CRM経営の本質を解く(2)
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 <1ヶ月にビジネス書5冊分を超える情報価値をe-Mailで>
   ビジネス知識源プレミアム(有料版)Vol.2

 CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第2部)
       2001年9月11日:経営分野

 著者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
 購読・解除   http://premium.mag2.com/j/011/0001.htm

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こんにちは、吉田繁治です。まぐまぐサイドの会員登録のインター
フェースが十分ではなく、時に不調が起こって、ご迷惑をかけている
ようです。お詫び申し上げます。
順次、改善されてはいますが、多少ガマンですね。

▼最初に、ご案内的なこと

【システム不調】配信開始日の直前の2日間、システム不調で会員
登録ができなかったという<まぐまぐ>からの連絡には驚きました。
開店日にシャッターが開かない状態。いろんなことが、起こりま
す。

【バックナンバー】当月分バックナンバーの掲載は、まぐまぐに申
し入れをしておきました。まぐまぐの回答は、「必要なことだと思
いますので、行います」とのことです。

【海外住所】海外住所での会員登録は、郵便番号に000-0000をいれ、
住所のアルファベットを全角文字で入力すれば可能になるとのこ
とです。海外の方は意外に多いですね。

【転送】本マガジンの「購読サンプル的」な、友人・知人・同僚・
部下・上司・取引先への転送は、自由におこなってください。

【実験】<ビジネス知識源プレミアム>にはe-Mailを使ったセミナ
ーの性格を盛りこもうと思っています。

【ミッションの3項】
(1)1ヶ月ビジネス書5冊分を超える情報価値をe-Mailで
(2)経営と仕事の、成功のための原理を基礎から示し、実践の原
則にして、関連する最新のビジネス知識・IT知識を提供。
(3)テーマの幅:経営問題・IT戦略・SCM・CRM・ロジス
ティクス・経済・金融・会計・ライフプランの時事情報等。

 <CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第2部)>

【目次】
1.時事情勢の解析:2001年9月、すでにミニ金融恐慌
2.前号の要点の確認から
3.LTVとカスタマー・エクイティ
4.数字を使い具体的に示せば・・・
5.カスタマー・エクイティ公式から見えるCRM経営の体系
6.ロック・インの戦略へ
7.ロック・イン戦略の7項
             (第3部へ続く)

最初に、時事の金融・経済情勢を解析します。9月は、予測された
中で最悪になった。政府は、株価と金融の実態への認識が甘い。小
泉首相にリアル・ポリティックスの手法と、政策の速度がない感じ
です。

■1.時事情勢の解析:2001年9月、すでにミニ金融恐慌

▼クレジット・クランチ状態にはいった

【自己資本】
株価が危険水域。下落が生む最初の問題は、銀行の自己資本を直撃
することです。国際業務(主として都銀)をおこなうときは総資産
の8%、国内業務(主として地銀)では4%が必要。

【貸出し回収】
株価下落にくわえ、不良債権の損失確定が自己資本を減らします。
そうすると、銀行は総資産(≒貸出し)を圧縮しなければならない。
貸出しの圧縮とは、優良取り引き先からの回収です。不良先から
は、回収ができないからです。

【短期ころがし】
日本の金融システムで問題なのは、手形貸し付け(ほとんどが3ヶ
月満期)を「転がして」長期にしてきたことです。契約上は、短期
の転がしは、満期日の書き換えを銀行サイドが一方的に拒否できる。
すでに、あちこちで起こっています。

【振りかえを】
長期貸し付けへ振りかえておくことです。銀行は、自己経営能力と、
取引先を長期で育成する能力を喪失しています。ある日突然、天
皇である金融庁からつつかれ、融資回収に走る。特に地方銀行の取
引では、細心の注意が必要です。

今、5段階の危機管理では、3段階目くらいの状態です。
危機管理とは、危機が起こったあとの対策ではなく、起こることを
予防することです。

【理不尽】
銀行も銀行マンも、保身のための理不尽なことは平気。名目は「本
部方針」です。細かく書かれた融資契約は、理不尽を正当化してい
ます。

経営資源が優良な会社が、一瞬のクレジット・クランチ(金融縮小)
で不渡りを出すのは酷です。

【すでに起こった未来】
97年以降の北海道に先例があります。融資約束を破る、短期の転
がしを停止する、回収にかかる、追加担保と増加預金を要求するこ
とが、多発。融資を求めて銀行にいくと預金を要求され、預金する
と、融資約束を反故(ほご)にした。銀行がブラックホール化した
のです。

預金を、(準)破綻銀行のボロ株券へ振り替えることすら要求した。
何を意味するか?10億円借りていて3億の預金なら、その3億
をタダで銀行に下さいということです。

また、取引先との手形取引を、見なおすことです。
現在のような金融状況では、相手に何が起こるか予測できない。連
鎖倒産や、連鎖での損失を避ける危機管理です。

<痛み>は、すでに始まっています。

▼不良債権処理への、政府の認識の錯誤がある

不良債権処理は、放置すれば、処理を伸ばせるとの認識があります。
これは加速度がある現代国際金融をしらないための錯誤です。

【最終事態】
放置すれば、国際マネーも投資家マネーも引きあげる。
マネーの動きの象徴が、株価の下落です。
最後は、庶民の預金すら引きあげる。(起こればこの規模は巨大)
本源的マネーの庶民預金の引きあげ起これば、打つ手がない。

