グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)が、日本産業の再興のキーポイント(3)
This is my site Written by admin on 2011年1月19日 – 08:00

おはようございます。今、パリのムーリスからです。セーヌ河岸の
チュルリー公園前にある、200年前からのクラシックなホテルです
。航空券は、ビジネスクラスでの往復がタダになるマイルが貯まっ
たので、Expediaで予約したホテルを少し贅沢しました。

最近改装を施し、バスルームは大理石で6畳間くらいに広く明るい
。浴槽は深く、純白です。一階の食堂も最高クラスですが、イブニ
ングの正装と、典雅なマナーを強制するくらい恭(うやうや)しく
、価格は相当高い。ここは宮殿の接遇室かとも思う。

土の匂いがするマルシェ(バスティーユの朝市)で、リンゴを8個
買い(重い!)、磨いてかぶりつき、スターバックスで買って冷え
たエスプレッソを飲みながら、3通の原稿を書く。どこへ行っても
、当方の時間のほぼ50%は、パソコン画面に向き合います。

改めて思えば、インターネットは凄い。コンテンツは指数関数で充
実し、世界は同時の情報空間になった。障害は言語。日本語だけだ
と、情報量は5%以下に減るでしょう。後世は世界の21世紀初頭を
、インターネット革命の時代と定義するでしょう。

革命、通貨、国債も、その渦中(変化内存在)にいると漸進的に見
え、革命的に変化していることが見えにくい。姿勢で一歩引き、望
遠鏡を逆に見て、1年の時間を1か月に縮小し、「動き―反動き」の
細部を消す必要があります。

グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)のシステムも、イン
ターネット革命の一環です。無線の携帯電話は今、世界中が、国内
のように通じます。手の平に収まる次世代ケイタイは、超高性能な
データベース端末です。2次元コードの読み取り機能や、写真、動
画、画像転送機能もある。

こうしたことに驚くべきです。
このためGDVの組み上げは、はるかに容易になっています。

情報空間では「地域」が消えた。はるか山奥も都市も、ガラパゴス
がいるタスマニアも、同じ情報空間です。航空料金もエコノミ―や
これから広がるLCCなら5万円かそれ以下。国際物流や移動の1990年
代までのハイコストもない。物流と移動空間も縮小しています。遅
れているのは、業務と人々の認識でしょう。グローバルは「今」で
す。

▼パリ心象

【経済】
約2年ぶり、前回はリーマンショック(0年9月)の直後でした。ユ
ーロとドルが、あれよあれと、日々乱高下していたのです。

今、ユーロは108~110円くらいを波動しています。50%は高いと感
じていたパリの物価や住宅も、円では東京並みです。為替は、ファ
ンダメンタル(経済の基礎条件)より、投機で差益を狙う債券と先
物の売買量で動きますが、不動産を含む物価の実感では、1ユーロ
は、100円(今日は110円ですが)くらいで物価が均衡する感じです

街角の至る所にあるカフェで、ほぼ8ユーロのオニオン・グラタン
・スープ(好物)が当時1300円、今は880円です。2008年9月以前は
160円水準で、今の45%高でした。

パリのみならずイタリア、スペインのレストラン、店頭物価、賃金
、不動産は高かった。しかし不思議に、当時はそれはそれで普通に
も思えていたのです。渦中にあると、時代の真相は見えにくい。

今失業率は10%で、日本(5.1%)の2倍高い。今に始まったことで
はない。1990年代も11%でした。

雇用保険は複雑ですが、賃金のほぼ70%が支給されます。適用期間
は、雇用期間の短い人で7か月、25年で50歳以上だと3年あります。
日本は最長で1年ですから3倍の長期です。

英国を含む欧州で、ワーカー階級は、失業をあまり気にしない。短
期で辞め失業保険をもらい、別の職を探す流動雇用の比率が、全雇
用者の40%を超えているでしょう。税と社会福祉負担が、所得の50
%で、都市に押し寄せる中東やアフリカからの移民の、社会福祉が
問題になる理由でもあります。入国は、アメリカほど厳しくない。

