人口の逆転と経済成長は、税法でできる
This is my site Written by admin on 2011年9月28日 – 09:00

おはようございます。東日本大震災の復興費の財源として、16兆円
をどう捻出するかが、政治の課題になっています。

民主党では、増税9兆2000億円、税外収入7兆円でまとまりそうな雰
囲気です。税外収入とは、日本タバコ産業の株の売却、子育て支援
金等の予算の減額、および埋蔵金からの充当です。この7兆円に財
務省の抵抗が予想されます。

対策費としてすでに決まっている一次補正予算は、4兆円でした(1
1年4月)。7月に成立した二次補正が2兆円です。三次補正予算は、
ほぼ12兆円規模になりそうです。合計で18兆円です。

政府が見積もっていた設備の物損(個人住宅64万棟+法人設備+社
会インフラ)は、16.9兆円でした(内閣府:11年6月) ただし、
これは減価償却済みの簿価です。建て直しに必要な再取得価格にな
おせば、簿価の2倍は必要でしょう。35兆円です。

それに不明な原発の対策費があります。いつまでかかるか分からな
い廃炉の費用で、政府は1.5兆円を見積もっています。民間見積も
りでは2兆円。これに加え、広域な農林漁業、法人、福島県の社会
インフラへの損害賠償が必要です。総額は10兆円~20兆円と見積も
られています。幅が大きいのは、どこまで補償するか、不明だから
です。

合計すると、ストックの損害が35兆円+原発賠償費10~20兆円=45
兆円~55兆円が想定できます。このうち、政府分の復興投資は30兆
円、民間が15~25兆円必要でしょう。

損害の規模は、10兆円だった阪神・淡路大震災(1995年1月17日)
の物損の約5倍です。このときは、政府が5年間に渡って合計5兆100
0億円(損害の50%)の対策予算を組み、自治体と民間(企業+世
帯)が8兆3000億円の復興投資を行って合計で13兆4000億円という
損害を上回る投資ができた時期であり、復興需要でGDPは逆に成長
したのです。

東日本大震災では、こうはゆかない。政府負債(国債+短期証券)
が950兆円に増えているからです。1995年当時とGDPはほぼ同じなの
に、政府負債は3倍だからです。

いまのところ政府の対策費は18兆円で、30兆円の想定必要額にたい
し、6割です。自治体(東北4県)はいずれも財政赤字で、復興費を
余分に出す力はない。民間企業と、16年分の高齢化が進んだ世帯は
、どれくらいの住宅投資を行えるか。

16年という期間が、日本経済を16歳老わせています。当時の30歳が
いま46歳、40歳は56歳、50歳は66歳、60歳は76歳です。50歳以下の
人口が少ないため、こうなるのです。

日本人1億2700万人の、全平均年齢(総年齢÷人口数)は、2011年
で45歳です。2000年は41歳でしたから11年で4歳増えています

2020年には47歳、2030年47歳、2040年49歳、2050年に50歳になる。
言うまでもなく、生まれる子供が100万人と、あと100万人も素少な
いためです。200万人生まれないと、人口数は維持できない。厚労
省の外郭団体である人口問題研究所は、以下のような予測をしてい
ます。人口予測には、前提が変わらないと大きな狂いは生じません
。
http://www.ipss.go.jp/pp-newest/j/newest03/newest03point.pdf


          総人口        増減
~~~~~~~~~~~~~~~~
2010年  1億2717万人  
2020年  1億2273万人  -444万人
2030年  1億1522万人  -751万人
2040年  1億 569万人   -953万人
2050年      9512万人  -1057万人
~~~~~~~~~~~~~~~~~
 40年後     9512万人  -3205万人
~~~~~~~~~~~~~~~~~

このままの制度では、人口の減少は2010年代から加速します。1年
平均81万人の減少。1年にほぼ100万人の都市が、ひとつ消える勘定