終点は、日銀マネーを銀行に無条件・無制限に出すことを迫られ、
次は、それを旧円とし、「新円」を発行する。
自然の理では、向かう方向は、いずれ「新円」です。
こうならないために、対策が必要なのです。

【対策】
不良債権処理では、(多少の矛盾はあっても)断固として企業選別
をし、銀行には、即刻、政府資金の「強制注入」を行うことです。

先に引き延ばせば、痛みが少ないのではなく、最後の国民負担が何
倍も、何十倍も大きくなる。

【たった5%だった米国】
米国の90年代初期の零細金融機関S&L(貯蓄貸付銀行)の不良債
権処理では、最終的に税金の投入で預金を守った。不良債権の総額
は、米国GDPの5%($1600億)に過ぎなかった。

日本政府が参考にしているのは、このときのRTCやRCCの不良
債権整理会社、整理機構です。この国の対策はモノマネです。

【民間だけで4倍】
日本の不良債権の総額は、民間のみでGDPの20%以上、100
兆円~131兆円が推計されています。それに政府財投の不良債権
が加わる。民間のみで重みで米国の4倍以上。民間分より大きなこ
とが想定される政府分を加えればGDPの50%、米国の10倍に
はなる。

【瀕死】
全体経済に及ぼす影響、波及が違います。日本の(経済ではなく)
金融は、瀕死状態と見ていい。瀕死なら、治療ではなく人工呼吸や、
心臓移植(交換)が対策です。治療は、自己呼吸ができるように
なった後しかできませんね。

【政策選択のキーは国民負担を少なく】
金融での人工呼吸とは、政府マネーの「強制的な銀行注入」です。
断固たる不良債権処理と、確定損失額を上回る銀行への資本注入で
す。
これが、国民負担が、最終的に一番少なくて済む方法です。

【軽井沢】
緊急リーダシップをとるべきは、小泉首相です。官僚は総理の命令
には従うのです。ブッシュ大統領の1ヶ月の夏休みにならい、夏休
みをとったとき、あぁ、金融の現実認識、速度の認識がないと思っ
た。

阪神淡路大震災のとき、政府の危機管理が非難された。これは目に
見えます。金融は目に見えない。今の金融の実態は、阪神・淡路大
震災に類似しています。しかし金融は自然ではなく人為です。人為
のものは人為で、災禍を回避することができる。

▼金融は、予防がすべて

金融では危機の予防が重要です。危機が起こった後は、手遅れです。

不良債権、銀行のクレジット・クランチ(金融縮小)問題は、靖国
神社参拝問題の比ではない。人と企業を、経済的に殺す。
金融対策は、日銀か、または政府しか打てない。

経済対策(9回まで時間がある野球)と、金融(ボクシング)は違
います。パンチが当たった後は、そこで試合は終わる。だから金融
は予防が対策。ところがこの国では、予防を重要とみていない。
だから、今、危険なのです。

国際金融と個人が銀行を見放したら、国民負担が巨額になるのです。

▼株価の鍵は、海外からの見方

【唯一の買い手】
90年の株価崩落以降、日本株を買ったのは、外人投資家のみです。
国内は銀行、事業法人、個人とも売りです。投信とPKOのみが
買い。外人持ち株比率は20%(65兆円)を超え、日々の売買で
は、50%を超えている。

【売りへ】
これら外人投資家は、3つの理由で、売りに回っている。
(1)不良債権の半減に7年かかるという柳沢金融庁大臣の発表。
(2)経済構造改革の実行プログラムが、見えない。
(3)構造改革に反対勢力が多く、実態が骨抜きになることが明ら
かになった。

【海外の評価】
国内の小泉支持は高い。海外の評価は低い。こんな時期の8月に夏
休みをとるという小泉首相及び、外遊にでかける国会議員の神経は、
外務省と大同小異です。徹夜の連続をしても、仕上げるべきだっ
た。
そんな姿勢があれば、国民も奮い立つ。これがリーダシップです。

【大改革に必要なこと】
8月中に出すと約束していた構造改革プログラム(工程表)が遅れ
た。
大改革は、検討に時間をかけてはいけない。
時間をかければ、50%の反対勢力が、もっと大きくなる。

今のままでは官僚風作文になることが予測できます。結果は見えて
いる。01年1月4日からの中央官庁の改革が、省庁の統合、メガ
省庁でしかなかったように、寄せ集めでしょう。

普通はできるわけがない<骨太の方針>を、まとめたのです。
小泉内閣は、内閣としては口先内閣で、公約破綻しています。

【大きな改革の実行戦略に必要な2項】
小泉首相が、実行戦略の基本を知らないことが、問題です。
(1)総覧的な総合策ではなく、政策重点を最多で3つに絞る。
(2)自民党のドン、反対の親玉を内閣に引き入れ、悪魔と契約す
る。

