ドルの米国還流による新興国通貨の下落
This is my site Written by admin on 2018年8月21日 – 09:00
おはようございます。もっとも新しい有料版の前半部から8
ページくらいをお届けします。

ベランダから見る西の空の夕方の、灰色と銀白色の雲の先は、
画家がどんなの絵の具を使っても出せない青の透明です。オス
カー・ワイルドは、ターナーの風景画を見て、「芸術は自然を
模倣する」と残していますが、どんなに迫ろうとしても人工
(=Artの原義)の彼方にあるものが、ありふれた自然でしょ
う。

▼自然の経済的価値(=価格)

自然に感動し感興を絵で残すことは、人の自然な衝動に思えま
す。スーパーの棚の、安価なりんごにも静物画で繰り返し描か
れてきた完全な美があります。嫌われる蚊も、顕微鏡で見ると、
人工をはるかに超える高みにまで、繊細に美的です。

われわれは、りんごや蚊を見ても感動しない。モノや自然に経
済的な価格を見ているからです。しかし蚊も、優れた芸術家が
描けば、高い価格がつく。芸術と経済の境界は論理的、数学的
ではなく、感性的で不思議です。生前には、変な絵とされ1枚
だけしか売れなかったゴッホの絵が数百億円。ゴッホは、「補
色」を対比さることから生じる鮮やかさを「自分の道」として、
使っています。

盛りを過ぎ、鳴き声も減って、死骸が街路に転がっている蝉。
小学生のころ、網で採ったセミは一瞬の宝でした。自然の美に
経済的な価値がないのは、「ありふれていて豊富」だからです。
魚釣りが趣味の人たちは、価格以上の価値を、釣った魚に見て
います。

趣味と言えば、日曜日の午前2時からのCSで、全米プロが行わ
れていますが、350ヤードの正確な飛球がもたらすバーディの
積み重ねが、賞金という億単位の経済的な価値を生むよう
に・・・。ショットの経済化がトーナメントです。

期待された松山のスコアは、芳しくない。録画で見ています。
素朴さがあり、インタビューが苦手な松山は、一言も言いませ
んが、治療した左手親指に不安があるのか。ドライバーに意図
しない曲がりがあり、アイアンでも突然、計算外の球が出てい
ます。シャフトを抑えて押す左手親指の故障は、水泳の肩甲骨
のようにゴルファーには致命的です。怪我で消えたプロスポー
ツ選手は、数多です。

左手親指は、コックとインパクトのとき重要な役割を果たして
います。素人意見ですが親指の負担がないテンフィンガー・グ
リップに変えればいいのかもしれない。全英オープンや全米プ
ロにも出ている日本の賞金王の時松がこれです。しかし微細な
違いが、順位になるトッププロにとって、慣れてきたグリップ
を変えるのは、ゴルフを根本から組み立て直す冒険でしょうか。

人の、欲しいと思う需要に対して、供給がありふれる量ではな
い希少性と有用性が経済的な価格を作ります。自然が作るダイ
アや金がグラム単位で高いのは、人が欲しいと思う総量が、供
給量より多いからです。

石ころのように至る所金塊があれば、ICチップの配線での、酸
素や薬品に腐食しない金の有用性は変わらなくても、経済的に
は無価値になる。空もありふれていて誰も所有できない。自然
は、人為の経済ではない。だから価格がない。価格とは、「人
が買う経済的な価値」です。人が価格をつけます。

▼政治と軍事と関税

トランプは、衛星を打ち上げているロシアと中国に対抗して、
「宇宙軍」創設すると言い始めました。ミサイルが到達できな
い上空3万6000Km(地球の半径の6倍の高さ)の人工衛星の基地
です。

宇宙の空間に所有権はない。太陽や気象のように誰も所有して
いません。予算は5年で9000億円。地球に価格をつける不動産
的な発想です。政治でも出身にはあらがえない。

政治の延長線にある軍事は、領土の侵略のためのものでした。
武力で争っていた戦国時代を考えれば、わかります。敗戦まで
は、天皇が軍の統帥権(最高指揮権)をもっていました。

関税の競争も経済的な戦争です。日本が、自国で関税を課すこ
とのできる「関税自主権」を得たのは、米軍の黒船(1853年)
が浦賀に来襲して54年もあとの日露新通商条約(1907年)によ
ってでした。

ロスチャイルド家から1億円(当時は3000億円相当)の借金を
して軍艦を作り、日露戦争(1904~1905年)でロシアに勝った
日本に、欧米が関税自主権を与えたのです。

