増刊:ウクライナ戦争の経過
This is my site Written by admin on 2022年3月13日 – 12:00
プーチンが開戦当初、最長でも2週間くらいで終える予定だったウク
ライナの制圧が、遅れています。原因は、ゼレンスキーが政治的なヘ
ッドになっているウクライナ民族派の、愛国心と抵抗が強いことです。
(本増刊号は、有料版・無料版に共通とします)

プーチンの目的は、ゼレンスキーを退任させ、親ロシアの傀儡政権を
作って中立化して武装解除して、ウクライナを、核兵器をもつ可能性
のない、緩衝地帯にすることです。

しかしウクライナ国民の多数派の、反ロシアの心情が強いことが、
(1)降伏と、(2)傀儡政権作りを阻害しています。

ウクライナとロシアの戦争は、前線の戦いではなく、市街戦になりま
す。犠牲者が、多数出ます。観測では、1日あたり、市民の犠牲者が
約500人、うち子供が40人くらい含まれているという。

ウクライナのヤヌーコビッチ大統領(2010〜14年:親ロ派)のときの
首相アザロフは、メディアに対し、ロシアの侵略の原因を明らかにし
ています。

◎NATO(主体は米国の軍産共同体)は、2022年8月から12月の間に、
ウクライナにミサイルの配置をする計画だった。この計画を知った
2021年12月に知ったプーチンは、核ミサイルが配備される前に、ウク
ライナへの侵略を決意したというものです。

仮に、ウクライナに米国の核最新のミサイルが配備されるなら、首都
キエフとモスクワは近いので(約400km)、3分でモスクワに着弾し、
ロシアは短時間で壊滅します。3分では、ミサイル防衛網は効かない
のです。

一方、モスクワからNYまでは、その20倍の8000Kmです。ロシアからの
報復の核ミサイルが、アメリカに届く30分〜60分の前に、ロシアが約
3分で壊滅してしまう。(注)欧州には届きますが、本拠は米国です。

戦後75年の、国際秩序の根幹だった、核を持ち合うことによる大国間
の「戦争抑止力」は効かない。ロシアの核兵器が、無効になるのです。

ということは、ウクライナに、核弾頭とミサイルが配備された瞬間に、
ロシアは、米国の軍事的な配下になります。対抗手段がなくなるから
です。プーチンは、これを拒否するため、ゼレンスキーを倒す戦略に
出たという。(ここまでは、ウクライナ元首相のアザロフ)

米国の核の、ウクライナへの配備計画があったのかどうかは、当然、
不明です。あったとしても、トップクラスの軍事機密であり、米軍の
トップ(大統領)がいわない限り、明らかになることはない。

ロシアは米国を非難し続け、米国は否定を続ける。これは、確定して
いることです。

◎現代の核大国間の戦争は「核兵器を実際に使うことではなく、敵国
により近いところへの、ミサイル防衛網の効かない近隣地への核ミサ
イルの配置」で終わります。 

戦闘で核を使う段が、戦争開始ではない。威嚇が戦争の開始です。さ
かのぼれば、ミサイル防衛網の効かない地域に核ミサイルを配備する
ことが、大国間(米・露・中国)の戦争です。中国に至近の日本は、
NATOに近い軍事同盟を組む米国の核ミサイルの傘で守られています。

【世界の核兵器数:2021年1月:広島県とストックホルム国際平和研
究所の調査:2大国と付属国】
米国   5550(配備された核弾頭1800)
ロシア  6222(同1625)
英国    225(同 120)
フランス  290(同 280)
中国    350(不明)
インド   156(不明)
パキスタン 165(不明)
イスラエル  90(不明)
北朝鮮   40〜50(不明)
(第二次世界大戦の敗戦国である日本、ドイツ、イタリアは、いずれ
も米国との軍事同盟です)

市街戦になって、ウクライナ国民の**%かの、命を懸けウクライナ
を守る愛国心は、根強いことが、分かりました。国民の心が、プーチ
ンの誤算でしょう。16歳から60歳の男子は、出国を禁じられて民兵に
なっています。

