米国株、日本株、通貨が連動して動く理由(2)
This is my site Written by admin on 2018年10月31日 – 22:19
有料版の最初10枚くらいを送ります。テーマは、下がった米国株に
連動して、なぜ瞬間に日本株も下がり、日本株の下落にともなって、
なぜ円安に動く傾向があるのかということです。

メディアは、理由を解いていません。個人投資家も、説明ができな
いでしょう。したがって売買の材料にすることがなく、その分、損
をしています。

このシリーズは、2008年9月からのリーマン危機のあとマネーが増
やされた状況の中で、この現象が起こっている理由の、株と通貨の
売買からの究明です。

株も通貨も、買いが超過すれば上がり、売りが超過すれば下がるか
らです。なぜ、売りまたは買いが超過する時期があるのかというの
は、株価と相場がある金融商品全体に対する、本質的な問いです。

相場とは取引所の意味であり、投資家からオファーがあった売買の
金額を、取引の板(board)で一致させる市場です。売買の一致点
が、今の価格です。世界中で売買があるので、金融商品の価格は、
数万分の1秒単位で動いています。金融商品は、売りと買いの量か
ら見なければならない。

              *

本稿では、
・日本の株価が上がるとき、同時に円安(ドル高)になり、
・下がるときは円高(ドル安)になるのはなぜか、ということにつ
いて、定量的に、もっとも大きな理由を書いたものです。

経済紙の解釈が間違ったものなので、必要な知識として書く必要が
あると思いました。

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 <965号:米国の株価、日本の株価、通貨が連動する理由>
      2018年10月17・18日:有料版

【前編:目次】
1.米国発の株価下落(2018年10月10日)の原因をたどる
2.上げも下げも、米国株と日本株が連動する原因

【後編:目次】
1.株価が上下する原因
2.日本株が上がるとき、同時に、円安になることが多い理由の詳細
説明
3.英米系ヘッジファンドによる、日本株先物の売買
4.売買のオファーを示す板(board)
5. 0.5%や1%の利益を、レバレッジで、数十倍に拡大する
6.ボラティリティとの関係
7.ヘッジファンドは、ポートフォリオ(分散投資)として、ヘッジ
取引をする
8.HFTの小刻みな超高速売買
9.東証でもHFTの構成比は高くなった
10.ヘッジファンドが、利益非課税の目的で本拠を置くタックスヘ
イブン
11.以上の結果、日本上昇と同時の瞬間円安になる

【後記:講演資料送付のご連絡】

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■1.株価が上下する原因

まず、株価が上がる原因を書きます。逆から言えば下がる原因でも
あります。

【上がるとき】
株価が上がるのは、今日の何かの経済的な情報(金利、企業利益、
GDPなどのファンダメンタルズ、失業率、物価上昇)から、株価が
上がると予想する人が増えて多数派なり、買ったときです。株価は、
売買の結果を示します。

証券会社、経済紙、証券アナリストなどの予想の変化だけでは、上
がらない。買われる金額が売られる金額を超えなければならない。
株価は、売買のオファー(板:boardの仕組みは後述)の金額差に
よって上下するからです。

【事実の情報は、遅行指標である】
今日の経済情報は、過去の経済と、企業活動の結果です。情報は、
遅行指標であり、遅れます。たとえばGDPの確定情報は、中国以外
では、約2か月遅れます。企業利益も金利も同じです。

(注)中国だけが異常に早い。政府の裁量で、主な数字を作ってい
るからでしょう。共産主義の計画経済のとき、政府の計画数値が経
済だったからです。

【キャピタルゲインを目的とした投機】
M&A(合併・併合)以外で株を買う目的は、会社の所有や経営への
関与ではない。上がったあと高く売って、利益を得ることです。つ
まり、キャピタルゲインを求める投機的なものです。

●利益を上げるには、
・売る人が多く、株価が安いときに買って、
・逆に買う人が多くなった結果、高い価格なったとき売らねばなら
ない。システムトレードからも、実証的にこれが分かりました。

