早まった国家財政の危機(1)
This is my site Written by admin on 2011年5月4日 – 08:00

おはようございます。この大型ゴールデンウィークでは、6596万人
(昨年比 102%)が、全国主要1090カ所の行楽地や祭り等に出掛け
ると期待されています(主催者側の予想合計)。果たして、どうで
しょうか? 

兵庫県は人口558万人で、GDPで計る経済活動(生産と流通)の規模
は約20兆円、日本の4%です。今回の大被災地である岩手、宮城、
福島と人口及び経済規模がほぼ同じです。

阪神・淡路大震災(物損額10兆円)の後に、兵庫の県民総生産(GD
P)がどう向かったかを調べれば、被災地の復興投資とその後の経
済がどうなるかを考える参考情報になります。

(注)GDPは世帯、企業、政府の消費と投資の純計+輸出―輸入で
す。消費は1年以内に使うものを言い、投資は1年以上をかけて使う
構築物(住宅、企業設備、公共投資)への支出です。これらは資本
になるので、固定資本形成とも言います。

阪神・淡路大震災の後には、95年~97年の3年間で、直接物損(10
兆円)を上回る合計13.5兆円の、官民による固定資本形成(=復興
投資)が行われています。3年間の復興需要は、住宅や企業設備が
破壊された兵庫県のGDPを、逆に、増やしたのです。

このうち、政府の補正予算によるものは3兆3800億円(固定資本形
成の25%)です。県と民間によるものが、75%でした。

【震災後の実質GDP:兵庫県:内閣府】
1995年度  21.1兆円(復興投資:4~5兆円)
1996年度  21.7兆円(復興投資:4~5兆円)  
1997年度  21.1兆円(復興投資:2~3兆円)
1998年度  20.2兆円
1999年度  20.0兆円
2000年度  20.3兆円
2001年度  19.6兆円
2002年度  19.7兆円
2003年度  19.7兆円
2004年度  20.1兆円

震災後の復興投資があった97年度まで、兵庫県のGDPは21.1~21.7
兆円レベルでした。98年からは、不良債権問題からの金融危機(07
年末から)が重なったこともあり、約1兆円(約5%)GDPが低下し
ています。

大津波が重なった東日本大震災では、物損で阪神淡路の2.5倍(25
兆円)と内閣府は見ていますが、実際は3倍(簿価で30兆円)以上
でしょう。

これに原発の収束の長期化(悪化の可能性も残る)による損害(想
定10+α兆円)が加わります。更に、消費マインドの大きな低下が
あります。国民が受けた心理ショックは、(比較が不遜であること
を承知で言いますが・・・)阪神・淡路の数倍でしょう。

【バイアス情報】
外資系金融機関の経済アナリストが、今回の震災後の、日本経済の
見通しにおいて「低い予測」を出すと、本社の幹部からクレームが
入るという(仄聞情報)。これは、外資系の金融機関やファンドが
、震災後の日本株を、買い越していることと関連します。

こうした背景から復興需要を大きく見積り、「お茶を濁す」ことが
行われています。

日本の官庁系エコノミストも事情は同じでしょう。民主党政府(高
官)からクレームが入る。変な具合ですが、ここでも、当為による
情報操作があります。

【言霊】
この国の言葉には、言霊信仰の残滓があると思うことが多い。言霊
(ことたま)は、人が発する言葉に宿る魂とされます。

声にした言葉には言霊が宿り、それが人に伝わって、悪い言葉を発
すれば凶事が起こり、良い言葉を言えば吉事が起こるという。その
ため、結婚式などの慶事では、言ってはならない忌み言葉がある。

淵源は、事(コト)と言(コト)が同音で、加えて漢字が表意文字
であることからでしょう。

科学であるはずの経済でも、言霊があるので、悪い予想を出すと悪
くなると思われるふしがあります。

雑誌等の論文を読むと、時折、「本稿は筆者の個人的な見解であり
、筆者が属する組織とは無関係です」という注記を見ることがあり
ます。組織は、論文を書けません。書くのは個人の論理です。敢え
て断るまでもなく、個人的な見解であるはずです。

