謎に満ちたゴールドを解けば、管理通貨と経済のからくりが見える(1)
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こんにちは吉田繁治です。無料版メールマガジンをお届けする期間
が2カ月も空いたことを、お詫びします。本メールから数回のシリ
ーズとして<謎めいたゴールドを解けば、管理通貨と経済のからく
りが見える>というテーマで、有料版分をリライトし送ります。

本稿は、世界の金融危機(08年9月~)が勃発する直前の、昨年8月
に、シリーズとして書いたものを、現在のデータを加えて書き換え
たのものです。論の主旨は完全に一貫し、変えていません。当時の
、経済の空気と、考えを見るのにもいいでしょう。当時、直感で鍵
は金だと思ったのです。

【通貨の2種】
通貨は、人々が今日のモノの購買と、明日の購買力の蓄積に使うマ
ネーを言います。通貨は、(1)ゴールドのような「資産性の通貨
」と、(2)今、世界の国々が使っている「負債性の通貨」に大別
できます。

通貨は、人々がその価値を、お互いに信用するという条件を備える
なら、なんであっても構わないという基本で性格をもっています。

古来、貝殻や、青銅、金が使われています。マネタリスト、フリー
ドマンは、巨石を通貨に使ったヤップ島の物語を書いてます。(『
貨幣の悪戯(1992)』:邦訳 斎藤誠一郎:三田出版会)

金貨は、資産性の通貨でした。それ自体が価値をもつという意味で
の資産性です。

【負債性の通貨】
他方、紙幣(1万円札や100ドル紙幣)は、負債性の通貨(管理通貨
)です。通貨発行を認められた中央銀行の貸借対照表を見れば、通
貨の発行額(円は75兆円:75億枚:09年10月)は、日銀の、国民に
対する負債です。その意味で、「負債性の通貨」と言います。
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ac07/ac091020.htm

75億枚の1万円札の対応資産は、国の国債です。日銀は、国債を資
産として買い、買った額に相当する円を発行するという構造です。

国債は政府が発行する、負債の証券です。つまり国の借金です。
1万円札を見ても、その紙に、価値はない。日銀の負債を示す、金
利のつかない証券だからです。その対応資産が国債です。つまりど
こまで行っても「負債」です。

「簡潔にして正しい答え。それは人々がそれを(その商品購買力を
)信用しているから個人も受け入れる、である。つまりすべての人
々がこの緑がかった紙(ドル紙幣)は価値があると信じているから
価値があり、この紙は価値があることを経験的に知っているから、
誰もが価値があると信じている。第1章で述べた、石貨の事実とま
ったく同じだ(『貨幣の悪戯』P27)」

ここが、通貨というものの、本質に他ならない。円やドルを、まっ
たく知らないどこかの国に持って行き、これがマネーだ、商品と交
換できると大声で言っても、頭が変ではないかと思い、誰も信用し
ません。これが負債性通貨の基本性格です。

他方、ゴールドは誰の負債でもない。金属は、それ自体に価値をも
ちます。鉄は、新日鐵の負債ではない。ゴールドはそれを売る田中
貴金属の負債ではない。

【本質】
「紙幣や通貨は、価値があると信用する人々の間でのみ、価値があ
るとして流通する。根底では、集団(共同体)の中の他人が信用す
るから、自分も信用するという、信用の無限連鎖しかない。」

2008年の9.15(リーマンショック)以降の世界は、2007年からの住
宅証券の下落を端緒にする、信用収縮(推計で約500兆円)です。

世界のGDPの約10%分の信用収縮が起こり、現在も続いています。

経済取引の総額(世界のGDP)がさほど減っていないように見える
のは、各国政府が、緊急に合計で500兆円規模の、マネー供給(金
融機関への貸付と証券・国債の購入)を行い、負債性のマネーで信
用収縮を補っているからです。

「信用(Credit)」とは、難しい内容を含みますが、クレジットカ
ードを考えれば、簡単に分かります。カードが、店舗に信用される
のは、カード会社が後で、買い物額相当の現金を振り込むからです
。カード会社がカードを個人に発行するのは、個人が、預金から現
金を払うということを信用しているからです。これが「信用」です

信用は後に「確実に払う」という信頼から生じます。個人に信用が
高ければ、クレジットカードや現金も要らない。「後で払うよ」と
言えば、商品が買えます。信用の根底は、「約束を守ること」です

住宅証券、株、国債(まとめて証券)の全部は、手形や小切手と同
じ「信用」です。借りた人が後で払うという一点で、価値がある。

これらは現金と違い、リスクに応じた「金利」がつきます。そして
現金も、その国の経済の信用が、元になっています。金利のつかな
い現金の価値は、その国の物価の上昇率が低いということから信用
されます。つまり負債性通貨を、闇雲には発行しないという国の財
政運用の信用です。

円の信用も、円の国債の信用です。円国債の信用は、日本政府の財
政運用への信用です。ドル国債も、ユーロ国債も全く同じです。

上記の諸々の証券の価格が下がること、つまり信用収縮が起こると
、経済取引(その総額はGDP)が縮小してしまいます。

つまりGDPが減る。GDPの減少は、国民所得(=世帯の所得+企業の
利益+海外からの配当・金利所得)が減ることと同義です。

例えば、クレジットカードの与信(信用の枠)が、以前は100万円
だった。それが、50万円に信用縮小する(与信の減少が起こる)と
、カードで100万円買っていた人は、翌月から50万円分の買い物を
減らさねばならない。

買い物が減ると、GDPは減ります。店舗の売上が減り、店舗売上の
減少は、メーカーの生産額を減らすからです。米国のGDPの70%は
、世帯の買い物や医療費です。(個人消費:日本はGDPの中の政府
予算・特別行政法人予算が大きいのでGDPの60%が個人消費)

