緊急号:超金融緩和から、リセッションを経て恐慌への道程(3)
This is my site Written by admin on 2022年8月28日 – 12:00
株のバブルは、中央銀行の利下げと量的緩和にから起こり、利上げと
量的縮小で崩壊します。バブルとは、GDPの期待増加率を大きく上
回る株価の上昇が5年以上にわたって続き、「天井なしで上がってい
く」という、心理的な予想が生じた結果のものです。

動物の心理では過去の経験が増幅されます。拙宅の犬は、遠くの(人
間の耳にはかすかな)雷が聞こえたとたんに、ブルブルと震え、はぁ
はぁと苦しそうに呼吸し、床をぐるぐる回っていました。新規情報か
らの、楽観とは逆の、何かの機会の恐怖が、記憶のなかで増幅されて
いたのでしょう。生涯、修正されなかった。

株価バブルのときは、住宅・不動産の価格も高騰します。

全米20都市のケース・シラー指数では、2021年まで住宅価格(中古+
新築)は、前年比2.5%から5%くらいの上昇でした。
しかしコロナ後の、FRBによる量的緩和(4.5兆ドル)からは、住
宅価格は15%上昇し、2022年には、前年比20%超/年という歴史上最
大の上げ幅になっています。

これらは、コロナ後の過大な量的緩和が押し上げたバブル価格である
ことが明白です。
https://jp.investing.com/economic-calendar/s-p-cs-hpi-composite-20-n.s.a.-329

◎FRBの22年3月から3回の利上げにより、住宅ローン金利が3%台
から5%台に上がった8月は、ローン申し込みが1/3に減り、住宅価格
は下がっています。

しかしまだ、7月のケース・シラー指数には反映していません。
22年9月から、指数の下落が始まるでしょう。現在、住宅価格は上が
る金融的な要素を失っています。今後は下がるということです。

株価と住宅価格の下落が重なると、金融機関には不良債権が増えて、
金融危機になっていきます。リーマン危機のときは、利上げにより住
宅価格が下がり始めた1年半後の、リーマンブラザースの倒産を端緒
に、米大手銀行がシステミックな危機に陥りました(連鎖的危機)。
今回は、2023年秋から冬が、その時期でしょう。

1年後に予想される銀行危機の問題は、FRBがリーマン危機対応の
ときにように、「利下げと量的緩和」ができるかどうかということに
かかっています

2008年9月のリーマン危機では、FRBが国債とMBS(住宅ローン
担保証券)を買って負債をゼロ金利に下げることより、投資銀行5位
のリーマンブラザースの倒産以外、「何事もなかったかのように」過
ぎ、現在に至っています。

ところが・・・FRBは、バランスシート(B/S)を9兆ドル
(1215兆円:日銀の1.7倍)に拡大したまま現在にいたっています。

◎米銀に発生していた不良債権が、実体経済の恐慌を引き起こさない
ように、FRBが4兆ドルを増刷することにより、肩代わりした、と
していいものです。(注)銀行にたまる不良債権は、銀行借り入れを
した企業の倒産、住宅ローン債務者のデフォルトを示します。これが、
実体経済。

実体経済の恐慌とは、
・企業の倒産が急増して債務者がデフォルトして、
・失業率は8%から10%に高まって、
・GDPと世帯所得も10%以上、下落するものです。

現在、FRBのバランスシート(B/S=ドル発行の規模)は、9兆ド
ルに達しています。1年半後に金融危機になったとき、FRBが9兆ド
ル付近の、肥大したB/Sを、更に4兆ドルから8兆ドルも拡大できる
かどうか? ・・・これは、疑問です。

FRBのB/Sのグラフを見てください。現在の9兆ドルから4兆ドル
から8兆ドル、B/Sを拡大すれば、どうなるか。

一層過剰になったドル、ドル国債、MBSが世界から売られ、米ドル
の実効レート50%くらいに下落すると予想します(円では、1ドル≒
70円)。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/bst_recenttrends.htm

FRBの1年半後のドル増発力に疑問があると、金融危機は実体経済
の恐慌に至るでしょう。金融危機の「とば口」にあるのが、2022年8
月でしょう。

【金融市場の、認識】ただし過去13年、株、債券、国債を、低金利
(短期金利0.25%)の借金で買い増してきた金融市場には、まだ、こ
の認識はない。

原因は、「株価と不動産がバブル価格」であるという認識が、薄いか
らです。人は、自分の投資のポートフォリオのポジションにとって、
都合のいい未来を見ます(情報への心理的なバイアス)。