教育費は、大学に至るまで全額が税からの補助です。国民皆保険の
医療保険は、ほぼ30%が個人負担で日本に類似しますが、一旦は全
額個人が払い、後で保険請求する仕組みです。65歳以上の年金給付
は、現役時代のほぼ50%の金額で。200万円平均の日本より若干高
い。

今、わが国民主党政権で懸案の税は、法人税33%、個人所得税は所
得額に累進で0~40%、消費税(VATと言う)は19.6%ですが、基礎
生活の食品は5.5%の軽減税です。所得中クラスの人で約50%が税
と社会福祉負担とみていい。

ユーロ圏は総じて社会民主義で、ギリシアのような行き過ぎもある
高福祉・高負担です。日本も、政治的な紆余曲折を経て、欧州風に
向かうのか。

フランス並みと思えば、そう悲観することもない。80年代後期まで
の日本は、フランスやイタリア経済をはるかに下に見ていましたが
、日本のゼロ成長の20年で、フランス並みに落ちています。

フルタイム(週36時間)ワーカーの、全平均賃金は2600ユーロ(28
.6万円/月:110円換算)ですから、日本とほぼ同じです。パート等
の最低賃金も1時間8.44ユーロ(928円)で、1ユーロ110円換算で
日本と均衡しています。

いろんなローンで、世帯所得のうち平均30%は、返済・利払いがあ
り、8割の人の生活は節約型です。ただし、上限所得の1%の人は
、わが国では想像を超える金融と不動産の資産をもっています。

1月は、昼の時間が短いオフ・シーズンです。朝は9時まで暗く、昼
は鉛色の曇天で、午後5時には更(ふ)ける。時折のぞく青空は、
ティファニーの箱の空色のように、透明ではっとする綺麗さです。
この空色は、多くの画家が描いた色です。

エルメスなどの超ブランド店を除き、多くの店舗はSOLDES(特売)
と張り紙し、ファッションは、30%~50%割り引かれています。割
引率は高くなっています。

東洋人では中国人が目立つのは、世界共通です。フランスは、ロシ
ア人も多い。20年前の日本人は、今の中国人に見えたのか。中国は
対米国とユーロへの輸出が同じ額です。

09年以降はパリも不況は普通で、すっかり常態化しています。数値
では、3~5%ポイントの売上の上下ですが・・・これが企業利益の
過半を決めます。NYと同じく、A Louer(貸家)と書いた建物や部屋
目立ちます。買収されたセーヌ河畔の大型百貨店Samaritaineは廃
墟ビルのように、今も店を閉じたままです。

▼心象

マロニエと書いた途端にいかにもパリです。街路の木々の葉は落ち
、黒く折れ曲がった針金に見える裸形の枝が、曇った空に映じてい
ます。厳寒の想定でしたが、今週は3月並みに温かいと言う。雪解
け水で、セーヌは橋げた近くに水量が増し、黄土色に濁っています

             
パリから南西に高速道を約2時間走ると、ロワール河流域の、見渡
す限りの平原です。中世から近世に向かった16世紀の古城が多い。
宮殿より館(やかた)風です。諸侯や貴族が、狩りの期間に使った
別荘です。

フランス封建時代の諸侯は、大きければ、山の手線に囲まれた広さ
の土地を、1軒の別荘に使うくらい大地主でした(シャンボール城
:フランソワ一世)。郊外のあちこちに、別荘を建てていた。

16世紀の税は収穫の50%で、諸侯が地代として徴収し、庶民は残る
50%のうち半分をパン代だけに使っていた。野菜と野菜スープしか
食べなかったという。食事は手づかみで、ナイフとフォーク使う習
慣は、当時、文明が進んでいたイタリアからの文化輸入でした。

低い城壁に囲まれた林での、野生の鹿、猪、野ウサギ、野鳥の狩猟
は林をもつ貴族の占有で、高価な香辛料も使う肉は、貴族だけのご
馳走でしたと歴史に詳しいガイドが言う。林と言っても、山ではな
く平原です。(日本は、つくづく山の国です) 林を抜けると、シ
ンメトリーな庭園のはるか先に、ルネサンス様式の城が立つ。