「悪魔との契約」は、あとで反故にするとのマキャベリズムの神経
が必要です。「法」を作る政治とは、そんなものです。
これが、頼りになるリーダシップです。

行政構造改革は、既得権を持っている人への、経済的死刑宣告です

死刑宣告を行って死刑を実行しなければならない。抵抗は死に物狂
いです。断固たる姿勢をくずせば、一瞬で、穴があきます。

このままでは、審議会風「構造改革論文」が出るだけです。

▼もうひとつの鍵、米国経済

【米国発のニュースが一色になったとき、疑いに値する】
米国経済からは、悪いニュースのオンパレードです。警戒しなけれ
ばならない状態にあるのは事実。しかし、もう1歩考えを進めなけ
ればならない。本来は、多色であるべきニュースが一色になるとき
米国では操作が加わっていることが多い。
(常に、ではないのですが)

経済では、売りがあれば、同じ量の買いがあるのです。
背後での「戦略的準備」の前兆を感じます・・・
(変動相場制の金融か、エネルギーか、資源か)

【米国の企業戦略の基本】
米国企業の中核の戦略は、M&A(合併・買収)です。M&Aは、
競争相手、または補完業種の市場評価(株価総額)が下がった時、
買収をしかけることを、予想利益計算で実行する手法です。

わが国では、まだ、M&Aは一般的ではない。
機能組織である企業が、村落共同体化しているからです。

【M&Aの経済学】
価格競争で、赤字や倒産スレスレになっていた相手を買収すれば、
独占価格を獲得でき、企業価値(=予想長期収益)は上昇する。

【米国という国家の基本】
日本は、発想が中小企業国家です。米国は大資本家の国です。
(これを忘れないこと)
大資本家は、大衆が読むマスコミ・ニュースでは動かない。米国政
府も、大資本家も、マスコミを世論操作に使う。ここが、日本と違
います。

大資本家は、シンクタンクの戦略リポートで動く。

【一例】
9月7日には、コンピュータの大手ヒューレット・パッカード(H
P)がパソコン2番手コンパックを、874億ドル(約10兆円)
買収した。これで、IBMの売上と同じ規模になる。

世界のPC市場で18%を握り、ナンバーワンのデル(シェア13
.1%)を追い抜く。

【M&Aの鉄則】
M&Aでの買収は、市場が弱気のとき行うのが、鉄則です。
HPの株価は00年10月の$50から18$、コンパックは$30
が$10になっていた。CEO、女優風のフィオリーナ嬢の賭けで
すが、株価下落なら、こうした動きが起こるのが米国です。

日本人が買収するとき、高い時に買う。三菱地所の、マンハッタン
のロックフェラービル買収結果を見れば瞭然、。高い時に買い、
安い時に売った。戦略家は安い時に買い、高くなれば無駄だから売る。
投資の基本です。市場が弱気一色のときが、買いの機会です。

【IT不況は、ビジネスサイクル】
ITのハード不況は、目下は深刻です。
しかし、今回は、純粋なビジネスサイクル(設備投資循環)です。
携帯電話5億台の予想で、過剰設備投資が起こっていた。
IT需要が、衰退期にはいるわけではない。むしろ逆です。
となれば、戦略は決まる。

【ネクスト・ステージが見える】
調整を経て、ブロードバンドの需要サイクルがくる。米国は、PC
高精細画面と、ブロードバンド化は日本に遅れています。(NTT
は、ドコモのi-mode効果を使って、00年末ころからいい線の政策
です)

米国経済が、奈落の底におちることはありません。底力が違う。
広大な国土、資本家、ダイナミズム、発想が、世界に隔絶している。

日本の不良債権処理と、経済構造改革のスピードの遅さが問題です。
日本は、良くも悪くも一色に染まる、カイゼンの職人国。国民性で
す。

以上9月から秋、放置できない問題なので、考察を加えました。
(今後も、重要な時、時事情勢の解析と予測を入れます)

さて、主題の<CRM経営の本質を解く:創刊号第2部>です。
ここから<知のジャーニー>へ・・・

■2.前号の要点の確認から

【21世紀経営】
20世紀の経営を、端的にまとめれば「商品中心の経営」になりま
す。商品は2種、有形のモノと無形のサービスです。

一方、21世紀の経営は、集約すれば「顧客中心」になる。

(1)商品やサービスの提供が始まった購買を起点とし、
(2)継続的な商品提供と、
(3)生活提案、
(4)ソリューション(問題解決)の提案にわたる、サービス提供
をおこなっていく経営です。

別の言い方でまとめれば、
(1)商品とサービスの品質を高め、コストダウンする活動と、
(2)直接的に顧客との関係を良好に維持し、接点を増やし、関係
をより強める、CRM経営が加わることになる。

【CRM経営と権限委譲】
CRM経営では、
(1)顧客と接する〔場〕での、判断とサービス、ソリューション
の提案が必要になるため、
(2)現場への権限枠の委譲(empowerment)が必要になることを、
リッツ・カールトンの事例で示しました。(創刊号第1部)

