政府の財政破産について
This is my site Written by admin on 2022年3月27日 – 16:00
国会には「財政金融員会」があり、金融と財政の基本問題を審議して
います。

(注)本稿は、有料版、無料版共通の増刊とします。有料版の正刊は、
水曜日に送ります。ウライナ戦争には、東部ドンバス地方の割譲で
近々の「停戦合意」の可能性が40%から50%くらい出てきました。
ロシアは、最初からウクライナ占領の目的はなかったと言っています。
ウクライナのゼレンスキーは、東部ドンバス地方(ルガンスク、ドネ
ツク)の独立だけなら、承認すると言い始めたのです。

22年3月22日には、西田昌司が財務省と日銀への質問に立ちました。
西田氏は、「(日本政府の)財政破産はありえない」と、かねがね主
張してきました。自民党の「コワモテの論客」とされています。

しかしその質問が含む主張のなかには、本質的な間違いがいくつもあ
るので、増刊の本稿で、丁寧に、指摘していきます。

西田氏と衆参議員(710名)のうちほとんどの人は、共通の考えをも
ち、メディアや大半のエコノミストにも類似するでしょう。

youtubeで見ることができます。
(2022年3月15日:参議院 財政金融委員会での質問)
https://www.youtube.com/watch?v=4d722ze-j2w

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■1.西田氏の質問(1):

銀行は、貸付金として無から信用創造を行い、(預金という)マネー
を生むことができます・・・

▼[間違いの指摘1]

銀行が貸付金としてマネーを創造しているのは、事実です。
日本ではマネー・サプライが1532兆円です(郵貯を含むM3)。
M3は(1)世帯(約900兆円)と、(2)法人(約500兆円)の預金、
(3)そして、預金から引き出した現金(119兆円)です。現金は日銀
の発行ですが銀行預金から引き出したものです。その源泉は預金です。

(マネー・サプライ統計22年3月:日銀はマネーストックとする)
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms2202.pdf

【原理:マネタリー・ベースとマネー・サプライは別のもの】
日銀のマネー創造として供給されるのは、企業や世帯に対してのM3
(マネー・サプライではない。これは、当座預金の口座のある金融機
関(銀行、生損保、証券会社)に対してのものです(534兆円のマネタ
リー・ベース)。

一方、企業や世帯に対してのマネー創造は、銀行が行います。
これがマネー・サプライ(M3)です。M3は、銀行預金+郵貯であり、
約1500兆円の残高です。

M3はマクロ的には、日銀ではなく、銀行が貸付金として信用創造した
ものです。日銀には、個人と法人は口座をもてず、個人・法人への貸
し付け機能、つまりマネー発行力はありません。

マネー・サプライのなかの預金を使って、AさんからBさんに支払って
も、預金の口座間の「振り替え(送金)」なので、マクロのM3は減り
ません(同じ額です)。

クレジットカードが15日に決済されたとき、自分の預金は減りますが、
クレジットカード会社の預金が、同じ金額、増えています。

マネー・サプライの預金は、経済の取引(消費と金融商品の売買)の
際、決済に使われます。

【信用創造(貸し付け)には、担保が要る】
「銀行は、貸付金として信用創造する(預金マネーを作る)というのは
正しい。しかし・・・「無から信用創造」するという西田氏の論は、
間違いです。ここには「信用創造の原理」が関係しています。

銀行がマネーを貸すのは、借り主に「信用」があるときだけです。
その信用は「借り入れたあと、借り主が利払いと返済ができる」とい
う借り主の経済(財政ともいう)への信頼です。

その信用が物的な資産であるときが担保ですが、上場企業に対しては
信用のみを担保に貸すこともあります。

借り主の信用がもとになるのが、銀行側にとっての「貸付債権という
資産」です。銀行は貸付債権に資産としての信用があると審査して、
貸し出しを行います。
 ↓
借り入れの申し込みがあった人に、無差別・無審査で貸せば、破産し
ますからこれは絶対にしない。無審査は不正融資になります。

