金と基軸通貨:歴史的な展開と今後の予想(3)
This is my site Written by admin on 2018年9月21日 – 10:00
おはようございます。有料版の増刊の、前半部から8ページまでを
お届けします。先週、カナディアンロッキーの、大自然の中で書い
たものです。

            *
おはようございます。2回お送りした「金と基軸通貨」について、
質問が寄せられています。他の方々にも共通すると考え、増刊を発
刊し、認識を深めます。1つの感想の裏には、その100倍、数百倍の
同じものがあることは、経験から分かっています。

(1)まず、「基軸通貨」についてなぜ論考がマレなのか(あるい
はないのか)という点です。確かに、世界の経済問題の基礎に、こ
の問題があるのに、不思議なことです。

(2)二番目は、ドイツがなぜ、どんな方法でドル通貨圏から離脱
したのか、ということです。エッセー風に書きます。

■1.原理的な「基軸通貨論」がほとんど書かれない理由

▼通貨の信用論は見かけない

基軸通貨の前に、実は、通貨(マネー)が信用される根源について
の考察も少ない。経済学には、「ペーパーマネーの信用がどう得ら
れるかの論」はありません。

このため世界でもっとも信用の厚い通貨とされ、国際貿易で使われ
る基軸通貨論(米ドル論)もない。他の人が信用するから「信用す
る」というメビウスの輪のような循環論しかないのです。

【信用通貨(ペーパーマネー)の信用は、どこに由来するか】
1971年に、戦後の金交換制を離れたドルの信用の根源は、米国の財
政信用です。財政信用とは、政府の負債証券である国債の信用であ
り、国債の増発を促して国債の価格を下げる財政赤字は、将来は縮
小していくという期待です。

これを経済学風に言うと、国民からの負債である政府国債の信用と
は、
・国債の価値が、将来も下がらず(=高いインフレ率を招かず)、
約束した金利の支払いが行われ、
・額面の全額が10年後にも価値の変わらない通貨で償還されるとい
う将来への信頼のことです。

なお通貨の価値とは、商品の購買力です。インフレでは物価が上が
り、通貨の商品購買力が下がって通貨の価値が下がります。価格が
上がっても、商品の価値は同じだからです。通貨の価値が下がるの
がインフレ、上がるのがデフレです。

【財政信用は国債の信用であり、それが通貨の信用である】
政府の財政信用が高く、国債の信用も高い間(=金利が低い間)は、
通貨の増発ができます。しかし、国債の信用が低下した結果として、
金利が上がり(=既発国債の流通価格が下がって)、買えば損をす
るので引き受け手が減るという形で、国債の増発が難しくなると、
通貨の増発もできなくなります。

【信用が大きく低下した通貨の増刷はできない】
たとえば現在、トルコのリラ、アルゼンチンのペソ、ベネズエラの
ボリバルでは、政府が増発すれば、一層、通貨の価値が下がるので、
銀行と国民は、増加受けとりを拒否するでしょう。受け取られない
通貨の増発は、流通せず、無効です。このときは、価値を下げる自
国通貨を売って、ドルや他の外貨が買われるのです。

これらの国では、国債と通貨の増発が、通貨価値を一層下げるため
実行ができない。通貨が受け取りを拒否されたことの結果が、外為
市場での通貨暴落です。以上が、通貨信用がなくなった結果の、実
際の現象です。

わが国のリフレ論者には、国債と通貨の円は、無限に発行ができる
と言う人がいます。これは、浅薄な誤りです。

ただし、スイスと日本のインフレ率は、長期間、米国より低い。こ
のため、通貨信用では、「1.スイスフラン>2.円>3.米ドル>4.
ユーロ>5.人民元」の順です。インフレ率が1%台やそれ以下と低
いため、ゼロ金利での日銀の円増発は、まだ、問題にはなってはい
ません。

ユーロの通貨信用がドルより低いのは、財政赤字と対外債務の大き
なイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシアを抱え、ユーロが増
発されてきたからです。

2012年4月からのインフレを目的にする異次元緩和として、日銀が
約400貯円増発していても、円の通貨信用が高いのは、わが国の経
常収支が黒字であり、インフレも起こしていないからです。

更に言えば、米国の財政赤字から発行された米国債を1年に20兆円
くらいは増加買いをして、増発された円の国内流通を、米国に流し
た分、縮小させているからです。

そうだからと言って、円は将来にわたって、増加発行できるのでは
ない。

財政赤字がGDP比で年6.4%(約35兆円)と、世界1高い日本では、
・円の発行限界の前に、
・国債の発行限界が来るからです。

国債発行の限界は、「国民と企業の銀行負債を引いた純預金額付
近」であり、これは今、1200兆円付近でしょう。ただし、日本は、
米ドル基軸通貨の体制を支えるため、中国と一緒に、米国債を1年
に約20兆円買い増しているので、円国債の発行限界は、国民と銀
行・生保による円国債の買いだけのときより、早く来ます。

