早くもグローバル・サプライチェーンの変調が現れた
This is my site Written by admin on 2018年12月3日 – 17:00
ブエノスアイレスのG20でトランプ大統領は、条件付きの「追加関
税」の3か月猶予で、中国側と合意しています(現地時間:12月2
日)。課税品目を拡大して税率を10%から25%に上げることの3か
月引き延ばしです。その間に、知的所有権を犯し、輸出に有利な経
済を作っている中国に、構造改革での合意を迫るという。本稿では、
トランプ関税の、世界経済への影響を検討します。例によって、プ
ロローグ部の約10枚分を送ります。
                
               *
おはようございます。京都の紅葉が見たくなり、先週と昨日行って
きました。朝10時に家を出て、お昼は、四条河原町の狭い路地にあ
る『志る幸』で熱燗をつけてもらい利休辯当を食べる。

20年くらい前から京都ではおよそ毎回行きます。「志(し)る」は
味噌汁。京都は白味噌ですが、出汁がはんなりと優しく甘く、究極
の味に思える。具は10種から選ぶ。質素だった幕末の志士が飯を持
ち寄り、会主が汁でもてなしたことが始まりという。カウンターは
能舞台を模した畳敷き。10組くらいの客が舞台を見るように小さな
椅子で取り囲む。すべて丁寧に作られたものです。

昨日は夕食にも行ったので、女主人が「あれ、今日は2度
目・・・」と驚いた風でした。価格は中くらいで、質に対し高くな
い。烏賊と鰹の塩辛、銀杏の焼き物、鯛のアラ煮、そして二合の熱
燗。日本酒には塩辛がベストでしょうか。
http://shirukou-kyoto.jp/reason.html

紅葉は、永観堂の禅林寺。碧(みどり)の東山を背景に手入れされ
た紅葉の林と池。1000本以上はあるでしょう。銀杏の、黄金の落葉
が敷き詰めた苔むす地の、曇った空を、赤子の手を開いたように、
紅葉が赤く萌えて過剰に埋める。晩秋の観光客は多く、今日の一瞬
を留めようとスマホを向ける。京都はインバウンドで沸騰していま
す。

もうひとつの目的は、京都国立近代美術館で開かれている「没後
50年:藤田嗣治回顧展」でした。上野の森の、東京都美術館にも行
き、京都で二度目。東京美術学校の時代から晩年の宗教画までを集
めた総覧は、今後難しいかもしれないと思い、三度訪れました。

インクの染みがついた手紙を前に、頬杖をつき、遠い過去のことか、
彼方にいる人への想い沈む女性の、「カフェにて」が有名です。も
ともとは家人の30年来の関心によるものです。リビングルームの壁
に、同じサイズの複製画を掲げています。

ほのかに黄みがかる乳白色は、白の絵の具にベビーパウダーを混ぜ
て作ったという。繊細な線と、他の画家にはない、漂白していない
絹のようなオフ・ホワイトです。画家は、他にない色を発明します。

絵画は、絵具で表す表面の「現象」ですが、ダビンチが人を描くに
あたって、解剖学的に骨格と筋肉を習作したように、キャンバスの
表層により、皮膚の下の、見えない肉体と脳の思考を表しています。

衣服の上からだけ見ても、「この人は足が悪い」とわかるような描
き方です。藤田では、乳白色の皮膚と、縁取りの細く微妙な線の下
に、人物の皮膚の下と考えが見えるような気がします。技法が隠れ
るくらい技術を極めた、名人の手でしょう。

乳白色と紅葉そして利休辨当の京都の一日でした。行き帰りの車の
助手席では、リヒテルが1970年代に弾いた『平均率クラビア曲集』。
この大切なCDが、どこに紛れたのか、約1時間かけて書棚を探して
も見つからず(絶対に捨てていません。捨てるはずがない)、仕方
なく4巻を新しく買って、デジタル音楽プレーヤーにFoober2000の
エンコーダー(アプリ)を使って、FLACのロスのないデータ形式で
入れたものです。

