質問への回答集 22年10月号
This is my site Written by admin on 2022年10月10日 – 12:00
毎回、質問をいただいています。可能な限り、回答していますが、漏
れもあります。1通の質問の背景に、約100名の同じ問い合わせがある
でしょう。本稿は共通性が高いと判断されるものの、22年10月の回答
集です。考えかたの参考にしてください。

・本稿は、有料版・無料版に共通な増刊号とします。

現在、2022年冬から23年初頭の株価や債券価格については、予想が大
きく分かれています。何によって分かれるのか。

いろんな記事に当ると、およそ以下でした。現在の世界経済・金融に
ついての、もっとも大きな見方が分かれています。予想おいて重要な
追求点は、その根拠の適否です。

▼(1)市場のおよそ60%の認識:

株価や債券価格について、下落は「調整的」だ。23年初頭からは底打
ちして上がるという見方があります。

 この見解をとる人々は、米国の物価上昇率は8%台から下がってい
く。コロナ・パンデミックで低下していた労働参加率が回復して、失
業率は上がる。FRBは、「不況下の物価高」を認識するようになり、
22年11月、12月(または23年3月)からは、利上げの幅を1回0.75%か
ら、0.5%か0.25%に下げていく。(注)FOMCは1年に7回開かれます。

利上げ幅の縮小とともに、年初来25%(S&P500)下げている株式市場は
底打ちし、回復に向かう。(注)40%下げくらいから、米国金融危機
でしょう。

外為相場でも、ドル/円は145円の円安を頂点にして、140円、130円の
円高方向に向かう。これが、一つ目の見方です。

▼(2)二番目の見方:市場の約40%による(1)と反対の認識

世界は2023年央ころからの金融危機に向かっている。確率は70%か。

FRBは、生鮮食品を除くコア物価が、インフレ目標の2%台に下がるま
で利上げを緩めない。
 22年8月のCPIは8.3%上昇だが、FRBが金融政策に参照しているコア
物価は、6.3%の上昇である。あと4ポイント(%)、物価を下げる必
要がある。

2022年冬(11月、12月)は、9月と同じ0.75ポイントの利上げだろう。

FRBは、20年4月からの財政出動1.9兆ドル(266兆円の追加予算)で発
生した
1)コロナ金融バブル(S&P500が1.5倍)と、
2)年20%も上がってきた住宅価格バブル」の退治を行う予定だろう。

米国株価は、短期で上がっても、下がる傾向を続ける。
年20%上ってきた米国の住宅価格も、住宅ローン金利が6.7%上がる
2022年冬からは、ピークアウトする。
 金利が6.7%になると、ローンの返済と利払いが約40%も増えるか
らである。

一方で日銀は、CPIが3%に上昇しても(22年8月が3.0%、生鮮を除く
コア物価でも2.8%)、23年3月の黒田総裁の任期まではゼロ金利を続
ける。
 現在は3%の日米金利差が4%台に上がり、「ドル/円」は150円に近
づくときがあるかもしれない。

2022年の年初からマイナス25%のS&P500が、マイナス40%に下がるこ
ろから、「米国・欧州→中国とドル建て負債が大きな新興国→日本」
の順序で、金融危機になっていく(70%の確率)。

金融危機になるかどうかは、
1)米国FRBのインフレの認識がそれくらい深刻か、
1)インフレ対策として、どの程度利上げをするかにかかっている。

日本では異次元緩和をしても、平均賃金の上昇がなく需要は増えなか
ったので、インフレにはならなかった。

米国では、コロナ後に、
1)財政支出の1.9兆ドル(266兆円)増加から、
2)時間給が5%から6%上がり、
3)失業率は完全雇用の3.5%に下がって、
4)株価以上に住宅価格も年20%も上がって、
5)ドル価値の下落であるインフレが構造化している。

失業が増えて時間給の上昇が止まり、住宅価格が下落に向かわないと、
米国のコア物価インフレの6.3%は下がらない。失業率が下がっても
賃金が上がらない日本と違い、米国では労働需給状況がすぐに賃金に
波及する。

            *

当方は、(2)の見方をしています。動学的不均衡の予想ですから、
確率的です。あなたは、どちらでしょうか。

実力が伯仲しているスポーツの勝敗を当てるとき、技術要素、試合の
ときの精神、コンディションなどを変数にして、直感的な多変量解析
をして判断しますが、経済・金融の予想も、これと同じです。仮に
「Aが勝つ」としても100%ではなく70%や80%の確率です。

