増税後の生活像とマーケティング
This is my site Written by admin on 2012年2月1日 – 09:00

おはようございます。民主党政府は、支出と財源の全貌(数値)を明ら
かにしないまま、コトバだけの「社会保障と税の一体改革」を起案して
います。本稿は、生活と商品購買にかかわる、これからの世帯の家計を
テーマとします。

【商品を売るためのマーケティングの観点も】
今後のマーケティング(5000万世帯が作る市場のニーズの想定)に、大
きくかかわります。世帯の可処分所得と預金が、今後どう向かうか。こ
れが経済と、商品購買を決めるからです。

▼財源と支出の両方から見る複式簿記での思考でなければならない

財源と政府予算の両方の観点からみます。
公約しても財源がないと、政府予算は実行できないからです。

民主党は、実行したとたんに縮小した子育て支援金(予定では1人2万60
00円/月)に見られるように、「財源を考えず、または先送りにし、政
策案を公約する癖」があります。複式簿記ではなく、大福帳風に、空中
で考えているとしか思えない。

財務省は「財源がないから実行不能」と言う。
このため、消費税の増税案になったのです。

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      <575号:増税後の生活像>
          2012年2月01日号
【目次】
1.5000万世帯の純貯蓄から見て、限度にくる国債の発行残
2.2012年から大きな問題になる年金の増加支給と、その財源
3.聞き慣れない「交付国債」とは何か
4.肝心な時期に、政治家は「空(くう)の議論」を続けている
5.2%のインフレ・ターゲット策は、GDPの2倍の政府負債がある日
   本では、財政の破産になる
6.米国FRBが1月25日に言った、2%を目標とするインフレ・ター
   ゲット論は、GDP比の米国債残が100%くらいだから有効
7.年収700万円の平均的な世帯の、予想される生活像
8.退職後の生活水準の維持のためには
【後記】
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■1.5000万世帯の純貯蓄から見て、限度にくる国債の発行残

原因は、新規の国債の発行額(一般会計で44.2兆円、特別会計の復興
債で2.6兆円)が、市場(金融機関)が引き受ける限度に達しているか
らです。

他に、特別会計の財投債(事実上の国債)が、15兆円はあります。
かつて財投債は、政府系の郵貯・簡保・年金基金が引き受けていました
。2000年代は、郵貯も減っているので、逆に売り手です。

▼174兆2313億円の発行(2012年度:4月からの会計年度)

2012年の国債の発行予定額は、総額では、史上最高の174兆2313億円で
す(財務省)。

・一般会計での、新規国債の予定が44兆2440億円、
・一般会計からの借り換え債の発行が112兆3050億円、
・東日本の復興債(一般会計とは別の特別会計)が2兆6823億円、
・特別会計の財投債が15兆円発行だからです。
    (朝日新聞:12.01.25)

【政府債務の1200兆円が、世帯の純貯蓄に並ぶのが2012年】
国債と政府の借金の残高(一般会計)は、2012年度の国債だけで52兆円
も増え、ついに1000兆円を超えます。

自治体の地方債が約200兆円ですから、政府債務の合計は1200兆円にな
ります。

[国債購入の資金源]
世帯の、住宅ローンを引いた純金融資産(預金、保険、年金基金、株、
債券、投資信託)は1200兆円くらいです。2012年で、世帯の純金融資産
の全部を、政府部門が使ってしまったのです。今年確定する事実です。


【国債の買い手である金融機関は、世帯と企業からの預かり資金が増え
ないと増加買いはできない】
国債の買い手の金融機関(銀行・保険・年金基金・郵貯・簡保)は、預
金や保険基金として、世帯と企業から預かるマネーが増えないと、増加
国債(新規の発行分)を買えない。

じゃなぜ、2011年の国債は、市場で消化されたのか、疑問でしょう。

▼2011年は、突然のガイジン買いで、国債価格の下落(金利高騰)が避
けられたという事実

【2011年の異変】
2011年の国債発行(46兆円)は、「外人ファンドからの、短期債の買い
超(約20兆円)」で、なんとかまかなわれました。

外人ファンドは、ドル債・ユーロ債を売った資金で、日本にとって幸い
なことに、「円高を予想したため」、円国債の短期債(満期3ヶ月以内
)を増加買いしています。これが、2011年の円高のもっとも大きな原因
です。

円高は、円が海外から買われることです。円が買われることは、日本の
金融機関に、資金が流入することです。円安は逆に、日本で使う資金が
、海外に逃げることです。この点では、経済のために円高がいい。

【外人が2012年も買い増ししないと、国債の下落リスクになる】
しかし、外人が買い越した短期債は、3ヶ月内で満期になるため、買い
換え(ロール・オーバー)がないと、財務省は円の現金で外人ファンド
に返済せねばなりません。

2011年に買い越した外人が、2012年のいずれの月か、満期が来た円で、
万一・・・ロール・オーバーをやめるとどうなるか? 

