黄昏(たそがれ)を迎えた安倍政権
This is my site Written by admin on 2017年7月12日 – 12:00
こんにちは、吉田繁治です。無料版が途絶えたことをお詫びします。
毎週気になっていたのですが、締め切りのある目先の仕事にまぎれ
てしまいました。

総裁任期を9年に延長し、旭日昇天(きょくじつしょうてん)の勢
いを首相自らが誇っていた安倍政権が、最初は軽視していた森友と
加計学園の問題への対応から、奈落に駆けおりるように、支持を失
っています。

6月の都議選では、改選前の自民57を、23議席に減らしています都
民ファーストは50人の立候補で、49議席の大勝でした。

【大敗の原因】
公明党が連立している自民ではなく、都民ファーストと選挙協力を
したことが、転覆のもっとも大きな要素でした。

前回の衆院選(2014年11月)でも、自民党は、公明党の候補が少な
い小選挙区での、選挙協力によって291議席(475議席のうち61%)
を獲得していることが明らかになったのが、今回の都議選でした。
自民単独の支持率が、議席に反映していたわけではなかったのです。

【実際は38%】
連立で2/3の議席をとり、圧倒的支持に見えた2014年の衆院選でも、
公明党の約10%の票を入れた自民党候補の小選挙区での投票は48%
でした。単独では38%付近の得票だったでしょう。

自民党は、選挙に行く国民の100人のうち38人の支持で政権を得て
います。

森友、加計問題、そして金田法務大臣、稲田防衛大臣の無能さと失
言、そして豊田議員の「この、ハゲェー・・・」という偏執狂的な
暴言からも、急速に支持を失っています。

【29.9%という驚くべき結果】
時事通信が行った面接調査では、安倍政権の支持率は29.9%、不支
持が48.6%という結果でした(調査7月7日~10日と最新)

支持率が30%台の前半を割ると、政権継続の危機です。
特徴は2つです。
・不支持が48.6%で、支持29.9%の1.6倍も多いこと。
・理由として、「安倍首相の人柄が信用できない」と答えた人が
67.3%だったことです。信用できるは、11.5%でした。

【人柄への不信は、決定的なもの】
「人柄が信用を失った」とき、その信用が回復することは、ほとん
どありません。信用できないと答えたのに、女性が多いことも特徴
です。女性は、「いったん信用できなくなった人を、再度信用する
ことはマレ」という共通性格をもっていますね。


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        <890号:時事断章(2)>

   黄昏(たそがれ)の政権になった安倍政権
       2017年7月12日:有料版

【目次】
1.役人は、「立場」でしか答弁できないと役人は言う
2.インフレ目的に対しては間違った政策である異次元緩和が実行さ
れた理由
3.小選挙区でのポピュリズム権力の作られ方
4.閉会審査前の政権支持率(7月9日前後)

【後記】

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■1.役人は、「立場」でしか答弁できないと役人は言う

▼無意味だった閉会中審査

国会の閉会中審査では、加計学園の獣医学科の問題が、追求されま
した。TV中継を見て感じたのは、民進党の論理的な甘さと、役人の
『立場での嘘の答弁』を守り続ける姿勢です。

国会議員は、国政の調査権をもちます。資料の請求権もある。ただ
し、これは議員個人ではなく「委員会」を通じてのものです。委員
会では政府を形成している与党が絶対多数をもつので、政府に都合
の悪いことへは調査権が発揮されていません。そういう障害がある
にせよ、民進党の事前調査は甘い。週刊誌情報の域を出ていないの
です。官僚に対して劣る、議員の知力の問題でしょう。

【記憶にないの論理】
「文書には書いてあるが、それを言った記憶がない」という答弁に
対して・・・

「言った記憶がない」というのも記憶です。記憶がないのなら、
「言ったという事実」も否定できません。「言ったかもしれない」
ことにもなります。言わなかったということにもなる。