本部への集権の、ピラミッド組織の指示・命令は、規格品量産のシ
ステムに適合します。規格やルールは、現場が勝手に変更すること
はできない。

商品は規格品であっても、それを使い利用する顧客の生活場面は多
様です。顧客に接する場での判断と、商品提案が必要になるのです。
これを、小売り用語では「生活提案」と言っています。

権限委譲の組織では、管理者(マネジャー)は指示命令を出す人で
はなく、現場の仕事を支援する「コーチ」の機能になる。指示命令
を補う「コーチング」は、リーダシップ型組織運営の要点です。

【CRM経営の評価尺度】
CRMの経営評価の尺度として、
(1)期間売上(価格と、点の売上)だけではなく、
(2)LTV(LifeTime Value:顧客の生涯価値 )という、時間軸
での顧客価値の評価尺度を紹介しました。

顧客の生涯価値は、「企業が外部顧客との関係で作る無形の資産」
とみることもできます。
ここを増やすことが、21世紀産業が向かうところです。

※以降では、第1部のLTV公式について、どんなときも忘れよう
がないように、理解を深めます。学習のコツは、原理を理解するこ
とです。枝葉から入らないことです。枝葉は、原理に実るのです。
原理は単純です。しかし深いのです。

■3.LTVとカスタマー・エクイティ

LTVを無形の、企業と顧客の関係性(Customer Relationship)
の価値(=金額)と見たとき、カスタマー・エクイティ(Customer
Equity)とも言います。意味は、LTVと同じです。

(注)「カスタマー・エクイティ」の概念は、ロバート・C・ブラ
ットバーグ、ジョン・デイトンが、「カスタマー・エクイティによ
る顧客構造の再構築(有吉真康訳):ハーバード・ビジネス97年
5号」で提唱したものです。

※カスタマー・エクイティ公式は吉田オリジナルです。カスタマー
・エクイティ・フォーミュラ:CEFと名づけましょうか。商標権
はないか・・・(笑)

以降の考察は、LTV公式をベースにし、吉田の考察を加えたもの
です。

▼現代経営で多用されるエクイティ(現在価値)の概念

ここで言う「エクイティ」とは、
(1)顧客への、現在から将来の売上の合計を、
(2)予想金利で割り引きしたもの(現在価値)をいいます。

(注)本来は、売上でなくコストを引いた利益で計算しますが、こ
こでは、説明の単純化のため売上としておきます。

(例)5年後の100万円(売上または利益)は、予想(または期
待)金利が5%なら、100÷1.05の5乗=100÷1.28=78万円の「現在
価値」です。未来が、「金利という不確定要素を媒介」に、現在に
含まれるという想定がこの数式の、意味するところです。

<現在×予想金利⊃未来>

【現在価値】
これで現代経営と金融理論の基礎概念である「現在価値」がわかり
ます。「割引き価値」というときもあります。現在価値は、債券の
評価計算からきたものですが、今は、経営で広く用いられます。

株価の時価総額は、企業の将来想定利益を、(予想金利+リスクプ
レミアム)で割り引いて、現在金額にしたもの、というのが、株価
理論の基礎です。リスクプレミアムでは、例えば中国は企業の成長
率が高くても、政治のリスクがあります。リスクを確率数字にした
ものがリスクプレミアムです。

▼カスタマー・エクイティ=LTV総額

カスタマー・エクイティの概念をつかうと、今まで計算ができなか
った「企業の、顧客との関係性の価値」を、デジタルな金額で計算
できます。これが、企業の真の(無形の顧客)資産です。

20世紀は、土地・建物・設備・機械・商品・債権・現金等を企業
資産としました。21世紀は、カスタマー・エクイティが加わる。

カスタマー・エクイティは、本当の企業資産になる。
カスタマー・エクイティを高める活動が、企業経営の目標(ゴール)

【カスタマー・エクイティ公式の説明】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カスタマー・エクイティ(=LTV総額)=全体需要×「顧客数シェ
ア率」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・顧客数シェア率=当社を利用した顧客数÷商圏人口または世帯
・個客シェア率=当社を利用した個客の平均売上÷当社の商品分野
のマーケット総需要を一人当たり(または世帯当たり)にしたもの。
・継続購買率=個客が翌年度も、当社の顧客として継続する率

※一方、〔離反率=1-当社での継続購買率〕です。
「ブランドスイッチ率」と言っても同じです。

(注)カスタマー・エクイティ(=LTV総額)の公式は、数式で
顧客の購買実態を見えるように工夫したものです。

元になっているのは、<売上=(一定期間の1客平均売上)×顧客
数>に過ぎないのです。何事も原理は単純です。ニュートンの公式
のように。

■4.数字を使い具体的に示せば・・・

以下、数字を使い、具体的に示します。

(目的)映像化記憶。 記憶のコツは映像化。ありありと記憶しな
ければ、現場で応用ができない。

▼想定ケース
(1)A社の取扱商品のマーケット全体需要を年1000億円とします。
(2)マーケット人口を100万人とします。1人あたり需要は10万円
です。
(3)A社の顧客数のシェアを20万人とします。そうすると顧客数
のシェア率は20%ですね。