もう一点、世界のヘッジファンドの、年初来の運用利益(1月から9
月)を示します。
              平均利回り(主な分布領域)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1)エクイティヘッジ10種   平均 -9% (-5%~-15%)
2)イベントドリブン7種    平均 -7% (-4%~-13%)
3)マクロ 7種       平均+15% (+8%~+25%)
4)リラティブ・バリュー7種  平均-0.8%(-3%~+4%)
5)ファンドオブファンド4種  平均-2%  (-7%~+5%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
https://www.hfr.com/indices

以上のように、25%下がった株式中心のファンドの、9か月の運用結
果の平均は-9%と-7%です。個人や機関投資家の委託投資が、解約に
なる寸前の数値でしょう。

解約申し込みから45日後が解約日になり、ヘッジファンドは現金を償
還しなければならない。

◎22年10月から12月に利益がないと、2023年の年初はヘッジファンド
解約が激増するでしょう。株価にとっては、ヘッジファンドからの売
りが増え、大きなマイナス要素になります。

一方、国債を含む債券や金利が中心のマクロの運用損は、大きくない。
1)2022年は、金利上昇の予想がしやすかったこと、
2)株から債券への投資マネーの移動が起こったことを示します。

国債価格の下落(金利の上昇)でも、金利変化の予想がつけば、ヘッ
ジファンドが多用する先物やオプションの売りから、投資利益を上げ
ることはできるのです。

投資信託であるヘッジファンド利益は、普通の時期は、5%~15%/年
です。

ところが現状は、6000本のヘッジファンドにとって、下落のヘッジ
(1.カラ売り、2.先物売り、3.プットオプション、4.デリバティブの
買い)をしても、厳しい年度だったことを示します。
(HFR:ヘッジファンド・リサーチ)

2022年の年初来のマイナスと、低い運用利益の9か月の結果は、
・投資家からの投資の引き揚げ(=ヘッジファンドからの株の売り)
が起こり、
・現金化される要素になって行きます。

2023年の利益見通しも、芳しくない。第三四半期のヘッジファンドの
運用結果は、株のショート、つまり売りの超過を示し、2023年の株式
市場への不調も示しています。預託投資額が減るからです。ヘッジフ
ァンドとインデックス・ファンドは、世界の2大投資家です。短期売
買なので、世界の金融商品の、売買の40%以上を占めているでしょう。
 世界のマネーが集まるウォール街のヘッジファンドとインデック
ス・ファンド、そして投資銀行が世界市場を先導しています。

株価が上がる時期は、ヘッジファンドやインデックス・ファンドへの
顧客からの投資預託金が増えますが、逆のときは減ります。

ヘッジファンドの投資によって、上がるときは市場の上昇率を上げ、
下がるときは、市場の下落率が上がります。

ヘッジファンドによる売買は、個人投資家の売買に1週から4週は先行
しています。

以下は、質問とその回答です。オリジナルの内容を簡略化し、一般化
しています。

■1.質問(1)

最初は、若干高度な質問からです。「英国年金危機は、なぜ低い金利
の英国債を負債で大量に買っていたのか」というものです。(投資家
からの質問)

【回答】
危機の英国年金ファンドが行っていたのは、
(1)短期金利を長期金利に交換する金利スワップと、
(2)レポ金融(短期負債)でレバレッジをかけた、国債買いです。

(注)金利スワップとデリバティブ全体の仕組みについては、10月2
日(日曜)発行の、増刊号を参照してください。

いずれも、
1)レバレッジ(負債)の低金利の中では、運用の相対的な高金利に
なりますが、
2)インフレ対応で金利が上がると、破産するリスクの高いポートフ
ォリオです。

◎ファンドマネジャーは、おそらく英国の金利上昇を予想していなか
った。(意識の冷えカエル現象でしょう)

1)国債を、相手銀行に担保として差し出し(=レポ金融では、買い
戻し条件付きの国債の売り)、
2)オーバーナイト金利がほぼゼロの短期マネー(期限はおよそ2週
間)を借りて、金利1%~2%の国債を買うことです。

