ビジネス知識源:米ドルの価値とゴールドの将来(1)
This is my site Written by admin on 2010年11月15日 – 11:25

こんにちは、吉田繁治です。秋は短く、早くも初冬の兆しです。

先日、くまもとテクノ財団主催の『リーダシップとマネジメント』
をテーマにした、夕刻の講演の後、南阿蘇にある『夢しずく』とい
う名の、古民家風な意匠の、離れ(『蘇庵』)に泊まりました。

▼風景と生命の時間

温泉のあるその旅館まで、空港に近い講演会場から、車で30分でし
た。阿蘇の裾野の、畑の道を走った。木々の葉色は晩秋に色づき、
収穫後の畑は、低く広がっていました。傍らには、レストランやカ
フェがところどころに、ひっそりと佇む。

悠久の30万年、数回の大噴火があり、飛んだ溶岩と岩で阿蘇の山々
ができたと言う。地球は、コアの主成分である真っ赤に溶解した鉄
に、岩と土が張り付いた薄皮饅頭のようです。阿蘇の町は巨大な火
口の中にある。

数百メートルの高さの外輪山を登るとき、西方の山の稜線は、陽が
沈む時刻でした。沈まんとする緋色の、膨らんだ太陽の下には、影
になって黒く低い山が横たわり、橙色(だいだいいろ)に焼けた空
に、灰色の雲が、大きな刷毛でかすったように異形に浮かぶ。

この希有な夕焼けも、数分と短い。華麗にひらく花火のような、瞬
間の風景。続けて観光道を登った後でした。太陽は沈み、惜しむ残
り香のように橙の西空があった。

その直後、風力発電の、3本の、西洋の刀剣のように羽を伸ばした
風車が2基あるあたりの、鰯の群れのようなちぎれ雲が、一瞬で、
濃い桃色に染まりました。地平に沈んだ太陽が、ありったけの光色
を放ち、東雲の地上側を、桜色に照らし、ばらまいていました。天
上の景色のようでした。

大気は乾き、空気は澄んでいました。時刻、大気、湿度、秋、見渡
す限り高原という幸運な諸条件が重ならないと、こうした空景は見
ることができない。僥倖でした。自然においても、事実は、常に一
度限りのものです。

運転手さんは、阿蘇に生まれ住む人でした。「秋にぃは、時々、こ
んなぁ景色になりますよ。今日はとくに、綺麗ですがぁ。」とのん
びりと言う。

これを見たら死んでもいいと思える景色があるとするなら、多分こ
れもそのひとつになるだろうと、当方には、仮想の感想までが浮か
んでいたのです。

数分後には、薄い闇に転じて、鮮烈に感情を喚起する空の色は消え
ました。自然の風景は、夏目漱石の小説での執拗な描写のように、
人の気分を、意外に、大きく動かすものかも知れません。雲を見る
とき、遠くに消えた時間や、過ごした季節を思うのはなぜ。

生命の時間は、妙なものです。一刻、一刻が、音もなく過ぎ去り、
人それぞれの記憶に固定した過去になる。そして、意識(コンシア
ス)にとっては、死が遮断する、久遠の現在がある。

『夢しずく』は雑木林の中にあった。そして翌日に泊まった人吉市
の『たから湯』は、高度な洗練が、気品の文化に至る統一美でした。

人は、来れば過去になる未来に向かって、なにものかを狙い、投企
(プロジェ)する。判断による行動は、投企です。モノ自体には、
時間の感覚はない。生命がもつ意識が、モノに時間を吐く。古来、
哲学は、時間と意識の不思議さを追求してきたと言えます。

             *
▼ゴールドの現在

本稿のテーマは、2000年代に高騰しているゴールド価格の将来です。
(注)有料版として、11月初旬に送ったものです。

2010年11月2日現在の金価格は、伝統的な単位である1トロイオンス
で、$1354です。以下の理解のため、$1350付近という現在価格を
記憶してください。1トロイオンスは、31.1グラムです。1グラムで
は、3710円付近です。(5%の消費税込み:小売価格)

▼00年代の10年で、ドルで5倍、円で3.5倍

2001年の価格から($271:当時の$1=122円で3万3060円:1グラ
ムでは1060円付近を波動)、ドルでは約5倍、円では3.5倍になって
います。かつての1060万円分が、11月は3710万円です。

2001~2010年の10年、ゴールド投機が、もっとも安定的且つパフ
ォーマンスがよかった。

【金融危機以降の2年では】
08年9.15(金融危機)以降は、$700付近(31.1グラム)が$1354
まで、1.9倍に上がっています。金融危機から2年、年率で38%の価
格上昇です。(注)リーマンショック後2年、世界の経済・金融は
様変わりしています。

市場の多くで、「2011年、2012年と、米ドルの一層の価値下落を原
因に、まだ、ドルベースの金価格は上がる」と囃されています。

果たしてそうか? これを、予測的に検討するのが本稿です。
(注)通貨の価値下落は、物価との関係(インフレ率)で計ります。

2008年8月の、金価格の高騰を予想した<謎めいたゴールドを解け
ば、通貨のカラクリが見える(389号~392号)>のあと、2年余、
経ちました。今回の<250号:ゴールドの将来>は、その第2弾です。

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    <250号:米ドルの価値とゴールドの将来(1)>
         2010年11月15日(無料版)

