ドル基軸体制の崩壊と基軸通貨の多極化(1)
This is my site Written by admin on 2022年5月8日 – 12:00
西側とロシアのメディアは、戦争に特有のプロバガンダ(広告)情報
を交えながら、物理的な戦闘の優劣を報道しています。戦争の報道が、
西側とロシアのTASS通信のプロバガンダ合戦になるのは、普通のこと
であり驚くべきものではない。古代から繰り返されてきたことです。

日本の米国との、開戦前(1930年)から敗戦の日(1945年)までの約
15年間、TVがない時代の朝日新聞を筆頭にした新聞は、すべて、が
「鬼畜米英」であり、「日本は戦争に健闘している、勝った」という
フェイクを流していました。

戦死で帰って来る骨壷の多さや、帰還兵の話からしか状況を知る方法
はなかった。知っても言えなかった。非国民として逮捕されたからで
す。

前線の日本軍が敗退しても、「戦果をあげた、栄誉ある退却」。
米国のメディアでは、宣戦布告もなく真珠湾攻撃をしかけた卑怯で、
邪悪な軍国主義者が日本人。

以上の価値判断は人間が作る社会の、本性に根差すものでしょう。

中学のクラス対抗リレーのとき3年3組だった私は、2組や1組の生徒は
(13クラスのマンモス校)、卑怯な手段を使うように見えた(幻覚で
す)。自分の組のA君やB君は、皆、一生懸命の正当な方法で走る善人
に見えたのです。同じ記憶は、皆さんにもあるでしょう。

古代から続くのが、同じ土地に住む集団の団結の力であり、郷土愛、
大きくいえば愛国心です。一緒に住むことで生まれる家族愛や夫婦愛
も同じ性格のものでしょう。

物理的な戦争の報道では、ウクライナ軍と米軍の真逆のフェイク合戦
が続いています。真実は(A+B)/2くらいのところにあるでしょうか。
犠牲や被害の数字すら、盛られるか、過少なのでしょう。

西側の記者が現場で取材すると、完備したプレスセンターに案内され
ます。プレスの腕章をもらいロシアの戦争犯罪を示すとされる場所を、
ウクライナ軍から案内される。許可された現場の映像を撮って、イン
タビューも許可された市民や軍人からしか取材ができない。情報が統
制された北朝鮮や中国での現地取材と同じです。

戦争の現場は「戦況は改善に向かっている」と言い続けます。
ウクライナとロシアに共通する、兵士の本質がこれでしょう。
司令官は特にそうです。

双方の記者は、真逆のストリーにのせられます。
記者もプロパガンダを担って広める一員です。
士気を鼓舞しなればならない戦争中は、致し方にない。
両方が正義であり、両方が悪です。

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<Vol.458:日曜増刊:
     ドル基軸体制の崩壊と基軸通貨の多極化(1)>
      2022年5月8日:有料版・無料版共通

【目次】
■1.物理的な戦争の裏の、経済と金融
■2.米国株の大きな下落→今回は、危機的な暴落です
■3.米ドル基軸通貨体制の歴史(1944年から2000年
■4.米ドル基軸通貨体制の歴史(2000年から2013年)
■5.米ドル基軸通貨体制の歴史(2013年から2022年)
■6.2022年の金融投資
【後記】

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■1.物理的な戦争の裏の、経済と金融

ウクライナ戦争では兵器戦争の裏に、見えない経済・金融戦争が絡ん
でいます。経済・金融戦争は、数字で事実を確認できます。数字は、
その整合性で真偽を判断できます。

通貨は、その国の経済の、総合的な指標です。実質GDPが上がり、貿
易黒字が増えて(赤字が減って)、実質金利(名目金利-期待物価上
昇率)が上がると、正常な市場なら上がります。逆なら、下がります。
(注)中央銀行による通貨相場への介入は、こうした動きを反転させ
ます。