プーチンは、ゼレンスキーが退任または逃亡すれば、傀儡政権を作る
ことができると考え、侵略の2日目に、クーデタを促すメッセージを、
ウクライナ国民に出していました。しかし、呼びかけに応じる勢力は
出現しませんでした。

以上から判断して、ロシアが軍事力で平定し、ゼレンスキーが退任し
ても、市中のゲリラ戦は長期化するという見方になります。ロシア軍
の19万人では、ウクライナ全土を制圧はできない。

100万人が必要と、軍事専門家は言っています。プーチンは、海外志
願兵を募集しています。ウクライナの北のベラルーシは参戦しました
(兵士4.6万人:戦車1317両)。

当初、抵抗するのは、極右の民族派のみかと見ていましたが、現下の
情勢では、ウクライナぐるみです。親ロ派は、比較少数でしょう。

            *

以降の(1)、(2)、(3)は推理です。

(1)プーチンは、ロシアの体制を壊滅させる、核ミサイルのウクラ
イナ配備を、阻止しなければならない。

(2)勝敗が決まらないゲリラ戦が長引き、双方の犠牲が増えること
は、国際世論が許さない。西側の国際的な世論だけでなく、ロシア国
内の世論でもプーチンの体制にとって、不利になる。

(3)ロシア軍が、稼働中のサポロジエ原発を占拠する方法をとった
とき、直感したことです。プーチンは、ゲリラ戦の戦局が不利になれ
ば、各地の原子炉を破壊し、ウクライナ一帯と東欧の一部、そしてロ
シアの西部を放射性物質で汚染するチェルノブイリの戦略まで考えて
いるのではないか。

原子炉の爆破は、ロシアではなくウクライナ軍が行ったとする。
人が、当面、立ち入ることのできない地帯にすれば(周囲100Kmか)、
米国の核ミサイルも配備できない緩衝地帯になる。

2011年の3.11(想定外の15mの津波による福島第2原発の全電源喪
失)を経験したわれわれなら、24時間には起こる水素爆発とメルトダ
ウンのとき、どういう状態になるか、経験済みです。

風の向きが東だったら、東日本と東京圏から4000万人の疎開的な避難
が必要でした。日本人の生命・健康と日本経済は、神風のような偏西
風に救われたのです。放射性物質の大半は、太平洋に落ちて薄まった
からです。米国西海岸にも達していました。

プーチンは、国内向けには、「計画通り進んでいる」と言っています。
原発の占拠も、戦争の計画です。

最大は、南東部のサポロジエ(原子炉6基)です。北部には、ロブノ
(4基)、フメルニッキ(2基)、南部の南ウクライナ(3基)があり
ます。国土が日本の1.6倍、人口4100万人のウクライナおよそ全域を、
カバーします。

ロシアがこの最後の戦略をとれば、ウクライナの国民は、東欧や西欧
への難民になるでしょう。4000万人の難民が押し寄せるEUの経済は、
もたないでしょう 

米国と西側は、原発の爆破(これも核兵器化)にならないうちに、戦
争を終結させ、米軍は、ウクライナに核ミサイルを配備しないと確約
する必要があるでしょう。

プーチンにとっては、ゼレンスキー政権より、米国の核ミサイル配備
計画を問題にした戦争です。

プーチンの失脚を狙う戦略もあります。しかし戦争前に、プーチンへ
の支持率が60%台を維持していたことを考えると、CIAのプロバガン
ダでは、難しい。KGBを相手に、失敗の可能性が高いテロリズムしか
手段はない。

プーチンは「引かない」と明言しています。西側世論のどんなに激し
い非難は受けても、です。米国は、ここまでを想定しておかねばなら
ない。(注)核兵器をもつ中国、インド、パキスタンは、ロシア側で
す。生物兵器の件もありますが、ウクライナを汚染する原発に比べ、
時間的な切迫は小さい。

              *

ロシアのSWIFTからの排除と、経済封鎖の帰結については、水曜日の
正刊で書きます。西側がいうルーブルとロシア経済の苦境とは違い、
高騰したエネルギー・資源・穀物の輸出国であるロシアにとって、西
側の経済封鎖は、逆効果の利敵行為です。逆に、ロシア経済は自立し、
資源の高騰で所得が増えて、強化されるからです。