実際、金融資産の60%をもつ高齢者の預金が減る傾向になった
2010年代には、円国債が、発行限界に近づいています。

このことが、
(1)日銀が異次元緩和での国債買いを行い、
(2)2014年には消費税を3%上げて、景気を3年間悪化させること
を押しても、政府・財務省が、2019年10月からの消費税10%に固執
する原因です。

消費税を3%上げるときと上げたあと、「景気の低下はない」と、
政府は強く言っていましたが、2014年から15年の事実は、そうでは
なかった。増税後の物価は、上昇率が0%台に下がり、GDPの伸び率
は低下しています。

消費税の10%は、1年で約20兆円相当です。政府に、毎年確実に入
り、10年で200兆円、50年で1000兆円になる。所得税のようには変
動しないからです。

しかし、1000円に対して10%の、100円の消費税は計算がしやすい
ため、「心理的な価格上昇感は8%のときより大きい。これが3%の
上昇(2014年4月)より、景気を悪化させる原因でしょう。400万円
の自動車も、40万円になるからです。

政府は、+2%の消費税で、物価の2%上昇を果たすつもりでしょう。
消費税は物価に含まれるからです。政府が「給料の上げ3%」を企
業に提唱しているのは、2019年10月から、消費税の+2%が予定され
ているからです。労働者のための賃上げ関与ではない。

国債と通貨増発ができなくなることは、累積赤字で破産懸念のある
会社(=累積財政赤字が大きな国家)の手形が信用されず、発行も
できないことと同じです。

【通貨の増発限界は、どう訪れるか】
国家の場合、買いが減った国債の金利が、3か月の短期で7%以上に
高騰し(長期国債の価格は50%下落し)、同時に、買い手が減る通
貨は、1週間で30%くらいは暴落する形をとります。

外為市場では、東証やNYSEのようなまとめた市場はなく、外貨を売
買する、世界の、「外為取扱い銀行」の店頭が市場です。

国債と通貨の同時下落は、国債と通貨の受け取り(買い)が、国民
と銀行から、拒否されたことの結果の現象です。売れない商品の価
格が、売れるまで下がることと同じです。

通貨発行と同じように、企業の手形の発行は、手形で支払うことで
す。中央銀行の通貨発行とは、銀行に、買った債券(多くの場合国
債)の代金を振り込むことです。または銀行に貸し付けることです。

貸し付けることは、
・借主から貸付債権(=金利受け取りと元本回収の権利)を得る代
わりに、
・通貨を支払うことです(預金口座に、金額数字を振り込むこと)。

【もっとも信用が厚い通貨は米ドルとされている】
米ドルが、国境を越えてやりとりされる基軸通貨とされていること
は、世界の人々が、他国の国債より高い信用を、ドル国債に寄せて
いるということの結果です。

このドル基軸通貨の体制は、米国が海外に強制したものではない。
海外と銀行が、ドルを他の通貨より信用した結果です。

トルコリラ、アルゼンチンペソ、ベネズエラボリバルのように通貨
に寄せられる信用が低ければ、世界は、GDPの約20%(1600兆円/
年)の貿易に、米ドルを使うことはない。

外貨準備額を超える対外負債の大きさから、通貨信用を失った三国
は、逆に金利を上げて、自国の通貨(マネー)の流通量を減らさね
ばならない。

米国が利上げをし、英米系の金融機関やファンドがドルを米国に還
流させたことが、通貨の下落危機になったのは、対外負債が外貨準
備より大きくなっていたからです。もともとの原因は、上記3か国
の、経常収支の累積赤字の大きさです。米国の金融機関が、利益の
ため仕掛けたことではない。

【金と原油の年間生産量は、大きくは変わることができない】
金という担保から離れた信用通貨(ペーパーマネー)は、政府が任
意に増発でき、信用創造ができるため、任意の増発が行われて、通
貨価値の下落が起こります。

(注)金本位のときは、中央銀行が金を買うか、または金準備率を
下げて、通貨の増発をしていました。しかし、金準備率を下げると、
通貨の信用が低下し、外為市場では通貨の価値が下がるため、国際
的には、通貨増発の効果は、相殺されていたのです。

金は、採掘ができる埋蔵量があと5万トンしかないとされる希少資
源です。任意での増産はできず、世界の生産は年3300トンくらいで、
国債や通貨と違い、ほぼ一定なので価値を保っています。

金も、1年に9000トン生産できれば、供給ショックから1/3以下に下
がるでしょう。しかし、そのときは、可採限界が3倍早くなって、
5年後に迫るので暴落後の暴騰が、下落幅の何倍か大きくなるでし
ょう。

世界の海水には20億トンの金が含まれるとは言われますが、イオン
化(電子化)していて、1トンの海水に対してごく微量であり(1ト
ン当たり0.1μg)、採取コストが高く、実用にはなりません。1万
トンの海水を煮詰めて化学処理しても、最大1グラム(=価格は
4600円)しか取れないからです。