です。いや1年に81万人が減るなら、500万人の都市圏くらいで、企
業の合計売上が16%も減るため、最低でも30%の会社は経営できな
くなります。

国家像は、都市の将来イメージの合計です。その都市は、町の将来
イメージの集合であり、町は、家族の将来イメージに還元されます
。つまり、最小単位の家族像の合計が国家像になる。家族像の好ま
しい姿を描かない限り、国家像も描けません。

日本はほぼ1970年代まで、人口が多すぎること、人口密度が高すぎ
ることを、米・欧に比べた貧困の原因としてきました。「貧乏人の
子沢山(こだくさん)」という政府のイデオロギーがありました。
中等教育では、社会科の教師が自嘲気味に、自分は貧乏人の子沢山
だと言うのを聞きました。このため、その教育を受けていた団塊の
世代の子供は平均で2人です。

戦時中は生めよ殖やせよでした。兵士と工場労働を確保するためで
す。戦後は一転し、日本の貧困の原因を、子供が多すぎることに求
めたのです。実に、1年で250万人も生まれていました。この世代が
通り過ぎるあらゆるものは混雑し、価格は上がって、約5年後には
下がっていったのです。

当方は兄弟が4人です。政府は将来人口を増やさない子ども2人が家
族像の理想としていました。一人っ子や2人の兄弟の、なんだか清
潔で、障子やフスマも破れず、子ども部屋すらもある家庭がうらや
ましかったのを記憶しています。兄弟が4人もいるから、2人の分け
前の半分だと考えていました。

1970年代までの政府の狙い通り、20年後の1990年代から、人口が増
えなくなっています。2010年代からは減り始めます。

合計特殊出生率というわかりにくい概念があります。15歳から49歳
を出産可能な年齢とし、その間、1名が生む子供の人数です。1940
年代が4人、50年代3人、60年代3~3.5人、70年代3.5人~2.5人、80
年代は2.0人と減り、国の人口を維持できる2.08人を割っています
。

90年代は2人を割り、2005年1.26人、2009年1.37人、2010年が1.
39人でしかない。2006年から、わずかに増えているのは、団塊ジュ
ニアが出産年齢に達したためです。出生数は、1985年が144万人、1
990年125万人、1995年119万人、2000年119万人、2005年106万人、2
010年107万人と、一直線で減っています。何もしないともっと減り
ます。

2011年には、団塊ジュニアの世代(1971年~1974年生まれ)のうち
、先頭が40歳を超えます。10年あとには50歳になって、普通に子供
を生むことができる年齢を、超えてしまいます。この世代が出産年
齢を過ぎれば、もうその後は、日本の人口が増えることはない。

今年からほぼ5年のうちに、目覚ましい対策をうたねばならない。
前々号の住宅価格に関係し、述べたことですが、この国の将来像の
ために、本稿のテーマを<人口の逆転は、税法でできる>としてフ
ランスの成功例を詳細に述べます。

現在の傾向で人口が減れば、内需の商品数量は増えません。経済は
、2010年を頂点に、価格だけではなく数量も下落の傾向にはいりま
す。大震災地の復興も、地域人口が減る中では果たせない。将来の
経済が下落傾向であると、企業の設備投資は減るからです。経済は
縮小のスパイラルにはいってしまうのです。

政府はいま、将来の国家像つまり共感をよぶビジョンを描けていま
せん。負担を国民にまわす財政の再建のみが頭にあります。つまり
は増税です。

増税は世帯の生活コストを高めます。増える福祉負担(年金+医療
費)への所得移転で、子供を殖やすどころではなくなります。そし
て、いずれ、町が、空き家だらけになって老朽化し、滅びます。北
の国から・・・の世界です。

年率1%で人口が減る町は、企業の新しい設備投資はできず、住宅
も古くなって、30年あとに人口が25%減った頃、ひどい状態になり
ます。

九州のある島へ行き、ここが日本の未来図とも思ったのです。公務
員と医師が町のエリートで、高所得者でした。食品スーパーに行く