フランスの至る所、レストランが多いのは、最後の皇帝ルイ16世や
マリー・アントワネットを斬首にしたフランス革命(1789~99)で
、王侯貴族の料理人が大量に解雇され、彼らが料理店を開いたのが
発祥とも聞きました。

なるほど、世界のあらゆる歴史は支配体制の崩壊から、次の時代を
作っています。フランス革命(18世紀後期)も財政赤字、増税、当
時2600万人の庶民の生活苦(食糧危機)から起こったものです。

明治時代の『大言海』の大槻文彦は、国会の制度と民主主義を下剋
上(下の者が支配階級を覆す)という名言で定義しています。フラ
ンス革命も下剋上でした。マルクスは『ルイ・ボナパルト:ブリュ
メールの18日』で、フランス革命以降を興奮して活写しています。

古城の周囲は、人口1000人もいないと思われる城下町です。村が適
語に思えるくらい可愛く、小さく、素朴な、しかしフランス風に色
彩を絞ったハイセンスな家が多い。ロワールの村の家は1000万円台
で安く、普通の人が週末の別荘に買うことも多いという。

パリのアパルトマンの部屋(多くが借家)は、家賃は東京並みで、
せいぜい60平米くらいと狭い。パリ市街の住民(220万人)のうち1
8%は別荘をもち、金曜日の夕刻から車でカントリーに向かいます

ライフスタイルを、生活で何を大切にするか、重要視するか(生活
の価値観)と解すれば、日仏では、歴史的に大きな違いがあります

数百人の村にも必ずあるのは、教会、レストランそして民宿のよう
な数軒のホテルです。15世紀や16世紀にタイム・スリップしたよう
な、時間の固定の印象を受けます。中世から近世が、現前していま
す。日本は歴史を流した。ここでは現存です。こうした風景を見れ
ば、GDPの成長に何の意味があるのかとも思えます。

1000キロと長大なロワール河は、セーヌと違い川底が浅いので運河
の役を果たさず、近世からの工業化が起こらなかったという。水量
が増えた時期は、氾濫も多い。当時の運河は、物資や商品を大量に
運ぶロジスティクスの幹線でした。陸路には、馬車しかなかった。

ロワール地方には、ゴシックやルネサンス時代を偲(しの)ばせる
街が残っています。穀倉地帯の農村・畜産・ワイナリーで、食は豊
富で安い。瀟洒(しょうしゃ)なレストランも、コースで30フランく
らい。フランスの食の生産は、国内消費の1.2倍です。自給できな
いのは原油のみです。国策の原子力発電が80%の電力を供給してい
ます。

高速道から360度が地平の小麦畑を見ると、所々の、セメント色の
低い土管を伏せたように見える原子力発電所が、巨大な高速タービ
ンを回した高圧蒸気を、カリフラワーの形のようにモクモクと吐い
ています。将来の財政破産によるメンテナンスの不備から、ロシア
のチェルノブイリのような事故が起こったとき、大丈夫かなと不安
になります。このフランスも、増える福祉負担で財政赤字の国です

             *

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1519年5月2日に、67歳で没)が、20代
だったフランソワ1世に招かれ、晩年の3年を過ごしたクロ・リュセ
城(アンボア村)を住まいにしたという。

寝室、仕事場、応接間、食堂が当時の面影を髣髴(ほうふつ)とさ
せるよう、16世紀のルネサンス期の家具やカーペットを集め、保存
されていました。

16世紀の人々には理解の外にあった螺旋状の羽をもつヘリコプター
、戦車、外輪船、動力変換のギア、自動灌漑などを含む40台の模型
が図面から復元されています。モナリザも、ここで仕上げたという

ダ・ヴィンチは、15、16世紀の時代環境の中で、一体何を見ていた
のか。空想ではない。ニュートン力学に沿う図面も作っていたから
です。

人体、鳥、魚、そしてあらゆる動物(神の被造物とされた)が動く
メカニズムの研究が元になって、そこから、機械設計の発想を浮か
ばせたのでしょう。昆虫学者ファーブルのような、自然の内部構造
の、克明な観察です。兵器や鎧は、昆虫に似ています。ダ・ヴィン
チは、医師でもあったのです。「科学は自然を模倣する」でした。