【目次】

1.長期のゴールド価格:1900年から2001年までの1世紀
2.金の供給、需要、保有は?
3.2001年から2010年の金価格
4.金ETF(Exchange Trade Fund)という発明
5.今後の金価格上昇を決めるのは、中国の金購買
【後記:今再びの、金融危機と量的緩和】

・・・次の251号に続く

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■1.長期のゴールド価格:1900年から2001年までの1世紀

金価格は、長期で見る必要がありますので、100年間を見ます。

▼1世紀の金価格

【$での名目価格と実質価格】
最初に、110年前の1900年から、2001年に至る「金の名目価格」を
示します。1900年は明治33年で、エッフェル塔ができたパリ万博の
時期でした。

名目価格と、米国の消費者物価のインフレ調整後(CPI調整後)、
つまり米ドル購買力が減価した後の「実質価格」を対照します。

各年の平均価格です。解釈は当方です。
http://www.gold.org/

(注)ゴールドの価格は、通貨制度と物価に関係して変化するので、
長期で見ないと分からない。それに、円で見ると分からなくなる。

ドルで見ないといけません。米ドルで取引され、その後、ドル価格
が変動相場の円に換算されるからです。(単位:1トロイオンス=
31.1グラム) 

主な統計は、世界の、公的な金統計の元になっているWGC(World
Gold Council:世界金委員会)のものです。小数点以下は、四捨五
入しています。  http://www.gold.org/

以下のように、
(1)1900年から71年までの、価格の安定期、
(2)1972年から80年までの、高騰と動乱期、
(3)1980年から2000年までの、下落期に分けることができます。
  このそれぞれに、理由があります。

【1900年から1世紀の金価格(金額データはWGC:解釈は当方)】

実質価格は、$のインフレ調整後の価格です。現在のドル価値でみた
とき、いくらに相当するかとい価格です。1990年は、名目価格は$
21でしたが、これは、現在のドルでみると$545に相当します。

(注)インフレのため、100年でドルの価値は、26分の1(3.8%)に低下
しています。

$インフレ調整後の
     名目価格   実質価格
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)名目価格の安定期・・・ほぼ、金本位制の時代

1900年   $21        $545
  ・名目価格$20を29年から大恐慌期明けの33年まで維持
  ・1913年に、米国中央銀行のFRBを、民間資本で設立

1934年  $35        $564
  ・名目価格$35を、1967年まで33年間維持
  ・戦後の1944年ブレトン・ウッズで1オンス=$35を決定:
   米ドル基軸通貨体制がこれだった。

1968年  $38        $237
  ・71年にニクソンが、金の流出を怖れ、金・ドル交換を停止
  ・世界は、金本位の固定相場制から、変動相場制に向かった
  ・通貨のペーパー・マネー化は、この後、物価インフレを生ん
   だ。インフレは、通貨価値の下落である。

(2)金価格高騰の動乱期・・・2度のオイルショックで金価格高騰

1972年  $59        $299
  ・73年は第一次オイルショック:コモディティと物価の高騰

1980年  $615         $1537
  ・80年は第二次オイルショック:コモディティと物価の高騰
  ・80年代は、米政府・FRBが、金価格を抑える策をとった。

(3)価格下落期・・・米国と中央銀行による市場への金放出

1990年  $381        $618
  ・米欧の中央銀行は、金価格を抑えるため、金リースを開始
  ・金リースが、市場への供給量を増やし、金価格は低迷

2001年  $272        $333
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2001年までの1世紀では、
・名目価格では、$21から$272まで13倍になっています。
・しかし、米ドルの、インフレ調整後の実質価格では、上記のよう
に1900年の$545が2001年は$333に40%下がっています。(理由は、
後述)

◎1900年から2001年の100年間も、ゴールド価格は、米国の物価上
昇率に負けていました。相場の主役は、株と社債(債券)でした。
(注)金では、インフレ調整後の実質価格が重要です。

▼(1)1900年:名目価格$21:実質価格$545

1900年の金の名目価格は、$21(31.1グラム)でした。これを米国
のCPI(消費者物価指数)の上昇率を使い、現在価格に換算すると、
上の表のように、1900年当時の実質価格は$545と、26倍になりま
す。

◎これは、1900年から、2010現在までの米国のインフレが、545÷
21=26倍であったことを示します。$1の購買価値は、1/26=3.8%
に減価しています。

◎米国の、110年間の長期のインフレ率は、年率で3%です。
1年に3%物価が上がると、110年では26倍です。

これは、$1の価値(=購買力)が、100年間で26分の1に下落した
という意味です。

言い換えれば、FRBの通貨増発(ペーパーマネー)と銀行の信用創
造で、米ドルの流通量が、GDPに対し26倍の量に増えたということ
です。

▼(2)1980年:金価格の暴騰(瞬間名目価格で$850)

1トロイオンスのゴールドが、名目価格で$850付近に暴騰したのは、
イラン革命(1979年)の直後の、第二次石油危機の時です。

金価格が、資源価格(特に原油)の高騰と、大きく関係しているこ
とが分かります。(注)資源価格の高騰は、ドルの実効価値の下落
を意味します。

◎1980年の金価格高騰は、イラン(親米のパーレビ国王)が原油輸
出代金で買って保有し、米国(米軍が核兵器で厳重に守るフォート
ノックス)に預託されていたゴールドバーを、イラン革命のあと、
米国FRBが、「渡さない」と凍結したことが原因です。米国は、自
分がもっていないもの(預かったもの)でも凍結します。