国債金利は高騰し、同時に円安になります。外人ファンド(中味は英米
のヘッジ・ファンド)は、日本の金融機関のような円国債の長期保有は
、決してしません。

▼やきもきする財務省の財源対策が、消費税増税

財務省は、2011年の、外人による短期国債の買い超に対し神経をとがら
せています。

【重要】
外人が2011年に増加買いした短期債(約20兆円)を売りに出たとき、あ
るいは、2012年も買い越しを続けないと、円安と、金利の上昇(国債価
格の下落)になるからです。

財務省は、非公開の緊急会議を1月に開催しています。外人が、買い増
しした20兆円の短期国債は、空売りや先物売りをするために買ったので
はないかという懸念があるからです。

(注)国債先物の売り、オプションの売り、CDSの買いは、いずれも、
国債の売りと同じ、国債価格の下落効果をもちます。

以上のため、政府は、2011年秋から緊急に、
・増税(消費税+所得税+相続税)、
・社会保障費の削減(主は年金の変更)、
・公務員の人員と、人件費の圧縮を俎上(そじょう)に上げています。


これが野田内閣の、政策案になったのです。

焦点は、
(1)消費税の増税(10%:現在の2倍)、
(2)2012年から急に、毎年、支給が増える年金の財源をどうするか、
(3)年金制度をどう変更するか、です。

■2.2012年から大きな問題になる年金の増加支給と、その財源

2012年は、1年齢で200万人と、若い世代の2倍の人口の、団塊の先頭世
代(1947年生まれ)が、65歳の退職期を迎えます。
(注)20歳以下は、1年齢が100万人付近で、団塊の半分の人口です。

【今年からだった】
団塊の世代に対し年金(概算)の支給が始まり、医療費も増えるのは、
2012年を開始年とします。

1人当たりの医療費は、65歳以上になると、65歳未満の平均(15万円/1
人・年)の、4倍(66万円/1人・年)に増えます。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/06/kekka5.html

2012年は、わが国の高齢化の、本番1年目です。65歳以上の人口増加は
、団塊の世代が85歳になって、没し始める20年後(2032年)まで続きま
す。

2012年は、
・国債の消化財源、つまり国の純貯蓄と、
・社会福祉(年金、医療費、介護費)財源で、転換点になる年度です。


▼(1)年金支給額

65歳以上になったとき、いくら年金をもらえるのか知らない人が多い。
当方も、よく知りません。調べると、ほぼ以下でした。

・自営業、農林漁業、及び専業主婦の国民年金
      :20歳から60歳まで40年の継続加入で、月額6万6000円:
        平均の受給は、5万3000円/月。

・民間会社に雇用された給与生活者の厚生年金
      :基礎年金+厚生年金加算の構造で、平均月額16万8000円。
        男性が平均で18万円、女性は平均で10万円。

・公務員の共済年金
     :職域加算のため、民間で同じ賃金の人より、
        1人月額で、厚生年金より約2万円多い。
        男女差は少ない。

【概略のまとめ】
概略では、
・自営業、農林漁業、専業主婦の国民年金が月額6万円、
・会社勤務を続けたサラリーマンで17万円、
・公務員では、就職から定年まで継続する人がほとんどなので25万円で
しょう。

(注1)現役時代の賃金で、幅のある厚生年金や公務員年金:
夫が40年間続けて勤務し、現役時代の月額平均賃金が55万円だったとす
れば(妻は専業主婦のケース)、世帯が受け取る月額の厚生年金は27万
4000円です。

(注2)40年続けて共稼ぎで、世帯の平均賃金が64万円なら、月額が29
万6000円(ほぼ最高額)になります。
・他方、男性独身者が40年勤務で、平均賃金が40万円付近だと、月額は
16万7000円です。
厚生年金は、現役世代の賃金額によって、1人で13万円~27万円くらい
の幅があります。金額は2004年の物価に換算したものです。

以上3種の公的年金について、55歳以下の、現役の人に訊(き)けば、
「10年後の自分たちは、この額をもらえない。支給がはじまる年齢も、
70歳かそれ以上に上がるだろう。」と答える人が多いのは、周知でしょ
う。

しかし内心での期待はある。差し迫った現実感がないだけです。
その証拠に、将来の年金問題が、政権交替を生んでいます。

▼(2)年金の財源

【初年度は、2.6兆円の交付国債という苦肉の手段で、年金基金の減少
を補う】
年金基金額(政府が運用)を見かけ上減らさないよう、政府は、2.6兆
円の「交付国債」を年金基金に補充するという(2012年)。

「交付国債」は、普通の国債と異なり、市場で売ることができない。年
金基金からの年金支払いで必要になったとき、必要な額を、あとで、政
府が現金にするという約束の借用証書です。

最後の策にみえる交付国債まで使うのは、2012年度の、政府一般会計か
らの国債の新規発行が、44兆円を超えるからです。

ほぼ44兆円を超えるくらいから、金融機関(国内+海外)の引受が難し
くなり、国債金利が高騰し、価格が下がる恐れがあることが、この理由
です。

【基金の運用損が3.7兆円あって、基金が減った】
年金基金は、独立行政法人であるGPIF(年金積立金の管理運用機構)が運
用しています。

2011年の第2四半期は、(1)保有する株の下落(-9.8%)、(2)買
っていたドル債の下落(円高差損:-4.2%)のため、3.7兆円(3.3
%)の運用損です。基金は、108.8兆円に減っています。
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h23_q2.pdf

年金基金は、日本国債と財投債68%、国内株11%、米国債と社債8%、
米国株9%の構成比で、民間投資信託に、運用が委託されています。

年金の支払いが、
・当年度の年金保険料(厚生年金と国民年金の掛け金)と、
・政府の一般会計からの補填金で不足したときは、
  日本国債や株、米国債や株を売らねばならない。

●「年金基金が国債を売った、株を売る。売りは2012年の1年だけでな
い。2012年から2035年までは年金の支払いが増え続けるため、売りは続
く。」と、債券市場(=金融機関)が認識すると、どうなるか?  

