日曜増刊:財政破産のシミュレーション(1)
This is my site Written by admin on 2022年4月24日 – 17:00
週末のNYダウが、1000ドル(2.8%)下げました。大きな下げです。
レバレッジ5倍の先物なら、証拠金の14%を1日で失う。
週明けの月曜日も、反騰する材料はない。

サプライズは何だったのか。FRBが、5月0.5%、6月0.75%、7月0.5%
と、従来の予想の2倍から3倍上げることが、パウエルの言葉からはっ
きりしてきたことでした。

FF金利(短期金利)を3か月で1.75%上げることは、2000年代の過去
2回の利上げ(1回0.25%)をはるかに超えています。(2006年と、
2017年の利上げ)。しかも2022年には9月、10月、11月も利上げの予
定が控えています。

2023年も、3回上げるという。FRBは、2006年から2007年のように明確
に方向を転じたのです。合計で4.5%(0.25%×18回)だった利上げ
の結果が、2008年のリーマン危機でした。

この時の利上げは、6年で2倍に上がっていた住宅価格を下げ、住宅
ローン証券の下落(-40%)と、破綻ローン保証保険(CDS)の高騰を
もたらして米国金融のシステミックな危機が起こったのです。そして、
このリーマン危機から、ゼロ金利と量的緩和の13年が始まりました。

22年7月の米国長期金利は、4.75%台に上がることが予想できます。
13年間の低金利・量的緩和の時代が、明確に終わった。
22年9月、10月、11月も利上げが予定されているからです。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/us10yt.html

米国CPI(消費者物価指数)の前年比が22年1月+7.5%、2月+7.9%、
3月+8.5%だったからであることは、いうまでもない。年初の予想よ
り2022年の物価予想は、3ポイントくらい高くなっています。
https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9052

長期金利が、22年7月に4.7%に上がると(これは確実)、米国長期債
は(1+3.0%×10年)÷(1+4.7%×10年)=1.3÷1.5=0.88・・・
12%下がります。2000兆円の米国債が平均12%下がると、240兆円の
損失が、米国、日本、中国、欧州の米国債をもつ銀行に生じます。

この240兆円は、強いフックのパンチに近い信用収縮の圧力になりま
す。リーマン危機のときの銀行損失は、当初200兆円とされ、これよ
り小さかったのです。

もっとも大きな問題になるのは日本です。長期金利は、0.25%と低い。
現在、日銀は、10年債の利回りが0.25%に上がると(=国債価格が下
がると)、市場より高く「指し値買い」をして利下げをし、金利が下
がるまで10年債を買う「量的緩和」を続けています。

しかし、22年7月には米国の長期金利は「3%+1.75%=4.75%付近」
に上がる可能性がとても高い。
 ↓
日銀が、7月も0.25%のままなら、日米の金利差(イールド)は4.50
%という「異常値」に膨らみます。普通は、この金利差のイールドは
1.5%、大きなときでも2%です。
 ↓
どうなるのか・・・日銀が、長期金利0.25%に固執すれば、「円売り
/ドル買い」が起こり、円が米国に流出して、円安は140円、150円に
進むかも知れない(今日のドルは128.5円)。

激しい円安で輸入物価が、45%は上がり、CPIも、想定外の3%上昇に
向かうでしょう。輸出以外の企業利益は減って、日経平均も、上げる
材料がなくなります。
(注)輸出が増えても、円安による輸入物価の上昇から、貿易黒字は
増えません。逆に、赤字が大きくなる可能性が高い。

以上の国際的な金融現象は、日本政府と日銀の許容レベルを超えます。

頑迷な日銀も、2022年末から23年には、2%の金利に、向かわざるを
得なくなっていくでしょう。

20年間0~0.25%の金利が続きました。2%であっても、利上げの衝撃
は大きい。会社の1億円(金利0.5%)の利払いも、4億円から6億円に
増えます。借金の大きな会社は倒産、

代表が、負債18.5兆円のソフトバンク・グループです(メインバンク
は、みずほ銀行)。トヨタも有利子負債が25兆円ですが、流動資産が
22兆円あります。

【政府財政】
問題は、1409兆円の負債がある、政府の財政です(国債は1200兆円、
あとは銀行負債)。

(1)既発国債の価格が約15%下がって(-180兆円)、利回りは2ポ
イント(%)上がり、
(2)借り換え債を含む、新規国債236兆円の、新規国債の金利は2ポ
イント(%)上がります。