通貨は、世界中の外為市場で、貿易での通貨実需の100倍以上の売買
があり、株式市場よりはるかに巨大に、売買されています。

金融商品の売買は利益を目的にします。一般に、通貨が上がる国の経
済は下がる国より近い将来、良くなると通貨投資家が見ていることを
示しています。国の経済の総合株価(成績表)が、通貨レートだと見
ていいでしょう。

懸案のロシアのルーブルを見ましょう。(1年の期間が適当でしょ
う)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/rub.html

(1)2022年3月には、1ルーブル1.5円から、0.65円まで67%も急落し
ています。原因は、
・国際送金網の。SWIFTからのルーブルの排除、
・6400億ドル(84兆円)の、ロシアの外貨準備の凍結です。

外貨準備は、ドルやドル国債なら米国FRBに、ユーロは欧州ECBに預金
されています。その外貨を、ウクライナ侵略の制裁のため、米欧が凍
結し使えないようにしたのです。(注)没収ではありません。

西側では使えなくなったルーブルは、欧米の通貨投資家から売り浴び
せにあって、ルーブルは、急落しました。これが、3月末までです。

西側では、ロシアのとの輸出入の禁止により「経済は苦境に陥った」
とメディアは、ここでもプロパガンダを流しました。

ところが、4月になるとルーブルは急騰し、ウクライナ戦争の前の1.
5円も突破して、現在、1.85円付近です。ボトムからは、2.8倍に上が
っています。今もなお、騰勢があります。

ウォール街金融のゴールドマンやJPモルガンなどの投機筋が、ルーブ
ルと、ロシア株を買っているからです。RTS(ロシア株指数)は、
1600から800ポイントへと、ルーブルと同じ時期に50%下げたあと
(22年3月)、1100にまで38%戻しています(22年5月初旬)。

一体、何が起こったのか。ロシアのSWIFTからの排除と貿易制裁が、
逆の効果を生んだのです。ロシアの対抗策は、果敢でした。

5項目は、プーチンによる事前の周到な準備がないと、実行できない
ものです。この戦争は、思いつきではない(注)それにしては、ロシ
ア軍は強くないように見えます。戦争は長期化するでしょう。

【一連の対抗策:5項目】
(1)西側に輸出ができなくなったスポット原油は、中国とインドに
輸出するように変えた。人民元建てで売る。

(2)パイプラインで、ドイツにもっとも多く輸出しているLNGガス
(天然ガス)は、輸出を続けている。価格は、ユーロ建てです。

(3)非友好国への原油・LNGのスポット輸出は、ルーブル建てでしか
売らないように決める。

(4)国際送金網では、中国が主宰しているCIPSを使い輸出入の決済
をする。

(5)ルーブルの、金価格リンクを発表し、資源(国際コモディテ
ィ)リンクを発表。金・コモディティ・リンクには、ルーブルだけで
なく、本音では反ドルだった中国の人民元も加担する模様である。

このため、ロシアからのエネルギーと資源の輸出は、SWITからの排除
と、西側からの経済制裁があっても、減らなかったのです。

西側の対ロシア輸出から消えた電子製品(携帯電話や半導体)は、軍
事用を除けば、ほぼ全部の商品において中国が世界1の基礎部品の生
産国です。中国から輸入すれば十分です。

中国の工場では分業が進んでいます。現在、米国や日の3倍の製造業
は、中国にあります。ロシア寄りになった東南アジアも含むと、世界
の製造拠点です。中国は、AIでも日本の3周先を行っているという
(東京大学AI松尾豊氏)

4月に、ルーブルのレートを急騰させた原因は、ルーブルの金価格リ
ンクと資源(国際コモディティ)リンクの発表です。

世界のGDPで2位(日本の約3倍)の中国と、インドも加担する予定な
ので、ドル基軸体制に1999年のユーロの成立以上の風穴を開けます。

ドイツがドル通貨圏から離れたあとの2000年代の、ドルを支えてきた
のは、中国と日本ドル買いでした。今度は中国が外れ、日本だけにな
ります。経常収支が1兆ドルの米国の通貨は、買いが減って弱体化し
ていくでしょう。金利を上げないとレートも上がらない普通の通貨に
なっていくでしょう。

