新年1号:米ドルの反通貨、ゴールド新論(4)
This is my site Written by admin on 2014年1月4日 – 16:00
2014年、あけまして おめでとうございます。日本の新年のよさは、
旧年を水に流して、あらたに年を迎えるという点でしょう。その分、
時間が新鮮です。

もちろんそれは、われわれが文化として共有する、意識の中の時間
です。物理的な時間は、恒久の自転、公転です。1月3日には、混雑
を避け、箕面の山腹に建つ『勝尾寺』に出かけました。

1300年の、長い歴史があるという。ほぼ20年行っているので初詣を
済まさないと、気分に穴があきます。新年の決意は、毎年、集中す
ることです。目の前のことを、一所懸命に行う。これです。未来は、
いつまで経っても、いまだ来たらずです。意識にとっては、永遠の
現在しかない。

今年は、寺に行く前、『箕面の滝』へと垂直には50メートルくらい
の高さがある坂を降りてみました。滝壺のそばには100名くらいの
人がおられたでしょうか。犬を連れた散歩が、目立ちました。枯れ
た木々にかかる、水煙の虹が光っていました。

昨年末から正月の三日で、あれっという感じで気がついたのは、新
聞、TVで恒例だった「新年の経済見通し」の番組や記事が、とても
少ないことです。TVでは、ほとんど見かけなかった。経済や金融の
テーマでは、プロデューサーから見て、視聴者を引きつける分析と
発言ができる人がいないのでしょうか。

書籍も、ほぼ同じです。2014年のタイトルでは『2014年 戦後最大
級の経済危機がやって来る』(高橋乗宣、浜矩子:東洋経済新報
社)と、『2014年 世界三大経済の同時崩壊に備えよ』(増田悦佐
:徳間書店)、『2014年 世界連鎖破綻と日本経済に迫る危機』
(三橋貴明:徳間書店)の3冊くらいしか目につきませんでした。

いずれも、書名にあるように、2014年経済の大きな危機を言ってい
ます。当方、2014年、2015年に関して、違った考えをもっています
が、他人の本への論評は、下品になるので、差し控えます。

考えと、根拠は、『これから5年』(ビジネス社:1785円)に書い
ています。

2013年4月から始まった『異次元緩和』がもたらす結果を通奏低音
とし、2014年、2015年を含む数年の金融・経済を予想するものです。
定量的な予測であることに、類書と違う特徴があると、思っていま
す。金融・経済に関する『国家破産』、『マネーの正体』、『これ
からの5年』の3部作のうち、最新です。Home Pageの右端に、紹介
と購入へのリンクを張っています。
→  http://www.cool-knowledge.com/

                             *

本稿は、昨年からのテーマの続きで、<米ドルの反通貨、ゴールド
新論(4)>です。

2000年の底値、1オンス$276(当時の円では1グラム1014円)から2
011年9月の$1986(円では1グラム4721円)と、ドルでは7.2倍、円
では4.7倍に上がっていた金価格が、突如、下落したのは2013年4月
以降でした。

円では、為替での約20%の円安(ドル高)のため、はっきり見えま
せん。しかし、2013年の金価格は年初の1オンス(31.1グラム)$1
693から27%下がって、直近の2014年1月4日では$1238をつけてい
ます。

(注)円での1月4日の価格は、1グラム4330円(5%の消費税込み)
です。前稿で申し上げたように、金の価格傾向は、1オンスのドル
価格で見るべきものです。円価格で見ていると、ドル・円のレート
によるバイアス(偏向:歪み)がかかって、分からなくなります。

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<305号:新年1号:米ドルの反通貨、ゴールド新論(4)>
                 2014年1月4日:完結編

【目次】

1. 中央銀行による金の売りと、2010年までの価格
2.2011年からの金需要と価格
[前号はここまで]

[本号はここか]
3. 2013年の、金ETFの売り
4.2014年の、ゴールドマンの金下落説
5.価格下限になる産金コスト($1200)
6.金の需給と価格のまとめ
7.世界の中央銀行合計は、2009年から買い越しに転じた

【後記】
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■3. 2013年の、金ETFの売りは意図的だった