【1980年、高騰の原因】
「いざとなれば、米国の銀行は預けたゴールドを凍結し、現物は渡
さない。」という恐怖に駆られた湾岸諸国が、ゴールドの現物買い
走ったため、市場の金が枯渇しても買いが入り、そのため、価格が
高騰しました。

瞬間の最高価格は、$850でした。
(注)1980年の平均価格は、上表のように、$615です。

インフレ調整後の実質価格で$2127(1980年の瞬間価格:31.1グラ
ム)と、歴史上最高値をつけたのが1980年でした。2010年11月現在
の31.1グラムの価格である$1354より、57%も高い。

(注)ここから、2011年、21012年に向かって、金価格は$2000
(今の1.5倍)を超え、$3000(今の2.2倍)にもなる主張する論が
多く出ています。このように実に、単純な話を作る識者が多い。金
価格の高騰で利益を得るポジションに賭けている人やグループは、
いつもこうした言説を流します。

【1980年~1999年までの20年間】
◎1980年から1999年までの20年間、ゴールド価格は、米欧の中央銀
行の「価格抑制策」と、「市場の金選好」の間の、戦いの中にあっ
たと言っていい。

市場は金を欲したので、価格が上がる傾向になる。それを抑え価格
を下落させるため、米国と中央銀行が、金を放出していました。
(注)この時期は、まだ、個人の金購入は少なかった。売買は、金
鉱山やファンド、銀行でした。

◎米欧の中央銀行が、金の放出を行っていた理由は、「中央銀行が
発行する紙幣こそが、マネーとして価値がある。ゴールドは価値が
ない」という情報を、金を買った湾岸諸国に与えるためです。これ
は、「アラブに金は渡さない」ということです。

米英の政府・中央銀行による「反ゴールド・キャンペーン」が露骨
だったのが、1999年までです。

1980年の高騰は、産油国である湾岸諸国が、2度の石油ショック
(1973年:1980年)によるインフレで、大きく下落した基軸通貨米
ドルで、価値が不変に見えるゴールドの現物を買い求めたたからで
す。

ペーパー・マネーは、人為で発行できます。他方、金の産出量(リ
サイクルを含み年間3600トン付近:生産は2500トン付近)は、増産
しても、急には増えません。

高騰する価格を冷ますために金を売ったのは、紙幣の価値を守ると
する、米欧の中央銀行でした。(注)「紙幣の価値を守る(姿勢を
示す)中央銀行」と記憶しておいてください。

▼重要:1999年9.26が分岐点

◎しかし欧州系の中央銀行は、1999年9月26日には、「第一次ワシ
ントン協定(2004年までの5年間有効)」を結びます。

ワシントン協定の、公的な発表(WGC情報が根拠)では、「各国中
央銀行の金売却と金リース量を、1年400トン以内に制限する」とい
うものでした。

最大のゴールド現物の所有者とされる米欧(特に米英とスイス)の
中央銀行が、売却量の制限をすれば、金価格は上がる。誰が考えて
も分かることです。

【方針の転換】
ところが・・・1999.9.26に中央銀行は、それまでの「市場の価格
を冷ますためには売る」方針を転換しています。

この後の10年、市場のゴールドはじりじりと価格を上げ、08年9月
の金融危機以降は約2倍に急騰しています。

「1999年に、なぜ、主に欧州系の中央銀行の主導で、それまでの約
20年の放出方針を一転し、金の放出に抑制をかけたのか?」、この
理由は、不明です。公式には、目的が言われたことがない。

【理由の推測】
従って、推測しかないのですが、
(1)1990年代の安値の時代に、密かに実質所有を増やして、買い
占めたグループの強い意向に、
(2)欧州での、ユーロという統一通貨制度(2000年~)の準備が
絡んだものと見ています。

◎1971年の金・ドル交換停止以降、ゴールドは、米ドルの反通貨と
いう性格をもっっています。

(1)米ドルの、世界の通貨に対する実効レートが上がると、金が
売られて価格が下がり、
(2)ドルの実効レートが下げると、ゴールドが買われて、価格が
上がるという関係が見えるからです。

現在の金価格の高騰も、08年9.15以降の金融危機による米ドルの実
効レートの低下に対する反作用でしょう。

【金融危機は続いている。そのため中央銀行がマネーを供給】
なお、米国と欧州の金融機関の危機は、その損失が、簿外と子会社
に飛ばされているだけです。米欧の、住宅と商業用不動産価格の回
復と上昇がない限り、金融機関の危機は解消しません。

米国FRB(米国の中央銀行)と、欧州ECB(ユーロの中央銀行)が、
資金供出を続けているのは、金融機関の危機が、実質的に続いてい
るからです。

巨額不良債権の発生(住宅・不動産証券の下落)による、金融機関
のバランスシートの破壊の回復には、長期がかかります。日本では
13年も続いたのです。米欧の金融機能(融資機能)の回復には、
13年の半分、6年はかかるでしょう。そうすると2014年です。

政府・中央銀行による金融機関の支援は、要は貸し付けと、不良債
券の一時買い取りの緊急対策です。金融機関の融資機能の回復には、
金融機関が上げる利益が、自己資本にならねばならないからです。

■2.基礎データ:金の供給、需要、保有は?