と、退職者に見える夫婦がゆっくり歩いて、買う商品を吟味してい
ます。過半の人は、結局、いちばん安いものを買う。なんだか哀し
くなります。

人口問題研究所が予想するように、40年後、現在より3205万人(25
%)も人口が減ればどうなるか。食糧の消費、衣料、住宅、家電、
車の需要数も、現在より25%減ってしまいます。これは、企業の商
品売上数が25%減ることです。すべてが、余ります。余るものは、
その前に赤字になって維持ができず、消えます。10%も売上が減れ
ば企業は赤字に転落します。

25%も内需の需要数が減れば、少なくとも、いまある企業の50%の
はつぶれるか撤収でしょう。1人あたりの所得水準が同じでも、金
額では、25%の地域売上が減ってしまうからです。

東京とその周辺以外では、(言いにくいことですが)北海道現象が
全国化します。大阪北部の住宅地に住んでいますが、とりわけ最近
、空き家、空きビル、そしてテナント募集が目立つのです。千里ニ
ュータウンもオールド・タウン。言ってはならないことでしょうか
。

大阪駅の、巨大投資をした再開発(グランフロント大阪:約50万平
米)も、売上見込みを大きく(たぶん30%以上)下回ります。建物
と店舗は立派で、文句はつけようがない。しかし事業の根本になる
ROIの投資対収益を外しています。一見して思ったのです。客数を
見誤っています。小売業は、設備投資額の、ほぼ2倍の売上高が必
要です。土地を含む設備投資が1000億なら2000億円の売上です。最
低でも1500億円の売上です。単純に計算できます。

1994年に開港した関西国際空港に似た結果になります。最初、世界
の航空会社が乗り入れていました。直行便で世界の大きな都市に行
けた。いま、当方は、もっぱらアジアのハブ空港になった仁川経由
を使っています。便数が減って価格は高く、不便だからです。

多くの人の心をとらえた「北の国から」の未来イメージ。フィクシ
ョンですから、誇張があります。ところで、なぜ反文明の、見返せ
ば大きなトピックとして自家発電や廃物利用を行うこの映像が、心
をとらえたのか。先月、全部をDVDで見たのです。将来経済の成長
になる策なら、何でもいいから提案してくれと政府は要請していま
す。

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       <557号:人口の逆転は、税法でできる>
               2011年9月28日号

【目次】
1.人口が減って、国が滅びると言われていたフランスが転換した
2.家族計画と税制と社会福祉
3.フランスで子供が増えた極めつけは、所得税のN分のN乗方式
4.高齢化問題は、人口が減る少子化だから生じる
5.世代別の貯蓄の大きな格差
6.国に子供が増え、人口が増えることの経済的な意味

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■1.人口が減って、国が滅びると言われていたフランスが転換し
た

フランスの人口は19世紀の初め、1801年は、2750万人でした。1900
年は3890万人、100年で41%増えています。

同じ時期のドイツは、2500万人から5605万人へと2.2倍に増えてい
ます。英国は1801年の866万人が、1900年には3225万人へと3.7倍に
増え、世界に植民地を擁した大英帝国でした。

フランスでは、他国に比べ、19世紀からすでに人口増加率は低かっ
た。ちなみに日本の1801年(江戸時代末期)の人口は約3000万人で
した。1900年(明治33年)4000万人、その100年後の2000年は1億26
00万人と3倍増です。

20世紀になると、他の国が工業化(エネルギー革命と機械化)で人
口を爆発的に殖やしたのに対し、フランスは停滞します。出生数が
減ったためと、戦争です。

        総人口               60歳以上の割合
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1901年  3848万人                12.7%