(注:他への展開)メーカーの場合は「顧客」を卸売りとし、卸売
りの場合は店舗と置き換えれば同じです。

メーカーや卸が、このLTV公式を店舗に対して使うと、「リテイ
ル・サポート」になる。上流が店舗の在庫を管理し、補充するVM
I(Vendor Managed Inventory:ベンダーが行う下流在庫管理)と
いうサプライ・チェーンの、ひとつのビジネスモデルになります。

※サプライチェーンは、また別稿で、解きます。

▼個客シェアと逸失売上

「個客シェア」が戸惑う新概念ですね。これを、説明します。

マーケットの総需要は、人口1人当たりでは、10万円です。
A社の20万人の、「個客」当たり平均売上げを、5万円とします。
そうすると、A社の平均「個客」シェアは、5÷10=50%です。

この意味は、
(1)A社の購買客20万人は、A社の商品があるにもかかわらず
(2)A社では50%部分を買うが、残り50%部分は他社で買
っているということになる。

これが「50%=「個客」当たり5万円の逸失(いっしつ)売上」
という概念です。

逸失売上は、顧客数のシェア20%では見えない。

(注)逸失売上は、顧客との関係はできています。関連商品販売で
獲得しやすい売上です。Lost Salesと言ってもいいでしょう。

対策の方向が見える数式にすること、これが「経営管理」の要所で
す。

▼カスタマー・エクイティ公式

ここまでで、以下の公式の「全体需要」、「顧客数シェア率」、「
顧客シェア率(反対概念が逸失売上)」を説明しました。

カスタマー・エクイティ=LTV総額=全体需要×「顧客数シェア率
」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}

▼継続購買率と、離反率

次は、継続購買率(逆数が離反率)です。

A社の20万人の顧客数で、翌年も継続して購買するのが12万人
であると、「継続購買率」は、12÷20=0.6になる。
そうすると3年目は、12×0.6=7.2万人が予想されます。

【延べ顧客数】
1年目  20万人
2年目  20万人×0.6
3年目  20万人×0.6×0.6
4年目  20万人×0.6×0.6×0.6
5年目、6年目、7年目・・・

以上を合計すれば、数列計算で、
20万人×{1÷(1-0.6)}=50万人になる。

この50万人は、何を意味するか?
現在の顧客20万人が、将来にわたって60%の継続購買率(40
%の離反率)で続いた時に予想される、「延べ顧客数」です。

(ここでコーヒータイム、ロンドン風に紅茶? 小さなサンドウィ
ッチがついたアフタヌーン・ティーもいいですね)

さて、つぎは、まとめです。

■5.カスタマー・エクイティ公式から見えるCRM経営の体系

カスタマー・エクイティ=LTV総額=全体需要×「顧客数シェア率
」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}

数字を入れてみます。顧客対策の原理が見えてきます。

▼全体需要1000億円×顧客数シェア率20%=200億円

この200億円は、
(1)当社購買の20万人が、当社取り扱い商品の範囲で、購買を
100%充たし、
(2)他社購買(逸失売上)がないときの仮定売上金額です。

【考えるべきこと】
従来のマーケットシェア計算では、商品中心で、顧客の他店購買行
動の金額が見えない。商品中心経営では、商品やサービスを安くす
る対策で、実は不必要に利益を減らしたのです。

顧客数シェアと、個客シェアを区分した「逸失売上」の概念で、新
しい対策が見えてきます。

現在の顧客20万人での仮定売上200億円=わが社の計上売上
100億円+逸失売上100億円

▼全体需要1000億円×顧客数シェア20%×個客シェア50%
=100億円

この100億円が、当社売上に計上されているものです。
100億円の逸失売上を奪還するための、対策が浮かびますね。

以下の、6つの逸失売上がありました。(⇒詳細は第1部)

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ・ライフ・ステージ・マーケットからのとりこぼし
 ・アップ・セリング・マーケットからのとりこぼし
 ・クロス・セリング・マーケットからのとりこぼし
 ・アフター・セリング・マーケットからのとりこぼし
 ・顧客と企業の相互学習マーケットからの取りこぼし
 ・顧客の紹介利益効果の取りこぼし
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最後の2項は、新規顧客の増加に絡みますが、「不活性顧客=スリ
ープ顧客」の活性化部分なら、既存客に含むことができます。

【顕在需要と潜在需要】
逸失売上は、他社に流れている顕在需要のみではなく、ニーズはあ
るが商品やサービスがないために「潜在化している需要」も含むこ
とができます。

例えばソニーのウォークマンは、外で音楽を聞きたいという潜在需
要を、天才マーケター盛田さんが顕在化した。これは、需要開発マ
ーケティングになります。

上記の、「企業と顧客の相互学習」が、潜在需要の顕在化の方法で
す。需要開発マーケティングでは、全体重要は変動しライフサイク
ルカーブ(導入⇒成長⇒成熟⇒衰退)を描きます。