下世話な例ですが、「浮気した記憶がない」ということは、浮気の
否定ではありません。「ドロボーした記憶はない」もドロボーの否
定ではない。

それが役人の書いた文書やメールにあった場合の、「記憶にない」
は、「言ってはいない」という否定ではない。ここを、野党は追及
できていません。「記憶がない」が「言ったことはない」になり、
「関与はない」ということになっているのです。裁判なら文書とい
う物的証拠から、本人が否定しても、黒という判決になるでしょう。

安倍首相が明言したように、「一切の関与がない」と言うなら、記
憶があることになるからです。

▼おかれた立場でものを言うのが役人の務めと役人は言う

ある文部省幹部の言葉。「役人は、置かれた立場でものを言う。そ
れが役人というものです。文部省や内閣府の役人の答弁についてい
えば、「あれしかできない」のです。 

これについてはどうでしょうか。間違ったことも組織の意向に沿っ
て役人は仕事をするということの言明です。政府の役人のトップは、
首相です。

【自己統制】
役所にいる限り、「それが間違っていても、嘘でも」、首相の言う
ことに従うという立場の表明です。組織では、自分の「正義」はな
いということでもあります。事実上、「異論を許さない絶対王政」
です。

政権寄りの新聞では支持率が高いという安倍政権は、言論統制の絶
対王政になっていたのです。東大で上級公務員試験に合格してキャ
リア官僚を目指す人(433人と多い:2016年)、どう考えますか。

支持率の低かった民主党政権の末期には、消費税で、財務省の反乱
が起こっていましたが・・・野田政権は、その反乱に乗ったのです。

【ポピュリズムが与えた権力】
2000年代半ばころからの世界の政治で、共通に「ポピュリズム(国
民からの人気)」が権力を与える構造を作られています。「権力」
とは、不当なこと、あるいは相手が承服しないことでも、実行でき
る力です。

親は、子供を健やかに育てる義務があるということを背景にして、
子供に対しての権力をもちます。育児の放棄をした親には、子供に
対する権力はない。育児の義務を裏付けにして、子供が嫌がること
も強制できます。

政治家の権力とはなにか。「経済をよくする、国を発展させる、国
民の生活を豊かにするための政策を実行する」ということを義務に
した上での権力です。安倍政権には、政治家の義務と権力の、はき
違えが見えます。

その権力が、圧倒的な議員数(衆議院475名のうち自公で326名:
69%)を背景に、強弁と横暴になっています。

(注)自民が291名、公明が35名。野党の第一党の民進党は73名、
政権寄りの維新が41名。共産が21名、その他が14名です。

議員数は、小選挙区制(295名)と比例代表(180名)の合計です。

【1人区の圧勝の原因】
2014年の比例代表では、自公が94名、野党が86名と拮抗しています。
しかし1人区では、自公が232名(79%)で、野党は63名(21%)で
した。1人区では、48%の投票が落選候補の死に票になっています。

政権与党へのポピュリズム権力は、国民の支持(自民の得票率では、
過半数を割った48%)ではなく、
・1人区の小選挙区という選挙制度と、
・公明党の選挙協力が与えていたのです。

安倍首相は、小選挙区の圧倒的な議席から、「国民から圧倒的な支
持を得ている」と誤解している感じです。

■2.インフレ目的に対しては間違った政策である異次元緩和が実行
された理由

【日銀は、マネーサプライを増やすことはできない】
日銀にも、同じことがありました。白川方明 前総裁の時代には、
「日銀は、ベースマネー(現金+当座預金)は増やすことができる
が、マネーサプライ(企業と世帯の預金)は、直接に増やすことは
できない。」としていました。事実、日銀に口座をもつのは金融機
関(主は銀行)だけだからです。

【マネーサプライは、企業と世帯が銀行に預ける預金】
企業と世帯は、銀行にしか預金口座をもちません。銀行の負債であ
る預金総額(マネー・サプライ:M3)が増えるのは、銀行からの
貸付金の増加によってです。

