ドルの反通貨、金価格上昇の意味を解く(3)
This is my site Written by admin on 2019年10月8日 – 17:00
9月27日に送った(2)の続きです。金価格とともに、19年3月を底値
にして、仮想通貨の代表であるビットコインも上がっています。

2017年12月には、1ビットコインが200万円台の高値に高騰しました
(時価総額では100兆円)。ところが、その13か月後の19年1月には
30万円台に下げていて、「ビットコインは終わった」とされていまし
た。

しかし、30万円台だった5か月後の19年6月末は、120万円台へと4倍に
急騰しています。その後、2か月は120万円から90万円台に下がり、今
日は、87万から89万円です(19年9月8日)。

ドイツのバイエルン銀行は、何の根拠からか、2020年5月ころ(8か月
後)には、仮想通貨の代表ビットコインは10倍の9万ドル(約970万
円)に急騰するというリポートを出しています(19年9月)。

ビットコイン(BTC)の発行量が、2100万BTCにプログラムで制限され、
鉱山からの採掘量増加に年3500トンくらいという資源の限界がある金
と同じような意味をもっているからだというのが、もっとも大きな理
由でしょう。ドイツが属する統一通貨ユーロの不安もからんでいるで
しょう。ユーロは、ECBが金利をマイナスに下げ、年初の130円から
117円にまで10%下げています(10月8日)。英国のユーロ離脱が響い
ています。

信用通貨(われわれが使っているマネー)は、いくらでも増刷できま
す。しかし、ビットコインと金には、量の限界があります。

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 <411号:ドルの反通貨、金価格上昇の意味(3)>
     2019年10月8日:無料版

【目次】

1.ビットコインの下げ(37万円台)と、上げ(100万円台)の理由
2.前号までの振り返り(難しい内容ですが・・・)
3.米国株は、どの程度自社株買いバブルか?の検討

【後記:米中貿易戦争とフレグジット】

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■1.ビットコインの下げ(37万円台)と、上げ(100万円台)の理由

・約7分の1に下げたこと(17年12月→19年3月の15か月間)、
・そして、19年3月からは3倍に上げたこと(19年3月→19年6月の3か
月間)には、それぞれ、先物の売買からの理由があります。

【17年12月:シカゴの先物市場の上場を許可】
下げたのは、200万円台の最高値だった2017年12月に、シカゴに「ビ
ットコインの先物が上場されたあと」です。

◎上場された先物が、米国当局の意図(推計)によって大量に売られ
て下げたのです。個人の市場では、日本人の買いで200万円に急騰し
ていたビットコインの下げの売買利益(1ビットコインで最大160万
円)は、先物を売った米国の通貨投資家(おそらくはCIA)に行きま
した。

19年3月から上げたのは、先物売りの増加が止まったときでした。
先物は、「そのときの現物価格+金利」付近で売買されている先物を
買って、3か月や3か月先の、反対売買の契約日に、売り戻す契約の取
引です。

先物の売りは、価格が下がるとき利益(利益=先物売り─清算の買い
の価格)が出ますが、先物の買いは、逆に、価格が上がるとき利益が
出ます。

先物の売りが増えると、価格は下がることが多く、買いが増えると上
がることが多い。ビットコインは、先物の売りで下げて、清算の限月
の買いから上がったのです。

こうした動きが起こったのには理由があります。

ビットコインではありませんが、仮想通貨(イーサリアム、リップル、
ビットコインキャッシュなど・・・合計約1000種)は、3つの用途の
買いが多かったのです。

【仮想通貨の3つの用途】
(1)北朝鮮が養成した、ブロックチェーンの技術者3000人のハッキ
ング(国家レベルでの採掘)による、仮想通貨の略奪。北朝鮮は、精
巧なドルの偽札(スーパーノート)の発行で外貨を得ていましたが、
仮想通貨に切り替えたと推測されます。「モネロ」が主な標的でした。

(2)外貨の交換規制がある人民元の、富裕者(10万人)のマネーの、
海外流出のための仮想通貨の買い。

(3)最も早く、仮想通貨(法では暗号通貨)を通貨として認める予
想があった日本人の仮想通貨の買い。(19年6月:仮想通貨の利益へ
の課税を目的にした、政府の資金決済法と金融商品取引法の改正)

米当局は、北朝鮮の、仮想通貨に対する国家レベルのハッキング(先
を争う認証)を知っていました(現在も監視中)。トランプによる、
北朝鮮への経済・金融封鎖の中で、北朝鮮は仮想通貨のICOの利益で
数百億円の外貨を得ていたからです。

これがシカゴの取引所に、仮想通貨の代表であるビットコインの先物
を上場した原因です(2017年12月)。(注)他の仮想通貨もビットコ
インの価格とほぼ同じ動きます。

「現物をもたなくても(取引所から、貸し料を払って借りたビットコ
インを売る「空売り」では現物が必要)、売ることができる先物の売
りで価格を崩す」ことが目的です。

CIAは、古来、多角的な情報戦略を実行している機関です。CIAは、軍
事用のドル紙幣の印刷もできます。戦争のときは、相手国の偽札を印
刷して、経済を混乱させることも行ってきました。米国の国際戦略は、
戦争や陰謀的事件と一体です。平和戦略である日本と米国は、180%
違います。第二次世界大戦のあとも、間断なく戦争をし、兵と武器・
弾薬を海外に送って地域紛争と、経済・金融封鎖に関与しています。