ヘッジファンドがゼロ~マイナスの短期金利の円を借りて、3%から
4%の金利のドル債で運用するキャリートレードと同じです。

レポ金融の金利と、国債との金利差の1%から2%が年金基金の利益で
す。

英国年金基金のように、レポ金融に短期借り入れで、買う国債を、幾
重にも積み上げると、国債の1%の利益は、何倍にも大きくなります。
(注)負債で買った国債をまた担保に入れて借り、新たな国債を買う
ことを繰り返す。つまりレバレッジ投資を大きく上げる。

一方では、レポ金融で借りる短期金利上昇のリスクが、拡大します。
中央銀行がインフレを認識したとき、上げるのは、短期金利です。

既発国債の固定金利は低いままであり、利上げがあると、価格(市場
の時価)が急落します。

長期債は1%の金利上昇につき、7%から8%も価格が下がります。2%
の金利上昇なら14%から16%下がり、金融危機になって行きます。銀
行は、国債をもっとも大きな資産にしているからです。

英国では、8.3%の米国より高い10%のインフレ(22年8月)になって
います。2023年の英国インフレは、輸入物価を上げるポンド安のため、
もっと高くなります(推計13%から15%)

米国では、年初来20%のドル高が、インフレを3%くらい緩和してい
ます。しかし英国ポンドは、ドルとは逆に大きく下がっているので、
インフレを3%は加速させる要素になっているのです。
 ↓
英国のインフレ率は8%台の米国より、ポンド安の分(6%)、高くな
ります。「米国インフレ+6%」になっていくでしょう。

英国年金基金では、
(1)金利の上昇で、保有国債の時価が下がって、
(2)レポ金融の金利上昇、この2つで、マージンコールがいるように
なって、とっさに出すべきマネーがなく、危機になったのです。

◎リーマン危機と同じ、レポ金融の証拠金の危機です。

22年9月末の年金危機に驚いた英国中央銀行(トラス新政権)が、そ
の国債を、緊急に買い上げて、年金基金にマネーを提供し、一時的に
ですが・・・、英国年金の破産危機を、収めています。

公的年金基金の危機は、政府の財政危機と同義です。

22年冬の、英国の11%のインフレで、更にポンドが下がり、金利が上
がると、再び年金基金は危機になります。2023年には。ポンド安の影
響が、輸入物価上昇として遅れて現れる英国のインフレは、13%から
15%に上がっていくでしょう。

年金基金の、まだ返済していないレポ金融の残高は多額です。
銀行の負債と運用の金額は、原理的に同じです。
B/S(貸借対照表)から、負債=資産、負債=資産運用です。

寒い冬のエネルギー・資源価格で、ロシアが、英国の命運を握ってい
ます。中東も、下がった原油を上げるため200万バーレル/日の減産を
決定しました。最大の産油国サウジは、原油が80ドル以下に下がると、
放漫財政が赤字になるからです。

レポ金融の解消(=返済)とは、国債の売りです。最も大きく国債を
もつ年金基金がこれを行うと、英国債が下がり、金利が上がって、ポ
ンド安になるので、これは、行えない。

◎英国年金基金は、危機になっても押すことも引くこともできない。
何もできず、大英銀行に依存しかない。

以上の事態は、高騰したCDSの満期(普通は5年)の保険金支払い
ができなかったリーマンと同じです。死亡率が、2倍、3倍に高まった
ときの生保と同じです。

■2.質問(2)

家(中古、古民家等)を購入したいのですが、金融危機前に購入する方
が良いのでしょうか? 現在の賃貸は、家賃や維持費の値上がりリス
クを懸念しています。

金融危機、金融封鎖、財産税になった場合、資産の没収や、財産税等
は、どうなるのでしょうか?(主婦からの質問)

【回答】
価格の値上がり期待での買いでないなら、金融危機の前に、長期固定
金利の住宅ローンで買うことをお薦めします。変動金利は、目先は金
利が安いですが、長期では、金利上昇のリスクがあります。

値上がり期待で買うのなら、買うべき時期ではありません。

原理的には、「長期固定金利=短期変動金利+金利変動のリスク」で
す。生活の基礎の住宅購入では、目先の変動金利が0.7%台と低くて
も、未来の金利上昇リスクを負うべきではありません。

米国では住宅ローンの金利が、2021年は3%台でしたが、22年9月は6.
7%です。住宅ローンの支払額が30%以上上がっています。

6.7%のローン金利は、リーマン危機のときのように、住宅購入が減
って、
・2023年の半ばころから、年20%も上がってきた米国住宅価格が下が
ること、
・米国のノンリコース(非遡及型)の住宅ローン不良化の増加を示し
ています。

