令和を希望のある時代にするために
This is my site Written by admin on 2019年4月30日 – 10:00
30年の平成は今日で終わり、新しい令和の時代が始まります。年号だ
けの問題であり、何ら変わることはない。しかし、われわれの時間の
意識には、大晦日から正月の何倍、何十倍もの、変化をおよぼすでし
ょう。今日は、平成の大晦日、明日は、令和の元旦です。

しばらく間、お休みをいいただいていました。いい訳を許してもらう
なら、この2か月、新刊書を書いていて、さっき「はじめにと、おわ
りに」も、書きあがって出版社に送ったところです。仮の題は『21世
紀の通貨価値をもとめて』(約420ページ)です。5月中には、書店や
アマソンなどに、同時に出るでしょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    21世紀のマネー価値を求めて(案)
      マネー供給量>GDP成長率
     信用通貨のドル・円・ユーロ・人民元と、金(きん)の攻防
 ペーパーマネーの過剰は、金融危機を引きおこして暴落し、
                     新しい時代をひらく
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

本稿は、有料版として、約1か月まえに送ったものです。お休みのお
詫びとして、1回分の全文(29ページ)から、少し省略して送ります。

テーマは<令和4年から希望ある国にするために>とします。
財政危機と希望について、多角的な視点から検討します。

日銀が、国債を今は40兆円買い続けている異次元緩和は、隠された実
体では、時間で大きくなる財政破産(デフォルト)の先送りです。 

●異次元緩和という、1999年のクルーグマンが原典(流動性の罠の日
本)の理論と、2013年からの実践の失策が、日本経済の条件の無視か
らはっきりし、「令和」のいずれかの年度の危機になると見ています

しかし財政破産は、逆の面で「過去からの制度を転換させる機会」に
なり、50代以下の社会保障と国債の負担超過を負う世代にとって、
「制度再編を余儀なくされること」からの、希望になります。

▼(重要な定義)日本の本質的な危機は、社会保障制度の、所得移転
においての激しい歪みです。人口減ではなく、高齢社会に適合してい
ない古い社会保障の制度危機です。

つまり本当の危機は、財政の赤字と国債の増加の形をとった、「所得
移転の、40年も古い社会保障制度の危機」です。誰もこれを言わない
(小声ではいう人が少数はいます)。

いや言えない。受益者の60歳以上の、投票率の高い世代(約4400万
人)の反発をまねくからです。原因はぼかし、財政危機という(政治
家、マスコミ、エコノミストのグループ)。

●財政破産が強要する制度再編成から、公的年金が40%は減り、医療
の自己負担が45%以上(今は30%)に増える60歳以上の世帯にとって
は、
・長期金利の上昇として、危機の兆候が見えたあと、
・1世帯の平均では、2100万円はある預金を引き出し(格差あり)、
・スイスフランと金に換えておけば、退職後の充実した生活ができる
ことも示します。お金は自由を、不足は不自由をもたらします。預金
の少ない高齢者には、月5万円程度の無差別なベーシックインカムで
しょう。総支出は年60万円×1000万人=6兆円です。財源は、消費税
の3%分の移転です。

日本の財政破産は、同時に(1)円の暴落、(2)日・米・欧の株価下
落、(3)不動産の下落、(4)米国の同時デフォルト、(5)ドル下
落に波及します。世界の金融はコミットし合っていて、推計8000兆円
の金融システムの全体が、連結しているからです。

国は、1080兆円(2018年)の対外資産をもっています。財政危機は同
時に円の下落危機になりますから、日本からは外債が売られて米国金
利も上がり、36兆ドル(3960兆円;2017年)の対外負債の、「金利+
元本」の支払いが、できなくなるからです。ドル債を日本が売ること
は、米国への返済の強制とおなじマネーの流れになるからです。

●古典派風に、経済の自律調整を見れば、5Gの超高速インターネット
(今の、4Gの100倍のデータ速度)と、人工知能のAIの合体です。財
政危機、金融危機やデフォルトのあとの、産業革命と同じ成長をもた
らすことが予想できます。危機がなければ、そのあとのチャンスもな
い。危機の発生が、機会を作ることがわかるでしょう。

・経済の現象(感性への現われ)の一面しか論理化していないひとつ
の経済学ではなく、
・60億人から70億人増えた、判断、取引、仕事の全部の事実が詰まっ
た歴史をみれば、数十年の循環として、滅びるものと生まれるものが
交互にきています。

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  <998号:新しい令和を希望のある国にするために>
       2019年4月30日:無料版

【目次】
1.わかりにくいプライマリーバランスの意味を解くと
2.仮想風景:市場の期待金利が3%にむかって上がると1000兆円の既
発国債が17%下落
3.財政破産は、国の終わりではなく、新たな始まり
4.財政破産、円安、株価暴落への個人の対策は、容易である
5.金価格の急騰がある:想定5倍
6.財政破産後、またはその途中での社会保障制度の組みなおしが、日
本に希望を生む
7.50代以下の、国債と社会保障負担のおおきさ
8.敗戦国と戦勝国で、逆になった明暗
9.財政破産しない日本の先行(さきゆき)は、英国である
10.政府・日銀の二つの選択肢:今後3年で決まる
11.金融が連結している日米は、同時破産になるから、ドル建て対外
資産は活用できない

【後記】

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■1.わかりにくいPB(プライマリーバランス)の意味を解くと

内閣府が、17年間、毎年2回は試算し、GDPと並ぶ政府のマクロ経済の
重要な中長期予想数値とさていれる「基礎的な財政収支(PB:プライ
マリーバランス)」が黒字にならない限り、
・日銀が、国債の買いをやめる時期が来る出口政策のとき、
・市場の期待金利は、3%以上に上がって財政は破産します。