しかし共同体である組織の中には、方向を決める「文脈」がありま
す。経済対策を起案する内閣府にも、これがある。経済の研究機関
にもある。企業にもある。政党には、あからさまにある。

あらゆる組織は、共同体に固有の、政治的な文脈(イデオロギー)
をもちます。communicationの原義は、言葉の意味づけを同じにす
る共同体というものです。

「**を**と見る」という価値判断が政治です。
政治的な言語は、情緒的なものであって科学ではない。
(注)政治は、集団間の利害の調整です。相撲の八百長も、組織の
中の政治です。民主党は、原発の推進という政策です。

自然科学であるはずの原発の、データ発表にもこれがあった。
今も、政治的な配慮をした原子炉数値の発表が続いています。

ある記者が質問した。
「今、想定される最悪は何ですか?」 
原子力安全・保安院の西山審議官が答えた。
「最悪の事態が起こらないように、全力で対策を立てています。」

「最悪を想定しない限り、防ぐ対策も立てられないでしょう?」
「最悪の事態が起こらないようにすることが、我々の務めです」

西山審議官は、最悪の想定を語らない。立場(組織)として、政治
的言語を使っているからです。西山審議官も、「個人」としては別
の見解をもっているでしょう。

菅首相が言った、「まさに必死で、全力で、世界の全知全能を集結
して、この国難に立ち向かう」という呪文もあった。全力や全知全
能は、心意気は表しても、実際に可能なことではない。一生懸命と
は何か? 東電の清水社長も、国会答弁では「全力で対策を打って
いる」と言う。情緒を含む言霊の言葉です。エイヤーのかけ声です

誰でも、重要なことでは一生懸命です。一生懸命に行えば結果がい
いとは言えない。一生懸命に考えれば、最適な案が浮かび実行がで
きるのなら、仕事や人生の苦労もない。

一生懸命に、全力で、全知全能をこめてドライバーを振れば、皆、
石川遼並みに正確に遠くまで飛ぶのなら、ゴルフというゲームも成
立しません。政治的な膂力が強かった田中角栄が、全力で一生懸命
に振ってもドライバーは飛ばない。どうすることが一生懸命なのか
、そこにスポーツ科学的の方法がある。

国策でもある原発の推進は、言霊を含む政治でした。「全電源喪失
で起こるメルトダウンがもたらす最悪の事故は、起こりえない」と
されていたからです。これが想定外の意味です。科学的に言えば、
想定外とは、確率的に起こりえることです。

現在でも、政府・東電は、言霊を怖れるのか、メルトダウンとは言
わず、「燃料棒の一部損傷」としています。発表では被覆の30~70
%が溶解しているのに、一部損傷が適語とは言えません。政府・東
電も、個人は別にして、組織として「言霊」の文脈をもつからです

原発プラントを含むあらゆる構造物は、「設計における想定(耐圧
と温度)」がなければ、作ることが不可能です。圧力容器、格納容
器も、破壊の限界値を決めねば作れません。タイヤの耐圧と、何ら
変わらない。至極当たり前のことです。

しかし原発は、(科学的ではなく)政治的に、安全だとされていた
のです。

「安全でないことも稀だがある(科学の言葉)」と、外部に向かっ
て言えば、共同体である原子力ムラから政治的に排除され、学者と
しての栄達や生活の糧も失っていた。ここに今回の問題があった。
(注)京都大学 原子力炉実験所の小出裕章助手・・・等

過酷事故(シビア・アクシデント)が起こる可能性も、確率は少な
いがあると言えば、人口が少ない地域であっても原発を作ることは
できなかったためです。原発の過酷事故では、被害は長く、広い地
域になるからです。

ないとされていた全電源喪失が、実際は起こった。このため、準備
された対策がなかった。(注)対策は、熱交換の、閉鎖系の循環機
能をもつ外部冷却装置の、事前準備です。構造設計には想定外のこ
とがあるとすれば、準備をしたでしょう。