マネー・サプライの増加である貸付金を
           創造した銀行のバランスシート
   【資産】         【負債】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
貸付債権  5000万円  Aさんの預金口座 5000万円

これが、銀行がAさんへの貸付債権という回収の権利を、5000万円の
現金を払って買った、という経済取引の記録です(簿記という)。

経済取引では「資産として無価値なもの(=山の雑草や月の土地)」
を買うことはない。(注)月の土地は売られていますが、売却するとき
の経済価値はない・・・。

「貸付債権の価値」とは借り主が利払いし、額面を返済がきるという
信用です。信用とは、相手の現在の状況から将来を予想することです。
信用がある人は、過去の事実と違う嘘を言わない人でしょう。
銀行は、資産や所得の粉飾(嵩上げ:上げ底)が分かれば、お金を貸
しません。

相手先への資産信用をもとに、銀行がマネーを貸すことは、経済学的
には、「相手の返済能力を買う」という行為です。

【日常の信用創造】
医師が、病院に来た患者の診療を行うのは、医道の倫理の領域からで
はなく、経済的に言えば「診療したあとの、患者の支払い能力を買
う」ことです。

治療後まで、30分くらいです。ここでも、30分は売掛金の創造という
「商取引にともなう信用創造」が行われています。

3か月後の支払いになれば、3か月の信用創造です。患者が逃げれば、
その売掛金に損失が生じ、病院の損になります(これが不良債権で
す)。

無保険者が4000万人という米国では、医療保険のない人、クレジット
カード(あるいは現金)がない人には、普通、診療をしません。

倫理が強いはずの医療であっても、無から信用創造(=超短期売掛金
の創造)は行われていない。米国では「赤ヒゲ」のように人道的な医
療倫理から、倒産する病院も多いのです。

国家の信用創造とは、国債の発行と銀行への売却です。これも、無か
ら行われるものではない。国債を買う銀行は、「国債は利払いと返済
が100%確実である」という、国家の未来の返済能力を「買って=信
用して」、現金を振り込んでいます。

【信用の低い、トルコリラとトルコ国債の事例】
例えば、現在、トルコの国債(10年債)の金利は、23%です。高い金利
の意味は、トルコの物価上昇が48%(22年1月)であり、トルコリラ
の価値が大きく下がっていることです。10年後の満期に政府から100
%のリラの償還があっても、トルコ国債の信用は低いということです。

高いインフレ率からリラの価値が下がっていることは、トルコの財政
が拡張しすぎであり、財政の信用が低いということです。

日本でも、2022年、23年に3%のインフレが長期化するという認識が
広がっていくと、日銀が利下げに介入しないときは、国債の金利は2
%に上がるでしょう。長期化とは、経済的には1年以上の期間です。

トルコでは、高いインフレのため、銀行がトルコ国債を買うとき、政
府の国債の額面と発行金利とは無関係に、23%の金利に上がっていま
す(国債の売買価格は暴落)。(注)国債の金利≒長期の期待インフレ
率・・・期待インフレ率は、現在のインフレを加味して予想される、
長期のインフレ率=BEI+5年もの国債の固定金利

債券の回収リスクを示す金利が上がることは、債券の発行元(=借り
主)の資産信用の低下を判断したことを、示しています。

銀行が、無から信用創造を行えるのなら、債券の発行元(借り主)の
信用は無関係になり、金利は、貸し付けの事務手数料(経費)だけに
下がりますが、これは現実にはないことです。

西田氏は「(日本政府の)財政破産はありえない」というとき、銀行
は無からの信用創造を貸付金として行うという前提で、立論していま
す。

つまり、金融論(ファイナンス理論)の基礎を知らずに、否定してい
ます。前提を誤ると、その後の論は、全部間違えるのです。

【インフレよる金利の上昇で、日本政府は財政が破産する】
「(日本政府の)財政破産はありえない」という間違えた結論に至り
ます。1200兆円の国債残がある日本では、3%以上のインフレが長期
化すると、長期金利は、2%には上がり、日本政府が財政破産するか
らです。