■3.質問(3)

米国の9月の失業率が下がったという発表があったのに、株は下がり
ました。なぜでしょう。

失業率の低下は、企業の業績の良さであり、普通、株価は上がると思
うのですが・・・(企業経営者からの質問)

【回答】
22年9月の米国失業率は、8月の3.7%から3.5%に低下し、非農業部門
の雇用数は1ヶ月で26.3万人増えました。米国企業の雇用が好調であ
ることを示します。雇用の好調は、企業売上の好調です。

ところが、10月1週のNYダウは約1000ドル(3%)下げ、S&P500も同じ
率、下げています。雇用とは逆の動きが起こったのです。

理由は、米国人投資家が、「9月の0.75%仕上げによる米国景気(=
企業業績)の低下を予想し、失業率の上昇からFRBは、2022年11月、
12月の利上げ幅を0.5%に下げる」と、逆に見て株を買っていたから
です。

ところが、直近の9月の、米国失業率が低くなると、FRBは、インフレ
を抑えるため、22年11月、12月の利上げを0.75%にするかもしれない。
3.25%から4%台に金利が上がると、株価は下がるという逆の期待に
転じて、10月1週の市場で、売りが超過したのです。

これは「逆転したおかしな動き」です。「企業業績より、FRBの金融
政策で株価が動いている」というバブル期の特徴を示すものです。

◎米国のファンドと投資家も、本音では、米国株と、住宅価格のバブ
ルを認識していると思えます。これが、10月の1週にわかったことで
しょう。バブル期には、経済の好材料が、金利上昇のリスクに見なさ
れるのです。

米国と世界の株価と住宅価格が、コロナ。パンデミックで景気が低下
したあとのゼロ金利と、マネー増刷(4兆ドル:560兆円)の、二度と
ない異常な金融政策で上がってきらからです。

住宅価格の20%上昇は、米国物価の上昇の原因でもあります。米国で
は、住宅を買うとき、車、耐久財の家具インテリアも買う生活習慣が
あるからです。米国人が住宅で重視するのは、建物の躯体より、その
内部のインテリアです。住宅価格と賃金が下がらないと、エネルギー
価格が下がっても、米国の物価は下がりません。

FRBは、コア物価を2%台に戻すとい言って、本当は
・失業率の4%台への上昇、
・賃金上昇率の2%台への低下、
・住宅価格の下落までを狙っているように、見えます。

2022年の利上げは、金融引き締めによる、1)景気の低下、2)世帯所
得の上昇率の低下、3)世帯の住宅価格の低下政策なので、FRBのパウ
エル議長は、表では言えない。単にインフレ対策としています。

20年3月暴落のあとの、コロナ後の米国の株価上昇、住宅価格上昇は、
「経済が好調だから上がったもの」ではない。超金融緩和によって上
がった、人為的なものです。
↓
逆の金融引き締めに転じると、リーマン危機と同じように住宅価格バ
ブルの崩壊から、金融危機に至ることもあるでしょう。伸び切ったが
ゴムが、臨界点で切れるような現象です。

週末のNYダウは1日で2.1%、ナスダックは3.8%、S&P500は2.8%も下
げています(22年10月9日)。WTI原油は、中東の減産通告から5.37%
急騰し1バーレルが93.2ドルに上がりました。円からは見えないドル
の金価格は、金利上昇から1.1%下げています。

10月9日の米国の短期金利(二年債)は4.3%、10年債は、先行きの不
況を示す逆イールドの3.8%、30年債も3.8%です。

長期金利が短期金利より0.5%も低い現象は、設備投資の長期資金の
借り入れ需要が少ないことを示します。
↓
21年冬から23年春の、米国不況を示唆しています。普通は短期金利が
3.8%なら、長期金利は5%でしょう。FRBは、先行き不況の中、逆に、
利上げをするのです。

あらゆる商品に使う半導体の価格が、1日で6%下がったことも、世界
の生産不況を示しています。半導体の高値は、2022年1月の4000ドル
でした。現在、2500ドルです(-37%)。
これが、株価の先行きを示すものかもしれません。

現在は、2023年不況に向かう中での、物価高でしょう。

■4.質問4

資産三分法を実践しているおかげで、円安のリスクヘッジができて資
産も増えています。とても感謝しています。

クレディ・スイスが危機や破産になっても、スイスフランに大きな影
響がないのではないかというのは どう考えたら良いのでしょうか?

