政府の債務での、本当のこと(抜粋)
This is my site Written by admin on 2018年12月10日 – 10:00
おはようございます。政府の債務については、立場によっていろん
な見方があります。まず政府の債務が、財務省では「国の債務」と
されていることの誤りです。次は、国債を日銀が買えば、政府の債
務ではなくなるという見方です。三番目は、政府のバランスシート
を作ると、1470兆円が負債であるが、資産が986兆円あるので、債
務は483兆円に過ぎないという見解です。

この3つは、いずれも誤りであることを、本稿で示して行きます.
先週の有料版(全22ページ)からの10ページの抜粋です。

           *

今回のテーマは、「日本政府の、債務の本当のところ」の追及です。

来年の10月から、消費税が2ポイント(=25%)上がります。今度
は、直前での停止がないようです。2年前の2016年には、「欧州が
第二のリーマン危機に向かっている」として、安倍首相が延期しま
した。議長国のこの発言は、メルケル首相から顰蹙を買ったのです。

【消費税の増税】
増税は、新規の国債発行として累積負債になる政府の財政赤字を減
らしていくためです。2017年の、8%での消費税での政府収入は、
17.6兆円でした(1%当たり2.2兆円)。

2013年までの5%のときより、毎年7兆円(65%:GDPの1.3%)増え
ています。5年で35兆円の政府収入の増加であり、可処分だった国
民の所得から増加徴収されています。

消費と投資の景気は悪くなるに決まっていますが、2014年4月の、
3%の上げのときは、政策に都合のいいことを言う政府と、官庁エ
コにミストから「日銀が、1年に80兆円もの円の増刷をしているか
ら、消費に影響はない」とされていました。

事実では、2015年の世帯消費額(GDPの約60%を占める)は、物価
が消費税分の3%上がったことと同じになって、実質では3%程度、
減少したのです。

【9か月間の還元セール】
今回は、それを避けるため、政府による「2%から5%の還元セール
(クレジット・カードや電子マネーを使ったとき:9か月間の予
定)と公共事の積み増し」が計画されています。住宅ローン減税も
延長されます。

消費税は、所得税(法人税+個人所得)のようには景気で変動せず、
毎年、予算に組める確実な収入が期待できる、大きなものです。

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   <977号:政府の債務での、本当のこと>
      2018年12月5日:有料版

【目次】

1.政府の債務は、本当は、いくらなのか
2.国債は、後世の子供の負担になるものではない
3.政府のバランスシート
4.政府部門は資産を986兆円もっているから、負債は483兆円とはる
かにすくないという説
5.オフ・バランスの政府負債が、将来の社会保障費
【後記:ドル基軸体制に入ったひび】

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■1.政府の債務は、本当は、いくらなのか

▼「国の債務」という用語をめぐって

【誤用とその意図】
政府は、2002年から、民間の会計に倣い、「国の財務書類」を作っ
ています。国民の声に押されたためです。

近年は、メディアやエコノミストが、ほとんどとりあげませんが、
毎年作られ、最新版は平成28年(2016年度の分)です。政府会計の
集計は、約1年遅れます。

財務省が、「国の財務書類」とするのは、意図した誤用です。

国は、経済主体としては政府(+自治体)、260万社の企業、5300
万の世帯から成ります。したがって「政府の財務書類」と言わなけ
ればならない。政府の借金(国債と長短借入金からなる負債)は、
企業や世帯の負債ではないからです。財務省が、「国の」とすると
ころに、「国債は、世帯も共同に負うべき負債に見せたい」という
意図が見えます。

1990年代には、米国商工会議所のエコノミスト、リチャード・クー
氏は、「国債は一家の父(政府)が、母(国民)から借りているこ
とと同じもので、借金ではない」と経済討論会で述べていました。

