仮想通貨の4つのセキュリティ
This is my site Written by admin on 2018年1月31日 – 09:00
おはようございます。仮想通貨を売買する取引所であるコインチッ
ク(取引額で国内2位)が、NEMと呼ばれる仮想通貨を、当時の時価
で580億円盗まれるという事件が起こっています。世界の銀行強盗
史上で、最大の被害額でしょう。

【盗まれたマネーのイメージ】
1万円札なら約10キログラムで1億円です。580億円は、5800キログ
ラム(5.8トン)であり、大型トラック一台分に相当するでしょう。
銀行にはもともと多額の現金は置いてないので、盗むことができな
い。銀行のマネーは、預金台帳の数字をコンピュータで記録したも
のだからです。

どうやって、巨額のお金を20分で盗めるのか。これを知るには、デ
ジタルマネーである仮想通貨の仕組みを知る必要があります。

銀行預金も電子データとして「仮想化(電子化)」されていますが、
侵入ができない「専用回線」と二重三重のセキュリティに守られて
います。セキュリティとは「専用のパスワードと個人認証の鍵」を
もつ人しか、アクセスできないということです。

内部の犯行でない限り、銀行預金の盗用は難しい。ATMで自分の預
金口座(アカウントともいう)にアクセスするときも、銀行カード
(認証の個人コードがはいっている)と個人が決めたパスワードが
必要です。両方が盗まれれば、話は別です。

一回に引き出せる金額は、
・ICチップの銀行カードで100万円、
・本人しか引き出せない生体認証で1000万円までです。

「盗まれた」と銀行に電話すれば、口座は閉鎖されます。大規模な
強盗はできません。振り込め詐欺のような、窃盗的なものにしかな
らない。武装した銀行強盗という過去の犯罪は、なくなったのです。

【オープンな回線上の仮想通貨】
一方、仮想通貨では、誰でも使えるオープンなインターネット上に、
マネーの台帳が存在しています。

これをブロック・チェーンと言っています。
仮想通貨では、セキュリティの完備した銀行はない。
取引所があるだけです。

【仮想通貨はどこにあるのか?】
「仮想通貨を盗む」とは、一体どういうことか。
1万円札のような、仮想通貨という通貨があるわけでない。

仮想通貨の実体は、
・インターネット上の、多くの「サーバー(コンピュータ)」に、
・おなじブロック・チェーンが、分散して記録されている電子台帳
です。

整合性をとった台帳がたくさんあるので、事実上、偽造がされない。
これが「分散台帳」です。

【分散台帳】
同じ記録の帳簿が、たとえば、地理が離れた世界中の100人のサー
バーにもたれていれば、この100冊の記録を一度で(システムでは
10分間以内に終わらねばならない)、同じように書き換える偽造は、
できないでしょう。

ここが分散台に記録された、偽造できないブロック・チェーンの発
明の根幹です。

仮想通貨の分散台帳を、インターネット上のサーバーの全部から盗
むことは不可能です。全部を盗まないと、台帳に不整合が生じるた
め、使うときあるいは送金するとき、「真正のもの」とは認証され
ないマネーになります。

仮想通貨の台帳を部分的に盗んでも、使うとき認証されない仮想通
貨になるので、店舗で使えないクレジット・カードと同じであり、
1円の価値もない暗号になってしまいます。

盗むことが不可能に設計された分散台帳の仮想通貨を、どうやって
盗むのかというが、最初の疑問でしょう。

本稿は、1か月途絶えていた無料版としても送ります。
ご了解いただけるよう、お願いします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <925号:仮想通貨の4つのセキュリティを調べる>
             2018年1月31日:無料版

【目次】

1.仮想通貨の仕組みと秘密鍵
2.ブロック・チェーンの中身
3.秘密鍵を預けていた個人
4.仮想通貨のイメージは、ヤップ島の巨石通貨
5.個人にも共通する、取引所のセキュリティ対策の4項

【後記:2018年は政府の仮想通貨元年】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.仮想通貨の仕組みと秘密鍵

▼ブロック・チェーンとは

仮想通貨の電子台帳には、「取引の記録が、数珠の球のようになっ
て、つながったブロック・チェーン」が記録されています。

送金すると、そのブロック・チェーンに、秘密鍵により、新しい取
引記録が、末尾につながれて行きます。数珠の球がブロック、つな
ぐ紐(ひも)のチェーンが秘密鍵です。

ブロック・チェーン(その仮想通貨の全部の取引の記録)は、同じ
ものが、世界中の多数の分散サーバー上にあります。これは盗めま
せん。推計、数十万台以上です。100万台かもしれません。