一般会計の財政赤字、つまり資金の不足は、35.4兆円です(2018年
度)。これが、およそ国債発行額になります。この35.4兆円の赤字か
ら、国債費の支出(22.7兆円:金利分は8兆円)を引いたPBの赤字の
実績は、12.7兆円とされています(『試算(19.1)』)。

政府がいう国債費は、国債の金利と償還を60年と仮想したときの返済
額です。1061兆円残高がある、地方債を含む既発の長期・短期の公債
の平均金利は、2013年度からの異次元緩和により、およそ0.8%と低
い。利払い額は、わずか9兆円/年です。

約1000兆円の国債は、全部を、60年償還として仮想計算されています
(実際は長期。短期の国債の平均で約8年)。1年に120兆円は借り換
える国債の金利は、そのときの金利に合わせて上がるので、市場の期
待金利が上がると、国債の利払い費は、増えていきます。

政府は、国債費を除くPBがバランスすれば、「国債残÷名目GDP」で
計算される債務のGDP比率(2018年は193%)は、「ワニの口状には、
先が広がらない」から、将来の財政破産は抑えられるだろうと主張し
ています。

●ポイントになるのは、債券投資家(金融機関)決める、債券市場の
期待金利です。

政府は、国債金利の前提を、日銀が、10年先までも「債券市場がつけ
る金利を抑えることができる」としています。国債につける金利が、
『試算』の想定以上に、早めに3%に向かって上がると、PBがバラン
スしても、財政は、破産の危機に向かいます。

毎年のPB(プライマリーバランス)の試算は、17年間も毎回、PBの赤
字は減るとして、辻褄が合わせられています。名目GDPの成長率、税
収、金利、財政支出に、辻褄合わせがあるので、将来の会計年度が来
たとき、PBが、過去の予想の線に減ったことはない。しかし予想なら、
事実の偽装にはならない。

「市場の期待金利」とは、市場の投資家と金融機関が、金融・経済の
先行きから予想する将来の金利のことです。

しかし仮にPBがバラスしても、国債投資家の集合による財政リスクの
高さの認識から、債券市場がつける国債の金利が上がると、名目GDP
の増加率より国債につける金利が上がるため、財政破産のリスクは残
るのです。過去の事例(事実)では、2011年のギリシアのように、名
目GDPの増加率の10倍以上の金利(長期金利30%)がついています。

●内閣府のPB試算の中で、無視されている将来のリスクは、債券市場
の期待金利の上昇から、既発国債1000兆円の価格が下がる事態です。
実際には、債券市場の期待金利が、PBの試算の想定を超えて、上がる
こともあるからです。

名目GDPの成長率3.4%台と高く、その割には、想定金利が低い成長実
現ケースでは、5.5兆円のPB黒字とされています。しかしGDPの動きを
見れば、これは実現しない。この試算での想定金利もおかしい。たと
えば2013年は、名目GDP成長を3.6%と高くしても、国債につく長期金
利は0.9%と低くされています。

●市場の期待長期金利は低くともおよそ2.5%台には上がるはずです。
ここでも日銀の金融抑圧が効くことが前提になっているのです。
(19年1月末:経済財政諮問会議)。 
https://fromportal.com/kakei/invest/bond/pure-expectations-hypothesis.html

内閣府の試算は、2002年から将来10年を見通して、17年も行われてき
ましたが、試算のPBバランスは先送りされ続けています。つまり、実
際は試算より低いGDP成長、赤字の大きいPBでした。財政赤字をおお
きくする金利だけが、予想より低かったのです。理由は、日銀が財政
ファイナンスとマネタイゼーション(国債の現金化)の国債買いをし
てきたからです。

17年間もほぼ毎回ということは、もっとも重要な政府の経済予想にお
いて、中国のGDPを笑えない嵩上げ(かさあげ)があることです。つ
まり「予想の偽装」です。ところがリフレ派は、PB試算を論拠に、
「財政破産は永久にあるはずがない」としているのです。

▼わが国の財政破産は、どんなプロセスで起こるか

日銀が国債の買い増しを続けるにかかわらず、新規国債の市場への投
入が、市場の期待金利を一層上げるようになったときから、財政破産
に向かいます。

GDP比2.4倍という、世界最大の政府総債務があるため、期待金利が3
%に向かう過程では、
(1)日銀、銀行、生保、海外がもつ既発の1000兆円の国債価格が20
%下落し、
(2)そのなかで発行すれば、価格は一層下がって、金利を高騰させ、
ついには国債の新規発行が、できなくなっていくからです。(政府債
務1284兆円;そのうち公債は1079兆円:日銀資金循環表:18年9月)

このように、債券市場で投資家の集合が決める金利が、コントロール
を失うと、政府の支払に必要な、国債の新規発行(30兆円~40兆円)
ができなくなり、
・国債の償還と、
・財政予算の支出ができなくなります。

まとめれば、GDP比2.4倍(1280兆円)という政府債務のおおきさが、
3%という、普通なら低い金利でも、財政を破産させます。(普通の
金利は4%台でしょう)

内閣府が作って、経済財政諮問会議に出す、政府の最も重要な政策を
決める『中長期の経済財政に関する試算』では、10年間平均の名目
GDPを3.4%と高くする「成長実現ケース」において、市場の期待金利
が2023年は0.9%、25年は2.1%と、都合よく抑えられています(19年
1月の最新版)。

経済の平常時の均衡長期金利は、名目GDP成長率あたりですから、お
よそ3.4%になるでしょう。

『試算』での名目GDPの成長率の10年の平均が、ほぼ1.6%と低いベー
スラインケースでも、2023年の長期金利が0.6%、25年が1.6%です。
この名目金利予想も、1ポイントくらいは低すぎます。
成長のケースよりベースラインケースが、実現の可能性は高いのです。

【低すぎる政府の金利予想】
試算のベースラインのケースの長期金利は、10年にならせば、0.99%
と1.2ポイントは低い見積もりです。ここがPB試算の、致命的な欠陥
です。なぜ野党は、政府政策の致命的なところを質問しないのでしょ
う? 