ルーブルの急騰は、西側メディアの「ロシア経済は苦境」という3月
までの報道とは、反対のことです。その理由を含みメディアは報道し
ません。いい加減なものですが、いつもの習性か。

■2.米国株の大きな下落→今回は、危機的な暴落です

一方、米国株(S&P500)は、年初来の4か月で、15%下がっています。
米国株の時価総額は5000兆円(世界の50%)くらいですから、
「5000×15%=750兆円の時価総額」が、株主の資産から失われたの
です。

[原因]米国企業の増益が前年比2%に下がったことと、FRBの利上げが
重なった結果です。2021円に米国企業増益は前年比60%でした。ファ
ンダメンタルズで米国株が上がる要素はなくなったのです。

これは750兆円の、ドルの量的縮小に相当します。証拠金を失って、
追証のための売りを行っている投資家、ファンドは多いででしょう。

米国は金利が上がり、国債と社債も下がっているので、売り遅れて損
を抱えている投資家は、過半数でしょう(22年5月7日時点)。

youtubeでリスナーが多い元ヘッジファンドマネジャー高橋ダンも、
「もう・・・ダメだ」と言っていました。短期投資ポートフォリオの、
全面的な縮小を決定したようです。いくらレバレッジ投資しているか
はわかりませんが、個人の元本を15億円として、少なめに見ても、数
十億円は超えているでしょう。

損も利益も、早い。投資はやめない、IT株には、長期投資をすると言
っています(5月7日)。1年くらい見ていますが、短期売買のチャン
スでの信頼性は高い。
https://www.youtube.com/watch?v=mI9K9XfTE6M

ルーブルの急騰と好対照を成すのが、米国株、米国債、社債の全面的
な、下落です。上がっているのは海運株、資源株、軍需産業株です。

下落の原因は、企業利益の減速以外には、2つです。

要因が大きな順に示すと、
▼(1)賃金の上昇5%を伴った、米国の8.5%インフレからの、米
FRBの利上げ。FRBは2022年に7回、2023年に3回の予定という。2022年
12月の短期金利(FF金利)は、3.0%から3.5%に上がるでしょう。

低金利(短期0%~0.25)と2008年のリーマン危機以来の、8兆ドルの
量的緩和が、米国株上昇の原因でしたから、利上げと量的緩和の縮小
(QT:1年に1兆ドル:3年間を予定)で下がります。

インフレと金利上昇のファンダメンタルズから、たびたび、世界の株
価バブルを警告してきました。トレーダーとして優秀な高橋ダンは、
基本が順張りでした。罫線のテクニカル分析による、短期ポートフォ
リオが多かった。

方法は、シャドーバンク(総資金量3000兆円)の多くのトレーダーに
共通しています。証拠金や株担保の不足になると、持ち株や債券を、
強制的に売って現金を得て埋めなければならない。

世界のヘッジファンドの直近の運用成果は、年初来マイナス9%~マ
イナス14%と、分散投資(ポートフォリオ)にしては損が大きい。
(HFRの集計)

普通の時期は、+5%から10%です。損の運用成績が、あと1か月も続
くと、45日後の解約が増え、シャドーバンクの全体が売り一色に向か
います。1か月は続くでしょう。

この局面では、「売りが売りを呼ぶ」展開になって、バブル株価は、
最悪では、半値・八掛け・2割り引きまで下落します(頂点の価格の
32%)。

・1929年から33年の大恐慌、
・1990年からの日本の資産バブル崩壊、
・2000年の米国IT株の暴落、
・2008年のリーマン危機以来の下げになります。(最悪のケース)