本稿は、世界の金融の流れを、一夜で変えたジャクソン・ホール会議
に関係する、日曜緊急増刊です。有料版・無料版共通とします。

水曜日には、このテーマに関連する、有料版の正刊を送ります。

◎2022年の9月から12月は、金融面での世界史的な転換点です。世界
インフレのなか金融緩和という手段がないので、2023年に早期化する
「通貨の改変」にまで及ぶかもしれない。

中国は、米国より約1年早く、不動産バブルの崩壊期に入りました。
中国では、住宅とその関連がGDPの1/3と大きい。

不動産バブルの崩壊の崩壊は、他国より大きな、不況と銀行危機にな
って行きます。

世界の通貨はドル(35%)、ユーロ(20%)、人民元(15%)、円
(10%)、英国ポンド(5%)です。ドル・ユーロ・円・英ポンド
(70%)は、およそ、同じ動きをします。世界の通貨は、外為市場で
深くリンクしています(1日に8兆ドル:1080兆円の外貨の売買)。
(世界の外為市場=外為銀行の店頭)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E7%82%BA%E6%9B%BF%E5%B8%82%E5%A0%B4

1日1080兆円の、世界の、SWIFT回線(本部は、ベルギーのブリュッセ
ル)の外為金融は、人間の想像が至らないくらい巨大です。こそこそ
と行う、中央銀行の為替介入は、無力です。1日30兆円(3%)で、数
日間の介入が、最大だからです。

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<Vol.1264:緊急増刊:
    超金融緩和から、リセッションと恐慌への道程(3)>
    2022年8月28日:増刊:優良版・無料版共通

【目次】
■1.中央銀行は、金融政策をいつも誤ってきた
■2.2022年8月末のジャクソン・ホール会議をめぐる情況
■3.パウエルのスピーチの直後
■4.バブルのなかでは、バブルとは、分からない。
【後記】

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■1.中央銀行は、約100年、金融政策をいつも誤ってきた

では、なぜ・・・FRBの議長パウエルは、ジャクソン・ホール会議
で、
1)22年9月の利上げを0.75%にすること、
2)11月、12月、および2023年の「利上げとQT(量的縮小)の継
続」を示唆する発言をしたのか?
(注)金融政策を決めるFOMCは、1月、3月、5月、6月、7月、9月、
11月、12月であり、年8回です。

世界の中央銀行総裁、財務省、エコノミストが集まるジャクソン・
ホール会議は、イリノイ州のリゾートホテルで毎年8月25日から27日
に行われます。FRBの、年間で最大のイベントです。

【中央銀行の習性】最初に申し上げなければならないことは、日銀、
FRB、ECB(三大中央銀行)は、いつも経済見通しを誤り、バブルの発生
や崩壊という不適切な結果を招く習性があるということです。

その原因は、中央銀行は経済と金融を「政治的なバイアス」をいれて
予想するからです。低金利とマネーの増発とは逆のインフレの抑制を、
世論に押される政権が、要求します。

二番目に、中央銀行はマネーの増減により好況または物価の低下にも
っていけると考えていて、自分の金融力を過大に評価していることで
す。

中央銀行の「全能感」の元になっているのは、シカゴ学派の元祖フ
リードマンが作った「マネタリスト」の幻想です。幻想を受け次いで
いるのが、MMT(現代貨幣理論)と一体の新自由主義(=グローバリズ
ム)です。

◎中央銀行は、
・誤った学説と、政治的なマネー政策にもとづいて、
・誤った金融政策をとってきました。
過去、現在、そして未来も、です。

このため、
・中央銀行の政治的バイアスがかかった利下げと信用の拡大(量的緩
和)よって、バブル経済を引き起こし、
・インフレになったあとの利上げと信用縮小(QT)によって、不良
債権を増やし、金融危機を引き起こします。

FRBのB/Sの急拡大(2年で2.25倍:4兆ドル→9兆ドル)と、3倍
に上がった株価を参照し、「現在の株価と不動産はバブル価格ではな
い」と言い切れる人は、いないでしょう。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/bst_recenttrends.htm

【日本の異次元緩和の、政策目的に照らしたときの誤り】
2013年4月、日銀の新総裁に就任した黒田氏は、「異次元緩和によっ
て、2年で物価を2%に上げ、実質GDPは2%成長する」と宣言し、
円の量的緩和(累積で500兆円)を開始しました。
アベノミクスの柱が、ゼロ金利の超金融緩和でした。