これを「銀行の信用創造(Credit Creation)」ともいいます。

「クレジットは信用のもとの言葉」ですが、経済的な意味での信用
とは負債のことです。クレジット(=ローン)で買ったり、クレジ
ット・カードを使うことは、負債を増やすことです。

銀行は、貸付金の増加により、預金という負債を増やすので、「信
用創造」と言っています。バランスシートで言えば以下です。これ
が、銀行による信用創造です。

 【銀行の資産】       【銀行の負債】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
貸付金 1億円      預金口座への振り込み 1億円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ベースマネー(銀行が国債を売った代金を、日銀に預けている当座
預金)がいくら増えても、銀行の、企業と世帯への貸付金は増えず、
そのためマネーサプライ(日銀はマネーストックと言う)の増え方
は3%台でしかない(残高は1301兆円:17年6月:日銀統計)。

【異次元緩和は、マネーサプライを増やしていない】
この3%台は、異次元緩和前と変わらないのです。マネーサプライ
が年率で4%以上の増加にならないと、わが国ではインフレは起こ
りません。参考のために言えば、米国のマネーサプライ(ゆうちょ
はないのでM2)の増加は4.6%です。中国は激しく多く12%です(い
ずれも2017年の前年比)。マネーサプライの増加は、そのまま、銀
行の負債の増加です。

(注)M(マネーサプライの増加)×V(マネーが使われる速度:わ
が国では、毎年4%低下の傾向)=P(物価上昇率)×T(実質GDP増
加率)です。

【世帯は預金がふえなくなり、企業預金が増えた】
預金が使われる速度の低下は、大きくなった企業の預金の増加(過
剰流動性)のためです。世帯の預金増加は、2000年以降は減ってい
ます。代わりに、「減価償却費+税後利益」以内に設備投資を抑え
てきた企業預金が増えたのです。

2017年7月12日の、日銀当座預金は359兆円で、異次元緩和前
(2013年2月:43兆円)の8.3倍です。

【普通国債ほぼ50%を、日銀が買った】
銀行は、保有していた国債を4年で360兆円、日銀に売って、金利0.
1%とマイナス0.1%で日銀に預ける当座預金を359兆円に増やして
も、貸付金は増やしていません。

その結果が、マネーサプライの、過去からの自然的な3%台の増加
でしかないことです。結論は、「日銀は、国債を買って金融緩和を
することで、マネーサプライを増やすことはできない」。

異次元緩和でも、マネーサプライが増えなかった理由は、企業と世
帯が、GDPの増加率を0%から1%と低く見ていて、借入による設備
投資、住宅購入を増やしていないからです。

【貸付金】
お金を借りる必要があり、資金需要のある企業の多くは、経営が赤
字で危ない。回収に難があるから、貸すことはできない。潤沢な預
金をもち、利益を出している企業は、過去の借り入れを返済し、借
入金総額の増加による投資はしていないからです。銀行は、無理や
り貸し付けることはできないのです。

【発言の趣旨替え】
記者から「白川 前総裁は、『日銀はマネーサプライを増やすこと
はできない』と言っていましたが、この考えから趣旨替えしたので
すか」と問われ、日銀の幹部の答えは以下でした。

「社長が変わると、皆さんも、発言や仕事を変えるでしょう。われ
われも、総裁が変わると、総裁の意向に沿って、言うことと、行う
ことを変えます。」

ここから、経済理論的に誤っていた「異次元緩和」が始まったので
す。異次元緩和を現場で実行し、国債を買いつづけながら、長期債
の金利を0%に誘導している金融エリートとされる日銀職員は、
「間違っていても、政府とトップの意向だから」と、今日も実行し
ています。

情けないことですが、これが「立場でものをいう役人の本性」とい
う。

【無力な民進党と無残な支持率:8%(朝日・毎日)】
以上の事情を訊いて、どう思いますか。これが「お役人」。前川喜
平前次官に反して、文部省の官僚幹部は、「記憶にありません」と
繰り返すだけでした。野党は、そこから先の追求ができない。