※家具では、収納を、タンスではなくOrganization(すぐ使えるよ
うに有機的に整理)することが、潜在需要です。顕在化すれば1兆
円マーケットの可能性があると見ています。至る所に、こうしたも
のがある。(タンスは6000億マーケットが3000億に縮小)

【20世紀の顧客観では】
<企業~商品~集合的顧客>がその図式です。

ところが商品は多種・多様です。何10万、何百万品目もあり、し
ょっちゅう変わる。しかしそれを買うのは「個客」です。商品を間
にはさんだ、「集合的顧客」と企業のつながりで見ると、関係がく
もの巣状になって対策が見えないのです。

(注)米国の20世紀末では、集合的顧客を、セグメント(分割し
てフォーカス)しました。店舗や商品は、セグメントされています

階級制が色濃く残る西欧では、クラス(もとは階級)の概念で、マ
ーケット分割されています。
日本は、同質マーケットとされ、セグメントとクラスの概念が薄い。

【精髄】
しかし、個客で見れば、個客に商品は属し、ぶら下がっている。
この筋がみえることが、商品経営ではない21世紀型CRM経営の
精髄で部分です。このイメージを、映像化して描くことです。

<企業~個客~商品>がその図式です。

【本質】
人間にとっては人間とのつながり(relationship)がもっとも大切
です。商品とのつながりは、ぐんと価値が低い。人間より商品やモ
ノとのつながりが大切に思える人は、フェティッシュ(倒錯)です。

企業と個客のつながりが、CRMではない。企業の人と、個客のつ
ながりです。この信頼関係を作ることです。そうすると、CRM経
営は、社員と個客の、信頼のあるつながりの強化策をとることにな
るのです。(特にメーカー、卸、店舗間)

<企業の個人~お得意先~商品>
この思考図式が、CRM経営の本質です。

【具体の1例:こころを伝える】
社員1名あたり、(仮に)500名の個客担当制度、これで、信頼
関係をつくるのです。DMや電話は手段。

(注)重要なことは、個客のライフ・ステージ(典型が「誕生日」)
や、他の接触の機会を活かしたパーソナルメッセージです。DM
には必ず、手書きメッセージを含めるとか、相手を大切にする「こ
ころ」です。

第1部で示したリッツ・カールトンの黒人ギャルソンは、プロポー
ズをする顧客への問題解決(ソリューション)提供をおこなった。
そこで強い信頼を勝ち得え、ファン客を作った例です。

・リッツカールトンの、カスタマーリレーションの思考方法
<会社~権限委譲されたギャルソン~個客~生活場面~商品>

これで、CRM経営が、イメージ化されます。
機会の〔場面〕は、多種・多様に、いつも、目の前にあるのです。

▼ 全体需要1000億円×顧客数シェア20%×個客シェア50%
×{1÷(1-0.6)}=250億円

この250億円が、カスタマー・エクイティであり、購買客20万
人のLTVの総額になる。
この250億円は、正味の、売上面での会社価値をあらわします。

※ここから、商品原価と管理販売費を引くと、営業利益でのカスタ
マー・エクイティです。

上の数字で、
0.6(60%)は、翌年も顧客である確率、このとき250億円。
0.7に上昇すれば、333億円になる。
0.8に上昇すれば、500億円になる。
0.9に上昇すれば、1000億円です。

継続購買率を上げること(離反率を下げること=「個客」シェアを
あげること)は、巨大な売上の機会をつくるのです。

(注)購買頻度、需要サイクルが短い日常財や食品等の商品やサー
ビスでは、年での継続購買率を、月に変換してみるほうがいいでし
ょう。耐久財、ファッション財は一般に、4半期か、年で見ます。

ここで、以上までをまとめて、クリアにします。

▼中間でのまとめと、「ロック・イン」へ

【カスタマー・エクイティ公式】
カスタマー・エクイティ=LTV総額=全体需要×「顧客数シェア率
」×「個客シェア率」×{1÷(1-当社での継続購買率)}

【CRM経営の3つの基本対策:重要】

カスタマー・エクイティ公式の項目から、以下が見えます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)顧客数シェア率を上げること=新規顧客の獲得対策
(2)個客シェア率を上げること=逸失売上の獲得対策
(3)継続購買率を上げること=ロック・イン(Lock-in)対策
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ロック・インとは「鍵をかけること」、「顧客固定化」対策と同じ
意味です。顧客の離反をいかに少なくするかの対策。

以上の3項によって、CRM経営で、なにが、どんなポジションに
あるのか、明確になりますね。3項のみです。

いけないことは今日やっていることが、何かがわからなくなること
です。商品開発、広告、DM、営業、プランニング、設計、訪問、
電話、接客、商品対策、サービス対策、価格対策、出店が、上の3
項のうち、なにを重点にしたものか、戦略フォーカスが明確でなけ
ればならない。