クレディ・スイスについて、倒産するという話と、倒産しないという
話の両方が出ています。クレディ・スイスは倒産するでしょうか。倒
産した場合、スイスフランへの影響はどうでしょうか。(職業は不明
:男性からの質問)

【回答】
クレディ・スイスの総資産は7558億フラン(110兆円:1フラン146
円)です。多くの金融訴訟を抱え、株価は2017年12月の16フランから
4.4フランへと28%に下がっています。利益の減少からです。
https://www.bloomberg.co.jp/quote/CS:US

(注)知られていることですが、スイスでは投機的金融が多い。古く
から「チューリッヒの小鬼たち」という。チューリッヒ湖畔のカフェ
に行くと、パラソルのある戸外のテーブルで優雅にカフェオレ、クロ
ワッサン、チーズで歓談しています。
 多くがプライベートバンクのバンカーです。投資決定の仕事は短時
間で終わります。

クレディ・スイスの債務にかかったCDS(保険料)が2.75%に上がっ
て、リーマン危機の時期のクレディ・スイスのCDSより上がったこと
から、倒産の噂が出ました。CDSは第三者が掛けて、転売ができる債
務保証保険です。

クレディ・スイスのCDSの上昇は、クレディ・スイスの純資産の悪化
(Tier1自己資本の減少)を示します。手元の現金が減った企業のよ
うな状況です。

当方は、クレディ・スイスは破産しないと見ています。
理由は2つです。

1)破産に向かっているときの、CDSは30%、40%と高騰する。しかし、
クレディ・スイスのCDSが上がっても2.75%と低い。
 このCDSの料率は、格付けがBBのソフトバンクと同じである。 
 ソフトバンクの短期での破産がないように、クレディ・スイスの破
産もない。

2)クレディ・スイスはCoCo債を発行している。
 CoCo債は、発行銀行の株価が一定金額より下がってトリガーが発動
されると、強制的に、株式に転換する転換条件の社債です。
 日本語では偶発転換社債という(Contingent Convertible Bonds)。

このリスク条件のため、普通社債より金利は高い。
しかし株価が下がると、下がった株に転換されるものです。
株は社債と違って満期返済がない。リーマン危機のあと、金融機関の
破産を防ぐために、自己資本強化の債券として開発されたデリバティ
ブがCoco債です。

CoCo債のためクレディ・スイス側は、自社株価の暴落が破産の契機に
はならない。株価下落の損を受けるのは、普通社債より金利が高いと
してCoCo債を買った側の、銀行や機関投資家です。

金融の原理では、固定金利が高い債券はその高さの率分のリスクがあ
ります。この原理には、例外はない。例えば、高い金利のドルは。金
利が下がった時のドル安リスクを抱えています。

クレディ・スイスの破産は、まだわかってない巨大な隠れ含み損がな
い限りありません。

なお万一クレディ・スイスが破産しても、スイスフランの下落は短期
的と見ています。

◎経常収支が黒字のスイス中央銀行が、国債を買って金融機関にマ
ネー供給をする余力を、十二分に持っているからです。中央銀行が0.
75%金利を上げても、まだ長期金利は0.79%と低い。

クレディ・スイス倒産の噂は、ポンド安の英国シティが、FT紙等で、
CDSが2.75%に上がったとして、ばらまいたものでしょうか。
上がったCDSの売買利益があるからです。伝統があるFT紙はヘッジフ
ァンドの一般紙です。現在は日経新聞が株をもち、親会社です。

銀行の倒産の噂は、業界と政府ではぎりぎりの瞬間までタブーです。
預金をしている顧客からの信用が命である銀行は、噂で預金取り付け
が起こるからです。誰でも、自分の預金がなくなるのは嫌です。

スイスは加盟していませんが、ユーロ19か国では、銀行が破産した場
合、
1)政府が、預金者を救うベイル・アウトでなく、
2)株主と、低いペイオフ額以上は、預金者の負担になるベイル・イ
ンになるのが、公式のルールです。

しかし、伝統が古い欧州では、「前言取り消し」のルール変更も多い。
その時々で、世論と状況依存的な決定が行われる文化です。

【日本の官僚のご都合主義】
日本では、法は絶対ですが、政府は憲法のように文言は同まま、外圧
で解釈を変えます。財務省、経産省、日銀、厚労省は外圧を、自分の
権力に都合のいいように利用する官庁です。メディアも同じです。米
国の日本支配は、外圧で行われます。(注)中国は、外圧には激しく
反発します。

日本政府・日銀は、米国の手前、円高を目的にしてドル国債(1.1兆
ドル)は売れないという。これも、「官僚機構に内在化した外圧」で
す。米国への忖度(そんたく)の必要から、円預金が1500兆円の日本
人を損させるのか? 