さらにいえば、1000兆円から、毎年約30兆円増える国債の金利が1%
台と低いと、国債をもっていれば、実質的に損をするので、金融機関
の売りが、増えて金利はもっと上がるはずです。

もう一点、肝心なことをいうと、現在、10年債の金利は-0054%です
(19年3月)。0%金利の10年債は、期待金利が、1ポイント(%)上
がっても、9%も価格を下げます。

このため、『試算』のように、金利が、少しではあっても上がる一方
と想定されるようになると、国債の保有と買いで損が大きくなると予
想する金融機関(国内と海外投資家)に、保有国債の売りが増え、
『試算』よりも、市場の期待金利は上がっていくでしょう。

これから10年の間に、0.5%の金利が2%に上がれば、たった1.5%で
も、借り換えのあとの国債の利払いでは、この1.5ポイントで15兆円/
年が増え続けます。しかも、1000兆円の既発国債が7.5%下がるので
大きいことでしょう。

●国債が売れるのは、買ったときより金利が下がる時期と年度です。
金利が下がると、買った時よりは国債価格が上がるからです。

ゼロ金利の限界に達した長期金利(0%)が、更にその下の金利に下
がることはない。マイナスになって短期のことです。このため『試
算』でも、これからは名目長期金利の継続的な上昇が示されています。

『試算』にも、国債の価格が、10年(『試算』の期間)ずっと下がり
続けるということが表に書かれた金利として、裏で示されています。

金利が上がり、国債価格が下がれば、今まで買われてきた国債に、国
内と海外投資家(国債保有150兆円)からの、売りが増えます。この
売りからも国債の金利は『試算』より、数段上がります。海外投資家
は、短期債を、1年に450兆円、つまり3回転の売りをしています。こ
れが、「国債下落=金利上昇」を、主導するでしょう。

【結論】
以上から、財政破産の臨界点である長期金利3%に近づく時期は、数
年内に早まるでしょう。内閣府自身が、『試算』で書いた金利の裏で
は、財政破産を示しているのです。

以下の『試算』を見てください。驚きます。政府政策の都合で、予想
数値が嵩上げされているのです。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h31chuuchouki1.pdf

具体的には、国債の増発ができなくなったギリシアのように、政府が
支払いを約束している、(1)公的年金(53.8兆円)、(2)医療費・
介護費(43.5兆円)、(3)公務員給料(35兆円)、(4)国債の償還
(年120兆円)を、30%くらい減額してしか、執行できない。

内閣がつぶれ、政府は破産しても、企業のように消えてなくなること
はない。財政の予算の100%の払いができなくなるのです。これをモ
ラトリアム(支払いの猶予)またはデフォルト(支払いの停止)とい
います。30%である30兆円が不足します。

●国債残が1000兆円、借入金が128兆円(18年9月:政府債務
の合計は1128兆円)のわが国では、長期金利が3%に上がると、平均
の残存期間が8年の1000兆円の国債は、以下の計算のように、金融機
関の間の流通価格が17%下落します。

■2.仮想風景:市場の期待金利が、3%に向かって上がると1000兆円
の既発国債が17%下落

この項は仮想風景です。財務省が、いつも、「ありえない」と言って
きた国債リスクを、内閣府の『試算』偽装をみれば、考えておく必要
があります。

「こうなる」というのではない。将来の確率的なリスクを考えにいれ
ておくためです。将来は確率です。複雑な国債市場を、短文の8項に
まとめます。圧縮して、記述の密度は、濃くしています。

【1:国債価格と金利】
満期10年後・金利0%の国債は、1ポイント(%)の金利上昇につき、
9.1%、価格が下がります(計算は単純:1÷1.1≒0.909)。
2ポイントで17%。3ポイントで23%。

国債は、異次元緩和のように金利が下がる過程では、上がります。国
債をもつ金融機関には、売却利益があります。逆に、日銀が国債の買
いあげを、順次減らしていくと(テーパリング)、金利は上がり、国
債の価格は下がっていきます。金融機関が、赤字になります。

【2:『試算』について】
最新の『中長期試算(向こう10年間)』では、長期金利は少しずつ上
がるとしているので、円の国債は今後、買うか保有すれば、「買った
価格より下がります。でも・・・買ってください」と、裏で示してい
ることになるのです。

仮に、日銀の2%インフレ目標が達成でき、名目GDPの上昇率が3%~
3.5%になると、長期金利は『試算』より大きく早く上がります(市
場の均衡金利は3%~3.5%)。

「期待長期金利≒期待名目GDP≒市場の均衡金利3%」に近づくからで
す。市場で予想される、名目GDP成長率が高まると、市場の投資家が
いだく期待長期金利は、上がるからです。

【3:国債の価格バブル】
発行金利がマイナスやゼロ金利国債が、日銀の買いを期待して、金融
機関に、発行額面で売れている現在の状況は、価格バブルを示す以外
ではありません。

累積では、日銀が買ってきた国債478兆円が、利回りを0%に下げてバ
ブル価格にしています。日銀が、銀行が買った価格より高く買ってき
たことが、金利を下げて価格を上げてきたのです。

