抜粋:米国中間選挙と、これからのトランプ政策
This is my site Written by admin on 2018年11月12日 – 10:00
おはようございます。 今日は、新聞の休刊日でもあるので、本稿
を送ります。世界から注目を浴びていた米国中間選挙は、上院では
与党である共和党の多数を占め、下院では民主党が勝ち、「ねじれ
国会」という結果でした。 

日本で、米国の中間選挙がこれほど大量に報じられたのは歴史上初
めてです。何を行うか、予測が難しく、ラディカルな大統領令を多
発しているトランプの政策が、今後どうなっていくかに関心があっ
たからでしょう。

【大統領制の中の、米国の議会制度】
日本と同じ2院制とはいっても、米国の議会制度は、国民が直接の
選挙で選ぶ大統領であることもあって、相当に違っています。

(1)参議院にあたる上院の議決の権限が、下院より強いこと。
上院は議員定数が100人で任期は6年、2年ごとの中間選挙で1/3が改
選されます。下院は435名で、任期は2年、中間選挙で全員が改選さ
れます。大統領選はいうまでもなく4年ごとです。今回の中間選挙
では、権限の強い上院で共和党が多数派を維持したので、「大成功
だ」とトランプは言ったのです。

(2)首相を議会が選ぶ、議院内閣制の日本では、内閣の政策は、
法案や予算案としてすべて国会での議決を経て有効になります。

しかし、直接選挙の大統領は、議会の承認を経ないでも有効になる
大統領令を出すことができます。ただし、この命令は、連邦政府機
関の行政に対するものであり、国民に対する法ではありません。

たとえば不法移民防止のための「メキシコ国境の壁を作る」という
大統領令は、就労が目的と疑われる入国の禁止は、移民局で実行に
移されていますが、壁を作る予算には、議会の承認が必要です。こ
のあたりが、首相令がなく、選挙による信任もない官僚が多くの政
策を作っているわれわれには分かりにくいことなので、本稿の具体
例で、示していきます。

(3)初代のジョージ・ワシントン(2期:1789~1797)から、歴史
上出された大統領令は、1万3000件とされます。トランプは、「保
守(共和党)とリベラル(民主党)の分断が強くなった現代の米
国」で、激しい政策の大統領令を頻発することから、世界の注目を
浴びています。

指された大統領令が無効になるのは、
・裁判所が、違法または違憲という判決を出したとき(米国の裁判
所は法令に強く関与しています)、
・議会が、大統領令を修正(または無効に)する対抗法案を通した
とき、です。これが、議会からのチェックです。

他方、大統領は、議会が通した法案の拒否権をもっています。大統
領が拒否権を発動した場合、議会は、改めて2/3以上の多数で再可
決しなればなりません。2/3の議決を経ると、有効になります。

この意味で米国の大統領は、「議会の2/3の議決に相当する行政の
権限を1人でもっている」と言えます。この点が、日本の二院制と
違う点です。

               *

今回送るのは、11月8日の開票日に、選挙速報を見ながら有料版の
増刊(後編)として書いたものです(若干の修正・加筆がありま
す)。

11月7日に送ったものの続編です。トランプ大統領はセッションズ
司法長官を解任しました(相当に重大な事件です)。わが国の法務
大臣にあたり、検察官と裁判官を指揮する立場です。

【ロシアゲート】
2年前の大統領選挙での、ロシアとの「不透明な関係」の捜査に対
して反トランプの動きも見せ、それに対して不満をもっていたから
です。トランプに有利になるよう、ロシアがサイバー攻撃やSNSを
使って、プロパガンダを発し、米国の世論操作をしていた疑惑です。
「ロシアゲート」と言われます。