米国では、総与信額が200兆円(世帯のカード負債)あったクレジ
ットカードで、貸し倒れが12%に増え、買い物(店舗の売上総額で
$3.6兆:324兆円:09年9月の年率換算)を、6.4%減らしています
。この信用縮小では、企業も同じです。売上の減少・利益の減少で
、その与信が減っています。金融機関も信用縮小が激しい。

ここ10年、毎年の春には「秋になると経済(=経済取引)は回復す
る」という根拠の薄い論が登場しています。いつも「半年後には、
好転する」と言うのが、官庁系エコノミストに共通な論です。今は
2010年3月には好転すると言っています。

毎年、期待は、裏切られ続けています。経済で、最も重視して見な
ければならないのは、失業率と世帯の所得の増減です。失業が増え
る限り、得経済は浮上しません。これが、単純な事実です。(注)
米国企業と金融の利益は、大量の雇用カットと株価によるものです

今、世界経済は、ほぼ確実に、冬から正月のダブル・ディップ(二
番底)に向かっています。要は、日米欧の世帯所得が減ったからで
す。借り入れで10%(1年90兆円)余分に買ってきた米国世帯(世
帯所得900兆円)の、クレジットカードを含むローン与信が急低下
したしたためです。減った世帯消費が増えないと経済は回復しませ
ん。

上記の論の共通の根拠は、政府の経済対策が、効果を生むというこ
とです。

政府・中央銀行は、いくらでも負債性のマネー(通貨)を刷る(=
金融機関に貸し付ける。貸し付けたマネーが民間に回る。)ことが
できる。そのため、経済は回復するというのです。

本稿では、負債性通貨ではないゴールドの、過去からの歴史的事実
(実は、調べれば調べるほど、謎めいています)を、解釈しながら
見ます。ゴールドは、紙幣(特に米ドル、そして他国の全通貨)の
価値下落に、ほぼ、反対の動きをするように思えるからです。

(注)長期の傾向を言っています。1年内の短期では、ファンド等
による大口の、利益確定の売りが混じり、ゴールドも騰落を繰り返
します。1年内とは言わなくても、金融機関とファンドの4半期決算
(3か月ごと)で、大きく売買されています。

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<389号:謎に満ちたゴールドを解けば、
          管理通貨と経済のからくりが見える(1)>
2009年11月4日:部分リライト

【目次】
1.貨幣膨張とインフレの基本性格
2.貨幣は不換紙幣(政府管理の通貨)
3.謎が多いゴールド
4.単純な真理と複雑な謎
5.『ゴールドと経済的自由(1966)』を解釈
6.ゴールドはどうなった? そしてどうなる?

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■1.貨幣膨張とインフレの基本性格

【インフレとドル】
2002年ころからの、資源・一次産品の高騰に起因する、国際コモデ
ィティのインフレの原因は、通貨(基軸通貨と認められるドル)の
、米国経済の赤字による世界分散であることは言うまでもありませ
ん。(注)米ドルで、世界の貿易量の60%が、ユーロで25%が決済
されています。

経済成長(商品生産の増加)より、通貨量の増加が大きいと、いず
れ、何らかの形でインフレに向かう。通貨が、利益を求め自由に世
界をめぐる現在は、これを世界規模で見ないといけません。

(注)2009年現在は、原材料ではない商品では、世界の工場が10%
~30%の生産力の空き(稼働率の低下)があるので、余剰生産力か
ら低価格の商品が作られ、商品価格が下落する傾向が続いています

2000年代の物価インフレは、資源・エネルギーの面で起こっていま
す。物価のインフレは、貿易財である国際コモディティ(資源・エ
ネルギー・金)と、店舗で買う商品を分けて見なければならない。

【原理】
M(通貨の量)×V(流通速度)=P(物価水準)×T(商品取引
量)という公式は、M(信用量の増加)×V(回転速度の変化)=
P(物価上昇率)×T(実質GDP)と同じです。

実質GDP(商品生産量とその取引量)は、急には増えない。
通貨の回転速度は、ほぼ一定と見ていい。

そうすると、M(信用量の増加)≒P(物価、資源、資産価格の上
昇)になります。信用量の増加とは、マネー量の増加ですが、それ
は、各国通貨の増加及び、現金性の預金の増加です。

2000年代では、まず、資源や一産品(卸売物価)が上がった。数年
のタイムラグ(時間の遅れ)で、資源価格高騰が波及し、消費者物
価も上がっています。

【わが国も消費者物価が5%台のインフレへ】
他方、先進国の所得は、新興国の工業化と低価格商品の、輸出の増
加のため増えない。

わが国の消費者物価も、原油価格が$140に上がったため2008年の
年末にかけては5%は上昇する勢いを示していましたが、今は再び2
%台の下げを見せています。(注)現在、$140だった原油が$30
に下がり、その価格が、また$80付近への上昇です。

インフレと失業は、経済の中心課題のはずです。そうすると、上記
公式から信用量(通貨量)も中心課題でなければならない。(MV=P
T)

以降では、現在の通貨をゴールド価格と照らして、歴史的に見ます

■2.貨幣は不換紙幣(政府管理の通貨)

【1971年以後は管理通貨:不換紙幣の制度】
ニクソンによる、突如の金ドル交換停止の1971以後、ユーロ・ドル
・円・元を含む世界の通貨は全部が、「負債性の管理通貨」です。

政府・中央銀行が、経済取引に必要な、信用の元になる、負債性通
貨の発行量を管理・監督しているので、「管理通貨」と言います。

直接に通貨を発行する中央銀行(日銀、FRB、ECB、人民銀行等)は
政府とは別の機関ですが、マネーの政策では一体と見ていい。

▼ドルの価値下落

【40年前】
38年前の1971年以前は、1トロイオンス(≒31グラム)のゴールド
を、35ドルで、FRBに対し交換要求できていました。ゴールド1
グラムが、約1ドル相当(現在は$35に高騰)と安かった。かつて
は、1ドル金貨(1グラムの金を含有)もあったのです。