富国強兵の政策によって、実に54年もかかっています。関税自
主権がないと、安価な輸入になって、国内産業は育ちません。
関税自主権は、明治政府と国民の悲願でした。日本は。ニコラ
イ二世のロシア軍を倒した軍艦のプレゼンスで、これを獲得し
たのです。国際政治の先端は、今も、軍事力の発揚です。トラ
ンプは軍事予算を、教書から6兆円加算して80兆円に増やしま
した。

コピーの国でもある中国からの輸入に対し、「知的財産権」の
侵害を理由に、懲罰的な関税(平均25%)も課しています。こ
の税収が増加軍事予算になるのです。

トランプを見ていると、ドラエモンのジャイアン。「自分のも
のは自分のもの、お前のものも俺のもの」。腕力(個人の軍事
力)によって、そう言っていたのです。

しかし何か憎めないところもある。非合法を超えた活動をする
CIAのような秘密警察出身の、ロシアのプーチンとは違います。
その何かが何か、考えていますが、まだ回答に至っていません。
風貌のせいか。どう考えますか?

トランプの政治活動は、
・核廃絶では曖昧に合意した北朝鮮との首脳会談、
・イランとの核合意の廃棄、
・鉄、アルミ、その他商品への25%の輸入関税のすべてが、
11月の米国中間選挙に勝つためという目的をもっています。

この意味で、本質は、国民の人気取りのポピュリズム政権です。
議員を選挙で選ぶ民主主義はポピュリズムです。しかしポピュ
リズムを奉じる政権が立てる政策の難点は、「短期的な分かり
やすい成果を求めて喧伝(けんでん)し、長期的には失政に至
る」ことです。

グローバルリズムの時代の風潮の中で復活した「米国一極を唱
えたモンロー主義」にも類似するでしょう。モンロー主義は他
国不干渉とされますが、経済面でのブロック経済は、英国、フ
ランス、米国が植民地をもっていたことで可能なったものです。
その意味で、帝国主義の展開である植民地主義が、ブロック経
済でした。

1929年から33年の大恐慌のあとの、欧州と米国のブロック経済
は、第二次世界大戦の、経済的な原因になったものです。

資源を得る植民地をもたないため、ブロック経済を作ることが
できなかったドイツ、イタリア、日本が、米欧に遅れて、植民
地の獲得活動を行ったからです。

日本は商品を売る植民地としては中国に侵略し、インドシナへ
の侵略では、インドネシアの原油と、中東からの原油の輸送路
(マラッカ海峡)の獲得を目指したのです。

米国が、中国に侵略した日本に対して行った経済封鎖は、経済
の戦争です。今日は、8月15日、終戦の記念日です。

歴史は「勝者」が書きます。敗戦国の日本は、ファシズムと軍
国主義(軍事を財政面でもっとも重んじること)だけだったの
ではない。海上封鎖され、原油の輸入ができない経済の中で、
活路を求めたのです。原油は、今も、産業と生活のエネルギー
源です。原油がなければ、電力もなく工場は停止し、生活は、
木材の燃焼エネルギーだった江戸時代に戻ります。

米国が経済封鎖(貿易の禁止と国際金融の凍結)を敷いている
北朝鮮に対しては、陸続きの中国がパイプラインで、援助とし
て原油を北朝鮮に与え続けています。

このため、北の暴発は抑えられました。世界が全部の原油輸送
を禁じたら、窮鼠になった北は、猫に襲いかかる戦争に訴えた
でしょう。戦争の原因は軍事ではなく経済です。現象が軍事、
本質は経済です。

終戦の記念日にあたり、以上のようなことを考えました。本稿
では、イタリア国債の下落(約11%)にまで波及している新興
国の通貨・金融危機、そして、不良債権が増え始めた中国の債
務問題について、検討し、考えます。

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<955号:現象と原因:
         ドルの米国還流による新興国通貨の下落>
      2018年8月15日:終戦記念日:有料版

【目次】

1.新興国の通貨・金融危機
2.対外債務が大きな新興国の、通貨・金融危機
3.トルコリラ→アルゼンチンペソ→インドルピー
4.18年4月からの米ドルの上昇
5.交互に来るリスクオンとリスクオフ
6.下がっている金価格