時間はあったのに、反論の材料を集めていないからです。民進党が、
材料集めができないことを知っていたから、自民党が、閉会中審査
に応じたとも言えます。蓮舫氏の民進党はバカにされている感じを
受けます。

参考人に呼ばれた前川喜平氏(前文部省次官)は、「探すつもりな
ら、見つかるでしょう」とあっさり答弁していた書類です。次官は
官僚のトップです。

政府答弁では、「いかにうまく、嘘をつくか」が競われていました。

「記憶にない」という、責められる側に便利な答弁は、ロッキード
事件のとき参考人として国会に呼ばれた、国際興業の小佐野賢治氏
の発明です。田中角栄は、刎頸(ふんけい)の友と讃えていました。
刎頸とは、「その人のためなら、首を刎(は)ねられても悔いはな
い」という意味です。

強弁だったのは、財務省出身で内閣府特命大臣の山本幸三氏。一度
だけですが、ある人の紹介で、会ったことがあります。ブレスレッ
トと金のネックスレスと香水で、どこかの世界の人の感じを受けま
した。

会った当時より、TVで見る人相が、一層悪くなっています。山本幸
三氏は、自民党でもっとも過激な異次元緩和派であり、安倍首相に
政策を進講しています。

■3.小選挙区でのポピュリズム権力の作られ方

▼今回の事件での新しいところ

今回の事件で新しいことは、「政府の文書が出ても政府自身が内容
を完全否定した」ことです。過去にはなかったことです。

【安倍首相の錯覚】
安倍政権がこれを行った理由は、「安倍政権と自民党への国民の支
持率は高い」という思い込みからです。犯罪で言えば、物的な証拠
が出たのに、その証拠は正しいものではないと、根拠を示さず否定
したことと等しい。

人の頭の中は見ることができないので、脳が行わせる証言のみでは
なく、物的証拠が必要とされています。

審議会には、検事と弁護士の、反する主張の正しさを判断する裁判
官はいません。主張のし合いになるだけなので、「相手の言葉の、
論理的な矛盾の追求」しかない。民進党は「記憶がない」という主
張が含む矛盾を追及できなかったのです。

▼審判は選挙で国民がする

官僚の仕事は、文書をつくることです。プログラマーがプログラム
を書くように、官僚は文書を書きます。概念である言葉と数字だけ
が、政策の未来を表すことができるからです。政治家も、言葉で生
きています。政府は、その文書の内容を否定しました。

安倍政権に、政府の内部文書すら否定できると誇る権力を与えたの
は、国民の高い支持率でした。

【小選挙区という制度がもつ矛盾】
安倍政権が誕生後2年目(前回:14年12月)の、衆院選挙の小選挙
区での自民党の得票率は、48%でした。意外ですが、過半数ではな
かったのです。

しかし295の小選挙区での、議席の獲得は223で、76%でした。結果
は圧倒的な多数です。しかし得票率は、公明党の票約10%を入れて
も、48%と半分以下です。1人区では1人しか当選しない小選挙区制
でのイタズラです。

小選挙区制は、米国のように、政権に就く準備がある二大政党を前
提にして有効です。民進党(旧民主党)の自滅で、「自民+公明」
で衆議院の議席の2/3を占めることになってしまった。

落選した候補に投票された死に票は、自民の得票と同じ48%でした。

数人の当選が出る中選挙区制では、多数の死に票は出ません。得票
率をほぼ反映した議席の配分になります。

この中選挙区制から小選挙区制にしたのは、派閥による金権政治の
改革を唱えていた小沢一郎氏でした。中選挙区制では、田中角栄氏
のような派閥の領主が、議員にお金をばらまいていたからです。