意図してかはどうか不明ですが、彼も政府と国を区分しなかった。
気恥ずかしいので名前は挙げませんが、御用学者にも多い論拠です。

【徳川幕府の借金と同じ】
これは、徳川幕府の借金は、国民から借りたものだから借金ではな
いと強弁するのと同じです。「国=政府」とする概念の意図的な誤
用です。

政府は、企業や世帯を含むものではない。国は、「政府+260万の
企業+5300万の世帯」の集合体です。王国でも王の政府と国民は別
でした。

【政府と国は、別のもの】
敗戦でも、「軍隊をもつ政府」が破れます。徳川時代が明治に変わ
ったときも、政府が変わった。徳川時代と明治の国民は同じでした。

現財務大臣の麻生氏も、講演で同じ趣旨を述べています。

▼麻生大臣の2つの間違い

「日本の借金は、国内の国民からのもので、破産したギリシアのよ
うに外国からの借り入れではない(ギリシアは海外がもつ国債が
60%)。したがってGDPの2倍の政府負債でも、何ら問題にならない。
返済するときは、(政府の一部門の)日銀が円を刷ればいいだけだ。
国(政府)は、返済にも困らない。」

海外が貸し手であっても、円国債の償還には、ドルではなく円を刷
って渡せばいいので、ギリシアのように海外からの借金でも同じで
す。麻生財務大臣は、ここでも間違えています。麻生氏が笑ってい
た櫻田オリンピック担当大臣の無知と同じ水準の無知です。安倍首
相も同じです。

ただしこの場合は、通貨の増発による通貨1単位の下落(大きな円
安)があるので、円を刷ってインフレで価値が下がる円で渡すと見
られた瞬間に、円国債が売られて円金利が高騰し、国債が暴落しま
す。通貨の大増刷は1単位の円が下がる円安を招きますから、円国
債をドル圏がもっていると損をするからです。

これは国民が貸し手のときも同じです。マネー・サプライ(国民の
預金)が、1年に10%以上増え、円の実質価値が下落すると見られ
ると、10年後に名目金額しか返済しない国債が売られ、国債価格は
下がって、金利が上がります。

100万円の額面の国債は、2%のインフレが10年続いても、返済額は
100万円だからです。現在は、日銀が450兆円の円を増発してもベー
スマネー(銀行が日銀にもつ当座座預金)が、増発分上乗せされて
増えているだけで、世帯と企業の預金であるマネーサプライの増加
率は異次元緩和以前と変わらず、多い月も3%台でしかない。

このため通貨の増発は、2012年比で「1ドル80円→112円」と40%の
円安は招いても、政府目標の、2%の物価の上昇はないのです。わ
が国の経済では、物価の面では無効だったのが異次元緩和です。円
安分、輸入物価を上げたにすぎません。

▼国債の実質価値

2%の期待インフレ率になると10年後の実質価値は、1.22倍に上が
った物価や所得に対し、「100万円÷1.02の10乗=100÷1.22=82万
円」に下がります。期待インフレとは、将来のインフレへの、金融
市場での集団的な予想です。

下がる実質価値を回復するため、国債が売られて価格が下がり、下
がった価格(例えば82万円)に対する受取金利率を、期待インフレ
率の2%に合わせて、高める。これが債券の原理。

「長期国債の金利≒実質GDPの上昇率+期待インフレ率」になりま
す。期待インフレとは、金融市場の多数派によって予想される近い
将来のインフレ率です。

【自然金利から乖離した長期国債の金利】
2018年には、わが国でも期待インフレ率が1.2%と高くなっていま
すが、日銀による、2%の物価上昇という目的を失った国債の買い
増し(今は年40兆円)により、長期国債の金利は0.07%と、1.13ポ
イントは低く押し下げられています(18年12月4日)。

本当は、財政のファイナンスを、金融の緩和策とする人為で、実質
的な価値より、約12%高く買われている「国債バブル」でしょう。

(注)米国の期待インフレ率は、18年9月の2.9%から、2.4%に下
がっています(12月4日)。トランプ関税による、中国の商品生産
の減速予想からの、原油の75ドル(9月18日)の高値から52ドル
(12月8日)へと31%の下落が、大きな要素です。
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html