▼供給は3672トン

ゴールドの1年間の供給量は、2004年~2008年の5年平均で、以下で
す。(WGC)

【供給】

(1)金鉱山の生産       2209トン(60%)
(2)中央銀行の純売却で    447トン(12%)
(3)リサイクル       1016トン(28%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  合計          3672トン(時価で14兆円)

▼需要は3599トン

【需要】

他方、世界の需要額は、同じく2004年~2008年の5年平均で、以下
とされています。

(1)宝飾用        2436トン(68%)
(2)産業用       493トン(14%)
(3)投資用      670トン(19%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
   合計        3599トン(時価で13兆円)

▼データには闇がある

上記供給量の統計(年3600トン付近)は、確実なデータですが、需
要の内訳は、実際のところは不明です。

世界の金(及び証券である金ETF)の売買額は、上記の需給量であ
る3600トンが、1年に数百倍も回転していて、$20兆(1600兆円)
とされます。

◎金は、現物の流通量は、上記のように少ないのですが、実に多く
の『回転売買(年間$20兆)』がある。

比較の参考に言えば、世界の貿易金額は$19兆(1520兆円:世界
GDPの約25%)です。世界の1年の貿易より多い額が、金の総売買額
と言えば、その巨大さがわかるでしょう。保有と、売り買いの時間
が短いためです。

【地上の金の総量の通説も嘘】
なお、地上の金の総量は16万トン(時価590兆円)で、50メートル
プール3杯分というのが通説(WGC)です。しかし、金は盗難・略奪
はあっても、捨てる人はいない。火災でも消失はしません。

1年に2000~2500トンの生産があれば、わずか100年でも、20~25万
トンです。金は、古代から掘られています。実際は、16万トンとい
う公的統計の3倍以上が、地上のどこかに、どこかのグループによ
って退蔵されていると推計します。

多分、これらの現物は、どこかの銀行と国際金融マフィアがもつス
イスや、国際決済銀行(BIS)でしょう。スイス政府の所有ではな
い。預金を預からない金融機関です。金融の歴史では、金を預かっ
て預かり証(マネーとして通用した)を発行するのを銀行と言って
きました。

(注)金とはリンクしないパーパー・マネーを発行する中央銀行は、
1971年以降の米ドルからです。

このペーパー・マネー化の後、大きなインフレが始まっています。
ドル・金本位制の1960年代までの、世界のインフレは小さかったの
です。パーパーマネー増発が、(長期では)大きなインフレを生ん
でいることがわかるでしょう。なおインフレは物価の上昇ですが、
その本質は、増発された通貨の価値下落です。

▼保有

公的統計での保有は、以下です。(WGC)

なお、金の売買は、投資用は、国際的に申告されますが、産業用と
宝飾用は申告する必要がない。このため、投資用のゴールバーも、
産業用とする偽装が行われることが多い。

【保有】

(1)産業用  1万9700トン(12%):工業
(2)投資用  2万7300トン(17%):金融機関・ファンド・個人
(3)公的保有 2万9700トン(18%):各国政府&中央銀行
(4)宝飾用  8万3600トン(51%):個人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  合計    16万300トン(時価590兆円)

世界で発掘可能な埋蔵量は、約8万トン(1年2500トンの発掘で32年
分:時価で300兆円)とされます。

しかし実際のところは、この推計埋蔵量にも大きな誤差があるでし
ょう。

(注)採掘可能な埋蔵量は、8万トンより少ないと見ています。
年々、採掘が不可能なものが多くなっているからです。なお、原油
は、エネルギー価格高騰で、代替エネルギーに変わることができま
す。しかし、ゴールドには、代替物はありません。

主要国の公的保有(中央銀行)は、以下とされています(IMF統
計)。通貨発行額に対する準備率は正確ではありませんが、載せて
おきます。

これらの保有高には、いつも、大きな変動がないのが不思議です。
実際は、1980年~1999年までの20年間の、市場への放出で減ってい
ると見ています。当方、以下の公的保有の統計に表れない金融主体
が、1990年代に多くを買って、占有的に保有していると見ています。

公的保有      2010年の      通貨発行額に対する
各国中央銀行   保有量(時価)       準備率
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.米国      8132トン(30兆円)    73%
2.ドイツ     3407トン(13兆円)    68%
3.IMF       2967トン(10兆円)   
4.イタリア    2452トン(9.1兆円)    67%
5.フランス    2435トン(9.0兆円)    66%
6.中国      1054トン(3.9兆円)    1.6%
7.スイス     1040トン(3.8兆円)    24%
8.日本       765トン(2.8兆円)    2.8%
9.ロシア      669トン(2.5兆円)   5.5%
10.オランダ    613トン(2.3兆円)   55%
11.インド     558トン(2.1兆円)    7.5%
12.ECB       501トン(1.9兆円)    27%
13.台湾     424トン(1.6兆円)    4.3% 
・・・
16.英国      310トン(1.1兆円)    16%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計     2万9700トン(110兆円)

中央銀行の保有高は、議会や政府で確認されているわけではなく、
任意の発表です。実際の所有量には、多くも少なくも相当な(数倍
の)差があると思われます。

例えば1980~90年代に、ドル価値の防衛のため、大きく(いくらか
は不明)、金を売ってきたとされる米国FRBの保有は、8132トンで
変わっていません。

金庫を写した写真は、比重が同じタングステンに金メッキした、
『保有を見せびらかすための金』が混じっていることが多い。これ
は、米国に対し、中国政府が文句を言ったことでもある。外見では
不明でも、鑑定すれば分かります。