この買いがなければ、10年債の金利は、5%以上に上がっていたでし
ょう。理由は、日銀以外の金融機関の、国債買い増しの原資の枯渇で
す。

【4:国債買いの原資】
民間金融機関が国債を買う原資になる預金は、貸付金が全部回収され
たあとでも、1343兆円が上限です(19年2月のマネーサプライ:M3)。
しかし世帯302兆円、企業404兆円、合計706兆円の既存の貸し出し
(18年9月:日銀資金循環表)の回収は、銀行が仮に実行しても、対
前年比ではごくわずかしか実行できませんから、日銀を除く金融機関
の国債と、他の債券の保有上限は、637兆円でしかない(M3が1343兆
円-貸出金706兆円=637兆円)。

実際、金融機関に、すでに国債買い増しの原資がないので、発行残の
50%を日銀が、赤字国債の金利として期待される市場の実勢より高い
価格で買ってきたのです。

こうしムリな買いが作ってきたのが、国債のバブル価格とマイナスか
らゼロ金利です。

国債を市場の実勢価格より高く買い、ムリヤリに、10年債はゼロ%、
10年債以下はマイナス金利にすることです。バブル価格とは、市場の
実勢つまり民間金融機関が作る、国民の預金による買いの能力の価格
より、はるかに高いことです。

【5:満期と金利と価格】
わが国の、長短の国債の平均満期は、現在8年です。期待金利が3%に
上がったとき、残存期間8年の国債価格は、「(1+0%×残存期間8
年)÷(1+金利3%×残存期間8年)=1÷1.24=80.6%」です。既存
の国債の価格が、19.4%下がります。

(1)国債を500兆円もつ日銀と、
(2)350兆円の銀行および生保の、時価での累積損は165兆円になり、
自己資本は消えます。

加えて海外投資家は150兆円(構成比15%)の円国債を、高速で回転
売買しながら、保有しています。

銀行のB/Sが時価評価で債務超過になると、国内の銀行間の取引では
自己資本比率4%、海外銀行との取引では8%が必要なので、「国内と
海外の銀行間での貸借取引」ができなっていきます。3年間、破産寸
前で、特例の支援を受けているドイツ銀行と同じB/Sの状態になるか
らです。

●こうなると、政府が発行しなければならない、1年に120兆円の借換
債を含む約150兆円の国債を、日銀すら、買えなくなっていくでしょ
う。

【6:国債の時価評価】
国債下落の評価損は、計上しなくていいと財務省・金融庁が指導して
いるから損はないというひともいます。

これは、制度会計の政治から来るルールです。会計では、制度的な利
益の計算なら、できるでしょう。しかし、実際のマネーの動きである
資金繰り(キャッシュフロー計算書)では、資金収支の減少と増加が
任意の会計と違うので、資金不足になっていきます。

金融機関に肝心なのは、財務省や金融庁が任意に敷くことができる制
度会計ではなく、資金収支です。制度会計が黒字でも、資金収支でマ
イナスが続くと、預金者が窓口で引き出す、あるいは送金する預金で
すら、決済できなくなり、破産に向かうからです。

●簡略化して示せば、銀行は、銀行間の取引で借り入れができなくな
り、担保に差し入れている国債の時価の下落により追い証が必要にな
ると、約2週間で、連鎖破産します。

連鎖なのでシステミック・リスクという。証券化商品の下落による、
CDS(回収を保証する保険)の高騰により、2週間で発生したリーマン
危機が、これでした。相互に、大きな担保の差し入れと貸し借りがあ
る金融機関の破産は、連鎖します。

●国内と海外との銀行間の取引は、B/Sの時価評価で行われます。こ
れを、国債を時価評価しない制度会計により、変えることは不可能で
す。

〔→〕このため、国債の時価評価に、大きな評価損が出ると、国内、
そして国際的な銀行間の借り入れ調達ができなくなり、むしろ現在の
借り入れの返済に追い込まれ、資金不足から連鎖の危機になっていき
ます。結果は、2008年9月15日のリーマン危機です。

【7:日銀の債務超過の結果は円安】
478兆円の国債の、時価の下落から実質的には債務超過になる日銀が、
下がる国債を上げようとして買い増すと、今度は、円の信用が下がり、
外為市場で、円の下落に賭けた外人売り(通貨先物売り)が利益を出
すようになります。世界中から、利益に群がる円売り(ドル買い)は
一層増え、円はもう一段の下落に向かうでしょう。

●国債が売れにくくなると、市場で売れる価格にまで下がり、国債価
格が下がることによって、債券市場の金利は、さらに高騰します。こ
のときは、海外の金融機関とファンドは、ギリシア国債危機と同じよ
うに、円国債の先物売りをねらいます。先物の売りは、国債をもたな
くても行えるからです。

【8:期待金利と財政の危機】
金融市場の期待金利が上がり、国債が売れにくくなると、国債の発行
難に陥る財政赤字(=資金不足)の政府は、一層の資金不足になって、
デフォルトに向かいます。わが国では、前述のように、債券市場の期
待金利が3%に上がると、政府財政は、数年で破産します。

いや・・・海外の金融機関が、マイナス金利の150兆円の短期国債を、
ほぼ同時に売るので、円の将来の短期金利が「0%→1%→2%」に向
かうと見えたとき、2016年からのマイナス金利の中で高く買われてき
た、10年以内の中短期の、円国債の投げ売りが起こるでしょう。

●市場の期待金利が、日銀の金利誘導が効かず、上がり始めたとき、
政府が破産に向かう期間の猶予は、6か月しかないかも知れません。

大きな円安になって、海外投資家の為替差損が、10兆円(7%)、20
兆円(13%)、30兆円(20%)と拡大していくからです。海外投資家
は、ゼロ%に近い利回りの何十倍にもなる、円安からくる為替差損を、
なりより恐れます。海外の円国債の保有にとって怖いのは、金利より
2%~3%の傾向の円安です。