【ファンダメンタルズの予想と関係】
金融緩和の21世紀の株式市場で、株価が一般に安い時期は、
(1)金利が下がっていないとき、
(2)銀行と企業利益の予想が、高くないとき(あるいは減ると
き)、
(3)GDPの増加率予想が低いとき、失業率が高いとき、
(4)金融の緊縮(利上げ)に向かうと予想されるときです。

ただし、この時に買うのではない。

【買いの時期】
(1)金利では、ほぼ3か月から6か月先には下がると予想したとき
(まだ実現していない金利)、あるいは、緊縮に向かうと予想した
とき、
(2)6か月から1年先の企業利益が、増えると予想できたとき、
(3)商品の付加価値の合計であるGDPの、来年度の増加率が、今よ
り高まると予想したときです。

更に言えば、この予想も、大多数の人の予想になっていれば、買う
時期としては遅い。多数派の予想によって、日経平均やTOPIX,米国
ダウ、S&P500やナスダックのような株価の平均指数は、すでに上
がっているからです。(注)本稿の分析の対象は、個々の企業の経
営予想でも動く単独銘柄ではなく、日経平均やTOPIX、ダウ、S&
P500、ナスダックなどの平均指数です。

【経済、金融記者の情報】
1990年代にはヘッジファンドの間では、「日経新聞が、株価が上が
る予想や記事を書いたときは売り、下がる予想やほのめかしになっ
たときは買い」という格言がありました。多数派の予想と逆のとこ
ろに、利益があるからです。

日本では、投資家の多くが午前に日経新聞を読んで、売買を決めて
いました。今でも、経営者には多い。日経新聞は、ヘッジファンド
を投機筋と書きます。株への投資家は、投機筋ではないと言うため
でしょう。

これは21世紀の、レバレッジがかかって、HFT(1秒に数万回という
超高頻度)の売買が60%以上になった株式市場への、認識の遅れで
す。

【政府と日銀】
一方で、「政府や日銀には抵抗するな」という格言もあります。動
かすマネーが大きいからです。ただし国民は、「預金から投資へ」
という政府政策の方針にしたがってはいません。個人投資家の売買
は減り続けているのです。

【まとめ】
端的に言うと、買いの時期は、
・金利が下がるという予想、
・企業利益が上がるという予想、
・GDPが増えるという予想、
・中央銀行が国債を買ってマネーを増刷するという予想が、確かに
思えるのに、まだ少数派であるときです。(売るときは逆です)。

こうした株の売買方法を「将来の織り込み」と言っています。

期待の経済学に属する、織り込みが増えた理由は、レバレッジされ
た株の、HFT(超高頻度)での売買が多くなり(=先物やオプショ
ンというデリバティブの増加)、一回売買の利益率は小さくても、
証拠金に対する利益率または損失率はレバレッジ倍率に拡大するか
らです。

株式の売買の原因や方法は、日々新しくなっています。新しいルー
ルになることが、過去の数字の連関で予想するAIで予想ができない
理由です。AIの運用成績は、人間よりはるかに低い。

【FRBの利上げの効果ではない】
FRBの議長が、18年9月末に「(多数派の事前予想通り)、短期金利
を0.25%上げた」という事実(上げたときはもう過去のもの)によ
って、株価が下がるのではない。

【口先介入の効果(これを日銀は市場との対話と言っています)】
どこにもなく、まだ概念でしかない未来の「2019年も、3回の利上
げをする予定」と、FRBのパウエル議長が言ったから、前稿で示し
たレポ金融の減少メカニズムが一層大きくなることが予想されて、
米国株が売られ、下がったのです。

原因は、来年の金利の上げを、FRBが自己予想し、市場に向かって
発言(株価への口先介入)したからです。なぜこんな自己予想をし
て、投資家に向かい、言ったのか。

【イールドカーブ・コントロールという未来の金利調整】
法律家のパウエル議長が知っているかどうか、分かりませんが、
2015年から、米国FRBは、マネー量の操作(増刷)から、イールド
カーブ・コントロールに手段を変えているからです。

