特別号:世界の株価バブルは、はじけたのか(2)
This is my site Written by admin on 2022年2月13日 – 15:00
先週の2月7日に送った、<446号:特別号:世界の株価バブルは、は
じけたのか(1)>に続く(2)です。有料版の主要部を更新しながら、
3回に分けて送っています。有料版は毎週水曜日に送信しています。

現在の世界と日本経済での「大問題」は、
・22年3月のFRBの利上げとマネー量の引き締めから、株価バブルが崩
壊するか、
・調整的な下落はあっても、崩壊はしないか、です。

米国株の時価総額は世界の60%を占めます。米国株の推移が、日本を
含む世界の株価を決めます。東証では、1日の売買3兆円のうち、70%
は米国のファンドからの売買です。日経平均の米国株と同じ動きにな
ります。

(補注)日本の個人投資家には、米国ファンドと逆に、下がった時に
買う押し目買いをする人が多い。上がったあとは、利益を確定する売
りを行い、下がったとき買って仕込む投資方法(=押し目買いやナン
ピン買い)です。個人投資家は約700万人(米国の1/7)。80%は、こ
の売買の傾向でしょう。なお日本の機関投資家(銀行と生保)は、一
貫して、売り越しです。

事業法人は米国を模倣した「自社株買い」をしています。2021年の4
月から12月は6兆円でした。そのうち、ソフトバンクの自社株買いが、
2兆円。ソフトバンクの株は、保有する中国株(アリババ、ビジョン
ファンド)の不振から1年で半分に下がっています(1万600円→5480
円)。SBグループは、赤字に転落しています(21年7-9期)。
(ニッセイ基礎研究所:自社株買い)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70024?pno=2&site=nli

【コロナ後金融の、超金融緩和】
コロナ危機が始まった2020年3月からの23か月、世界は、
・危機対策として財政出動を行い(米国3兆ドル:日本50兆円)、
・財政の財源である国債を中央銀行が買うという方法により、歴史上
最大規模のマネーを増発してきました。通貨発行権をもつ中央銀行に
よる国債の現金化であり、「マネタイゼーション」と言われるもので
す。

中央銀行が買わないで、国債を増発すると金融市場の金利が上がり、
上がった金利は、世界のGDPの370%に増えた借入金(政府+企業+世
帯)の金利を上げるので、わずか2%でも、景気(=実質GDPの増加
率)にはひどく影響を及ぼします(通貨の変動相場制での「マンデ
ル・フレミングモデル」=政府財政の拡大は、実質GDPを上げるもの
ではないという論。ノーベル賞を受賞)

そこで、中央銀行が増発国債を買って金利が上がらないように(むし
ろ下がるように)市場を誘導してきたのです(MMT:現代貨幣論の実
行)。

◎こうした方法でのゼロ金利マネーの増発は、インフレ要因になって
いきます。日本で、8年間で500兆円の円を増発した異次元緩和にもか
からず物価が上がらなかったのは、GDPの将来成長への期待が低く
(潜在成長力が低い)、企業の借り入れによる投資にならなかったか
らです。
米国経済では、GDPの潜在成長力以上にドルを増発したので、投資と
住宅需要の増加のための借り入れ需要は高く、インフレになりました。

【中央銀行のマネー増刷】
通貨増発の目的は、コロナ危機で減った消費需要と投資を、政府の財
政出動で埋めるものです。しかし、国債の発行において、世界共通に
中央銀行が買い取って。マネー(信用通貨)を増発するというMMT
(現代貨幣論)の手段をとったので、過去二度の石油危機(1973年と
1980年)に準じる、40年ぶりの世界インフレが招来されました。50歳
以下世代は、インフレの経験がないはずです。40年ぶりの変化が起こ
っているのが現在です。

【石油危機以上の、国際コモディティの上昇】
経済の基礎である資源・エネルギーと穀物は、国際的な貿易財です。
まとめて、「国際コモディティ」といって先物とETFの指数が売買さ
れています。

日本は80~85兆円/年輸入します。穀物、食品、食肉の60%、金属資
源とエネルギーの100%を輸入しています。日本は、資源を輸入して
加工し、製品を作って輸出するという加工貿易の経済を作ってきたか
らです。

米国の輸入は出来上がった商品・機械が中心です。日本の輸入は、商
品の原材料になる国際コモディティが中心です。日本で製造される商
品は、食品・衣料・住関連・電子製品も含んで、ほぼ全部が国際コモ
ディティを使っています。