長期債でも、わずか1%の利回り(クーポン)しかない国債をもつ金融
機関(銀行・保険・郵貯・簡保)が、時価の下落での損を恐れ、売りに
出る可能性が高くなります。

これを防ぐための苦肉の策が、戦争直後の弔慰金と同じ「交付国債2.6
兆円」でした。2013年も、2014年も、これが続くでしょう。年金支給が
増えて、年金基金が減るからです。

公的な年金支給は、1年だけ増えるのではない。20年後の2032年まで、
ずっと、毎年1兆円余は増え続けます。医療費の増え方も同じです。36
兆円の医療費だけでも、1年に1兆円が増加します。現在は7兆円の介護
費も増えます・・・2012年から20年間です。

■3.聞き慣れない「交付国債」とは何か

交付国債は、政府予算を実行するお金がないとき、言い換えれば国債の
新規発行にムリがあるとき、発行するものです。

金融機関や債券市場には売れないので、債券マーケットの国債価格を下
げる直接の要素になりにくいからです。(注)「政府の国債発行が、い
よいよ限度に達した」という判断からの、間接的な、国債価格の下落要
素になります。

【例えれば・・・】
例えれば、会社の収入が不足するとき、幹部や社員の給料を、社長の印
を押した、「外部に通用しない手形」で払うのとまったく同じなのが、
2.6兆円の、年金会計に与えられる交付国債です。

これをもらった人は、銀行にもって行っても現金化できないので、必要
な現金は、必要になったとき、会社の経理に請求することになります。
会社にとっても、最後の手段です。倒産すれば、紙くずです。

国家(=行政機構)にとっても、交付国債は、最後の手段です。
(注)次は、国会の多数決で日銀法を改正したあとの、日銀の直接引受
しかない。

第二次世界大戦後に、戦没者の遺族に対し、国家が、記名式の「特別弔
慰金」として支払ったのが、交付国債でした。

未亡人や、占領地からの強制送還者が、支払い日に、銀行や郵便局で現
金を受け取ったのです。戦後の200倍から300倍のインフレで、もらった
お金の価値はなかった・・・。
http://www.mof.go.jp/jgbs/faq/jgbs/qakoufu.htm

■4.肝心な時期に、政治家は「空(くう)の議論」を続けている

こうしたことで、国会でのまともな議論がないのを、不思議に思います
。議員は財務省にひれ伏しているのか。政府の財源について官僚との「
知識差」が大きいため、発言できないのでしょうね。

国会中継を見れば、大臣の失言や不用意なコトバと、前に言ったことと
の矛盾を突いて騒ぐ場でしかない。議員1人、年間1.2億円かかってい
ます。[議員報酬+秘書費用+政党助成金+文書費+交通費+視察費の
1人平均額]です。

国難のいまこそ、国際比較でも高い報酬に応え、政治的リーダシップ(
=国民に未来を示すこと)を発揮せねばならない。これは、ない。

財政破産を予感した財務省が「増税と社会福祉のカットのシナリオ」を
描き、民主党政府は乗って、「空(くう)の発言」をしています。

新幹線の座席で、ある大臣を見たのですが、表情に品格と力がない。あ
んどんのように、ぼんやりした考えが見える顔です。枝野官房長官も同
じ表情でした。芸能人が、よほどしっかりした表情です(顔形を言うの
ではありません)。

税の分配をしていた自民党時代(1980年代まで)は、政治家も一見、仕
事をしているように見えました。大平首相をそばで見たとき迫力、威圧
、オーラがありました。政治的なリーダーはすごいなと思ったのです。


ただしこれは省庁の予算の、増加獲得力だったのです。1990年代は、国
債増発が財源になった1年40兆(10年間で400兆円)の、不況対策だった
公共事業でした。

税収と国債の売却による収入を足しても、増加分配する予算財源がなく
なった2001年以降、小泉首相も含んで空の発言でした。郵政民営化がそ
れでした。

政治家にとっては未来を示すコトバと、予算の金額が仕事です。
そのコトバと数字に、空(くう)ではなく、内実がなければならない。


実は、空(から)だった。国家財政は裸になったのです。

年金も削減されざるを得ないと国民が痛く知ったので、民主党への支持
は、12年4月ころに衆院選があれば、150名余が落選するくらい支持を失
っています。民主党が政権についたのは、自民時代にいいかげんだった
年金事務の指摘からです(長妻議員)。

(注)ソ連が崩壊した主因は、赤字財政をルーブル刷って埋めた結果と
して起こったインフレで、1年で物価が70倍になったことです(1991年
)。100円だったパンが7000円。このため報酬と年金の価値がなくなっ
たのです。古来、例外なく、給料と年金の価値を下げるインフレが支配
と統治の体制を滅ぼしています。

国民の視線で政治をするという市民運動家として人気があった管前首相
も、選挙区では落選の可能性が高い。比例区の順位で復活する「亡霊議
員」になるかもしれませんが・・・選挙区で落ち、比例区で復活した議
員は、厳しく言えば、政党にぶら下がる「ゾンビ議員」に堕(お)ちま
す。