【利上げの理由】
2018年の、株価が高い米国にとってのイールドカーブ・コントロー
ルは、簡単に言えば、「将来の金融危機を生むことが確定している
株価バブルを生まないように、金利を高めに調節すること」です。

市場の金利の調節には、中央銀行の信用創造により、国債を売買す
るマネー額を大きくできることを通じて、「金利=国債価格」を誘
導できるFRBが、来年の金利予定を言えばいい。

これがFRBの信用を使った、口先介入です。信用とは、「言ったこ
とは実行する」と市場から思われることです。正直だった、前々議
長のバーナンキは、「中央銀行の金融政策としては、(将来のこと
を言う)口先介入が、もっとも大きな効果があった」と述懐してい
ます。

(注)期待の経済学が、こうした期待の効果を言う中で、日銀の黒
田総裁の口先介入は、あまり効かなくなっています。将来の予想を
言わず、2013年4月から5年間も続けて公言していた2%のインフレ
目標達成の失敗と、出口政策に言及することもなく、官僚の無謬神
話を守るためか、黙って、2018年度には、80兆円だった国債の買い
を40兆円に半減しているからです。

黒田総裁は、株の投資家から、言葉(将来を言うこと)の信用を失
っています。未来は言葉でしか言えません。このため、日銀は「市
場との対話を行うべきだ(内容は口先介入)」と、表明しているの
です。

【金利と国債価格への口先介入】
しかしFRBは、まだ日銀のようには、大きくは失敗していない。言
葉が市場に信用されるため、パウエル議長が、2019年には3回の利
上げをする予定という発表をしたのです。

この言葉で、投資家の3か月後から6か月後の金利予想で、更に上が
ると予想する人が増えました(金利が上がると、価格が下がる米国
債は売られて下落)。

・来年の利上げで、多くの投資家から株が売られるだろう。
・売られて下がれば、今の利益がなくなる。
・多くの人がまだ売らず高いうちに売る。

これが、10月10日にヘッジファンドに起こったことでした。ヘッジ
ファンドが、大量にHFT(プログラム化された超高頻度売買)で瞬
間売りを続けたので、5%以上、下がったのです。その後も、ダウ
は8%下げた水準の上で、高い変動率を示しています(価格のボラ
ティティの最高は35%)。

日経平均は、10月初めの2万4245円から2万1149円へと、米国株より
大きく、3096円(13%)下落しています(10月26日)

【知識は、未来への判断の武器】
以上の、変化している株式市場のメカニズムへの知識をもとに、日
本の株価上昇と円安が連動する原因を書きます。

知識は、過去の現象を抽象化して原理化し、未来を示すものです。
ビジネス知識源とは、この意味を込めて、名付けています。

人間は、動物とは違い、現象に直接に反応するゲノムの本能以外に、
動く株価という現象の学習から抽象化して、言葉と数字の概念にな
った原理つまり知識を使い、その知識に照らして、判断ができるか
らです。

ただしこの知識(理性的なKnowledgeの集合)は、更新を続けなけ
ればならない。株価を決めている現象でも、「原因→結果」の関
係」に変化が起こっているからです。

認識には変化がないのですが、認識からの判断に変化が起こります。
株価は、あるいは金融商品の価格は、今日の売買の均衡点ですが、
なぜ動くのか。

【集合的な社会心理である投資家心理】
動かすものは、形がなく投資家心理とアイマイな概念で言われるも
のです。多数派の投資家心理は、人間の心の動きですから、変化し
ます。このため、今日の売買の一致により均衡した株価が動く。

21世紀は、世界中でレバレッジ(信用倍率)のかかる投資が増えて
いるので、情報によるわずかな投資家心理の変化が増幅されます。
レバレッジのかかった売買が原因で、先物やオプションというデリ
バティブを含む株価や債券価格を大きく動かす過剰流動性の金融相
場になっているのです。