1910年  3909万人                12.7%
1920年  3809万人 -100万人    13.8%
1930年  4091万人                14.2%
1946年  4012万人  -79万人     16.0%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第二次世界戦前は、世界の先進国で、フランスが目立って低く、19
10年代や40年代のように人口減少も見られます。フランスはいずれ
つぶれるといわれたのが、この頃でした。当時、乳児の死亡率が高
かったので、合計特殊出生率が2.2名でないと人口が減っていまし
た。

戦後の人口を示します。

1946年  4012万人
1955年  4322万人
1965年  4856万人
1975年  5260万人
1985年  5515万人
1990年  5657万人
1995年  5775万人
2000年  5807万人
2010年  6074万人

1946年の4012万人から2010年の6074万人に、1.5倍に増えています
。2009年の合計特殊出生率も2.0人で、人口はさほど減らないレベ
ルです。

目立つことを言えば、合計特殊出生率は1990年代以降も、増えてい
ることです。逆に他の欧州諸国の出生率は、軒並み減っています。


フランスのみが、1993年の合計特殊出生率の1.66人から、2000年
には1.89と増え、2010年は2.0人です。特に30代の女性が子供を
生む率が高くなったのです。

日本は1975年に2.0人を割って以降、減り続け2009年が1.37人です
。フランスの人口増加、言い換えれば出生率の増加には、「国が滅
びる」という1920年代ころからの危機意識から、政府が子供を生め
ば、大きく有利になる税制と社会福祉策を採ったことがあります。


子供は、家族のものでありますが、それ以上に、政府が子供は社会
のものと考えたからです。社会のものだから、国家が子供に対し福
祉を与え育てる、こうした考え方になっていったのです。将来へ向
かう国家像の根底がこれです。国を作るのは人でしょう。人口と教
育が国力です。

企業にとって、社員数と教育が、企業力であることと同じです。人
財とも言う。人が付加価値を生むからです。社員数が減ってゆく会
社に、未来はない。リストラで減らさざるを得ないとされるときは
、その会社が生んでいる商品に、競争負けの問題があります。

■2.家族計画と税制と社会福祉

フランスは、国の子供を殖やすための家族政策を採っています。多
種多様の支援策をつくっています。前述したように、子供は社会の
ものと考えたからです。この思想が根幹です。

家族のプライバシーを尊重したイギリス(子どもの福祉はカット)
、そして、子育ては家族がきめるというドイツとは、一線を画しま
す。両国の人口の年齢構成は、日本に似ています。

日本で「家族計画」というときは、子供を生むことの抑制と、産児
制限の避妊でした。妊娠中絶の堕胎も奨励されていました。そして
、両親が結婚していないときに生まれる子供は、私生児や非嫡出子
として、現在も法的に差別しています。「非嫡(ひちゃく)」は相
続ができないという意味ですから非道いものです。旧厚生省は、こ
うした逆転した家族計画の普及役を務めていました。

ところが戦後のフランスでは、家族計画と言えば、子供を3人以上
に殖やすことです。日本で、いまも言う私生児や非嫡出子に、法的
な差別はない。私生児や非嫡出子も奨励し、法的な相続権を平等に
与えます。

個人主義が、伝統的に他の国より強いフランスで、政府が、危機意
識からこれを行ったのです。フランスは日本の人口の約半分(6074
万人)ですから、以下の金額は、日本に換算すれば2倍になります
。

いずれも、合計特殊出生率が他国の傾向とは逆に、フランスで増え
た2000年からの、家族福祉への金額です。

(1)伝統的な、家族給付金  249億ユーロ(104円換算で2.6兆円
)
(2)出産費用43億ユーロ(4500億円)。