安易に「天才」と言う。この天の意味は、常人には、その破天荒な
能力の由来が理解できないという意味のものでしょう。その人が過
ごしたという館に行けば、はるか遠くだったダ・ヴィンチも急に身
近になる思いでした。

天才とは、外界や人々を目に焼き付ける観察の才だと感得しました
。画家は、シーツとナプキンの白の違いを明確に見分ける。われわ
れには、単に白にしか見えない。しかし画家は、観察し、描き分け
ています。同じ白も、何十種にも区別して見極める。そのため絵の
具と筆の使い方を変える。

ここがカメラと違う点でしょう。カメラは物理的な光の違いは写し
ます。他方画家は、シーツとナプキンの白の「心象の違い」、言い
換えれば、観念を描く。目を閉じ、見たものをイメージしたものが
心象です。

セザンヌのリンゴは、物理的には正確な描写ではない。セザンヌが
感じたリンゴへの想い(イマージュ)が描かれているのでしょう。

この心象を、印象ともいう。セーヌ河岸の、駅を改造したオルセー
美術館で思ったのです。ここは、われわれがいつも画集で見る印象
派の絵が多い。

象徴、イマージュ、心象、印象は、同じことの異なる言葉での言い
換えでしょう。心に映じたものです。ダ・ヴィンチと同じく観察の
天才、ピカソの目には、ピカソが描いたように人の顔がイマージュ
されていたのかもしれません。

純粋な観念である夢の世界の顔は、裏も表も同時に、あのように見
えるのか。外界を描いていた絵画が、写真の登場(19世紀)ととも
に、写真が写せない観念を描くようになっています。

それともに、絵が分からなくなった。抽象画と言いますが、現代絵
画は何が何だか一向に分からない。ネジや鉄の丸棒がくねくねと絡
まった黒い画面が「美への理想」とは思えない。なんでしょうか、
これは。どう見たらいいのか? ポンピドー美術館に多い。

小林秀雄は「分かる、分からない」というアプローチそもそもに誤
りがある。リンゴを見て一体あなたは、何が分かったのか? 「あ
ぁ、リンゴだ」という言葉への置き換えに過ぎないではないか。な
るほど、分かるというのもそのレベルでしょう。

音楽家は、音色とリズムでしょうか。小説家は言葉でしょう。Aさ
とBさんの微妙な違いを、言葉でどう描き分けるか。

店舗の商品構成における、需要側から見るカテゴリー区分も同じで
す。A とBの牛乳やシャツに、どんな用途、購買機会、顧客の違い
があるか。これが見えねば、商品構成はできません。ここから、店
舗の違いが生じます。
             *
見たものと考えたことを描けば、切りがありません。漱石のように
対象を写し、考えを描くなら、1日が100ページ以上にもなるでしょ
う。

テーマの、グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)です。(
1)店頭の商品構成と販売及び在庫の管理から(=商品計画から)
、(2)卸の販売と在庫管理、(3)メーカーの生産計画と在庫管
理を、一貫して、最終需要予測を起点に、整合させることです。

メーカーの生産計画も、最終需要サイドから組み上げねばならない
。一社で、「顧客販売→ロジスティクス→生産」を行っているかの
ような、管理システムを組み上げるのです。

その点で、SPA(製造直売型)の企業が、GDVを実現しやすかった。
日本ではユニクロ、ニトリ、世界ではZARA、H&M、ギャップ、トミ
ー・ヒルフィーガー、アバクロなど、今シャンゼリゼ大通りの主要
店は、全部がSPA型です。

高級品店ではない。ほぼ70%が、マーケット需要の60%から80%を
占めるポピュラー・プライスです。

グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)のシステム優位から
です。アップルやウォルマートも含む2000年代の企業成長は、GDV
にあったと言えます。

出発点は、店頭の商品計画です。

<店舗の売上を決めるのは、1.品揃えの豊かさという要因(40%)
、2.売価要因(25%)、3.プロモーション要因(15%)、4.サービ
ス要因(10%)、5.その他の要因(10%)と想定されます。括弧内
の%は、経験的な仮説です。>・・・と書きました。