●国内・世界の金融市場が見るのは、「将来の債務比率」です。現
物・先物の円国債は、世界の市場で、売買されています。海外市場で
は、国内よりはるかに、先物とオプションが多いのです。
 
【8:会計ルールの虚妄】
もうひとつあります。財務省は、金利が上がり国債が下がっても、満
期までもてば損失を出さなくていいという会計ルールにしています。
満期には、政府が額面金額を償還するからという根拠。

しかし約1000兆円の短期・長期の国債の平均満期(Durationという)
は8年と長い(1年120兆円の償還の必要)。財務省が、返済までの期
間を延ばす目的で、発行国債を長期化してきたからです。8年間売ら
ずにもち続ければ、発行額面の100%の償還ということです。

ところが、金融機関の間の、公債の一般店頭売買額は、月間137兆円、
1年では約1600兆円です(19年2月:日本証券業協会)。「売り+買
い」ですから、売りは、1/2の800兆円あたりです。つまり1000兆円の
国債残は、1年に800兆円売られ、平均保有は「1000÷800=1.25年」
でしょう。
http://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/tentoubaibai/index.html

これは8年間も売らない国債は、実際は少ないことを示しています。
ところが、金融機関の有価証券報告書には、保有国債のほとんどが長
期保有とされ、売買目的の国債で必要な、債券市場の時価での評価は
されていません。しかし実際は、平均1.25年で、満期まではもたず、
売られています。(銀行や保険会社に会計偽装があります)

国債の損益は、満期前の売却で実現している、しかし合計1000兆円の
保有国債は時価評価されてはいないことを示します。

今後、内閣府の『試算』が示すように金利が上がると、保有国債に時
価の損が出ます。金利が上がり、国債の流通価格が下がっても、国債
の損はないという財務省の主張は誤りです。

●金利がいま以上には下がらず、わずかずつでも、上がるしかない金
利の国債価格の将来については、いい加減な会計の取り扱いが行われ
ています。マイナス金利とゼロ金利を、日銀がうまく敷いたからこそ、
結果のリスクが、大きくなってきたのです。
 
■3.財政破産は、国の終わりではなく、新たな始まり

政府の財政破産を「国の終わり」のようにいうひとがいますが、それ
は、虚言です。終わりだと考えるから、内閣試算のような、でっち上
げに近い予測がされているのでしょう。無謀な第二次世界大戦の敗戦
に、自らの意思で突き進んだ軍部に似ています。

財政の破産では、敗戦とは違い、国土、建物、会社、産業、住宅、人
間、知識、技術は残ります。政府の支払いが減額され、国債を沢山も
つ銀行や保険会社がつぶれるだけです。

【対策(1)】
銀行預金や生命保険は、どうなるか。財政破産の6か月~1年前から起
こる、円金利上昇の気配(=国債価格下落の兆候)が見えたとき、日
本と米国の同時財政破産のあとも、世界の通貨のなかで価値を保つス
イスフランに交換し、外貨預金として逃がしておけばいい。

【米国も、日本と同時破産する】
財政が破産に向かうと、資金不足に陥った政府は、対外資産である外
貨準備の米国債を売りに出すはずですから、日本の政府債務の2倍は
ある米国の22兆ドル(2400兆円)の国債の金利が上がり(ドル国債の
価格が下がって)、海外に売れなくなるため、1年に1兆ドル(110兆
円/年)以上の資金不足がある米国財政も、同時に破産します。

●米国債のウィークポイントは、対外負債の大きな新興国のように、
約40%を海外がもつことです。米国は、海外の政府と金融機関がもつ
国債約8兆ドルを含み、対外総負債36兆ドル(3960兆円)、対外純負
債10兆ドル(1100兆円)の国です。貿易の赤字のため、この対外純債
務が減ることはなく、対外デフォルトに至るまで増え続けます。

【ユーロはドルと同時に下落】
米ドルとユーロは、相互にもち合っているため、同時に下落すること
が多い。円からユーロに換えても、ドルとおなじように危険です。そ
の点、スイスフランは、世界の財政破産と無縁な通貨です。

円・ドル・ユーロが同時に下落するとき、ひとり上がるのが、ドルと
は違う世界通の金です。

●以上は、仮に日本の財政が破産すると、「世界当時危機になる」こ
とも示しています。

財政破産を終わりではなく、次の時代の経済と制度の始まりと見る、
古典派経済の視点をもつことです。終わりの先は、始まりです。

▼危機は、「令和4年か5年」ころの、新しい時代の始まり

危機は、失うという意味だけではなく、「ギリシア語のKirinein→英
語のCrisis」から来たもので「決定すべきとき」ということです。危
機は、方向を変えて決定すべきときのことです。言語の意味は、国民
の共有の意識(共同幻想)をしめすものです。

1997年に起こったアジア通貨危機のあと、東南アジアと韓国に、成長
の20年が来ました。経済では、金融危機のあと旧世代企業がつぶれて、
世代交代が起こるからです。

リーマン危機(米国発の金融危機)のあと、米国では、GAFA(グーグ
ル、アマゾン、フエイスブック、アップル)の成長が起こっています。

いつの時代も、危機(希臘語Kiriein)は、次の成長の機会です。た
だしGAFAの株価のバブル的な高さは、2000年のドット・コムバブル崩
壊のように、次の、米国の金融危機の引き金を準備するものになるで
しょう。

世界の2000年代は、「金融資産=金融負債」の増加率が、GDP伸び率
よりはるかにおおきくなっているため、大きな、それゆえに世界的な
金融危機が、10年から12年サイクルで襲うようになっています。