▼戦後のブレトン・ウッズ体制(金・ドル交換制)の元になったの
は、米国が略奪した金だった。

第二次世界大戦後に、戦勝国の米国は、世界の全ゴールドの70%
(11万トン)を集めていたと言われます。米国FRBの最高量の持ち
高は2万トン(1950年代)でした。

この膨大な米国の金が、1971年までのドル・金本位制を支えていま
した。当方、その後一貫して、経常収支赤字国である米国から、
ゴールドが流出したと見ています。

IMFを含む中央銀行は、ゴールドバーの、まとまった最大の持ち手
(合計2.97万トン)ですから、この中銀が売るか買うかで、金相場
は大きく動きます。多く売れば下がり、少なく売れば上がり、買え
ば高騰します。

■3.2001年から2010年の金価格

2001年から2010年の、金価格の高騰は以下です。

 $インフレ調整後
      名目価格  実質価格
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2001年    $272   $333
  ・2000年に、日米欧のITバブル崩壊
 ・2001年の9.11で、以降10年間、低金利と量的緩和を図る
2002年    $310   $369
2003年    $309   $425
2004年    $409   $464
・中銀の金売却を500トンに制限する第二次ワシントン協定
2005年    $444   $487
2006年    $603   $646
  ・06年、米国と欧州の不動産価格がピークをつけ、株も高騰
2007年    $695   $714
2008年    $871   $895
2009年    $972   $972
  ・第三次ワシントン協定で、金売却を1年400トンに制限
 ・IMFが価格高騰を醒ますため400トンを売る
2010年11月  $1354   $1333
 ・ゴールドは、08.9.15の金融危機後の約2年間で2倍に高騰
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(参考)
1980年ピーク名目価格$850:実質価格は$2127でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2010年11月は、2001年($272)に対し、
・名目価格で5倍(年率38%上昇)、
・インフレ調整後の実質価格で4倍になっています。

2000年代の10年の、価格高騰の原因は以下の3つです。

(1)IMFを含む中央銀行(ワシントン協定15ヵ国)が、市場への売
却とリースを、2004年からは1年に500トンに制限し、2009年からは
400トンに減らしたこと。

(2)01.9.11後の、各国中央銀行による低金利とマネーの量的緩和
で、過剰流動性が生じ、コモディティとゴールドに向かった。

過剰流動性を使うヘッジ・ファンドや個人の、レバレッジをかけた
短期の利益を狙う投機的な売買が金先物で増えた。

金の先物市場は、他の先物と同じように、売りと買いの差額決済で
すから、約30倍のレバレッジをかけることができます。当然に「空
売り」もできます。

(3)08.9.15の金融危機で、ドルの実効レートが減価し、00年5月
のユーロ危機以降ユーロの実行レートも減価した。

通貨下落の損を回避するヘッジ買いで、金投機が増えている。これ
が2008年の底値$700付近が、2010年11月の$1354まで、約2倍に上
がった理由でしょう。

ゴールドの現物は、供給に制限があるので、ヘッジ・ファンドから
数千億の投機マネーが、ゴールド市場(現物、先物、ETF)にはい
ると、金価格はすぐ上げます。

【米FRBの主導】
1990年代までは、欧州の中央銀行は、米国FRBの主導で、「金は価
値がない。政府信用が背景になっているペーパー・マネーと民間信
用の株が、価値がある」として金価格を抑える姿勢でした。

そのため、2~3%の金利をとる金リース、そして金先物取引、及び
オプション取引で、市場に金を供給していました。これは、価格高
騰の後の、金の増産と重なって、市場の金を下げる効果を生んでい
たのです。このため1990年代には、前掲表のように、金価格は下落
して低迷し、「金は死んだ」とまで言われたのです。

◎ペーパー・マネーを発行する中央銀行は、どこも、「マネーの信
用の根源は政府信用と国民経済である。つまり国債への信用である。
ゴールドではない。」としています。これが、1990年代に金を放出
した理由だったのです。

【転換】
◎ところが、前述のように、1999年のワシントン協定以降は、3度
に渡ってゴールドの供給制限がされます。

欧州系の(スイス、英国、スウェーデンなど14ヵ国)の中央銀行の
金政策は、市場への供給制限という1990年代とは、まるで逆方向に
転換したのです。

まとまった最大量のゴールドバー(約3万トン)を持っているはず
の中央銀行が、1999年以降、3度のワシントン協定で15年間、高騰
した価格を冷ます金の売却を、表向きでは制限している理由は何
か? 

その理由を、フェルナンド・リップスは『いまなぜ金復活なのか』
では「謎だ」と韜晦(とうかい)していますが、恐らく2000年から
の、米ドルに対抗したユーロの成立が視野にはいっていたように思
えます。

◎2000年代では、金政策が明らかに変わったのです。この中央銀行
の方針転換が、2000年代の、ゴールド市場への金供給を減らし、レ
バレッジをかけたヘッジ・ファンドの買いによって、価格を高騰さ
せます。

■4.金ETF(Exchange Trade Fund)という発明(2005年以降)

2005年からは、金の流通量を増やす目的で、金証券(金ETF)が作
られ、売られています。上記のように、現物の供給が制限された理
由は、金保有余力が、各国中央銀行になくなったためでしょう。こ
のため、現物を担保するというETFが発行されたと見ます。