1.品揃えの豊かさという要因(40%)、2.売価要因(25%)につい
ては、前号に示しています。

本稿は、3.プロモーション要因(15%)、4.サービス要因(10%)
、5.その他の要因(10%)です。以上は、店舗の商品構成(=商品
計画)をするとき、参考になる要因と考えています。

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<521号:グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)が、
      日本産業の再興のキーポイント(3)>
          2011年1月19日号

【目次】
1.プロモーション要因(15%)
2.サービス要因
3.商品計画の事例
4.ZARAやH&Mの、サプライチェーン・イノベーション
5.商品計画から
【後記】

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■1.プロモーション要因(15%)

プロモーションは、1.品ぞろえの豊かさ(40%)、2.売価要因
(25%)の上で行う販売促進です。特売催事、チラシ、広告、そし
てインストア・プロモーションがプロモーションに該当します。

この点で実験を行ったウォルマートは、結局は、こうしたプロモー
ション要因で売上を上げても、営業利益を上げる効果は少なく、営
業利益面では逆効果が生じたとして、今は否定しています。

計算式で言えば、[プロモーションでの増加売上×粗利益率―(チ
ラシ・広告・ポイントカードの費用+特売催事のための棚変更費+
特売催事のための増える商品作業費と売れ残り品)」で、増加営業
利益はなかった

行ったのは、「インストア・プロモーション」でした。
(1)売り場の、シーズン適合のカテゴリー構成と品目構成、
(2)一個一個の商品の割引価格、
(3)商品POPで販売促進を行う、「Everyday Lowest Price」です。
ポイントカードも作っていません。

(注)ウォルマートでは、買い取り仕入れ量が、売上予測数をを上
回ることがないように、日々や毎週の発注でコントロールされてい
ますから、「クリアランス・セール」も、普通は、ありません。

確かに、プロモーションでは売上の増収効果は、1.特売催事、2.
チラシ、3.広告、4.CRM(ポイントカード等)の合計でプラス15
%くらい、その4つを行わなかったときに比べると、売上の増収と
して期待できます。しかし[増収額×粗利益率―プロモーションで
の増加費用]で営業利益が赤字なら、売上を15%増やした意味はな
い。

かえって、毎月や季節のプロモーション費用が店舗部門の固定費に
なって、損益分岐点の必要売上が15%以上も増え、特売催事を行わ
ないと営業赤字が増えるという高コストの体質になる。営業赤字が
想定さえるから、商品の平均値入率(値入額÷売価)を高めねばな
らない。仕入原価+値入額=売価です。

わが国全小売業(130万店)のうち多分95%は、プロモーションへ
の依存体質に陥っていると想定します。

そして実は店舗の特売催事は、店舗が計算しない卸やメーカー販社
の在庫と納品の対応コストも上げています。わが国の取引慣習では
、米欧と異なる[返品]があるからです。それに、店舗の特売催事
のために掛かっている卸やメーカー販社の増加費用は、小売側では
意識の外にあります。

このため卸やメーカー販社は、あらかじめの全商品の納品価格に、
これらの、特売支援で増える想定費用を組み込まねばならない。そ
うした取引になっているのです。

プロモーションを否定する論をお届けするのではありませんが、一
度は、[プロモーションでの増加売上×粗利益率―(チラシ・広告
・ポイントカードの費用+特売催事のための棚変更費+特売催事の
ための増える商品作業費と売れ残り品)」を、推測が混じってもか
まいませんから、計算してください。

その際、注意しなければならないのは、特売催事を行ってきた店舗
では、その特売催事に必要な商品作業分が、店舗の要員数として、
固定費になっていることです。その時は、特売催事による増加費用
がないように計算されてしまいます。

これも経験的な仮説ですが、特売催事への依存型の店舗では、バイ
ヤーと店舗の総人時が1カ月1万時間(200時間労働で50人分)なら
、そのうち30%(3000時間:店舗の人件費の30%)くらいは特売催
事用の陳列と販売を含む商品作業に使われています。これが固定費
になっているのです。この固定費部分は、抽出して、特売の営業利
益計算をせねばなりません。