財政が破産しても(デフォルトになっても)、民間法人の倒産という
概念がない政府と日銀は続きます。

たとえば日本の戦後は、GDPの250%の、戦費国債の利払いと返済が、
1円の通貨の価値が同じならできなくなった政府・日銀は、1銭(1/
100円)を1円にして(日銀が通貨を円で100倍発行しました、つまり、
通貨単位を1/100に切り下げ、物価は300倍に上げて、政府財政と日銀
は続きました。

第一次世界大戦のあとの、ドイツのハイパーインフレのときは、1兆
マルクを1マルク(レンテンマルク)にしました(1923年)。

財政の破産の被害者は、国債と通貨を発行する政府・日銀ではなく、
戦前の預金の価値が物価に対して1/300になった日本国民でした。

40年以上前に亡くなってしまったお爺さん・お婆さんさんの世代が、
戦後は「国債、預金、通貨が紙きれになった」と言っていたことを覚
えている方も、いるでしょう。

現在のトルコのような、政府の財政破産の犠牲者は、価値が下がるリ
ラの預金が資産の国民です。(重要な事実)政府と中央銀行は、負債
の価値がなくなるので、財政破産では、利益を得ます。

西田氏の論は、MMT(現代貨幣論)が含む根本部(インフレと金利)で
の誤りから来たものです。MMTの説明をステファニー・ケルトンから
聞いて(あるいは、また聞きか?)、「これだ!」と思ったに違いな
い。

日本では約30年、インフレと金利の上昇がなかった。30年は、経済の
1世代です。経験がないと、インフレと金利の上昇はありえないと思
えてくるのが、普通です。

質問が行われたのは、コロナ危機とウクライナ戦争から、世界の物価
が上がっている22年3月22日です(米国7.9%、欧州5.4%、日本0.6%
:携帯電話分-1.8%を引いた実質では、+2.4%:22年2月)。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA181RR0Y2A310C2000000/

自民党の論客とされている西田氏(元税理士)には、「2022年からのイ
ンフレという経済への認識」がない。これが政治家です。西田氏の見
解は代表的なものと見ていいでしょう。うそ寒くなってきます。日銀
の黒田総裁も、西田氏と同列です。

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■2.西田氏の質問2:

銀行は預金を貸すのではなく、何もないところから信用創造している、
これは、これでいいですね。

▼[間違いの指摘2]
銀行は預金を貸すのではないこれは正しい。
しかし「何もないところから信用創造している」というのは、間違い
です。

銀行は「借り主の信用を担保にとって」、貸し付けています。借り主
に信用がないとき、あるいは物的担保(多くは不動産)がないときは
貸しません。借り主の信用とは、借入金を、事業収益から利払いして
返済できるという信用です。

銀行のバランスシート
    【資産】         【負債】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
貸付債権  5000万円  Aさんの預金口座 5000万円

この複式簿記は、貸し付けという取引が、等価交換(=経済学的な売
買)であることを示します。税理士の西田氏は銀行のバランスシート
を見たことがなかったのでしょうか。見たことはあっても、B/Sの意
味が理解できなかったのでしょう。

銀行は貸付債権が回収できると判断したときしか貸しません。
「何もないところから信用創造している」のでない。
何もないところから信用創造すれば、銀行は破産します。

以上の前提があるため、以降の質問の立論は、全部間違えることにう
なっています。(再録:youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=4d722ze-j2w

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■3.西田氏の質問3:

政府が、(赤字)財政の拡張を国債の発行で行い、その国債を銀行が
買い取ると、同じ金額の民間の預金が増えることになりますね。これ
が事実ですね? (これに対して財務省はYESと答えています)

この質問には、2つの、間違った観念が含まれているので、説明が多
少長くなります。

▼[間違いの指摘3]

日本では、政府の国債(1200兆円)のうち、530兆円を日銀が、銀行
から買って、銀行の当座預金を増やしています。銀行、生損保、政府
系銀行、外銀の円国債の買いは、約670兆円分です。