原因は、原子力ムラと政府を支配していた言霊が、起こる可能性の
あることを100%ないとしていたからです。

言った学者も、5重の壁で、安全という言霊(または利権)に捕ら
われていたとしか思えません。科学者として、あるまじきことです
。原子力発電の建設でも行われる地鎮祭のようなものです。大地の
魂を鎮める、共同体の祭祀です。

第二次世界大戦では、共同体は、壊滅的な戦闘を「転進」、部隊の
全滅を「玉砕」、敗戦を「終戦」と言い換えていました。好ましく
ない結果に対する言霊の使用が、一層、現実と考えを乖離させ、悲
惨な結果を招いています。人は、言葉で考えるからです。最後は、
神国には神風が吹く、1億総玉砕だった。

西欧の言語には、(言霊がないとは言えませんが)、神的な世界観
から脱出した16世紀のルネサンスの頃、(神の視点ではなく)個人
が実証と論理で事物を見る自然科学が生まれ、「いいことを言えば
、いいことが起こる」と考える人は少ない。(注)神的な世界観は
、あらゆるものの造物主を神とするものです。

このため、言霊風に言えば不吉な、生命保険のように最悪(死)を
想定したものも生まれたのでしょう。

マスコミはあまり取り上げていませんが、原子力発電を推進してき
た指導的な学者(多くが今はOB:16名)が連名で「国民に深く陳謝
する」という文書を公開しています。いずれも福島原発の建設時期
には「想定外はない」としてきた人々です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110416-00000003-jct-soci

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   <536号:早まった国家財政の危機(1)>
         2011年5月4日号

【目次】

1.賠償のための電力費値上げの案
2.役員が怖れる株主代表訴訟
3.必要な震災復旧費、原発賠償費と、国家財政

【後記】
増刊予告・・・

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【予備事項】
国家財政の危機を、国が潰れるという人がいますが、それは誤りで
す。国家は政府機関を言います。政府機関(省庁)の赤字が増え、
国債リスクを示す金利が上がって、資金調達ができなくなることが
国家機関の破産です。例えば徳川幕府が財政的に破産しても、民間
が潰れることはない。

しかしなぜか、国家機関と国を同一視する論者が多い。国家破産の
帰結は、今のギリシアのような、公務員の削減、政府予算の縮小で
す。

(注)ギリシアの長期国債金利(=国債の信用リスク)は14%に高
騰しています。デフォルトをし、債務をカットしない限り無理です
。14%の金利とは、国債発行の不能です。事実、二年債の中期金利
は24%。消費者金融より高い。国債の売り手だけで、買い手がない
かためです。国に資金ない。資金がなければ、公務員給料も支払い
はできない。

日本の国家は、国と地方公務員、特別行政法人の準公務員の合計で
約400万人を雇用し、40兆円の人件費(公務員年金と福祉費を含む
)を払っているわが国最大の公的企業でもあります。収入は税収と
年金や医療が主な福祉費であり、支出が、政府と自治体と特別行政
法人の予算です。

■1.賠償のための電力費値上げの案

政府は今、放射能被害で必要な地域の住民への賠償額を4兆円と試
算しています。政府負担を2兆円、東電負担を2兆円として検討中と
いう(5月4日)。

(注)風評被害を含むと、賠償額は4兆円を超える可能性が高い。
メリルリンチの試算は、10兆円です。収束時期が工程表より長期化
、または悪化すれば要賠償額は、大幅に増えます。

【政府による検討案】
「原発事故賠償基金(仮名)」を作る。
政府と、わが国電力会社の拠出金及び借入金での基金です。

個々人の損害を査定のし、基金から賠償金を支払う。東電は、2兆
円(50%)を負担する。毎年1500億~2000億円を、10年にわたって
、東電が基金に返済する。

東電による賠償金支払いを可能にするため、
(1)持ち株等の資産売却と、給料カットのリストラを図る、
(2)東電管内の電気料金を、16%値上げする。

東電の純資産(=資産―負債)は、3兆円です。事故後の株価時価
総額は、賠償と原発の損害を見込んで6845億円と、約1/4に下がっ
ています(5月2日)