コンビニ食品、ハンバーガーショップ、牛丼チェーン、ラーメン店、
蕎麦屋、納豆・豆腐・乳製品の原材料となっている小麦や大豆の穀物、
牛・豚・鶏肉、バターや油脂、乳製品、木材は、ほとんどが輸入です。
国産は、卵、米、果物、野菜くらいしかない。原材料の輸入は、「円
安+輸入価格上昇」の影響をモロに受けるものです。

製品では、衣料の97%は中国とアジアからの輸入です。家具類の原材
料と製品も輸入です。国産と表示された商品であっても、原材料は輸
入。原産国の表示があれば、確認してください。

最近の違反の事例では、熊本産とされていたアサリが、97%は中国か
らの輸入を偽装したものでした。コンビニの食材も輸入ですが、弁当
への詰め合わせは日本の加工場で行っているので国産と表示されます
(農水省の、おかしな表示基準です)。家電では高級品も多くが中国
産です。現代の日本では、原材料または、部品・製品の輸入がからん
でいない、純国産の商品はマレでしょう。

コロナ危機のあと、ダウ・ジョーンズが集計する国際コモディディの
価格指数(ドルベース)は、2020年5月の448から22年2月現在では
1048へと、2.34倍に上がっています。10%の「ドル/円安」も加わっ
て、このドル価格指数は、換算では1153に上がっています。日本にと
っては、2.57倍です。(ダウ・コモディティ価格指数)
https://www.spglobal.com/spdji/jp/indices/commodities/dow-jones-commodity-index/#overview

【原油価格】
資源エネルギーの中心であり、他の価格も決める原油価格は、天然ガ
スの生産地ウクライナの危機もあって、2019年の1バーレル60ドルか
ら93.3ドルへと55.5%上がっています。2014年からの、米国のシェー
ルガス(開発原価は1バーレルあたり45ドル)による、原油価格の下
落(50ドル付近:2015~2020の5年間)を帳消しにして、上がったの
です

資源・エネルギーは商品物価の基礎です。エネルギー(特に電力)を
使って、原材料の資源を加工して、生産されるからです。

【日本の輸入物価と企業物価】
日本では、
・原材料とエネルギーの価格を示す輸入物価が41.9%上がり(21年
12月)、
・原材料の値上がりから、企業物価(企業間の卸売物価)は8.5%上
げています(21年12月)。

しかし、消費者物価は0.8%しか上がっていません(21年12月)。
こきには、日本的な要因が、2つあります。
(消費者物価:総務省)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

【日本の消費者物価(CPI)】
(1)2021年に半額以下に下がった携帯電話料金の影響が22年3月まで
は1.5%ポイントの消費者物価の引き下原因になっていること。この
携帯値下げを除くと、消費者物価は、すでに2.3%上がっています。

(2)輸入物価(+41.9%)の上昇が、企業物価(+8.5%)を上げ、店
舗の仕入価格を上げて、店頭物価(=消費者物価)に反映するまでは、
約6か月のタイムラグがあること。

米国では賃金が5%上がっています。しかし賃金が大企業(雇用の20
%)と中小企業(同80%)の平均では0.2%しか上がっていない日本
では、物価の上昇は、世帯にとって「2022年の物価の上昇」は辛(つ
ら)いことになります。賃金が約25年上がっていない国は、OECD35か
国では、世界で一カ国日本だけです(世帯所得の、驚くべき下方シフ
トは、次号で示します)。

【米国のCPIと、日本のCPI】
米国のCPI(消費者物価)は7.5%上がっています(22年1月)。原材
料より海外で作った商品の輸入が多いため、早期で上がったのです。
輸入物価の上昇が店頭物価に直結するのが米国です。日本のようなタ
イムラグない。
(米国CPI:2018年から2022年1月)
https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9052

2022年に日本の物価が何%上がるかは、現在は41.9%も上がっている
輸入物価が2022年にどう動くかという要因で左右されるので、判断は
多要素で、難しいところがあります。

◎輸入物価が下落しないと仮定すれば、日本の物価上昇も、「0.8%+
1.5%(携帯電話分)+輸入物価上昇の反映(1.5%)=3.8%」になる
可能性が高いのです(現在の米国の約半分)。(注)日銀は、2022年
の物価を0.8%から1.2%の上昇としか見ていませんが、これは誤りで
す。