この180兆円が日銀と銀行の損失になり、自己資本を完全に失う日銀
と銀行は、信用創造力を失い、国債の買いと貸し付けができなくなり
ます。

政府は、新規国債236兆円が全部、予定した金利で売れないと、資金
不足に陥ります。
・予算にした財政が支払えなくなり、
・借り換え債に頼っている国債の償還もできなくなるのです。
これが、政府の財政破産(国債のデフォルト)です。

通貨の売買の金融で、深いつながりがある日本にとって、米国の物価
と金利は重い意味をもちます。日銀の利上げ(=円国債価格の下落)
は、政府財政の破産を、1年くらいは早期化するでしょう。

政府・日銀・経団連は、米国の金利と、円国債の価格の意味がまだ読
みとれず、のんびりしています。タイタニック号(日本の財政:矢野
財務次官の例え)が、氷山に向かう時間が、約1年、切迫した感じで
す

金曜日のFRBの利上げ予定から、氷山が水平線上に見えてきました。

日銀には円国債と株価を守るための、利下げと量的緩和の対策はもう
ない。
氷山を避けるための、舵を切ることができない、
今日はFRBの利上げ予定幅の大きさに、驚きました。

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<Vol.1228:日曜増刊:財政破産のシミュレーション(1)>
      2022年4月24日:増刊

【増刊の目次:有料版・無料版共通】
■1.金融資産と同額の、金融負債がある
■2.金融資産と負債の、内容の分析
■3.資源価格の高騰と金利の上昇の結果は、負債の不良化
■4.40年ぶりのインフレ(第三次石油危機)
■5.政府が通貨リセットを行わないときは、どうなるか?
  (前回は、戦後の「通貨リセット」を書きました)

■6.「日本には対外債務がないので、財政破産はない」というエコ
  ミストたち
【後記】

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<Vol.1229:水曜正刊:財政破産のシミュレーション(2)>

【水曜日 有料版正刊:目次予定】
■7.金利が2ポイント(%)上がったとき
■8.「2ポイントの金利上昇」で起こる円安の中では、更に、円安に
  
  する日銀の国債買い(=円の増発)は、行うことができない。
■9.政府が国債を発行できないと(=買い手がいなくなると)どう
  なるのか?
■10.政府(=公務員の職場)はなくならないという安心感=政治
家・
  官僚
■11.MMT(現代貨幣理論)の犯罪的な罪
■12.1990年の、日本株の先物売りという先例
■13.出口なしの日銀
■14.財政破産になると、どうなるか。
【後記】

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■1.金融資産と同額の、金融負債がある

【目的】
本稿では、「通貨リセットのない財政破産」をシミュレーションしま
す。通貨リセットのある財政破産は、前号で書きました。

これは「シミュレーション(模擬実験)」です。現在の傾向のまま進
むと、結局こうなるということを、資産防衛のために書くものです。

【日本全体の、金融資産と負債の計算:2022年12月】
日銀の、資金循環表(マネーの国全体の流れとストックを示すもの)
からは、経済の3つの主体(家計、企業、政府)の金融資産と負債を
作ることができます。

全体では、家計部門がもつ金融資産(2023兆円)がもとになり、企業、
政府、海外に流れています。銀行は、マネーの商人としての仲介部門
です。4つの、経済主体間のマネーの流れを、金融収益を目的にして
決めています。

        【金融資産】 【金融負債】 【金融純資産】
(1)家計部門  2023兆円    365兆円    1658兆円  
(2)企業部門  1279兆円   1917兆円   -638兆円
(3)政府部門   709兆円   1419兆円   -710兆円 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 合計      4011兆円   3701兆円   +310兆円
 (注)国内の合計金融資産(4011兆円)と負債(3701兆円)の差額
310兆円は、海外への純投資。純投資=海外投資─対外負債
  ↓
海外部門への、工場と証券投資(=貸し付け)の総額は、1260兆円で
す(1ドル113円換算:21年12月末)。海外からの負債(円建て)は
714兆円です。