【現在】
今、1グラムが、円では3100円~3300円位です。ドルでは、35ドル
付近です。

1971年以後、現在までの38年間で、米ドルは、ゴールドに対し35分
の1の価値に下落しています。長期の年率では、1年約9%もの、金
に対するドルの、一貫した価値下落です。

(注)金価格は、ドルに対する円高、円安の要素が混じるので、ド
ル価格で見なければなりません。

この38年間、1年平均で9%もの複利でのドル下落(金に対し35分の
1)を見れば、原油や資源が、、時期を見て上がるのも、当然に思
えます。ドル預金に、仮に金利が1年平均で5%ついても、1年で4%
の価値下落だからです。(注)現在はドルの短期金利は0%です。

ところが、世界の政府・中央銀行は、米ドルを(もっとも価値が安
定し、貿易に使う)基軸通貨としてきたのです。

米ドルを主隗とする世界の通貨の根底に、こうした「通貨価値の虚
妄」があって、今も、これ続いています。(注)問題は、今後、ど
う向かうかです。本シリーズのテーマがそれです。

【簡単な試算】
もし、1970年に10万ドル(当時は円で3000万円)でゴールドバー10
0キログラムと交換していれば、今は350万ドル(約3億円)になっ
たはずです。円で10倍、ドルでは35倍です。

長期趨勢で見れば、これは、米ドルの価値下落以外の、何ものでも
ない。金の価値が上がったのではない。原油や資源の価値が上がっ
たのでもない。本当は、ドルが下落した。

日本円も、金に対してはドルにつれ下がった。ユーロも、元も、で
す。(注)円はドル勢力圏から独立してない通貨です。政府がそう
決めています。

円で言った利益率は、過去38年で10倍(1000%)です。ゴールドは
、38年間、1年平均で6.4%の利益です。これは、事業の利益や世帯
の所得増より大きいはずです。

▼負債性の管理通貨

【いずれも信用(credit)】
通貨、貨幣、そして信用は、同じ意味のものです。クレジットカー
ドやローンの信用も、通貨です。国債も政府信用であり、市場です
ぐ売れるので、通貨と同義のものです。

各国に政府赤字が続く限り、いずれ政府は国債を増やし、中央銀行
は負債性の通貨の発行量を増やします。そのため、負債性通貨の価
値は継続的に下がる。これが、本質での真理でしょう。

【ケインズは言った】
われわれの世界の、現在の管理通貨制は、
(1)世界大恐慌(1929年から)の後の、
(2)(現在と似て商品物価が下がる)デフレ経済に対し、
(3)ケインズの発案(『雇用と貨幣と利子の一般理論』)をベー
スに、各国が採用したと言っていいものです。

当時のルーズベルトの「ニューディール(1933年~)」は、管理通
貨の増刷を財源とした公共事業でした。1939年からは、ヨーロッパ
、日本、アジアを破壊した第二次世界大戦でした。

実に戦争も、米国にとって経済対策でもあったのです。米国は、他
国で戦闘をし、自国は破壊されなかった。戦争は、国から給料と年
金をもらう兵隊の雇用(臨時公務員)として、失業対策でもありま
す。

【1929年の大恐慌】
ところが、物価が下がり、失業が増えたデフレ型の大恐慌(1929年
)は、主流派のエコノミストからは、通貨の発行に金担保の制限が
あった「金本位制」に原因があったとされています。

果たしてそれは、本当のことか?
嘘ではないかというのが本稿の立論です。

金本位(Gold Standard)は、ゴールドの量を基準に、通貨の発行
額を制限する制度です。

■3.謎が多いゴールド

【世界のゴールドの量】
人類の歴史で発掘されたゴールドの総量は、不正確な統計に過ぎま
せんが、どこを調べても約15.5万トン(時価で450兆円:1グラム=
3000円としたとき:1トンは30億円)とされています。

その半分(225兆円)を、金融機関の準備通貨にすれば、準備率を1
0%(=自己資本10%)として、10倍の2250兆円相当の金本位通貨
が発行できます。世界のGDPが5000兆円くらいですから、十分すぎ
る現金通貨量です。こうした金本位はデフレの原因になるものでは
ない。

(注)他方、世界の確認埋蔵量は5万~6万トンと、極めて少ない。
これが、長期趨勢でゴールド価格を上げる原因にもなっています。
金は、50年分が埋蔵されている原油より速く、枯渇します。現在の
産金量(新規供給量)は1年2500トン水準(約7.5兆円)ですから、
残りは20~30年分しかない。

現在量の15.5万トンのうち、
・52%が宝飾用(8万トン:時価230兆円)で代々持たれ、
・19%(3万トン:87兆円)が各国政府の公的保有、
・16%(2.5万トン:75兆円)が個人の所有、
・12%(1.8万トン:5.4兆円)が工業用とされています。
・不明が2%です。(資料:Fiscoコモディティ)

5.5万トン(約162兆円)くらいが、ゴールドバー(金塊)として、
代々の貯蔵(推計)でしょう。

このうち各国政府・中央銀行の持ち高は、公式には、約3万トン(9
0兆円相当:総量の19%)とされていますが、実際の量は「闇の中
」です。

(注)産金量は1年で2500トン(時価で7.5兆円:2005年)レベルで
安定しています。産金コストは、現在は、1グラムで1000円くらい
です。埋蔵量が減ると、鉱山会社の産金コストは上がります。

【ゴールド・原油・資源の3倍への高騰】
2002年以後、ゴールドと原油・資源は、ほぼパラレルに平行し、約
3倍に上げています。

ゴールドと原油の価格を基準に一定の価値とすると、今、(1)株
・証券・国債、(2)そして個人の名目所得や貯蓄額、(3)そして
不動産は、約三分の1に下落しています。