米国からの外圧を、最近は中国からの外圧を自分の権力のように利用
する日本人官僚がいるからです(巣窟が外務省)。円を500兆円増刷
してドル買いを促進し、円安を招いたリフレ派も、外圧利用派でした。

酷く言えば、主人の第一順位を米国政府、第二順位を中国として、尻
尾を振る犬です。メディアも同じです。

「欧米では・・・」が枕言葉です。最近は、安倍、菅、岸田首相がよ
く使う「国際社会では・・・」。国際とは、どこの国のことか?

【個人の円預金の、最適ポートフォリオ】
たぶん当方だけが奨めている預金3分法は、円、スイスフラン、金を
1/3ずつ持つポートフォリオです。

ポートフォリオとはリスク分散の投資です。火星から地球を見れば、
対外負債が世界1大きな米ドルは、終わりに向かっているでしょう。

資産3分法では、長期保有のロングをします。短期の変化を気にせず
放っておけばいい。この三分法は、心の平安を買うものです。金を買
うと、この平安が分かります。年金、財政破産、株価下落、通貨下落
が気にならなくなります。

1)円預金100%は、世界の通貨に対する円安の損を受けます(2022年
にもっとも下がった通貨は円です)。卵を1つのカゴに盛ってしまう
投資が、100%の円預金です。外貨投資をしないという、受け身の投
資を円にしているのです。

2)経常収支が、構造的に世界1の赤字(年間1兆ドル)のドルの高騰
は、現在の、金利上昇の過程の、短期的なものと見ています(推計で
は23年6月まで)。「ドル/円」では、赤字のドルに対して、貿易収支
は、円安によって15兆円の赤字になっても、経常収支はまだ5兆円か
ら10兆円の黒字の円では、円高基調が自然です。
現在は、不自然なドル高でしょう。こうしら指摘も出てきました。

ドルと同じように上がって、しかし下がらないスイスフランのほうが
望ましい。スイスは対外純資産しかなく(米国のような純負債がな
い)、毎年の経常収支も黒字なので、ファンダメンタルズでは、スイ
スフラン安になる要素がない。

スイスフラン預金は、ときに、昭和・平成・令和の政府に反する三菱
UFJに口座を開設すれば行えます。なお、スイスフランには、円と同
じように金利はつきません。ドル預金と国債には高い金利が付きます。
本質は弱い通貨だからです。金利が高くてレートの均衡がとれている
通貨は弱い通貨です。

3)基軸通貨のドルが下落するとき、高騰するのが金です。ドルが高
いうちは、上がらない(現在)。世界の通貨に対するドルの実効レー
トが下がっていく時期になると、金は急騰するでしょう。金は、ドル
安のヘッジです。

以上の、リスクヘッジが効いたポートフォリオがこの3分法です。
世界の金融危機、財政危機のとき、一層有効になるでしょう。

金融危機は、まず、ポンド安の英国と、国債の残高がGDP比160%のイ
タリアで起こっています。日本はGDP比230%の国債で不名誉な世界1。
しかし3%になるインフレでも金利が上がっていないので、まだ危機
になっていない。

2023年中半ばから、米国住宅価格が、住宅ローン危機が起こっている
中国とともに下がると、米国金融危機の恐れが高まります。

【高騰した住宅価格の危機が迫る】
中国の住宅関連のGDP構成比は25%と高い。住宅ローンのデフォルト
が増え、躯体だけで工事が止まった鬼城が広がっています。中国では、
1年の住宅建設が1600万戸と桁外れに大きい(2021年:日本の16倍:
米国の10倍)。

住宅価格が下がり、ローンのデフォルトが増えると、銀行に不良債権
が増えて、社会主義金融であっても金融危機になります。中国では、
2013年をピークにして生産年齢人口数が下がり、住宅需要が増える要
素がなくなっています(中国では16歳から59歳:退職年齢は5歳低
い)。30代が住宅を買う年齢です。富裕者は二軒目、三軒目の投資住
宅。