【盗まれるのは秘密鍵】
じゃ何を盗むのか。既存のブロック・チェーンに、新しい取引者の
アドレス(つまりブロック)をつなぐとき必要になる「秘密鍵」で
す。この秘密鍵だけが、取引所や個人から、盗まれるのです。

実は、仮想通貨をもつ人の、スマホのウォレット(専用の財布)に
は、〔[QRコードの公開鍵〕-〔内部データの秘密鍵〕〕しか入っ
ていません。マネーそのものは入っていず、鍵(暗号)だけです。

イメージで言えば、以下の2つの鍵です。

【第一の鍵】Aさんが、Bさんのスマホに、アドレスも示す公開鍵を
見せて金庫の第一のフタを開く(これが、送金や支払いという行為
です)。この公開鍵は、秘密鍵から自動生成されたものです。

【第二の鍵】そうすると内部では、公開鍵と一対(いっつい)にな
っている、秘密鍵が回線で送られる。

その秘密鍵が、その仮想通貨の、分散台帳にあるブロック・チェー
ンに、『〔Aさんのアドレス〕→〔Bさんのアドレス〕』と書き込む
ときの鍵になるのです。

唯一無二の、この秘密鍵がないと、元のブロック・チェーンに新し
いブロックをつなぐことができないように設計されています。新し
いブロックがつながれないと、不正なクレジットカーのように、そ
の送金や支払いが無効になります。無効になれば、支払いは行われ
ません。

■2.ブロック・チェーンの中身

ブロック・チェーンは、<〔ブロック1〕-〔秘密鍵1〕-〔ブロック
2〕-〔秘密鍵2〕-〔ブロック3〕-〔秘密鍵3〕-〔ブロック4〕-〔秘
密鍵4〕・・・>という取引記録の、数珠つなぎになっているもの
です。ブロックには取引者のアドレスが入っています。

唯一無二の秘密鍵がないと、古いブロック・チェーンに「新しい取
引者の両方のアドレス(=新ブロック)」をつなぐことはできませ
ん。

秘密鍵が合わないと〔取引は無効〕になって、マネーの移動が起こ
りません。台帳に、何の変化も書き込まれないからです。預金台帳
にマイナスを書き込むのが、送金です。書き込まれないと、送金は
ない。したがって支払いもない。このため、盗まれることもない。

▼取引所をハッキング

ハッカーは、国内2位の取引所のコインチェックを信用し、個人か
ら預けられていた秘密鍵のデータをハッキングし、約4億個も盗ん
だのです。

それが1月26日の時価の115円で、580億円です。1月31日の今日は、
80円に下がっていますから、403億円でしょう。

【秘密鍵と公開鍵】
目に見える公開鍵を1:1で生成している秘密鍵は、以下のようなイ
メージの暗号です。これは、仮の記号であり仮想通貨にはなりませ
んので念のために・・・この秘密鍵の、意味不明な暗号を総当たり
で解くのは、不可能とわかるでしょう。
〔9F86D081884C7D659A
                A0C55AD015A3BF4F1B2B0B822CD15D6C15B0F00A0〕

秘密鍵の種類は〔2の256乗〕と設計されています。地球上の原子の
数を、一個ずつ数えたのものより多い。まぁ、ものすごい、無限と
言っていい数(かず)です。

秘密鍵に該当する公開鍵は、以下のイメージです。
19eA3hUfKRt7aZymavdQFXg5EZ6KCVKxr8
このままでは送金しにくいので、QR形式の二次元コードで表示され
ます。この二次元コードで照合して相手のアドレスに送金するので
す。(@tanapro氏)

【認証時間】
仮想通貨のビットコインを使うときの認証には、最短で10分かかり
ます。同じ仮想通貨のNEMは、認証方法を工夫し、1分と短い。店頭
で、苦痛にならない待ち時間です。
このためもあって、日本人に人気が高かった。

日本人は、114億円くらいのビットコインが盗まれたマウント・ゴ
ックスの事件(2014年3月)があっても、取引所を信頼する癖があ
ります。このため、特に日本で、毎回、盗まれる被害額が大きくな
っているのです。