日銀は、円国債を買って、530兆円の通貨を、発行しています。
日銀による信用創造で増えたのは、民間銀行が、日銀に預金口座をも
つ当座預金だけです。これは民間銀行の、世帯や法人に対する信用創
造(貸付金の増加=預金の増加)ではありません。

【マネー・サプライとベース・マネーは、違うものである】
日銀の信用創造(=通貨増発分)は、
・世帯や法人の銀行預金の「マネー・サプライ」と区分し、
・ベース・マネー(マネタリー・ベースともいう)です。
 その国の金融の、基礎的マネーという意味のものです。

民間銀行の貸出金(=マネー・サプライ)は、貸し付けの増加によっ
てしか増えません。民間銀行の貸出金は、世帯と法人(=これが民
間)の預金です。その合計が、「マネー・サプライの約1500兆円」で
す。

西田氏の質問の、「その国債を銀行が買い取ると、同じ金額の民間の
預金が増えることになりますね」と言うのも、間違いです。

銀行が、
・政府から直接に国債を買った場合、
・民間銀行がもつ日銀当座預金が、
・政府の日銀当座預金に振り替わります。

ベース・マネー(日銀当座預金)のマネーの発行量は、増えません。
増えた政府の当座預金を入れれば、同じ金額です。

政府は、税収と国債の増加発行で得た現金は、いったん日銀にある政
府当座預金に入れて、そこから支払います。政府に巨大金庫があるわ
けではない。30兆円の1万円札はどれくらいの量か、想像できます
か? 
計算してみます。

1枚が約1グラムの1万円札は、1Kgが1000万円の束の重さです。
その10倍の1億円は、10Kgです。スーツケースに入ります。
その1万倍の1兆円は100トンです。2トントラック50台分。
1兆円以上は、量が巨大です。
30兆円なら3000トン。2トントラック1500台が連なる量です。

巨大金庫は、出し入れも大変で人手がかかり(手数料が巨大)無意味
なものでしょう。このため通貨の金額が大きく増えた近代には、数字
が記録された通帳の、銀行預金が発達したのです。
30兆円も1行です。3とゼロが13個で、すっきり。
経済的取引のほとんどは、銀行の預金決済で行われます。

当方も、現金が約3万円、あとはクレジットカード(預金決済)が2枚
です。数年前まで5、6枚はありましたが、会社の帳簿記録が大変とい
うので整理。現金の使用は、家人が行くSM(スーパーマーケット)だ
け。

【政府の当座預金から、財政支出があったとき】
政府が、日銀にもつ当座預金から、もっとも大きな財政支出である年
金(58.5兆円)と保険医療費(40.7兆円)として支出したときは、ど
うなるか。

年金を受給する世帯(名寄せして3000万人)には、政府から1年に58.5
兆円が、公的年金として振り込まれています。これで年金世帯の預金
が58.5兆円増えるのか。そうではない。

年金が主な収入の世帯では、1世帯平均で1か月5万円(年間60万円)
の預金を取り崩し、生活費に充てています。一瞬は増えた預金が減る
ことを、預金の増加とは言いません(平均残高は、減少しています)。

58.5兆円の財政支出が振り込まれた年金世帯では、1世帯平均で60万
円/年の預金が減っています。総額では9兆円/年の減少でしょう。

公的な医療費は、40.7兆円。これが、保険医療費の財政支出です。
32.7万人の医師(歯科医を含む)と製薬会社(医療費の約20%が薬剤
費)の預金は増えているでしょうか? 