トランプの悩みのタネがこれです。告発されれば、世界の盟主、米
国大統領の職を失うことに至るからです。

例えれば、安倍首相が、自らの「モリカケ疑惑」を払拭するため、
検察への指揮権(告発を停止する権限)をもつ法務大臣を更迭した
ことと同じです。共和党のニクソン大統領が、民主党の本部に盗聴
器をしかけたウォーターゲート事件(1972年)が明らかになって、
世論の反発を招き辞任に追い込まれたことと似ています。

他にはマティス国防長官の更迭も言われています。北朝鮮への軍事
的なデモンストレーションになる米韓の合同軍事演習、そしてアフ
ガニスタンとシリアへの米軍駐留をめぐって、判断の隔たりがあり、
不快感を表明していたからです。

トランプ内閣の閣僚は二年で「総更迭」に近い(極めて異例)。こ
れができるのは、大統領が直接選挙で選ばれているからです(ただ
し総得票数ではクリントンに負けていまいた)。

【下院での弾劾決議】
中間選挙で、民主党が多数派になり、大統領の弾劾決議をする可能
性が高まっています。ロシアゲートだけではなく脱税、セックスな
ど多数のスキャンダルの疑惑があります。クリントン大統領の、モ
ニカ・ルインスキーとの「大統領室での不適切な関係の偽証」から
弾劾を受けたことが小さく見えるくらいです。

米国の二院制度では、下院で弾劾決議が成立しても、共和党が、微
差の多数派を維持した上院の2/3の賛成での、弾劾裁判が必要です。
上院でその弾劾が評決されると、亡くなったときと同じように、副
大統領のマイク・ペンスが大統領になって残りの任期を務めます。

大統領が起案する予算案と法案でも上院の3/5の賛成が必要です。
単に、国民からの支持率ではなく、任期6年の、上院のエリート議
員が動かす仕組みが、米国の制度です。

●2年ごとの中間選挙で435人の全員が改選された下院(任期2年)
では、事前の世論調査での反トランプが55%くらいと多かったので、
共和党は多数派を失うと予想されていました。

事前予想の通り、民主党223、共和党199、未定13で、民主党が多数
派を奪回しています。

定数100の上院(任期6年)の改選数は35人でした。共和党の改選が
8人、6年前に勝った民主党は、27人と多かった。米国の国会議員で
は、現職の当選率が約90%と高いため、共和党の51:49の多数派は
維持できると見られていました。この結果も、予想通り共和党51、
民主党46、未定3で、共和党が多数派を維持しました。

下院の弾劾決議と、上院の弾劾裁判をもっとも恐れていたトランプ
は、「上院で多数派を維持すること」に精力を注いだ遊説日程を組
んでいました。このため、上院での多数獲得を「大きな勝利」とし
ています。トランプが、形容詞が多く、興奮した言葉を使うときは、
都合が悪いことがあるときです。感情的に、単純な反応が特徴です。

(注)この点では、国会で激高して否定することが多い安倍首相も
似ています。財務省を筆頭とする官僚組織は、首相答弁の辻褄(つ
じつま)合わせのため、文書やデータの改竄をしたのです。

民主党が多数派の予想だった下院では、弾劾決議が予定されていた
ので、上院の35人の改選は、2年目の大統領選挙になっていました。
これが、中間選挙が、大統領選挙の並みに、世界と日本のメディア
から注目を浴びた理由です。

【日本の議会制度とは異なる上院との関係】
予算案や法案は、上院の3/5の賛成がないと、通りません(弾劾裁
判の有効化に必要な2/3の賛成よりは少ない)。大統領の強い権限
を制限するために設けられた、米国の制度です。

●国際経済で、2018年から2019年の最大の懸案になっているトラン
プ関税(貿易戦争)の大統領令については、発動の手続きについて、
上院が過半数の賛成で関与しなければ有効にならないという決議が
すでに通っています。

大統領は、関税発動の権限をもちますが(通商法232条)、その命
令権に制限を加えるものです。(賛成88:反対11)