財務省の差額からは、対外純資産が546兆円。ドルベース資産なので
1995年以降の「円安」で膨らんでいます。(注)また海外部門では、
租税回避地のタックスヘイブン(ヘッジファンドやインデックスファ
ンド)への預け金などから、誤差脱漏も大きい。

(上記の金融資産のB/Sは、日銀資金循環表より筆者作成)
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

■2.金融資産と負債の、内容の分析

(1)5300万の世帯部門の金融資産は、預金1092兆円、証券(主に
株)332兆円、社会保険料として払った保険・年金の基金540兆円、そ
の他金融資産80兆円の合計。
 1世帯平均では、3800万円と大きい。90%の世帯にとって、「うち
には、そんな金融資産はない」となるが、その原因は2つ。

・医師、弁護士、大農家、個人事業主(非法人)など、金融資産と負
債が大きな世帯が、一般世帯には含まれている。
・普通、世帯の金融資産とはしていない年金・保険の基金(政府と保
険会社への預け金)が、1世帯平均で、1018万円含まれている。
 
一方、世帯の金融負債は、借り入れ350兆円(主は住宅ローン:1世帯
平均600万円)、その他の負債(カードローン、消費者ローン)が16
兆円。

(2)600万社の企業部門の金融負債は、借入金464兆円、上場株式
683兆円、その他306兆円。
 ・金融資産は、預金319兆円、証券304兆円、その他561兆円。  
  その他は、売掛金や貸し付けの債権。
 (注)銀行・保険機関は、金融の仲介部門なので、含まない。

(3)政府部門の金融負債は、国債1194兆円(国債、地方債、財投
債)、銀行や日銀からの借入金140兆円、その他16兆円。
 ・金融資産は、証券248兆円、財投17兆円、その他444兆円。

(4)海外部門では、日本が貸している金融資産は、証券518兆円、貸
付金215兆円、その他114兆円(多くがドル建て:円安で膨らむ)。

 ・日本が借りている金融負債が証券714兆円、借り入れが175兆円、
その他371兆円。もっとも大きいのは、海外ファンドがもつ円国債
150兆円と日本株(これらは円建て)。

(まとめ)以上が、日本の全部の金融資産と金融負債。「金融資産=
金融負債」です。

[金融資産=別の誰かの金融負債です]
・預金は、預金者の金融資産ですが、銀行にとっては、負債です。
・証券(株式+債券)は、証券をもつ人の金融資産ですが、発行した
企業にとっては負債です。
・株式は、返済順位が、任意解散か破産による清算まで遅くなる劣後
債です。
・国債は、持ち手(日銀、銀行、保険会社)にとっては、金融資産で
すが、発行した政府にとっては利払いと返済が必要な負債です。

(1)この全部のマネーのB/S(資産と負債の対照)は、
・政府負債の国債(借入金をいれた負債総額1419兆円)が金利の上昇
からデフォルトし、国債の流通価格が暴落すれば、
・国債をもつ日銀・銀行・保険会社・GFIFの金融資産が、同じ金額、
減ることを示しています。

「国債の負債=持ち手の金融資産」の原理。
国債のデフォルトとは、日銀と銀行がも津1200兆円の国債の資産価値
の縮小です。

(2)同様に、金利の上昇から株価が下がると、上場株の時価総額
683兆円が下がり、国内+国外+日銀+GPIF(年金基金)の株主がもつ
金融資産も、下落とおなじ金額が減ります。

金融資産は、マネーの借り主の信用(利払い+返済の可能性)によっ
て増え、信用によって貸されるものであり、実物資産にとっては「気
体」のような資産です。

[事例]貸付金1億円は、借り主が5000万円しか返せない事態になっ
たときは、5000万円の価値しかない。
・これが、預金、株式、債券を含む金融資産の本質です。

・金融資産は、借り手の返済信用によって、価値があるものです。
・国債の価値は、借り手の政府の財政信用から来ます。
・株式の価値は、それを発行した会社の期待純益です。PERが20倍な
ら、期待純益の20年分の価格(時価総額)になります。

株式では、発行元の企業の、事業の、税引き後の予想純利益での予想
返済率が、株式益回り(1÷PER)です。

・PERが20倍なら、1年に5%、15倍なら6.7%が、益回り=株式の利回
りです。配当は時価に対しては少ないので、益回りの一部であり、大
部分は、株価の期待情緒率が利回りです。