【インフレ予想と、長期期待金利の上昇】
物価と金融市場の関係は、「インフレ予想=期待金利(長期の金利)
の上昇」になります。実際の金利は、必ず、中央銀行の引き下げ介入
があるので、「インフレ予想-(1.5%~2%)=長期金利」になりま
す。

◎米国では、2022年のCPIを5%とみたとき長期金利3.5%(2%の上
昇)、
日本では、2022年のCPIを3.5%とみたとき長期金利1.5%(2%の上
昇)でしょう。

長期金利の上昇は、
(1)コロナ危機のあと、過剰なマネーで高騰してきた株価を下げ、
(2)低金利のローンによって上がってきた住宅価格も、下げます。

1.6倍に上がった株価(米国S&P500)だけでなく、米国の住宅価格は
コロナ後の2年間で20%も上がっています。FRBのコロナ後利下げによ
り、住宅ローン金利が、3.11%と低くなっていたからです(期間30年
の固定金利)。

ローン金利は、現在3.22%に上がっています(22年1月)。2022年の
3月、4月には、更に0.5ポイントは上がるでしょう。2022年の秋には、
1%ポイントは上がるかも知れない。米国の住宅価格は下がるでしょ
う。

「インフレ予想→期待金利の上昇」から、
(1)2年間のコロナ後の資産バブル(株価と住宅価格のバブル)の崩
壊(株価は30%の下落、住宅価格では15%下落)にまで行くかどうか、
(2)金利の上昇調整(株価15%下落、住宅価格10%下落)でとどま
るか。 ここが、喫緊の検討事項でしょう。

ここから、2月2日に送った、有料版の本文(1)にはいます。
下の目次では、■1のシラーP/Eから、■4の米国のインフレ率です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<Vol.447:特別号:世界の株価バブルは、はじけたのか(2)>
      2022年2月13日送信:無料版