▼返還を約束したコインチェック

取引所のコインチェックは、時価換算で460億円くらいを円で返還
するという。過去に、いろんな仮想通貨を安く買って、それが上が
っている含み利益が1000億円以上はあるからです。経営者層個人も
恐らく儲けています。どうせ「あぶくの金」。無くなっても、さほ
ど惜しくはない心理でしょうか。

盗難後のNEMの価格も、30%くらいしか下がっていません。仮想通
貨全体も、NEM事件ではそんなに下がっていないのです。最大手の
ビットコインは、1月26日が125万円くらい、1月31日は108万円14%
の下落です。むしろ、米ドルと米国株の下落の影響が大きい。

取引所は、「仮想通貨の秘密鍵」を売買する店舗です。
秘密鍵を預ける銀行ではない。

■3.秘密鍵を預けていた個人

多くの人が銀行と思い「自分の秘密鍵」を預けています。

スマホの「ウォレット(財布)」に、時価が数百万円以上に上がっ
た仮想通の秘密鍵を入れておくと、壊れること、なくすことが不安
になるからでしょう。不安はわからないことはない。NEMは昨年、
175倍にあがっています。17年の年初のまだ安いときに5万円分を買
っていれば、875万円になっていたからです。今は30%下がってい
ますが、それでも、600万円です。

スマホの財布の中にはブロック・チェーンはありません。ブロック
チェーン(これが仮想通貨)につなぐための、秘密鍵があるだけで
す。秘密鍵と1:1の公開鍵は、その秘密鍵を誰かに送るときに必要
な、財布のアドレスにあたるものです。

取引所にも、ブロック・チェーンはありません。
販売用の在庫の、あるいは預かった秘密鍵があるだけです。
ブロック・チェーンは、インターネット上の、多くのサーバーのデ
ィスク上に記録されたデータだからです。

秘密鍵は銀行カードとパスワードに当たるものです。取引所にこの
銀行カードとパスワードを預けていて、それが4億個も束になって
ハッカーに盗まれたのが、コインチェックの事件です。

▼盗まれたのは、個人の仮想通貨の秘密鍵

取引所には、
(1)売るために仕入れていた仮想通貨(秘密鍵)の在庫、
(2)個人から預かった仮想通貨(秘密鍵)が、
 合計で、数千億円もあったという。

取引所のパスワードをハッキングして、預けた人に「なりすまし」、
秘密鍵のマスターキーを得れば、ごく短時間で他の口座(カウン
ト)に、送金ができます。

コインチェックからは20分で、580億円分のNEM(仮想通貨名)が不
正送金されたという。(注)NEMの通貨単位の呼称はXEM。

財布であれ、金庫であれ、ウォレットの中にある秘密鍵(プライ
ベートキーとも言う)は、「個人の実印や銀行カードとパスワー
ド」にあたるものです。

これがあると、自由に送金できます。仮想通貨そのものとも言って
いいのが、この「秘密鍵」です。

普通は、財布のアプリの中にはいっていて、表示されません。
スマホの画面に、二次元のQRコードとして表示されるのは「アドレ
スを示す公開鍵」です。

▼公開鍵と秘密鍵は一対のもの

公開鍵は、仮想通貨の秘密鍵から、ある暗号のロジック(楕円曲線
DSA)で、自動生成されるものです。

「秘密鍵→(不可逆的な暗号ロジック)→公開鍵(QRコード)」で
す。公開鍵と秘密鍵は、1:1のものです。

公開鍵から逆向きに秘密鍵を作ることは、不可能です。可逆的な計
算式がないので、超スーパーコンピュータで、「総当たり」で解く
しか方法はない。一つ解くのに、昼夜動かし続けて、数千年かかり
ます。数千日ではない。数千年です。

最高で10億倍の計算速度をもつとされる「量子コンピュータ」なら
可能でしょう。しかしこれはまだ、個人の実用の領域ではない。

さっき計算すると、1年=約3153万秒でした。1億秒が3年です。10
億秒は30年。最高速のコンピュータを動かし続けて、30年もかかる
計算を、量子コンピュータは1秒で行うことになります。1000年分
の計算が、量子コンピュータでは33秒で終わるからです。