■6.ロック・インの戦略へ

1度、当社顧客になった人を、固定化する対策は、離反対策の中核
になるものです。まとめてロック・イン(Lock-in)の戦略。

▼継続購買率という増幅装置

全体需要1000億円×顧客数シェア20%×個客シェア50%×
{1÷(1-0.6)}=250億円

継続購買率が0.6ならカスタマー・エクイティは250億円
0.7に上昇すれば、333億円になる。(離反率30%)
0.8に上昇すれば、500億円になる。(離反率20%)
0.9に上昇すれば、1000億円です。(離反率10%)

▼ロック・インの戦略

CRMが米国で論じられ始めたのが97年前後です。それ以前は、
商品管理に対応し顧客管理といわれていた。日本語の「管理」は、
原義はmanagementです。

【日本型顧客管理の原型】
顧客管理では、日本では1970年代からクレジット販売の〔マル
イ〕が有名でした。月掛け販売ですから、債権と入金を長期で管理
する必要があり、その延長から発想され「顧客管理」といわれた。

マルイはその後、消費者金融を加え、「マネーの販売事業」で商品
販売より何倍もの利益を得る展開へ向かったのです。事業の定義を、
「商品販売のみでなく、顧客が欲するものはなにか?」と考えた
ところに青井社長の慧眼があった。
<企業~個客~金融~商品>のビジネス発想です。

【日本型量販の問題】
一方、商品中心経営である量販店は、顧客管理の視点を持たなかっ
た。

商品の価格と、選択肢の幅、ワンストップを中心にする経営だった
のです。(商品中心の20世紀型経営)
日本型量販を筆頭に、日本の小売りは、20世紀型ビジネス図式か
ら脱していません。商品管理しかない。
<企業~商品~顧客>

そのため、潜在需要開発も、商品開発もできず、顕在需要の奪い合
いをやった。結局は、商品単価下落を招いたのです。

【LTV発想とロックイン】
LTVの概念は、知られていたのですが、利用がされていなかった。
企業と個客の関係の間に、商品を介在させた発想だったからです。
(カスタマー・エクイティの概念への発展は97年ころからです)

ロック・インは露骨な用語です。<顧客に鍵をかけて封じこめる>
顧客シェアとはちがう「個客」シェアの事業発想になる。この二つ
の概念の区分はつきますね。逸失売上を奪還し、「個客」シェアを
高めるための戦略になるのです。(狩猟民族である欧米では、しば
しばこうした露骨な用語をつかう)

鍵をかけて封じこめるのは企業の狙いです。
顧客はそれに惹きつけられるかどうか、ということになる。
(惹きつけるための購買行動仮説3項は後ろで示します)

思考図式は、
<企業~顧客のロックイン戦略~商品とサービス>

ロック・イン戦略について、偶然ですが、3日前に届いたHarvard 
Business Review(HBR:ダイアモンド社)の10月号に、野村
総研の中川理、日戸浩之、宮本弘之の3氏がまとめています。

あ、同じテーマだと思い読むと、よく整理してあるので参考にしつ
つ、以降、吉田の観点での記述を行います。

どういう理由かわかりませんが、私の周囲に、こんなことがよく起
こるのです。メールマガジンで送った翌日や翌週、日経新聞で同じ
テーマの論説がでるとか、これはしょっちゅうです。なにか予知能
力があるのか・・・これはジョーク(笑)

■7.ロック・イン戦略の7項

【ロック・イン戦略の定義】
購買歴のある顧客に対して、固定化を誘う方法を使い、「個客」シ
ェアを高めること。

【ロック・インにおける収穫高仮説】
(1)同じ販売促進コストを使うとき、購買歴がある「個客」の「
個客」シェアを高めるために使うほうが、収穫高は大きい。
(2)「個客」シェアの高いところには、新規「個客」も誘導され
る波及効果が生じる。

こうしたことが、様々な思考錯誤の結果の発見だったのです。

【最初に原理の理解を】
実務的な問題は、どんな方法で、ロック・インを行うかということ
です。最初に、「原理的な部分」を理解していないと、「具体策の
藪」で迷うことになる。

CRMではこうしたことが極めて多い。藪で迷えば、それぞれの手
段のロック・イン効果も見えなくなり、半端なサービスだらけ。そ
れぞれが徹底しないという結果になる。これを多く見かけます。

【機会】
90年代後半からポイントカード、割引券を発行するところは、増
えています。航空会社のマイレージ・サービスの普及が、引き金に
なって、ホテル、店舗、レストランは、固定化を目的に、ポイント
サービスを行っている。

(注:収穫逓増(ていぞう)と収穫逓減)ポイントカードは、最初
は約15%の売上増収があるのですが、他が行えば「並」になると
いうことです。ホテルや飛行機のように、「空室・空席があっても
コストは同じである固定費産業」では、効果があります。

ところが、商品販売は「売れれば原価が比例する変動費産業」です。
ポイントカードの効果は、普及すれば限界があるということ。従
って、ロック・イン対策の複合化が必要なのです。

個人会社Systems Research Ltdは、典型的零細、固定費型、研究
開発、文書生産業です(笑)