7年、8年経っても消費需要は増えず、物価は上がらなかった。2013年
からの物価上昇は消費税の増税分の5%だけだったのです。

2014年の2.7%と2018年の0.99%上昇は消費税増税からです。2013年
から2021年の、消費税増税(5%)を除く、物価上昇は8年間を平均す
るとほぼ0%です。

日銀の量的緩和は、目標だった2%インフレには効果がなかったので
す。日銀は、手段を間違えていました。
https://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html

なお現在の消費者物価の、2.5%の上昇は、
1)米国のエネルギー生産の抑制、
2)異常気象による生鮮食品の不作、
3)コロナでのサプライチェーンショック、
4)ウクライナ戦争からの輸入物価高騰、
5)円安という、5つの複合要因によるものです。

500兆円を使い、50円(-48%)の円安にした日銀の異次元緩和は、物
価上昇という目的に照らすと、誤ったものでした。

1)金融危機の対策、
2)株価と資産価格上昇、
3)通貨の下落の4項に対しては、量的緩和が正しい。

しかし、日本の物価と経済成長に対しては、誤った手段でした。

マネタリズムでは「物価は貨幣現象」としています。マネー量が増え
れば物価は上がってインフレになり、マネー量が減れば物価は下がっ
てデフレになるとします。(注)M(マネー量)×V(流通速度)=
P(物価水準)×T(実質GDP)・・・フィッシャー等式

日銀の異次元緩和は、「物価は貨幣現象」という誤った学説に依拠し
ていたのです。

間違った処方薬を投与した医療と同じように、もともと、間違えてい
ました。金融政策と医療の適切は、警備と同じように、結果で判定す
べきものです。

現在の日銀は8年の失敗の結果反省をしているでしょうか。
反省は謝ることや、今回の警察のように責任をとって辞任することで
はない。

◎組織として、政策の結果生じた不都合なことの原因を究明し、今後、
同じ誤りを繰り返さないように、原因対策を立案して実行することで
す。これが、仕事の結果責任を果たすことの、真の意味です。

日銀とFRBは、量的緩和を実行したマネタリズムと、MMT(現代貨
幣論)からは決別しなければならない。

■2.2022年8月末のジャクソン・ホール会議をめぐる情況

今年の、パウエル議長のスピーチの意味を理解するには、その前、1
年からの、FRBと物価予想の関係を知っておかねばならないでしょ
う。

2021年8月のジャクソン・ホール会議では、パウエル議長は「物価の
上昇は一時的」と断定し、金融引き締めの対策はとりませんでした。

金融市場はインフレのなかでの、利上げのなさを歓迎し、株と住宅を
買い上がって、バブル色を強めていったのです。

米国の物価は、21年4月から上がっていました。
FRBは、正当な分析と、予想をしていなかった。

ところが、21年11月には一時的ではなく、高まった物価(CPI)を見
て、一時的としていたFRBは狼狽し、2022年の利上げと量的緩和の
縮小の予定を言うと株価は下がりました(将来の金融政策を言うフォ
ワード。ガイダンス)。

パウエルは法律家であり金融政策では岸田首相に似て、「誤りを指摘
されるとその意見を聞き」、右往左往します。この点、元議長のバー
ナンキやグリーンスパンのように自己知識に確信をもつ銀行家とは違
います。

2021年12月からは、コロナ危機への金融対策(20年4月から量的緩和
4兆ドル)で、2万ドルから3万5000ドルまで1.75倍に上がっていた株
価が、ピークアウトしています。NYダウは、21年12月末の3万5000
ドルがピークだったのです。

◎ウクライナ戦争後の22年3月には、財務長官のイエレンが、8%台を
超えた物価を見て「われわれの物価予想は誤っていた」と国民に向か
い、陳謝しました。

政府が、経済予想の誤りを認めるのは、米国では異例です。日本では
皆無です。「官は無謬」とされます。

22年3月には、FRBは、11月のフォワードガイダンスに沿って0.25
%の短期金利(FF金利)を、0.25%上げました。その後6月には0.5%、
7月には0.75%と、連続的に利上げをしています。
(FF金利:2022年1月から7月)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/usff.html