(3)問題のある子供や貧困家庭の対策費55億ユーロ(5720億円)
。
(4)企業への、家族援助金の義務づけ
(5)3人以上の子供を育てれば、
         公的年金額が増える100億ユーロ(1兆円)
(6)住宅給付金123億ユーロ(1.3兆円)
(7)身体障害者援助40億ユーロ(3200億円)
(8)貧困世帯への社会復帰の最低保証46億ユーロ(4800億円)
(9)出産休暇中の賃金を、健保で90%支給

以上の合計は、656億ユーロ(6兆8000億円)です。日本で言えば、
1年に、13兆円の家族援助金に相当します。わが国でいま子供がい
る世帯は1294万です(平均子供数1.7人)。13兆円÷1294万世帯は
、ほぼ100万円/世帯になります。

なお、大学でも公立校は授業料が無料ということも加えていいでし
ょう。日本では、親が仕送りに苦労しているはずです。

ここまでだけでも、財務省が財源がないと言い、消える子育て支援
金(満額案で2万6000円:2010年に1人1万3000円を実行したが、い
ずれ廃止)のような、ちまちましたものではないことが分かるでし
ょう。

なお、わが国は子育て支援金とともに、配偶者控除と扶養控除を減
らしたので、1人の子供しかいず、所得が中位以上の家庭にとって
は、実質増税になるということでした。

フランスが子供を殖やすほうが得な家族制度を、政策として立案し
、国会の決議を経て採ることができたのは、繰り返しますが、議員
の意識でも子供は社会が育てるとしていたからです。

上記以外に、出産後の基礎手当(0歳~3歳)、出産後の職業選択支
援手当、認定保育ママの雇用手当、3歳以下の看護のための看護日
額手当、新学期に学費を援助する手当など、およそ考え得る、あら
ゆる社会福祉を網羅しています。

■3.フランスで子供が増えた極めつけは、所得税のN分のN乗方式

人口減少と高齢化に、国家の将来危機をいだいたフランス政府は19
45年に、所得税の「N分のN乗方式」を採用します。1981年には、こ
れを拡充し、第三子供以降の家族係数を0.5から1人に引き上げてい
ます。

これが子供を殖やした極めつけの税制でした。「N分のN乗方式」で
の減税に、上記の支援金をつけたのですから、万全でしょう。

「N分のN乗方式」は、日本のような個人ではなく、家族を課税単位
にする税制の改革です。日本は個人所得に対し課税する原則であり
、わずかな扶養控除しかしていません。

「N分のN乗方式」では、子供が殖えれば、正比例して課税所得が減
ります。家族を課税対象にすることで、税のパラダイムを変えるも
のです。この意味で「家族主義」です。

夫婦2人は、2名と数えます。第二子までは1名を0.5名とし、第三子
以降は1名とする。夫婦2人で子供が3人なら、4名と数える。第三子
以降を1名とするのは、人口を増やすためです。夫婦の合計年収を8
00万円とすれば、800万円÷4名=200万が課税所得になります。

夫婦2名だけなら、課税所得は400万円で2倍です。子供が1人なら、
320万円、子供2名なら266万円、子供3名で200万円、4名なら160万
円が課税所得になります。子供が多いほど無税に近づきます。高い
所得の世帯は、子供を殖やすことによる減税額が大きくなります。
このため、40代でも子供を産む家庭が増えたのです。

 子供が3人以上なら所得税はどんどん減って、1000万円の年収以上
でも無税になる。晩婚化も減った。財源問題で消える子育て支援金
などよりはるかに大きい。この政策でフランス人が、子供を増やし
ました。

 フランスでは法的に結婚しない非婚カップルでの子供がほぼ50%
と多い。非婚カップルと子供も、税法と相続法では差別せず、家族
数として数えます。これも、今後の日本にとって有効でしょう。

内縁の妻にも、自治体から事実上の婚姻と見なされれば、夫の社会
保障と家族給付金が与えられます。同棲が多いのは、カトリック教
で離婚が難しいからです。

わが国の「内縁の妻」は、嫌味な差別語です。法学者の頭の構造が
ダメだから、こうなる。内縁の妻の何がいけないのか?