ここまで行くかどうか、あるいは20%の下げで反発するか。分からな
い。ただし現在、反発の材料は、見当たらない・・・

FRBは、6月、7月、9月、10月、11月にも利上げをすると発表している
からです。

◎バブル株価が暴落に向かうなかで、FRBは利上げと量的縮小(1兆円
/年)を、実行できるのか。ここは不明です。FRBが利上げをやめると、
株価は回復するでしょう。その時が、売りのチャンスです。

▼(2)エネルギー・資源・穀物価格上昇による世界インフレ。日本
の場合は賃金が上がっていない。逆に下落気味です、

米国では、コロナによる職場復帰の遅れ、物流やサービス業のエッセ
ンシャル・ワークの忌避が重なって、現場労働に労働力の不足が起こ
り、賃金は5%上がっています。

物価上昇は8.5%(賃金5%+資源3.5%)と高くなっています。
米国は賃金上昇が物価に転嫁されやすい社会です。

[正解]約10年前から、株の代わりに、金とスイスフランの長期保有の
ポートフォリオを奨めてきましたが、今回、正解だったようです。
円安では、金の円価格は上がり、スイスフランも上がります。米ドル
は、今、株価の面から危険です。

ところが、TVに出るエコノミスト達は、ルーブルが上がった今でも、
ロシア経済は苦境、武器の生産もできないプーチンは、国内の不人気、
プーチンを政治資金で支えてきたオリガルヒの離反から、失脚すると、
今日も言っています。

事実とは逆の、プロバガンダです。通貨が世界から買われて上がる国
が、経済苦境であるはずもないでしょう。

▼日本は超円安

1ドルが130円台の円安になり、ドル価格の輸入物価が一層上がり、企
業と世帯が苦しくなっているのは、西側に属する日本です。

東日本大震災の復興費用(国債の増発)が必要になった2011年以降は
大きな円安になっても、日本の輸出額は増えない。

[貿易の赤字]逆に、穀物・商品・資源の輸入価格の、前年比で約40%
の上昇により、2021の日本の貿易は1.5兆円の赤字です。輸出には入
らない海外生産が増えたからです。

トヨタは、75%が海外生産です(海外生産は、生産国のGDPと現地人
の所得になります)。輸出生産業の国内空洞化が進み、2000年から世
帯の貯蓄率が下がっている日本には、今後も(ほぼ永久に)貿易の黒
字構造はない。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022012000314&g=eco
(長期の貿易)
https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp0100900011101zz999/1

(注)貿易収支に、海外工場の企業所得(約20兆円/年)を加えた経
常収支では、黒字を維持しています経常収支の黒字は、円高の要素に
なります。ただそその金額も、2011年を起点に減っています。
https://ecodb.net/country/JP/imf_bca.html

◎輸入物価を上げる日銀の円安策は、輸出額の黒字が増えない2011年
以降の日本にとっては、国民を貧困にする愚策です。貿易は黒字にな
らず、海外生産企業の現地通貨での、ドルでは同じ利益が、円換算で
膨らむだけのものだからです。

130円台のへの円安を招いた日銀は、2011年以降の、日本経済の構造
変化を見ているのでしょう。

2%のインフレに引っ張られて上がってきた長期国債の金利を、0.25
%を上限にする政府のための政策であり、国民のためではない。

[日銀の恐怖]日銀は、金利の上昇→株価・国債価格の下落→日銀と全
部の金融気機関とシャドーバンク(ファンド)の危機→政府財政の危
機をもっとも恐れています・・・これは、決して言いません。

世界インフレの中では、日銀、FRB、ECBは、「金融危機対策の利下げ
と量的緩和」は実行が難しい。インフレを亢進(こうしん)させるか
らです。

このため、マネーが増発されなかった1929年から33年の大恐慌の約1/
2のスケールを、約3年かけて追うと直感しています。

■3.米ドル基軸通貨体制の歴史(1944年から2000年

78年分を、16の項目に、短縮してまとめます。

(1)戦後のブレトンウッズ体制(ドル金準備制:1944年から1971
年)。金1オンスを35ドルに固定(現在の金価格は1800ドル付近=1ド
ルの価値は50年で、1/51(2%)に下落しました)。