このように、仮想通貨のブロック・チェーンそのもののセキュリテ
ィは、きわめて高い。

しかし、仮想通貨を預かっていたコインチェックの、
・秘密鍵を預かっていた財布(=金庫)のセキュリティが、
・個人の財布のように、脆弱(ぜいじゃく)でした。

どんなことだったのか。本稿で見て行きます。

■4.仮想通貨のイメージは、ヤップ島の巨石通貨

【巨石の通貨】
太平洋の南のミクロネシアに、ヤップという島があります。数トン
の動かせない石灰石の巨石を、通貨とする文化をもっていました。
マネタリストの元祖、ミルトン・フリードマンが書いています
(『貨幣の悪戯』)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/石貨_(ヤップ島)

見事な形の重い石灰石(約5トン)は動かせず、大切に、村の一定
の場所に置かれている。これが、台帳のブロック・チェーンの集ま
りに相当するマネーです。

【所有権の移動】
巨石には、移動してきた所有者の名前(所有権)の台帳がある。動
かせない不動産の「権利証」です。この権利証への、名前の追加が、
お金を支払った証です。秘密鍵で帳簿を開いて書き込まれた「新た
な所有者」のアドレスに相当します。

自分の財布に秘密鍵もつ所有者しか、権利者の書き換えはできない。
ところが、多くの所有者が、秘密鍵を取引所に預けていた。

【所有権の移動を書き込むとき必要な秘密鍵】
取引所の金庫のダイアルキー(数字)を、
・総当たりのハッキングで開けて、
・他のことに気をとられていた番人に気づかれることなく、秘密鍵
を盗むことが、
・仮想通貨を盗むことになるでしょう。

【IPアドレスはわかるが・・・】
その仮想通貨が、「送られたIPアドレス(インターネット上のメー
ルの住所)」は、ネム財団によるブロック・チェーンの調査で、す
でに分かっている。ただし、それはアドレスの数字であり、誰かは
分かっていない。

電子メールのアドレスからは、発信者が世界のどこに住む誰か、わ
からないのと同じです。ただし、メールアドレスを管理しているイ
ンターネットプロバイダでは分かります。

仮想通貨のでは、取引所へのID登録です。
海外では、これはまだないことがこと多い。

【日本の取引所で買った通貨では、個人IDがわかる】
日本では、2017年4月から、仮想通貨を公式にマネーと認めた「改
正資金決済法」で、仮想通貨の取引所では、ユーザーのID登録(顔
写真入り)の登録が、義務づけられています。

パスポートや運転免許証のコピーを送って、あらかじめID登録をし
ておかないと、仮想通貨を買えません。このため、日本では、17年
4月以降に買った人は、その仮想通貨の、送金と売買の履歴をたど
ることはできます。

国税の調査で、20万円以上の利益が出ていれば、5%~45%の雑所
得課税になるかもしれません。もっているだけでは、上がった株と
同じように課税はありません。送金したとき、使ったとき、換金し
たとき、別の仮想通貨と交換したときの課税です。

IPアドレスは、電子メールのアドレスと同じものです。中身は数字
であり、「123:123:123:123」のような12桁(10の12乗)です。
現在のIPV6では16桁に拡大されています。ただしネム財団は、これ
が「どこの誰か」まだ、究明してはいません。究明できないかもし
れません。

しかしそれが使われたとき、さらに送金されたときは、秘密鍵と一
緒に送信されるアドレスが、管理しているネム財団にはわかるので、
瞬間に、無効にできるかもしれません。無効になれば、盗まれた仮
想通貨は、海に消えたことと同じになります。

【取引者のアドレスがわからない仮想通貨もある】
仮想通貨の中には、モネロ(時価総額5200億円:1単位3.2万円:1
月30日)のように、ブロック・チェーン内の取引者のアドレスが、
トランプを切るように自動シャッフルされ、痕跡をたどることがで
きないものもあります。

北朝鮮が、金正恩委員長の資金集めとして関与しているという噂が
あります。コインチェックは、モネロ(MONERO)の販売もしていま
す。大久名ビットコインで、買われています。
https://www.coingecko.com/ja/相場チャート/monero/jpy

同じ仮想通貨のビットコインで、モネロを買い、モネロで送金や支
払いを行えば、「マネーロングや脱税」をしても、アドレスを根拠
にしただけでは当局に分かりません。

なお、ビットコイン、イーサリアム、ネム、リップルでは取引履歴
が、あとの調査でわかります。と言って、モネロを奨めているわけ
ではありませんので、念のために申し添えます。