フランスでは、1996 年には第一子の誕生総数のうち53%、第二子
の場合は29%、第三子以降については20%が婚外出産です。第一子
が生まれたあと結婚するということが普通であることが分かります
。

わが国のように、私生児や非嫡出子という概念をつくって、差別は
しない。フランスでは、子供が生まれる前は「内縁の妻」が普通で
あるようは法制をつくっています。。

わが国でも、このN分のN乗方式を採用すれば、所得が増える30代後
半から40代(現在の団塊ジュニア)の子供が、翌年から増えるはず
です。これは、保証でできます。乗の意味は、所得税率を掛けるか
らです。

N分のN乗方式ともに、将来消費税10%を採用すれば、将来を見る国
民の合意が得られるでしょう。消費税での増税(1%につき2.5兆円
)と、世帯の所得税の減税を等しくする。

消費税は12.5兆円(5%:07年度)です。世帯の所得税は、国税が
15兆円、地方税が12.6兆円で合計27.6兆円です。全世帯所得の約
10%が、所得税です。この所得税を、N分のN乗方式で子供のいる家
庭で減らした分、消費税で増税する。

(注)政府機関の研究論文を読むと、謎めかして「N分のN乗方式」
と書き、中味へ言及した行数はきわめて少ない。財務省に遠慮した
のでしょうか。本稿でも、あえて「N分のN乗方式」としました。

■4.高齢化問題は、人口が減る少子化だから生じる

▼(1)40歳以下が多くを負担する社会保障費の問題

高齢化が経済の問題になるのは、まずは、高齢者の福祉費増加です
。公的な社会保障費(国と地方)は、年金53.6兆円、医療費33.6兆
円、介護費7.9兆円、その他12.7兆円で、合計107.8兆円です。

世帯の平均所得は563万円ですから、5000万世帯で280兆円です。全
福祉費用は、世帯所得に対し、39%の高さになっています。4割で
すから、すでに、社会福祉が発達した欧州並みに高い。これが、20
10年代から、さらに増えます。

GDP比で22.3%をしめる大きさになっています。負担は、世帯と企
業がほぼ半分ずつ払う保険料が59.6兆円(60%)、税金が39.4兆です
(2011年度政府予算)。

おさえても、年間でほぼ3兆円(3%)、社会保障費が増え続けます
。名目GDPの増加はなく減っていますから、国民負担率(企業と世
帯の福祉負担率)は、増え続けます。こうした福祉負担の増加は、
GDPを増やさず、逆に縮小させます。

わが国の社会保障は、働く人たち(20代からほぼ60歳まで)の所得
税と年金と医療費の保険金を、退職後の高齢者に所得移転するとい
う方式です。社会福祉の受益が、65歳以上に偏っているのが問題で
す。フランスでは、これを、子どもを生む40代以下に配分していま
す。

わが国の国民年金の掛け金と需給額では、1970年生まれ以前の世代
は得をします。現在年齢で言えば、41歳以上の人たちは、自分の掛
け金+運用金利以上の年金を得ます。他方、40歳以下の、子供をも
っとも多く生むべき世代は、自分の掛け金以下の年金しかもらえま
せん。

40歳以下の世代にとっては、年金の掛け金は、税金ではない税を含
むとすべきことを示します。これが、現行の賦課方式であることの
問題です。

(注)年金給付に25年加入が義務づけられている国民年金の納付率
が60%を割り、40%が未納です。掛けた期間で25年を割ると国民年
金は1円も支給されない制度になっています。国民年金の財源では
、50%が税金から補給されますが、40歳以下の人は期待していない
のでしょう。

▼(2)子育て費用が捻出できず、少子化になる40歳以下

わが国の賃金体系は、年功序列を反映し、年齢と賃金の関係で描く
賃銀カーブが、米欧より急峻です。世帯主世代別の、世帯所得の平
均は以下です(2001年:国民生活基礎調査)。賃金はこの10年上が
っていないので、現在も2001年の状態が続いています。

世帯主29歳以下    333万円(子育て世代)
30~39歳           556万円(子育て世代)
40~49歳           734万円(子育て世代)
50~59歳           823万円(仕送り世代)
60~69歳           572万円(年金160万円)
70歳以上           462万円(年金210万円)