金証券を発行する理由は、金に向かうマネーの受け皿をつくって、
1980年のような、乱高下(特に高騰)を抑えることでしかない。

【2005年】
ETF(Exchange Trade Fund:投信信託証券)は、現物から派生し、
現物を担保にした証券です。2005年に開発され、上場されています。

資源・エネルギー・穀物の国際コモディティ全般、金、株を現物資
産に分散投資するETFも、信託会社によって作られています。株と
同じように、市場に上場されています。

金ETFを発行する信託会社が、現物の価格とETFの価格の同一を保証
しています。金ETFは、金の現物の請求権を示す証券です。

原則的には、金ETFの発行金額に相当するゴールドバーを、信託会
社は買い、交換に備えて保管せねばならない。

◎しかし実際には金ETFと現物との交換を要求する人は少ない(ほ
ぼゼロな)ので、信託会社にゴールドの現物があるかどうかは、分
からない。信託の手数料は0.4~0.5%です。

金ETFは、WGC(World Gold Council)が発案しています。

金ETFの発行高は2010年10月には、2000トン分(時価で7.4兆円)に
増えています。5年で2000トン分ですから、1年に400トン分増えた
ことになります。

信託会社の最大は、WGC系のSPDRゴールド・シェア社(スパー
ダー・ゴールド・シェア社)です。1000トン分の金ETF(3.7兆円:
09年4月)を発行しています。これは、市場では、金ETF(金証券)
という形での1000トンの金の増加供給と同じです。

同社は1年に100トンの現物金を買っているとは言う。しかし、ETF
発行額の1000トンの現物担保はないはずです。こうした構造をもつ
のが証券です。

SPDRゴールドシェアは、証券番号1326で上場されています。誰でも、
株のように1単位から買うことができます。
http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=1326.T

国産の三菱UFJ信託銀行、野村アセットマネジメント、みずほ投信
投資顧問が発行する金ETFもあります。(注)証券番号と現物の保
有番号を対照させ、現物保管を保証するとは言っています。

▼金ETFの目的

金ETFの表向きの目的は、保管を容易にすること、売買を容易にす
ること、企業の株のように、個人の小口の積み立てができるように
することです。

証券の市場価格は、金の相場に連動することを、ETFを発行する信
託会社が保証しています。金ETFとともに、ヘッジ・ファンドが、
金の購入に参入しています。

◎有名なのが、ゴールドマン・サックスと同一歩調をとることが多
いジョン・ポールソンの、ポールソン&カンパニーです。$120億
(09年:約1兆円)の預かり資産を、30倍等のレバレッジをかけて
投機します。なお、ジョージ・ソロスのファンド(ソロスファン
ド・マネジメント)は$140億(1.1兆円)の元資産です。

(注)ポールソン&カンパニーは、サブプライム・ローンの証券を
売って、その証券を、裏では売って逆張りし偽装したことでSECか
ら摘発され、利益相反の刑で巨額の罰金を受けています。

ポールソン&カンパニーの顧問を務めるのが、前FRB議長のグリー
スパン(金本位論者)です。

◎ポールソンとソロスは、金ETFへの投機で著名な2人です。仮に$
100億(8000億円)の資産と言っても、先物取引での資金量は、ほ
ぼ30倍(24兆円)に膨らませることができます。

このレバレッジのため、今も規制と財務内容の公開がないヘッジ・
ファンドの投資資金量は、巨大になります。

▼金ETFは、ペーパー・ゴールドの発明

金ETFは、いわば「ペーパー・ゴールド」の発明です。
現物を示さずとも、保管があると言って、売買できる証券です。

◎金ETFで、見かけ上、取引が可能な金の現物が増えたような効果
を生みます。

金ETFの発行は、市場で売る金の増量と同じ効果を、持ちます。従
って一見では、金価格を下げるように思えます。

しかしその結果は、金の高騰に拍車をかけたことでした。
その原因は、ヘッジファンドの、大規模な金投機への参入です。
仮に金ETFがなく、現物売買のみなら、金価格は、1980年のように
暴騰し、乱高下したでしょう。

(注)金や商品に分散投資するコモディティのETFも開発されてい
ます。ジム・ロジャースで有名な、シェアーズS&P GSCIコモディ
ティ・インデックス・トラスト等もあります。

鉛から金を作る錬金術は化学的にはムリですが、「ETF証券(=現
物の請求権)」を作って売買すれば、現物は要らない。証券化は、
売買における錬金術でもあるのです。

(注)本来は、金ETFの発行額が増えれば、信託会社(SPDRゴール
ド社が最大)での、現物のゴ-ルド保管も増えねばならないのです
が、確認する手段はない。

◎2008年頃から増えた金ETFによって、金へ投資・投機したいとい
うマネーを、証券も吸収できるようになっています。現物と同じこ
とを保証する証券とは言っても、ゴールドバーの保管の確認はなく、
顧客からの交換請求もほとんどないからです。

◎「現物を物理的に移動させることなく、金ETF(証券)を発行して
売って、ヘッジ・ファンドの参入を誘い、取引量を増やして、金を
高騰させること」、これが金EFTを作ったグループの真の狙いでし
ょう。

価格が上がるトレンドに入ると、市場は「自己強化」の過程にはい
り、もっと多くのトレンド買いが増えるからです。市場価格は、需
給量で決まります。株やコモディティ証券もゴールドも同じです。
価格の高騰や下落には、いろんな理由付けが行われます。しかしそ
れは多くの場合、「とってつけた理由」です。市場の実相では、マ
ネーが投機され買いが超過すれば上がる。売りが増えると下がると
いうことでしかない。