■3.資源価格の高騰と金利の上昇の結果は、負債の不良化

日本の総負債は、3701兆円(GDPの7倍)と、GDP比では、世界1大きい。
1998年の金融危機以来、13年のゼロ金利により、政府の負債が1400兆
円台に増えたからです(上記■8の項)。

とりわけ、2013年からのアベノミクスと、2020年からの、コロナ対策
の財政支出の増加により、政府の負債が増えました。

▼世界の総負債は、GDPの3.6年分に膨らんでいる

世界の総負債も、リーマン危機とコロナ危機から、日本と同じように、
増えています。

2015年には、世界の負債は200兆ドル(2京4000兆円)でしたが、
2021年末は300兆ドル(3京6000兆円:1兆円の3万6000倍)。

世界のGDP 86兆ドル(1京円)の、3.6年分です。
・世界中で、コロナ危機対策として国債発行による財政出動が行われ
たたからです(米国が最大額)。
https://jp.reuters.com/article/global-debt-iif-idJPKBN2KT02S

日米欧のゼロ金利、財政拡張、通貨増発から借金が増えたのです。
ゼロ金利なら、借入金が増えるのが、道理でしょう。

2020年からは、
・コロナ危機による「サプライチェーン・ショック」に、
・2022年のウクライナ戦争による、エネルギー、資源の高騰が重なっ
て、世界は長期インフレに向かっています。

◎このインフレは、短期的なものではないでしょう。
すくなくとも2022年、2023年は続く可能性は高い。

【インフレになると金利が上がる】
国債と債券を巨額に売買している金融市場で、長期インフレの認識が
多数派になると、
→低金利の国債と債券が売られ、価格は下がり、金利は上がります。

市場の金利は、国債の売買価格が決めます。中央銀行は、その信用を
使って、金融市場の金利に、介入することしか行えない。

日本では、橋本内閣の1996年だった、金融ビッグバン(マネーの外貨
交換の自由化)のあとは、中央銀行が金利を決めているのではないこ
とを、知っておいてください。

【リーマン危機の起点になったのは、住宅価格下落だった】
米国の世帯が、1500兆円(日本の5倍)も借りている住宅ローン金利
は、3.2%から5%に上がって、ローンの申請数は40%も減りました。
リーマン危機後13年間上がってきた新築住宅価格(2倍)は下がり始
めています。これからも金利は上がっていくので、米国住宅は崩落し
ます。

2007年の住宅価格の下落から起こった、リーマン危機のようになって
いきます。米国では、住宅価格は、消費需要と物価の主動因ですから、
価格下落からは、不況と金融危機になります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14EH30U2A410C2000000/

■4.40年ぶりのインフレ(第三次石油危機)

第二次石油危機(1980年)のあと、約40年ぶりのインフレは、13年間
の、ゼロ金利に慣れてしまい、「冷えガエル」になっていた世界経済
と、ゼロ金利金融を、転換させます。

40年間は長い。永久に低い金利が続くか・・・と思えたのです。
米国・欧州・日本で、50歳以下の人は、インフレと金利の上昇を知り
ません。

日本では3701兆円の負債では、金利が1%上がるにつき、37兆円の利
払いが増えます。インフレ調整として、金利が2ポイント(%)上が
ると、74兆円の年間利払いの増加になって、借入金が多い政府財政
(負債1419兆円)から、破産に向かうでしょう(デフォルト)

世界も、日本と同時です。債券市場での、長期インフレの認識から、
金利が2.5ポイント(%)上がると、負債の300兆ドル(3京6000兆
円)の年間利払いは7.5兆ドル(900兆円)も増えます。この金額は、
世界が支払えるものではない。

◎FRBは、米国の8%インフレから、2022年にはあと6回の利上げ介入
を予定し、2022年末の長期金利は3%から4%台に上がるでしょう。翌
2023年も、3回の利上げを予定という。

世界の、リーマン危機のあと13年の低金利バブル(高い株価と国債価
格)は、崩壊に向かいます。

世界の負債の返済は、平均満期を5年とすれば、60兆ドル(7200兆
円)になります。2ポイント上がった金利を加えた、67.5兆ドル
(8100兆円)の支払いができないと、負債の大きな国から、デフォル
トしていきます。