この利上げは、22年3月まで年率20%で増えていたマネーサプライも
減らし、負債による金融投資を減少させたのです。
 ↓
NYダウは、22年1月初旬の3万6600ドルから2万9300ドル(22年6月)
まで20%下げています。

ただしその後、7月からは、インフレの元だったエネルギー・資源価
格への楽観が市場を、再び支配し、3万4000ドルにまで回復していま
した(+16%:8月25日)。22年7月には、「インフレは終わった」と
もされたのです。

以上の経緯のあとのジャクソン・ホール会議です(8月25日から27
日)。

【会議の前提にとなったこと】
22年7月の、米国のCPIは8.5%と高い。金融政策が参照する、エネル
ギーと食料品を除いたコア指数も5.9%上昇と高い。
原因は、米国の賃金の上昇、5%~6%です。

◎賃金の上昇とコア物価の上昇率が見合うことは、デマンドプル型の
インフレです(米国、日本は違う)。企業が、賃金と販売価格の両方
を上げているからです。外為レートでの米ドルは高い。ドル安での物
価上昇ではなく、国内要因からの、物価上昇です。

(注:日本の物価上昇)日本では、米国や欧州のような賃金の上昇が
ない。このため、CPIの上昇は2.5%付近と米欧の8%台、9%台よりは、
賃金上昇率の違いの分低い。

賃金の上昇がない日本では、
1)輸入エネルギーと資源の高騰、
2)生鮮食品の上昇に加えた、
3)20%の円安が、インフレの3大原因です。

米国金融市場の、ほぼ70%の人たちは、資源価格が下がり、米国景気
がピークアウトした気配が見えたことから、22年8月の初旬までは、
・22年9月の利上げは、0.75%ではなく0.5%の可能性が高い。
・2023年に向かっては、逆の、利下げの可能性も出たと楽観的でした。
(ヘッジファンドのマネジャー達の空気)

◎一方FRBの内部では、「2%台のインフレに戻すまで、金融の引
き締めが必要」という厳しい判断が、浮上していたのです(各地の連
銀理事の発言)。

◎パウエル議長は、昨年の会議での「インフレは一時的」という発言
に懲りていたのか、今回は「インフレ抑制をやり遂げるまで(=物価
上昇率が2%台に下がるまで)金融引き締めを続ける」という強い姿
勢のスピーチをしました。

ハト派と見られていたパウエル議長が、タカ派(金融引き締め派)に
変わった瞬間でした。なぜパウエル議長の「姿勢の転換」があったの
か分からない。

パウエル氏は、「歴史は時期尚早な金融緩和を、強く戒めている」と
も言っています。1980年の第二次石油危機(CPIは14.8%)のときの、
FRB議長ボルカーの「短期金利15%への利上げ」のことを想定したの
かもしれません。
https://media.monex.co.jp/articles/-/20180

市場は、パウエルのコトバから「9月の乗り上げは0.75%、11月もF
RBの短期基準金利は上がり、2023年も利上げが続く」と見たのです。

金融トレーダーに、40年前の、二桁インフレの経験がある人はいない。
金利が0%に向かって下がる金融緩和の経験しかないのが、金融市場
の、投資家とトレーダーです。「インフレ抑制」がどんなものになる
か、その総体は、想定はできていない。

日本人には、株価+地価バブルが崩壊した1990年から1988年の、30年
前の経験があります。

この時期から、構成比で30%だった個人投資家の保有額は、減り続け
ています(現在は15%)。代わりに35%に増えたのが、ガイジン持ち
株です。

1989年までは、友人や知人に株の売買をしている人が多かった。
2000年代からは、個人にとって株価は遠いものになっています。

東証は、個人投資家の減少を懸念し、政府は約200万円の投資までは
非非課税のNISAを作ったのです。財務省は、「預金から株へ」のキャ
ンペーンを張り、証券会社はそれに乗っています。
 ↓
ところが、日本人の700万人の個人投資家は、1990年からの株価バブ
ル崩壊で損をしたことから、株の売買を減らしてきました。
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0705.html

■3.パウエルのスピーチの直後

当方は、2022年の世界の株価は、
(1)2008年のリーマン危機以降の金融緩和(4兆ドルの増刷)と、
(2)コロナ危機対策の4兆ドルがもたらした「金融バブル株価とバブ
ル不動産」と見ています。