【先物売りで売り崩した】
おそらく、CIAの主導で、ヘッジファンド等が先物の上場のあと、1ビ
ットコインを30万円台にさげるまで、売り崩しています(19年3月)。

その後、トランプは、核実験の停止(核兵器の廃絶ではない)を約束
した北朝鮮に対して、「融和戦略」に転じてCIAは先物売りをやめた
のでしょう。

増やしていた先物売りをやめると、限月(3か月から6か月後)の買い
戻しが増えて、市場では買いが増えるので、価格は上げます。

一般に、
(1)「証券の先物売りの増加→価格下落」、
(2)「清算のための買い戻しの増加→価格上昇」になります。

その状況証拠は、2019年の3月から、ビットコインの先物売りが「限
月(反対売買の期限日)での買い」に転換して、上がったことです。
3か月の高騰は、先物の清算と買いであることが多い。

【外交の闇の中の、米朝の関係】
2019年2月には、「決裂した」とだけ報じられている米朝首脳会談
(ハノイ)があり、19年6月には、板門店でトランプが北の国境を歩
いて超えるパフォーマンスの、融和を示した米朝首脳会談でした。

決裂のあとは、逆に、融和のムードです。トランプの行うことの意味
を、メディアは伝えきれていません。外交の肝心なところは「秘密」
とされるからでもあります。
https://cc.minkabu.jp/pair/BTC_JPY

ビットコインの価格にも、トランプの「国際戦略」が絡んでいるでし
ょう。CIAは、情報戦略を担う機関です。もともとビットコインは、
CIAによるブロックチェーンと認証方法の、将来のドルを想定した秘
密プロジェクトによる実験だったという説があります(当方はCIA説
に賛同しています)。

【情報戦争】
21世紀の「戦争」は、情報領域で行われています。

物的設備や商品ではなく、世界の30億人が使うデジタル情報が「アマ
ゾンやフェイスブック、中国のアリババ、テンセント」のように巨大
な富を生むように変わったからです。

土地は「そこに人が集まる」ことで、価値をもっています。東京の銀
座が最も高いのは、居住人口密度をはるかに超えた人が集まるからで
す。情報も「人が使う」ことで価値を高めます。

日本でも、車の普及(3大都市以外の地方では、主婦が軽自動車に乗
る一家2台)によって、駐車場が広大なショッピングセンターができ
ましたが(1990年代~2010年)、インターネットとスマホは、ネット
販売とSNSの需要を増やしているのです(2000年から)。ビットコイ
ンはスマホで売買され、使われています。

日本でも、食品以外での、消費税の2%増税を契機に、政府が電子マ
ネーの使用を買い物の40%にしようとして、2%や5%の特割ポイント
をつけています。電子マネーの普及とともに、仮想通貨の買いと利用
も増えていくでしょう。

15億人のユーザーをもつフェイスブックは、既存組織からは反発も招
いている「リブロ」という仮想通貨を、通貨資産を担保にしたICO方
式で出すという。この発表も、消えそうだったビットコインの価格回
復を助けました。

【TCP/IP】
仮想通貨がある、インターネットのTCP/IPという、情報のパケット化
(細切れに切ること)による分散通信の方法も、冷戦の時代の、通信
網がソ連の爆撃で破壊されても通信ができる米軍のARPANETでした
(1970年~1990年:米軍が開発・運営)。

パケットに分けた分散通信は、ブロックチェーンに似ています。

「通信」は太古から戦争の手段でした。大本営から前線の兵力への指
令には、仮想通貨に似た「暗号化した通信」が必要です。軍用技術が
民間に開放されたのが、世界の30億人がスマホで大量に使っているイ
ンターネットです。

【ファーウェイ】
安価なWi-Fiの通信機と、安い携帯電話で最大手メーカーになったの
が、中国のファーウェイ(HUAWEI:従業員17万人)であり、トランプ
大統領は、「情報ハッキング」を理由に、禁輸措置をとって、世界に
も呼び掛けたことが、対中国関税の発端になったものです。

「(TCP/IPの開発)目的は、新しいコンピュータ技術を利用して、核
の脅威に対する軍事的指揮と、制御のニーズを満たし、米国の核兵器
の存続可能な制御を達成し、軍事戦術と管理の意思決定を改善するこ
とでした(DARPAの局長:ステファン・J・ルカシックの弁:
WIKIPEDIAからの引用)

仮想通貨も、TCP/IP上でのブロックチェーンによる認証(素因数分解
の速度で、ホンモノを見分ける方法)という情報技術です。

【IMFの仮想通貨への態度】
仮想通貨(ビットコインではなく、ブロックチェーンの仕組み)にお
いては、通貨の主流派からも、新しい「認識の動き」が生じています。

以前から、シャネルのスーツを着るクリスティーヌ・ラガルドIMF専
務理事(ECB:今度はユーロの中央銀行の総裁に就任)は、中央銀行
だけが使っているIMFの国際通貨であるSDR(特別引き出し権:通貨バ
スケット)を、ブロックチェーンの電子マネー(暗号通貨)にする意
向を示していました。1SDRは、今149円です。これは、いますぐにも
実行は可能です。