価値の基準とする尺度を、ゴールドや原油に換えれば、別の、経済
世界が見えて来ます。

問題は、価値の基準は何かということです。現在の世界では、米ド
ルを基準に、あらゆるものの価格を計るため、2000年代も株・証券
・国債・名目所得・貯蓄額が増え、不動産価格が上がったかのよう
に仮想されているだけでしょう。

ゴールドや原油を基準に見れば、世界は、今も、通貨価値が下がる
インフレを続けています。2009年現在、ドルや円で見るから「デフ
レ」に見えるだけです。

(注)インフレは、見掛け上は物価の上昇ですが、その本質は、物
価を計る通貨価値の下落です。

■4.単純な真理と複雑な謎

▼単純な原理

イランのアフマディネジャド大統領は、「米ドルが下がるから原油
が上がる。」と言っていました。単純な真実でしょう。原油の輸出
代金としてドルを受けっとって貯めれば、その価値下落はたまらな
い・・・

金や原油の価値そのものは、変わっていない。インフレ的に膨張し
たのが、米ドルと米ドル圏(ドル、円、元、他)の、通貨信用量で
す。つまり通貨価値の下落です。

発行量が膨らんだドルを尺度に(基準にして)計るから、資源や原
油価格が上がったように見える。実際は、米ドルが下落している。
イスラムの金融からはそう見えるのです。

(注)2000年代以降の、激しく証券化した金融では、中央銀行によ
る現金通貨の発行だけがマネー量の増加ではない。証券(国債・株
・住宅証券・デリバティブ)の発行も、実質では、現金化できます
から通貨の増刷です。

(1)米国の貿易赤字(1年80兆円が累増)、
(2)30兆円余のイラク戦費を主因とする政府財政の赤字(1年50兆
円)に、2008年秋からの経済対策費(総額300兆円以上)、
(3)米国住宅ローンと世帯の総負債(1300兆円の残高)、
(4)日本の国債の大量発行(残高850兆円、10年度は50兆円以上を
増加発行)で、ドル通貨圏に属する通貨の価値が下がったから、原
油・資源・ゴールドは上がった。

米国の対外総債務は、$20兆(1800兆円:米国経済白書)です。(
注)対外資産を引いた純債務は450兆円でしょう。

原理は、簡単なことだと言う。これが単純な真理。

ファンドの資源やゴールド投機は、敏感に、通貨の価値下落を狙っ
たものと言えます。

▼ゴールドをめぐる謎

【不思議】
ここ2週間、価値を一定に保っていると直感できたゴールドについ
て、いろいろ調べてみました。

気がついたのは、通貨としてのゴールドを、まともに論じた本や論
文は、実に少ないということです。わが国では、ほとんどゼロです

【政府の失敗になるから・・・】
調べた過程で分かった理由を端的に言えば、
(1)政府・中央銀行が管理する通貨価値の下落(=インフレ=貨
幣膨張)は、
(2)「政府の金融政策」の失敗になるからです。
この失敗は、政治的な責任になる。

【米政府の喧伝(けんでん)】
逆に、ドル圏が使う基軸通貨を発行する米国政府・FRBは、「ゴ
ールドの通貨としての役割は終わった。」と、折に触れ言う。

●ケインズが1930年ころに「ゴールドの価値に依存するのは、ばか
げたことだ」と言って以来、主流派とされるエコノミストは、ゴー
ルドへの発言を、意識的または無意識的に封じています。通貨は、
政府が管理するものだという前提があるからです。

ケインズは、英国政府の財務高官として戦費調達のため国債発行も
説いています。第二次世界大戦後の、国際通貨制度である「ブレト
ン・ウッズ体制(1944年~1973年)」作りにも参加した。

【論理矛盾】
インフレの原因が、管理通貨の発行と流通量の膨張であることは、
誰も否定しない。ここに、管理通貨の論理矛盾がある。

インフレは、政府赤字を主因に引き起こされる。しかし政府は、そ
うでないかのように、振る舞う。ファンドの投機が、資源やゴール
ド価格上昇の犯人と言う。これは誤りです。

ファンドは、利益が出るように運用するにすぎない。ファンドのマ
ネー(負債)の、よって来たる根源は、政府赤字による過剰マネー
でしょう。

【救国】
私は、日本の救国のために、言いかえれば高齢化に向かう国民の虎
の子の金融資産(世帯の金融資産1500兆円)を、将来の福祉費用に
活かすため、(円で3倍に高騰した今からでもいいから)100兆円分
だけでも、順次、ゴールドを買えばいいと考えています。民主党政
権がこれを行えばいい。そこから高齢化対策の福祉マネー、十二分
に生まれます。簡単なことです。

【米国が禁止すると言うが】
しかし政府、政治家、官僚は、それは、絶対できないと言う。理由
「米国が、日本政府の金の増加保有を禁じている」からだと言う。

情けないことです。小泉内閣時代(2001年~2006年)には、円が、
100円~125円のスプレッド(幅)で、米ドルにリンクするという「
政府間密約」があったように、ゴールドの政府・日銀による購買も
禁じられていると見ていいのです。

政府・財務省・エコノミストは、米国の圧力を恐れています。

じゃ米国はなぜ、日本の政府を含む世界政府に「ゴールドを買わせ
ないのか?」 その理由は、論理的な推測によるしかないのです。

(注)民間金融機関や個人なら、堂々と買えます。資産性ではなく
「商品としての金」を買うとIMFや米国に言えばいい。商品とし
てのゴールドは、公的には統計されません。

【日銀】
日銀のゴールド保有は、貸借対照表を見れば、総資産114兆円(09
年10月)のうち、わずか4兆4125億円(総資産の3.8%)です。時価
換算では、1300トン分(世界の政府保有3万トンの4%くらい)に相
当します。とても・・・少ない。