●仮に上院が共和党53、民主党47議席で決定すると、3/5は60名で
すから、民主党から7名の議員を取り込むことができないと、関税
を含む予算案と法案が通りません。米国の政党には、自民党のよう
な「党議拘束」はなく、比較的自由に個人の立場で賛否を示し、法
案も提出します。

それでも民主党には、選挙、脱税、セックスなど、スキャンダルま
みれのトランプへ反対の勢いが増しているので、民主党議員の取り
込みには、困難がともないます。このためトランプは、民主党が多
数派になった下院の議長候補であるペロシ女史には、早速、言葉を
柔らかくして「協調」を呼び掛けているのです。

今回の「政権与党は、上院で微差の多数派、下院では少数派」とい
う選挙結果から、2012年までの日本の「衆参ねじれ国会」のように
「重要な予算案、法案が通らない事態」が多くなることが予想され
ます。世論作りに影響を与える大手メディアは、もともと、反トラ
ンプです。一方でトランプは、CNNはフェイクを流すと応じていま
す。

セッションズ司法長官の解任は、以上のような選挙結果と米国特有
の議会制度を背景に、発令されています。大統領と議会からいった
ん指名されれば、余命がある数十年の終身の身分になる最高裁の判
事も、これと同じです。

文化的な伝統が少なく、移民で作られた人工国家の米国の、最高裁
の判事は、大統領令と政府政策の憲法適合の評定で、わが国よりは
るかに強く、政治や国民生活に関与します。米国では、法の拘束力
がはるかに強い。弁護士が、日本の50倍(100万人)と多い理由で
もあります。(注)伝統がある王国の英国には、成文法として、ま
とまった憲法はなく、その代わりが、慣習法です。成文憲法がない
国もあることを知っておいてください。

【米国の政治的な世論の分断について】
米国では、特にトランプ大統領になったあと、「右派、左派への世
論の分断」または埋めることのできない乖離が、激しくなっていま
す。支持者層で見ると、はっきりします(中間選挙の結果分析:
WSJ紙による)。

以下が示すのは、何を重んじるかという主義(イズム)と価値観で
の、オセロのような国論の分断です。

(1)教育による政党支持率の差:
  高学歴者の支持率は、民主党支持が80%;共和党支持20%
  民主党の支持者には、高卒者と黒人・ヒスパニックの有色人種
  が多い。
(2)共和党内の党派構成(2018年)
  リベラル派5%;穏健派20%;(急進的な)保守派70%
(3)米国にとっての移民政策
  ・米国の助けになる=民主党支持者のうち72%
  ・米国に悪影響を及ぼす=共和党支持者のうち77%
(4)米国内のもっとも重要な政策課題の、医療保険の提供
  ・政府が行うべきこと=民主党支持者の75%
  ・政府の責任ではない=共和党支持者の81%
(5)米国社会は、白人・黒人のどちらに有利か
  ・白人が得をしている=民主堂支持者の82%
  ・黒人が得をしている=共和党支持の80%
(6)銃の規制について
  ・規制を厳しくすべき=民主党支持の72%
  ・もっと緩和すべきである=共和党支持の77%

自民と共産党の、真逆の政策の違いを強くしたものであり、二つの
国家にも見えるこの世論の分断には、改めて、驚きます。

トランプのアメリカ・ファースト(内容は白人至上主義)が、極端
な右翼的政策である理由には、この「世論の分断」があります。
(注)欧州では、同じポピュリズムでも、ここまで激しい分断はな
い。欧州の基本路線は、社会民主主義です。

【知事選では敗北色】
全米50州のうち改選があった36州の選挙前の知事は、共和党26州、
民主党9州、無所属が1州でした。知事は下院の選挙区の区割りをす
る権限をもつので、国政に影響を与えます。

共和党と民主党の支持率が、およそ50:50で拮抗する米国では、支
持者の居住地の区割りによって、1%差くらいで決まることが多い
議員の当落が左右されます(日本ではこの報道が少ない)。