【目次】
■1.シラーP/Eの暴落は140年間で4回だった:
  インフレになった2022年が、5回目になるのか?
■2.米国株暴落論の概要(米国のメディアから総合的に)
■3.1月下落は織り込みの株価調整だという論の概要(投資家より)
■4.カギは、米国の2022年1月から3月のインフレ率
・ここまで
~~~~~~

以降は、次号
■5.輸入物価を示す、実効レートのドル
■6.円の実効レートは47%下がったがインフレにならなかった
: 理由は、商品を店頭で買う、世帯所得の低下である

■7.日本の世帯所得が下方シフトするなかでの株価は、金融的な上昇
■8.生活意識の調査(=世帯の心理):日銀
■9.過剰流動性以外に、米国株の高騰をもたらした要素
■10.不確定な要素である、2022年3月以降の米国CPI
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.シラーP/Eの暴落は140年間で4回だった:インフレになった2022
年が、5回目になるのか?

10年という長期で見る「シラーP/Eレシオ」では、過去140年、VIXが
およそ25倍を超えたあと、4回、暴落しています。2022年1月までの、
短くまとめた概要を、見ていきます。(シラーP/Eレシオ:1880~
2022年1月)。概略では、上がるのは金融緩和のとき、下がるのは金
融引き締めのときでした。(注)シラーP/E=現在の株価÷過去10年
間の企業の平均純益
https://www.multpl.com/shiller-pe

(1)第一次世界大戦後の暴落と、金ピカの1920年代の暴騰
   1900年から1920年:シラーP/E 23倍→5.0倍(-78%)

・世界的イベントは第一次世界大戦(1914~1918年11月)
・1920年から29年は、戦後の財政拡大と金融緩和で、
          シラーP/Eは、5倍からPER30倍へ高騰

(2)1929年の大暴落、4年後の33年から上昇、戦争中は下落
  1929年から1933年:シラーP/E 30倍→5.5倍(-82%)
 
・ウォール街から始まった世界大恐慌の前、史上最大幅の暴落
 これが世界史上最大の暴落です。世界経済は恐慌でした。

・米国の1933年からの公共事業と、第二次世界大戦(1939-
1945)の財政(戦費)拡大から、シラーP/Eは、22倍まで回復したが
(1939)、戦争中は、再び9倍に下落した(1940年)。

(3)1950年からの第二次世界大戦後の上昇
  1950年から1968年は:シラーP/E 10倍→20倍(2倍)
 
・戦後成長、朝鮮戦争、ベトナム戦争で10倍から20倍に上昇
 
(4)1970年代の暴落(金ドル交換停止からの石油危機が原因)
  1970年から1981年:シラーP/E 25倍→7倍(-72%)
 
・金ドル交換停止(1971年)から米ドルは信用通貨になった。
・信用通貨(法貨:フィアットマネー)になったドルの価値下落が原
因だった第一次石油危機(1973年~)と第二次石油危機(1979-80
年)の物価上昇から、シラーP/Eは7倍に暴落。

1971年以降の、ドルの増刷によるドル価値下落が、原油価格を高騰さ
せた原因ですが、米国は中東戦争が原因とし、基軸通貨の米ドルの下
落とはしていません。産油国が、金とのリンクが切れてフィアットマ
ネーになって、価値が下落したドルでの販売価格を上げたのです。

(5)1981年からの金融化、IT化、インターネット期待の高騰
  1981年から2000年:シラーP/E 7倍→45倍(6.4倍)
 ・石油危機後の米国経済の金融化(新しい銀行間通貨になった
  デリバティブ(=証券化商品)の開発:1981年~1995年)
 ・パソコンのIT産業の勃興と、インターネットへの期待から、
  IT株が株価高騰(1995年~2000年)

(6)2000年:IT・インターネット株バブルの崩壊
   2000年から2003年:シラーPE 45倍→25倍(-44%)
  ・PER 80倍まで上がったIT株バブルの、期待の崩壊
  ・2001年、9.11の同時多発テロから、米国株下落

(7)2008年の、リーマン危機(銀行危機)からの下落
  2008年:シラーP/E 25倍→15倍(-40%)

・2001年の9.11(同時多発テロ)のあとの米国の低金利が、住宅価格
を2倍に上げていたが、2006年の利上げから、住宅価格バブルが崩壊
し、住宅ローン担保証券(MBS)が40%下落しました。

・2008年9月、リーマン危機(MBS+CDS=デリバティブの崩壊)
から25倍と高かったシラーP/Eは、15倍に下落しました。
  
(8)リーマン危機のあとの、
        金融緩和とコロナ危機後の金融緩和で高騰
  2008年から2021年:シラーP/E 15倍→40倍(2.7倍)

・リーマン危機のあとの、FRBの量的緩和(4兆ドル)
・コロナ危機(20年3月)のあとの、量的緩和<4兆ドル)
 ゼロ金利とドル増刷(合計8兆ドル)から、株価が高騰。
・最近13年で、シラーP/Eは15倍から40倍に上がって、バブル水準に
なっていました。
 
(9)コロナ後のインフレ率の上昇は、金利の上昇になるので、株価
は下落。2020年1月シラーP/E 40倍→36倍(-10%)

・米国の、コロナ後インフレ(21年12月7%)による、 FRBの量的緩
和の停止予定(22年3月)と2022年3月以降の、利上げ予定(7回から