◎新興国は、対外負債の返済不能になっていくでしょう。これは、新
興国貸し付けは、米国の金融機関の不良債権になっていきます。

先進国内では、国債の返済と利払いの不能になる。

資源価格が上がって潤うロシアと逆に、ロシアに経済制裁をしている
西側が、国家破産の憂き目を見るのです。

【理由】
13年のゼロ金利と、財政に拡大、中央銀行のマネー増発から、負債が
世界GDPの3.6倍になっていて、金利が上がったときの利払いと返済が
できないからです。

米国・カナダ、欧州、日本、アジア、中南米、アフリカの世界に共通
です。40年ぶりのインフレ(第三次石油危機)は、世界経済と政府財
政の、マイナスへの転落の意味をもっています。

(注)1980年の、第二次石油危機後の、米国物価上昇(10%)に対し
て、FRBのボルカーは短期金利を15%に上げ、2年でインフレを収めま
した。当時は、GDPに対する負債が大きくなかったので、金利を15%
に上げても、民間企業でも、借金での倒産は少なかった。

米国の製造業空洞化は、高金利・ドル高の80年代に始まり、90年代に
激しくなって、企業は中国生産でグローバル化(新自由主義)になっ
たのです。米国は、中国で稼ぐようになっていきました。トランプが、
国内産業振興のため、関税を上げ、ウォール街から追い払って、中国
投資をシャットダウンしたのです。

1980年代は、日本の郵貯の、定額預金の金利も7%の複利・・・10年
預けると2倍になっていました。(1.07の10乗=1.97)

■5.政府が通貨リセットを行わないときは、どうなるか?
  (前回は、戦後にあった「通貨リセット」を書きました)

今回は日本の事例研究にします。
●テーマは、2022年、23年のインフレへの、銀行の認識から市場の金
利が2ポイント上がったときから起こることです。(注)米国の負債
と金利上昇についても述べたい。しかし、問題が拡散するので別稿に
します。

【維持が無理なところまで肥大していた、政府の公的会計】
◎財政破産とは、
・政府の公的会計に累積した無駄が不良債権になって、
・政府が公的会計を維持できなくなることです。

現在、公的会計は、特別会計と、105兆円の一般会計と合わせて、会
計間の重複を除いた純額でも、350兆円です。

(注)特別会計には、国債会計が100兆円、社会保障が73兆円、財投
が45兆円、地方交付税が20兆円入っているので、公的会計は350兆円
と大きい。官僚が「特別や特殊」というときは、「国会と国民の監視
を受けない」という意味をもっています。

日本の530兆円のGDPが含む、公的会計は350兆円です。
この金額の大きさは、もともと、無理な会計であることを示します。
無理なものが、正当に、無理になるのが、財政破産です。

純額で245兆円の特別会計(2020年)を、普通は隠すのは、財務省が
「日本は異常に大きな政府だ」と、国民に知られたくないからです。
(特別会計↓) 官僚の裁量権を、確保したいからです。
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/special_account/r3yosan_kibo.pdf

日銀+銀行が、国債を買えなくなると(あるいは買わなくなると)、
赤字の公的会計は、その日に・・・一瞬で、破産します。

▼財政破産の様態

(1)政府の国債予算(一般会計+特別会計:2021年度)では、
・借り換え債の発行が147.1兆円(満期がくる国債の、期日繰り延
べ)、
・一般会計用の新規国債が、43.5兆円(社会保障の補填)
・その他45.4兆円(コロナ対策費、補助金等)、

◎財務省理財局は、合計では、236兆円という、巨額な新規国債の発
行を予定しています。

新聞が報じるのは、一般会計用の45.4兆円だけです。
しかし新規発行の国債としては総額の236兆円が重要でしょう。

■6.「日本には対外債務がないので、財政破産はない」というエコノ
ミストたち

財政破産がないという人たちは、いつまでも毎年の236兆円の国債を、
「日銀と国内銀行」が買い続けることができるという非現実な仮定を、
前提にしています。

これは、インフレで金利が上がったとき(=国債価格が下がったと
き)、簡単に、間違いであることがわかるものです。

メディアはなぜ、国民にとって問題が大きな「特別会計」を報道しな
いのか。147.1兆円借り換え債は、100%銀行が買うと前提しているか
らです。ところが、金利が上がると、147.1兆円借り換え債を、銀行
が買い続けることができるかどうか。ここが問題になって財政破産も
起こるのです。対外債務がない国には財政破産がないというのは、虚
説です。
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2021/issuanceplan201221.pdf

