8兆円増えると、わが国の、
その後は抜け出せない貿易赤字が、円安に転じても、ほぼ決定します。
輸出を左右する米欧の消費が、今後数年間は増えないからです。

イランで20%に達したとされるプルトニウムの濃縮問題から「イスラエ
ル-イラン戦争」が起これば、原油とLNGは1.5倍から2倍には急騰しま
す。

こうなると、日本は貿易赤字のみではなく、海外からの所得収支の黒字
(約10~14兆円)を足しても、経常収支が減少し、近々、赤字に向かう
でしょう。

経常収支の黒字が減少した通貨は、市場で売られますから、待望の円安
には向かいます。

しかし、それは、増えた輸入エネルギーの円価格を上げ、電気代を一層
上げます。円安は、国内の金利を上げて、国債価格を下落させます。こ
のため、金融危機になるのです。

日本の経常収支の黒字は、2000年代の10年、毎年20兆円平均(GDPの4.
3%)ありました。

・2000年代の貿易収支は5~12兆円の黒字で、
・海外への投資(約500兆円)から生じる所得収支が、+10~12兆円く
らいでした。

この経常収支の、恒常的な黒字が、日本経済の強さでした。
しかし、これはもう、過去のことになってしまった。

経常収支が赤字すれすれの水準に転落すれば、
円の価値低下を恐れた円マネーが、
・ドル買い/円売りで流出して、円安になって、
・日銀が国債を引受けても、国債の金利は2~数%上がって、
金融機関の危機と国家財政の危機が、同時に襲います。

エネルギー輸入の増加と、価格の上昇で、予想される日本の「経常収支
黒字の急減(または将来トレンドでの赤字)」は、世界の金融(FXの売
買市場:ドル・円の交換だけで1日に50兆円)にとって、大きな影響力
を持ちます。

経常収支がまだ黒字だから強かった2011年の円は、売られて暴落するで
しょう。わが国の経常収支が明確な赤字になると、円は120円には下が
ります。政府が、米国債を売り浴びせない限り・・・

(注)経常収支=貿易収支+観光収支+海外からの受けとり配当や金利
の所得収支

停滞している企業の生産活動と、所得が減っている平均世帯にとって、
新たな消費税のような、物価上昇の負担です。

■10.以上の予測の前提となることの再確認をすれば・・・

以上のような経済・金融の状況が起こると「大変」です。

本稿で論理的に考えて書きながら、当方も、2012年8月ころからが怖く
なったので、前提に誤りがないか、検討します。

金融は、半年くらい先の経済を予想して動きます。
マネーの動きが、経済では、一番速い。

金融は、
・将来の期待金利とリスクを確率化したデリバティブと、
・先物の売買が決める市場だからです。

▼(1)前提1:
     54基の原発は、再稼働ができない。

12年4月には54基全部が停止しますが、全部、運転再開ができないのか
?

5基や6基(10%)が再稼働できても、LNGの輸入増加という大勢は変わ
りません。30基(60%)くらいが稼働できるのか? とても望めない。
となると、LNGの輸入増は、確定です。

液化天然ガス(LNG)は、常温では蒸発の圧力があるので、原油よりは
るかに、タンクでの貯蔵が難しい。このため世界で、備蓄はほとんどな
いのです。原油備蓄は民間が83日分、政府が93日分で、176日分(約半
年分)あります(2007年)

発電に使うのは、重油よりLNGが多い。日本が買うLNGは米国内の6倍高
いとされます。しかし米国では、国内の生産地からパイプラインで消費
する発電所まで運ばれているので、米国内の価格とは比較できない。

日本は、中東(カタール・UAE)やアジア(マレーシア・インドネシア
)で冷やして液化した天然ガスを、LNG専用船で2週間をかけて海輸し、
いったんは港のタンクに貯め、発電所のタンクにパイプで運ばねばなら
ない。(注)LNGの価格変動は、国際市場では、過去はほぼ原油に連動
していました。

以上の高いコストをかけて、日本が輸入する2012年1月のLNGの国際価格
は、国際単位の1000立方メートルで、$400です。

輸入LNGは、2009年1月($150の安値)から、$250(167%)上げてい
ます。
http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html

LNGと原油の国際価格は、日本が、54基の原発をやめ、増える火力発電
のため余分に輸入すると決定すれば、高騰するでしょう。LNGでは$400
が$600~$800に上がるかも知れません。原油は$150でしょうか。

エネルギーの価格を先導するのは、先物やオプションを買うヘッジ・フ
ァンドであることは言うまでもありません。2000年代の、激しい上げも
下げも、その価格の50%分くらいを、ヘッジ・ファンドの先物とオプシ
ョンの売買の方向が決めています。

需給では、現在でも、、日本の輸入が、世界のLNGで最大量である30%
を占めているからです(輸入量で7853万トン:2011年)。

54の原発が中長期で停止すれば、2年後、3年後に再開はできない。そう
すると、30兆円と、54基で20年をかける廃炉しかない。これは、誰が負
担できるのか?