2兆円という東電の賠償可能額は、純資産(簿価)の3兆円から出て
きたものと考えられます。ただし、東電は賠償額と別に、福島第一
原発の廃炉までの費用を負担せねばならない(東電試算で1.5兆円
)。賠償負担2兆円+廃炉費用1.5兆円で、純資産はほぼ消えます。
つまり、負債が資産を上回って債務超過になる。

東電の売上は、2011年3月期で5兆3850円、経常利益見込みが2400億
でした(3月23日:東電予想)。事故後の2011年4月28日時点での証
券アナリスト予想では、11年3月期は、1268億円の赤字、12年3月期
は9193億円の赤字と見込まれています。

以上から、東電を存続させるには、電力料金の16%値上げが必要と
いう案が政府で検討されています。(世論の観測球と見ます)

16%の値上げは、約5兆円の東電売上の8000億円に相当します。管
内の人口は4600万人くらいです。1人当たりで、1年に1万7400円、1
世帯で5万2200円/年を、増加負担することになるのが、16%の値
上げです。この負担増は、相当に大きい。

10年間で1人当たり17万4000円、世帯当たり52万2000円です。国民
が受けた原発災害の賠償を、国民からの電力費徴収でまかなうとい
う筋の通らない案です。東電が払えないから・・・

私企業であるに係わらず、わが国の電気代は「総括原価方式」で決
められています。発電、送電、販売にかかる全費用に、利益(約5
%)を上乗せしたものです。

賠償や廃炉費用も原価になるので、「16%値上げ」という案が出る
のでしょう。「何と虫のいい話か」と思えます。許容できますか?

当初、東電と原子力安全・保安院が言っていた「想定外」の含意は
、「東電には免責額以上の賠償責任はない」ということです。

東電の原発の設計基準は、原子力安全・保安院が認可した。安全基
準を東電は守っていた。天災である地震の大きさは、設計の「想定
外」の規模だった。東電の安全基準には、違反がない。

従って東電には、1サイト1200億円を超える賠償は免責になり賠償
責任はない。安全基準を作っていた政府が負うべきが、その免責額
以上の賠償責任である。(以上は事故当初、想定外という言葉で東
電がほのめかしていたことです)

なお、事業者の賠償可能額を超える損害が発生したときは、国家が
事業者に援助を行い、被害者に賠償を行うとされています。

以上の法的な枠組から出てきたのが、
(1)東電の賠償額2兆円
(2)政府の賠償額2兆円
(3)東電の存続のための、電気代の16%値上げでしょう。

■2.役員が怖れる株主代表訴訟

なぜ、債務超過になる東電を国有化しないのか不思議に思われるか
もしれません。国有化することは、株価をゼロにすることです。

連結での6.3兆円の社債(転換社債1.6兆円を含む)も、何割かカッ
トされるでしょう。震災後2兆円増え、長短で6.3兆円に膨らんだ借
金も同様です。金融機関よっては、致命的な金額の不良債権になり
ます。

以下の29ページにB/Sがあります。総資産・負債は今、15兆円と巨
大でしょう。事故後、銀行から2兆円の緊急融資を受けています。
http://www.tepco.co.jp/ir/tool/factbook/pdf/factbook-j.pdf

事故前の東電の株価時価総額は約3兆円でした。今6845億円です。
株価の下落は77%です。売買停止の管理銘柄になっても変ではない

大株主は、信託銀行(年金等の投資信託)、生命保険、東京都、都
市銀行です。配当率の高い安定株として個人(退職金等の運用)も
多かった。国有化では、株主の資産だった3兆円が、無価値になる

米国には、今、「東電の役員には経営責任がある」とし、株主代表
訴訟の気配があります。事故へ対応と情報開示の不適切さを指摘し
ています。日本でも、株主の損害が大きすぎるため同じ動きが起こ
るかも知れません。今、東電(法人)より、株主が受けた損害が2.
4兆円と甚大です。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110330/amr11033022470007-n1.htm