【小選挙区制と政党助成金で、党の支配は強化された】
小選挙区では、派閥の領主に変わって、国が「政党助成金」を給付
する法を自民党が作っています。かつては党内政党だった派閥は弱
体化し、総裁と総裁が任命する幹事長が、議員を統制できる仕組み
になったのです。

総裁と幹事長が議員に配る、無税の政党助成金として、新しい「金
権政治」がつづいているのです。

2015年の自民党に対する政党助成金は、170億円でした。議員1人当
たりに換算すると5000万円に近く、議員歳費(1人平均2100万円)
よりはるかに多い。議員個人の歳費、および2000万円の秘書費、
1200万円の交通・文書費と合わせると、議員1名当たり1億300万円
になります。

政党助成金の枠は、国民1人当たり250円と決められています。総額
で315億円付近です。このため、「政治家は議員であることが目
的」になったのです。

【かつての政党だった派閥の弱体化】
派閥の長の仕事だった大臣にするための猟官運動が、弱くなったの
は、議員の実質報酬が、中選挙区時代の数倍に増えたからです。議
員が大臣になりたがるのは、その後の選挙が容易になるからです。

【官僚幹部の人事権も握り、独裁になった官邸】
行政改革と規制緩和の中で、首相と官邸は、官僚の人事権を握りま
した。以前は、官僚組織から上がってきた人事案を追認することが
慣習でしたが、現在の官邸は、任免権と左遷権を直接に握っていま
す。官僚が、政府に従属するようになった原因は、この首相と官邸
がもつ人事権です。(注)人事権は、組織の統制にもっとも強く働
きます。社長の権限も、人事と給料の決定権から来るものです。

行政改革と派閥解消の世論の中で、自民党は、火事場泥棒のような
利益を自らに与えたのです。政党助成金の法も、国会(与党)が決
めるからです。

【日本には合わない制度】
その場の「空気」で動く国民性をもつわが国では、小選挙区制と政
党助成金は、間違いでした。今でも遅くない。半分近くが死に票に
はならず、空気にのった泡沫候補は当選しにくい中選挙区制に戻り、
政党助成金を廃止することを望みます。(注)個人主義が強い米国
では、空気より「ディベート(議論)」が決めます。大統領選挙の
とき、候補者がTVで、対論を戦わせてディベートするのはこのため
です。

「財政破産を防ぐ日本の将来(財政再建)」のためでもあります。
歴史をもつ二大政党がないわが国の小選挙区制党は、「ポピュリズ
ムの人気取りの政策」になるからです。

【民主党の時も、47%の得票で73%の議員だった】
民主党が政権をとったときの小選挙区の得票率も47%でしかないの
に、前回の総選挙の自民とほぼ同じ、73%の議席を得ていました。

2009年9月までの短命だった麻生政権(1年)のあと、2012年12月ま
での約3年自民は壊滅していたのです。

「民営化と行政改革(=官僚改革)」で支持率の高かった小泉政権
のあと、自民党の安倍、福田、麻生、民主党の鳩山、菅、野田と続
いた6代の政権は、いずれも国民の支持率が低く、約1年しかもたな
かった。

自民党政権の退陣の直前には、安倍31.8%、福田33.9%、麻生21.
5%という支持率に低下していました(ANNの世論調査結果)。

政権を比較すると以下です(NHKの調査)。

       就任時支持  最低支持  (主要政策)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小泉政権      85%   39%(民営化、規制緩和、行革)
第一次安倍政権   59%   29%(美しい日本)
福田政権      58%   20%(不明)
麻生政権      49%   15%(不明)
鳩山政権      72%   21%(不明)
菅政権       65%   16%(福島原発事故への対応)
野田政権      60%   20%(消費税の増税)
第二次安倍政権   66%   37%(アベノミクス)
          ・・・時事通信では支持が29.9%に低落
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
      
政権の支持率では30%あたりが、政権が崩壊するところであること
がわかります。

第二次安倍政権の支持は、産経新聞では80%以上ですが、NHKでは、
就任時でも66%と歴代の首相と比較してさほど高いものではない。
民主党の菅政権(65%)並みです。