国民の負託を受けたと、言えないからです。管前首相だけを言うのでな
い。民主党と自民党の、ほぼ全体です。

マスコミは曖昧(あいまい)にしか報じませんが、議員による「国会 
原発事故調査委員会」も始まっています。この過程で、びっくりするよ
うな隠蔽とごまかしが、今後、明らかになります。放射性物質の空中拡
散を示すSPEEDIを、政府は、駐留米軍に対しては開示しながら、自国民
には隠したことも、暴かれています。

政治が壊走的な惨状を示した数年前から発言する気を失っているのです
が、21世紀のわれわれの生活にかかわる重要決定が、これから行われる
ので、あえて、言います。

経済の40%を、政治が決めます。政府(中央+地方+独立行政法人)の
予算に関係するのは、国民所得の40%(約200兆円)になっているから
です。

▼対策はあった

ドル安になってしまったので損失が確定しもう遅いのですが、日本は20
09~10年に、(1)官と民が532兆円(国民所得の1年分)もつ外債のう
ち約100兆円の売り、(2)あるいはゴールドの買い、(3)またはドル
債担保での、証券発行と売却を行うべきでした。

過去のメールマガジンに書いたのですが、「ドル債は売れない。金も買
えない。」ということでした。

逆に2011年には、財務省・日銀は下がるドルを買っています。円安を目
的にし、効果がなかった為替介入です。4.5兆円を出したドル債の買い
は、日本のお金を、米国に貸し付けるキャピタル・フライト(マネーの
脱出)です。4.5兆円を、財務省の独断で贈呈したと言っていい。

ドル国債を買うことは、米国政府にマネーを貸し付けて、紙の利付き借
用証(国債)をもらうことです。

なぜ日銀・財務省は、この金額を国内で使わないのかと不思議に思いま
す。交付国債という妙(みょう)なものも、発行せずに済みます。国会
議員は、ドル安で日本が損をする米国債買いを、なぜ追求しないのか?


(注)FRBのバーナンキ議長は、2013年までと言っていた「ゼロ金利と
量的緩和(国債と住宅証券を買うこと)」を、14年まで続けると変更し
ています(2012年1月)。

これは14年まで円に対してドル安であることを意味します。自国債に対
し、利回りの格差(スプレッド)がないと、ドル債は海外から買われな
いからです。

平均すれば3%のインフレの米国は、ドルが1年に3%減価するというこ
とです。インフレによる減価を補うため、米国債の利回りは、本来は4
%以上ないと海外から買われない。利回り4%の米国債をもっていても
、1年後の実質利回りは、ドル物価が3%上がると1%に過ぎないからで
す。

利回りが1%しかない日本国債を、ガイジンが買った根底の理由は、日
本が物価が、1年に1%くらい下がるデフレだからです。

このため、1年後の円の価値として、[利回り1%+物価の下落1%=2%
]の実質利回りが想定できるからです。デフレは、通貨の価値(商品と
資産の購買力)が上がることです。

■5.2%のインフレ・ターゲット策は、GDPの2倍の政府負債がある日本
では、財政の破産になる

関連して言えば、国会議員やエコノミストには、日銀が国債を買うこと
による、「2%のインフレ・ターゲット論」を言う人も多い。日銀が、
インフレ率2%を目標に、国債の、増加買いを続けることです。

ところがインフレ・ターゲットは、どの国でも、政府の負債がGDPの1倍
以下のときだけ有効な金融政策です。これが、認識されていなければな
らない。

●政府部門の負債が、
・中央政府で1000兆円(名目GDPの2.1倍)を超え、
・地方自治体でも200兆円の負債があり、
・財政の赤字のため、毎年の新規国債として50兆円は増え続け、
・借換債を含めば、176兆円~200兆円の国債発行になる日本経済では、
とてもムリです。

▼ムリなことの論証:(注)金融=ファイナンス

2%のインフレとは、1%の利回りの国債をもっている金融機関にとって
、[利回り1%-期待インフレ2%=-1%]、つまり毎年1%ずつ国債の
満期償還のときの価値が下がることです。つまり「マイナスの利回り」
に変わることを意味します。

額面100万円、1%の利回りの10年債をもっていると考えれば、これがわ
かるでしょう。

物価が2%上がる。1%の利回りしかないと、1年に1%(1万円)ずつ損
をします。1年に2%のインフレに向かえば、10年後に償還される100万
円の価値は、[100×(1-0.02)の10乗=81.7万円]に下がってしま
います。

金利が毎年1%(1万円)あっても、10年間で10万円です。10年後の元利
合計は「91.7万円の価値」に過ぎません。(物価を複利で、受け取り
金利を単利で計算した概算です。)

結果は、10年後に元利合計でも約92万円の購買力に減ってしまいます。
インフレは、このように通貨の価値(購買力)が下がることです。

●2%のインフレによって、1%の利回りの10年債の価値は、10年後に、
元利合計で[0.99の9乗]、つまり、ほぼ90%に下がります。

具体的には、1000兆円の国債の価値が、元利合計でも約900兆円へと100
兆円も下がります。

国債の発行金利を決めるのは、政府です。
発行後の利回りは、債券市場の売買が決めます。

・市場で買い超なら利回りは下がり、
・売り超なら利回りが上がるという形で、決まります

デフレから一転し、市場のインフレ予想が2%に上がると、
・1000兆円の国債をもつ内外の金融機関は、
・国債の名目利回りが3%に上がるよう、国債の売り調整を行います。