【ビットコインの価格変動は、金の3倍から6倍と大きい】
といってもこれは、ビットコインとは違う、IMFが発行する仮想通貨
のSDRです。ビットコインが上がり続けるという根拠にはならない。

ビットコインが長期で上がるときも、利益確定の先物の売りで、数か
月から6か月は大きく下げるときが混じります。ビットコインは、金
や株価より、大きな上げと下げをします(ボラティリティが高い金融
商品です)。

金の価格変動の幅(ボラティリティ=標準偏差の2倍)は、1日あたり
で0.5%~1%と低い。1日で、前日比で1%以上価格が動くのは、2.5
%(2か月に1日)という意味になります。日経平均の株価指数は、1.
2%程度です、金よりは、1.5倍から2倍くらい変動幅が大きい。

ビットコインの1日のボラティリティは約3%と高い。金の3倍から6倍、
日経平均の2.5倍、上げも下げも価格変動が大きいという意味です。

100億SDRをIMFが貸すと、その国の中央銀行は、1.49兆円分の外貨
(ドル、ユーロ、円、ポンドというハードカレンシー)に交換できる
というものです。ハードカレンシーは、世界の銀行で、ある程度は安
定した価値が認められ、外貨に交換できる通貨です。スイスフラン、
オーストラリアドル、カナダドルもはいっています。

人民元には、資本規制(外貨交換の金額規制)があります。SDRのバ
スケットの構成通貨(円の8.33%を上回る10.92%)ではあっても、
人民元をハードカレンシーとは世界の銀行が認めず、交換のための銀
行がもつ在庫額も少ない。なお、SDRのバスケットは、米ドル41.73%、
ユーロ30.93%、人民元10.92%、日本円8.33%、英国ポンド8.09%の構成
比です。

【ジャクソンホール会議での、イングランド銀行総裁の発言】
2019年8月24日の、世界の金融の方向を話し合う「ジャクソンホール
会議」では、英国中央銀行(イングランド銀行)の総裁マーク・カー
ニーは、「世界の準備通貨としてのドルの地位が終わり、リブラなど
のグローバルなデジタル通貨のような形式が、より良い選択肢となる
という認識を強く主張」しています。

「基軸通貨が、ドルから中国人民元といった別の国の通貨に取って代
わることを容認するよりは、好ましい」との見方を述べたものです。
日本のメディアでは、これについてのコメントがゼロです。ドル基軸
の体制は「絶対のもの」と見ているからです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-08-26/PWTKC86KLVR401

【基軸通貨は、多極化の方向】
住宅建設の不良債権(空き家5000万戸分:推計1000兆円)から、いず
れ金融危機に向かう人民元が、ドルの位置に代わることはありません
(当方の見解)。

将来の基軸通貨(貿易に使う通貨)は、
(1)ドル(米国、日本、中東)40%、
(2)ユーロ(欧州とロシア)30%、
(3)人民元(アジア)30%という三極の、多極化に向かでしょう。

「(債務国の通貨である)ドル基軸の終わり」は、英国中央銀行の総
裁にも意識されています。米国の対外債務が、36兆ドルから「増え続
けること」が問題です。

このため、ドルの海外散布が減ること(=海外の所有になっているド
ル、ドル証券(株と社債)、そしてドル国債が米国に回収されるこ
と)はないからです。

【マハティールの、金準備制のアジア通貨の構想】
復帰したマレーシアのマハティール首相は、「金準備のアジア通貨を、
各国が中央銀行の金を拠出して作って、アジアの貿易通貨にする」こ
とを主張しています。

マレーシアの賢相マハティールは、人民元やドルに支配されることを
よしとはしないからです。日本はドル以外の国際通貨構想をもってい
ません。最後まで、「ドルの支持者」でしょう。安倍政権は、トラン
プのいいなりです。

現代の、不均衡な通貨問題の根底にあるのは、基軸通貨のドルが、経
常収支の赤字を構造的に続ける債務国の通貨(対外債務36兆ドル)で
あり、数年の長期では、下落する懸念が生じることです。

過去、ドルは下落を続けています。今後も、5年以上の期間では、下
落です。経常数収支の赤字(ドル売りになる)が、黒字国に累積する
からです。

このため赤字が大きくなった1990年代から、「米国景気はいい、米ド
ルは強い、ドル株は上がる」と、米国側から言われ続けてきたのです。

ドル基軸通貨の体制を守る、米国経済の安全保障が、この目的です。
海外がドルを受け取らなくなると(=ドル売りになると)、米国経済
はドルの暴落、株価の下落、輸入価格の高騰から破産するからです。

■2.前号までの振り返り(難しい内容ですが・・・)

前号までに、2018年の8月から金価格が上がった理由を、以下のよう
にまとめました。(2018年8月:1オンス1180ドル→19年9月10日:
1491ドル:13か月で+26%)
https://jp.tradingview.com/symbols/XAUUSD/

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)トランプ関税第一弾(18年8月)と、英国の、関税ゼロのEUから
の離脱での、国会の迷走
 ↓
(2)対中国関税、英国関税からの、世界のGDPの減速予想→企業の長
期資金需要の減退(=米国長期金利の低下を促す)。対中関税は、輸
入が減らない米国の物価を上げます。中国からは、海外工場がアジア
に脱出します。