得票率で45%以上が、小選挙区での圧倒的多数(議席数の70%)に
より、政権をとる条件です。

35%に下がると、「政権の危機」になります。衆議院の小選挙区制
では、内閣支持率45%までは勝ち、35%の得票なら負けるからです。

時事通信の調査結果である29.9%なら、政権の維持はできません。

違いは約10%です。投票に出かける人の10%の違いです。国民のう
ち20人のうち1名(5%)が、与党から野党への投票に変わるだけで、
拮抗から、逆転になります。このうち13%は、後述する公明党の票
です(約731万票)。

(注)2014年の衆院選挙の、有効な総投票数は5294万票でした。投
票率は52.6%で戦後最低でした。

政権を転覆させるキャスティングボートをもつのは、国民のうち
20名に1名の投票の変化です。

次の選挙での鍵も、800万または700万票を擁すると言われる公明党
です(2014年の衆院選挙では比例区731万票)。公明党も、学会員
の高齢化のため、2003年の衆院選での得票数873万票から100万人減
っています。

それでも、前回の衆院選では棄権者が47%と多かったので、公明党
の分は全投票の13%を占めます。

▼13%の得票を左右する生命線だった公明党との連立

【公明党が支える自民党政権】
今回の都議選のように、公明党の協力がないと、自民党が負ける確
率は100%です。前回の衆院選、次回の衆院選(2018年11月に4年の
任期が到来)でも、これは同じです。

295議席の小選挙区で、公明党候補が出ない選挙区は、ほぼ285区で
しょう。全国に支持が散らばる公明党では、小選挙区に候補を出す
のは東京や大阪の大都市部の9名か10名だけで、広域な比例区が26
名の当選でした。

公明党の候補が出ない約285の小選挙区で、自民党候補への投票が
なければ、自民党は、2014年であって敗れていました。公明党は、
小選挙区には10名くらいしか出ないため、残り285の選挙区では、
連立の自民党候補に投票するからです。

衆議院の295の小選挙区(1人区)では、正確に言うと、
・自民党は、13%の票をもつ公明の選挙協力での48.1%の得票によ
って、
・223議席(74.5%)の議席を獲得しています。

公明党票は、選挙区の投票に行った人の13%に相当します。純粋な
自民支持は、自民党が圧倒的に強いとされていた2014年でも、35%
付近でした。3人のうちほぼ1名です。都議選のように、公明党との
連立がなかったとすれば、2014年の高いと言われた支持のままであ
っても、自民党の得票は35%付近に減ります。

(注)2014年には、自民党が圧倒的に強いとメディアは言っていま
した。しかし、小選挙区での公明党支持者の投票を抜けば、35%付
近であり、38%の得票を得た民主党に、負けています。どんな意図
で、圧倒的に強いと言われたのでしょうか。

連立で衆院の2/3の議席を占めたため、安倍首相すら、誤解してい
ます。

2014年の衆院選の小選挙区で、公明票13%を取り込んだ自民の48%
に次ぐ、22.5%の得票を得たのは民主党でした。結果は、38議席
(議員数では13%)の惨敗でした。

●以上から、安倍政権の支持率ではなく、小選挙区の議席の結果に
よる安倍首相の政治権力は、連立の公明党が与えたものです。

メディアや政治評論家は、党派別の得票数の内容を見ず、小選挙区
の議席の結果から、安倍政権への支持は、国民の3/2だったかのよ
うな幻想を与えています。

その幻想の上に、安倍首相はのっています。このため、議会の2/3
の賛成が必要な憲法改正の発議まで考えていたのです。(注)都議
選のあとは、どうでしょうか。衆院の2/3での発議と、国民投票