預金が増える分は、公的医療費の財政支出の、40.7兆円ではない。
病院、製薬会社、医療用医薬卸のキャッシュ・フロー(営業キャッシ
ュ・フローー投資=現金残)の分です。1年度では2兆円、あるかないか
でしょう。

以上のように、赤字財政を拡張し、国債を日銀と銀行が買いとっても、
・無差別に、世帯所得に上乗せされるヘリコプタマネー(1人10万円
のコロナ援助金)でない限り、
・「民間(=世帯と法人)の預金」は、増えません。

(注) 預金が多く所得に余裕のある人にも、一律1人10万円(12.6兆
円)が支給されたコロナ援助金では、確かに、世帯の総預金は増えま
した。

【日銀の信用創造=マネーの増発分は?】
国債を日銀に売って増える銀行のベースマネー(当座預金)の増加は、
ベース・マネーという現金性の預金が、増えることです(約530兆
円)。

・このベース・マネーは、銀行が日銀に預けるものであり、
・民間(=世帯と法人)がもつ預金ではありません。

日銀当座預金(ベース・マネー)の増加は、世帯や法人で銀行ではな
く、銀行が所有者である預金の増加です。口座は日銀にあります。

実態では、
・銀行が買っていた国債という金融資産が、
・日銀によって現金(当座預金)に振り替わっただけですから、
 銀行の金融資産の増加でもない。

民間銀行の金融商品(=国債)の売買では、個人と法人の預金である
マネー・サプライの総マネー量は増えないのです。質問した西田氏と、
財務省、日銀は、ここを、根本的に間違えています。間違った質問を
し、間違えた答えをしています。

信用の元の酒(財)を、二人でお金をやり取りし、花見の場所に行く
前に、樽をすっかり飲んでしまう、落語の花見酒の世界です。

儲ける計画を立て、二人で酒樽を抱え、多くの人が集まる花見の場所
に行くことにした。途中でAが飲みたくなり1文をBに渡して飲んだ。
今度は、Bがその一文をAに渡し、樽の酒を飲んだ。二人は、だんだん
酔っぱらって、1文のやり取りを繰り返して、酒を飲んだ。会場に着
き、酒を売ろうとしたが、樽の酒は空だった。AとBには1文が残って
いた。二人は「なんでこうなった? お前が悪い」と言い争った。こ
れが、落語です。信用の元の財をなくすと、こうなります。マネーは
最初の1文だけです。これは流通しただけで増えていない。減っても
いない。減ったのは財である酒でした。

【銀行は、実質的に国家の機関である】
銀行は、破産(=債務超過)のときは政府、または日銀が支援金を出
すことが決まっている国家機関です。

世帯や法人の預金は、一定額は、同の預金保険で保護されています。
営業の認許可でも、政府が権限をもつ特別行政法人です。民間銀行は、
事実上は日銀の子会社です。

【政府がつける「特別」の意味】
政府が「特別」という言葉を冠するものは、全部、経済的な根拠が怪
しい。増額391兆円、一般会計(107兆円)と政府会計の重複を除くと
196兆円にもなる特別会計もこれです(2021年度)。

新聞に出るのは一般会計の107兆円です(2022年度:予算)
196兆円の特別会計は、紛れもない政府の予算ですが、さして国会の
審議もない。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/fy2020/2020-souron-2.pdf

財務省は、「財政法に基づく特別会計」と言っていますが、その財政
法自体が、財務省のお手盛りです。国会は、財務省の法案を、知識不
足の議員からの専門的な質問もなく承認します。

議員がもつ国政調査権を使って、特別会計の不正と無駄が多く混じる
問題を摘発した石井紘基(こうき)議員は、2002年10月に、右翼と称
する人のテロで、自宅前で暗殺されました。

石井議員が集めたのは「行政資料63箱分」です。この箱は、長女に受
け継がれています。(注)政府紙幣の大増発によるインフレで崩壊し
たソ連の末期と似ているという。
(石井氏の、国会での、摘発の様子の記録:2002年)
https://ameblo.jp/et-eo/entry-12399831701.html

純額が196兆円(2021年)。主なものは、国債償還金会計(85.0兆
円)、社会保障給付(72.0兆円)、方交付金会計(19.6兆円)財政融
資会計(12.3兆円)、地・・・

西田議員は誤った質問をし、財務省も間違えた答えをしています。
こんなにひどいことで、いいのでしょうか? 国会は、頭脳の重要な
部分が凍った寒冷地帯に見えます。

西田議員はその意図と違い、議員と官僚の実態を、国民の目に晒した
という点の、皮肉な功績があります。財務省も議員も、この程度です。
官僚とリフレ派のエコノミストも加担しているので、質(たち)が悪
い。