■5.個人にも共通する、取引所のセキュリティ対策の4項

わが国の取引所では、改正資金決済法以来、以下の4項の取引所の
セキュリティを推奨しています。

ひとつひとつがもっともなもので、個人のセキュリティ対策もこの
4項でしょう。

▼(1)取引所での顧客資産の分別管理

取引所の仮想通貨と、顧客の分は、別のシステムとディスクに管理
することです。この規制の意味は、わかりやすいでしょう。窓口に
おかないで、開くのに、内部のパスワードが必要な金庫に入れると
いうことです。

仮想通貨を入れるソフトである、スマホの中のホットウォレットと、
回線から切り離したコールドウォレットによる、セキュリティは基
本です。

▼(2)ウォレット(財布アプリ)や口座の二段階認証 

ひとつのパスワードだけでのウォレット(仮想通貨を入れる電子財
布)の認証でなく、
・ユーザーがウォレットや口座にアクセするたびに、
・その人の携帯電話に届くSMS(ショートメールメッセージ)の
トークン(暗証番号)として、
・その都度変わる4桁や6桁のワンタイム・パスワードの入力が必要
になるものです。

そのパスワードは認証コードとも言います。

 ユーザーが、アプリを無料でダウンロードして設定することがで
きる二段階認証で、二重になるパスワードによって、ハッキングさ
れる被害は、飛躍的に減らすことができます。

二段階認証にしておくと、ひとつのパスワードをハッキングされて
も、ハッカーはアクセスができません。携帯財布の鍵を開けると、
その先にも、開けた都度、メールで送られてくる変化するパスワー
ドの鍵があるようなイメージです。

▼(3)コールドウォレット(回線から切った財布)

仮想通貨を保存するウォレット(電子財布)の入ったディスクを、他
の専用線やインターネットの、オープンな回線から物理的切って、
保管することです。

これを行うと、外部からはハッキングできません。ただし、銀行で
時々起こっているような、内部関係者からの不正は、預けたコール
ドウォレットに対しても可能です。

コイチェックからの580億円分の流出では、取引所のシステムの外
部回線につないだディスク内のウォレット(財布のアプリ)に、顧客
から預かった仮想通貨のNEM(ネム)を数百億円分も保管するとい
うミスを犯していたようです。

回線につないだディスク内のウォレットは、ホットウォレット(回
線につないだ財布)と呼ばれます。このホットは、回線につなぐと
光が出る電球のイメージからでしょう。

個人も、コールドウォレット(回線から切った財布)になるUSB型の
メモリ(ハードウェアウォレット)に保管していれば、ハッキング
される被害は、防ぐことができます。

しかしそのウォレットを紛失すれば、財布をなくすこと、または盗
難と同じです。火災や津波でも、電子回路の携帯のようにデータは
消失します。

そのメーカーの公式サイトで、ハードウェアウォレット(財布のメ
モリ)として、1万円から1万7500円でLeager、Trezor、Keeplyなど
が販売されています。他人からもらったものには、危険が潜んでい
ることがないとは言えません。

自分が開くときも、その財布に設定したパスフレーズ、つまり、
24単語くらいからなる自分だけが決めた「秘密の文章」と、その
ハードウォレットの専用のPINコードが必要です。

意味のある文字列の、長いパスワードがパスフレーズです。
Masaki and Harumi were adopted by Yoshida family in 
Nagasaki in 1952(続く)・・・などの自分だけが知っていて、忘
れない文章です。家人は知っていますが・・・。 

それらを忘れると、どんな方法をとっても、永久に、開くことがで
きなくなり、仮想通貨がなくなったことになるので、コンピュータ
の中ではなく、紙に書いて保管します。

自分の仮想通貨の秘密鍵とパスフレーズは、他人に漏らしてはなり
ません。秘密鍵は、仮想通貨を動かすものです。パスフレーズと
PINナンバーがその秘密鍵を開くパスワードです。多少面倒ですが、
これで万全になります。

コールドウォレットと一緒にパスフレーズとPINナンバーを盗まれ
ると、不正に送金することができるからです。仮想通貨は、ウォレ
ット(仮想通貨の財布)から送金すれば、送金した仮想通貨は、支払
った1万円札のように永久に消えます。