この際、特売催事をやめれば、どれくらいの人時が減るかという計
算でなければならない。

また、特売催事による、前倒しの売上があっても、翌週や翌月に、
特売で前倒しで売った分、売上が減るのなら、翌週・翌月の[特売
が原因の売上減少×粗利益率]も、特売費用とすべです。

こうした計算をして、特売催事をやめても店舗の固定費は何ら変わ
らない(人員体制は同じ)のなら、催事による営業利益の増益効果
は、特売粗利益が赤字でない限り、認めていいでしょう。

新たに店舗を作り、店舗作業と要員配置を決めるときは、[特売催
事なしの想定売上×粗利益率-店舗経費=営業利益]を計算してく
ださい。そのほうが、年間営業利益は高まるはずです。

■2.サービス要因

サービス要因は、代表的なものがCRMのポイントカードです。すっ
かり一般化しました。ポイントカードは、利用分量配当と考えるこ
とができます。

ポイントカードがないときに比べれば、売上の増収効果は、ほぼ10
%が期待できるでしょう。特に、耐久財(家電・家具等)やファッ
ションで増収効果は大きい。

(注)ウォルマートが、ポイントカードを行わない理由は、地域シ
ェアが高く、店舗の営業利益が構造的に(言い換えれば店舗の設備
費用と人員配置の設計で)、十分に高いからです。

営業利益の効果計算は、[ポイントカードによる想定売上増収×粗
利益率-割引額-ポイントカードのシステム費用]でしょう。
            *
以上、店舗の商品計画を決める際に考慮すべき、1.品揃えの豊かさ
という要因(40%)、2.売価要因(25%)、3.プロモーション要因
(15%)、4.サービス要因(10%)、5.その他の要因(10%)を述
べました。その他はその他で、分かりません。

■3.商品計画の事例

商品計画は、商品構成計画です。実際には、品目をどう展示し、い
くらの価格で販売するかです。

米国のウォルグリーンを訪ね、地域マネジャーの説明を受けたとき
、「5000店のチェーンは、サプライ・チェーンでここまで来ている
のか」と感嘆したことを書きます。

売り場の棚には商品が並んでいます。その商品の個々に、この棚な
ら、基準売上数が4週陳列で*個と、全商品(1万品目)に暗号表示
されていました。

プロモーション効果が高いエンド(ゴンドラの端で通路に面すると
ころ)や、陳列線ですぐ目につく視線の正面のゴールデン・ライン
に陳列する商品は、その分多い基準売上数(1.5倍~3倍)が示され
ています。

5000店の、棚のデータ分析でこれ分かる。1店舗で4週に3個売れて
も、4週で1500個の大量です。このデータが商品計画での発注のベ
ースになります。

ベンダーやサプライヤーへの発注は、個々の店舗からではなく、配
送エリアの数百店にバラで供給する自社DC(物流センター)から行
います。

個々の店舗の1品目の4週売れ数には、どこでも、大きなばらつきが
出ます。ある4週は3個かと思うと、次の4週は1個になったり5個に
増えたりします。個店での、各品目の売上数の予測精度は極めて低
い。

個店の4週の品目売上を集計するDCでは、個店売れ数のバラツキは
吸収されて、統計的な「大数の法則」に近づきます。

Aという品目のサングラスの売れ数は、個店では4週で1個から5個
にばらつく。ところが地域の500店を集計すれば、4週1500個で安定
する。差異があっても最大で±20%以下になる。1万の全品目が、
です。

これで、DCからの予測発注は容易になり、120箱のケース・バイイ
ング(買い取り発注)しても、在庫過剰や欠品になる恐れはない。

つまり、以下の定期発注法を使えばいい。

4週発注数=(入荷リードタイム2日+発注サイクル28日)×翌4週
の1日平均売上予測数54個+安全在庫数―現在在庫数

(注)安全在庫数=安全係数2×1日売れ数の標準偏差×√(入荷
リードタイム2日+発注サイクル28日):現在在庫は発注日の(DC
+500店舗)の在庫数

4週1回の発注数は、Aサングランスの店頭陳列を維持する時期は、
(2+28)×1日売れ数予測54個=1620個付近です。

上記式で、翌4週の1日平均売上予測数54個は、発注シーズンで変動
します。

以上が、グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)の、起点の
データになります。ベンダーやメーカーは、それに合わせて、生産
ラインへの発注計画を作ります。