歴代の大統領も元知事が多い。非改選を含む結果は、共和党が33州
から8州も後退して25州、民主が22州、未定が3州です。ただし共和
党は、大票田のフロリダとオハイオを奪回し、明暗は交錯していま
す。

●大票田の2州を、共和党がとった知事選の結果は、民主党にス
ターが誕生しない限り、2020年の大統領選でも「トランプ再選」が
有利になったことを示します。トランプの、2018年の国内そして外
交政策の目的としていたものは、今回の中間選挙での勝利でした。
2019年からは、2020年の大統領選での再選を目的にした国内・外交
の大統領令が、強く打ち出されることになるでしょう(ほぼ確定)。

【政策変化の可能性】
大切なことは、トランプ政策の変化の可能性です。彼は、次回大統
領選での勝利を目指しています

トランプ固有の性格からして、「与野党ねじれ国会と弾劾決議の中
で、国際的な政策が先鋭化する」可能性が高いと見ています。

米国民が好む、人格面で強い印象を与えるためです。
たとえば、米国では、戦争が大統領の支持率を上げます。

窮地に陥ると普通の人のように大人しくなるのではなく、今回の選
挙結果を受けての記者会見に見るように、「大成功といきり立つキ
ャラクター」です。CNNの記者とは、お互いが罵倒の応酬でした。

今後の米国政治を予想するとき、感情的な性格は重要です。感情は、
知性を経由しない直接的な反射です。「いい/悪い、好き/嫌い」と
いうような、瞬間の全体反応です。

【比較生産費の学説】
本稿では、20世紀後半からの、「産業のグローバリズム」を促進し、
関税が低くした自由貿易が、どう向かうかを予想します。通貨と株
価も関係する、わが国経済にとって重要なことだからです。

トランプ以前の世界の潮流は、農産物を除外品目としながら、工業
品での関税ゼロを目指すTPPでした(環太平洋パートナーシップ協
定)。

トランプは、17年1月にはTPP離脱を宣言しましたが、その後、「復
帰を検討」に転換しています。

■1.世界貿易を推進させた、リカードの比較生産費の原理

【古典派経済学】
リカードは、アダム・スミスの『国富論』の流れを引く古典派の経
済学者です。各国の商品を生むのに必要な労働投入量を数値化する
ことによって、自由貿易は両方の国の経済を成長させることを導き
ました。

経済学が含む原理的な正しさの中で、最高ランクに位置されるもの
と思っています。

古典派経済学は、現代では、ワルラスの、一般均衡論の流れまでの
新古典派として展開されています。イデオロギー(経済思潮)では、
「規制のない自由な市場と経済活動の擁護論」になっているのです。

【経済のイデオロギーとわれわれの考え】
経済イデオロギーは、われわれの意識しない底にあるもので、その
イデオロギーから、われわれの政治的、経済的、経営的な考えがで
きています。われわれの考えは、実証科学とされている医学に至る
までも、いろんなイデオロギーの混合でできているのでしょう。

個人で違う、混合やかけ合わせの度合いが、創造と言われるもので
しょう。AIに論文を読ませると(AIは言葉の意味は理解しません。
記号のつらなりの規則を発見して理解するのです)、これが明らか
になります。AIも、新薬を創造する論文を書くからです。しかし
AIは、実は創造していない。過去の論文の成功部分を、複雑につな
ぎ合わせているだけです。

(注)AIはリンゴを理解することなく、柿や桃とは違うリンゴだと
認識します。強化学習を進めるとリンゴの種類、品質、味も区分し
ます。

ここでは、単純化したモデルで、比較生産費説(比較優位説とも言
う)を振り返ってみます。米国10%から25%という高いトランプ関
税によって、自由貿易が阻害されようとしているからです。