不正な送金、または間違えた送金であっても、取り戻すには、送ら
れた相手から送金を受けるしか方法はありません。メールの送信で
は、送ったメールが残りますが、お金は送金したものを残すことは
できないからです。

1か月で使う分だけ(数十万円~数万円)を、スマホの財布に入れ
ておきます。

▼(4)マルチシグネチャー・ウォレット
               (マルチシグ:複数の署名が必要な財布)

 一つのアドレスに対して、複数のパスワードが割り当てられてい
るウォレットです。仮想通貨の送金や移動には,複数のパスワード
が必要になります。

ひとつのパスワードの財布よりもセキュリティが、はるかに高くな
ります。一般的な技術であり日本の取引所でも多くが導入していま
す。短縮してマルチシグ(multisig)と言います。マルチシグネチ
ャー(複数署名)の短縮形です。

シグネチャーは署名であり、日本文化での、花押や実印と同じです。
これがパスワードです。自分と上司の印鑑の両方が、同時に必要に
なるのが、マルチシグの仕組みです。仮想通貨の公開鍵と秘密鍵も、
一対になった印鑑と考えると、署名文化がなかった日本人には理解
しやすいでしょう。

マルチシグにしていなかったコインチェックは、担当の印鑑がハッ
カーに盗まれただけで、1月26日のたった20分間で、580億円(5億
2630万XEM:XEMはNEMの通貨名)を盗まれたのです。担当と上司の
実印が同時に必要としておけば、防止できたことです

ただし、日本の取引所のコインチェック株式会社には、多種の仮想
通貨を10円や100円と安い時期に買っていた人たちが多数いるため
(推計)、いとも簡単に「26万人に対しNEMの損害の時価460億円を
全額、円で補償する」と発表しています。

ただしこのときは仮想通貨が円に変換されるので、「円の返還額-
買った価格」の利益が確定したことになります。利益が20万円以上
なら、雑所得として5%から45%からそれぞれの控除額を引いた分
が課税対象になります。

盗まれたNEMで1000万円の利益なら、「1000万円×税率33%-控除
額154万円=176万円」の税金を3月の確定申告で納めることになり
ます。クレームを言う人が出るでしょうか。

 NEMのブロック・チェーンの履歴を盗まれる前に戻し、盗用通貨を
無効にするハードフォークという方法はあります。しかしその後、
盗用された通貨を正当な商取引として受け取った世界の人びとの賛
同を得なければならないので、ハードフォーク(Hard Fork)は難し
いでしょう。

ハッカーなら抜け目なく数時間で、別の仮想通貨を買っているはず
です。ただし盗用されたNEMは円、ドルなど法定通貨に変換される
ときは、取引所のIDから個人名がわかることもあります。

NEMを発行しているNEM財団は、仮想通貨の信頼を傷つける史上最大
のハッキングに対し、送られたアドレスはわかっているから(ただ
しそのアドレスから個人の特定は困難)、盗まれたコインを特定し
て、数時間内のハードフォークによって無効にするとしています。

結果はどうなるか、今日の時点では、まだわかりません。成功すれ
ば、NEMと仮想通貨全体への信頼性は高まるでしょう。

以上の4つのセキュリティが完全なら、外部からのハッキングは、
防ぐことができますが。銀行内の不正と同じように、取引所システ
ムやユーザーを管理している内部の担当による盗難は、防ぐことは
難しい。

個人が万全を期すなら、自宅の金庫のように、自分のハードウェア
ウォレットに保管しておき、若干面倒ですが1か月で使う分、また
は送金する予定の分だけを携帯に入れることです。PCでのハッキン
グ対策と同じです。

【後記:2018年は政府の仮想通貨元年】
本稿では書ききれませんでしたが、2018年は、政府系仮想通貨の元
年になります。政府が、仮想通貨の使用を規制するどころではない。

政府そのものが、仮想通貨を発行する時代なっていくことが、様々
な状況証拠から、確定したと思っています。(注)確定です。予想
ではありません。

2018年の最初は、エストニア(エスとコイン)、次にスウェーデン
(e-クローナ)、ウルグアイ、そして大国ではロシアです。

米国は、FEDコインです。日銀も実験を行っています。実験と研究
では、人民元の偽札が多く、電子マネーの普及度が高い中国です。
大国が、政府系仮想通貨を発行する年度は、まだ、わかりませんが、
2022年を超えることはないでしょう。もうすぐですね。