【2009年の、IMFの金売却】
2009年9月に、IMFは金403.3トン(時価で1.4兆円)を市場で売却し、
インドの中央銀行が200トン分、他は新興国が(相対で)買ったと
されますが、恐らく、IMFが信託会社を通じて発行する金ETFでしょ
う。

IMFの金売却の目的は、新興国の金融危機に備える資金作りとされ
ます。これは、名目上のことに過ぎない。

なお、国家の財政と金融危機の時、活動するIMF(国際通貨基金)
の2010年での金保有は2967トン(10兆円)とされています。   

◎重要なことは、ETF発明・上場によって、
(1)レバレッジ投資で、金価格を騰貴させること、
(2)及び逆に空売りで暴落させることが、
現物売買の時代より、容易になったことです。

▼ゴールドの売買は、通説と異なり、巨大市場である

金ETFの開発・上場は、大口投資で金相場を動かしやすくするため
のものでしょう。巨額な資金投入や売却の市場が、金ETFによって
できたことになるからです。

このため、金の年間売買高は、金の現存量をはるかに超える$20兆
(1800兆円)に膨らんでいます。売買の回転が激しいためです。

巨額資金を投入し、そして引き揚げることもできます。

「金の市場は小さい。1年に2500トン(時価で9.2兆円)しか産出さ
れないから」という通説があります。これは誤りです。ゴールドは
売買の回転率が高いため、取引市場は小さくはなく、巨大です。

(注)世界の年間貿易が$19兆(1520兆円)ですから、金の回転売
買の大きさが分かるでしょう。なお、参考に言えば、日本の3600社
の公開株式の売買額は、1年に300兆円と少ないのです。

■5.今後の金価格上昇を決めるのは、中国の金購買

現物であるにせよETFにせよ、株のように、買いが超過し続ければ、
価格は高騰します。

1980年のピーク価格(名目価格で$850)並みの実質価格が、今は
その2.5倍の$2127(現在の$1345から58%高)に相当するとは言
っても、それは単なるマイル・ストーン(目処)です。

◎資源・原油・株も同じですが、金の変動する価格に「正当な価
格」という根拠はない。買いが超過する間は、どこまでも上がり、
売りが超過すればどこまでも下げます。

2000年代の、あらゆる相場は、高くも低くも。実需のファンダメン
タルズからは乖離しています。過剰流動性のため、マネー相場にな
った。

付記すれば、『危機と有事に強い金やドル』というのは、買う人が
ばらまいた通説に過ぎない。(注)買わせてその後は、売り抜けを
狙うためのものです。

◎2000年代の通貨・金・資源・コモディティ市場は、実需よりはる
かに大きな、元金の30倍等のレバレッジをかけた仮需(ファンドの
投機)で価格が動いています。

(注)原油・資源・穀物のコモディティは、ファンドが買えば、い
ずれ、実需に向かい売らねばならないので騰落を繰返します(上が
ったものは下がる。下がったものは上がる)

その点で言えば、ゴールドだけは、株に似て、資源のように実需に
向かい売る必要がない。この点が、資源と異なる重要な点です。

金は拡大保有を続けることができます。市場が大きいので、換金も
容易で、資金が必要なときは、担保にして現金を借りることは容易
にできます。

▼外貨準備を$2.5兆もつ中国政府

今後、金ETFの買いに走りやすいのは、中国でしょう。

中国は今、かつての南アを抜き、年産約300トン以上の世界最大の
産金国にもなっています。電子工業に使うレアアース(希土類)と
金産出は、中国が最大です(紫金鉱業)。中国の金消費は、1年
400トンという。

(注)いずれも300トン以上を生産する、2大産金国の中国とロシア
は、金の輸出を禁じています。国内からの金の流失を防ぐためです。

IMFの統計では、中国は1054トン(3.9兆円)の金保有と言いますが、
中国の国内では、実際の保有は3000トン(11兆円相当)とされてい
ます。今までの20年で、各国中央銀行は4500トンのゴールドを売っ
ているとされてます(FT紙)。

【ドルペッグが、中国政府の外貨準備を増やす】
現在、中国の人民元は、輸出のためドルペッグされています。ドル
ペッグ制では、ドルと元の関係を一定幅に保つために、
・元買いが超過(=ドル売りが超過)したときは、
・人民銀行が市場のドルを超過買いし、元をバラまかねばならない。

このため、中国の政府外貨準備は、$2.5兆(200兆円)を超え、日
本(簿価で約100兆円)を抜いて、世界1になっています。

しかし、中国の外貨準備の70%($1.75兆:140兆円)を占める米
ドルの実効レートは、1年に20~10%の勢いで下落しそうな感じで
す。(注)実効レート:世界の貿易額で加重平均した各国通貨の
レート。

◎長期的に見たとき、
・経常収支赤字国の米国は、他国に比べ3%のスプレッド(長期金
利の利幅差)以下では、
・売りが超過する傾向を示すからです。

米FRBがゼロ金利を長期で維持すれば、米ドルの実効レートは下落
傾向を示します。2011年、2012年と米国FRBは、金融機関の不良債
権の処理と国内経済浮揚のため、金融緩和(短期ゼロの持続と量的
緩和)を続けます。

米国の長期金利(現在2.43%)が2%台に張り付けば、ドルを外貨
準備(世界の総額500兆円余)で保有する国は、継続的な為替差損
の恐怖を持ちます。その筆頭が、中国でしょう。