 英国がEUを離脱すると、英国とEUの貿易には10%の関税がかかりま
す。加えて、英国の金融機関がEUで営業するには、EUで免許を取り直
さねばならなくなります。ロンドンの金融街シティ(今は欧州金融の
中心)の存続の危機を生みます。日本の銀行も、大陸欧州への窓口と
して、シティに拠点を置いています。

 ロンドンのシティは、欧州金融のウィンブルドンになっています。
1980年代から、米国のレーガンと協力したサッチャーが「金融ビッグ
バン」として英国の金融大国化を推進したのです。英国には、輸出が
できるめぼしい産業がない。このため、マネーの仲介利益を求めたの
です。
 ↓
(3)GDPの減速予想から、企業の長期資金の運用が減り、滞留した金
融機関のマネーでの、長期国債買い→長期金利の低下(長期債価格は
上昇)・・・長短の金利が逆転。長期資金は、1年以上の長期の投資
をするマネーです。短期資金は1年以内です。
 ↓
(4)予想される将来GDPの低下への認識による、株価リスクの高まり
の中での、ヘッジファンドの金先物と金ETFの買い増し→金価格上昇
 ↓
(5)ドルと金を、自国通貨発行の準備通貨(通貨の価値を守る担保
資産)にする新興国の中央銀行の、金と金ETF買い増しの継続→金価
格上昇
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回、「ドルは安くなっていないのに、金価格が上がった」ように見
えるのは、世界の通貨シェアで約30%を占めるユーロが、先に下げた
からです。

[2018年の年初1ユーロ1.25ドル]→[19年9月1.10ドル]:12%の、
ユーロ安/ドル高です。人民元に対しても、[2019年4月:1ドル=6.
67元→19年9月7.12元]:6.7%の、元安/ドル高です
https://jp.tradingview.com/symbols/EURUSD/

【為替相場は、相対的】
ドルの本質的な価値が下がっていても、他の通貨(ユーロ、元、新興
国通貨)が下がると、1973年からの「変動相場制」のなかで、相対的
な価格しか示さない外為市場では、ドルが高くなったように見えます。
(注)一方で「ドル/円」は、[18年夏の113円]→[19年8月初旬
105円台]→[今日は107.5円の円高/ドル安]。

◎今回、金が買われたもっとも大きな要因は、「米国株の下落リスク
の高まり」からです。

2018年10月から12月には、20%という大きな下げをしています。株主
の金融資産である、株価時価総額3000兆円のうち600兆円が消えたの
です。株価の下落は、マネー量(ドル)の縮小と同じマイナスの効果
を、金融経済にもたらします。

【2019年1月のFRB】
20%の株価下落に狼狽した米国FRBは、2019年1月には、2014年からの
9回の利上げ(0.25%×9回=2.25%)から一転して、「2019年には3
回の利上げをする予定だったが、これを停止する」と発表しています。

これは、3回の利上げ(0.75%)を織り込んで、下げていた米国株に
とっては、0.75%の利下げと同じ効果をもちます。

「2019年の、3度の利上げの停止」の発表が原因になって、先の変化
を織り込む株式市場では「金融緩和(マネーの増加供給)」があった
ようになりました。

NYダウは2018年12月24日の安値2万1792ドルから、2万6909ドルまで、
23%回復したのです。ダウとS&P500やナスダックはほぼ同じ動きにな
ります。

【2019年7月の0.25%の利下げ】
2019年7月には、FRBは、予定していた短期金利の利上げの停止だけで
はなく、0.25%の短期金利の利下げを行いました。

19年9月17日から18日に予定されているFOMC(連邦公開市場委員会)
でも「利下げ(0.25%か、0.50%)」を行うことを匂わせています。
市場の期待は、2回分の0.5%の利下げです。投資家が米国株の低下を
懸念しているからです。

(注)実際は、0.25%の下げと、予定になかった、FRBからの短期資
金の供給でした。米銀で、銀行間の短期資金の貸し借りであるレポ金
融の高騰(一瞬は10%:9月中旬)があり、FRBは慌てて、短期資金を
供給したのです。

【逆イールドの発生】
FRBが0.25%利下げをした2019年8月には、銀行間の長期国債の売買で
決まっている長期金利が、下がった短期金利(2.00%~2.25%の幅)
を下回るという金融(マネー移動)の異常事態が起こりました(逆転
は英米同時)。

米国の10年債の金利は1.723%(19年9月)に下がっています。8月は
1.5%台でした。

▼長期金利は、企業の投資の資金需要を示す

【長期金利の下落の意味】
FRBが関与しない長期金利の下落は、企業の投資用の「長期資金の需
要」が減少していることを示します。米国の長期金利は2018年末の3.
2%から下がり続けていました。

加えて、FRBが短期金利を下げた直後の8月には、1.5%台に下げたの
です。これは、2012年(1.5%台)以来の低い金利です。企業が、米
国GDPの先行きを悲観し投資を減らしたこと(結果)を示します。