しかも現物は、おそらく数トンしか日銀の金庫にはない。これも、
日銀は公開しません。

(注1)日本政府公表分の持ち高は、なぜか、その半分の765トンで
す。1グラム6000円相当の超高値(時価の約2倍)で買ったことにな
る。これも変です。(Financial Times紙等)

各国政府の保有金には、その量を含み未公開の謎が多い。米国FR
Bの公表持ち分は8134トン(時価24.4兆円)とされますが、それも
、実のところは不明です。

日銀を含む、各国政府・中央銀行は、米国FRBに、保有する金を
預け、その預かり証券を持っているにすぎません。

(注2)ゴールドは工業等に使う「商品」として申告した場合、国
際協約では、その量と金額をIMF等に申告しないでいいとされて
います。そのため、各国のゴールドバーの所有高は、不明になるの
です。

【有事のため】
米国FRBの地下金庫に預託され、証文(金証券)があるに過ぎな
い。米国は、金証券は渡しても、現物を渡しません。

理由は、「有事(戦争)のため、貴国の財を守る。」という勝手な
ものです。実際はどこにあるのか、不明です。

【フランス及び日本とドイツ】
過去、フランスが、自国の戦艦で、米国FRBに預けていたゴール
ドを何年もかけ持ち帰ったのとは、えらく違います。(ド・ゴール
大統領の時代)

日本は有事の際、自国を守れないではないかというのが米国政府の
言い分です。

日本と同じ敗戦国だったドイツ政府は3117トン(時価で10兆円)の
金をもつとされますが、これも、日本同様、米国への預託が多い。
ドイツがユーロ通貨圏を、フランスと一緒に先頭になって形成した
原因が、これかもしれません。ドルの下落で、独仏の資産が減って
は、困るからです。

【不思議な矛盾】
米政府とFRBが言うよう「ゴールドの役割がもう終わった」のな
ら、金の現物を渡せばいい。しかし、絶対に渡さない。ここにも、
ゴールドの不思議の一端があります。

【珠玉とされる論文】
調べている過程で、前FRB議長のアラン・グリーンスパンが、学
者の時期に書いた『ゴールドと経済的自由(1966)』という論文に
遭遇しました。(注)グリーンスパンは、金融恐慌の研究者でもあ
ります。隠れた金本位論者であることも、知られています。

ゴールドについて書かれたものうち、珠玉とされています。
邦訳はないので、以降で説明的に訳し、解釈を述べます。

目的は、貨幣について、基本的なところを、理解するためです。こ
の中等教育は、わが国では欠落しています。マネーはもっとも大切
なもののはずですが、世界の政府の教育は、これを封じています。

http://www.321gold.com/fed/greenspan/1966.html

別の本で言えば、参考になるのは『邦訳:今なぜ、金復活なのか(
原題:Gold War)』(フェルディナンド・リップス:2002年5月)
です。

リップスは、ロスチャイルド系の「バンク・リップス銀行」を、ス
イスに作った人です。1998年に引退し、金鉱山のファンドを運用し
ています。

この本には、ゴールドをめぐる米英政府や主流派エコノミスとの戦
いのうち、(たぶん)公開に難がないと判断されたことが、記され
ています。

まともに論じれば、実はゴードルには、危なさもあります。

■5.『ゴールドと経済的自由(1966)』を解釈

通貨の性格の理解の前提になる、グリーンスパンの論文を、冗長な
部分を要約し、主旨を示します。(解釈は当方の責です)
論旨は明確で、日常用語でも理解できるでしょう。

【その論旨と、解説的な解釈】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

経済は、商品の生産と交換である。古代の経済は、等価と思えるも
の物々交換だった。これは不便だった。そのため交換の媒介として
「貨幣」が発明された。

貨幣としては、社会によって、価値が一定と思われるものが使われ
た。金、銀などの金属、貝殻、あるいはタバコともされた。(注)
(わが国では)米が単位でもあった。(石高が富)

文化(価値観)が異なる国を超えた取引(国際貿易)では、皆が価
値を認める金や銀が使われた。(注)今、日本企業は、中国企業と
の貿易でも、米ドルを使っています。お互いに、自国通貨の信用は
ドルより劣ると考えているからでしょう。

第1次世界大戦(1914-1918)まで、国際的な交易では「ゴールド」
が通貨だった。しかし、ゴールドの量は少ない。そのため、ゴール
ドを担保に、信用あるとされている銀行が「金額を書いた銀行券」
を発行した。要求すれば、一定量のゴールドと交換可能(兌換紙幣
という)だった。

(筆者注1)この金証券の発行が、銀行制度の始まりです。金細工
師が、貴族から加工・細工のために預かった金に対し、預かり証を
発行し、それが通貨として使われるようになって行った。これも金
細工師が発行した負債性の通貨です。

(筆者注2)金の預かり高を、「金準備率」と言います。貴族は、
金証券を受け取っても、それが金の保有を証明するものとして、金
の現物への交換を要求することは少なかった。そのため、金細工師
(初期の銀行)は、金準備の何倍、何十倍の額の(負債性の)金証
券を発行できたのです。これが、金本位制です。金準備額を超える
金本位制の通貨も、銀行の負債性の通貨であることは同じです。

銀行は、金証券を貸すとき、金利をとって貸し付け(ローン:信用
創造)を行った。利益を上げる事業に貸し付けて、金利を利益とし
た。(銀行は負債から、利益を得ます)

事業が、金利を払う利益を上げることができないときは、ローンを
回収し、その事業を清算する。そして他の事業や個人に貸し付ける
。これが、企業の有効な投資となって、経済の発展を促す。(これ
が銀行の機能)

当時は、銀行が行う信用創造の量(与信)は、金の準備率(ゴール
ドの持ち高÷信用創造額)に規定されていた。例えば準備率が10%
(10憶円)なら、その10倍の金額(100億円)の与信を創造し、貸
し付けることができる。