▼金ETF

ETF( Exchange Traded Funds:上場投信)は、金融商品の代替に
なる指数の証券です。日経平均のETF、TOPIXのETFなどがあります。

ETFの価格は、発行する証券会社が、毎日の現物価格と同じになる
ように売買され、運用されています。

金ETFは金証券であり、現物の金と1:1のユニークな番号が刻印さ
れて保護預かりされ、保管されています。

現物の、売買・移動・保管が、重くて危険でもあるので、ETFでそ
の所有権を代替します。売買の手数料も、はるかに低い。

金ETFは、2003年から始まっています。SPDR(スパイダー)ゴール
ド社が世界最大の金ETFの発行シェア(約50%)です。

金ETFの残高は13年7月で1993トン分でした。時価で、8兆円分くら
いです。

(注)最高残高は、2012年12月20日の2632トン(時価で約11兆円)。
2013年4月から同年9月までに、600トンは売られたため、14年1月現
在は2000トンを割っているでしょう。この金ETFの、ヘッジ・ファ
ンドによる600トン(時価で2.5兆円くらい)の売り超が、2013年の
金価格下落の主因です。

投資家から金ETFが、例えば10トン買われると、10トン分のゴール
ド・バーが、金ETFの会社から買われて保管されるため、市場で現
物を買うことと同じです。金ETFの売りも、現物売りと同じになり
ます。

04年には、ゼロだった金ETFは、2012年末まで、ほぼ一直線に増加
して、2632トン(現在価格では11兆円)になっていました。

これは、2632トンの現物需要が増えたことと同じです。2632トン分
の金が、市場で買われ、SPDR(スパイダー)ゴールド社を筆頭とす
る金ETFの発行元の金庫に保管されて、保護預かりになるからです。

年間平均でほぼ350トンの、現物需要の増加に相当します。

2011年から2013年の第二四半期まで、金投資用の需要量がどうなっ
たか、2013年の金価格を決めた、この部分だけを見て行きます。

【2013年の、投資用金の買いと、金ETFの売り超】
                                        2013年
              2011年    2012年     第一四半期  第二四半期
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
現物投資用   1186トン   944トン     297トン     370トン    
金ETF        185トン   279トン    -176トン    -402トン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計投資需要 1371トン   1223トン   121トン     -32トン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
年間換算     1371トン   1223トン    484トン     -96トン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注)前号でも述べたように、金ETFは、2013年の第三四半期も、1
19トンの売り超です。13年4月から大きくなった、金ETF売り超が、
金価格の低下の主因(80%を決める要因)です。他の投資需要や、
宝飾用の需要は減っていず、むしろ増えています。

現物と金ETFを合わせれば、2011年は1371トン、2012年は1223トン
の増加需要でした。

しかし、2013年第一四半期は、投資用需要が484トン(年率換算)
と急減しています。第二四半期は、合計需要でのマイナスです。供
給が大きく超過して、価格が下がるに決まっています。

この中で、金ETFは、2013年は、第一四半期(1月から3月)に176ト
ン、第二四半期(4月~6月)には402トン、合計で578トン(2.6兆
円)も売られています。ETFの売り、および金先物売りを先導した
のが、前号で示した、ポールソンとソロスのファンドです。

ジョン・ポールソンのファンドは、SPDR(スパイダー)ゴールド社
の金ETFを2180万口(68トン)所有していましたが(3月末)、それ
を半減させています(6月末)。

▼先物市場での売り

NYの金先物市場で確かめると、通常は100トンから250トンの範囲だ
ったヘッジ・ファンドによる先物やオプションでの売りポジション
が、2013年には、450トンくらいに倍増しています。

先物の売りポジションは、将来、価格が下がったとき、利益が出る
投資です。

例えば、3ヵ月先が限月(反対売買の期限日)の先物の価格が、201
3年4月に$1597だったとします。先物価格は、そのときの現物価格
×(1+その間の期待金利%)です。つまり、ほぼ現物価格と同じ
です。

13年7月が3ヶ月後の限月(げんげつ)です。このときの現物価格が
$1250に下がっていれば、この価格で買い戻して清算できるので、
[$1597(契約していた先物売りの価格)-$1250(限月に買う現
物価格)=$347]の利益が出ます。狙いと逆に上がっていれば、
高くなった現物で買い戻さないといけないので、損になります。こ
れが、ヘッジ・ファンドが行っている先物取引です。

(注)ヘッジ・ファンドに対する、金の先物取引の証拠金は、取引
想定元本の3%と低いことが多い。ヘッジ・ファンドは、最大で証
拠金の33倍のレバレッジ(信用借り)をして、先物の売買を行えま
す。33倍のレバレッジということの意味は、10%の利益が10%×33
倍=330%の利益になり得るということです。損も同じ割合です。