40歳以下の年齢階級には、総じて住宅ローン負債があり、それ以上の
預金、つまり純資産はない。このため、財政破産やインフレからの被
害は受けません。

しかし、財政破産あとは、社会保障制度を、根本からの組みなおしが
必然になるので、現在の年金、医療費で損をする50代以下のひとにと
っては、得でしょう。政府の資金不足から、「借りて支払ってきたも
のは、借り入れができなくなると支払えない」となるので、制度の再
編成は強制的です。

●世代間見ると、高齢になったとき、個人の保険金支払いが回収でき
ない社会保障制度が続くことが、若年層を、苦しめています。後述し
ますが、給料から天引きされている年金保険、医療保険、介護保険で
の、50代以下の受益は、可能な生涯預金額を超えるマイナスだからで
す。

■4.財政破産、円安、株価暴落への個人の対策は、容易である

【65歳以上の世帯】
65歳以上の世帯は、財政破産で年金が減額される前に、現在の預金
(高齢世帯の平均は2100万円)で、「金とスイスフラン」を買ってお
けばいいだけの、簡単な対策で十分でしょう。

長短金利が上昇の傾向を見せ、日本の財政破産のまえ、預金が100%
引き出せるとき、日米の財政破産の過程で、いまの数倍には上がる金
に換えることです。価値を保つ金は、信用通貨のドルと円の価値下落
のとき、100%の確率で、高騰するでしょう。

【危機の兆候はある:半年間】
財政破産の過程では、円の長期金利が「1%→2%→3%」と指数曲線
で上がる期間があるので、だれにでも事前にわかります。時間的余裕
は約半年でしょう。

金利が上がるときは、直線ではなく、株価上昇や下落のように、指数
曲線になります。国債の売りが波及し、ネガティブ・フィードバック
の累乗効果より、一層大きな売りを招くからです。

日本政府は、1.2兆ドル(130兆円:外貨準備)の米国債をもっている
ので、財政破産(つまり政府の資金不足)のときは、資金不足になる
政府と官民のファンド、銀行・生保は、対外資産の米国債と米国株を
売りに出します。

これは、「米ドルを支えてきた、日本が米国債を売った」というショ
ックを、世界の金融界と投資家に与えます。

この心理の波及(感情の共鳴)から、世界からの米国債売り(海外保
有は800兆円)が増え、22兆ドル(2400兆円)の国債発行残(累積負
債)をもち、1兆ドル以上の財政赤字を続けている米国政府も、同時
に支払いができなくなって破産に向かうでしょう。

■5.金価格の急騰がある:想定5倍

このときは、金融投資家に「下がるドルの反通貨」との認識が多い金
の買いが急増し(ドル売り/金買いへの殺到)、金価格は、1980年の
暴騰(1オンス200ドル→1000ドル)のように1年でおよそ5倍には高騰
するでしょう。

(注)1980年には、金価格が「1年で5倍」に上がっています。保有者
からの現物の売りはほとんどなく、地金の新規供給(約4300トン:
2018年)と新規需要(4300トン)が均衡している金市場では、1年に
1000トンの急な地金買いがあると、1年で高騰するからです。

1973年の第一次石油危機(本当はドルの価値が1/3に下がった危機だ
った)のとき原油が、1年で3倍、4倍に上がったような、高騰です。
株は、買った人の売りがあるので、こうした急騰の形態はとりません。
上がるときはゆっくりで、大きな下げは速くなります。資源・エネル
ギーや、金と、証券や株は売買の供給のされかたが、根本から違いま
す。

財政破産から、ギリシアのように、国民の年金や年金が仮に半分に下
げられても、高齢者世帯の、1世帯平均2100万円の預金は、金なら1億
円になって20年や30年の、「豊かな」とはいえずとも十分な生活費は
作れるでしょう。豊かさを目指すなら2億円でしょうか。

金は、財政破産のあとの生活を、豊かにして救うでしょう。151兆円
の、国民が所有者である年金基金を運用しているGPIFも、本当は、金
を買っておけばいい。(国民1人当たり150万円の預託です)

しかし残念なことに、財政破産と同時に暴落する、日米の国債と株を
買うだけの短期視野しかもっていません。このため、財政危機の勃発
で同時に50%や40%に向かって、下げる日米株価、価格では70%から
80%に向かって下がる日米の国債とともに、年金基金は、中華鍋の水
のように焼けて沸騰し、蒸発します。

●しかし、政府の財政破産の時は、同時に株価も暴落するので、金と
おなじように、株にも2008年のリーマン危機のあと(株価は50%下
落)よりお大きな、底値買いのチャンスが来ます。

2億円以上の資産を作るコツは、暴落の底値(半値・8掛け・2割引き
の32%も多い)で買うことです。日本の株の時価総額は、一時的には
(約1年間)、600兆円から200兆円付近に下がるかもしれません。皆
が悲観する時こそ、買いのチャンスです。

●1945年の無条件降伏のあと、GHQの支配下で国債がGDPの2倍だった
財政も破産し、空襲で破壊され、焼夷弾で焼け跡になった日本の都市
の地価は、ゼロ近くに下がりました。農地が残り、ひとは食糧をもと
め、疎開地での物々交換が始まっていたのです。

推計2000兆円の金融資産をもつロスチャイルド家も、戦争の後や経済
サイクル的な恐慌のたびに、世界の株と国債を買い占めることにより
資産を増やし続けました。ギリシアの財政破産後(2015年も、ギリシ
アの不動産と株を買うチャンスが、きていした。金融危機は、先を見
る投資家にとってはチャンスです。
 