上記のように利回りが3%に上がっても、額面金額からインフレ率2%を
引かねばならないので、実質の金利は1%に過ぎないからです。

2%のインフレが予想されたとき、インフレ率より低い1%の金利の国債
を売らない金融機関はない。結果は、1000兆円だった国債の時価が900
兆円への下落です。

(注)物価が10倍以上に上がるハイパー・インフレなら、負債は1/10
になり、ほぼ帳消しになります。しかし数%のマイルドなインフレでは
、少し遅れて債券市場の金利が上がるため、大きな負債をもっている国
や企業は破産します。

負債が多い企業の倒産は、好況期になって金利が上がり金融が引き締ま
ったとき、増えます。負債の多い国家も同じです。仮に、ユーロと世界
の景気がよくなって、世界の資金需要が増えれば金利が上がり、PIIGS
の国債金利は、7%に上乗せして上がって国家破産です。

2%のインフレがはっきりすれば、債券市場での国債の利回りは、「物
価の期待上昇率(2%)+GDPの実質経済成長率(仮に1%)=3%」に向
かいます。

・物価の期待上昇が2%(インフレ・ターゲット)、
・GDPの実質成長率が1%なら、
国債利回りは3%になるまで売られ、国債価格が下がります。

これは、以下の式の「期待長期金利」が、3%になることです。
何回も取り上げた、国債の価格公式です。
国債、社債、証券に共通します。

【参考】
市場の国債価格=(1+額面に対する表面金利1%×残存期間)
                   ×100÷(1+期待長期金利3%×残存期間)

▼長期の国債金利が1%から3%に上がるとどうなるか

現在、1000兆円という中央政府の負債にもかかわらず、長期国債の金利
は1%と低い。

2%のインフレになると、1%と低い国債金利のため年間で10兆円でしか
ない国家からの利払いが、30兆円(3%)に向かい、上がります。

金利が3%上がって数年後に20兆円分が新しく、政府の一般会計からの
利払の支出増になります。これが消費税換算で8%を全部、帳消にしま
す。増税分を、増える年金支払い・医療費・介護費に当てることはムリ
になります。

つまり国債金利が3%に上がるだけで、消費税を上げても国家財政は破
産、言い換えれば支払うべきものの遅延(デフォルトという)に向かい
ます。

日銀が直接に国債を買い、政府にマネーを溢れさせ、予算を拡張するこ
とから起こる「2%のインフレ・ターゲット策」は、それが発表され、
市場が本当だと認識した途端、国債の売りを生みます。

結果は、国家財政は約束した支出ができずに破産し、金利が高騰するだ
けです。横行している安易なインフレ・ターゲット論はダメなのです。


■6.米国FRBが1月25日に言った、2%を目標とするインフレ・ターゲッ
ト論は、GDP比の米国債残が100%くらいだから有効

米国FRBが主催するFOMC(金利の目標を決める公開市場委員会)は、2012
年1月25日に、2%のインフレを目標とする「インフレ・ターゲット」を
発表しています。これを聞き、「日銀も追随しろ」と言う人が増えるは
ずです。

●米国の2011年の年間インフレ率は3.4%(2011年11月時点)と高かっ
たのです(英エコノミスト誌)。ところが、11年11月だけの前月との比
較では、マイナス0.1%、12月は0.0%と下がってきています。

もともと消費者物価の上昇が1年に3%くらいはあった米国での、年末2
ヶ月の、前月比物価の上昇でゼロ・パーセントは、リーマン・ショック
以外には、20年以上なかった景気の後退も示します。

「買い取り仕入制」の米国では、在庫が売れないと売価を大きく下げる
ことが、日本よりはるかに素早く起こります。

売上予想をもとに仕入れたものが、売れ残れば不良在庫になる。このと
き、売価を50%~70%下げても売るからです。

平月の2倍以上を売る2011年11月~12月の、クリスマス商戦では、不良
在庫での、大きな価格割引があったのです。事実、昨年の11月にNYに行
ったときの、店頭での割引き価格は、近来で最高でした。

(注)全米20都市の住宅価格(ケース・シラー指数)も、11年11月では
、昨年比3.7%と下げ幅が大きくなっています。

このためFRBは、素早く2%のインフレ目標を言い、ゼロ金利の金融を更
に緩(ゆる)め、ドルを刷るという意思表明をしたことになります。

方法は、
・1.99%の長期金利の米国債の買い、
・額面の43%に下がった住宅証券のMBSを買い取りをして、
・08年9月以降すでに3倍になっているFRBのバランス・シートを、
一層拡大する「信用拡張」を行うということになるでしょう。

(注)2012年の1月25日時点で、$2.9兆(230兆円)です。今後、ユー
ロのためと煙幕を張り、事実上の量的緩和第三弾を発動し、50兆円くら
いのドル印刷(=マネー供給)の増加させると見ます。
http://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/