先物の売りが増えると、売買で決まる先物の価格も下がり、それに
合わせて現物の価格は下がります。買いが増えれば上がります。


金価格は、金ETFと先物の売りのため、13年4月には、約20%下落し
ています。13年4月12日から15日のETFの売りは激しく、金価格は3
日間で史上最高の$225(約14%)下落しています。

▼金価格の2013年4月暴落の原因

この下落は、一体、何だったか? 米国FRBによる、金価格売り崩し
の一環と判断します。

ペーパー・マネーの米ドルは、ドルの反通貨である金価格を敵視す
べき宿命だからです。突然の売りが、いかにも、策略を示すのです。

これは、4月中旬の、QE3の縮小予測の観測から、「ヘッジファン
ド・マネの減少→金投資の減少→高値の金価格の下落」に結びつい
ためでしょう。

この意味では、FRBのバーナンキも、QE3の縮小をほのめかし、先物
売りを誘うことを示唆したとも言えます。

おそらくFRBは、海外の中央銀行が、外貨準備で金を買い増しする
動きを止めたかった。こうしたことは、決して、永遠に「言われま
せん」。しかし、とられた行動とその結果の解釈で、目的が分かり
ます。

■4.2014年の、ゴールドマンの金下落説

前述したように、ゴールドマン・サックスは、2014年の金価格につ
いて、1オンス$1050(1グラム$33.8)という20%安を目標値にし
ています。

これからも、ヘッジ・ファンドの、レバレッジをかけた先物やオプ
ション売りを誘い、目標相場を実現しようという行動をとるでしょ
う。

2013年には、ヘッジ・ファンドの売り以外の、大きな売りのカタマ
リは見られません。

13年4月からの、ETFとして売られた500トン余の現物金は、イン
ド・中国によって買われ、スイスに移動されたようです。

中央銀行は、若干、買いの勢いを減らしたものの、外貨準備での買
い超を続けるでしょう。ヘッジ・ファンド以外は、金は買いが続い
ていると見ることができます。

また、先物売りでは3ヶ月先がもっとも多い。つまり、大きな売り
が揃った下落日近辺から3ヶ月経つと、売ったものは、買いもどさ
ねばならない。従って、限月のとき、より一層大きな先物売りをし
ない限り、後では買い超になって価格を上げる要素になります。

にもかかわらずヘッジ・ファンドの売りで、価格が下がって来ると、
やはり買い手の買う動きは鈍ります。このため、2014年のQE3の縮
小の、重ねた発表時期には、再び、相当な下げになる可能性は残り
ます。(注)現在は、2014年1月からの、$1000億(10兆円)の縮
小が発表されています。

しかしヘッジ・ファンドは、金の長期的な所有者ではない。価格の
上下げの大きさによって、利益を上げるのがヘッジ・ファンドです。

例えば、1オンス$1345のとき、金先物を売る。3ヶ月後の限月(期
限日)に、$1200に下がっているなら、$1200で買い戻すことがで
きます。利益は、「売っておいた$1345-買った$1200=$145」
です。

こうしたヘッジ・ファンドの売買は、時期が違っても売りと買いは
同量なので、長期的に言えば、金価格を上げる要素でも下げる要素
でもない。つまり、中立的です。短期(3ヶ月くらい)の価格差を
利益にするだけだからです。

(注)ヘッジ・ファンドが、価格に対し、長期では中立的なのは、
株価、資源価格、穀物価格、金価格に共通します。ただしヘッジ・
ファンドが、先物やオプションで多額に関与した相場は、価格の変
動幅(ボラティリティ)が大きくなります。ボラティリティの大き
さこそが、ヘッジ・ファンドに利益をもたらすからです。

■5.価格下限になる産金コスト(1オンス=$1200)

前号で、1オンス$1200と、5年で3倍に上がった産金コストが、金
の価格下限になるのではないかと示しました。本稿ではこれを明確
にします。

トムソン・ロイターは、2013年の世界平均の、産金コスト(全費
用)は、1オンス$1250(前年比107%)に上がっているとリポート
しています。ただし、生産の動機になる産金コストには、3つを考
えることができます。

(1)現金費用コストでは、1オンス$782です。これは、金を生産
するとき現金で出る費用です。
(2)次が、鉱山や機械の減価償却費を含んだ費用であり1オンスで
$995です。資金繰りに困った業者は、1000ドル以下でも出荷する
かも知れません。
(3)最後が全費用で、資産費用、会社の固定費を含むもので、こ
れが$1250です。損益計算上は、出荷価格が$1250を超えないと、
金鉱山には赤字のところが増えます。

http://share.thomsonreuters.com/PR/Misc/GFMS/GoldSurvey2013Update1.pdf

産金コストを下回ると、金リサイクル業、金鉱山に多くの赤字が出
ます。赤字のときは、生産または出荷をやめます。やめねば倒産す
るからです。自分から倒産する業者はいません。