この見方は、今日も20%以下しかいない少数派でしょう。市場の大勢
(80%)は、今も「米国の株価と住宅価格は、バブルではない」とし
ています。

ジャクソン・ホール会議での、パウエルスピーチの直後、驚いた投資
家は、NYダウを、1000ドル(3%)下げました。
https://nikkei225jp.com/nasdaq/

1日でマイナス3%は、暴落です。その後、再び、800ドル(2.4%)下
げています(8月27日:土曜日)。先物とCFDの市場しかない日曜
をはさんで、月曜日にどうなるか、わからない。

反騰があっても小さく、その後も下げるでしょう。インフレの元にな
る原油・天然ガス・穀物も上がっているからです。

太平洋を隔てた日経平均は、少し上がっていますが、日曜から月曜に
かけ、NYダウを追って下がるでしょう。

(注)米国からの、東証での株式売買は2.5兆円/日のうち、60%から
70%を占めています。NYダウやS&P500が下がると、ヘッジファ
ンドは、日本株を売ります。日本株は、資金量が大きな米国投資家と
ファンドが動かしています。

■4.バブルのなかでは、バブルとは分からない。

リーマン危機の前、米国の不動産価格が上がっていたときの元FRB
議長のグリーンスパンが言ったように、「バブルのなかでは、バブル
と認識されない」。

◎バブルという認識が投資家にないため、高い株や住宅を金利の低い
借金で買い上がり、バブルを一層激しくします。

高い価格が続くと、バブルという認識は、消えていきます。日本では、
1988年、89年がこれでした。「皆が上がった株と住宅を買いたがって
いた」のです。

これが、共同幻想の空気で動く金融市場の基本性格です。

日本の資産価格の、バブルのときも、国内では日経平均が6万円に、
地価もまだ上がると考えていた人が90%以上の多数派でした。(日経
平均3万9800円、地価は5年で約3倍:1989年)

【日本のバブル株を売り崩したのは、米国投資銀行だった】
1990年の年初、PERが80倍の異常値(正常値は15倍)に上がっていた
日本株を、完全なバブルと見て、下がると利益が出る先物売り、売り
オプションを仕掛けたのは米国の投資銀行だったのです。

1990年の日本では、デリバティブである先物売りや売りオプションは、
投資家にはあまり知られていなかった。

1989年まで高騰してきた株価が、日本人は売っていないのに、1990年
1月からなぜ大きく下がったのか、約1年後までわからなかった。下が
ったあと、チャンスとみて買う人は多く、自己資産の損を拡大したの
です。

旧大蔵省(現在は財務省)が「日本の地価は永遠に上がる(土地神
話)」という見方を転じたのは、1990年からの株価バブル崩壊後、4
年経った、1994年でした。

地価は、日経平均2万円台への株価下落に2年遅れ1992年から下がって
いましたが、下落への認識も2年遅れたのです。財務省の官僚は「一
時的に下がってもまた上がる」と見ていました(週刊誌の覆面対談)。
一般に、知的なエリート階級であるほど、過去の記憶が強く、神話に
捕らえられます。

新しい情況を、頑固に組み入れない。学校の学問は、そのときの支配
的な制度だからです。経済学も含む文系は、真理であるかどうかの検
証ができず、教科書で制度化された学問です。

現在の米国の、株価と不動産価格は、1989年のバブル崩壊直前の日本
と、同じ性格のものでしょう。日本の株価と資産バブルの崩壊は、
1998年からの超金融緩和(金利0%+量的緩和)では、再上昇に反転
しなかったことを記憶しておくべきです。

リーマン危機後の金融緩和で、米国株は3倍、不動産価格は、最高だ
ったリーマン危機前の2倍に上がっています。(ケース・シラー指数
:2000年~2022年)
https://jp.tradingeconomics.com/united-states/case-shiller-home-price-index

■4.金融緩和がバブルを作り、金融引き締めがバブルを崩壊させる

金融緩和とは利下げであり量的緩和(通貨の増発)です。バブルの株
価と不動産価格は、金利が低いときの負債(借入金)での買いの増加
によって作られます。

バブル期には、金融機関、ファンド、個人の信用買いが増え、住宅
ローンの借り入れも増えて行きます。

金融のマクロ経済では、「金融資産=金融負債」です。預金者にとっ
ての預金の増加は、銀行にとっては負債の増加です。Aさんの金融資
産は、別の主体の、Bさんの金融負債(借金)になっています。

株主にとっては資産の増加である株価の上昇は、それを資本とする企
業にとっては、返済の要らない劣後債の増加です。
価格が高くなった住宅を買うことは、ローン金額の増加です。