【比較生産費の計算】
日米で自動車と牛肉を生産し、貿易はしていないと仮定します。

〔生産費〕
・日本では、自動車が国内の比較生産費が低く、10人の労働で車を
10台生産できると仮定します。比較生産費の高い牛肉では20人の労
働で10トンを生産できるとします。
・米国では、10台の日本と同質の車の生産に20人の労働がかかり、
国内の比較生産費が優位な牛肉では、15人の労働で10トンを生産で
きるとします。

貿易をしてないときの日本と米国の合計生産は以下になります。

       日本   米国   合計
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自動車生産  10台   10台   20台
必要労働   10人   20人   30人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
牛肉生産   10トン  10トン  20トン
必要労働   20人   15人   35人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計労働   30人   35人   65人     
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日米合計で、自動車は20台生産され、30人の労働量を必要としてい
ます。牛肉の生産では、20トンで35人の労働を使っています。これ
が自由貿易をしないときの、両国合計の生産量です。この生産量を
金額で言うと、GDPになります。GDPは、実質生産金額であり、企業
と世帯の総所得であり、商品の需要額と投資です。

ここで両国が、比較生産費の低い(=生産性の高い)商品の生産に
特化し、比較生産費の高い商品は100%を輸入するとします。

(注)実際の貿易は100%ではありませんが、モデル化(単純化)
のため100%とします。50%でも類似の結果が出ます。モデル化は
学問の方法です。現実は複雑ですから単純化して理論化します。

●両国の生産は、以下のように変化するでしょう。
       日本   米国   合計
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自動車生産  30台   0台   30台
必要労働   30人   0人   30人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
牛肉生産   0トン  23.3トン 23.3トン
必要労働   0人   35人   35人
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計労働   30人   35人   65人     
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

貿易をしていないときの合計生産量は車が20台でしたが、30台に増
えています。10人で10台を生産する比較生産費の低い日本が作った
からです。これによって車のGDPは1.5倍に増えました。

同様に、牛肉は米国生産に特化することで20トンが23.3トンと、
16.5%増えています。牛肉のGDPも16.5%増えたのです。数量の実
質GDPは実質所得なので、企業と世帯の実質所得も、同じ額、増え
ます。

【結果は経済成長】
このように、各国が国内の比較生産費(労働投入量の少なさ:生産
性の高さ)で優位にある産業に特化して、必要なものは輸入するこ
とにより、両国のGDPが高まることを、数学的に証明したのがリ
カードの比較生産費でした。経済学の初級で学ぶことです。高校で
も教えています。トランプは知っているでしょうか。

空洞化したラスト産業の、労働者の票を得ることが目的です。票を
得るのは、第二期も大統領を続けるためです。自分の目的のため、
経済成長を犠牲にしたのです。

●大切なことを言えば、生産費(1単位の商品を生産するのに、必
要な労働コスト)の比較優位は、国内でのものであることです。他
国との比較優位で劣っていても、国内での比較生産費が優位であれ
ば、その生産に特化し劣位の商品は輸入すればいい。

この原理が、戦後の20世紀後半からの思潮である「自由貿易と産業
のグローバル化(グロ-バル・サプライチェーン)」を生んだもの
です。

【必要な労働の移転】
ただし自由貿易でのGDPの成長には、労働の移転の調整期間が必要
です。古典派経済学は、他のいろんなところでも、調整の時間とい
う要素を無視しています。

米国は、現在、約50兆円分の商品を中国から輸入しています。いす
れも、人件費の低い中国が、比較生産費で優位にあるものです。

【中国輸入への課税】
トランプは、2017年9月から、約50%の品目に、10%の関税を課す
という大統領令を発令し実行しています。2018年からは10%を25%
に上げるとしています。50兆円の全品目にも拡大する方針があると
も言う。

【日本企業にとって】
米中両国のGDPの成長率(=所得の増加率)を鈍化させる愚策です。
中国の輸出のうち、50%から70%は日本、台湾、香港、アメリカ、
ドイツの外資企業です。