このため、相場価格が、1オンス$1200の産金コストを割ると、し
ばらくすれば供給が減って、「需要量>供給量」になった水準で、
価格は底打ちします。どこかの在庫分が放出されて、「供給量>需
要量」が続くことがあっても、それは短期です。

1オンス$1200は、1グラムでは$38.6です。$1=98円なら、3800
円付近(税抜き)が下限です。税込みでは、ほぼ、1グラム4000円
水準になります。

13年11月初旬の価格は、$1310付近です。$1200は、8.4%安の水
準です。ゴールドマンが言う、2014年、QE3縮小開始の時期の、価
格目標$1050とは、$150(12%)の開きがあります。

2011年9月に金価格が1オンス$1800を超えたころ(最高価格$189
6)、世界平均の産金コストは、1オンスあたり$1200と、05年の$
400の3倍に上がっていました。(注)2005年の金価格は1オンス$4
44(年間平均価格)でした。

●産金コストは、そのときの相場水準を目指して、上がります。1
オンスの相場が$1600なら、大きな価格変動のリスクを見ても$13
00です。

価格が上がると、コストの高い、困難な採掘と産金が行われるから
です。このため、$1200のコスト(05年の3倍)をかけて生産され
る原価の高い金が、市場に出てきます。リサイクルもコストが高い
ものが増え、1トン当たりの金含有が5グラムやそれ以下と少ない鉱
脈でも生産されます。そして、高い価格で増えた需要を、満たしま
す。

相場価格が1年くらいは続くと、その相場価格に近づくよう、産金
コストが高い金が供給されます。

逆に、1オンス$1600まで上がった金相場が、$1200に下げればど
うなるか。$1200は、2013年の世界平均の産金コストです。産金コ
ストが下がることはない。

コストが平均以上(例えば$1500~$1300)の鉱山とリサイクルも
30%くらいは混じっています。金相場が$1200に下がると、こうし
た高い産金コストの金は、生産されません。

工場内で生産されても、市場には出ない。つまり、市場への供給が
減ります。供給が減れば、価格は「需要量=供給量」の地点で、底
打ちします。この価格が、$1200付近です。

以上から、米国FRBのQE3が縮小される時点か、または2014年に、
ゴールドマンが言う1オンス$1050に下がっても、それは一時的(3
ヶ月以内)と判断しています。

産金コストである$1200には戻すと見る買いが、はいるからです。
この意味で、金は、株よりリスクが低い投資対象にいれていいでし
ょう。

$1200の産金コストを下回る相場が続くときは、買いの機会でしょ
う。$1200を下回る期間が、6ヶ月も続くかもしれません。我慢が
肝心です。

ゴールドの場合、相場が下げたときは、ある集団が、安値で買い占
めている時期でもあります。買い占める目的で売って、相場を下げ
ることもあります。だから・・・ゴールドマンが言っているのは、
裏腹に思えるのです。

■6.金の需給と価格のまとめ

株も金も、需要と供給の関係で、価格が決まります。

[価格の上昇]
買いが増えると、価格が上がるため売る人が増え、増えた買いの量
に売る量が追いつきます。これが価格の上昇です。売りが増えない
と、売りが買いに均衡するまで、価格が上がります。
価格が上がると、手持ちを売る人が増えます。

[価格の下落]
逆に売りが増えると、価格が下がって、増えた売りに、買いが追い
つきます。下がった価格では、買いが増えるのです。買いが増えな
いと、価格は、買いが増える地点までどんどん下がります。価格が
下がると買う人は増えます。

今日の株価や金価格は、
「上がると思われた、買いの量」と、
「下がると思われた、売りの量」の一致点です。

▼2011年からの需給のまとめ

以上の観点で、2011年からの需給をまとめると以下になります。ロ
スチャイルド系とされるWGC(ワールド・ゴールド委員会)は、201
3年9月までの、需給をまとめて公開しています。

13年12月までのデータが出るのは、2014年の3月頃でしょう。本稿
では、13年9月までのデータに1.33をかけて、年換算を出していま
す。

【生産】
                2011年     2012年      2013年  
                                        年換算
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
鉱山での生産    2850トン   2824トン    2865トン
リサイクル      1649トン   1591トン    1396トン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計            4500トン   4415トン     4261トン