何を目的に、官僚に命じることもできる国会議員を目指したのか。こ
うした、担保が必要な信用創造についての知識がない議員が多数にな
ると、1991年のソ連のように、政府財政を破産させます。

担保がなければ、日銀も銀行も、信用創造(=マネーの貸し付け)がで
きません。これを行えば、担保のない友人に5億円を貸したことと同
じように、自分が破産するからです。

【政府と日銀の破産は、組織が消える倒産ではない】
なお、破産しても政府と日銀は、革命がない限り「倒産」しません。
倒産し、資産を整理しないことの被害は、預金の実質価値が下がる国
民(最終的な国への債権者)に向かうのです。

破産したあとの政府・日銀に向かい、紙幣の1億円を積みあげ、1億円
分の資産を出せと政府と日銀に要求しても、価格が暴落した国債しか
資産はない。敗戦後に、戦前の戦費国債を1億円分もっていても、
100万円の名目価値しかなかったのです(実質価値は33万円)。

【日銀のB/S】
  日銀の資産         日銀の負債
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国債   530兆円    日銀内当座預金口座 530兆円

日銀の通貨発行も、このB/Sのように国債を担保にするものです。イ
ンフレで金利が上がって国債が下落すれば、通貨の実質価値(購買
力)も下がります

銀行・外銀・世界の国民から円国債の信用(利払いと満期償還への予
想的信用)がなくなると、現在のトルコのように、既発国債と一緒に
通貨の価値が下がって、貸借は、均衡します。

今、インフレが48%のトルコの通貨と国債を持ちたい人は少ないでし
ょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■4.西田氏の質問(4)

日銀は、無から有を作って、日銀当座預金を銀行に供給して、銀行に
は、(530兆円という)潤沢な当座預金がある。まとめれば、こうな
ります。
財務省の事務次官(矢野氏)が、雑誌(文藝春秋21年9月号)で「こ
のままでは財政破綻」すると言っています。
私は、この財政破綻が、一体何を言っているのか、理解ができない。
財政破産は起こるんですか。財務省、説明してください。

【財務省の答弁(4)】
年々、厳しさを増す財政が、市場からの信任を失えば、金利が上がっ
て、財政が破産することがあり得ると考えています。

西田氏の質問(4)
分かりませんね。「市場の信認とは」何の意味ですか? 説明してく
ださい。

【財務省、または日銀の答弁(4)】
(多少声が震えながら;原稿のない答弁)、市場の信認が失われます
と、(国債を買う銀行)からの資金調達が困難になります。

(吉田注)この答弁は、国債の信用においてもっとも肝心な「市場の
信認」の内容を説明せず、オウム返しに繰り返しているだけです。
市場の信認とは、銀行が、国債の利払いと返済が100%行われると信
用することです。なぜ、この説明ができないのか、不明です。

西田氏の質問(5)
おかしなことを言いますね。国債は、銀行が買うんですよ。買うため
の資金は、日銀当座預金に潤沢です(530兆円)。これは日銀が供給
したものです。ところが財務省の説明は、こういうことなんですよ。

日銀(アクザワ次長)の答弁は、民間預金(吉田(注):日銀当座預
金のことか?)があるから、国債を買っている。高齢化で預金が減っ
てくる。だから国債を買い支えられない。そうすると困ると言ってい
るんです。

(吉田注)西田氏と財務省の両方には、
・銀行が、日銀内の当座預金にもつ、準備預金(ベースマネー:530
兆円)と、
・世帯・企業が、銀行に預金としてもつマネーサプライ(1500兆円)
の区分がついていません。
両方を合計して、預金と言っています。
ここも、金融の初歩の間違いです。

■5.西田氏の質問(5)

銀行は、潤沢な日銀当座預金で新規国債を買います。日銀当座預金は
(普通は)金利がゼロです(現在は0.1%を付利)。ブタ積みしても
意味がない。有利子の国債が発行されたら、必ず、銀行は国債を買う
んですよ。