8回;2022年には1.5%~2.0%の利上げ予定)

・コロナ危機のあとの、ゼロ金利と量的緩和の実行(4兆ドル:450兆
円)を原因に、コロナ後の2年で、2.5倍に上がった米国株の下落
・米国株と同時に世界の株価も、下落しています。

◎テーマは、この(9)の、2022年の1月の下落が、コロナ危機対策と
しての過剰流動性で上がってきた米国、日本、欧州を含む世界の株価
と資産のバブルの崩壊になるかどうか、の検討を行うことです。株価
のバブル崩壊は、30%以上の下落です。

今日の段階では、明確な結論は出ないかもしれない。
本稿では株価に係る多面的なのデータを読んで、検討します。

◎世界金融のハブである米国の「22年3月に向かうインフレ率と金利
の上昇」が決めるものが、2022年の世界の株価です。

株式市場では、以降で示す2つの見解に分かれています。
自分は「どちらの派」に近いかを意識して読んでください。

選挙の投票のように(仮想的ではあっても)、自分が次期政権にコミ
ットしないと投票の意味がわからないように、コミットしないと株式
市場の理解も進まないでしょう。

株価は、投資家の売買で決まります。投資家が、どんな認識と考えか
を想定しないと、株価の予想はできません。科学的な数式ではなく、
「投資家によるデータの認識→判断→売買行動」が株価を作っていま
す。

■2.米国株暴落論(米国のメディアから総合的に収集)

10年の平均純益による「シラーP/Eレシオ」の 40倍はバリュエーショ
ンの行き過ぎである。バリュエーションは、市場の集合知による株価
の評価です。

集合知は、個人ではなく、投資家の集合が作るものです。世論調査で
の政権の支持率のようなものです。
 ↓
IT株とネット株(EC:仮想店舗)が多いナスダックが先導して上がっ
た点で、インターネットへの期待から2000年4月にピークをつけ、そ
の後暴落したIT株バブル(シラーP/Eレシオ45倍→23倍)に、現在の
株価は似ている。

2021年4月からの、世界のコロナ後インフレは、石油危機のように、
資源・エネギーの高騰(2倍)から起こった。

(1)コロナ危機対策としての、米国政府の財政支出増加3兆ドル
(339兆円)と、
(2)FRBが、その国債を買う量的緩和(4兆ドル:452兆円)、
(3)それによって発生した、「ゼロ金利の過剰流動性(マネー)」
と、100兆円規模の「自社株買い」が重なって上がった、典型的なバ
ブル相場である。
 ↓
・FRBの2022年3月からの利上げ(1回目が0.5%ポイントの可能性があ
る)と、
・量的緩和の縮小(FRBが買ってきた国債とMBS、住宅ローンが原資産
のデリバティブ証券の売り)が始まると、株価は大きく下げる。

2008年のリーマン危機のあと、米国も、およそ、ゼロ金利を繰り返し
た。FRBは13年間の合計で、約8兆ドル(900兆円)の量的緩和をした。
短期金利0%のドルは過剰流動性になり、そのゼロ金利マネーが株と
不動産に向かい、価格が高騰した。
 ↓
22年3月からの、インフレによる金利の上昇と、マネー量の緊縮が重
なって、株価の下落は大きくなるだろう。

・ゼロ金利のとき大量発行された国債と社債の価格も、FRBの利上げ
で下がり、
・特に米国株価を押し上げてきた自社株買いは減って、全面的な金融
崩壊になっていく。

◎以上から、22年3月ころを起点に2022年秋までには、世界の株価・
資産バブルは、同時に崩壊すると見る。

こうした見方をしているのが、投資家のおよそ30%でしょうが、22年
1月からは、増加の傾向を見せています

■3.22年.1月、2月の株価下落は、金利上昇を織りこんだ株価調整だ
という論;これが、70%の投資家の説でしょう(22年2月時点)。

米国の株価は、年初から13%くらい下がった(21年1月末)。しかし
株価の、長期の指数曲線のなかで、002022年の1年間を見たトレンド
では、今も「上昇のモメンタム」の中にあると言える。

コロナ後の企業業績が好調で、人手不足から賃金は5%から6%上がり、
GDPの中の消費は6%増えている。

コロナ後の米国経済は、消費と投資がともに好調である。企業純益も
上がっていて、株価にはプラス要素になっている。

企業の不動産と住宅価格(借り入れの担保になる)も上がり、世帯と
企業の負債能力も高まった。
(全米20都市:ケース・シラー住宅価格指数:2000年の2.8倍)
https://jp.tradingeconomics.com/united-states/case-shiller-home-price-index

2021年12月まで上げてきたナスダックが21年1月に13%、NYダウが7%
下がったのは、
米国のインフレ(21年12月 +7%)から、FRBが22年3月から、(1)金
融引き締めと、
(2)利上げを行うことを予想し、それを「織り込んだ」短期的な調
整である。

◎2022年3月までは、急反発して上げる可能性は小さく、ボックス圏
で波動するかもしれないが、更に20%の暴落、はない。

◎22年3月になると「すでにFRBの引き締めと利上げを織り込んでいる
株価」は、米国経済(=世帯消費と企業の投資)の好調を背景に、再
度、上昇に向かうかもしれない。

インフレは、資源・エネルギー株、金融株を上げる。
オミクロンとその先の変異株(ステルス・オミクロン)でのパンデミ
ックの長期化は、医療・医薬品株を上げることになるだろう。

【(補足情報)織り込みという現象】
株価の織り込みは、近い将来の金利や、量的緩和、企業業績を予想し、