▼2.前提2:電力費の家庭用10%、産業用17%値上げ

現在は、東電が矢面に立っています。
しかし、原発の長期停止は、9つの電力会社で同時です。
特に、原発が50%を超える関電の負担は大きくなります。

現在15兆円(GDP比3.2%)の、わが国の電力原価が、上がる原油と天然
ガスの輸入増(発電原価増加)のため、4.8兆円くらいは増え、19.8
兆円(GDP比4%の負担)に向かうのは、避けられないでしょう。

GDP比で電力原価の1ポイントの増加です。現在、上昇率がゼロの消費者
物価は、少なくとも1ポイント上がることになります。

原発を停止し、LNG発電をしながらも電気代を上げないと、どうなるか
。電力会社が破産に近い赤字になります。赤字は、払うべきキャッシュ
フローの不足です。経営は、ほぼ2年で破産するでしょう。

その前に、原発停止となった2012年4月から、電力会社の社債金利の高
騰(社債価格の下落)が起こります。

社債が発行できず、2012年の冬ころには、資金不足からの破産です。1
年4.8兆円(1ヶ月で4000億円)を、9つの電力会社はとても負担はでき
ません。

▼3.前提3:国営化なら国債の増加発行だが・・・

政府が資本を出す国営化でも同じです。国家が、1年に4.8兆円を、国
債の増加発行で負担せねばならない。(ムリに思えます)

1年に約4.8兆円を、国債の増加発行で国家が負担した場合、国債の発
行額は、現状の44兆円+4.8兆円≒49兆円になります。

日銀は、物価の上昇が1%になるまで、金融を緩めるとして、資産買い
受け基金(65兆円枠)の中から、国債を40兆円買い受けると言っていま
す。

電力費を、東電が言うよう、家庭用で10%、産業用で17%上げれば、そ
れだけで物価は4.8兆円分上がります。これが、1%の物価上昇です。
(注)電気代も当然、消費者物価の構成要素です。また、円安も、国内
物価を上げる要素です。

▼インフレターゲットが1%の意味

日銀は、物価上昇が、宣言したインフレターゲットの1%に近づくため
、手持ちの国債・債券を売って、銀行のマネーを吸収せねばならなくな
ります。

2012年2月に、日銀が表明したインフレターゲット1%は、1%の物価上
昇の「気配」が見えれば、国債を売って、銀行から資金を吸収し、金融
を引き締めるという意味です。物価は、金融や経済に、数ヶ月は遅れて
上がり、いったん上がると中期で続くからです。

(注)わが国にとって3%のインフレターゲットのためにの金融緩和い
う日銀の政策目標は、あり得ません。期待金利が4%に上がって国債が2
0%も暴落し、200兆円の含み損によって金融機関と政府は破産するから
です。

以上から、国有化しても、燃料費から上がる電力費の高騰を抑えるのは
ムリだと分かります

じゃ、東電の申請通り、家庭用で10%、産業用で17%上げ、物価を7兆
円分(消費税で2.8%)上げる方法しかないのか。帰結は、電気代の要
素だけで、物価の1%上昇です。以上の時期は、2012年の冬でしょう。

1%の物価の上昇は、普通の時期ならわずかにも見えます。しかし、現
在は長期国債の金利が1%と低い経済なので、金利上昇に及ぶ影響は、
大きい。

GDPの2.2倍(1024兆円)と政府負債が大きいため、1%の期待金利の上
昇が、国債市場に波瀾を起こしてしまうのです。

GDPが3%増加し、国債残GDPの100%(現在の半額)なら、1%くらいの
物価上昇は問題になりません。しかしそういった経済は、1990年代の初
期(20年前)で、終わったのです。

本稿は、日本経済(企業と世帯)への負担として3.11で加わった原発
の要素を中心に、述べました。改めて計算して、驚きます。

■11.結論

脱原発で廃炉に向かうにせよ、原子炉の放置はできせん。27兆円規模の
処理費がかかります。ここに、核物質を10万年も残す原子力発電の特殊
性があります。継続してもやめても、廃炉や核燃料の処理にかかる費用
は同じです。