【重要】こうした金本位制では、(政府が関与しない)自由な銀行
システムが、経済の安定(=物価の安定)と、与信額に調和した経
済成長に寄与していた。(注)当時の、王政の政府は、王が戦争や
建設の奢侈を行うので信用が薄かったのです。

通貨の単位がドル、ポンド、フラン、マルク、円であっても、一定
量のゴールドにリンクされていた。従って、諸国の通貨間の交換比
率も一定になる。通貨の価値と物価は、金本位では長期で安定して
いた。

ある国の銀行が、貸し付けのための与信(ローン)を過度に増やし
、銀行券を過剰に貸し付ければ、ゴールドの準備率が下がる。通貨
が増えれば、その国の物価は上がり、通貨の価値が下落する。

そのため預金者は、預金を引き出す。これによって、過剰だった銀
行の与信額(貸し付け額=マネー発行の総量)は減らさざるを得ず
、金融は引き締められ、金利が上がり正常化に向かう。(注)現在
のように、約10年単位で繰り返し襲うバブル経済(通貨価値の大き
な下落)はなかった。

通貨の価値をゴールドにリンクさせた金本位制では、人々は、未来
の通貨の価値下落を憂うことなく、貯蓄ができる。

完全な金本位制は、未だにどこの国でも実現はしていない。しかし
、第一次世界大戦前の米国と諸国は、金本位だった。金本位は、(
政府が関与しない)自由な経済を実現させた。

【重要】ところがこの銀行システムに、政府が関与した。第一次世
界大戦の直前の1913年に、米国では連邦準備制度(FRB:Federa
l Reserve System:中央銀行制度)が作られた。

FRBは形式的には、民間銀行の出資によるものだった。しかし実
態では、政府がスポンサーで、与信額をコントロールしていた。

(注)FRBは米国大手銀行つまりゴールドマン・サックス、モルガ
ン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、AIG、メリル・リンチ
等が大株主である民間会社です。なぜ、FRBが米国大手銀行を救済
したかは、FRBの株主構成をみると分かります。リーマンが救済さ
れなかったのは、FRBの株を持ってなかったためかもしれない(憶
測)。
米国FRBの議長には、過去、大手金融機関のCEOが就いています。
他方日銀は、財務省が55%の株をもつ政府系機関です。

これによって、ゴールドではなく、「政府の課税力(徴税権)」が
、与信の元になった。(つまり純粋金本位制は、米国では1913年に
終わった)

金本位制は続いていた。しかし、その与信の根源になるものに、ゴ
ールドの準備高以外に、政府の将来課税力が根拠でしかない「ペー
パーマネー(不換紙幣)」が加わることになった。

(注)現在の政府信用とは、現在及び将来の課税力です。円の信用
も、将来、政府が何らかの増税をして財政を均衡させるという信用
に基づいています。ドルもユーロも元も同じ構造です。

1927年(大恐慌の2年前)には、米国経済は、穏やかな縮小過程に
あった。経済の成長力が、低下していた。

【重要】
(1)このとき、政府が管理する米国FRBは、経済を浮揚させる
目的で、FRBのペーパーマネー(ドル紙幣)を増刷し、銀行に貸
し付けた。(信用が縮小した)民間企業にお金が回るようにするた
めである。これによって、米国の金利を低下させた。

(2)もっと悪いのは、米国FRBが、ポンドの価値低下、つまり
英国の経済力低下(=貿易赤字)から、ポンドとリンクするゴール
ドが国外流出していた英国の銀行に、米ドルを貸し付けたことであ
る。

英国経済が弱くなり、ポンドの価値が下落するので、人々はポンド
を価値の変わらないゴールドに交換していた。そのため英国からは
ゴールドが流出していた。(注)これが、経済の自然な動きです。

英国は、ポンドの価値を守るためなら、本来は、ポンドの金利を上
げねばならなった。しかし金利を上げると、英国経済は更に停滞、
崩壊する。そのため、英国は金利を上げなかった。この英国の信用
の低下を補ったのがFRBの、英国銀行へのドル貸し付け(ゴール
ドの裏付けがないペーパーマネー)だった。

【株への投機が起こった】
米国FRBも、国内の金利を上げなかった。英国にも貸し付けた余
剰なマネーは、株への熱狂的な投機に向かった。銀行から低利で借
りた人が株を買った。上がった株は、また買われるというバブルに
なった。米英の株価や不動産は、急騰した。(1927年~1928年)

【投機を抑えるため金融を絞る】
株価と住宅の、投機的な高騰を見て、FRBの高官は、貸し付けを
絞り(回収し)、株への投機にブレーキをかけようとした。しかし
、遅きに失した。

1929年(世界大恐慌の前夜)には、すでに投機が投機を呼んで、株
価と不動産バブルが巨額だった。FRBが、急にマネーを絞ると、
投機的な株価が急落した。結果として、米国経済が崩落した。英国
は、もっとひどいことになった。

【金本位の停止という愚策】
この経済の破綻の中で、英国は愚策を採用した。1931年に、ゴール
ドの対外流出を恐れ、金本位を停止し、かつての基軸通貨だったポ
ンドを完全なペーパーマネーにしてしまった。

これが、世界のマネーの信用をずたずたにし、世界の銀行は、破綻
に向かった。

(筆者注)これが1929年の大恐慌の発生です。当時の基軸通貨は、
米ドルではなく英ポンドでした。現在の基軸通貨国ではない日本や
中国、そして中東諸国が、米ドル及びドル国債、ドル証券を買って
、基軸通貨(ドルを支えているのと同じです) なお、世界の米国
以外がもつ外貨準備は$7兆(630兆円:09年)です。その65%(37
0兆円)が、米ドルの価値を支えている、世界から米国への「貸付
」です。

1930年には、世界は大恐慌に陥った。

(世界恐慌は、結果として、1939年からの第二次世界大戦を生みま
す。これは、原油資源と植民地の争奪戦でした。)