ブレトンウッズ体制では世界の貿易通貨は、固定相場でした。
この時期、円は、1ドル=360円でした。その後1995年には、1ドル79
円と言う4.6倍の円高にまで行きます。これは円高というより、内容
ではドル安でした。1995年から27年後の現在は130円。
8年間の量的緩和530兆円の遺産としての円安です。

(2)1960年代後期のベトナム戦争の戦費としてのドルの増刷(900億
ドル相当)により、海外にいったドルの金への交換要求が増加し、2
万6000トンあったFRBの金は、8133トンに減っています。

米国議会(金委員会)は、「FRBの金が枯渇すれば、ドルの価値が暴
落する」と答申し、FRBが8133トンの金を、それ以上減らさないこと
を目的に、ニクソンが金・ドル交換制を突然、停止しました(1971年
:ニクソンショック)。このように通貨リセットは、突然、行わない
と、ドル売りが出て効果が減じます。***から通貨リセットをいう
利下げのような予告は、できないのです。

(3)10か国蔵相会議で金とドルの交換レートを38ドルに上げましし
たが、(スミソニアン対体制)、なおもFRBからの金流出が続き、
1973年にスミソニアン体制が、崩壊します。

世界の通貨は、一挙に変動相場制に移行したのです。金というアン
カー(錨:いかり)がなくなったドルがフロートした(ふわふわと浮
かんで沈んだ)からです。

(4)キッシンジャー国務長官は、貿易が赤字であっても、貿易黒字
で稼ぐ外貨準備が要らず、「ドルを増刷するだけで、海外の商品や株
を買うことができるドル基軸通貨体制」は、米国経済の国益にとって、
基幹的に重要と考えていました。

この目的のため、中東の産油国に呼びかけ、必需の原油を、ドルでし
か売らない体制(ペトロダラー制)を作ったのです。

アラブの産油国に対しては、この対価として、米軍を駐留させ、
・中東の王族がもっとも恐れている、民主革命から王制を守ること、
・1ドルから2ドルだった原油の価格を、5倍から10倍に上げることを
約束しています。
(これが、世界に狂乱物価を生んだ第一次石油危機です)

(5)金とのリンクから離れ、変動相場制になったドルが、原油の輸
入ために買われる体制、つまり、世界に「ドル外貨準備制」を作る。

貿易収支、経常収支が赤字の米国のドルでも、世界の外貨準備の需要
が増えれば、買いが増えて、レートは維持される。

金の代わりに、原油がドルを支えるようになったのが、キッシンジ
ャーが作ったペトロ・ダラー制です。

ペトロ・ダラーの体制は、7年後に、以下の展開を見せます。
・1980年の第二次石油危機(原油価格の30~40ドルへの高騰)
・高騰した原油輸入ための、世界のドル準備増加の必要が生じてドル
買いが増えドルは高騰(1ドル=250円)

・ドルの高騰に、品質がついて行かなかった米国製造業の空洞化
・1985年のG5の「プラザ合意」による、ドル切り下げ
 (1ドル=220円台→1ドル120円:55%へのドル切り下げ)
 ドルを下げるため、ドル外貨準備を売って損をしたのは、ドイツと
日本でした。

・55%の円高に対して、内需拡大を目的に、日銀は金融緩和を行い、
GDPの成長期を残していた日本では資産バブルが発生(5年で地価5倍
:日経平均3万9850円)。

[資産バブル発生と崩壊は、同じ原因]日本の、慣習的な土地担保金融
が貢献しました。金融緩和で、不動産の買いが増える→地価が上がる
→担保価値の上昇→借り入れの拡大→不動産の買い増加→地価の上昇
→担保価値の上昇→借り入れの増加→不動産の買いの増加・・・のス
パイラル。螺旋階段の先は転落しかない。この時期、不動産が5倍に
上がったのは、人口の年齢構成から、団塊の世代(1000万人)が住宅
を買う時期だったからです。