(1)米国は、2012年は政府の財政赤字の増加のため、$1兆(80兆円)
の新規国債を発行せねばならない。

(2)同時に、過去の国債($14兆:1120兆円)の、平均残存満期が4年
とみじかいかため、[1120兆円÷4年=280兆円]の借換債の発行があり
ます。

合計で360兆円の国債発行です。米国の国債残は、急速に、日本のGDP比
(2倍)を追っています。

海外(日本、中国、産油国、ユーロ、英国、新興国)が、ほぼ50%($
7兆:560兆円)をもつ米国の国債は、名目長期金利が1.99%と低いた
め「売られやすい傾向」にあります。

米国債の名目長期金利は、5%程度はないと、常に「ドル安リスクが数
%」あるため、買われにくいのです。

このため長期金利を、FRBが1.99%と低く誘導すれば、ドル債が売られ
てドル安に向かいやすくなります。

FRBが、11年11月、12月の消費者物価の「前月比0%」を見て、
・早手回しに「CPI(消費者物価指数)で2%のインフレ・ターゲット」
  を言い、
・手段として米国債を買うことの本当の理由は、実は重大です。

米国債の、新規発行の50%を買っていた海外が、買う勢いを鈍らせてい
ることを示します。

●以前は、米国債の海外からの入札を、米政府が国別に示していました
。FRBが量的緩和第二弾を実行していた2011年から、公表しなくなって
います。何ごとも、言わなくなったとき不都合なこと(海外からの米国
債売り)が起こっています。

米国のインフレは、2つの原因で高まります。
(1)ドル安による、原油と、中国からの輸入物価の値上がり、
(2)マネーの増発と、金融機関への貸付による、商取引の増加です。

米国世帯は、所得が減れば節約する日本人と異なり、収入が増えなくて
も借金で消費する文化(=共通の行動様式)です。

●[米国FRBは、事実上のQE3(量的緩和第三弾)として、更に米国債を
買うこと → FRBが米国債を買うこと]で、一層のドル安を目標として
いることを直感します。円高、ゴールド高でしょう。

2011年後半から大きく下がったユーロと新興国の通貨に対し、米ドルが
上がっているからです。(注)円とドルの関係だけでは、これが見えま
せん。

海外の通貨と、貿易の加重値で平均した「実効レート」でのドル安は、
安くなった米国の輸出を増やし、最大の政治問題である雇用を改善しし
ます。一方で高くなった輸入品(日本製品と中国製品)の輸入は減りま
す。これによって貿易をバランスに向かわせたいという意図もあるでし
ょう。

その証拠に、2011年10月末から11月初頭にかけて、$1=76円の円高に
悲鳴を上げた日本(財務省)による、4.5兆円のドル債買いに対し、オ
バマ大統領は「市場介入」と言い、不快感を示しています。

(注)本当は、海外から売られて金利が上がり、価格は下がるドル国債
を4.5兆円買ったわが国財務省は、米国から感謝されるべきものです。


●2012年は大統領選挙です。失業率8.4%が続けば、オバマ大統領と民
主党は共和党に負けます。なんとしても、雇用改善、そのためのインフ
レ・ターゲットとなったのでしょう。

▼インフレ目標が米国では可能であり、日本では不可能な理由

FRBの国債買いとドル安によって達成される「2%のインフレ・ターゲッ
ト(2012年の1年間)」は、まだ米国債の残高が$14兆であり、GDPの1
倍であるからできることです。

日本のようにGDPの2倍の国債残が米国にあれば、「2%のインフレ・タ
ーゲット策の実行」が、ドル国債の金利高騰と、米国債を売る海外の動
きに拍車をかけるため不可能になります。

●1月25日に米国FRBがインフレ・ターゲット策になったから、日本も、
日銀が国債を直接に買う、金融の量的緩和策を取れと言い出したエコノ
ミストと政治家の立論は、誤りです。

米国FRBが、「インフレ・ターゲット(つまりマネー印刷)」を言った
理由は(12年1月末)、
・過去に発行した国債残は、まだGDP($14兆)の100%付近であり、
・日本の国債残の、GDPに対する比重(200%)とまるで違うからです。


ただしこのインフレ・ターゲット策が実行されれば、1年にインフレ分
のドル価値の下落です。このため、海外が600兆円はもつドル債が売ら
れ、「世界の通貨の加重平均に対する実効レートでのドル安」に向かい
ます。

以上、直近の時事分析です。
日本国が、財政運営を間違えないために、敢えて申し上げます。

■7.年収700万円の平均的な世帯の、予想される生活像

現在、子供がいる全世帯の平均は、1世帯が1.7名の共稼ぎであり、年
収が690~700万円付近です。

14年前のバブル経済が破裂したあとの1998年(金融危機)以降、現役世
代の平均年収は増えず、減っています(2010年:厚労省)。
現在、世帯主の平均年齢は45歳付近です。

▼サラリーマン世帯の平均年収は、700万円から増えない

サラリーマン世帯の平均年収700万円(夫45歳:有業1.7名の共稼ぎ:4
人家族)について、将来の想定実像を言えば、以下になります。

実は、以降の平均年収の根拠をリアルに書きながら、申し上げにくい感
覚が大きく残ります。それでも知ることが必要です。その上で、実際的
なライフ・プランを立てねばならないからです。立ち向かうと言ったら
いいのか。