■6.財政破産後、またはその途中での社会保障制度の組みなおしが、
日本に希望を生む

政府の財政破産は、ここで書いた、簡単にできる対策を準備するひと
たちにとっては、総反発を招くことを承知で言えば、「期待して待っ
ていていい」。財務省と厚労省が困窮すれば、国民にとって、いいこ
とが増えます。

(1)保険料と税金では足りない公的年金の支給(56.7兆円)、(2)
健康保険の医療費(39.2兆円)、(3)そして介護費(10.7兆円:い
ずれも2018年:財務省)まとめれば、
●社会保障費の赤字の33.1兆円と、財政を緊縮しないことが、1年30
兆円から40兆円という国債の新規発行を余儀なくさせ、財政を破産に
向かわせる原因です。

増税では、消費税を25%(税収55兆円)に上げなければバランスはし
ません。これは、現在より17%大きな世帯所得からの負担増を生むた
め、需要・投資を減らし、実質GDP(535兆円:18年11月時点)を数%
は縮小させ、世帯と日本経済を困窮させます。

●消費税込みの物価が今より17%上がると想像してください。世帯の
所得が、17%減ったことと、おなじになるからです。財政を均衡させ
るための消費税の追加の上げは、政治的に実行できません。所得が増
えない中での増税は、需要の減少から恐慌にすら陥るからです。

毎年2%ずつ消費税を上げる案も出ていましたが、これも、8年から9
年続きます。結果はおなじです。つまり財政収支尻は、現在の政治体
制では、均衡に向かわせることはできない。

●このため政府は10年先、15年先、20年先の国債費を引いたプライマ
リーバランス、企業会計の置き換えると借入金利の支払いを抜いた営
業利益とおなじ基礎的財政収支の段階での財政均衡を言っているので
す。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h31chuuchouki1.pdf
(前掲『中長期の経済財政に関する試算』)

これは名目GDP比での普通国債の残高を、およそ1.9倍を上限に保つと
するものです。これにも、物価、金利、名目GDPの偽装の予想による
『試算』が必要です。これが、直近の『試算』です。

●長期金利の2%以上への上昇というリスク要因は、無視されていま
す。リスク要因いれない長期の試算(10年)は、普通は無効ですが、
指摘する人はいません。

前述のように、市場の期待金利が2%から3%に向かう過程で、既発の
国債価格の15%~17%の下落から、財政は破産に向かいます。

財政が破産に向かうとき、あるいは日銀が国債を買い上げても金利が
上がるようになったとき、財政支出は根本からの組み直しを余儀なく
されるでしょう。

●財政破産は、国(世帯+企業+政府)の破産ではなく、増税と通貨
を増発した政府部門(雇用数は340万人の公務員)の倒産です。

中央政府が財政破産にならず、じりじりとした増税と、50代以下の社
会保障の超過負担が続くことが、次世代の日本国民の希望をなくして
います。

30代、20代に訊ねると、全員が「私たちの年金はない」と答えます。
希望のないものを、所得の約20%天引きされているのです。自分に置
き換えてみないと、この理不尽さは理解できない。国民の総負担でみ
た、「税金(26.5%)+社会保障負担(57.9%)」は、合計で所得の
44.4%に上がっています。

■7.50代以下の、国債と社会保障負担のおおきさ
 
【60歳以上】60歳以上の世代は、現行制度から受益があります(年金
+医療費+介護費)。支払った保険以上に受取額が多い。つまり60歳
以上の世帯は、およそ60歳以下の世帯から所得移転を受けています。

【50代】逆に、50代は生涯所得(700万円×30年:想定2.1億円)の約
5%の、1000万円の負担超過です。年金・医療・介護保険で支払う金
額が、給付より1000万円多い。

【40代から20代】40代では8%の1600万円、30代なら11%の2300万円、
20代では生涯所得の13%の2700万円、希望にあふれるべき20歳代未満
の世代は、生涯所得の13%にあたる2700万円の負担の超過です。夫婦
2人なら2倍です。(内閣府2012年試算)。

▼将来の希望がもてず、子供を産まない原因

60歳以下の国民の多くが、未来の日本に希望をもてない根底の原因は、
現在と、将来の社会保障の、純負担のおおきさからです。貯蓄が少な
い30代の夫婦で、4600万円の生涯負担の超過はいかにもひどい。平均
で1.5人の子供しか生まない理由もこれです。

●30代以下には、まるで見返りのない社会保障制度が、少子高齢化と
人口減の原因になっています。「保育園に落ちた、日本死ね!」とい
うSNSが心の叫びがこれです。

世代間の所得分配の、大きな変更になる社会保障制度の改革は、政治
的には、実行できません。約6000万人の受益者の、過半からの反対に
より政権が倒れるからです。

政府財政の赤字の原因は、1990年代は、公共事業400兆円でした(10
年間)。2000年以降の19年は、60歳以上が、年金と医療費の必要費と
して受益する社会保障費です。

■8.敗戦国と戦勝国で、逆になった明暗

古典派的な経済の原理が働き、財政の危機によって、制度の組みなお
しが強制されるのが、財政破産です。経済は、数十年の長期スパンで
みると、自律的な調整機能を備えています。

過去は、戦争と金融危機のサイクルで、財政が実質的に破産していま
した。しかし、そのあと、1945年8月の、第二次世界大戦の敗戦のあ
とには、GHQ(米国の占領軍)による、財閥解体と農地解放で、旧世
代の既得権益グループが消えています。

新しい世代には希望のある国になったので、20代、30代の世帯が子供
を3人から4人産み、おなじ敗戦国のドイツと並び、奇跡の成長をして
います。

将来への希望は、投資の呼び水です。住宅を買うのも、店舗を増やし、
工場を大きく、高くて高性能な機械設備を導入するのも希望からです
(経済学では、リスクまでを考慮した期待をプロスペクトといいま
す)。