正常な原子炉の廃炉費用の27兆円に、
・重大な事故機である福島第一の廃炉のための費用がスリーマイル並と
して6兆円、
・チェルノブイリ並みなら20兆円です。

3基がメルトスルーした事故からみて、チェルノブイリ並みの20兆円が
妥当でしょう。

合計で47兆円です。加えて、保障費が4.5兆円でしょう。見当がつかな
い除染(実際は核物質を含む土の移動)は敢えて含みません。

総計は51.5兆円です。電力会社が売れる全資産を処分しても補えませ
ん。廃炉費用が巨大な原発を、ゼロ円でも買う人はいません。

政府負担が40兆円はかかるでしょう。1年の国債発行額にほぼ匹敵しま
す。市場では売れないので、日銀が買っって余分に40兆円を刷ることし
かできない。

5年かかるとして、1年で8兆円の国債発行の増加です。このため新規債
の発行は、50兆円を超えます。市場は、とても引きうけきれないので、
日銀のマネー印刷になるでしょう。そうしないと、国家がデフォルトし
ます。

このため、最終的には、物価が3~5%は上がるインフレでしょう。そし
て、期待金利の4~6%への上昇です。イタリア並みの金利ですが、残高
1024兆円の政府負債の時価は、200~300兆円も下がります。

そうしたら、また日銀が今度は、200~300兆円の円を刷って、金融機関
の損を埋める。それが、インフレを加速させます。こうした金利の変化
は、上がり始めてから6ヶ月くらいで起こります。

■12.株価の上昇の背景

3月14日の株式市場は、NYダウは4年ぶりの高値(リーマンショック前
と同じ)の1万3177ドル、日経平均は7ヶ月ぶりの1万100円でした。

日経平均の上昇は、一貫して売っていた個人が、1万円に上がる勢いの
株価につられ、売り一方から買い越しに向かう人が、増えているためで
す。

経済情報では、米国の個人消費(1月)の上昇等を報じます。「米国の
景気が着実に回復している」と言う。

しかし米国は店頭物価が3%上がっていますから、3%の売上増が、実質
では0%の増加です。景気がいいと評価するなら、名目売上では6%の上
昇がなければならないのです。

▼米国の住宅価格が、再び下がり始めた

消費が活発でない証拠に、3月に出た肝心な米国の住宅指数(S&Pケー
スシラー20都市)の2011年12月を見ると、前年比で3.4%下げています
。

ご存知のように、米国の住宅価格は、2011年は落ち着いていたのです。
こうした肝心な情報を、経済マスコミは、ほとんど言いません。

下げ率が少ないと思われるかも知れませんが、物価も地価も下がってき
た日本を基準に見るからです。米国では年間の物価上昇は3%水準です
。

この中での住宅価格の3.4%下落は、3%の店頭物価上昇から見て、3.
4+3=6.4%の下落と見なければならない。米国の不良債券問題(約50
0兆円)で肝心なのが、住宅価格の動向です。

住宅価格が下がると、ローンの不良債券が増えて、住宅証券の市場価格
は、一層下げるからです。米国の住宅ローンの額面は1000兆円もありま
す。

米国の大統領選挙の年でもある2012年は、年初から米国も日本も、「経
済が好転した」という一方的な、偽装めいた情報が流れています。

景気が悪く、失業が増えると、米国では与党(今は民主党)がほぼ必ず
負けるからです。

こうした一方向しか向いていない情報が流れる時期は、中央銀行の増発
マネーを銀行経由で借りたヘッジ・ファンドが、買い上げてきた株価を
更に上げ高値で売り抜け、2011年の株価下落で蒙った損失を埋める利益
確定が狙われています。注意が必要です。

3月1週の、日本の株式(東証1部)の投資主体別の売買額を見ると、大
きかった個人の売り越しが62億円に縮小しています。2012年の年初から
2月の週は、1週で700~5000億円も売り越していたのです。

個人投資家の売り越しの縮小が示すのは、ガイジンヘッジファンドの、
3月以降の売りでしょう。いつものことです。一般の個人が買ったとき
は、売りのサインだからです。
http://www.tse.or.jp/market/data/sector/b7gje6000000jkrj-att/J_stk2_120205.pdf

【後記】
3.09講演は、DVDのための編集中です。何らかの方法で、頒布する予定
です。

アマゾン(紙)            : http://www.amazon.co.jp/
紀伊国屋Web(紙+電子)  : http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
楽天書店(紙)            :http://books.rakuten.co.jp/
廣済堂bookgate(紙+PDF版): http://www.bookgate.info/
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(以上)



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