訴訟で経営者責任を認められると、責任を問われる役員は、東電(
法人)に対し、私財からの賠償責任を負います。

(注)国有化に至らなくても、株主代表訴訟を受ける可能性が高い
。福島原発の危険に対するIAEAの勧告を、東電は無視したからです
(ウィキリークス情報)。加えてGEの原資炉の設計者は、「40年も
前、津波は想定していなかった」と暴露しています。ところが政府
は、福島第一原発の20年の延長使用を認めていました。

代表訴訟は、東電の役員がもっとも怖れていることでしょう。
それを避けるには、会社を存続させ、株価ゼロを避けねばならない

以上が、電気代の、16%の値上げ案の、背景にあることでしょう。

(注)政府は「停電を避けるための節電を図るよう、電気代の値上
げが必要」という論理も準備しているようです(与謝野経済財政担
当大臣)。

電力費は、大規模工場などの大口需要家(2000KW時以上の使用契約
)には、電力10社以外の事業者も電力供給ができるとされているた
め、1999年3月以降は、双方の自由契約で決まります。この価格自
由化の範囲は2005年以降、50KW以上の需要家に拡大されています。
(料金の部分自由化)

ただし家庭向けは管内の電力会社の地域独占で、家庭には選択権が
ないので、料金値上げには経産大臣の認可が必要です。つまり政府
が決める。

当方、$1=80円レベルの円高にも拘わらず、米国に比べ相変わら
ず約2倍と高いわが国電力のコスト理由が、分かりません。燃料費
も建設費も、先進国の世界ではほぼ共通だからです。

電力会社は「停電の少なさと品質の高さ(周波数と電圧の安定)」
を挙げています。

産業界は、送電線と発電を別会社に分離し、米国のように電気代を
完全自由化することを求めています。電力費は、産業の原価であり
、商品の価格競争力に関係するからです。(注)分離方式では却っ
て電力の総コストが上がると電力会社は反対しています。

16%(8000億円)もの値上げを、原発災害の賠償のために、東電管
内の4600万人(1500万世帯)が許すかどうか・・・

電力会社の経営から言っても、新設の際の地域補助金、建設の費用
、そして廃炉までの全費用が高く、熱効率(電気になるのは熱量の
30%:70%は海への廃熱)すらも、火力発電の50%に比べて低く、
出力調整も困難な原子力発電を、政府と電力会社がなぜ推進してき
たのか、理由が不明です。(先月稿)。

(注)2002年に、電気事業連合会は、2045年までの使用済み核燃料
の処理費、及び40年の標準寿命が来る52機の解体・撤去費用として
、26兆6000億円の原発の後処理費用を試算しています。

これも、国民の、後での電気代負担になるものです。
正常な廃炉でも原発は30年を要します。

これは、1機当たり平均で5100億円の追加費用に相当し、1機約3000
億円の新設費用を上回ります。こうした「原発のライフサイクル総
費用」を入れれば、原発の総発電コストは、火力をはるかに上回り
ます。(注)2倍くらいになるでしょう。

繰り返しますが、東電、関電、及び浜岡を抱える中電の経営という
観点でも、なぜ、総コストがひどく高い原発を推進して増やしたの
か、理由が分かりません。

16%の電気代値上げが、世論の反対に合って実現できないと、東電
は国有化しか方法はないでしょう。

勝俣会長と清水社長が「民営が前提です。民営を続けることが望ま
しい」と述べたのは、「賠償費支払いのために16%値上げを認めて
下さい」ということの別の表現でもあります。

■3.必要な震災復旧費、原発賠償費と、国家財政

前稿で、GDPの低下を避けるには、総額で少なくとも40兆円(2年間
)が必要になる「震災の復旧費+原発賠償費」の財源として、政府
外貨準備($1.1兆:約90兆円)を利用することを提言しました。