日本と西欧は、エネルギー・資源・穀物の輸入国です。SWIFTからの
排除と経済封鎖があるとエネルギーと原材料がない産業が潰れ、食品
(カロリー)の60%を輸入する国民が、飢餓なるくらい貧困化します。
飢餓は究極の貧困です。

庭で、カロリーになるサツマイモやかぼちゃを作って、鶏を飼う生
活・・・。すぐには整備ができない水田でないと、米は作れません。
畑の生産物は野菜だけです。古代の食物だった栗の木もありますが、
国産のリンゴやミカンでは、お腹はいっぱいにはならない・・・海外
の穀物が入らなくなると、輸入に依存した食糧行政の長年の失策が、
一挙に表面化します。

穀物と大豆は、パン、うどん、ラーメン、納豆、醤油、油あげ、豆腐
だけでなく、家畜の飼料でもあります。成長の早い鶏肉1kgで4Kg、
豚肉1kgでは10kg、牛肉では14kgの穀物(小麦・トウモロコ
シ)が必要です。蕎麦の実すら豪州からの輸入です。和食の原材料は
輸入です。魚も38%が輸入です。

エネルギー・資源・穀物の高騰で潤うロシアは、日本や西欧とは真逆
です。サウジを経済封鎖し、原油不足と価格高騰で西側が困ることと
同じです。

アラブには、農作物と工業生産の産業は乏しい。しかし、日本より経
済は豊かです。ドバイ(アラブ首長国)に行ったとき、はっきりわか
りました。原油160ドルが定着すれば、産油国は今より3倍豊かになり
ます。ロシアは世界2位の産油国です。3位がサウジです。

なぜ西側は、SWIFT(ドルとユーロへの変換と国際送金網)からの、
資源輸出国のロシアの排除と経済封鎖という自滅の戦略をとったのか、
不思議に思っています。ドルに交換ができなくなったルーブルがドル
に対して下がるのは当然ですが、これが、ロシア国内の物価の高騰に
はならないからです。(注)輸入品だけは高騰します。

西側を「資源不足とインフレで敗戦させるためか」とも思えるのです。
ロシアは、めぼしい資源のない北朝鮮とは違います。

日曜のTVでは、経済の専門家とされるコメンテーターが、ルーブルが
60%も下がったロシア経済は壊滅的であり、国民は貧困の極にあると
言っていましたが、この人は、何を見て発言しているのか?

エネルギー・資源・穀物を、1.4億人の国内需要では余るくらい生産
し、輸出するロシアの経済構造への、無知を晒すだけです。

低・中価格の商品輸出国(世界の輸出の14.7%=1位:21位は米国の
8.1%、3位はドイツの8.7%)の中国に対するSWIFTからの排除と経済
封鎖の結果でも、西側の敗戦になります。

中国の商品がないと、米国・日本・西欧の商品は。2倍には高騰する
からです。ユニクロの衣料品、生活必需品、iPhoneを先頭に電子機器
の価格が2倍にはなることを考えれば、すぐわかることです。食材を
輸入し、日本でパッキングしているコンビニの弁当も2倍です。

西側に、プーチンに匹敵するリアリストの、名著『君主論』マキャベ
ッリ風の戦略家が欠けています。現在でも有効な「孫氏の兵法」も、
中国です。

ゼレンスキーが逃亡しても、ウクライナ国民が降伏することはない
(プーチンの計算違い)。経済封鎖は逆に敵失とするプーチンにとっ
ても、非武装の市民の殺傷は、いいことではない。

考えたくないことですが、1か月以内に、プーチンが、原発という究
極の選択を迫られることになるかも、知れません。「賽(さい)は投
げられたのか?」。・・・多要素で、多変量解析風に考えて、50%は
投げられた感じがしています。まだ50%、すでに50%です。


水曜日の有料版では、満2年のコロナと2月からのウクライナ戦争がイ
ンフレ圧力と金利の上昇として及ぼす、世界と日本の経済・金融の全
般について書きます。


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