圧縮度が大きなMP3では、耳に聞こえるくらいの高い音の欠落があ
ります。FLACでは、この情報欠落がない。CDでは生じる読み取りミ
スの修復もないので、CDプレーヤー以上の音になります。

価格は若干高いものですが、高音質のイヤフォン(Ultimate 
Ears TF10)で聞くと、違いがわかります。MP3では音の焦点がぼ
けた感じに聞こえます。情報量の多いFLACでは、ジャストにピント
が合う。アップルの、iTuneがもつAIFFのエンコーダー(デジタル
に符号化するソフト)でも、ほぼ同じです。

漆カブレになって2週間過ぎ、ピークの30%くらいに引いてきまし
た。皮膚科で処方されたステロイド軟膏を1日に2回、べっとり塗り
3種の内服薬を続けています。あと1週間はかかるでしょうか。「か
ぶれは想定以上にひどいものですよ」と医師は言う。

両方の腕と脚が赤く腫れ、経験したことのない痒さでした。生漆の
チューブから数ミリを絞り出し、塗る前のテストとして直径数セン
チくらいを混ぜただけでした。漆には触れていません。

ウルシオールから出る蒸気が問題だったのか。知らず知らずに細片
に触れていたのか。かぶれはひどかった。見るのも怖くなって、ビ
ニールで封をして捨てました。

予定では、数キロヘルツ以上の高音を受け持つソフトドームのツウ
ィーターの振動部分に、ダイアモンドパウダーを漆に混ぜて薄く塗
り、固くするつもりでした。漆は硬化すると固くなるからです。

漆計画は中止し、次に固く、かぶれに無関係なカイガラムシの殻か
ら作ったセラックニスにダイアモンドパウダーを混ぜたものを塗っ
ています。硬化後2週間の効果は、「2000HZあたりの周波数までの、
歪み感の低減」です。簡単に言うと「滑らかな高音」です。

もう一層塗るかと悩んでいます。たぶん塗ることになる。テレビ用
の4cmの小型スピーカー(フルレンジ)では、「ダイアモンドパ
ウダー+薄いセラックニス」の、高音効果があったからです。いい
音が出ると、「これ以外に何が要る」という感じになります。

いい音は主観的です。藤田嗣治の微妙な乳白色のように、光のスペ
クトルだけでは計ることができない。音は周波数特性の計器で計る
ことができるのものではない。料理の味も同じで、要素総合的な味
覚です。

感覚総合的なものは、多要素を深層学習するAIなら、客観的な数値
で計ることができるものかも知れません。沢山の音楽を聞かせ、こ
れがいい音と大量学習をさせていく。AIはそれを、最小二乗法で数
値化します。

セラックニスは、ギターの共鳴板の塗装に使われます。高級品では
1000番や1500番の細かいサンドペーパーで柔らかく磨きながら、数
十回から100回塗るという。板の響きを澄ませるためです。バイオ
リンの名器の秘伝の塗装にも、セラックニスが1/3くらい混じって
いるという。

           *

2020年の大統領選での再選を目的にしたトランプ関税のため、グ
ローバル経済の収縮が生じ始めました。GM(ゼネラル・モーター
ズ)は、北米の5工場を閉鎖し、1万4000人の雇用をカットする発表
をしています。アルミと鉄の関税強化で原材料コストが上がるため
という。GMの場合は、関税だけが原因ではない。しかしコストを上
げた関税は、経営責任を転嫁する理由になっています。

1990年代から世界の製造業は、適地調達の「グローバル・サプライ
チェーン」の生産構造になってきました。GDPでは200兆円になる自
動車工業はその代表です。

世界の生産台数は9700万台です(2017年)。中国が2900万台(構成
比30%)とダントツに多い。米国1100万台(同11%)、日本969万
台(同10%)、ドイツ564万台(6%)です。