【長期国債の買い】
企業の投資資金の需要が減った米国内、米国外の銀行は、FRBの量的
緩和の継続から余っている長期資金で、2%でも金利がつく米国長期
国債を買い、それが大きくなったため、ドルの長期国債の価格が9か
月で13%上がり、長期金利は3%台から1.5%台に下げたのです。
(注)9月では長期金利が1.5%から1.7%台に上昇しています。
https://jp.investing.com/rates-bonds/u.s.-10-year-bond-yield

(注)米国では、中国が保有する国債(1.2兆ドル)を、懲罰と称し
て利払いも返済もせず「踏み倒す案(デフォルト案)」が出ています。
他国がもつ米国債がどう反応するかを考えない無謀な案です。

実行には移されないでしょうが、万一実行されれば、米国債は世界か
ら売られて暴落し、米国の長期金利は高騰して、米国の金融・経済恐
慌の引き金になります。トランプ政権では「先に起こる結果を見ない
政策が満載」です。

【ユーロと日本の超金利はマイナス圏】
ユーロの長期金利、日本の長期金利がともに2019年からマイナス圏で
あることも、年初は3%、7月までは2%台の金利がついていたドル長
期国債の買いが起こった理由になっています。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/eu10yt.html

ドイツ国債の長期金利は-0.54%と、日本(-0.21%)より低い。世界
からスイスフランの買いがあるスイスの長期金利は、-0.829%と最低
です(スイスフランの国債価格は上昇)。

世界からスイスフラン買いがあっても、スイスフラン高になっていな
いのは、スイスフラン高は、842万人のスイス経済の大きな収入であ
る観光客(年間990万人)と機械の輸出を減らすとして中央銀行
(UBS)が「スイスフラン売り/ドル、ユーロ買い」を行っているから
です。

円とスイスフランは、海外に資産をもつ債権国の通貨です。放ってお
けば上がる通貨です。一方で、ドルと英国ポンドは、債務国の通貨で
す。海外からのドル買い、ポンド買いで支えられているのです。

世界の長期マネーは、企業の設備投資の減少から、銀行の当座預金に
じゃぶじゃぶになっていて、それで「価格が上がったゼロからマイナ
ス金利の長期債」を買っています。

長期金利のマイナスは、長期資金需要の減少であり、米国でも、GDP
の減速を予想した企業の、借入金の返済が、新規借り入れより多いこ
とも示しています。米国の景気後退は、2018年夏のトランプ関税から
起こったものです。中国で作って米国で売る消費財が多くなっていい
て、中国からの輸入品への課税は、米国での価格を上げるからです。
米国の消費者は、日本人よりはるかに、価格にセンシティブ(敏感)
です。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/jp10yt.html
https://jp.investing.com/rates-bonds/switzerland-10-year-bond-yield

▼GDP(=商品とサービスの付加価値生産)の増加率の、低下予想が
生じている

2018年8月の、トランプの対中関税の追加から、世界のGDP予想は低下
しました。GDP(=商品生産)の成長の減速は、2018年までのように
は売上が増えなくなった企業の、次期純益の予想(=次期期待純益)
を低下させます。

「米国の景気はいい。雇用は良好。ドルは強い」という金融世界のプ
ロパガンダに反して、米国でも、投資の資金需要は、2019年の年初か
ら、減少していたのです。

GDPの70%を占める世帯の消費需要の強さを示す、米国の消費者物価
上昇率も、2019年は、前年の2.2%~2.5%から、1.5%~1.75%台に
低下しました(不況期の、物価上昇率の低下)。
https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9052

2019年9月の、消費者の購買意欲を示す、消費者信頼感指数(アン
ケート調査)は、8月の135から、9月は10ポイント下げて、125になっ
ています。米国は、GDPのうち70%が個人消費です(日本は60%、中
国は40%ととても低い)。消費者の買い物が、米国の景気を決めます。

▼株価の評価指標であるPERの意味

PBR(株価÷1株当たり純資産:株価純資産倍率)と並ぶ、株価の金融
的な評価指標であるPER(現代ファイナンス論)は、「株価÷1株当た
りの次期予想純益」の倍率で表します。

株価は、投資家が企業によせる将来の予想純益を合計し、株式益回り
(1/PER)で割り引いたものとするのが、現代ファイナンス論です。

日経平均がPER15倍(次期予想純益の15年分:益回りは6.67%)、NY
ダウ17.4倍、米国S&P500が17.7倍、IT企業が多い米国ナスダックが
23.9倍、ユーロ(FTSE100)が12.6倍、ユーロの中のドイツは14.0倍、
中国(上海総合)は11.3倍、ロシアは5.9倍です(19年8月)。

先進国の中では、ユーロの12.6倍の株価評価が、もっとも低い。ユー
ロ株のPERの低さは、日本の人口減を米国より先に追っている欧州の
GDPの先行きを、悲観しているからです。

第二次世界大戦の敗戦国だった、ドイツとイタリアの人口構造(戦後
ベビーブーマーの突出)は、日本とそっくりです。フランスは財政赤
字が大きい(EUのGDP比3%を上限とする国債発行ルールを超える3.2
%:2019年)。

ユーロが日本より先に、マイナスの長期金利になったのは、欧州の
GDPの予想成長率が低いからです。(注)中央銀行が介在しないとき
の、均衡長期金利は、「物価の予想上昇率+GDPの予想実質成長率」
付近です。