中国からの対米輸出が減るとなると、日本の中国企業の輸出額も減
ります。GDPは国内総生産なので、日本企業への国内から中国への
部品などの輸出分が減ったようになります。中国への関税は、外資
である日本企業も対象にしています。

中国に進出している日本企業は、早速、ベトナムや東南アジアへの
移転を検討して実行しています。しかし、ベトナムや東南アジアか
らの対米輸出が増えると、どうなるかという不透明さは残っていま
す。トランプはどこの国からであれ、「輸入の超過」を問題にして
いるからです。

世界の生産は、基軸通貨国の米国が海外にドルを散布して輸入超過
を続けることができるという前提から、過剰な生産力をもってしま
ったのです。

■2.トランプ政策の激化の予想

ロシアゲートなどを理由にして下院の弾劾決議があると、大統領を
続けることを目的にしているトランプは、一層、激しく、ポピュリ
ズム受けがする過激な政策を打ち出すと予想します。弾劾決議で、
政権がレーム・ダックになるのを、ぼかして避けるためです。

日本の安倍首相も、総選挙も含んで、「スキャンダルのぼかし回
避」の政策と国会運営をとり続けています。迷惑なことですが、
「モリカケ問題」は、今も、安倍政権の政策と対策の動機になって
います。このため、議会の開催中には、安倍政権の支持率が低下し
ています。

分断国家になっている米国の政策では、「2020年の再選を目指し
て」、何が出てくるか分かりにくくなっています。強い支持率に、
もっとも効果のあるものは、戦争です。イランと敵対するアラブへ
の介入の強化でしょうか。貿易黒字が約11兆円の、日本からの輸入
への関税は、強化される方向です。一般論では輸出を増やして輸入
を減らす円安への、政府介入への非難も行っているのです。

【選挙結果を写す株式相場】
選挙がない年の、米国株式市場(もっとも広範囲な指数のS&P500
社)は、1942年以来、年末にかけて2桁の上昇を見せています。と
ころが、中間選挙があった年は、平均6%でした。年間の平均上昇
の9.1%を3ポイント下回っています。過去の中間選挙では、与党が
負けるケースが多く、政治不安を理由に、売りが増えていたからで
す。

今回は、開票結果が明らかになる前の11月6日から11月8日は、
2735ポイントから2781ポイントへと、1.7%(1日平均0.55%)上が
っています(S&P500)。ところが、結果が明らかになった11月9日
(金曜日)には7ポイント(0.25%)下げて、10日には26ポイント
(0.92%)下げています。開票前の上昇を帳消しにした下落です。
週明けはどうなるか。

米国FRBは12月の利上げ(0.25%)を予定していることを発表して
います。レバレッジのかかった過剰流動性相場にとっては、利上げ
はレバレッジの解消を意味し、株価を下げる要素になります。

今回の中間選挙の結果を見た米国株価の動きからは、投資家心理が、
高すぎるPER(17倍台の水準)から、高所恐怖症に傾斜しているこ
とも伺えます。

政策が通りにくいねじれ国会になった政治を見て、年末に向かった
例年の、株価の上げはないかもしれません。トランプが就任して以
来の株式市場は、10年で1.5兆ドル(165兆円:1年16兆円)の大幅
な減税策、北朝鮮との首脳会談、関税政策を歓迎して、40%も上げ
てきたのです。

2016年10月には2085ポイントだったS&P500は、18年9月末には2913
ポイントまで40%の上昇であり平均年率で20%の高騰です。
現在は2781ポイントで、9月末からは、132ポイント(4.5%)下げ
ています。

ちょうど2年間、株価を上げたもっと大きな要因は、大幅減税でし
た。減税は、企業の税後純利益を増やし(PERを下げ)、投資家が
投資に回す税後所得を増やすからです・・・

・・・無料版は、ここまでにさせていただきます。続きの有料版の
全体は、以下のページで申し込めば購読ができます(↓)。
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