中国の生産は米国、日本、ドイツの合計台数を上回っています。国
内の需要も3000万台と、日本の6倍も大きいからです(日本の需要
は517万台:2018年)。中国は米国車に対し25%の報復関税を課し
ています。

GMは海外から鋼材(鉄板)を輸入し、日本などからは部品を調達し
て、やはり日本から輸入したロボットで組み立て、生産と販売して
います。部品メーカーは、3700社という。網の目のような調達のチ
ェーンです。

世界の自動車生産は、世界中でもっとも価値(品質/価格)の高い
部品を、トヨタ式のジャストインタイムで調達し、主な工程はロボ
ットで組み立てるサプライチェーンになっています。トランプが、
誤って前提にしている一国生産は、1970年代に終わったのです。

グローバル・サプライチェーンへの進行の認識を誤っているトラン
プは、まず、アルミと鉄鋼に対し、10%と25%の関税を課しました
(大統領令:2018年8月~)。課税対象の生産国はカナダ、EU、中
国でした。日本とEUに対しては適用除外分もあるので、主な標的は
中国になっています。

アルミと鉄鋼は、「国防のために必要」という表向きの理由からで
すが、空洞化していたラスト・べルト(米国の、工場が錆び付いた
工業地帯)の雇用を回復して、米国の所得を増やして、トランプ支
持を高めることを目的とするものです。

海外の部材と部品に10%から25%の関税をかけると、輸入して組み
立ているGMの生産コストは上がります。販売価格を上げるともとも
と競争力が低いGMの車は売れなくなるので、コストカットという対
策をとったのです。

これが北米の、5つの工場の閉鎖と1万4000人のリストラでした。カ
ルロス・ゴーンが、日産の再生のために行った、村山工場の閉鎖
(日産の主力工場でした:2001年)と雇用カットに類似します。

トランプ関税の影響は、金属製品の全体では、GMのリストラにとど
まる訳がない。エコノミストの試算では、今後、アルミと鉄鋼の課
税により原材料価格の上昇のため、米国の加工工場が価格競争力を
失って、47万人の雇用が失われるという。下がってきた米国の失業
率が、再び高まるのです。

1980年代ドル高の40年前から、空洞化してしまった米国のアルミと
鉄鋼の、コスト競争力の低い工場が、新たに建設されて雇用を生む
ことはない。トランプは、国内雇用の確保として、何をどう考えて
いたのでしょう。1970年代までの一国生産モデルと見ていたのでし
ょう。

価格競争力のある米国農業は、中国の報復関税(米国からの輸入
12兆円分が対象:18年9月24日発動)の25%で、輸出を減らします。
トランプ関税はブーメランのように、中国からの米国への関税にな
っています。この面でも、雇用の喪失があります。

米国は、中国からの全輸入(約50兆円)の半分である25兆円分の品
目に課税しますが、中国は米国からの輸入の12兆円分に対して報復
関税の措置をとったからです。家畜の飼料になるトウモロコシの米
国からの輸入は、18年9月には98%も減っています。

思い付きのように唐突で、リカードの比較生産費説(973号で解
説)を無視したトランプ関税の影響は、2018年末から2019年にかけ
て大きくなって行くでしょう。

共和党のトランプの関税強化に対しては、野党である民主党の多数
派も、支持しています。議会は、大統領令を無効にする対抗法案を
作ることができますが、現時点では、見込みはありません。

11月の中間選挙後の米国議会では、上院では共和党が52:48で、下
院では、234:201で民主党が多数派です。

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 <976号:早くも、グローバル・サプラチェーンの
                      変調が現れた>
     2018年11月28日:有料版

【目次】
1.世界経済の、リスク要因になったトランプ関税
2.米中貿易摩擦から、中国の不動産価格は下落する
3.2019年末から2020年の、中国発リーマン危機の想定
4.働き方改革法の「ガイドライン」
5.求める役割が異なる場合の、時間当たりの賃金格差
【後記】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.世界経済の、リスク要因になったトランプ関税