(注)ドル高は米国にとって重要と、米政府(ティモシー・ガイト
ナー財務長官)は、牽制しています。

理由は不明ですが、民主党政府に、これを行う動きは皆無です。年
金基金(116兆円:10.12月末)の取りくずし(6兆4000億円)を主
財源とし、子育て支援金(2.6兆円)の削減を従財源とするようで
す。後は、増税でしょう。

【年金基金を流用】
年金基金(116兆円の残)については、09年度からまず4兆円、10年
度には6~7兆円を、政府予算にすでに流用しています。

年金基金は金庫に現金があるわけではない。運用を行うGPIF(年金
積立金運用独立行政法人)が、その68.5%で日本国債を買って運用
しています。

年金基金を、補正であれなんであれ、政府予算に使うことは、GPIF
による国債や株の売りになります。(注)日本国債68.5%、国内株
11.8%、海外債券7.8%、海外株10.4%の構成比で運用。

【郵貯簡保も国債の売り手】
もっとも大きな国債の引き受け手は、約300兆円の運用資金をもつ
郵貯・簡保でした。2010年9月期で255兆円の「有価証券」を保有し
ています(連結)。ほとんどは長短の国債です。

郵貯と簡保は、国民からの預かり金(預金)が、高齢化(退職者の
増加)を原因に増えなくなり、逆に減っているため、すでに国債の
売り手に転じています。

加えて年金基金も、政府予算への転用のため、国債の売り手になる
。国債の2大引き受け手が、今、同時に、売り手に転じているので
す。

今国債を増加買いしているのは、1年に20兆円くらい増えている企
業預金を預かる銀行です。世帯所得の減少のため個人預金は増えな
くなっています。

消費税の増税は、すぐにはできないはずです。GDPが低下する中で
どの政権も、増税できるはずがない。(注)消費税は1%で2.5兆
円です。

一体どうなるのか? 次稿(増刊)で予測計算し、定量的に示しま
す。もともと危うかった国家財政は、3.11で予期せぬ危機を被って
います。今はまだ、危機を見据える余裕すらないのが政府でしょう

【後記】
震災後の日本の株価は、上げも下げも、奇妙な動きをしています。
原因は、米国FRBがQE2($6000億のFRBによる国債買い)を予定通
り2011年6月には停止するものの、利上げと引き締めはせず、短期
誘導金利を0.22%に据え置くと表明したためです。

FRBによる国債買い、及び金融緩和の長期持続は、民間・金融機関
・ファンドへの現金の供給を意味します。この現金と低い短期金利
が、ドルキャリー・トレードを促しているのがその理由です。

ドル・キャリーは、低い短期金利のドルを借り、そのマネーで高い
金利の海外債券や株、または資源やゴールドの先物に投機すること
です。

資源と穀物(国際コモデティ)は、実需の需給で上がるのではない
。将来需要が今より増える、あるいは生産が減るという見込みの時
、投機によって価格が高騰します。

ゴールドは、ドルの実効レートが下がる見込みのとき、ドル価値の
下落予想に逆比例して、ドルベースでの価格が上がります。(注)
上がった後では、利益確定の売りが出て下がる。そして、次の、ド
ル安の機会を予想したとき、また上がるということの繰り返しです

震災後の日本株が、海外から買い超になっている理由が、このドル
キャリー・トレードです。日経平均は1万4円と、震災前の水準(年
初来高値は1万891円:2月17日)に近づいています。

国内は薄商いなので、海外から買い超があるとすぐ上がります。
逆も言えます。英米系ファンドが売り超なら、即刻下がる。

ドル・キャリーの取引は、ドル売りと海外通貨の買いになるため、
世界の通貨に対するドルの実効レートは、指数で73(11年4月)と2
008年6月以降で最低になっています。(注)1年前は88でした。1年
で17%も下げています。

日本国債の値下がり(金利高騰)を狙っている英米系の「ショート
・セラー(国債先物の売り手)」は、最新のFT紙によれば、「Stil
l Waiting(機会待ち)」と言う。

狙う機会は「日銀による震災特例国債の引き受け」でしょう。
次稿で、これも予測します。

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