矢野財務次官が(雑誌で)、言っていた財政破綻は、銀行が国債を買
うので、あり得ないんですよ。いいですか、財政破産はあり得ないん
です。

▼財務省の答弁(5)

財務省は、市場の信認がなくなると、国債が買われなくなって、財政
破産の可能性があるということを、否定しているものではありません。

■6.西田氏の質問(6)

日銀が、信用創造すれば、無から、民間の銀行預金は増えるんです。
お金は増えるんですよ。だから、国債を買う資金がなくなることは、
絶対にない。

【吉田注:西田氏への反論】

ここでも、「日銀が信用創造すれば、無から民間の銀行預金は増える、
お金は増える」という、前提の間違いが繰り返されています。日銀は、
無からお金を創造しているのではないのです。

【信用創造のときの、日銀のB/S】
  日銀の資産         日銀の負債
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
国債   530兆円    日銀内当座預金口座 530兆円

これは、政府が国債の利払いができ、平均では8年の満期に返済が
100%できるという財政信用を、債権という資産にして、日銀がお金
(日銀内当座預金口座530兆円)を創造しいているということです。

債券市場で、既発国債(1200兆円)の売買の際、現在はほぼ0%の国
債価格が下がり、平均金利が1%、2%、3%と上がっていくと、政府
は国債の発行難に陥って、支払資金が足りなくなって、財政がデフォ
ルトに向かいます。

政府財政が信認を失うとは、既発国債1200兆円の0%国債の信用が低
下することです。0%国債の信用が低下するとはどういうことか?

1兆円の0%国債を事例にします。満期は8年とします。この国債は、
8年後に、額面金額の1兆円を返済する(現金にして渡す)という契約
の証書です。

期待インフレ率が0%のときは、8年後も1兆円の価値は1兆円のままで
す。この場合、財政破産は起こりません。0%国債が、銀行で消化さ
れるからです(債券市場で買われること)。

では期待インフレ率が3%に上がり、債券市場が、国債の売買で決め
ている国債の期待金利が2%に上がると、どうなるか。1200兆円の国
債は、債券市場(公社債市場という)では、1年に約20回転するよう
に、満期前に売買されています。平均満期8年の前に、160回も売買さ
れています(保有の平均期間は19日と短期です)。

これは時々刻々と、株価ほどは激しくなくても、国債の金利と売買価
格が微妙に変わっていることを示すものです。株の売買は、1年1回転
(平均保有期間は300日)ですから、株の売買より16倍も激しいのが
国債です。

因(ちな)みに、2022年2月の、国債の売買総額は2010兆円と大きい。
3月決算の益出しが必要になった、決算前だからでしょう。
(公社債市場での、国債の売買金額:日本証券業協会のXLS)
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/tentoubaibai/index.html

期待インフレが3%に上がり、国債への期待金利が2%に上がった時の、
既発国債の価格はどうなるか。8年間が固定金利の国債は、売買価格
が下がることによって、満期までの利回りが2%になるように調整さ
れます。国債の利回りが、金利を決めているのです。

【計算式】
額面1200兆円÷(1+2%×平均満期8年)=1200兆円÷1.16=1034兆
円・・・国債をもつ金融機関に、合計で166兆円の損が生じます。

(注)国債の期待金利が3%に上がると市場価格は991兆円・・・

209兆円の損(=不良債権)が、金融機関に生じます。約30年ディス
インフレだった日本は、ゼロ金利国債の発行が大きいので、3%くら
いのインフレでも政府の財政が破産します。

政府財政の破産の前に、国債の値下がりで、金融機関が破産します。
これは、対外債務からではない、政府債務からの日本型の政府財政破
産と言えるものです。

3%のインフレが認識され、国債の期待金利が2%に上がり、日銀と金
融機関が同時破産すると、
・信用創造の基盤がなくなって、
・政府の新規国債は買えなくなり、
・政府は、約3か月で資金不足になって、デフォルトします。