(注)歴史は、約80年サイクルで繰り返しています。上記のグリー
スパンの論は、あたかも、現在を見ているかのようです。

【重要】
(1)多くのエコノミストは、金本位制が信用の崩壊と不足を生ん
で、世界大不況を招いたと言う。もし英国が金本位でなかったら、
ポンドの金交換停止(1931年)が、世界の銀行を破綻させることは
なかったというのが、その論拠である。

●しかし、世界恐慌の犯人として、本来非難すべきは、米国FRB
が1913年以降にとった、「ゴールドとペーパーマネーの混合的な金
本位制」である。金本位に責任があるわけではない。

金本位制は、政府赤字が必要になる「福祉国家」と両立しないとも
言う。これも誤っている。

●経済の小難しい用語の仮面を剥(は)いで言えば、福祉国家は、
富裕者及び利益を上げる企業からの税を、社会福祉の費用に宛てる
ことでのみ成立する。

しかし、選挙制の民主国では、高い税が嫌われる。政府与党は政権
にとどまるために、税を安めにしなければならない。

このため、政府の財源は常に不足気味で、赤字になる。足りないお
金を借りねばならない。これが国債の発行である。(注)これがF
RBのペーパーマネーの増刷になる。

金本位制の下では、その国の経済が使うことのできる信用の総量は
、物的な資産に限定される。そのため、貨幣の裏付けとして物的な
資産がある。これが通貨の価値(預金の価値)を守る。

●しかし政府の債務(国債:ペーパーマネー)には、物的な財の裏
付けはない。政府の信用は、「将来の増税」に依存するしかない。
政府借入の増加は、国民経済の負担になる。

銀行に預金をし、国債を買った国民や民間企業は、その裏付けとし
て実物資産があると思っている。

しかし実際は、その裏付けがない。帰結は、通貨の膨張による物価
の上昇、つまり、マネーの価値の下落である。

(注)10年前の1万ドルが、10年後には、数千ドルの購買力しかな
くなる。これを貨幣錯覚(ケインズの用語)という。

マネーの総量の増加が経済成長より高ければ、その分、物価が上が
って、マネーの価値(購買力)は下がる。

以上が、金本位制を非難する正統派エコノミストたちへ向ける、み
すぼらしい真実である。政府の赤字は、経済の富への信頼の破壊で
しかない。他方、金本位制は、国民の財への権利を守る。

このことを知っていれば、なぜ政府系のエコノミスト達が、マネー
発行に限界がある金本位制に反対するか、誰でも容易に分かるはず
である。(以上で抄訳の終わり。グリーンスパンの『ゴールドと経
済的自由(1966年)』)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

グリーンスパンは、学者であった1966年には、ペーパーマネーを発
行するFRBの有効性を否定していました。それが後に、FRBの
議長になり、世界からマネーを集め(ドル買いを誘い)、米国の株
と不動産バブルを作った。

そして今、住宅バブル崩壊は、自分の責任ではないと言う。
立場で発言を変える信用できない人であることが了解できます。

【補注】
国債発行による政府の需要の増加策(公共投資や福祉費用)は、ケ
インズが前提にした1国経済の、短期(最長で数年)では有効です

(有効需要論)

しかし、
(1)長期に政府赤字を続けること、
(2)及び国際資本移動が自由な現在では、有効でないことは「マ
ンデル・フレミングモデル」で証明されています。その趣旨は以下
です。

【マンデル・フレミングモデル】
巨額国債を発行し続ければ金利が上がって、民間投資が抑制される
。金利を上げないよう、中央銀行がマネーを増刷(=国債引き受け
または購入)すれば、低い金利を嫌い、その国から金利の高い国に
向かい資本の流出が起こる。

そのためいずれにせよ、実質金利が上がって、経済は浮揚しない。
事実、日本は、ゼロ金利でもマネーが海外流出したので、国内k得
経済は浮上していない。

(注)わが国の、1997年からの10年間のゼロ金利と政府赤字(国債
発行)が、610兆円(2007年末)の米国へのマネー流失(対外負債
を引いた純額では250兆円)になったことを思えば、マンデル・フ
レミングモデルは正しい。

経済対策のためゼロ金利を敷いた日本の円が、ドル証券買いへと25
0兆円も対外流失したからです。そのため、政府のゼロ金利とうい
う異例の金融政策でも、GDPは増えていません。

逆に、2007年には、610兆円もあったわが国の対外債権(主はドル
証券)は、2008年~2009年のドル下落と証券下落で、現在、91兆円
もの損を蒙っています。
http://www.mof.go.jp/houkoku/20_g.htm

わが国から、相対的に金利の高いドルに交換され流出したマネーは
、米国の金融を過度に緩め、(1)レバレッジ(信用借り)による
株価高騰と、(2)証券化金融での不動産バブル、(3)資源価格の
高騰を生んでいました。

これは、1927年から1928年の、金利の低い米国(対英資本輸出)と
、英国(米国からの資本輸入)のバブルに瓜二つです。

そして日銀が、2006年の4月~6月に、突然、30兆円のマネーを絞っ
たこと(量的緩和の停止=国債売り)も、米国の住宅価格下落に引
き金を引いています。

実は、2006年6月から、米国の住宅価格は下落に入ったのです。こ
れも、1929年の、米国FRBの金融の引き締めと、全く同じです。

【2009年3月からの世界の株価上昇】
09年3月からの世界の株価上昇(20%~40%)は、今度は、FRBが、
08年9月以降、緊急にゼロ金利策を敷いて、金融機関に数百兆円の
ゼロ金利マネーを貸し付けたものが、世界の株買いにキャリートレ
ードされたものです。

キャリートレードは、低い金利の通貨を借り、高い金利、または利
回りの通貨やその国の株、及び値上がりが期待できる資源・ゴール
ド等に投機することです。ある国がゼロ金利にすれば、当然にこれ
が起こる。マンデル・フレミングモデルは、これを明らかにしてい
ます。

自由に負債性のマネーを発行できる機関(中央銀行)は,貨幣の価
値の維持には害です。ほぼ必ず、現在の米国大手銀行のように、大
規模なモラルハザード(金融倫理の障害)を起こす。幹部の巨額ボ
ーナスや、大規模なインサイダー取引がこれです。

ペーパーマネーの過剰発行は、経済にとっては、偽札造りと変わら
ない。しかし、裏付けのない偽札ならまだいい。人が信用しないか
らです。政府が発行すると信用されるから、困ることにもなる。

これに、政府や日銀は、まったく反論ができないはずです。

■6.ゴールドはどうなった? そしてどうなる?