中国政府の外貨準備は、今後5年(2015年)で、$5兆(400兆円)
~$6兆(480兆円)に倍増することが想定できます。

▼中国の事情は、日本と異なる

今後、$5兆や$6兆の巨額な外貨準備をもって、ドルの実効レート
下落で損をするに任せることは、中国では許されません。

元高で輸出が急減して失業が溢れ、政府がドルで巨額損をすれば、
反政府運動が起るからです。そのため見かけ上でも、ドル保有損の
対策を打たねばならない。

(注)中国は、米ドルに忠誠する日本政府、日銀、国民と異なりま
す。

◎以上から、中国が、『米ドルの反通貨にも見えるゴールド』を為
替差損のヘッジのために買うことは、容易に想定できます。

中国による金ETFの購入規模が、1年に数兆円(1000トンレベル)に
超過すれば、金は、今後、更に価格を上げるでしょう。

金ETFの売りと、中国の増える外貨準備による買いが拮抗するとこ
ろで、金価格が決まることになる。そのときが、金価格の(想定で
きる)ピークなる。

2011年の、いつごろまでか。2012年か・・・この予測が、もっとも
難しい。

◎そして・・・金価格がピークに達したと見られたとき、金ETFが、
ヘッジ・ファンドからの大規模な売り崩し(空売り+先物売り)に
あって、下落しそうな感じがしています。相場の価格は、一本調子
に上げることはない。

その先鞭をつけるのは、(ほぼ必ず)金融マフィアの意を受けるソ
ロス・ファンドとポールソン&カンパニーの金ETFの売りでしょう。
(注)現物売りではないので、金の保管は移動しません。

そして、下落した価格を狙って、再び大規模な買い占めが起るでし
ょう。

◎更に先を見て、5年や10年の長期で言えば、貿易での経常赤字と、
医療費(200兆円)と軍事費(100兆円)から政府の財政赤字を解消
できない米ドルの実効レートの、明らかな下落のために、金価格は
上がるでしょう。

米国の財政赤字は、
・1人当たり66万円と日本の27万円の2.4も高額な医療費と、
・日本の20倍の軍事費を続けると、破産を宿命づけられます。

◎その前に、一度、金価格の下落の時期ありそうです。その底が、
金を買って長期保有する、2000年に似た機会にもなります。

(1)米国の経常収支の赤字、及び政府財政赤字の推移と、
(2)新興国のドル買いの勢い、
(3)中国の外貨準備の増え方の3項を見ておけば、タイミングが分
かることでしょう。

【後記:今再びの、金融危機と量的緩和】

◎米欧の金融危機は、2011年には、金融商品に縦横にかけられたデ
リバティブ(CDS、CDO等)の清算期が迫るため、深化します。金融
機関の株価の下落は、これを予想しています。

一般に、CDS等のデリバティブの期限は5年が多い。2006年の住宅価
格、商業用不動産、株価のピークから5年目が2011年です。

それが分かっているので、米国FRBは、10年11月に、更なる利下げ
と、(2011年にかけおそらく)100兆円規模の量的緩和(QE2)を追
加します。わが国の日銀も、総額で35兆円の支援基金を作ることを
決めました。

中央銀行は、銀行と金融危機の対策に、マネーを刷ります。
経済対策より、金融機関対策です、

米国、日本、欧州を含み、IMFを中心とした、国際的な金融の支援
枠は2011年に$1.7兆(140兆円)とすることが決定しています。こ
れに、米国FRBの100兆円規模の量的緩和が加わります。

2008年9月に続く、金融の量的緩和第二弾(QE2)です。

このため2011年は、再び過剰流動性が溢れETFが買われ、資源・金
インフレにもなりそうです。実体も景気は悪化し、基礎物資の物価
が上がるインフレでしょう。資源国と新興国は、すでに、インフレ
です。

(注)ただし、2011年の第一四半期には、ゴールドは利益確定のた
め、ヘッジファンドからの大規模な売りが起ることも、考えられま
す。

以下、次号に続けます。ゴールドには、政府・市場・ヘッジファン
ド・金融マフィア・個人の、複合的な思惑が入っています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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【最近号の目次】

     <507号:インフレの予想と資産運用>
         2010年10月27日号

【目次】

1. マネーが幾重にも組み上げたガラスの城になった証券化とデリ
バティブ
2. 米国の住宅証券で、今、重大なことが起っているが・・・
3. 加えて商業用不動産価格の50%へ下落
4. 日本のゼロ金利は、1999年から11年目
5. 1年に100兆円規模の、海外からのドル債買いが必要な米国
6. FRBのQE2の目的
7. 米欧日の短期ゼロ金利策の長期化
8. 運用はインフレ対策:利益を上げようと思うと失敗する
9. 預金の価値下落を避けるためのヘッジ
10. これからのゴールド投機の注意点

<506号:「財政破産」は、どういった形で起るのか?>
         2010年10月20日号

【目次】
1.「財政破産」とはどんなことを言うのか?
2.政府の財政破産は、国債をもつ金融機関の倒産
3.内閣府の『経済財政の中長期試算』
4.政府シナリオの問題
5.金利ゼロが、経済成長に有効でない理由
6.市場の金利上昇への転換点はどこか?
7.巨大な債券市場
8.結論
【後記】米欧政府の、元高圧力の理由

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