ドイツが、トルコ・中東からも移民を受け入れたのは、日本と同じよ
うに生産年齢人口が減少しているからです。豊かなスウェーデン、フ
ィンランド、ノルウェーの北欧も移民の多さでは、ドイツに似ていま
す。

英国は、パスポートもビザも要らず、労働の移動が自由なEUからの離
脱により、移民にノーとしました。ほぼ同時に、トランプは、移民に
対して「米国は不法移民を許さない」として21世紀の、労働の移動の
流れを変えています。

新興の中国、ロシアでは、会計の基準の問題から、本当の企業利益は
分からない。グローバルな投資家は、40%くらい割り引いた評価しか
していません。

【日経平均のPER】
日経平均のPER15倍は、政府系金融が株を買い支えた「官製相場」の
によるものです。2019年は、昨年比で2倍に増えた、自社株買いによ
るものです(1か月1兆円:年間13兆円の予想)。

日本株も、PERでは30%から40%(4倍から6倍)高く評価されている
でしょう。今日の日経平均2万1514円(19年9月10日)のうち、6000円
から8000円は「上乗せ分」ということです。

【2019年度の日本株】
2019年度(20年3月まで)は、日銀の株ETFの買い(1か月5000億円)
の継続と、増えている社債発行で調達したマネーでの「自社株買いの
倍増(1か月1兆円)」が、株価を支える役割を果たすことになるでし
ょう。

10月の消費税(8%→10%)の上げは、景気を冷やす要素です。

【2020年のオリンピック投資は、終わっている:不動産価格】
東京の新築マンション価格は、2013年9月にオリンピックの開催が決
定したあと、5994万円から7098万円にまで18%もあがっていました
(2017年:23区)。

この上昇率の20ポイント分は、中国人の買いとオリンピック目当ての
需要での上昇だったでしょう。人口がすでに減っている近畿圏でも、
3647万円から3836万円と5%上がっていたのです。10ポイント(%)
分くらいが、インバウンド消費(日本全体で5兆円:GDPの1%)とオ
リンピック特需だったでしょう。

2019年は、高くなり過ぎた新築ではなく、中古の需要が増えています。
2018年で、すでに新築と中古販売は、5万軒で並んでいました(首都
圏)。10月からの、消費税増税前の駆け込み需要は、生じていません。

新築は、買い手に、上がり過ぎだと認識されているからです。2019年
には、東京の新築マンション価格は下がるでしょう。2019年8月には、
郊外が多い戸建て住宅は、すでに8%下落しています。(注)世界で
は、いま最も危ないのは、世界1高い香港の不動産です。民主化(自
治区である香港の普通選挙制)を要求する市民デモからです。

販売会社は、価格下落の情報を出したがりません。中国人の買いが
2018年に停止し、日本人による高い物件の買いも減っていることから、
明らかです。

オリンピック用のホテル投資は、建築期間があるので2017年、遅くと
も2018年には、終わっています。不動産の価格統計は、実態に約1年
遅れる遅行指標です。

中国では、香港市民の終わらないデモに対して、香港警察ではなく人
民解放軍が出ていく事態になると、中国の統制下になる香港の金融株
と不動産は暴落します。悲観的な中国エコノミストは、デモが起こっ
た19年6月から、30%の下落を言っていますが、どうでしょうか(香
港経済日報)。

【世界の、金融資産富裕者】
香港には、中国の富裕者(金融資産1億元(15億円)以上が10万人)
のマネーが集まっています。

日本では、金融資産10億円以上が3万人です(1万6900人が経営者
(56%)、あとは、医師8000人、大手企業役員1650人、有名人1590
人)。100万人の都市あたりで300人ですから、数えるくらいです。

1億円以上は126万人であり、人口の1%、街の100人に1人と多い。米
国では、2.5億円以上の金融資産から「お金持ち族」とされています。

香港に複数の不動産をもつことが多い中国の金融富裕層は、日本の8
倍から10倍でしょう。

世界では、不動産・金融資産を含む、負債を引いた純資産で30億円以
上が21万人です(平均年齢59歳)。世界の時価総額の50%を占める株
価が高い米国が圧倒的に多く6万9560人、ドイツ1万9095人、日本が1
万4700人、英国が1万1510人です。

リーマン危機のあとの、中央運行の通貨増発の20兆ドル(2100兆円:
米国、ユーロ、日本、中国の合計)は株価と不動産を上げ、特に、富
裕層の、金融資産と不動産を増やしたのです。

■3.米国株は、どの程度自社株買いバブルか?の検討

【現在のPER】
米国ダウのPERが17.4倍、S&P500が17.7倍、ナスダックが23.9倍と言
えば、ユーロと円のマイナス金利、米国の長期金利1.7%の超緩和さ
れた金融の中では、「バブル価格」ではないように見えます。しかし
このPERをバブル価格と見なければならない。以下でその理由を述べ
ます。

【自社株買い4.3兆ドル】
米国の自社株買いは、2011年から2018年の8年間で、4.3兆ドル(451
兆円)です。米国では日本のような官製相場はありません。企業自体
が、低金利の社債を発行して、流通株を減らして、EPS(1株当たり税
後利益:純益)を高める自社株買いを行っています。

その代表は、株価時価総額が100兆円ランク(9422億ドル:19年8月)
のアップルです19年9月にも、社債発行で自社株買いを行っています。
トヨタの時価総額1850億ドル(19兆円)の5倍です。主力商品の携帯
電話(iPhone)で、100兆円という時価総額(=企業評価)は、どう
でしょう?