当時の住宅建設は200万戸/年でした。現在は、人口減のため88万戸
(44%)に減っています。しかも地方の空き家が800万戸。

・1990年からの、日銀の利上げにより、日本の資産バブル崩壊
(1990年~1998年)
・1988年は、日本の金融危機、山一証券、北海道拓殖銀行の倒産
 2000年代には都銀20銀行→3つのメガバンクに統合。

■4.米ドル基軸通貨体制の歴史(2000年から2013年)

(6)2000年米国IT株バル崩壊(ナスダック5000ポイント→2000ポイ
ント:2002年=2年間で-60%)
現在は、その6倍の1万2144ポイント→2022年は年初来20%下落。

(7)2001年9.11(同時多発テロ)→米国株下落→FRBの連続利下げ→
ローン証券のデリバティブ化(MBS)を新しい金融テクノロジーとし
て、米国住宅価格が、2倍に高騰(2000年から2006年)。

(8)2003年イラク戦争:原油売買をユーロ建てにと呼びかけていた
イラクフセイン大統領を殺害。イラクに大量破壊兵器があるという
CIAのでっち上げ情報。小泉内閣は、イラク戦争への協力を要請され、
3か月で15兆円のドル国債買い(=イラク戦費の提供)

(9)2008年リーマン危機。住宅ローンのデリバティブ証券(MBS)の
40%下落。デリバティブの債務保証保険のCDSが高騰→AIGとリーマン
ブラザースの破産

→米国株(S&P500)=50%下落→米政府・FRBのマネー増発(金利ゼ
ロ&4兆ドル)・・・リーマン危機からの株価回復には3年かかってい
ます。

■5.米ドル基軸通貨体制の歴史(2013年から2022年)

(10)2013年4月から2021年:
   日本は異次元緩和(500兆円)。
   米国に対しては、毎年平均20兆円のドル買い/円売りで、
   円安政策。

(11)2020年3月:コロナ危機の勃発
   →企業純益減少→世界の株価は、30%下落。
    対策として日米欧の、ゼロ金利+量的緩和(1200兆円)
   →世界の株価の高騰
   ・S&P500:2200→4800(2.2倍):2022年1月
   ・日経平均1万6000円→3万円(1.9倍):21年9月
    2年間の株価は、再びバブル化した。
    (250日移動平均線と日経平均)
https://www.nikkei.com/markets/worldidx/chart/nk225/?type=5year

(12)2021年;コロナ危機下で米国賃金5%上昇→8.5%のインフレ
   エネルギー価格・資源価格・穀物価格高騰

(13)2022年2月24日:ウクライナ戦争=ロシアの侵攻
   エネルギー価格・資源価格・穀物価格の40%上昇
   ロシアの原油・天然ガス依存の欧州も7%台のインフレ。
   日本は、賃金の上昇がなく、
   資源の国際価格が40%上がっても物価は2%台の上昇と低い。

(14)FRBの利上げ決定(2022年3月から7回:2023年3回)
   米国長期金利3%台(=10年国債の金利)
   2022年5月=FRB短期金利0.5%上げ。6月も0.5%を予定。
   1年に1兆ドルの、マネー縮小予定(国債とMBSの売り)
   米国住宅金利は5.1%に上昇→高額物件のバブル価格崩壊へ

(15)日銀は、長期金利0.25%で、国債指し値買い(毎日、無限に)
   黒田総裁は、金融緩和の、限界のない持続を表明。
   ・金利差からドル/円は、130円台の円安(円に対してドル高)
   ・ドルの実効レートの低下を懸念し、
    金価格が1オンス1976ドル(円小売価格は8154円)
   https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php
   ・スイスフラン21年9月119円→22年5月132円台