証券会社に証拠金を差し入れて売買するデリバティブ(先物、オプ
ション、差金取引)への投資では、自動的に、証拠金の10倍から
33倍のレバレッジをかけることができます。ロシア国債に投資して、
予想を間違えて破産したLTCMのようなヘッジファンドでは100倍の
レバレッジも見かけるのです。

■2.日本株が上がるとき、同時に、円安になることが多い理由の詳
細説明

「日本株が上がるとき、同時に円安になることが多い理由」は何か
という質問が多数来ます。

これは、リーマン危機以降の、日本の株価と円の変動の、底流の動
きを作っている問題です。

本格的に理解するには、株や通貨の先物取引、そしてヘッジファン
ドのヘッジの方法を知る必要があるでしょう。予備知識が、数項目
あります。

▼(1)円の先物価格と先物売り

「円先物売り」は、空売りのように、限月(清算の期限)までの円
先物価格で売り、限月までに反対売買をして、清算する取引です。

先物の価格は、ほぼ「現在価格+期間金利」ですが、今は円の短期
金利が0%なので、現在価格とあまり変わらない。

円先物売りでは、円安になると、高かった先物価格で売って、安い
価格で買い戻して清算するので、「先物売りの価格-買い戻しの価
格」の利益が出ます。

FX(外為証拠金取引=差金取引)の、「円売り/ドル買い」と同じ
です。ドルとの通貨ペアでの円売り(=ドル買い)は、円を売って
ドルを買ったあと円安(=ドル高)に向かったとき、差額の利益が
出ます。

▼(2)ヘッジファンドが行うヘッジ取引

ヘッジ取引は、反対の値動きをする傾向がある金融商品を組み合わ
せ、リスクを減らして投資するポートフォリオ(分散投資)です。

ヘッジファンドがドル圏から、日本株を買って上がったときは、円
安になると高くなったドルから見た円株の値上がりの利益が減るの
で、上記のように、円先物を売ってドルを買い、円安のときの為替
差損を防ぐ(ヘッジする)ことが多い。

この「日本株買いと円先物売り」が同時に行われることが、日本株
が上がるとき円安になる原因になっています。

【円安で輸出の利益が増えるから、株価が上がるのではない】
メディアや新聞で言われるように、「円安なら輸出が増え、東証で
50%を占める輸出が多い企業の利益が増えるから、日経平均が上が
る」という理由ではない。

日経平均には、ユニクロやニトリのように、円安(ドル高・元高)
が不利になる輸入企業分も、ほぼ等分にあるからです。それに、
2011年の3.11(東日本大震災)以降は、輸出が増えず輸入が増えて、
均衡することが増えています。貿易赤字の月も目立ちます。

株価上昇と、瞬間的な同時に起こる、(短期の)円安で、外為相場
の変動より、はるかにゆっくりした取引である輸出が、増えるわけ
ではない。

外為市場で生じる、短時間の円安や円高は、1か月後の輸出入とは
無関係です。消費を含む、日本経済全体にとっては、本当は、海外
から買われて高いスイスフランのように円高がいい。海外に、高く
なった輸入代金として、日本の所得が海外流出しないからです。

100%輸入の原油高が、所得の流出を招き、日本経済を不況にする
ことからも、円安のマイナスは、分かるでしょう。日本の輸入では、
必需のエネルギーや資源が多く、円安になっても減らないのです。

【輸入企業はドルの、輸出企業は円の先物予約をしている】
輸出入の会社は、普通、ドルや円の先物を買っているので、今日の
「円/ドル相場」は、その後3か月から6か月の輸出入の増減には、
無関係です。わが国は、小泉政権から政府を先頭に「円安幻想」に
かかっています。

円が安いことが日本経済にとっていいという錯覚です。通貨が安い
ことが、輸出企業、輸入企業がある国の経済全体に、いいわけがな
い。スイスフラン高のスイスは、1人当たりで世界最高クラスの所
得を続けています・・・


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