米国の大手500社(S&P500)の時価総額は、2011年以降、12.5兆ドル
増えて、29兆ドル(3000兆円)に達しています(2018年)。

金融セクターを除くと、時価総額の増加は8.6兆ドル(増加額の69
%)にのぼるという(WSJ紙:19年1月8日:Vito J. Racanelli氏)。
時価総額の上昇分8.6兆ドルのうち、4.3兆ドル(50%)が自社株買い
です。

流通株が約40%も減って、企業の純益額はおなじであっても、EPS
(Earning Per Share:1株当たり純益)は1.67倍の金額に見えてき
たことになります(2倍の増益)。

2018年には、歴史上最大の7000億ドル(73兆円)の自社株買いが行わ
れています。

【1株当たり純益は67%増に拡大した】
S&P500社の企業利益は、2011年以来23%しか増加していないのに、
EPSでは67%増えたように見えているのです。17.7倍のS&P500社の
PER(株価÷1株当たり純益)では、1株当たりの純益がほぼ40%大き
く見えています。

【30%がバブル】
自社株買いがないとしたときのPERは「17.7倍÷1.4=12.6倍」が妥当
でしょう。「12.6倍÷17.7倍=71%」です。S&Pのア株価では、ほぼ
30%分が、「自社株買いバブル」にあたるでしょう。

・日本株=官製相場バブル30%付近、
・米国株=自社株買いバブル30%付近で、価格の罫線が同じ動きをし
てきたことが見合っています。

【バブルが剥がれるとき】
株価バブルが剥がれるのは自社株買いが減ったときです。
・2018年は44%増の7000億ドルでした(暦年)。
・2019年は、増加率は22%に下がるが、9400億ドル(98兆円)になる
という(ゴールドマン・サックスの推計)。

【2019年12月は?】
2019年末までは、米国株は、米中貿易戦争の影響から、企業利益が下
がっても、9400億ドルの自社株買いによって、EPS(1株当たり純益)
は上がって、結果として、米国株は維持される可能性が高いことを示
しています。

個人投資家の株買いは減っています(米国も薄商い)。しかし、
「2019年秋の暴落」は、自社株買いが前年比20%増えることよって、
ないかもしれません。

(注)FRBの9月17日から18日の利下げ後の動きをも見ると、もっと良
く判定できます。利下げは社債の金利も下げて、社債発行が増える金
融環境を作るからです。

1年に100兆円という金額(日本の13兆円の7.7倍)の、流通株数を減
らす自社株買いは、タコが自分の脚を食って太ってきたことと同じで
あり、株主資産をムリして増やす「米国の強欲資本主義」の現れです。

【2020年、2021年・・・】
2020年までは、米国の自社株買いも可能かもしれない。2021年は?と
なると、危うくなります。

2018年秋の、20%の下落調整は、FRBがその政策を、利上げという金
融緩和からの出口転換を転換し、再び利下げをすることによって止め
ました。

【自社株買いが株価を上げないと、正当化の根拠がなくなる】
自社株買いによって株価が上がることがなくなると、「自社株買いは
株主配当である」という、自社株買いを正当化してきた根拠を失い、
株数を減らす減資になります。

逆に、自社株買いに使った社債の借金は増え、B/Sの株主資本比率
(株主資本÷総資産)は下がります。株価を上げる株主配当どころか、
CEOが株価を下げる材料を作ったことになります。

【注目点】
この観点で、2019年、9月、10月、11月、12月の米国株が上がるか、
横ばいか、下がるかを注目しなければならない。

年間9000億ドルの自社株買いの実行(これはほぼ決定)にもかかわら
ず、米国株(NYダウ、S&P500、ナスダック)の平均指数が下がったと
なると、2020年に自社株買いをふやすことの、実行の根拠を失うから
です。

自社株買いの発表をすると、EPS(=純益÷株数)が上がって、株価
が上がることを期待し、その株を買う投資家が増える。これによって
株価は上がってきたのです。自社株買いが誘う投資家の買いが、株価
を上げてきました。株価が上がらないと「金融詐欺」に近いものにな
ります。

昨年比+20%の自社株買いをしても、株価は上がらないことを2019年
の秋から12月に市場が経験すると、そのあとの2020年は「自社株買い
の発表」が株価を上げることは少なくなるでしょう。

リーマン危機のあと3倍に上がった米国の株価は、ギリギリの淵に立
っている感じです。

【米国金融の自己資本】
米国株が30%下がると(一瞬ではなく続くと)、金融機関の自己資本
(米国の推計200兆円)には、株の含み利益(時価-取得簿価)が多
いため、債務超過になるところが出てきます。金融機関の債務超過が、
信用創造ができなくなる金融危機です。