現役世帯(夫45歳平均:妻44歳共稼ぎ:子ども2人)では、
・700万円の平均以上の年収の人が30%、
・平均付近が40%、
・平均以下が30%でしょう。

(1)大企業雇用30%の人

10人のうち3人、つまり全雇用のほぼ30%を占める大企業(3000社)で
は、ほぼ50歳まで賃金が増えます。50歳以降、平均すれば横ばいになり
ます。

役員や上級管理職に昇る少数の人以外の、賃金カーブの上昇は、50歳を
分水嶺にしてとまります。

3000社の大企業でも、40代の正社員と管理職の56%は、アンケート調査
(月刊プレデント)では、「リストラ不安」を抱えます。
パナソニック、トヨタ、ソニー、そして、資産に含み損がある大銀行・
保険会社も同じです。
http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2009/20090713/11403/11409/

2012年は、輸出企業を中心に、製造業の大企業では、雇用削減のリスト
ラの年です。国内に売る内需型企業では、リストラは比較的に少ない。


土木・建設(ゼネコン等)では、東日本で約19兆円の公共事業が、3年
続きます。津波で破壊されてゼロになった世帯の資産が、増えるわけで
はない。しかし資産の損が入らないGDPでは増える要素になります。GDP
の計算は、投資と商品生産額で行うからです。

2012年と13年にリストラを受ける人を含む40代の平均年収は、現在の世
帯年収700万円付近から、増えることは想定できません。

繰り返し言えば、役員や上級管理職に昇る少数の人の所得増は、数%だ
けの例外です。

(2)70%を雇用する250万社の中小企業の人:

全雇用の70%が働く中小企業(250万社)では、賃金カーブの上昇が、
ほぼ40歳で止まります。つまり・・・平均で言えば、50歳になっても、
40歳のときの年収のままです。

少数の出世組と、会社が雇用を増やして成長するところの(会社数の5
%程度)は、もちろんあります。

こうしたところでは、40歳以降も年収は増えます。しかし70%の人の平
均年収が現在の水準から上がるとは、中小企業でも想定はできません。
過度の希望を述べれば、無責任です。

21世紀の日本経済では、
・雇用される人の平均年齢が45歳に上がったため、
・ほぼ3000万世帯の、日本企業の現場にいる人たちの、全平均収入が増
えない時期になっています。
(注)20代、30代の人の賃金は上がりますが・・・

1998年以降、名目GDPは増えていません。逆に、リーマンショク前の200
7年の515兆円に比べ、2011年9月は469兆円へと9%も減ったままです。

名目GDPは、企業所得と世帯所得に、減価償却費を加えたものに、政府
からの補助金を足し、間接税を引いたものです。このため、名目GDPが3
年間で9%減ったことは、わが国5000万の世帯の総所得も9%減ったこと
を示します。

賃金が維持されてきた400万人の公務員(国家公務員、地方、独立行政
法人)を除く、民間企業の4600万世帯では、2008年からの3年間で、11
%の所得減です。1世帯あたりで、80万円の年収の減少です。

(注)公務員も賃金額が増えたわけではない。2008年から民間企業の給
与が減ったのです。比較上、公務員が、30%くらい高い待遇に見えるよ
うになっています。

2011年までは例外だった公務員も、1年に50兆円規模の財政赤字のため
、数%は賃金が下がるでしょう。官僚の雇用数も、減らざるを得ません
。公務員もリストラの時代です。

以上から、現役世代の平均年齢である45歳で、2人の子どもがいる世帯
の平均年収では、賃金が上がる人はいても、700万円の平均所得が続く
と見るのが妥当でしょう。(多少、楽観的な見方です)

所得が増えない中で、政府の予定では、2014年に消費税8%、2015年に1
0%という「支出増」が加わります。

▼平均的な世帯の生活像(2012年~2042年の向こう30年)

週刊東洋経済の2012年2月4日号(最新)で、わが国の平均的な世帯の、
将来の生活像が試算されています。改めて感じ入り認識したので掲載し
ます。消費税が10%になった後、どんな生活になるかを想定したもので
す。

2012年を起点に、5年毎、2042年まで30年間、わが国サラリーマンの、
想定される生活像は以下です。(注)収支額はフィナンシャル・プラン
ナーの浜田浩也氏が作成されたものを、5年単位にして転載しています
。原表は1年単位です。

           12年  17年    22年   27年   32年   37年  2042年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夫         45歳   50歳   55歳   60歳   65歳   70歳   75歳
妻         44歳   49歳   54歳   59歳   64歳   69歳   74歳
長男       12歳   17歳   22歳   27歳   32歳   37歳   42歳
長女       10歳   15歳   20歳   25歳   30歳   35歳   40歳
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
年収      700万  700万  700万  700万  285万  310万  310万
夫退職金                        1485万
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
基本生活費300万  315万  315万   294万   294万  294万 294万
住居費    115万  115万  115万   115万   115万  115万 115万
保険料     25万   25万   25万    12万    12万   12万  12万
教育費    120万  180万  240万     -      -     -    -
・住宅ローンの
 繰上げ返済・長女結婚・リフォーム        820万  100万  100万
・社会保険料(年金・医療・介護)と、
  税金    154万  146万  129万   93万   33万    23万  23万
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~支出
合計   594万  781万  824万  1219万  339万  329万 329万
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
収支     106万  -81万 -124万  966万 ―173万 -19万-19万
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~貯蓄
残   800万   479万  -81万  1150万  698万   140万  7万 
(注)貯蓄残は、現金・預金:保険・株は含まない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*夫が45歳時点で、800万円の銀行預金としています(平均値)。