野党は、首相のスキャンダルより、国債発行の担当大臣の発言を
「通貨増発とマクロ経済の理論」から追求すべきでしょう。なぜか
「2%のインフレは必要」としてその気配すらない。

■2.国債は、後世の子供の負担になるものではない

その上で、野党も「国債は、後世の子供の負担になる」という。国
民は、借金をしていません。国債は、国民の借金ではない。

逆に国債は、銀行と生保が世帯と企業の預金(約1200兆円)を振り
替えて買ってきた金融資産です。

借金をしていない世帯や企業が、将来、国債の返済負担を負うとは、
どういうことか。語られなていない前提が、2つあります。

「政府は、(1)将来の大増税を行うこと、(1)その収入で返済と
利払いをする。だから後世の子供の負担になる」という前提から
(約10年後以降の)、後世の国民の負担論が成立します。

返済をせず、GDP比で約2倍を維持できるなら、形式的には、負担は
生じません。実質的には、負担が生じるかも知れません。「物価の
上昇=実質所得の減少=見えない課税として」です。

▼インフレは、見えない課税

国債は、名目の金額(例えば1000兆円)が同じでも、インフレにな
ると実質額が減少します。政府が目標にしている2%のインフレで
は、15年後に物価が1.34倍です。

そうすると、1000兆円という借金の額は同じでも実質価値は
「1000兆円÷1.34=746兆円」に減少します。2%のインフレにより、
15年間で、256兆円返済したかのようになるのです。

この256兆円が、見えない課税です。
その分、国民の所得の実質額が減っています。

現政府の2%のインフレ目標は、毎年、550兆円の名目GDP(2018年
8月)の2%(11兆円)を、国民に課税することを政策目標にしてい
ることと、実質の効果では同じです。

政府・日銀がまだ旗を降ろさない2%のインフレ目標は、「2%の消
費税を上乗せする課税」と効果が同じものです。

【ケインズは、これを「貨幣錯覚」と示していた】
ケインズは主著の中で、「(名目所得への累進課税の制度では)物
価の上昇は「見えない課税」であることに、国民は気が付かない。
物価上昇分、所得が上がると喜んですらいる。」と述べています
(『一般理論』)。

数字が書かれた1万円を、いつまでも1万円の価値(=商品購買力)
があると考えてしまうからです。

賃金などの名目所得が減ると、激しく抵抗しますが、2%の物価上
昇で2%ずつ実質所得が減ることには抵抗がない。むしろ、借金の
大きな政府の立場に立って、歓迎します。

政府・日銀が2013年4月から掲げた「インフレ目標2%」は、1280兆
円の総債務がある政府にとっては、2%の消費税課税と同じ増税の
政策でした。異次元緩和では、それが果たせなかった。

今度は、消費税2%の増税。2%増税すれば、物価は消費税が付加さ
れ2%は上がります。2020年度の賃金でも、2%の消費税負担のため、
2%を上乗せした上昇要求が、出てくるでしょう。

■3.政府のバランスシート

国債の、借金の性格についての前置きが、長くなりました。担当の
麻生財務大臣を筆頭に、政府・財務省・官庁エコノミストが「国と
いう概念を誤用した、国民への目くらまし」を続けているからです。

もうひとつの目くらましが「国の財務書類」に含む連結のバランス
シートです。もともとは、政府が負債の目くらましをしないために
作ったものですが、2点の隠蔽があります。政府は、嘘をつくもの
でしょうか。

日銀の異次元和を、「白川日銀がマネーを絞ってデフレに陥れた日
本経済を成長させる、2%のインフレが目標であり、財政ファイナ
ンスではない」という、450兆円の円を増発した歴史上最大の嘘を
言い続けていることからも、嘘が本質と思えます。

森友・加計学園問題での、首相の嘘は、財務省の嘘に比較すれば矮
小です。中国政府や米国政府も、嘘をつきます。嘘が比較的に少な
い北欧を除き、政府は嘘をつくことが本質とも思えるのです。
https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm

(注)2015年11月に、「(当代の人気エコノミスト)クルーグマン
の白旗」として、「流動性の罠の論」が仕掛けた異次元緩和の失敗
を、当人のIMFでの講演から取り上げました(4号のシリーズ)。
NYタイムズで知ったのです。

異次元緩和は、日銀が買った銀行の国債を現金化しても(ベースマ
ネーの増加)、世帯と企業の預金であるマネーサプライの増加には
ならなかった日本経済への認識の誤りを、述べていました。

まぐまぐのバックナンバーに、過去の全部があります(↓)。当方
にとって、950号と主旨替えしたことを書くことは難しい。過去の
証拠が残っているからです・・・約30分、平均律で、休憩します。
        https://www.mag2.com/archives/P0000018/

▼項目を寄せて単純化した、連結貸借対照表

政府財務での「連結」とは、一般会計、特別会計、郵貯、年金基金、
独立行政法人間の資産・負債を相殺した合計を言います(2016年末
時点)。この後は、ゆうちょが、株を上場して民営化され、連結か
ら外れています。

財務省が最上位の官庁として管理している、国家財政の全体を示す
ものです。ただし、財務省が55%の株式をもつ政府機関の日銀の資
産・負債は、連結から、なぜか除外されています。

【資産】           【負債】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現金・預金    129兆円  国債・短期証券  909兆円
有価証券    369兆円  郵貯の預金    178兆円
貸付金     158兆円  公的年金預り金   122兆円
その他流動資産 37兆円  未払い金等     7兆円
出資金     20兆円    責任準備金     98兆円
固定資産    269兆円   借入金       35兆円
その他      4兆円   その他債務    120兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
資産総計    986兆円   負債総計     1470兆円
               債務超過    483兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

政府の連結財政では、負債が1470兆円、それに対応する資産が986
兆円で483兆円の債務超過になっています。

資産として残らない財政支出(大きなものでは年金56.7兆円、医療
費38.9兆円、介護費10.6兆円、防衛費5.2兆円、教育関連費5.4兆
円)が、税収を超過し、1年に35兆円から45兆円くらい借金が増え
てきたからです(年平均40兆円)。

社会保障の給付は、合計で一般会計の100兆円を超える120.4兆円に
増えています。2040年頃まで、1年に2.5兆円(約2%)は増えます。

保険料の収入は、68.6兆円しかなく、国民に約束している120.4兆
円の支給に対して不足する51.8兆円が、赤字になっています。

社会保障費の不足が、高齢化が進んだ2000年代以降の、赤字国債発
行の主因です(2017年度:日本の財政関係資料)。
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201803.html

政府資産の全部を、売ることできる資産として有効なものとしても、
資産を負債が超過する債務超過は、483兆円です(2016年度末:上
記)。

政府機関である日銀は、470兆円の国債を買い上げ、日銀当座預金
という負債を増やしています(18年11月)。

この470兆円が、国債と振り替わったベースマネー(日銀の金融機
関からの現金負債)と、現金発行の増加分です。

【政府B/Sの、評価の誤り】
日銀と連結で見なければならない政府のB/S(バランスシート)の性
格を読み誤った蛮勇の論者は、470兆円の国債は日銀が買い受けて
いるから、政府の純負債483兆円は、今は13兆円しかなくなってい
る。実質的な無借金が、日本政府だと述べています。

今後も、増加発行の赤字国債を日銀が買えばいい。
日本政府には今も将来も、国民への負債はないと主張します。

財務大臣の麻生氏も、国債の返済は、日銀がマネーを刷れば簡単に
できると、公開の講演で言っていますから、日銀を含む政府部門の
連結バランスシートを読むことができていない論者と同じです。麻
生氏が、例の調子で口を歪め、「ここで、本当のことを言えば
ね・・・」として述べたことが、これでした。

実際は、国債が、日銀の現金の負債(日銀当座預金)に変わっても、
政府部門の連結負債としては同じです。

蛮勇の論者と麻生財務大臣は、重大な誤りを犯しています。
安倍首相も、同じ考えかもしれません・・・(後略)

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