深い海底の地下に眠るかもしれない金は、試掘調査もできず、不明
です。ダイアモンドは合成できますが、金はまだできていません。
このため2014年からは、金価格をコントロールしたい米国FRBの肝
いりで、ペーパーゴールドである金ETF(金の上場投信)が開発さ
れ、上場されたのです。

【時間の少しのズレはあっても、金と同じ価格の動きをしてきた原
油】
原油の価格は、5年以上の長期で見ると、金に似ています。原油は
需要量より増産されれば、価格が下がりますが、電力のように、世
界の必要量はほぼ一定なので、減産されれば上がります。

ドルの価値下落が、原油高騰を生んだので、ドルの反通貨とされて
いる金も、1973年からは、原油とおよそ同じ率で金価格(約40倍)
が上がっています。1971年の金交換制停止のあと、原油と金は、ド
ルの反通貨として、同じ動きをしてきたのです。

【インフレは、通貨信用に対するハードル(または関門)である】
紙幣としての通貨は、金利のつかない手形と同じものですが、企業
の手形の信用は、国債の満期償還と同じように、期日には確実に決
済されるということです。政府は「通貨価値を下げるインフレを起
こさない」という国民の予想から、通貨信用を得ています。

インフレは、経済学では、物価の継続的な上昇とされていますが、
本当は、通貨の価値(商品購買力)の下落です。商品の価格が上が
っても、商品の価値が高くなったのではない。その価格を示す、通
貨の価値が下がることが、インフレです。

デフレは逆に、「通貨の量×回転率」が減少して、通貨の1単位価
値が上がり、商品価格が下がることです。通貨の価値は、商品価格
として見えるのです。

信用通貨の信用は、以上のような構造をもっています。ところ
が・・・基軸通貨そのものが何であるかを論じるエコノミストは、
現在に至るまで、ほとんどみかけません。

【意図的に、複雑にされてきた通貨発行の問題】
全米経済学協会長を務めたガルブレイスは、国民の側に立って、歴
史的に書いた『マネーはどこから来てどこへ行くのか(1975)』
(Money, Whence it came, where it went)で、次のように述べ
ています。通貨の本質を描いた、面白い内容ですが、なぜか邦訳は
ありません。米国でも話題にならなかった本です。私は米国アマゾ
ンの古書で入手しました。

「通貨発行の問題は、単純なことが、何らかの意図により、複雑に
されていることのひとつである」

【誰の意図かの、謎解き】
誰の意図か、なぜ政府または中央銀行の通貨発行の意味を、国民に
対して、ぼかす必要があるのか。

はっきりと言うと、意図の元は、米国FRBとその株主である米国系
の銀行のからのものであることです。

更には、米国の主要な大手銀行の株主であり、デルバンコ(イタリ
ア語でThe Bank(唯一の銀行))を通じた、BISの出資者であるロス
チャイルド家のものです。(注)BIS(外為取引の総元締めの国際
決済銀行)は、世界の中央銀行の上の中央銀行です。このBISにつ
いて論評するひとは、見かけませんね。

代理人のポール・ウォバーグを通じ、1913年の米国FRB作りに主導
者として参加し、英国の中央銀行である大英銀行にも資金を出して
いたロスチャイルド家は、家訓で、活動の痕跡が表にでることを禁
じています。

(注)FRBの資本が、米政府ではなく民間資本であることを知って
驚く人が多い。日銀は、財務省が55%出資しています。あとの45%
は不明です。明治15年の設立の時、日銀が持っていなかった金を貸
したロスチャイルドだと言う人も多い。日銀が発行した円は金本位
で金が必要だったからです。なお日銀法では、株主は、日銀の金融
政策に関与できないこととされています。総裁は政府が決めます。

このため、世界の誰かが事実を調べ、ロスチャイルド家の歴史的・
世界的な金融活動を書くと、「陰謀論であり、小説のように架空」
として、経済学界からも排斥する誘導がされてきました。

米国の政府系住宅金融(フレディマック)にいて、住宅ローン増発
のカラクリを経験していた中国人の宋鴻兵は、世界で150万部のベ
ストセラーになった『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナ
リオ(邦訳あり)』において、学会のタブーに踏み込んだ内容を書
いています。2007年には、中国に帰国しています。

彼が今、中国の金融制度にかかわっていれば、元の発行権をロスチ
ャイルド家に強奪されないよう、「中国の債務から来る金融危機の
あとの、2020年代の人民元の将来シナリオ(つまり元の金本位)」
を提唱し、作っているはずです。

1971年の金・ドル交換停止で普通のペーパーマネーになって、経常
収支の赤字のため下落したドルが、それ以前と変わらず、基軸通貨
を続けていることの条件が、アイマイにされているのも、
・通貨発行の問題が、意図的に煙に巻かれ、
・学者としての研究や論文には、有形無形の圧力がかかってきたこ
とと同じ根です。

■2.「ドイツは2000年の統一通貨ユーロ(19か国の共通通貨)の結
成によって、米ドル圏から離脱した」ことについて・・・(中略)

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