このように、ある時点で切れば「金融資産=金融負債」です。
金融引き締めが起こると、借り入れ(負債)の金利が上がり、資産価
格は下がります。

【住宅ローン金利の、実証的な事例】
米国の住宅ローン金利は、2022年の年初まで3.2%付近でした。FRBの
3月からの利上げにより(0.25%、0.5%、0.75%)により、現在は5.
5%に上がっています。ローンの利払いが1.7倍に増えたのです。

30年の固定金利のプライムローンを組んだとき、以下のように、総支
払額に大きな違いが出ます。5000万円のローンとします。

1)金利3.2%のとき→支払総額7785万円(毎月21.7万円返済)
2)金利5.5%のとき→同   1億 221万円(毎月28.4万円返済)

支払総額は2436万円(31%)増え、毎月の返済額も31%増えます。
これは何を意味するか、住宅価格が31%下がったとき、ローン返済の
負担額が同じになるということです。

ここから、ローン金利が3.2%から5.5%に上がると、米国の住宅価格
は、31%は下が傾向になっていくでしょう。金融引き締めと利上げは、
株価、住宅価格にとって、大きな意味をもつのです。

企業の負債の金利は、20022年の年初まで0.25%でした。
現在は3%付近です。金利は15倍、利払い額も15倍に増えています。

100億円の利払いをしていた会社が、2022年には1500億円の金利を払
わねばならない。企業はどうするでしょう。新規の増加借り入れをす
れば、金利の金利が、増えて行きます。企業と世帯経営では、利払い
と返済を考えないで、借り入れをすることはできない。

【借金での資産購入】
借金で買って、増やしてきた株や資産を売却するでしょう。15倍に増
えた金利は、普通、支払えない。株・資産の売却が増えると、株と資
産は、一層下がります。

金融資産=金融負債です。金融資産の価格が下がると、金融負債も下
がっていきます。どう下がるのか。

金融資産の下落を30%とすれば=金融負債100-不良債権30

【銀行のB/S】
不良債権の持ち手は、銀行です。銀行のB/Sの資産が30%下落して
債務超過になり、銀行間のレポ金融(国債担保の、短期借り入れ)は
停止し、システミックな金融危機になっていきます。

FRBがリーマン危機のあとのようにマネー増発(4兆ドル)をして
銀行に貸与して金融危機を止めないと、
実体経済で、
・不良債権を生んだ企業は、大量倒産し(不良債権=企業倒産)、
・完全雇用である3.5%の失業率が、2000年3月のコロナ直後のように
15%に向かって急増し、
・実質GDPが10%は下がって、経済恐慌になっていくでしょう。

【2022年9月から2023年】
FRBが、2022年9月、11月、12月、22年3月、5月、6月・・・とイン
フレ抑制のための利上げを続ければ、米国と世界経済は、不良債権が
増え、銀行危機から恐慌になっていくでしょう。

2022年3月には、米国株価の暴落を見て再びFRBは「政策を誤っ
た」として、利下げに転じる可能性も少しはあります(中間選挙のあ
とは、事実上トランプ政権になっていますから)。

FRBの利上げは、2022年中は、続くのが確実でしょう。

【後記】
元ヘッジファドマネジャーの高橋ダンは、8月28日youtubeで、「株価
に対する強気の見方は、利上げの時期には誤っていた」として「9月
も株価は下がる、ポートフォリオを空売りに転じる」と述べています。

高橋ダンの動画を見て(ほぼ毎日)、「インフレ率が高く、金利が上
がっていくなかで、彼の予想は楽観的で強気すぎる。この運用方針で
は、FRBの利上げで大きな損をする」と見ていたのです。

たぶん30歳代後半の高橋ダンは、1980年の、第二次石油危機の高いイ
ンフレ率(14%)と、FRB議長ボルカーの高金利(15%)の経験は
ない。経験がない直感は、誤ることが多い。
(高橋ダンのyoutube)
https://www.youtube.com/watch?v=8IDATwt0gKM&t=136s

日刊ではない、週刊マガジンの当方は、一貫してファンダメンタルズ
派です。3か月以上の長期予想をします。

高橋ダンが行うのは、テクニカル派の、指数平滑(MAC-D)も含んで
各種の移動平均の交叉で判断する、1か月以内の、短期予想です。

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【読者アンケートの、項目のメド】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点やご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的
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