対外総債務(36兆ドル:3780兆円)、対外資産を引いた純債務10兆ド
ル(1050兆円)である米国の金融危機は、ドル危機にもなります(ド
ル安)。

【ドルの反通貨:金の高騰】
この時、ドルの代替資産として買われる金は、高騰にはいるでしょう。
米国の金融危機になって3か月間は、決済の現金を得るための金の換
金売りが増えるので、金価格は下がります(リーマン危機の事例)。
しかし、その売りがなくなったあと、ほぼ3か月目から、高騰にはい
るでしょう。

2019年でなければ、2020年です。2020年を超えて21年になることは、
ないように思えます。理由は、FRBの短期金利は2%台であり、下げる
余地が少ないからです。(注)リーマン危機のときは5.5%の幅があ
りました。

【次回の金融危機に対して利下げと量的緩和という対策が取れるか】
FRBのドルの増発は、今も高い水準の4兆ドル(420兆円)のままなの
で(マネー量の縮小はされていない)、これを大きく超える一層のド
ルの増刷は、できないでしょう。債務国の米国が、ドルを増刷したと
なると、海外が36兆ドル(3780兆円)をもつドル債権が売られて、ド
ルが大きく下がるからです。

2008年のリーマン危機のときは、米国は、欧州ECBと日銀に呼びかけ
て、「協調利下げ」をしています。米国の利下げで、イールドスプレ
ッド(金利差)が縮小し、海外からの米国債の買い(40兆円/年は必
要)が減ることを恐れたからです。

しかし次回は、もう協調利下げは実行できません。ユーロと円の長期
金利が、現在、すでにマイナス圏だからです。-2%には、下げるこ
とはできないでしょう。

2%の金利を取られる預金(日本では800兆円)が、現金のタンス預金
(金利ゼロ%)に変わって、銀行が破産するからです。銀行預金の金
利を下げない利下げはありえないものです。

このため米国だけが0%に向かい利下げをすると、20%高くなったド
ル国債が、海外から売られて、市場の長期金利は逆に上がるという結
果を生み、米国にとっては悪魔の「金利高+ドル安」になります。

【債権国と債務国で違う、通貨安の株価への効果】
対外債権国の日本では、2012年からの円安(1ドル80円→120円)が海
外生産(現地生産)の利益と、ドル建てが多い対外資産を大きくし、
企業、金融機関、政府が大きな為替差益を得る効果がありました。

ドル債券の評価が、下がった円に対して、50%も上がったからです。
このため、「円安=株価上昇」になってきました。

米国は、海外からの米国株買い、ドル買い(ドル預金)、ドル国債買
いにより、マネーがはいってくる対外債務国なので、逆に、「ドル高
=株価上昇」、「ドル安=株価下落」になります。ドル安とはドル売
りだからです。

【今回は、2008年から2014年とは違う】
ドル安(海外からのドルの売り)の中で、FRBがドルを増発しても、
米国の株価を上げる効果はない。つまり次回は、リーマン危機のあと
のような、QE(量的緩和4兆ドル)による株価上昇効果は、少なくな
ります。

【後記:米中貿易戦争とフレグジット】
米中貿易戦争の緩和(話し合い)期待という理由づけで、9月5日から
の米国株は上げています(NYダウ2万6285ドル→2万6909ドル(+2.4
%))。トランプは、対中関税の下げに向かうでしょうか。

10月末だった英国のEU離脱は、2019年1月末に延期されました。ジョ
ンソン首相の保守党からの、21名の造反により、延期の法案が成立し
たからです。ただしジョンソン首相は、EU側との交渉によって、10月
末の離脱を推進しようとしています。ここまで延ばしてきたことを
10月末にすることに、何の意味があるのか。意地としか思えません。

英国のEU離脱の撤回は、EU側が拒否するので、切羽詰まっているので
しょう。実はジョンソン氏は、元はEU推進派でした。経済力が弱い英
国の政治的な意思決定は、右往左往することを運命づけられているよ
うです。

ジョンソン首相は、意識せずとも1980年代に米国のレーガンと鉄の宰
相サッチャーが敷いた、製造業なきあとの英国の「金融大国路線(シ
ンガポール、香港と同じ)」からの転換も図っているのです。
	
ロンドンの物価と住宅価格は、異常と思えるくらい高い。ホテルの部
屋も、狭くて高い。これは、経常収支が米国につぐ赤字の英ポンドが、
海外から過剰に評価されてきたことを示します。ポンド買いが多かっ
たのは、ロンドンが欧州の金融のウォール街になっているからです。

1ポンドは今133円です。マネー以外にはめぼしい輸出産物がない英国
経済の実力からすれば、「1ポンド=80円」くらいでしょう。ブレグ
ジットのあと、数年でそうなるでしょう。

英国車ジャガーは、インド資本になっています。ローバーはドイツの
BMWです。英国は、牧草地が広い。しかし牛肉の輸出では、狂牛病
(牛海綿状脳症:BSE)を起こしました(1987~)。2001年には日本
でも発見されています。飼育していた女性の獣医さんは、自死しまし
た。

【案内】
2022年ころまでのドル、ユーロ、人民元、円、そして長期の金価格の
予測を含むのが、拙著『(負債の)臨界点をこえる世界経済』(19年
7月1日刊)です。

「論理的な根拠をもつ予想」を心がけて書いています。ご一読をお薦
めします。(2160円:400ページ)

臨界点を超える世界経済-吉田-繁治

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