経済大国系の仮想通貨は、現在の通貨と交換レートを固定したもの
になるでしょう。エストニアのような、タックヘイブンの小国系も
のは、株の発行のように、お金を集めることができるIPOになる可
能性が高いでしょう。

時代の展開は、ますます加速しています。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ビジネス知識源:感想は自由な内容で。
                                     以下は、項目の目処です
】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択
と内容記述の際、より的確に書くための参考になります。

気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考になり、う
れしく、読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないとき
も、全部読みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努め
ます。
【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】
yoshida@cool-knowledge.com
購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール
→ reader_yuryo@mag2.com

■1. 新規登録は、最初、無料お試しセットです(1か月分):月中
のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、その全部を読むことが
できます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセットです。その後の
解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目分から、課金されます。
(1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めた後、
(2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、
(3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      <914号:中央銀行は、国民のためには必要がない(1)>
                2017年11月29日

【目次】

1.本稿のテーマは「中央銀行は必要か」です
2. 信用創造Credit Creation
3. 信用創造の本家は、中央銀行ではなく、一般銀行
4. 財政赤字が増えた根本は、官僚権益の拡大だった
5. 銀行の発祥
6. 繁栄と恐慌のサイクルが利益のもとになった

【後記】

       <915号:中央銀行は、国民のためには必要がない(2)>
                2017年12月06日:有料版
【目次】
1.政府・日銀が敷いたゼロ金利の、国民にとっての意味
2.1998年から、預金金利はほぼ0%を続けている
3.日銀はどんな目的で設立され、政府は何に使ったか
4.日露戦争では賠償金がなく、政府は国債の償還ができなかった
5.第二次世界大戦のときの日本

【後記】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【↓会員登録と解除の、方法の説明】
http://www.mag2.com/howtouse.html#regist
登録または解除は、ご自分でお願いします。
(有料版↓)
http://www.mag2.com/m/P0000018.html

(無料版↓)
http://www.mag2.com/m/0000048497.html

■2.解約していないのに、月初めから、有料版メール・マガジンが
来なくなったとき(このメールが当方によく来ます)。主な原因は
 2つです。

▼原因1:登録しているクレジット・カードの有効期限(期間は数
年)や登録が切れてないか、調べてください。

もっとも多いほとんどの原因は、クレジット・カードの期限切れで
す。お手間をかけかけますが、「新しい有効期限とカード番号」を
再登録してください。月初めに送った分の再送を含み、再び届くよ
うになります。

以下のページの「マイページ・ログイン」から、メールアドレスと
パスワードでログインし、出てきた画面で、新しい期限と番号を再
登録します。
↓
https://mypage.mag2.com/Welcome.do
特にクレジット・カードに関する問い合わせがあれば、ここで。
→      https://contact.mag2.com/creditcard

▼原因2:メールソフトが、頻繁に自動更新されているため、時折、
メール・マガジンが不特定多数への「迷惑メール」とされることが
あります。
↓
該当のメールにカーソルをあてて右クリックし、出てきた迷惑メー
ルの項で、「送信者を、差し出し人セーフリストに追加」すれば、
元に戻ります。

■3.メールアドレスの変更

有料版を送信するメールアドレスの変更のときも、おなじ『マイ
ページ・ログイン』から入って、変更します。

『マイページ ログイン』の画面を開き、登録していた旧アドレス
とパスワードでログインして、出てきたマイページでメールアドレ
スやパスワード、そしてクレジット・カードも新しいものに変更で
きる仕組みです。
(マイページ・ログイン↓)
https://mypage.mag2.com/Welcome.do
  
↓または、特にクレジットカートに関しては、以下のページです。
https://contact.mag2.com/creditcard

■4.(↓)購読などに関する問い合わせ窓口の一覧(メールで対
応)
http://help.mag2.com/contact.html

【お知らせ】
メルマガ配信サイトの『フーミー:Foomi』からなら、
(1)銀行振り込み、(2)携帯キャリア決済、(3)コンビニ決済
で、有料版の購読ができます。 クレジット・カードの登録がイヤ
な方はご利用ください(↓)
http://foomii.com/00023

・・・以上



◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます
※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです

◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則
  のバックナンバーはこちら
⇒ http://archives.mag2.com/0000048497/index.html?l=hpt0a0092e

◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則
  の配信停止はこちら
⇒ http://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e


Comments are closed.