ウォルグリーンのみではない。ほぼ同じ店舗数をもつドラッグスト
アのCVSも方法は同じです。ウォルマートも同じです。

■4.ZARAやH&Mの、サプライチェーン・イノベーション

パリのみならず世界中に店舗をもつSPA(製造直売型)の、工夫は
、定期発注法の中での、製造のリードタイムを1週間に短縮するこ
とでした。ファッションでは、シーズンの売れ残りを作ると、それ
が、そのまま、営業利益の低下になるからです。50%引いても売れ
なくなります。

ZARAやH&Mが世界中に店舗を作って、世界的な企業になったのは200
0年代の10年です。

これが実現したのは、1990年代の企業規模が小さい時から、サプラ
イチェーン・イノベーションを果たしていたからです。中小企業に
はできないと、あきらめるべきではない。

企業を見ると、ほぼ10年前の技術イノベーションが、企業規模の拡
大になるには、数年から10年の時間が必要です。誰にも知られてい
な時期に、イノベーションを起こしています。

【4週サイクルの発注での在庫】
4週発注数=(入荷リードタイム2日+発注サイクル28日)×翌4週
の1日平均売上予測数+安全在庫数―現在在庫数、になります。

一般に4週サイクル発注では、DCと店頭在庫の合計は、少なくとも[
4週分×1.5倍=前回の売れ数の、6週分の各品目の在庫]になります

6週分も在庫があれば、売れ残りは膨大に出て、全売れ数の30%を
超えるでしょう。これでは期首値入率が70%あっても、[70%-売
れ残り30%]で、実現粗利益率は40%に減少し、店舗は赤字になる
かも知れません。

4週サイクル発注の理由は、工場でのデザインと材料の調達を含む
生産のリードタイムが4週だったからです。

この生産リードタイムを1週間に短縮すれば、どうなるか?

【1週サイクルでの発注のときの在庫】
1週発注数=(入荷リードタイム2日+発注サイクル7日)×翌1週
の1日平均売上予測数+安全在庫数―現在在庫数

1週間サイクルの発注に短縮できれば、必要在庫は、売上予測数の1
週分×(1.5倍~2倍)=1.5~2週分に減少します。

DCからの発注サイクルを短縮化するだけではダメです。工場が4週
の生産リードタイムのままなら、店舗在庫が減った分、工場が余分
な在庫をもつことになって、サプライ・チェーンの全体最適による
、店舗と工場の同時の、営業利益の増加にはならない。

(注)IY堂流の店舗のタンピン・カンリで発注サイクルを短くする
方法は、店舗の在庫リスクは減らしたのですが、ベンダーやメーカ
ーの準備在庫を増やしました。そのため、仕入れ原価の合理化には
至らなかった。これが根本原因でGMS業態がダメになったのです。
百貨店も同じです。

4週サイクル発注のときの6週分在庫と比べ、4週分以上が減ります

シーズンの終了期にも、在庫はぜいぜい2週分しかない。割引販売
や廃棄する商品が大きく減ります。これによって営業利益が上がる

営業利益が高くなるから、期首売価は20%は下げることができるか
もしれない。そうすれば、品目の売れ数は少なくとも1.4倍~2倍に
増える。これによって更に営業利益は上がる。

品ぞろえの豊富さ(売上を決める40%の要因)と、価格要因(同25
%の要因)の両方を、実現できるからです。

これがZARAやH&Mのグローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)で
す。

システムの根幹のロジックは、アップルと同じです。90年代は機能
・品質と価格比で高かったアップルの製品も、この3年はずいぶん
安くなっています。ZARAやH&Mと同じグローバル・デマンド・ビジ
ビリティです。

■5.商品計画から

以上、営業利益を上げ、商品価格も下げる「商品計画」のサプライ
・チェーンを述べました。

従来、サプライ・チェーン(デマンド・チェーン)を言うとき、店
舗の商品計画と発注への言及は、どの本にも欠けていたからです。
そのため理解がなかったのかも知れません。