有史以来のゴールドの総産出量は、15.5万トン(約465兆円:1グラ
ム3000円換算)とされていることは前述しました。
(注)現在の年間産出量2500トンの、約60年分の蓄積です。

現在の1グラム当たりの価格は、3199円(09年11月2日)です。戦後
のハイパーインフレが収まった1948年は、1グラムが320円でした。
60年で10倍に上がっています。円ベースでは、1年3.9%(複利)で
の上昇です。

ゴールドバーは、それ自体では、証券のような金利を生みません。
しかし長期で見れば「妥当な金利」を複利で生んでいます。つまり
、「金融資産」としての価値を保持しています。

米ドルで見れば約30倍の価格に高騰です。1年で5.8%の利回り(複
利)です。これは、円に対するドルの、3分の1への減価も示すもの
です。

問題は、2000年代で約3倍(1000円から3000円水準)になったゴー
ルド価格が、今後さらに上げるのかどうかです。

結論は、容易です。

●基軸通貨の米ドルが、今後も巨額赤字(1年100兆円規模)を続け
るなら、ゴールドは、短期の波動はあっても、「長期的」には上が
る。

グリーンスパンの小論も参照し、これが言えます。2008年の3倍以
上に、膨らんだ米国の現在の財政赤字($1.2兆:110兆円相当)は
いつ止むのかです。(注)米政府予想の財政赤字は$1.2兆ですが
、実態では、すでに$2兆以上に膨らんでいはずです。戦費を100兆
円(実質)、医療費を1年200兆円(わが国は34兆円)も使う国の財
政が、黒字に転嫁するわけはないでしょう。

【解くべき疑問】
ここで解かねばならない疑問があります。各国の政府赤字は、続い
ていた。しかし、1980年に過去のピークを付けた金価格は、1980年
代~1990年代の20年間も、下がっていたのです。不思議です。

解くべき問題は、<バーレビ国王が追放されたイラン革命の1980年
(第二次オイルショック)に、1グラムで$27.4(当時の円で6495
円)をつけた後、2001年の$8.2まで約20年も下げたのか>です。

その間も、米国は、今よりは小額でも、ずっと赤字だったのです。
その時1ドルは220円(1980年)でした。

1980年の金価格は、ピークで1グラムが6495円でした。今の約2倍で
す。2002年には、円では1014円(ボトム)にまで下げています

1990年代から2002年まで、世界では、ゴールドの時代は終わった、
株だとも言われた。この意味を、解明せねばならない。以下に、価
格データだけを示します。(田中貴金属)
http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/y-gold.php

【年間平均価格:1グラム】  【米ドルレート:平均】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1971年(ニクソンショック以前)は公定価格$1(360円)
1973年   $ 3.1   968円     269円
1980年   $19.7  4499円     228円
1985年   $10.2  2490円     239円
1990年   $13.6  1826円     145円
1995年   $12.8  1209円      96円
2000年   $ 9.0  1014円     108円
2005年   $14.3  1619円     111円
2008年8月 $30.1  3249円     108円
2009年11月 $35.5  3199円      90円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上記を見れば、1980年($19.7)から2000年($9.0)まで、金価
格は半分に下がっています。政府が通貨を増発すれば金は上がる傾
向を示すはずです。

なぜこんなに、奇妙な、解釈に困る値動きだったか?米国政府の、
ゴールドを下げる政策が絡んでいます。

いずれ、また、下がるのか。あるいは、数年や5年単位で見た時、
今の2倍の6000円や3倍の9000円に上がるのか? 次号で検討します

(注)金価格はドル価格で見るほうがわかりやすい。ゴールドも、
原油と同じく、ドル価格が市場で決まり、しかる後に、円に換算さ
れるからです。

see you soon!

【後記】
ゴールドには、価値に二面性があります。

〔一面〕原油と同様に、商品として宝飾や工業に使われて消費され
る面です。この「商品的な側面」は、ファンドによる投機の仮需が
はがれると、生産の供給量と実需量に合致して下落します。

〔二面〕ゴールドが特殊なのは、「価値保存の機能」です。マネー
の代わりにそれ自体として増加保有され、マネーとしてどこでも流
通します。

次稿では、わからない将来を、予見できる材料を探します。

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原則、経済、金融等のテーマを原理からまとめ、明快に解き、週1
回お届けしています。最近号の、一部の、目次は以下です。

  <454号:60年のドル基軸通貨体制の崩壊が近い>
        2009年10月21日分

【目次】
1.グローバル経済が高めた米ドルの価値
2.2009年の変化
3.原油・資源輸出国が、ドル以外での決済を検討
4.ドル・キャリー・トレードがドル安で利益を得る

  <455号:流通業経営の本質課題の発見と解決法>
      2009年10月28日
【目次】
1.現象は準恐慌
2.小売業の設備生産性と人的生産性:代表イオン・IY堂
4.生産性を高めてきたニトリとユニクロ
5.今後の小売業に共通な本質課題は、人的生産性を、現在より50%
上げること
6.人的生産性の低さを示す1人当たり管理売場面積
7.すこし専門的なところに入ります:商品作業の過程と作業量です

8.問題解決シートを使う:これこそが、マネジメント
【後記】定量発注法

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