世界で住宅価格が高い順は、1位香港、2位インドのムンバイ、3位北
京、4位上海、5位ロンドンです。いずれも金融危機予備軍。

■5.質問5

自国通貨で国債を発行している国には、財政破産はあり得ないとする
論があります。財務省のホームぺージにも載っていましたが、どう考
えたらいいのでしょうか(金融関係者からの多くの質問)。

【回答】
MMT(現代貨幣論)ですね。結論から言えば、MMTは、世界の外国為替
の国際金融を加えると、無効な論になります。

MMTが有効な理論なら英国の不況に対して、新任のトラス首相が表明
していたように減税をし、国債を発行して、英国中央銀行が買い取っ
てポンドを増発しドルやユーロを買えばいい。これは、3手の読みし
かない自滅です。

逆に金利を上げ、MMTとは逆に、ポンドの量を絞らねばならない。通
貨増発の有効性を言うMMTは、国際金融では無効です。国内だけの話
です。

ところが国際金融のない国内金融ない(鎖国の時代のみ)。
なぜリフレ派の政治家、エコノミストは、MMTを信じたのか? 不思
議です。イマジネーションの範囲が狭かったのか。

原因は、MMTは、短期の中央銀行会計(B/S)からの発想です。
↓
中央銀行の負債である通貨の増発(=信用創造)は、無コストででき
ると誤ったのです。通貨の価値下落ついて、インフレのときの、長期
的な視野をもたなかった。中央銀行が国債を買えば、統合政府で見た
政府の負債はなくなるとするのがMMTです。

政府の負債(国債)は、なくなるのではない。
中央銀行の国債買いにより、ゼロ金利の通貨に振り替わります。統合
政府の負債が、金利がある国債から、金利ゼロの通貨になるのです。

インフレになって、通貨がゼロ金利から3%くらいの金利が上がると、
日銀が国債を買って支えている日本の財政は、破産に向かいます。

(注)MMTは、インフレになれば金融を引き締めればいい(利上げと
国債売り)としていますが、日本には金融引き締めの利上げができな
い。日銀の国債売りも、金融引き締めですが、これを行うと金利は急
騰します。銀行が、日銀が売る低利の国債は買わないからです。0%
金利の円国債は、入札した直後に日銀が買うという暗黙の約束があっ
て、銀行に売れていたのです。

GDPの230%(1200兆円)の国債残がある日本では、インフレに対
して、日銀がわずか2%でも利上げすれば、政府財政が破産に向かう
ので、利上げができない。
円の利上げができない結果が、1ドル=145円の円安です。

現在、日銀は、短期国債はマイナス~0%、10年債の金利は、日銀が
0.25%に押さえています。

通貨の円は、ゼロ金利を続けています。2022年には、8%のインフレ
対応としてFRBが短期3.25%(20年代債の金利は4.0%)に上げた
ドルに対して、20%の円安(145円)に下がったのです。

ゼロ金利の通貨の信用創造により、GDPの増加率以上に通貨を増や
すと、増発された通貨の、1単位の価値は下がったと市場が認識しま
す。価値が下がった通貨は売られて、外為レートでは短期間に20%以
上の大きな低下となって現れます。

英国のポンドも、円と同じです。英国が通貨下落で危機になるのは、
対外純資産がなく純負債が8800億ドル(12.3兆円)だからです。

日本が輸入物価は50%上がっても20%の円安に耐えているのは、円安
で為替評価が増える、対外純資産が411兆円あるからです。
・英国は、対外負債の大きな純債務国、
・日本は、資産の大きな純債権国です。
https://www.ceicdata.com/ja/indicator/united-kingdom/external-debt

【後記】
臨時の増刊号は、ここまでとします。質問には、本稿で本格的に答え
ました。他の質問もありますが、回答集は、別の機会にします。
本稿は、有料版・無料版に共通とします。

日銀は頑(かたく)なに、低金利、他方FRBは、過去の3倍の1回0.75
%での利上げです。FRBの利上げは、物価の上昇、つまり本質的には、
リーマン危機のあとの13年で、8兆ドル(1120兆円)FRBが増発したド
ルの1単位の価値低下を懸念しているからです。

◎インフレの本質は、商品価格の高騰のかたちをとった通貨価値の低
下
です。モルトが、8兆ドル分の水割りで、薄くなったのです。水で割
ってドルの嵩が増えても、モルト(=通貨の本質的な価値)は増えま
せん。

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