サプライ・チェーン=[商品計画]→[ロジスティクス]です。
最終需要の、商品計画と売れ数予測による発注が元になって、商品
の最適物流を行うロジスティクスになります。

2000年代を大きく振り返ると、なるほどこのサプライ・チェーンの
業務構築、システム化、実行を図ったところだけが、売上を増やし
たと言えます。

今からでも決して遅くはない。各業界、業種、小売、卸、メーカー
で、サプライ・チェーンが構築され、システム化されて実行される
ことを望むのです。これが、日本の再興のカギに思えます。

サプライ・チェーンやデマンド・チェーンは、1990年代にシステム
の根幹が作られています。今は既知のものでしょう。

▼遅れた原因と対策

しかし、わが国での実現と実行事例は少ない。一体なぜなのか?と
考えてみると、それは2000年代の「業務の保守化」でしょう。

わが国と米欧では、会社の業務の方法やシステムを決めるときの方
法に大きな違いがあります。米欧の経営では、業務やシステムは、
トップ・ダウンです。経営陣が、現場の業務方法とシステムを決め
ます。これには例外がないと言っていい。(注)中国も同じです。

しかしわが国では、業務やシステムを決めるときも、ボトム・アッ
プの方法をとって来ました。部課長だったのです。

そのため、現場の業務改善であるデミング風のQC(品質管理)は、
方法としてよく馴染んだのでしょう。70年代から80年代の日本企業
が、世界的に浮上したのは、現場改善(KAIZEN)のQCか、QCと類似
の方法によるものでした。代表がトヨタ生産方式でしょう。IY堂の
タンピン・カンリも同じと見ていい。

しかしサプライ・チェーンの構築では、取引先の企業を含む全業務
、全システムの改編が必要です。従ってトップ・ダウンでの、導入
でなければならない。ここに障害があったため、2000年代の、米欧
の(現在の)成長企業が果たしたイノベーションに遅れたように思
えます。出店コストが高いシャンゼリゼや5番街は、こうした成功
企業と、ブランド店のオンパレードです。(注)ブランド店も、サ
プライ・チェーン型でないと、ダメになります。

中国や韓国に負けるとか負けないとかという論があります。これは
、漠たる印象論です。ZARAは、遅れているとされるスペインです。
H&Mはスウェーデンです。スウェーデンには、今のインターネット
や情報システムがない時代からの、グローバル・サプライチェーの
典型モデル:家具のIKEAがあります。

明確に申し上げれば、中国や韓国企業に、日本企業が勝つかどうか
は、サプライ・チェーンの構築如何にかかっています。一般に言わ
れる人件費の安さという要素は、30%くらいのものでしょう。サム
スンも、人件費の安さで世界ナンバーワンになったのではない。

人件費と福祉負担はわが国よりスウェーデンのほうが、わが国より
高い。その中でも、H&MやIKEAは競争優位を作っています。業務と
システムの差です。どうか、ここに着目していただきたいのです。

【後記】
7日間のパリもあと1日です。NYのように、大阪では見えない世界が
、街の至る所に普通に、見えます。なぜ、こうした違いが出てしま
ったのかと思うのです。日本は、いつの間にか、この20年で、辺境
になってしまったのか? 

しかし、日本の食は、平均値で、明らかに、すでにパリを超えた味
と洗練があります。パリのフランス料理が世界1とは、とても思え
ない。ミシュランの審査員が最近日本に来て、洗練と豊富さに驚嘆
した内輪話があります。実際に格付けしたのには、政治的な思惑が
入って、変でしたが・・・

パリは確かに、内装の洗練は高い。バラエティ・味・価格は今一歩
です。商品価値=機能・品質÷価格。虚心に(予断と偏見のバイア
スを除いて)見れば、円高になっても日本がこの商品価値の面で、
世界最高位に思えます。

全産業も、個々に見れば同じかもしれません。ただし企業間のサプ
ライ・チェーンで遅れた。ここに問題があります。余計な、無駄な
コストがかかっています。

(注)バリュー・チェーンとも言いますが、その中身は、サプライ
・チェーンです。コンサルタント等が、あれやこれや、定義のあい
まいな言葉を作るので、混乱しているだけのことです。

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