【需要】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
宝飾用         1975トン    1896トン    2159トン
工業用          452トン     408トン     412トン
投資用バー     1519トン    1256トン     1669トン
金ETF          185トン     279トン     -943トン
中央銀行       457トン      544トン     396トン
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計需要       4499トン    4415トン     3693トン

需要でもっとも多い約50%を占める宝飾用は、2013年も、2159トン
と増える傾向です。工業用は、400トンレベルで安定しています。
注目すべきは、投資用の2013年の増加です。価格が下がった現物の
ゴールド・バーの買い超が1669トン(前年比133%)と増えていま
す。

中央銀行(世界合計)の買い超は、2013年は396トンと、前年(544
トンの買い超)に比べると減っていますが、相変わらず「新興国の
中央銀行の買い超」は、大きい。

アジア等の新興国の中央銀行は、米ドルの外貨準備を準備預金にし
て、通貨を発行しています。このため、ドルが下落すると、自国の
通貨発行を、減らさねばならない。これは金融引き締めになって、
困った事態を招きます。このため、米ドルが大きく下がった08年9
月以降は、米ドルの準備を減らし、金を買って来ています。

●13年9月までの傾向を延長した年間換算で、943トン(金額では約
4兆円)という、史上最大の売り超になったのが、金ETF(金の上場
投資信託の証券)です。2600トンの分の証券が、年換算で1000トン
分くらい売られたと見ていい。

2014年も金価格が下がる時は、この金ETFと、先物の売りでしょう。
金ETFは、個人はあまり買っていません。ETFの売買は、ヘッジ・フ
ァンドが主です。

つまり、ヘッジ・ファンド(ジョージ・ソロスとジョン・ポールソ
ンが筆頭)は、「ある狙い」をもって、1オンス$1700台だった金
価格を、$1200あるいは$1000にまで下げるための売りに出たのが
2013年4月からです。こういった1方向の売りは、大きな狙いが背景
にないと無理です。途中で反騰があれば、自分が破産するからです。
反騰はないという自信に裏付けられたものでなければならない。

あくまで推測です。米国FRBと英国中央銀行は、金価格を敵視して
来ています。その理由は、国際基軸通貨の位置を、5倍に高騰した
金が脅かすと考えているからです。このため、米国FRBと英国中央
銀行が、ヘッジ・ファンドに、現物ではない金ETFの売りを要請し
たと見ています。

そしてこの目的には、更に、1オンスで$1000や、それ以下に下が
った金(円価格では1グラム3000円台:現在は4200円)を、ある集
団が買い占める目論見もあるでしょう。(注)これも推測です。こ
んなことが、明らかになるわけがない。

金と米ドルは戦っています。
米ドルが基軸通貨の特権を得続けるためです。
米国FRBと英国中央銀行はこの点で、利害を一致させています。

■7.世界の中央銀行合計は、2009年から買い越しに転じた

以下の表において、売り越し量は+で、買い越し量は-で表示します
(データ:WGC)。

08年までの総売り越し量は4330トンですが、その後、09年からは一
転して、年400~500トンの買い越しに転じています。2008年以降の、
金価格の高騰は、明らかに、それまでは売ってきた中央銀行合計が、
ネットで買い越しに転じたからです。

●400トンから500トン/年で売って来たのに、400トンから500トン/
年の買いに転じれば、800~1000トンもの買いの増加と同じだから
です。

                        1オンスの
           売越し量     年平均価格
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2000年     480トン       $279   →2000年から2008年まで、
2001年     510トン       $271     先進国の中央銀行は、
2002年     530トン       $309     1年に400トンという枠で
2003年     610トン       $365    金を売ってきた。
2004年     480トン       $409    (ワシントン条約)
2005年     650トン       $444
2006年     370トン       $604
2007年     490トン       $695
2008年     220トン       $872→9月がリーマン危機ドル安
2009年     -10トン       $973   中央銀行が、金をネットで
2010年     -90トン      $1225   買い越すように転換した。
2011年    -456トン      $1571   (2009年以降)
2012年    -544トン      $1669
2013年    -400トン      $1475
2014年1月               $1238(14年1月4日)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上表は、2000年から2013年までの、中央銀行(世界合計)の金の売
り越し量です。

1980円以降の、1990年代の金価格の低迷は、先進国の中央銀行が、
金価格上昇の傾向があると、金を市場に放出して売っていました。
その目的は、金価格を下げることです。