予想が実現したとして、現在の株価の評価指標にするものです。

◎世界の金融が緩和された2000年代の株価では、織り込みが多い。行
き過ぎた織り込みのときは、FRBの利上げや国債売りが実行されたあ
と、予想より利上げが低かったとして、逆に上がることがあります。

米国投資家の過半は、ここを見ているようです。

◎いずにせよ、2021年1月の暴落が、株価バブル崩壊になっていき、
30%以上下がることはない。2022年も、大きく見れば、米国株は上昇
トレンドである。

こうした見方が、米国の70%の投資家でしょう。

■4.カギは、米国の2022年1月から3月のインフレ率

両方を解くカギは、米国の消費者物価指数(CPI)の、22年1月、2月、
3月の動きです。

◎米国の物価が、現在の予想(2022年の通年では3%)以上に上がれ
ば、FRBが利上げと引き締めを早期化し、利上げの幅も大きくなるこ
とから、「暴落の可能性」も出てくるでしょう。NYダウやS&P500の
30%下落からは、暴落の領域です。

現在の市場(投資家の集合知)の予想のように、2022年の通年の予想
CPIが3%の上昇に下がれば(現在は前年比で+7.5%)、利上げと引き
締めは穏やかなものになり、上記■2.の、「株価調整論」になるでし
ょう。

【今回は政治的な要因がある=2022年11月の中間選挙が迫る】
別の要素として、今回の利上げと引き締めには、政治が絡んでいます。

◎2022年11月は、米国上院(任期2年)の1/3、下院(任期2年)の全
員が改選される「中間選挙(2年サイクル)」だからです。

【政治的な背景が加わっている】
バイデン大統領とハリス副大統領の不人気(バイデン支持は40%付近、
ハリスは35%:ロイター)と、退任後、逆に人気が高くなった共和党
のトランプと、州の選挙での、共和党の勝利の多さから、22年11月の
中間選挙では、民主党の敗北が予想されています。
(注)2022年11月の、トランプ復活を言う人すら出てきました。

上下両院で民主党が多数派を失うと、バイデン大統領は、政策が実行
できなくなります。上院では現在の50:50を維持しても、下院で共和
党に負けると、ねじれ国会です。(注)上院でも、民主党が過半数を
失う可能性は高い。下院では、今のインフレのままなら、民主党が過
半数を失うことは確実視されています。

その上で、2024年の大統領選挙(トランプが出馬予定を表明)を迎え
ます。2022年の高いインフレ率は、現政権の民主党に、強く不利な要
素です。

敗北を避けたい民主党では、議会がFRBのパウエル議長に対し、相当
に高い利上げと金融引き締めを要求し、インフレ・ファイターの姿勢
を示すでしょう(FRB議長を国会に呼ぶ公聴会での質疑からもこれが
伺えます。金利を上げて緊縮し、インフレを止めろという強い質疑が
行われています(2022年1月)。

◎民主党が多数派の米国議会は、インフレ防止のため、FRBの利上げ
と緊縮を、パウエルの2022年利上げ予定(0.25%を3回から4回)より
大きくする要素になっています。議会の要求から、FRBの政策金利
(FF金利)の上げが高くなると、株価はその分下げます。

【米国のインフレ事情】
◎米国民の全体が、株価下落より嫌うのが、物価の上昇です。1家で
2台や3台の車が必要な車社会の米国では、特にガソリン価格が生活に
直結しています。

価格はコロナ初年度の2020年の、1リットル0.5ドルから約2倍の0.9ド
ル(105円)に上っています。(注)日本は、税金の高さのためレギ
ュラーが約167円、高性能車のハイオクは178円です。

2000年以降は、米国も約20年のディスインフレだったので、忘れられ
ていますが(日本はデフレ基調)、米国の長期での物価上昇は、最近
40年平均で2.8%でした。それが、21年12月は7.0%、22年1月は7.5%
も上がったのです。

2013年までは、世界の通貨に対する、ドルの実効レートが低下を続け、
輸入消費財が多い米国の物価は恒常的に上がっていたのです。

日本は、1995年からの、大きな円安にもかかわらず、物価が上がらな
いディスインフレでした(物価上昇のない経済の26年)。

日米の物価の違いが出たのは、日本の所得が全所得階級で下方シフト
を続け、消費力が高まらなかったからです。米国では、賃金が上がっ
ていました。

日本では中小企業(雇用の80%)を含むと、非正規雇用の増加もあり、
平均賃金が、米国と逆に下がったのです。

<447号:特別号:世界の株価バブルは、はじけたのか(2)>は、こ
こまでです。次週は(3)を送ります。

【後記】
前回の無料版を送ったあと、相当数の有料版購読がありました。次回
の、新しい有料版は、2月16日です。最新の情報を盛り込んで解釈し、
分析して書いています。2022年の金融と経済の変化は速く、しかも激
しい。1か月前のことが、遠い昔に感じられます。

心理的な時間では、菅内内閣での「東京オリンピックは、いつのこと
でしたっけ・・・」という感じです。時代の変化が、加速しているか
らでしょう。コロナの第6波のためかもしれない。

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く読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、全部
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