近年の、世界経済の実質GDPの成長率は以下でした(IMFの統計)。
終わっていない2018年と、これからの2019年は予測です。

    2014年 2015年 2016年 2017年   2018年 2019年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
世界  3.6%  3.4%   3.2%  3.7%  (3.9%)(3.9%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米国  2.6%  2.9%  1.5%  2.2%  2.3%  1.9%
ドイツ 1.9%  1.5%  1.9%  2.1%  1.8%  1.5%
中国  7.3%  6.0%  6.7%  6.8%  6.5%  6.3%
インド 7.5%  8.0%  7.1%  6.7%  7.4%  7.8%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
日本  0.3%  1.1%  1.0%  1.5%  0.7%  0.8%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2003年から2007年は、生産のグローバル化が進行していた世界経済
の成長は、5%台と高かった。2009年は、リーマン危機(金融収縮
の危機)から0%に急落し、2010年からは、世界の金融緩和で3.5%
~4%に回復。上表に示した2014年以降は、3.2%~3.6%の成長が
あり、2018年は3.7%、19年も3.7%と実質成長率は、若干高まると
予想されていました。

世界GDPの実質成長率は、世界の商品の、生産数量の増加を表し、
企業と世帯所得での、(物価上昇率を引いた)実質額の増加率でも
あります。商品の需要数でもあります。

2%台以下は世界不況、4%台なら好況でしょう。3%台は、ニ
ュー・ノーマル(新しい普通の状態)と言われる中庸です。世界経
済の成長と不況の差は2%しかない。好況でも不況でも変わらない
固定的なGDPが大きいからです。

数年後の経済を成長させる企業の設備投資は、好不況で大きく左右
されます。

【リーマン危機のとき】
リーマン危機の後は、対米・対欧輸出が減った日本が実質GDPでマ
イナス5.5%、輸出経済のドイツがマイナス5.6%と減少の幅がもっ
とも大きかった。

中国も、対米・対欧での輸出減になりましたが、人民銀行が4.5兆
元(72兆円)の増札をし、政府の公共事業と、国有企業による住宅
建設投資を行ったため、逆に10.6%という高いGDP成長率でした
(2009年)。

資金量がもっとも多い米国発の金融危機によって、世界恐慌になる
恐れがあった世界経済は米国、ユーロ、日本、中国の中央銀行によ
る合計$12兆(1320兆円)通貨の増刷と、金利をゼロ%に下げる、
世界史上初めての金融緩和により救われています。

リーマン危機のとき、米国ダウは6500ドル台へと50%、日経平均は
8000円台に40%下がっていることは、危機の下落幅として記憶に値
します。現在のダウは、2万4784ドルで約3倍、日経平均は2万2177
円であり、2.7倍に上がった水準です(18年11月28日)。

IMFは、3.9%と高く見ていた2019年の世界GDPの成長を、貿易摩擦
と金融引き締めにより、3.7%へと0.2ポイント引き下げています。

しかしこの予想は、トランプ関税と中国の対米報復税の、時間をお
いた波及を、低くしか見ていません。2019年を通じてトランプ関税
が25%に強化されて、中国からの全輸入に拡大されると、小さくて
も1ポイントは下がるでしょう。1.5ポイントかも知れない。

もっとも影響を受ける中国のGDPの成長率は、現在の予想の6.3%か
ら5%台(または4%台)に下げるかも知れません。FRBが2019年に
予定するという3回の利上げ(経済は需要と投資の引き締めなる)
と、中国の全品目に対して25%の関税が課された場合です。

中国にとっての4%台の成長は失業を増やします。社会保障が整備
されていないので、ホームレスのような都市流民になった失業者は、
「暴動」を生みます。

報じられない騒乱は、年間20万件ともいう。規模は、数十人から数
万人のデモや暴動です。多くが、農村を捨て、農民工になった下層
の労働者です。

▼今年の秋、早くも下がり始めた香港の不動産価格(後略)・・・

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