(1)平均的な4人家族の基礎生活費は、1ヶ月平均で25万円くらいです
。食費、外食費、衣料費、交通費、電気代、レジャー・旅行費、家具・
家事用品、車、1人1台の携帯電話(5000円)などは、「25万円の使える
お金」からの全支出です。

4人で1ヶ月に使う25万円を想えば、電気代が東電が言うよう17%上がっ
たら大変です。動力用電力を大量に使う工場、冷暖房がいる店舗も大変
です。

消費税が10%に上がると、全物価は5%上がります。15%に上がるなら
物価が10%上がります。1人1.2億円の総報酬の国会議員は、増税が、
国民生活で大変な事態を招くということが分かっているかどうか? 野
田首相は、こうした生活内容を知っているのかどうか?

(2)1ヶ月で約10万円の住居費は、住宅ローンで買っても借家・賃貸で
も、毎月の支出では大差がないでしょう。大都市部に住む人は、1.3~
1.5倍もかかって大変です。

住宅の建物部分は消費税の増税分、上がります。しかし土地は非課税で
す。また、個人が売買する、中古住宅の土地・建物も非課税です。地代
、家賃も非課税です。

(3)60歳前の現役時代の、社会保険料(厚生年金の掛け金、健康保険
費、介護費)と、税金(所得税と住民税)は、世帯年収700万円に対し1
40万円(20%)くらいです。年々、高くなっています。所得の20%も払
えるのかと思えます。

(4)長男が私立中学に入学するころ(2013年:夫46歳)から、増えな
い収入に対する教育費の支出が増え、家計は、1年100万円くらい赤字に
なります。45歳のときの800万円の預金があっても、約8年間で取り崩し
ます。公立の学校なら、すこしは、ましになるでしょう。

(5)政府が予定するよう、2015年に8%の消費税が10%に上がると、長
女の中学入学と重なります。子ども2人の教育費が増え、家計の赤字が1
年で100~125万円くらいになります。

生活を節約しても、2人の大学卒業まで、教育費(または仕送り)が、1
年に200万円くらいかかります。この教育費が主因で、家計の赤字(預
金の取り崩し)になります。

少子化が進んだのは、2人を大学まで進学させると、家計は大変だとい
うことからです。大学は、学費と生活費でお金がかかります。最低でも
10万円くらいの仕送りが要ります。大学がある大都市の家賃が5万円は
必要だからです。

バブル経済崩壊後の1990年以降に結婚した人たちは、直感的にこれを考
えたのです。21年後の現在では、世帯主が50歳以下の、子どもがいる世
代の人です。

(6)長男が23歳で就職する2024年(父57歳)から、赤字だった家計は
、1年で数万円の黒字に、転化します。

(7)60歳のときの退職金1471万円(平均額)によって、世帯の預金は
、1150万円に回復します。

問題は、15年後の2027年にも、今の退職金制度を守って会社が続き、平
均で1485万円の退職金が期待できるかどうかです。1980年代は、会社の
平均寿命が30年とされていました。今、何年でしょう。数年から15年に
思えます。

(8)60歳を超えると30%の人は完全退職し、約200万円の厚生年金生活
と、貯金の取り崩しです(退職後は、年間で60万円の預金が減ります)
。

(9)70%の人は、65歳まで嘱託、アルバイト、顧問等で働きますが、
賃金は、現役(550万円)の半分に減ります。

他方、65歳からは生活習慣病が急に増える歳になり、医療費の個人負担
(30%:70%は医療保険)が、1年に夫婦で30万円はかかるようになり
ます。

(10)60歳のときの退職金の預金で、1150万円に増えていた貯蓄は、夫
が77歳のころゼロに戻ります。

消費税10%では足りず、15%、20%になると、預金の完全取り崩しの年
代は、夫77歳より、はるかに早まります。

試算は、年金は現行のままとしたものです。いずれ70歳からの年金需給
になる可能性が高い。そうなると、収入が平均的な世帯では、70歳頃に
預金がゼロになるでしょう。

■8.退職後の、生活水準の維持のためには

45歳の人の20年後の退職のあとも、現役時代と同じレベルの生活を続け
るには、夫婦2名で1ヶ月に、30万円~40万円は必要でしょうか。

平均的な年金が二人で20~25万円です。10~15万円が不足します。

これを65歳から85歳まで、20年続けるには、退職時に[10~15万円×12
ヶ月×20年=2400~3600万円]の預金が必要になります。物価が上がる
インフレがないとして、です。

現在45歳として、今後40年の間に、年平均で2%のインフレならどうな
るか?  1.02の20乗が1.5倍です。必要な金融資産は[2400~3600万
円×1.5倍=3600~5400万円]に上がります。

(注)インフレになれば、預金金利も少し遅れて上がりますが、銀行の
預金金利は、インフレ率より低いものです。

さて・・・やはりインフレ率以上に利益を出す運用、または金融資産を
減らさない運用を考えないといけません。たぶん、ゴールドの長期保有
です。

金は米ドルの減価ともに、上がることがほぼ期待できるからです。大き
く儲けようと賭けると95%の人は数年で失敗します。金融の原理から言
えば、20%の利回りは、20%の損と同じ確率でのリスクがあるからです
。リスクと利益は等価です。

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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(以上)



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