(16)ロシアは中国・インドと協調し、「ルーブルの金コモディテ
ィ・リンク制」を発表。国際送信回線は、中国主宰のCIPSを使う。

原油・天然ガスが上がると潤う中東の産油国も、ロシア側についた。
産油国は、もともと、ドルの原油支配を心よく思っていなかった。
 →ユーラシア+南米+アフリカの、新興経済圏の誕生に向かう。
 →世界GDPの50%の国(人口は80%)が、SWIFTからCIPS圏に向かっ
ている。

【3つの基軸通貨】
中東の産油国がロシア側につき、1973年から49年間のペトロ・ダラー
制は終焉。
2023年、24年からは、複数の基軸追加体制へ向かう。

・ドル基軸通貨圏=米国、英国、日本、韓国、カナダ、豪州
・ユーロ圏=欧州19カ国(ドル圏とユーロ圏の人口は世界の20%)
・金コモディティ・リンク通貨圏=ユーラシア+中南米+アフリカ
 (金コモディティ・リンク通貨圏は、世界人口の80%)

米国は、金コモディティ・リンク制を潰すため、ウクライナに、200
億ドル(2.6兆円)の軍事支援→目的は、ロシアの体制転換とプーチ
ンの失脚。

2020年代以降のGDPの増加率では、現在は世界のGDPの50%の、金コモ
ディティ・リンク通貨圏が高い(年4%~5%程度)。

ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の成長は2%台。世界経済の帰趨は、
ウクライナ戦争を契機に、決したように見えます(気配)。

(1)貿易黒字国が多い、金コモディティ・リンク通貨は上昇し、
(2)赤字国が多い、ドル基軸通貨圏、ユーロ通貨圏の通貨は下がり、
(3)株価と国債価格はともに、2022年バブル崩壊→金融危機から財
政危機に向かっていくでしょう。

・上がる通貨は、金コモディティ・リンク通貨(人民元、ロシアルー
ブル、インド、産油国通貨、スイスフラン、金)

・金コモディティ・リンク通貨に対して、下がる通貨はドル、ユーロ、
円、韓国ウォン、シンガポール・ドル。

ただし、相場は、一直線の変化(上昇、下落)ではない。
・短期では、ボラティリティ(VI)20%/年の、騰落を繰り返し、
・250日の移動平均線が、トレンドを作って行くでしょう。

■6.2022年の金融投資

2022年は、短期売買にチャンスが少ない。
下げのトレンド線の変更には3か月以上かかるからです。

ドル平均法のような、長期ホールディングが、金融資産を作るチャン
スになるでしょう。

ドル平均法は、1か月に、家計で可能な金額を買い続け、保有する金
融資産の原価を、250日の移動平均線に一致させていくものです。コ
ツは下がっても、慌てず売らないことです。

対象資産は、金とスイスフランの50:50のポートフォリオが確実でし
ょう。
・金価格は。短期で動きます。
・スイスフランは、長期で動きます。
・円の預金は、順次、必要額に向かって減らしていくほうがいいでし
ょう。預金が足りなくなれば、金またはスイスフランを売って、円を
補充すればいいからです。

現在、日銀が、逆の利上げ調整に転換する気配はない。一方で、
2022年、23年のドル金利は上がっていくからです。

金利と、実質GDPの増加(=企業純益の増加)という、ファンダメン
タルズによる長期投資の出番が来ました。

テクニカル派の短期売買は、250日移動平均で上昇トレンドが出るま
で店仕舞いして、現金への換金が無難と思っています。

下げトレンドの相場の中での、空売り、先物売り、プットオプション
での、3か月の期間利益の確保は、高橋ダンのようなプロにも難しい。
順張り
ロング)の利益が、より確実です。
(250日移動平均線と日経平均)
https://www.nikkei.com/markets/worldidx/chart/nk225/?type=5year

【後記】
長期するウクライナ戦争は。世界経済を転換させるでしょう。
大きくいえば、アングロサクソンの、200年の世界支配の終焉です。

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