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/02/1-3-1.html

30代から40代までは、住宅ローンの支払いに、子育てが加わります
。しかも住宅購入では、60歳以上の世代と異なり、1990年ころから
住宅を買っているため、値下がりによる含み損を抱えているのです
。こうした、所得と含み損を抱える資産で、40代以下の人に向かい
「日本の将来のために子供を3人以上に増やそう」と言っても無理
です。

50歳以上の世代は、自分の賃金が初任給から1年に5%や7%増えて
いた時期を、経験しています。ところが40歳以下の世代はまるで異
なります。

現在の40歳が大学を出て就職したのは、1992年です。このころから
、日本は、初任給が上がらない時代になり、19年が経っています。
初任給が上がらないとベース・アップ(ベア)はない。平均給与が
同年齢でほぼ30%は高い一部上場企業でも、あるのは、1年に3%く
らいの年齢給の上昇だけです。

大企業ではほぼ50歳まで賃金が上がりますが、中小企業では35歳く
らいで、平均賃金の上昇は止まります。格差の一端です。

「日本に景気がよく、給料が1年に7%や10%も上がっていた時代っ
てあるのですか?」と言うのが、40歳以下の世代です。会社に行っ
て聞けば、そう答えます。親から聞いたことしかない。いつのこと
か?

20代後半から30代前半で、いまは給料が低くても、将来は上がるか
ら、住宅を買い、子供も産もうと考えることができない。

50代以上の人たちの経験とは、まるで違う、将来生活観です。大都
市では、車を買わないことが常識です。固定電話はなく、新聞も購
読しない世帯が多い。百貨店にも行かない。所得が将来増えないと
いうことは、現在の経済行動を変えてしまうのです。

さらに言います。

■5.世代別の貯蓄の大きな格差

世代別の負債を引いた純金融資産は、つぎに示すとおりです。

(総務省家計調査:2003年)
・20代以下 	+  66万円(ローン負債285万円)
・30代     	-  45万円(ローン負債754万円)
・40代    	 + 223万円(ローン負債935万円)
・50代    	 +1127万円(ローン負債602万円)
・60代    	 +2127万円(ローン負債252万円)
・70代以上	 +2401万円(ローン負債116万円)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0491.pdf

当然と言えば当然の結果ですが、20代~40代は、住宅ローン負債を
引いた純金融資産は、ほとんどない。純金融資産は、50代以上にひ
どく偏っています。

50代以上の世代では、住宅資産でも含み損は、少ない人が多い。特
に60歳以上は、会社も大きくなり、自分の賃金が1年に5%~7%は
確実に増え、住宅価格もローン金利より上がったことを経験してい
ます。

●問題は、20代から40代に純金融資産がないことではない。将来、
それができることが、期待できないことです。つまり将来へ向かう
希望がない。月刊プレジデントのアンケートでは、東証一部上場会
社の正社員でも、56%がリストラ不安を抱えているという。70%が
勤務する中小企業は、言いますまい。

GDP、つまり企業の価値価値(粗利益額)の合計が、約20年も増え
ないと、こうなるのです。なおこうしたことは、他の先進国は経験
していません。

GDPが増えない中で、正社員の平均賃金を、年齢給で1年3%は上げ
る必要があるとすれば、1年に3%の社員数のリストラが必要になり
ます。その傾向を、まともに受けているのが、40歳以下です。地域
の人口減で売上が減れば、リストラはずっと続きます。

子供が生まれる世帯(世帯主で50歳以下)の所得税を、大幅に下げ
るフランス流「N分N乗方式」に変えれば、税引き後の実質所得が、
40代以下で、増えるようになって行きます。

3人以上の子供を産めば、所得税が無税になる世帯が、40代以下で
増えます。

そっと付記すれば、今後、国家財政破産があって、金融資産の価値
と年金の価値が減少したとき、損をするのは、金融資産をもつ50歳
以上の世代です。純金融資産のない50歳未満にとっては、むしろ、
歓迎すべきことになる。これも、不遜な発言でしょうか?