【体系化の必要性】
長期的・体系的に、集権のマネジメント・スタイルまでを変更した
CRM経営に至っていると思えるところはありません。

また、メーカーの対、卸戦略、店舗戦略、卸の店舗戦略にまで、普
遍的に適用できる方法には至ってはいない。
みんな、部分を撫でている。従って、機会がある。

▼7項のロック・インの戦略体系(具体的方法は次号で解説)

以下、ロックイン戦略の、体系を示します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.親密さによるロックイン
2.メンバーシップロックイン
 2.1 会員制ロックイン
 2.2 ポイント制(ポイントカード)
3.便利さによるロックイン
 3.1 ワンストップ型
 3.2 継続補充型
4.ブランド・ロックイン
5.学習によるロックイン
 5.1 学習プラス
 5.2 ベンチマーク・ラーンニング
 5.3 ラーニング・プロポジション
 5.4 ラーニング・アウトソース
6.コミュニティ・ロックイン
 6.1 プロトコル連鎖型
 6.2 ノンプロコル型
7.シリーズロックイン
 7.1 シリーズ型
 7.2 ステップアップ型
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(上掲『ロックイン戦略』より:若干の用語変更は吉田繁治)

以上は、便利な、顧客固定化の戦略(方法の設計)体系になります。
それぞれの具体的方法は、次号で示します。
(本号では、紙幅の関係で項目名を挙げるに留めます)

▼ロック・イン(固定化)の原理(重要)

顧客の購買行動、商品選択行動は、選択と購買での「コストとリス
ク」の観点から解析ができます。

【3つの購買行動仮説:重要】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)顧客は、購買でのコストを減らし、リスクを避ける行動をと
る。
(2)顧客は、過去に負担したコストや蓄積を無駄にしたくないと
いう行動をとる。言い換えれば、同じことを継続したいということ
である。
(3)顧客は、ユーザーが多い商品やサービスを選択する傾向があ
る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが3項に集約した、購買行動の仮説です。

購買のコストを増やし、リスクが好きだという人はゼロではないが、
それは買い物アディクション(addiction:嗜癖:耽溺:中毒)で
しょう。私はその傾向を、部分的にもちます(笑)

【仮説からの展開】
3つの仮説を認めるなら、企業側としては、
(1)購買行動での「コストを減らし、リスクを減らす」ことを提
供、提案する、
(2)過去の「コストや蓄積」を生かすことを、提供・提案する、
(3)「ユーザーの絶対数を増やす」、という3要素で顧客は、収
穫逓増の固定化へ向かうことになる。

以上、顧客の購買行動仮説3項から、前項に挙げた「7項のロック
イン」の戦略ができるのです。

▼ロックインの原理と、販売促進費用

新規顧客を新たに得るコストを5とすると、既存顧客の維持、来月購
買、来年購買の促進に要するコストはその5分の1であるといわれ
る。

【$80と$16】
(1)AOL(インターネットプロバイダの世界最大手)が検証し
たのは、新規ユーザーを獲得するためには、獲得顧客1人あたり$
80の広告コストを要したということでした。

つまり、広告費÷広告効果での新規獲得顧客数=$80

(注:BtoCの赤字)大半のBto C(対消費者販売)のWebサイト通
販が、売上を上回る赤字を出す理由は、この$80前後(米国)が必
要な広告費のためです。顧客の、新たな商品(この場合はサービス)
を購入するときのリスク感は、計量すれば、$80内外と判断し
ていいでしょう。

もちろんこれには、業種、商品、知名度、過去の信用、ブランドで
違いがある。わが社の販促費や広告費での、新規客購買で数字はつ
かめますね。(自社で計算すべきです)

(2)すでにAOLを使っている顧客に、新規ユーザーと同じ金額
の、別の追加のサービス(または商品)を購入してもらうための、
販売促進コストは、約$16だった。

つまり、追加購入の販促総コスト÷追加購入客数=$16

他の、インターネット関連の試行錯誤でも、ほぼ同じ結果ですね。

前項の3つの購買行動仮説では、すでに知っているAOLから、追
加サービスを購入するほうが、顧客にとっては「他を選択するコス
トとリスクが減る」という原理に基づくものです。

新規顧客の獲得は常に必要です。そうでなければ、最後には売上は
ゼロになる。課題は、プロモーション比重のバランスです。

同じ広告費、プロモーション費、営業費なら既存客メンテナンスと
維持(ロックイン)に、重点をおくほうが収穫はあがる。

▼原理の理解から

ここで<CRM経営の本質を解く:創刊号第2部>を終わります。
CRMの体系の原理部分で、約50%部分が終わりました。繰り返
しますが、原理を徹底理解。そうすれば、「豊穣な枝葉」が実りま
す。

また、実行対策は、小泉構造改革のような、学者論文的網羅ではダ
メです。絞って単純化し、集中して、競争力を作ることです。(お
よそ現場パートの人達が、資料を見ず3分で説明できるようなこと
でないとダメですね)

現在、「記述方法の実験」を加えています。インタラクティブな方
法で、いいものを作りましょう。

基本用語解説を、文中で、適宜加えています。
記述のスマートさを犠牲にしています。
ゴツゴツ書いている感じです(笑)

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<CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第2部)>

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