【国債の買い手】
1年236兆円に膨らんだ国債発行の買い手は、日銀、国内銀行、保険会
社、年金基金のGDPFです。
 ↓
銀行・保険会社・GPIFは、満期が来た国債の償還金を147.1兆円政府
から受け取って、147.1兆円(日銀預けの当座預金)で、同額の、新
規借り換え債を買ってきました。

政府からの、国債の純返済は40年間ない。満期の繰り延べ(=借り換
え債の買い)により、日本国債は、満期のない永久債になっているの
です。

政府が借り換え債を147兆円も発行する原因は、政府の財政が30~40
兆円の構造的な赤字なので(=資金の不足)、財政黒字からしか行え
ない国債の純返済ができないからです。

今後も、ほぼ永久に、純返済はできない。つまりすでに国債の信用は
なくなっています。ところが借りる側の政府(金融庁)によって、
「もっとも安全な債券」とされています。金融庁は、絶対に国債をリ
スク資産にしないのです。

借りる側(政府側)が、「これは信用できるという債券」を信用し、
銀行が買うことは、いいことでしょうか。

「私への貸し付けは信用できる」という言葉だけで、審査もなく貸し
付ける銀行は、自分が破産することになるでしょう。

銀行は、自己資本の計上を、金融庁の基準に頼っています。国債を増
やすとリスク資産の割合が減り、自己資本が増えるのです(バーゼル
2の規定)。
https://www.fsa.go.jp/policy/basel_ii/basel2.pdf

国内銀行はリスク資産の4%、国際取引のある銀行は、リスク資産の
8%以上の自己資本が必要です。銀行が好んで低金利国債を買ってい
るように見えるのは、リスク資産(貸出金、証券、株)から除外され
る安全資産とされている、仮想の基準からです。

この仮想の基準が壊れるのが、金利の上昇による国債価格下落です。
増刊はここまでとします。この増刊に続く正刊は、水曜日の、有料版
の正刊として送ります。

【水曜日 有料版正刊:目次予定】
■7.金利が2ポイント(%)上がったとき
■8.「2ポイントの金利上昇」で起こる円安の中では、更に、円安に
  
  する日銀の国債買い(=円の増発)は、行うことができない。
■9.政府が国債を発行できないと(=買い手がいなくなると)どう
  なるのか?
■10.政府(=公務員の職場)はなくならないという安心感=政治
家・
  官僚
■11.MMT(現代貨幣理論)の犯罪的な罪
■12.1990年の、日本株の先物売りという先例
■13.出口なしの日銀
■14.財政破産になると、どうなるか。

【後記:世界インフレと金利の上昇】
日本の金融資産と負債から、2015年ころには起こるはずだった政府国
債の発行難(=既発国債の価格下落と金利の上昇)は、日銀の異次元
緩和(2013年4月からの日銀の国債買い530兆円とゼロ金利)により、
先送りされました。

金利が上がらないなら、財政破産には、ならないからです。

しかし2020年からのコロナ危機と22年のウクライナ戦争の、複合効果
から、米国のCPI(消費者物価)は、前年比8%台上昇が長期化し、
FRBは2022年3月から、(冒頭に述べたように)利上げを加速していま
す。
株価と米国債は、金利があがると、両方とも下がります。

2013年から21年の異次元緩和と、国債の増発によるコロナ危機への対
策費は、CPI(消費者物価)が上がって金利が上がったときは、逆に、
財政破産を促進させるものに。変化します。
政府の負債額が、増えたためです。

日本のCPI(消費者物価)は、2022年4月では、携帯電話の約50%値下
げ(2021年)による1.5%の物価低下の効果が切れ、2%台に上がりま
す。(2.5%か?)。このインフレは短期では終わらない。2022年、
23年までは続くでしょう。

日本でも、22年5月からは、
・国内の要因では、CPIの上昇
・海外からの要因では、早く8%台のインフレになった米国の金利上
昇から、
世界と日本の金利が上がっていきます。

財政破産に向かう時期が、早期化されたのです(約1年は早期化)。
水曜の正刊では、ここを、詳しく述べます。

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