【後記:ドル基軸の罪】

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■1.新興国の通貨・金融危機

まるで1998年の、アジア通貨危機・金融危機と同じです。

▼アジア通貨危機の顛末

東南アジア諸国は、海外から短期資金をドルベースで借り、近
代化のインフラ投資(長期投資)をしていました。通貨は、ド
ルペッグ制でした。自国通貨が安くなると、中央銀行が、ドル
を売って自国通貨を買い価格を戻すのがドルペッグです。

(注)中国の人民元も、事実上、ドルペッグ通貨です。このた
め「元安」が問題になります。ドルペッグをする理由は、自国
通貨の、国際的な信用が低いからです。

ヘッジファンド(ジョージ・ソロス)は、通貨を分析し、人為
的にドルペッグされたタイのバーツが高すぎると認識して、
バーツの先物売りと空売りを仕掛けました。「バーツ売り/ド
ル買い」です。ドルに対してバーツが下がると。先物の買戻し
のとき、利益が出ます。バーツは、1998年1月には50%に下が
っています。

経常収支が赤字のため、外貨準備(ドルの持ち高)が少なかっ
たタイの中央銀行は、「ドル売り/バーツ買い」で対抗できる
ドルを持たず、外為市場で買い手が消えたバーツは、暴落した
のです。

タイの対外債務は、短期資金のドル建です。バールが下がると、
借り入れたドルが高くなって、タイの対外債務は重くなります。
ヘッジファンドが仕掛けたバーツ売りから通貨と金融危機にな
ったのです。金融危機は、流通する通貨量の減少なので、経済
を収縮させます。

通貨の価値は心理的なものです。バーツの下落危機は、同じよ
うにドルペッグ制をとっていたマレーシア(リンギット)、イ
ンドネシア(ルピア)、フィリピン(ペソ)、韓国(ウォン)
に波及します。いずれの国もドル建ての対外債務が、外貨準備
よりはるかに大きかったからです。

アジア通貨危機は、IMFからの資金提供によって収束しますが、
東南アジア諸国は、財政赤字を減らす緊縮経済を強いられたの
です。この後、「ドルの短期債務は危ない」とされます。

通貨危機を経た国は安くなった通貨で輸出を増やし、緊縮経済
の中で、賃金と生活水準を切り下げて、経常収支を黒字にし、
危機に対抗できるドルの外貨準備を貯めたのです。経常収支の
赤字はマネー(ドル)の対外流出ですが、その黒字は、マネー
(ドル)の流入になるからです。

▼国際的なマネーの流れ

韓国・東南アジア、そして、中国の経常収支の黒字と、比例す
るのが、米国の経常収支の赤字です。1998年の赤字は、2150億
ドル(23兆円)、2006年は8059億ドル(88兆円)、2010年は
4307億ドル(47兆円)で、2018年は6146億ドル(67兆円)です。
トランプ財政の拡張を見ると、2019年は1兆ドル(110兆円)を
こえるでしょう。

米国の経常収支の赤字の累積分が、米ドルの海外流出になり、
それが、世界の外貨準備$13兆(1430兆円)になっています。
世界で経常収支の大きな赤字を続ける国は、米国とドル通貨圏
の英国です。(注)経常収支は、貿易収支と所得収支の合計。

経常収支の黒字国は、ドイツ2965億ドル(32兆円)、日本
1954億ドル(21兆円)、中国1648億ドル(18兆円)、オランダ
808億ドル(8.8兆円)、台湾801億ドル(8.8兆円)、韓国784
億ドル(8.6兆円)、スイス632億ドル(6.9兆円)、シンガ
ポール609億ドル(6.6兆円)などです(以上は2017年度の実
績)。

世界の黒字に対し、英国が1067億ドル(11兆円)、米国が
4662億ドル(51兆円)の赤字であり、合計で5729億ドルです。
これは、世界の経常収支の黒字の合計額に相当します。

トランプが「世界に対し、関税を25%に強化する貿易戦争」を
仕掛けているのは、経常収支の赤字が対外債務の増加になり続
けているからです。米ドルが、対外債務として世界に拡大散布
され続けているのです。

米国の対外債務は、2017年で、32兆ドル(3520兆円:米国の
GDP20兆ドルの1.6倍)に増えています。8兆ドル増えて、40兆
ドルを超えるころ、今回の新興国の通貨危機のようなドル危機
が起こるでしょう。借金が増えすぎると利払いが困難になって
行くからです。日本には、1年に40兆円増える政府債務に問題
があります。米国は、この対外負債です。

■2.対外債務が大きな新興国の、通貨・金融危機

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