実際は、公明党を抜けば、2014年の衆院選挙でも、自民単独での得
票は35%程度でしかなく、獲得議席は今の50%程度だったでしょう。

自民党は、2014年の株価が高かった時期の衆院選挙でも、公明の協
力を得た上で、得票が48%うち公明票が13%でした。安倍政権は、
株価政権と言われていました。

▼政党間戦略のない民進党

民主党政権の3年間に、政策には親和性がある公明党と連立すると
いう戦略を民主党がもっていたら、自民党が浮かび上がることは、
なかったでしょう。これは、社民党とは連立した民主党幹部が、思
いも及ばなかったことです。

リーマン危機(世界金融危機)の1年後、2009年9月に多数をとった
鳩山民主党には、政党間戦略がかけていました。政権発足時は72%
という高い支持だった鳩山内閣は、2010年に44%の支持に落ちて、
普天間問題での迷走から不支持45%と逆転し、6月には19.3%にま
で支持が落ち(共同通信)、政権を菅直人氏に譲っています。

■4.閉会審査前の政権支持率(7月9日前後)

▼最新の内閣支持率

与党よりの結果が出やすいNHKの調査では、
・7月9日での内閣支持が35%、
・不支持が逆転して増えて48%でした。

森友学園と加計学園の問題が出ていた17年6月の同じ調査では、支
持が48%、不支持が36%でした。支持は13%下がり、不支持が12%
増えています。多数派になった不支持の理由で1位の44%は、「人
柄が信頼できない」という、政治家にとって決定的なものです。政
治家が「人柄への信頼」を失った場合、普通は、終わります。

同じNHKで、2016年8月の安保法制の強行採決のあと、支持が38%、
不支持が46%でしたから、そのときより悪い。

もっとも強く内閣にすり寄ってきた読売新聞の調査(7月9日)でも、
・安倍政権支持が36%に急落しています。6月の支持49%の結果か
らは13ポイントの下落です。
・同紙の不支持では52%という驚く結果です。6月の不支持36%か
ら、16ポイントも上がっています。

日テレの調査では、支持が31.9%ともっと低い。結果を聞いた自民
党議員は、「えっー」という驚きの声をあげたという。(注)その
後の時事通信では29.9%です。

読者層の関係から、政権にとって厳しい結果がでる毎日新聞では、
支持が36%(前回比10ポイント低下)、不支持は44%(9ポイント
上昇)です。政党の支持では、自民27%、民進8%、公明3%、共産
4%、日本維新の会2%です。支持政党なしが47%です。

以上から、安倍内閣支持の実態は、30%前後に下がり、不支持が
48%くらいと見ていいでしょう。不支持とする人が増えたのが今回
の特徴です。

今後の政治イベントからして、内閣の支持をあげる要素は少ない。
来週に予定されている予算委員会で、安倍首相が「真摯に答えて
も」、あからさまな嘘ですから、回復の見込みもないからです。

安倍首相は、政治権力を強力に支える「解散権」の行使ができなく
なりました。衆議院の任期前の2018年11月までに解散すれば、「自
民党惨敗」の恐れがあるからです。

▼起死回生の策としてのシムズ理論か

経済的な面では、アベノミクスの中核であり、しかし目的の効果を
あげていない「異次元緩和」をどうするのか。黒田総裁、岩田副総
裁の任期は、2018年3月に迫ってきました。

内閣官房参与のリフレ派、浜田宏一氏が「目から鱗がおちた」とい
いう「シムズ理論」を取り入れるのか。(注)プリンストン大学教
授、クリストファー・シムズ:2011年のノーベル経済学賞受賞。

シムズ理論は、簡単に言うと、
(1)中央銀行の国債引き受けでの財政支出(公共投資、公共事
業)を、インフレになるまで、大きく拡大する。
(2)そうするとインフレになる。国債は、インフレ税で支払う、
というものです。