■9.財政破産しない日本の先行(さきゆき)は、英国である

日本と反対に、連合国として戦争に勝った英国は、
(1)「揺りかごから墓場まで」といわれた社会保障負担の重さが続
き、
(2)加えて戦費を含んだGDPの2倍の国債負担から、英国病と言われ
た40年間の低成長とインフレ、ポンドの恒常的下落になっています。

戦費に使われた国債を、円を100分の1にした日本の300倍の戦後イン
フレのようには、英国政府が帳消しにしなかったからです。これは、
エリート階級であり、政治にも近い銀行に、破産させないことが目的
でした。英国は、いまも階級社会です。

財政破産を防ぐために、GDPの200%の、国債の金利を上げない政策を
とり、イングランド銀行は「金融抑圧」といわれる低金利策を続けま
した。低金利と高いインフレのため、英ポンドは、戦後の1000円から、
現在の146円へと、下落を続けています。矛盾は通貨安に出たのでし
た。低金利策は、英国にはいまの日本同様、経済の実質成長はもたら
さず、ポンドが7分に1に下げるだけでした。

戦前は世界1だった英国人の所得と、米国に次いでいたGDPは、、戦前
にくらべると7分の1に縮んでいます。

政府・日銀の、なんとしても、財政危機と破産を避けようとすること
に、円安策を含んで、ほぼ全部の政策を従属させている異次元緩和の
行き着く先は、戦後の英国でしょう。

「令和」の20年や30年が、戦後の英国くらいならいいと思うひとも多
いかもしれませんが、いかがでしょう。戦後の英国は没落国でした。
これが、何をしようとしているのか不明な、EU離脱の紛糾に現れてい
ます。

英国は、GDPが2.6兆ドル(286兆円:1人あたりGDP433万円)、世界経
済8000兆円でのGDPシェアは3.6%です。日本はGDP535兆円(2018年:
1人あたりGDP426万円)、世界でのシェアは6.7%です。29年前の
1990年は15%でした。

日・英も含む世界経済は、2024年ころから5GとAIで、1人あたり生産
性の成長期にはいりますが、英国並みになることの意味は、日本が成
長しても、GDP(≒国民所得)での世界シェアは、英国並みに下がる
ことです。

1年に60万人の生産年齢人口(15歳から65歳)の減少は、現役世代の
1人当たりの所得は増やします。しかしGDP全体の伸びは下げます
(GDP=1人当たりGDP生産性×労働人口)。

成長の原動力である設備投資は、希望から生まれます。英国では、
(1)国債償還の戦後負担、(2)インフレ、(3)ポンド下落、(4)
社会保障負担の4要素が、国民の希望を奪っていたのです。

これからの日本は、マクロ経済原理からの、政府破産でしょう。その
中で、50代以下の6156万人にとって、日本の希望を作るきっかけが政
府の財政破産です。政府財政は30兆円から40兆円の赤字続きで、国債
は増え続けますから、借り入れが、年々大きくなった企業の破産とお
なじです。

■10.政府・日銀の二つの選択肢:今後3年で決まる

政府の負債をGDPの2.4倍にしてしまい、今後も、負債が増え続ける日
本は、今後の3年で、二つの選択肢のいずれかを選ぶことを迫られる
でしょう。

(選択肢1)日銀が、金利を、名目GDPの増加率(1%~2%程度)より
低い0%台に抑える「金融抑圧」を続けることができ、戦後GDPの2倍
の政府負債に対し金融抑圧を続け、40年の英国病にかかった英国への
道。

(選択肢2)日銀が、出口政策をとることを余儀なくされ、市場の期
待金利が3%に向かって上がり、国債価格が下落することからの財政
のデフォルト。2つ道しかない。

政府の累積赤字が、名目GDPに対して減らない限り(負債比率=政府
負債÷名目GDPの低下)、日銀がいくら国債の買いを続けても、いず
れ、通貨の価値の下落つまり円の価値信用の低下が起こって、世界の
金融投資家からは円が売られ、大きくなった財政が破産に向かう未来
は確定しています。通貨先物は、その通貨をもたなくても先物(指数
の証券)をことができます。

■11.金融が連結している日米は、同時破産になるから、ドル建て対
外資産は活用できない

対外総資産(1012兆円)を外貨建てでもつ日本の、対外純資産(328
兆円:財務省)が、一時的な円安の効果で大きくなっても、政府財政
の、破産の危機のときは、ドル建ての債券をもつ政府と金融機関が、
その売りを迫られるため、しばらくすれば、大きなドル安が進行し、
日米同時に、政府が破産します。

日本の財政破産は、対外純負債が9兆ドル(990兆円)の米国のデフォ
ルトになるからです。日本は、対外純資産が328兆円あるから財政は
破産しないという論は、日本のドルへの深いコミットのため、日米同
時破産になることを、無視したものです。

以下は有料版の申し込みサイトです。毎週、水曜日の夜、送っていま
す。
         https://www.mag2.com/m/P0000018.html
有料版のバックナンバー(以下に過去の全部があります↓)
        https://www.mag2.com/archives/P0000018/

【後記】
この国に希望をもたらすには、財政破産させなければならないという
逆説に、驚かれたでしょう。しかし、財政赤字をもたらし続ける国の、
制度の不適合は、現状が続けば、50年先までは続きます。その時は、
戦後英国の没落です。

社会保障制度の、抜本的な再編成は、戦争での敗戦か、財政破産がな
いと、政治的には実行できません。このため、わが国にとっては、財
政破産が新しい希望への転換点になるでしょう。「令和」の時代が、
4年はお互いに冷える和で、5年目からは令和に万葉人がこめた意味に
なるでしょう。

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