金価格を下げる目的は、米ドルが金より価値がある国際基軸とする
ためです。この点で、米ドル保有にコミットしていた先進国の中央
銀行は、利害を一致させていました。

ただし、この年400トン枠での、先進国の中央銀行による金放出よ
りも、需要が多かったので、2000年代の金はドルでは7倍に高騰し
たのです。このことは、1990年代の先進国の中央銀行の金放出が、
400トンよりはるかに大きかったことを示します。おそらく、年100
0トンレベルでの放出だったでしょう。

先進国の中央銀行が、金の放出を1年400トンに制限するワシントン
条約は、先進国の中央銀行に、金保有が少なくなったからです。

ワシントン条約では、先進国中央銀行の金売却は、1年に400トンの
枠に制限しています。条約は2004年、2009年と2回更新され、2014
年まで有効です。しかし、2009年には、売る金がなくなったのです。

上表に見るように、08年9月のリーマン危機以降の米ドルの下落に
対して、中国、インド、ブラジル、トルコ、およびアジアの新興国
やロシアなどの中央銀行が、米ドルの代わりの準備資産として、先
進国の中央銀行が売り越してきた金の現物を、買っています。

このため2009年からは、世界の中央銀行の合計では、金のネットの
買い手になっています。米英の中央銀行とIMFの金が、新興国の中
央銀行の準備資産になったと見ていいのです。

(注)中央銀行別の、金の売買の統計はありません。数年前、米国
議会が、FRBに対し、資産明細と金の保有高を明らかにせよと求め
ました。しかし、FRBの議長バーナンキは情報公開を拒否しました。
議会は、裁判に提訴しましたが、米最高裁で、うやむやになってい
ます。

世界の中央銀行の保有金:米国8133トン、ドイツ3402トン、IMF290
7トン、イタリア2451トン、フランス2435トン、中国1054トン、ス
イス1040トン、日本756トン、オランダ612トン、インド557トン、
トルコ503トン、ECB 502トン・・・英国310トン・・・、合計3万19
13トン

●世界の中央銀行の、公的な保有量は、ずっと3万1913トンとされ
ていて、地上のゴールド(17万トン)の19%とされています。

WGCも公表しているこのデータには、重大な疑義があります。一例
を言えば米国FRBは、1980年代、90年代と、大きく保有金を売り越
して、金価格を下げきました。

そのFRBが、毎年、1トンの変化もなく、約30年も、8133トンの保有
であるはずがないのです。
http://www.gold.org/government_affairs/gold_reserves/

前掲表の、世界の中央銀行の08年までの総売り越し量(4330トン:
WGCの統計)と、この保有高の一定さは、明らかに矛盾します。

少なくとも米国FRBと英国BOEには、現物の金はほとんどない。この
ため、代替の証券(契約のペーパー)である金ETFを売ったのです。
金ETFだけが、900トンもの売りになったことで、逆に、米国FRBに
金がないことが明らかになったとも言えます。

世界最大の投資銀行ゴールドマン・サックスは、2014年の金価格に
ついて、1オンス$1050や$1000、あるいは1000ドル割れと言って
います。その目的は、予測ではなく、「安い価格での、現物買い占
め」でしょう。

現物を買い占めたところが、その後、売りに出さないと、金は「売
り独占の市場」で、高騰させることができるからです。

【後記】
金も、需要と供給のデータを集めて解析すれば、以上のことがわか
ります。今年も、よろしくお願いします。

【有料版:目次】
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<686号:ユニクロのファイン・ライン品揃え>
          2013年12月11日号

【目次】

1.ファイン・ラインの発見
2.アイエンガーの実験
3.選択における、「認知の不協和」ということ
4.プライス・ラインと商品ライン
5. 25%幅の商品ライン
6.高齢者の顧客が、大きく増えたユニクロ
7.ユニクロの、ファイン・ライン品揃え


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<687号:ファイン・ライン品揃えから在庫管理まで>
        2013年12月28日号
【目次】

1.顧客の立場から、品揃えの豊かさへの考えを、深める
2.『しまむら』と『ユニクロ』
3.『しまむら』の方法との比較
4.顧客層を決める価格帯
5. 店舗の在庫管理
6.店舗の棚の在庫はプレゼンテーション
7.プレゼンテーションでは3個という下限在庫:高額品は除く
8.プラノグラム作りでの在庫数の決定は、売れ数比例陳列法

【後記】

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