たとえば2%物価が上がると、その2%が、インフレ税になります。
国債を含む負債は、2%のインフレになると、実質では2%減るから
です。

(1)預金と所得・・・・・2%のインフレで実質が2%減/年
(2)国債を含む負債・・・2%のインフレで実質が2%減/年

実質で2%減は、30年後には、〔0.98の30乗=55%=ほぼ半分〕

日銀が金利を上げて、2%に上がらない限り、預金と国債がともに、
実質で55%になります。年金で言えば、年金実質額が、現在20万円
/月なら、30年後に35歳の人がもらいはじめるときは、実質で10万
円に減ることです。もちろん現在もらっている人も、2%のインフ
レでは、毎年2%ずつ購買力が減って、30年後には、今の10万円分
の商品しか買えなくなります。

これが「シムズ理論」です。ノーベル賞の「とんでも理論」に思え
ますが、国債が償還できない政府の立場からは、好都合でしょう。

ノーベル賞学者のクルーグマンが元だったリフレ論を採用した安倍
首相が、今度はシムズ理論を採用すれば、今度は財務省の官僚も、
「役人は立場から発言する」ことしかないのか。政府はノーベル賞
が好きです。世界が認めた、ということだからでしょう。

実際は、
・デフレは貨幣量の縮小が原因とするリフレ論と同じように、
・シムズ理論にも落とし穴があります。

インフレになると、ひとびとが預金と国債に期待する「期待金利」
が上がるからです。〔市場の期待金利≒期待物価上昇率+実質GDP
の予想上昇率=名目GDP上昇率〕だからです。ひとびとの期待金利
が3%に上がったとします。

(1)金利0%の円預金は1年に2%ずつ損をするので、大挙して「ド
ル買い」に向かうでしょう。

(2)金融機関も、貸付金利が0.5%では、0.85%はかかる事務手数
料をまかなえず、外債(ドル国債)買いに向かいます。

(3)ゼロ金利国債をもつ金融機関は日銀を含み、保有国債が〔
(1+0%×8年)÷(1+3%×8年)=1÷1.24=80%〕に下がりま
す。1000兆円の国債が800兆円に下がるのです。200兆円の含み損で
す。

以上から、政府負債の残高が1248兆円と、GDPの232%のわが国には、
リーマン危機級の金融危機が起こります。

シムズ理論の実行は、確実に2%くらいならインフレを引き起こし
ますが、政府負債がGDPの232%になっているわが国では、ひとびと
の期待金利が上がるため、実行できないのです。

リフレ派が目からウロコが落ちたとか、「わが意をえたり」とする
シムズ理論も、日本にとっては「とんでも理論」になるという理由
は、政府負債の大きさからです。

【後記】
米国のトランプ大統領の支持率も、36%と危険水域に下がっていま
す(トランプ大統領が偽メディアというCNN:17年7月)。前回の調
査より6ポイント低下です。不支持は58%と高い。このうち強い不
支持が48%です。36%の支持では、「大統領政策の実行」ができま
せん。議会が反対するからです。

原因は、プーチン政権が、大統領選のコンピュータシステムにハッ
キングしていたという「ロシアゲート」でした。

北朝鮮のミサイル危機を煽り、レッドラインを超えたとして、先制
攻撃を言ったのも、危機をあおって、支持を高めるための「口先
(ツイッター)三寸」であったことが明らかになりました。海軍は、
実際には動いていなかったからです。困った大統領です。安倍政権
とともに、どうなるのか。支持率が高くなる見込みはない。

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3.最適通貨圏の条件を満たさない諸国での統一通貨
5.南欧の企業負債と、事実上の不良債権の大きさ

【後記: スティグリッツ】


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2.世界の原油埋蔵は2京5050兆円(1バーレル$53のとき)
3.トランプ大統領とネオコンの関係はねじれていたが・・・
4.戦争は、太古の昔から、諜報戦と陰謀から起こってきた
5.中国と米国の、政治的、軍事的な対立とは・・・
6.北朝鮮の核とミサイル問題
7.トランプラリーが終わり、米国と日本の株価下落

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