国家の財政破産は、政府予算の縮減、年金を含む高齢者福祉予算の
減少、400万人で、総人件費40兆円の公務員の30%カットにならざ
るを得ません。これが未来を拓くでしょう。増税をしつつ、世帯所
得が増えないこと、これが最も避けねばならないことです。国が衰
退に向かいます。

ギリシア、アイルランドを手始めに、イタリア、スペイン、ポルト
ガルがそうなります。$1.6兆(GDP費12%)が財政赤字の米国も
、PIIGSの2年くらいあとを追いそうならざるを得ない。英国も米国
同時です。

1990年の初めに、国債価格の下落から金融危機になって、財政危機
に陥ったスウェーデンは、福祉費の削減と増税を果たし、1990年か
ら政府財政を黒字化して、2005年には、政府の負債をGDP比で50%
に減らしています。

なおスウェーデンの政府負債は、GDP比74%で危機になっていたの
です。日本政府債務は950兆円で、GDP比200%だから凄まじい。金
利が高騰する危機が、政府債務はあれば、ここまでは増えなかった
はずです。負債950兆円でも政府の利払いは10兆円で1%です。

この超低金利のため、政府債務が一層増えたと言えます。3%の金
利なら、30兆円が利利払いになるので、政府は2000年頃には金利を
払えなくなったはずです。このため、政府の支出が抑制されること
になったでしょう。

■6.国に子供が増え、人口が増えることの経済的な意味

子供が増えれば、現在のままの少子高齢化では減ってしまう商品数
量の購買(内需)が、インフレ含みで増加に転じます。食品、衣料
、住宅、家電、情報機器の数量が増える。

いま米、魚、食肉、乳製品の需要は、減り続けています。もっとも
食べる10代の人口が少ないからです。60歳以上の人口は増えていま
すが、高齢者は食べる量は減ります。増えているように思える食肉
全体でも、1996年を100としたとき、2010年は78です。この数量の
減少が、消費全体をシンボライズしています。業界の総売上が78%
に減れば、40%の企業は消えるでしょう。価格は下がっているから
です。デフレになるのも当然です。

日本で、人口が減っていないのは、唯一、東京と沖縄です。人口が
減らない地域では、商品の総数量の減少はない。人口が高齢化して
減れば、北海道のように、すべてが伸びないのです。

日本の人口を増やすチャンスは、先頭年齢が40歳になった団塊ジュ
ニア(960万人:1970年から74年生まれの5年間)の世代が子供を殖
やすことができる、今後ほぼ10年間です。

「N分のN乗方式」の日本化を目指し、年内に検討を終わり、2012年
内に実現を目指す。この政策は実行される前に、子供を殖やす効果
をもちます。自民党のごくごく一部で、研究も始まっているようで
すから、民主党が同調すれば、全党一致になり得ます。

架空の結果ではなく、フランスで、実証的な効果を挙げています。
障害は、財務省でしょう。「N分のN乗方式」が実現すれば、日銀が
国債を買って、マネーを供給し、経済がインフレ含みになっても構
わない。10年後からは若い世代が大きく増え、今度は内需型の、経
済成長に向かうからです。

人口問題研究所の、将来予測人口を大きく狂わせないと、日本経済
の衰退は避けられません。

【後記】
いま、政府は税制改革の最中です。このため、将来の国家像を示す
家族制度をきめる税制を提案します。日本が衰退に向かうのは、忍
びないからです。衰退とは、世帯の所得が増えないことです。

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