【計算:期待金利2%のとき】
日銀が530兆円÷1.16=456兆円・・・74兆円の損
銀行、生損保、政府系金融、年金基金のGPIF、外銀が、
670兆円÷1.16=577兆円・・・93兆円の損

株と同じく、今日の市場で売買される金利で、今日は売られていない
1200兆円の、全部の既発国債の価格が決まります。

国債は、西田氏や財務省が暗黙に想定しているように、銀行が買った
ら満期まで売らない債券ではなく、平均19日で1200兆円が1回転する
ように売買されているのです。

西田氏と財務省、1年に発行する国債(借換債を含んで200兆円)を、
銀行が買うだけで、1か月に2000兆円も売買されている既発国債の市
場があることを前提にしていません。まさか、知らなことはないと思
いますが、質問と答弁には、公社債市場の存在はない。

           *

【まとめ】
西田氏の質問と財務省の答弁は、現実にそぐわない「架空の論」です。
国会でこうした「架空の論」が許されているのは、
財務省と日銀が、
(1)インフレと金利の関係
(2)公社債市場での、株の16倍での、国債の激しい売買を数字で言
わないからです。

国債を発行している理財局と、公社債市場で国債を530兆円買った日
銀が知らないとは思えない。なぜ言わないのか、不思議です。

議員が声高に質問しても、「市場の信認が失われますと、(国債を買
う銀行)からの資金調達が困難」ですと、曖昧にしか言わない。

市場の信認は、公社債市場では、利回りの数字として、日々決定して
いることです。

【後記】
国会の議論の水準は、質問も答弁も、なぜこんなに低いのでしょう。
国民の投票が間違えたのか。国会議員の投票には行きますが、いつも
「入れたい候補」がいない。消去法です。

7月には参議院選挙があります。政府はその前に、何らかの形でコロ
ナ支援金を出すようです。3000万人の年金受給者への、1人5000円支
給(総額は1500億円)が潰れたので、またGOTOか。これは自公による、
合法的な、選挙民買収ですが、その効果があるのか。くだらないこと
です。

財政破産では、政府と日銀が潰れず、銀行が潰れます。1500兆円の銀
行預金の払い戻しは、どうするのか。どう、できるのか、未定です。
他国の事例では、ベイル・イン、つまり債権者負担でした。欧州でも
ベイル・インと決めています。預金者は、銀行の債権者です。

3%のCPI長期インフレの気配が出たら引き出して、ゴールドや、絶対
に破産しないスイスフランに換えておけば、資産は膨らむでしょう。

CPIは、前年比の物価指数です。対外負債が3000兆円の米ドルは、米
国債を買い支えてきた日本と、同時破産の恐れがあるので、財政破産
の損害を避ける目的なら危険でしょう。

その前に、インフレになっても金利を十分には上げることができない
日米欧が、同時に、通貨のリセットを行うのか。

スイスフランは、ユーロに属していないので、リセットは受けません。

コロナからウクライナ戦争と続いた、部品と資源のインフレで、通貨
リセットの可能性も、生じました。第三次石油危機と言える資源イン
フレは、ロシアと中東の産油国を受益させ、受益と同額の輸入国の側
の損になるからです。

この所得移転は、過去2度の石油危機(1973年、1980年)に起こった
ことでした。「早まりすぎ」の論が、本稿かもしれない。しかし、

皆さんのせっかくの資産を、第二次世界大戦のあとのように、無にし
ないために書きました。ウクライナ戦争は、80年ぶりの東西冷戦の始
まりという歴史的なものです。ウクライナ戦争が停戦しても、東西の
融和は、再来しません。

【長期予想】
・東側が、ロシア、中国、インド、中東、ブラジル、南アフリカ、
・西側が、米国、EU、英国、日本です。
 基軸通貨も、人民元圏と、ドル圏に、
 数年で分割されていくかもしれない。
 そのときは、国際通貨はCBDCでしょう。
・中立がスイス。

以上は「可能性」です。決まったわけではない。
慌てては、ダメです。
この件には、水曜日の正刊で触れます。

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